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  • 「安倍政権と大マスコミの癒着」小林よしのりライジング Vol.88

    2014-06-10 20:40  
    153pt
     新聞に、こんな内容の記事が載っていた。
      アベノミクスによる景気回復で、雇用の改善が進んでいる!
     有効求人倍率はバブル崩壊後の最高値に並んだ!
     人手不足は都市圏に限らず全国に広がり、人材の奪い合いが起きている!
     都心部では、時給1500円でも人が集まらないケースまで発生している!
     人手不足は本格的な景気回復を告げる「福音」だが、さらなる経済成長を阻む不安要因となることも懸念される!
     ……マトモな生活実感を持って暮らしている人なら「一体どこの世界の話だ!?」と思うだろう。事実、ちょっと検証すればこれはトリックだらけの、詐欺同然の記事だとすぐ判明する。
     これが、最初から安倍政権の御用新聞だとわかっている読売新聞や産経新聞に載っていたのならまだわかる。
      だが、この提灯記事が載ったのは5月31日の朝日新聞 。それも1面トップと2面の特集という大々的な扱いである!
      朝日新聞を、安倍政権に対する批判勢力だなんて思わない方がいい。
      朝日新聞は一応、集団的自衛権については批判しているが、景気対策ではデマまで駆使して強力に安倍政権を応援しているのだ。
     政府は5月30日、4月の物価・生産・雇用等の統計を発表、朝日はこれを基に30日の夕刊で「 求人倍率さらに改善1.08倍 4月バブル後最高に並ぶ 」という一報を載せた。
     ただしこの記事はまだマシだった。「有効求人倍率が1倍を超える」というのは「 仕事を選ばなければ 全員が職に就ける状態」であると説明した上で、次のように書いていたのだ。
     ただ、正社員を希望する人でみると、有効求人倍率(原数値)は0.61倍で前月を0.04ポイント下回った。求人は依然、非正規が中心となっている。このため、企業が出した求人のうち、実際に採用に結びついたのは2割にとどまった。   求人は非正規が中心で、正社員の有効求人倍率はわずか0.61倍!
     本当はこれが重要なポイントなのだ。ところが、このことは翌日の1面トップと2面特集の大々的な記事からはスッポリ抜け落ち、「景気回復で求人難」という内容になっていた。
      しかもその特集記事で、「時給1500円」という高額を提示しても人材を確保できない実例として登場するのが、なんと牛丼チェーンの「すき家」なのである!!
     すき家はメニューが多く、券売機方式ではないため、ただでさえ他の牛丼チェーンよりも店員の作業が多い。
     しかも人件費抑制と利益率増大のため店員は必要最低限の人数に抑えられ、深夜時間帯はアルバイト1名のみで1店舗を担当する「ワンオペ(ワンオペレーション)」という勤務を強いられる。
     注文を受けた後、キッチンに入って盛りつけ、提供、会計、片付け、そして報告まで全部ひとりでこなさなければならないのだ。
    「ワンオペ」は防犯上も問題で、すき家では2010年頃から強盗事件が多発。2011年には未遂も含めると78件と、牛丼チェーンの被害総数のうち9割近くを占めたという。
     そしてこの上に今年2月、さらに手間のかかる「牛すき鍋定食」が発売となったことでついにキレたのか、バイトが一斉退職。
     すき家では店員の確保ができずに休業に追い込まれる店舗が続出し、ニュースになった。
     今ではすき家のバイトはあまりにも過酷だということは広く知れ渡っている。だから時給を1500円にしても人員が確保できないのだ。
     もちろん朝日の記者がそれを知らないはずがない。実際、記事中では「 すき家は、深夜帯のアルバイトを一人で任されることもあり、負担が大きいと2月から4月にかけて人手不足が深刻化 」とも書いている。
      朝日新聞は実態を知っていながら、それを「 景気回復によって求人難になり、待遇改善が図られた 」という記事にしたのだ。
      有効求人倍率が「改善」し、企業が「求人難」になっているというのは、景気回復のためでも何でもない。
      ブラック企業を含む求人側が、都合よくこき使えて使い捨てできる人材を大量に求めているからというだけのことだ。
     朝日新聞は、安倍政権のために情報操作をしているのである。
     朝日新聞の安倍政権提灯記事をもう一つ指摘しておこう。5月30日夕刊の記事「 アベ効果?ベア実施6倍 大手企業の46.7% 」である。