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岩崎書店の社長をすることになった(1,834字)
2016-09-30 06:00110pt4岩崎書店という出版社があるが、このたび、その社長を務めることになった。今日はそのことについて書いてみたい。
ぼくは、物心ついたときから岩崎書店というのを知っていた。それはぼくの父の父、つまり祖父が創業した会社だからだ。当時は祖父も存命だったので、その会社を経営していた。
しかし、その会社の社長になるというのは考えたことがなかった。それは、父が岩崎書店とは全く関係ない仕事をしていたので、ぼくも無関係だと思っていたからだ。
その後、いくつかの紆余曲折はあったものの、岩崎書店は父の弟である叔父が継いだ。それでも、ぼくと岩崎書店とは何の関係もなかった。ぼくは、若い頃は小説家になりたくて散々苦労したけれども、縁故を頼って岩崎書店から本を出そうとは思わなかった。それは、児童書の出版社であるからということや、縁故を頼るのが嫌だという気持ちもあったが、やっぱり全く関係ないと思っていたからだ。
しかしながら -
あしたの編集者:その15「子供にとっての『分からない』とは?」(1,636字)
2016-09-29 06:00110pt子供は「分からない」の塊だ。彼らは、分からないことをエネルギーにしながら今日を生きている。なぜ「分からない」がエネルギーになるかといえば、「分かる」ことが大きな喜びになるからだ。喜びがあるから、さまざまなことにアグレッシブになれる。ところで、子供がいかに「分かる」ということを欲しているか、端的に表す象徴的なコンテンツがある。現在、日本のほとんどの子供は、一度は『アンパンマン』にハマる。夢中になる。そして、ほぼ例外なく「卒業」していく。飽きる。大人になってからも『アンパンマン』のファンであるというケースは希だ。それは、他の子供向けコンテンツと比べても際立っている。他の子供向けコンテンツは、もう少し「卒業」する割合が低い。『アンパンマン』は、卒業率がダントツに高いのだ。ではなぜ『アンパンマン』の卒業率は高いのか?それは、『アンパンマン』への「入学率」が高いことと関係している。『アンパンマン』は -
[Q&A]感受性が豊かな人の対処法(1,057字)
2016-09-28 06:00110pt[質問]
ハックルさんは感受性豊かだとご自身で言っていたと記憶していますが変な話。感受性豊かだと背中が痒かったり蚊にさされて痒かったり痛みがともなうような際も普通の一般の常人よりもそういう感覚。刺激はあると思いますか? もし、そうなら感受性の豊か強い人はどうしたら辛い状況に対処すればいいですか?
[回答]
痛みが他の人より強いかどうか分かりませんが、人一倍いろんなことが堪える性質だったのは間違いないと思います。子供の頃は異常なくらいの泣き虫で苦労しました。何かあるとすぐ泣いてしまうんです。
でも、今思うと泣いたことは良かったと思います。そこで泣けずに溜め込んでいたら、今度は体を壊していたのではないでしょうか。やっぱり適度に発散して、言い方は悪いですが周りに迷惑をかけたり、嫌われたりすることでバランスが取れるのだと思います。
ですので、感受性が豊かな人は、その分リアクションも豊かにするのがい -
世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その37(1,965字)
2016-09-27 06:00110pt歌舞伎に「ケレン」という美的概念がある。
ケレンとは、必要以上にオーバーに見せたり、格好をつけたりすることだ。「見栄」といって、カッと目を見開いたりするのがその特徴なのだが、動きでも、遅いところと速いところの緩急をつけることで、面白さや美しさを表現している。
ケレンの特徴は、いわゆる「誇張」にあるとされているが、逆に考えると、その分要らないところを「省略」しているともいえる。むしろ、余計なものを一切削り取るからこそ、誇張する部分が美しく栄える。つまり「ケレン」とは「省略の美学」であるともいえるのだ。
また、面白いことには日本には、もう一つ、このケレンがないことをよしとする価値観もある。言葉にすると文字通り「ケレン味のない」となるのだが、ケレンが余計なところを省いて、美しい、面白いところだけを際立たせていたのに対し、「ケレン味のない」はその美しい、面白いところまでをも省いてしまう。そうして実 -
今、炎上しない方がいい(1,784字)
2016-09-26 06:00110ptみなさんは、長谷川豊氏が今、炎上しているのをご存じだろうか。
詳細を報じている記事はいくつもあるが、とりあえず概要を知りたい方はこちらをご覧いただくのがいいだろう。
長谷川豊氏はそもそも本音で議論したら社会は壊れるという大前提を忘れてるんじゃないだろうか
それを踏まえた上で、今日はネットの炎上について考えてみたい。
長谷川豊氏は、いわゆる炎上芸人だ。狙ってやっている部分もあるが、もともと喧嘩っ早く、また喧嘩上手でもあったので、天性の素養もあったのだろう。
ぼくも、かつては炎上芸でならしたことがあった。はてなでブログを書いていた時代、人の神経を逆なでするようなことをあえて言い、Twitterでも公開の場で他人に噛みついたことがあった。
