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幡野広志氏の炎上を考える(1,813字)
2021-04-30 06:00110pt幡野広志氏がケイクスで連載している悩み相談がまた炎上した。ケイクス編集部はすぐ記事を削除したが、ネットには魚拓が残っている。
友達に恵まれることは、とても幸せなこと(魚拓)
なぜ炎上したのかと言えば、相談が事件性のある内容なのに適切なアドバイスを怠り、相談者の悩みに真摯に答えていないからだ。それよりも、分かったような言い方で茶化している。
ただ、ぼく自身はこれで批判されるのは少し可哀想だなと思った。というのも、そもそも幡野氏にとって「真摯さの欠如」は一つの本質だからだ。氏は公表していないが、おそらく発達障害を抱えているのではないだろうか。そして、本人はそのことに気づいているかどうかは分からないが、少なくとも周囲は気づいていないようだ。
幡野氏は率直な人間で、裏表がない。それは、善人だからというわけではなく、そういうふうにしか生きられないからだ。だから、邪悪なところやずるいところ、人間くさい -
マンガの80年代から90年代までを概観する:その4(2,093字)
2021-04-29 06:00110pt80年代から90年代を概観するつもりが、いつの間にか2000年代以降の話も含まれてしまった。ただ、このまま続けさせていただきたい。
2005年くらいに『DEATH NOTE』(2003)がヒットしてから、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(1994)、『ONE PIECE』(1997)、『NARUTO -ナルト-』(1999)、『BLEACH』(2001)、『銀魂-ぎんたま-』(2004)なども流行った。また、『HUNTER×HUNTER』も佳境を迎え、『こち亀』(1976)が40周年となり、何度目かのジャンプ黄金期が来た。
この状況を打ち破ったのは誰か?
『進撃の巨人』(2009)はその一番手といえるだろう。『鋼の錬金術師』(2001)や『よつばと!』(2003)も大きな支持層を得ていた。
ただ、ヤンジャンプから出てきた『キングダム』(2006)を初めとして、絵の抜群に上手い作家が、き -
[Q&A]圧倒的な読書の先に待っているものは?(3,064字)
2021-04-28 06:00110pt[質問]
少し前にハックルさんがtwitterで以下のように投稿されていました。
>昔から思ってるけど服でしか自由を表現できない人って本当に不自由で苦しそう。
>スカートを履く男性はその人が自由ではなく逆に服装に自由を縛られている証拠。
>本当の自由ってもっとずっとずるいものなんだよね。
>ユートピアとは程遠く寒風吹き荒ぶ荒野。
僕も同意見です。ただ、こういった発言を周囲にした場合、少しでも自由が認められることは良い事だ。多様性は認められることが良い事だ。それが悪いと言うのか?と言われます。もしそういった反応をされた場合、ハックルさんならどう返答されますか?
[回答]
もしぼくが、「少しでも自由が認められることは良い事だ」と言われたら、「それは確かにその通りだが、スカートをはくことは逆に不自由になるから、その意味でいうと悪いことだ」と答えます。「多様性は認められることが良い事だ」と言われた -
情報リテラシーはどうやったら身につくのか?:その29(1,682字)
2021-04-27 06:00110ptこの連載は、「情報リテラシーの身につけ方」について論じているのだが、途中からいつの間にか「バブル期の名作CM論」になっていた。
なぜそうなったかといえば、バブル期のCMは「掃き溜めに鶴」だからである。
通常、バブル期というのは「人々の感性が狂っていた醜い時代」と評価されるし、中でもCMは「人々を騙してでも買わせようとする卑しさが根底にあるコンテンツ」ということで、やっぱり醜いものという評価をされがちだ。
このように、バブル期のCMは二重の意味で醜く、文字通り「掃きだめ」である。
事実、その通りの醜いCMも少なくないのだが、しかし中には時代を超えて現代でも美しいと感じずにはいられない、極度に美しい作品が紛れ込んでいる。まさに「掃き溜めに鶴」で、しかしながらこの「鶴」の面白いところは、掃きだめに完全に浸かりきっているため、ぱっと見では「美しい」と評価するのが難しいところだ。鶴は鶴でも頭から掃き -
学生に伝えたいお金のこと:その26(1,690字)
2021-04-26 06:00110pt世界中の人の価値観を自分の価値観にむりやりねじ曲げた人物は何人かいると思うが、その中でも特筆すべきはやはりスティーブ・ジョブズだろう。
特にiPhoneは、やはりすごい。iPhoneは、それまでのスマホのボタンを「醜い」と感じたジョブズが、「ボタンのない電話を作ろう」と考えたところから始まった。それが全ての出発点だ。この「個人的な美醜に対する好み」が、世界中の携帯電話の形状や、使われ方までをも変化させることとなったのだ。
ジョブズの最初のiPhone発表プレゼンは、今見ても象徴的だ。実に示唆に富んでいるし、多くの重要な情報が含まれている。ジョブズがなぜこれを作ったのかが、実に率直に語られているからだ。
iPhoneを発表するスティーブ・ジョブス(日本語字幕) - YouTube
この発表会まで、ジョブズはもちろん新製品が何かを隠していた。それも「完全に隠し」ていた。電話だとは誰も知らなかっ -
