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記事 22件
  • サバンナの掟を忘れてしまった頃にサバンナはやってくる(1,899字)

    2021-07-30 06:00  
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    今、オリンピックに反対している人がいるけれども、これは相当にまずいと思う。というのも、オリンピックを楽しみにしている人も多いのだが、そういう人はたいてい目に見えない、声を上げにくい弱者なのだ。そういう弱者がささやかな楽しみとしてオリンピックの観戦を心待ちにしていた。日本人の活躍に勇気をもらおうとしていた。そういう人たちに冷水を浴びせかけているのが、オリンピック反対論者なのだ。
    『もしドラ』がヒットした2010年に『甲子園だけが高校野球ではない』という本を出すことになって、そのキャンペーンで甲子園大会が開かれている最中の甲子園球場へ行き、甲子園の前のスーパーの催事場で、中継番組のテーマ曲を歌っている西浦達雄さんと販促イベントをさせていただいた。そのとき、西浦さんがしみじみと仰っていたことが、とても印象に残っている。
    西浦さんは、毎年そこで歌を歌われているのだが、障害者の子たちがよく通るのだそ

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  • 人間はなぜ間引かれるのか?(1,926字)

    2021-07-29 06:00  
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    今回は、連載をお休みして、人間の間引きについて書いてみたい。
    「人間の間引き」はなぜ行われるのか?
    その前に、そもそも「間引き」とは何か?
    それは、「人を社会的に抹殺すること」である。直接的に殺すことではない。
    昔から、人は人を「社会的」に殺してきた。みんなで抹殺するのだ。
    なぜかというと、直接的に殺すと、周囲の人に恐怖心を与え、本人もいい気がしないからだ。最悪、殺した本人がその後で、周囲の誰かから殺される。そういう殺しの連鎖が起こる。
    しかし、「社会的抹殺」なら、周囲にそれほど恐怖を与えない。従って、殺人の連鎖も起きない。それで、間引きとしての「社会的抹殺」というソリューションが、世の中に定着したのである。
    間引きは、もちろん今もある。学校のイジメ、入試、就活、そして離婚や会社の出世争いや近所の揉め合いなど、とにかく人は至るところに「社会」と「規範」を作り、そこからはみ出したものを間引い

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  • [Q&A]東京オリンピックの開会式をどう見たか?(2,368字)

    2021-07-28 06:00  
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    [質問]
    先週火曜日の「藤本タツキさんの『ルックバック』はマンガ史に残る傑作」についての質問です。文中で「この作品のラストで、京本は藤野に比喩的な意味でのキスをする」とありましたが、それがどこを指すのか分かりませんでした。よろしければ教えてください。
    [回答]
    最後に、京本の描いたマンガが藤本に届き、それがまた彼女にマンガを描かせる――というところを「キスの暗喩」と受け取りました。
    「表現をする」ということ(マンガを描くこと)は、祝いでもあり呪いでもある。幸福でもあり、厄災でもある。それはある種、キスと似ているように思います。幸せの絶頂であり、不幸の始まりでもある。キスには、そういう多義的な意味がある。
    生まれ変わってもまた私にキスをして……というメッセージが、「生まれ変わってもまた私にマンガ(の背景)を描いて」というメッセージになった。それを受け取った京本が、四コママンガという形で隕石の

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  • 情報リテラシーはどうやったら身につくのか?:その41(1,743字)

    2021-07-27 06:00  
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    世の中には、敵を作らない人も多い。しかし、実はその人たちにも敵がいる。
    誰かというと、「敵を作る人」だ。敵を作らない人は、敵を作る人とも仲良くなろうとはしない。敵を作る人を憎み、これを排除しようとする。社会から抹殺しようとする。
    実は、「敵を作らない」というのは、一つの「戦い方」なのである。敵を社会から抹殺する方法の一つなのだ。
    20世紀後半、この戦い方が人類の――取り分け日本人のマジョリティとなった。理由は簡単で、第二次大戦の厄災を通して、「戦う」という戦い方が拒絶されるようになったからだ。日本人にはもう、「戦う」ということが許されなくなった。その代わりに、「戦わない」という「戦い方」が蔓延するようになったのだ。
    この問題は、実は人類にとっても根深い。狩猟採集時代、人々は戦争こそ起こさなかったが、それはそもそも他の部族との距離的な隔たりが大きく、戦争が起こらなかったからだ。また、それ以上

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  • 好きなことを見つける方法:その11(1,581字)

    2021-07-26 06:00  
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    守屋くんがすすめてくれた『ドカベン』を、ぼくは読み始めた。
    この日のことは、よく覚えている。どう覚えているかというと、「何も覚えていない」ということを、強烈に覚えているのである。
    気がつくと、夕方になっていた。もう帰らなければならない時間だ。
    いつの間に、これだけの時間が経過したのか?
    ぼくは、そのことの不思議さに呆然としながらも、一方で、その場をまだ離れがたく思った。その耽溺の時間から、抜け出すのに強烈な抵抗を覚えたからだ。
    それから連日(数日間)、ぼくは守屋くんの家に通い詰めた。そして、守屋くんの家にある『ドカベン』を、全部読み通した。
    ただし、全部といってもほんの数冊である。おそらく3冊ほどではなかったか。
    3冊読むのにも、ぼくは数日かかった。その頃は子供だったし、しかもマンガを読むのは初めてだったので、それだけの時間がかかったのだ。
    その間、守屋くんは何も言わなかった。嫌な顔一つせ

