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記事 22件
  • ブルックリン物語 #11 言い出しかねて "”Can't Get Started With You”

    2016-06-16 18:00  
    僕の暮らすアパートは築100年の物件で古い煉瓦造りである。
    煙突があるけれど、暖炉はない。それがあったであろうと思われる場所は潰されて、そこには僕が毎日クッキングするキッチンがある。
    ウッドデッキに出て我が家を見ると、外見だけ風格のある煙突がにょきっと屋根から突き出て残っているさまは、どこか寂しげに映るけれど嫌いじゃない。
    ある日、管理人でありハンデイマン(技術屋)の一人、ホセがデッキの上にある天窓を開けて階下から出てきたかと思うと、とんとんかんかんなにやら工事を始めた。そして、趣のある僕のレンガの壁を壊して大きな最新式冷房装置を取り付けた。
    「どうだい、千里。下の大家のジョーの部屋が暑くて暑くてしょうがないらしいから特大のよく冷える奴をつけてやったよ」
    ホセはへへんと自慢げに大声で笑った。でもそれは趣のある古い壁にはあまりにも唐突すぎて「美しくない」と思った。「なんだかなあ」と気分を害し
  • ぴの耳より情報 (6/16) ブルックリン物語#11は"言いだしかねて"

    2016-06-16 10:00  
    こんにちは、ぴーすです。いろいろお知らせがありましたが、今週のブルックリン物語は、"言いだしかねて"。
    トーンイベントでは息つく暇もなくおしゃべりするダディですが、ぐっと言葉を飲み込むこともあるんです。さて、それはどんな時だったのでしょう?
    英語のタイトルは "Can't Get Started With You"。
    世界中を飛び回り、ゴルフの腕前もすごいし、女優さんからはお茶に誘われる。でも、君とはまだ始まってもいないって、そういう歌詞らしいわ。
    私は言いだしかねることは......ないかな。
    https://www.youtube.com/watch?v=Ls33JN395OE
    18時にお届けいたします。
  • ぴ、です。

    2016-06-13 20:56  
    あーあ。心からくつろぐなあ(ぴ)
  • ぴの耳より情報(6/11) 大爆笑のトークイベントが記事に!

    2016-06-11 18:14  
    こんにちは、ぴーすです。青山ブックセンターでの平野啓一郎さんとのトークイベントの様子が記事になりました。動画もありますよ。ドカッーンと入る大爆笑は生録だそうです。お楽しみください。http://mainichi.jp/articles/20160607/mog/00m/040/007000c参考文献:「マチネの終わりに」平野啓一郎「9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学」大江千里
  • イラストはキングコング西野さん

    2016-06-11 15:47  
    新しいアルバムジャケット。これに文字載り。
    イラスト作キングコング西野さん。日本盤はこの世界盤とは違う日本ならではの価値観の「おもてなし」。逆にその他の海外はこの世界観で。
    https://www.youtube.com/watch?v=yQpxPxaVQsI
  • ブルックリンでジャズを耕す (続・9 th Note) #02

