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「IWC脱退 クジラを食うべし」小林よしのりライジング Vol.298

 昨年12月26日、日本政府は国際捕鯨委員会(IWC)に脱退を通告、今年7月より30年ぶりに商業捕鯨を再開することとなった。  年末に、何の国内論議もなく重大なことをやっつけてしまうというのは、もはや安倍政権の年中行事である。  捕鯨については17年前に個人雑誌『わしズム』の創刊号に描いた。その年・平成14年(2002)は下関でIWCの会議が行われ、そこで日本が商業捕鯨の再開を訴えることになっていたため、その前に世論を盛り上げようとしたのだ。  ところが、その後IWCで商業捕鯨が認められそうな気配は全くないまま時間が流れていき、むしろ反捕鯨国のペースに拍車がかかる一方となってしまい、ついにIWC脱退という結論に至ったわけだ。   商業捕鯨ができるのは日本近海と排他的経済水域(EEZ)に限られ、これまで南極海などで行われていた「調査捕鯨」はできなくなる。  日本近海とEEZ内ではこれまでも、IWC管轄外の小型のクジラを捕獲していたが、今後はそれに加え、この水域に入って来るミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラの三種を捕獲する予定だという。  水産庁は、漁獲量はこれまでと変わらないと試算しているが、調査捕鯨ができなくなったことで、漁獲量はむしろ減少するのではないかという懸念もあるらしい。  IWC脱退という決断が吉と出るのか凶と出るのかは、まだ現時点ではわからない。  だが、ここでわしが最も腹の立つのは、「クジラごときで、そこまで強硬な手段を取ることないじゃないか」という意見が出てくることだ。  今さら商業捕鯨を再開しても、鯨肉の消費量が増えるわけじゃないとか、わざわざ鯨肉なんか食べなくても、他に美味しいものはいくらでもあるとかいう声が普通に出てくるのは、実に不快である。   クジラの刺身は、わしが小中学生の頃、父親が生姜醤油に漬け込んだものが特に好きで、しばしば食ったものだ。クジラのベーコンは、今でも福岡に帰った時は博多料理で出されるから食っている。これは抜群に美味い。  昔はステーキというと鯨肉だったが、牛肉のステーキが普通に食えるようになったら、食わなくなった。竜田揚げも好きではない。     しかし、そんな鯨肉であっても、料理人というものはどうにかして美味しく食べさせる方法を開発してしまうものである。  わしは以前、ヒツジが臭くて食べられなかったのだが、今では美味しいヒツジ料理を食べられる店がいくつもある。  ジビエだって、素材自体は決して美味いものではないはずなのだが、それをいろいろ工夫して、ブームにまでしてしまっている。  クジラの美味い食べ方など、まだまだ開発できる余地はあるはずなのに、もうどうせ誰も食わないとか言って放り出そうとするのは、あまりにも浅はかなことである。  クジラが食べたいという程度の理由で、国際協調を崩していいのかという意見にも、全く賛成はできない。

「IWC脱退 クジラを食うべし」小林よしのりライジング Vol.298
小林よしのりライジング

常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!

著者イメージ

小林よしのり(漫画家)

昭和28年福岡生まれ。昭和51年ギャグ漫画家としてデビュー。代表作に『東大一直線』『おぼっちゃまくん』など多数。『ゴーマニズム宣言』では『戦争論』『天皇論』『コロナ論』等で話題を巻き起こし、日本人の常識を問い続ける。言論イベント「ゴー宣道場」主宰。現在は「週刊SPA!」で『ゴーマニズム宣言』連載、「FLASH」で『よしりん辻説法』を月1連載。他に「週刊エコノミスト」で巻頭言【闘論席】を月1担当。

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