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  • 東京オリンピックは、すでに成功している(1,708字)

    2021-07-23 06:00  
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    これは、嫌みではなく、本心だ。そもそも、オリンピックは「祭り」だが、祭りには、「膿を出す」という機能がある。
    文化人類学に、「ハレとケ」という概念がある。「ハレ」とは「晴れの場」のハレで、結婚式や祭りなどのこと。「ケ」とは「日常」のこと。今ウィキペディアを見たら、柳田国男が編み出した言葉だと知った。さすが柳田国男だ。
    今回は、このハレとケについて、ぼくの考えを書いてみたい。
    人間には、日常生活というものがある。農民だったら、毎日畑や田んぼに行って、こつこつと仕事をするという日常。それが「ケ」だ。
    こういう日常は、とてもだいじではある一方、いろいろと問題もある。その問題とは、一言で言うなら「淀む」だ。あるいは、「固着してしまう」ということである。
    たとえるなら、カレーを煮るとき、ときどきかき混ぜないと、固まってしまって食べられなくなることだ。日常も、延々と続くと、固まって、いろいろなものが動

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  • マンガの80年代から90年代までを概観する:その16(1,814字)

    2021-07-22 06:00  
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    「ポーズ」という要素は、マンガにおいてきわめて重要だ。もちろん、絵画においても重要なのだろうが、マンガにおいてはより重要といえるだろう。
    なぜなら、マンガは「動きを錯視」させるということを、一つの大きな目的(目標)に据えているからだ。そもそも、手塚治虫がマンガを描き始めたのは、アニメを作りたいのに作れないというジレンマを解消するところからだった。
    そのため、手塚を含めた以降のマンガは、全て大元のコンセプトとして「動かしたい」という欲求がある。また、「それが適わないからせめて動いているように見せたい」と願いながら描くのである。
    そして、それを最も効果的に伝えるのが「ポーズ」だ。例えば、手塚治虫の『新宝島』の冒頭に出てくる自動車は、運転をしている主人公の姿勢が、頭を低くした前のめりのポーズになっている。
    これだけで、読者はそこに「風の動き」を感じる。風圧を感じる。ここで描かれている車はオープン

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  • [Q&A]子供も大人も見て勉強になる動画コンテンツは?(1,823字)

    2021-07-21 06:00  
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    [質問]
    文章能力の上達に関して、アドバイスありがとうございます。
    さっそく、『百年の孤独』を写経してみようと思います。
    質問ですが、写経するにあたり意識しておくことはありますでしょうか。
    [回答]
    少し面倒くさいですが、最も効果的な方法は以下のようなものです。まず、音読します。その次に、音読した音源を聞きながら写経するのです。誰かが読んでくれるのであれば、それでもかまいませんが、現実的には難しいと思うので、やはりまずは自分で朗読するといいでしょう。
    朗読し、かつ写経してみると分かると思いますが、これはある種の精神修養です。仏僧の修行のようなものですね。ですから、意識することは、「意識しない」ということでしょうか。また、最後までやり抜くこともだいじです。ですので、まずは最後までやり抜くための戦略を、きちんと練っておく必要があるでしょう。
    [質問]
    Eテレの大科学実験や白熱教室のように、子供

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  • 藤本タツキさんの『ルックバック』はマンガ史に残る傑作(2,635字)

    2021-07-20 06:00  
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    ※2021年7月20日8時41分に加筆修正しました。ジャンプラスで藤本タツキさんの書いたマンガ『ルックバック』を読んだ。すごい作品なので、この作品について思ったことを書いてみたい。
    ルックバック - ジャンププラス
    ちなみに、ネタバレありで書きます。このマンガは無料で誰でも読めるので、まずはマンガそのものを読んでからこの文を読まれることをおすすめします。
    このマンガには、マンガというもののすごいところが詰まっている。あまりに詰まりすぎていて、奇跡のような作品になっており、マンガ史上に残る傑作といっていいだろう。後代まで語り継がれることになるはずだ。
    まず、やはり面白いのが、「作者の藤本さんがマンガが好き」ということだ。マンガを研究し尽くしているので、そのオマージュに溢れている。そういう人の描くものは面白い。人は人の愛に触れると面白く感じるようにできているのだ。
    藤本さんは、マンガ愛に溢れて

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  • 好きなことを見つける方法:その10(1,683字)

    2021-07-19 06:00  
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    「好きなことを見つける方法」というのは、見方を変えれば「自分を見つける方法」といえるかもしれない。「自分探し」というものが流行して久しいが、これも言い換えれば「好きなもの探し」ということだ。みんな、好きなものを見つけるのに苦労しているのだ。
    ぼくは、昔は「自分探し」というのに否定的だった。「そんなものは探さなくても見つかるだろう」と安易に考えていた。
    しかしながら、いろいろな人に話を聞くうちに、それに悩んでいる人が少なからずいるのを知った。そして、好きなものを見つけることに苦労していない自分は、逆に幸運だったのだと認識をあらためた。
    これも言い換えると、「自分を知っている自分はラッキーだった」ということになる。
    では、なぜぼくはぼくのことを知っていたのか?
    それは、必ずしも「自分を好きだったから」ではない。ぼくは、昔も今も、自分のことが特別好きというわけではない。
    ただ、人より強いのは「生

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