学校に行かずに何をするか?(1,740字)
2021-04-23 06:00110pt1※金曜日の記事を配信をしておらず、今配信いたします。申し訳ありませんでした。ぼくは、常日頃から「子供は学校に行かせないようにしよう」と考え、また発言しているのだが、なにぶんまだ2歳のために、ほとんどの人が現実的な話として聞いてくれない。まだ先のこととして、あるいは仮定の話としてしか受け取ってもらえないため、議論も深まらず、ぼく自身もなかなかリアリティを持って考えられないというところがある。
しかしながら、これまでの経験上、時間が過ぎるのはあっという間である。子供は今2歳だが、小学校に入るのは6歳の春なので、それまでだともう4年を切った。
「4年」というと、今から4年前は2017年である。ついこの間のことのようで、当時のぼくは岩崎書店の社長をしており、児童書を作るなどして頑張っていた。それからいろんなことがあって環境も激変し、今では糸島に住んでいるわけなのだが、それでも4年はあっという間だっ -
マンガの80年代から90年代までを概観する:その3(1,842字)
2021-04-22 06:00110ptマンガの歴史においてかなり重要な作品は『DEATH NOTE』だ。なぜかというと、マーケティング的な手法において成功するということを証明したからだ。
『DEATH NOTE』は、「集英社のプロデュース」によって成功した。単にヒットしただけではなく、アニメや映画も含めて国民的なブームを起こした。ブームを起こしたのは2005年くらいだが、そこでどんな歩みがあったか簡単に振り返ってみたい。
まず、「柴門ふみインパクト」があった。1991年の『東京ラブストーリー』と93年の『あすなろ白書』がともに国民的なドラマになった。そういえば、『ちびまる子ちゃん』のアニメが国民的な存在になったのも90年のことだ。
この頃は、テレビと主題歌、そして原作マンガが三位一体となって国民的ブームを作るという神話が形成された。舞台はいずれも当時絶好調のフジテレビだった。
マンガはこの流れを無視できなくなる。佐藤秀峰による -
[Q&A]同棲についてどう思いますか?(1,687字)
2021-04-21 06:00110pt[質問]
同棲についてどう思いますか?
[回答]
ぼくは、同棲はもう流行らないと思います。少し前までは、一緒に暮らした方が経済的と思っていましたが、ここ数年で考え方がだいぶ変わりました。特に糸島に来て強く感じるのですが、田舎は住宅の費用が安く、広いスペースが確保しやすいので、むしろ家族でさえも別々に住んだ方が経済的であるとすら思います。
これから、電気カーや自動運転カーが進歩するとなると、移動の便利性は上がるので、日本国中で住環境は良くなると思います。住環境が良くなるというのは、広いところに住めるようになると思います。コロナも当然ありますが、狭い場所に多くの人が寄り集まって暮らさなくてもよくなる。そうなると、同棲はますます流行らなくなって、一人暮らしの人が増えるのではないでしょうか。
[質問]
ハックルさんの節約術を教えてください
[回答]
節約術といえるかどうか分かりませんが、物を買うと -
情報リテラシーはどうやったら身につくのか?:その28(1,744字)
2021-04-20 06:00110pt情報リテラシーを身につけるには、余裕と挑戦心が必要である。
まず、余裕を持たなければならない。余裕がない状態だと、なかなか挑戦心も持てないだろう。しかし、余裕を持ちすぎてもいけない。そこに胡座をかいてはいけない。挑戦心を失うと、とたんに夾雑物に取り囲まれ、真実を見抜く眼力を失う。そうして、情報リテラシーをも失ってしまう。
だから、だいじなのは「バランス」だ。余裕と挑戦のバランスである。常にそういう地点を探しながら彷徨することがだいじなのだ。
それは「学習」にも似ている。学習というのは、簡単すぎてはつまらないが、難しすぎるとついていけなくなる。分かるか分からないかのちょうど境目のところがいいのだ。
ある程度分かるということの余裕と、少し努力しなければ分からない、しかしその分、分かったときの喜びが大きいという挑戦と、両者が同じくらいに配分されたいい塩梅のポイントを探すことが重要となる。
そう考 -
学生に伝えたいお金のこと:その25(1,636字)
2021-04-19 06:00110pt引き続き、「新しい価値観に他人を巻き込む方法」について考える。
他人を巻き込むための神髄とも言えるのが、「隠す」だ。
隠すには、二つある。
一つは、「完全に隠す」。
もう一つは、「チラ見せ」だ。
このうち、「チラ見せ」の効果は理解しやすいが、「完全に隠す」ことの効果というのは分かりにくい。しかし、「完全に隠す」ということも、実は相手の価値観を転換させ、自分の価値観に巻き込むにはきわめて有効な方法なのである。
なぜ有効かといえば、そこで「驚き」を演出できるからだ。
「驚き」というのは、人の価値観を転換させる上で、最も重要な要素である。なぜかというと、人はそもそも、誰でも心に堅いガードがしてあって、なかなか価値の転換をはかろうとしない。人は誰でも、基本的には保守的で変化を嫌う。
しかし、そういう人間に例外的に価値の転換を促すのが「驚き」である。「驚き」は、価値の転換に際し、必ずそれに先んじて発
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