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21世紀に入ってから社会に大きな価値変革が起こっている。
それは「物の価値が際限なく下がり続けている」ということだ。人々の物質欲がほぼ満たされ、需要が喚起できなくなってしまった。
これは、おそらく「市場」が生まれてから初めてのことである。人間が文明を築いてから初めてのことかも知れない。
狩猟採集の時代でも飢えや寒さはつきまとっただろうから、所有欲が完全に満たされることはなかった。しかし21世紀になって先進国の富裕層は、もう完全に所有欲が満たされている。これは、人類がいまだ遭遇したことがない事態ということ以上に、想像すらしていなかったことだ。
井上陽水は、70年代に「限りない欲望」という歌を歌った。ある瞬間は満たされた欲望も、気づくと新たな乾きを覚えている――という内容の歌詞で、今聞いてもみずみずしい魅力をたたえている。
この歌に象徴されるように、人々はこれまで「欲望は無限」と思っていた。し
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