    2016-06-09 18:00  
    110pt
    半年、まだ大丈夫だ。9ヶ月、まだ大丈夫。そしてほぼ一年が経とうとしている頃移民局から通知が来た。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    「健康診断書が入っていなかったのでもう一度送り直すこと。もしもう一度同じ過ちを犯したら、全てのプロセスはゼロに戻るということを肝に銘じるように」
    というような内容であった。あれだけ足繁く通いなんども確認して封をした封筒の中の、いったい何が足りなかったのだろうと詳しく見てみると、「結核の陰性を証明するレントゲン写真が入っていない」だった。
    あいた口が塞がらず、半ば頭に血が上りながら最初に行った町医者のところをノックした。するとその先生は怒っている僕の話をじっくり慎重に聞いたのち、おもむろに口を開きこう言った。
    「Congratulation & Welcome to America.(おめでとう、そしてようこそアメリカへ)書類の不備があったと移民局から連絡が来たってことは、少なくとも僕たちが出した封筒はゴミ箱に捨てられてなかったっていうことだよ。つまり君のケースがようやくリアルにテーブルの上に乗ったっていう証明じゃないか」その日は風の強い日で、帽子が飛ばぬように先生が再び揃えてサインをしてくれた大きな封筒を盾にしながら、僕は弁護士事務所へはどの地下鉄に乗るのが早いかなどと考えていた。その時ふと心によぎったのが、「万が一のことがあるので面倒くさいけれども、もう一度この封筒の中身と同じものをコピーしてもらい手元に持っておこう」というアイデアだった。
    踵を返し、再び医院のドアをノックする。
    「ああ、いいよ。もちろん、問題ない。ちょっと待って開封するから」
    僕に一度渡した封筒をハサミでジョキジョキ切り開きながらクリップを外し、もう一度中身を一つずつチェックしつつ先生は「あっ」と小声をあげた。
    「一つ書類が足りなかった」
    再び作り直してもらった封筒を脇に抱えながら、落ち葉が舞い散る1アベニューを北上する僕は頭を左右に振り、よくアメリカ人がするような大ぶりなジェスチャーで「オーマイゴッド!」と口にしてみた。
    自分でも一部同じものをコピーしてもらって保管しておこう、そう思って踵を返さなければ、僕の人生はそこである意味180度変わっていたわけだ。なぜグリーンカードが不備でとれなかったのだろう、その本当の理由などは誰にもわからない。しかし僕ははたと思い立ち、面倒くさいのを我慢してもう一度医院に戻ったわけだ。そうしてよかった。僕は冷や汗を拭い、胸をなで下ろしながら、地下鉄への階段一気に駆け下りた。ピーター弁護士事務所に着くと、そのことを助手の人に必死で伝えようと息堰切るのだけれど、彼女は「ははは」と苦笑いして、「じゃ、これ出しときます」と事務的に頷いた。不承不承な気持ちを残したまま僕はビルの外に出ていく。突然パークアベニューを特大嵐のような風が吹く。まるで失敗しかかった手品をすんでのところで隠しおおせたマジシャンに、パラパラと気の無い拍手が起こったように落ち葉が道に掠る。
    僕はもう一度オーバーに肩をあげて冷たい冬の空気を吸い込み、それを一気に歩道に向かって吐き出した。ああ、もうこんなタイトロープは早く卒業したい。心が荒ぶ。
    それからピーター弁護士事務所に確認の電話をするようになった。
    「今僕のケースはどのあたりですか? 何か移民局から連絡はありましたか?」
    嫌われるのを承知でなんども電話をかける。
    「ちょっと移民局に問い合わせてみて急かしてみますね」
    助手の人は淡々と電話を切った。そんなことがあって年を越し、その冬もたくさんの雪に見舞われた。
     
  • ぴの耳より情報(6/9)グリーンカードは届くのか?

    2016-06-09 10:00  
    こんにちは、ぴーすです。ネットの中は、あ・た・し。
    日本は梅雨ですってね。
    そろそろ、ダディが帰ってくるから、私も爪を磨いておこうかしら。
    噂によると、ダディはいろんなものを吸収して、ひと回りくらい大きくなっているらしいわ。いろんな意味で。写真を見ると、よ〜くわかるの。
    さて、今週は、「ブルックリンでジャズを耕す」の2回目です。
    グリーンカードは届くのか? 18時にお届けします!
    そして、ハワイのチャリティの寄付先が決定しました。
    あたたかいスープをありがとう。(ぴ)
  • 楽しかったねえ

    2016-06-06 20:59  
    青山ブックセンターありがとう楽しかったねえ
  • 平野啓一郎さんとディープなトーク

    2016-06-06 20:57  
    こんにちは、ぴーすです。
    北九州・小倉のディープネタからヒューストン、パリ、ニューヨーク、サルコジ、大江健三郎、ジャズの秘密、物語の醍醐味、ダディの父と母、天才ギタリスト蒔野と洋子の恋の行方、巻き戻すことのできない人生。おしゃべりな作家・平野さんに、さらにおしゃべりなピアノマン・ダデイがかぶさり......あっという間で息をつく暇もない一時間半、だったそうですよ。「トップランナー」で出会ってから17年。未来は過去を変えている......。控え室にて。みなさん、楽しい時間をありがとうございます。(ぴ)
  • ぴの耳より情報 (6/5) トークイベントまであと8時間

    2016-06-05 06:47  
    こんにちは、ぴーすです。今日はトークイベントですね。平野啓一郎さんとですよ。
    『マチネの終わりに』は、とっても素敵な小説です。
    私の場合は、いつも初恋。何度でも。いくつになっても。
    さて、ダディはしっかり眠れたかしら?
    なにしろ、時差ぼけのまんま、博多、名古屋、秋田、オールナイトニッポンほか、いろいろ出没していて、スケッチブックの更新もできないほど目まぐるしかったのかい? と。
    今日は、参加できない方のためにも、できるだけ早めに様子をお知らせしますね。
    『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』は電子書籍も出ています。ちょっとだけ読んでみたいという方は、連載時のミニッツブック「9th Note 1 B♭ 憂鬱の始まり。」でも読むことができます。『マチネの終わりに』も電子書籍があります。すぐに読みたい方は、電子書籍端末がなくてもスマホで読めますよ。
    電子書籍は、ダディが連載し