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令和日本経済の行方:その35(1,722字)
2023-02-28 06:00110pt令和の日本経済には、「新しい移動」への移行が切実に求められている。なぜなら、現在の日本の移動はあまりにも成熟しているため、イノベーションが起こしにくくなっているからだ。それが、経済の停滞を招いてもいる。
例えば、在来線の速度やダイヤはもう50年も固まったままだ。つまり、成熟が極まって、変化が起きにくくなっている。
一方自動車は、電車に比べるといまだに進化はしている。50年前よりはるかに安全で便利になり、しかもスピードは増した。
それに伴って利用者も増えた。地方では、今や電車の存在感がかすんでしまい、完全な車社会が実現した。その意味で、ゆるやかに「モータリゼーション」が進化した。
しかしその自動車とて、肝心の「道を人が運転して走る」という基本的な構造やシステムは変わっていない。それのブラッシュアップをしてきたに過ぎない。
だから、人々にできるのはせいぜいが道と自動車を整備するくらいで、逆にい -
マンガのはじまり:その20(1,721字)
2023-02-27 06:00110pt岡本一平は、朝日新聞で漫画記者を始めた頃はやはり美術学校出なだけあって。きっちり整った絵を描いていた。しかし性格もあってか、次第に簡素化、簡略化されていった。もっというと「イイカゲン」になっていった。
ただしそれは、文字通りの「良い加減」でもあった。マンガにとっては余計な情報がそぎ落とされ、多くの人が読みやすく、理解しやすくなっていったのだ。それで、すぐに広範な人気を獲得していった。
そもそも、岡本一平はフーテン気質で、良くも悪くも「芯」がなかった。美術学校時代から後に妻となるかの子との愛情に溺れ、勉強も仕事もそれほど一生懸命ではなかった。
しかし「不真面目」というのではない。子どもの頃から抜群に頭が良かったので、いろんなことを器用にこなせた。それで、なんでも「一生懸命」にやるのがバカらしくなるのだろう。すぐに結論が見えてしまって、忍耐が続かないのだ。
妻のかの子は、その逆であった。情熱的 -
庭について:その19(1,886字)
2023-02-24 06:00110pt「イギリス式庭園史」を大まかとらえると、まず3代目バーリントン伯爵がウィリアム・ケントと組んで、18世紀前半にローマで見た廃墟の絵のような「庭」を志した。その「廃墟の絵」は、ニコラ・プッサンとクロード・ロランが描いたものだ。彼らは当時より100年くらい前、17世紀の画家であった。
ニコラ・プッサンは、1594年に生まれ、1665年に没す。
クロード・ロランは1604年頃に生まれ、1682年に没す。
バーリントン伯爵がローマへ留学していたのは1714年頃。つまり廃墟の絵を描いた2人はすでに亡く、しかもそこから数十年が経過していた。
彼らの絵は、荘厳なバロック様式であった。ただし、バーリントン伯爵はそこに描かれた古代ローマの廃墟に、なんともいえない「侘び寂び」のような美をみとめる。
そこで、その美を自分たちが造る庭でも再現しようと試みた。18世紀の前半から中盤にかけて、さまざまな自邸を修復する -
お金にまつわる思考実験:その17(1,462字)
2023-02-23 06:00110pt20世紀後半に世界中の経済がものすごく伸張した。数倍どころか10倍以上に膨らんだ。
それに伴って世界中の人口も増えた。よく「人口が増えたから経済が伸張した」という人がいるが、順番が逆である。まず経済が伸張し、それに引っ張られる形で人口が増えた。
ではなぜ経済が伸張したのか?
それの答えはいろいろあるが、端的にいうと「石油」のおかげである。人類が、石油の効果的な使い方を発見したのだ。
20世紀の前半に、石油を使えば膨大なエネルギーを安価に生み出せることが分かった。それによって石炭から石油へのエネルギー転換が起こった。そして、石油が生み出したエネルギーによってさまざまなものが作られ、世界中の経済が伸張した。物質的に豊かになって、人口が拡大した。
そんなふうに、石油の力は絶大だった。ただし、石油そのものは昔からあった。それこそ紀元前の書物にも、その存在は「燃える水」として記されている。
ただ、扱 -
[Q&A]映画の魅力的なダークヒーローは?(1,862字)
2023-02-22 06:00110pt[質問]
最近、『ダークナイト』を見直したのですが、やはりヒース・レジャー のジョーカーは魅力的でした。
とは言え、彼の演技に限らずジョーカーは興味深いキャラクターだと思います。
ハックルさんは、よく映画をご覧になっていますが、ジョーカー的で魅力あるキャラクターを他にもご存知でしたら教えてください。
[回答]
ジョーカーといえば「サイコパスなダークヒーロー」という感じですよね。ぼくも好きです。本来は、主人公のバットマンがダークヒーローだったのに、悪役だったサイコパスであるジョーカーの方が人気が出て、ダークヒーロー化していったのは実に面白い現象だと思います。
そこで、「ぼくが好きなサイコパスなダークヒーロー」ということを考えてみたのですが、そうなると少しありきたりですが、やはり『ゴッドファーザー』のマイケル・コルレオーネが思い浮かびます。
みんな『ゴッドファーザー』というとマーロン・ブランド -
令和日本経済の行方:その34(1,936字)
2023-02-21 06:00110pt最近、ぼく自身が「輸送」をよくしている。部屋の模様替えを頻繁に行うからだ。
その際、「トランスポート」というキーワードが頭に浮かび上がる。「これからはトランスポーテーションがだいじになるだろう」とつい思う。
「トランスポート」とは、何かをある地点からある地点まで運ぶという行為のことである。これを頻繁に行える生活が、これから主流になるのではないだろうか。
これは「住み方」とも深く関わってくる。部屋の模様替えが頻繁に、しかも簡単に行えるようになれば、それだけ住みやすさは増すだろう。
部屋に求められる要件は、朝と昼、そして夜など時間によっても違う。そうしたときに、同じ模様のままよりは違っていた方が断然いい。朝は朝用の、昼は昼用の、夜は夜用の部屋模様になっていてほしい。
そのため、家具も含めて大胆に、そして簡単に模様替え(トランスポート)できるような住環境があれば、多くの人がそれを選択するのではな -
マンガのはじまり:その19(1,551字)
2023-02-20 06:00110pt岡本一平は1912年(大正元年)にデビューすると、すぐに人気を博す。1914年(大正3年)には早くも初の単行本となる『探訪画趣』を出し、序文を漱石に書いてもらったこともあって、ヒットを記録する。
一平は1886年生まれだから、単行本を出したときは28歳だ。すでに妻子もおり、脂が乗っていた。以降は次々と単行本を出し、1929年(昭和4年)にはその名も『一平全集』という集大成を出す。これがなんと予約だけで5万部を記録し、一平の人気を決定づけた。このとき、一平43歳。
この印税で、一平は家族を連れてパリを拠点としたヨーロッパ漫遊の旅に出る。旅は3年にも及んだが、その間に日本は戦時体制が強まっていき、やがて一平も帰国を余儀なくされる。
帰国後も、一平は朝日新聞の記者として漫画を描き続けた。これは1936年(昭和11年)、一平50歳のときまで続けられる。
またこの間、小説や随筆、演劇作品などを手掛け -
庭について:その18(1,644字)
2023-02-17 06:00110pt「ピクチャレスク」とは何か?
それは、直訳すると「絵のような」という意味であるが、元々庭園について用いられた概念だ。18世紀に「イギリス式庭園」というものの価値や概念が確立され、その過程で「求められるべき庭の理想の一つ」としてピクチャレスクが定められたのである。
ピクチャレスクは、美術書にはこのように記述されている。少し長いが、全文を引用してみたい。
主にイギリスの庭園美学において用いられはじめた概念であり、文字通り「絵のような」風景を意味する。
「ピクチャレスク」はイタリア語の「ピットレスコpittoresco」を起源とするが、この語が美的範疇として特別な意味をもつようになったのは18世紀のことである。1782年に刊行されたウィリアム・ギルピンのピクチャレスクに関する著作がとりわけ重要であるが、こうした美的範疇が成立するに至った背景としてはとくに以下の2点が挙げられる。(1)「美」と「崇 -
お金にまつわる思考実験:その16(1,856字)
2023-02-16 06:00110ptお金というのは、それ自体が独特の力を持っている。それは、「集まると強くなる」というものだ。集まって大きくなったお金には、それ自体にさらにお金を吸い寄せ大きくなる力がある。
そして「出資」というのは、基本的にこの法則を利用している(保険もそうだ)。中世、新大陸に渡航するのには大きなお金が必要だった。今の日本のお金にすると10億円くらいかかった。そうしたお金は、個人ではなかなか出せなかった。そのため、渡航する人は少なかった。
しかしそこで、「多くの人が少しずつ出資すれば、10億円という金額は比較的容易に形成できる」という考え方が、徐々に形成されていった。そして、その考え方を活用して、渡航が実現できるようになったのだ。
渡航が実現できるようになると、それに伴って大きなビジネスがいくつも生まれた。特に、新大陸でしか手に入れられないものを売買して、大きなビジネスを生み出した人たちが多数現れた。そうし -
[Q&A]ハックルさんが考える「死」について(2,453字)
2023-02-15 06:00110pt[質問]
お正月に親戚の中学生と話していたとき、何気なく将来の夢を聞いたところ、「アニメ業界に行きたい」との答えでした。もちろん、中学生ですから何気なく答えただけとは思うのですが、私としてはそういう夢をだいじにしてほしいというか、どうせなら真剣に取り組んでほしいと思ったのです。
そこで質問なのですが、ハックルさんならアニメ業界に進みたいという中学生が目の前にいたとき、どのような助言をするでしょうか? アニメ業界といっても多様な職種があると思うのですが、そのときはどの職種かまでは突っ込んで聞きませんでした。おそらく、どことは決まっていない、あくまでもざっくりとした感じなのかなと思うので、いささか答えづらいかとは思うのですが、よろしくお願いいたします。
[回答]
「ざっくりとした感じ」でアニメ業界に進みたいというのであれば、それはやはり「演出」が最終目標なのではないかと考えます。というのもアニ
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