そこで、何度か炎上を経験した。経験して分かったのは、炎上している間はアクセスが増えて嬉しいし、アドレナリンが出て楽しくもあるのだが、しかし得体の知れない怖さが -
台獣物語35(2,382字)
2016-09-24 06:00110pt35
演劇手法の一つに、インプルビゼーションというのがある。これは日本語だと「即興」という意味で、いわゆる「アドリブ」だ。やり方としては、役者に役柄や設定だけ与え、あとは台詞や動きなどを自由に演じてもらう。
すると、そこで役者が咄嗟にくり出した台詞や動きが、想像以上に面白いときがある。
この手法は、舞台はもちろん、映画などでも頻繁に用いられる。例えば、『真夜中のカーボーイ』という映画では、俳優のダスティン・ホフマンがニューヨークの街角を歩いているロケの本番中に、急にタクシーが突っ込んできた。そこでダスティン・ホフマンは、咄嗟に役柄のままで運転手に文句を言うのだ。
このインプルビゼーションはあまりにもリアリティがあったので、本来ならNGシーンになるはずが、そのまま映画で使われた。
映画監督のスタンリー・キューブリックなども、インプルビゼーションを重用する。ときには撮影現場で演じても -
ぼくは地図を手に入れるのが好きだったと気づいた話(2,091字)
2016-09-23 06:00110ptぼくは小説が好きなのだが、これまでは小説を読むのが好きだと思っていた。しかしながら、この年になって分かってきたのは、実は小説を読むことよりも「小説とは何か?」ということを考えることの方が好きなのではないか、ということだ。これまで小説を読んだり、あるいは書いたりしてきたのは、全てこの「小説とは何か?」ということを考えるためだったのではないか。
ぼくの読書体験として、今振り返っても人生の中で最も大きかったものの一つが、ぼくが31歳だった1999年からおよそ2年半にわたって、朝日新聞出版社が週刊のムック本として敢行していた『世界の文学』を毎週購読していたことだ。これによって、大袈裟にいえばぼくの人生が変わった。
朝日新聞出版「世界の文学」
ぼくはそれまで、文学というのは得体の知れない巨大なものだと思っていた。あまりに深く、またあまりにも広いために、一生かかっても把握しきれないだろうと観念している -
あしたの編集者:その14「『分からない』ことと『分かる』ことのバランス」(1,748字)
2016-09-22 06:00110pt前回は、「分からない」ことが人間の生きる力の源だ、と書いた。
人間は、分からないから生きる。なぜ分からないことが生きる力になるかといえば、知りたいからだ。人間は、知ることによって大きな喜びを得る。その喜びを得るために生きようとする。
それゆえ、いろいろなことが分からない子供は、頻繁に「分かる」という瞬間にでくわす。毎日が「分かる」ことの連続だ。おかげで、人生が大きな喜びに満ちている。
一方、老人の毎日は「分かる」瞬間が少ない。そのため、喜びが少なく、生きる気力も減退してしまう。
そう考えると、「分からない」ことが常に身の回りにあるというのが、上手く生きるコツだといえよう。幼い頃は、誰でも「分からない」ことが身の周りに溢れているから、わざわざ見つけに行く必要もない。しかし大人になってくると、じっとしていても向こうから「分からない」ことはやってこないので、自分から見つけにいかなければならない。 -
[Q&A]ピクサーの映像について語らないのはなぜですか?(3,799字)
2016-09-21 06:00110pt[質問]
私はハックルさんと同じ家系図で男二人兄弟の長男です。しかし最後に口を聞いたのが覚えてないくらい不仲です。家族だから仲良くなければならない必要はないと思いますが片方ではどうなんだろうかと思ってる自分がいます。ハックルさんは親御さんをかなり殴ったり恨みつらみを電話をごしに吐いて自殺騒動までおこしました。「絶縁」も出来たはずなのに一緒に旅行とか行かれるくらいにまでに。関係の修復はどうされたのか?
[回答]
いつも同じ回答で恐縮ですが、「仲良くなろうとしないこと」です。仲良くなろうとしなければ、喧嘩することもなくなりました。
[質問]
11月23日から4泊5日でセブ島を1歳の娘と妻で訪問します。ハックルさんのオススメの家族で行ける場所があれば教えてください。もしご存知なければ、今回の旅行でハックルさんならどう振る舞うか教えてください。具体的には、家族との絆を深めることや経営コンサルとして -
世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その36(1,768字)
2016-09-20 06:00110pt『宇宙戦艦ヤマト』の大ヒットを受け、日本のアニメ業界は少なくない変化を強いられる。それは、ファンの影響力をより強く意識した作り方になった――ということだ。
もちろんそれまでも、ファンはそれなりの影響力を持っていた。ただ、アニメ制作者にとって一番の指標はテレビの視聴率であり、次いでキャラクターがおまけにつけられたお菓子の売上げであった。つまり、ファンからの影響よりも、テレビ局やスポンサーの影響の方がより強かった。
しかしこの頃から、ライセンスを与えただけの「キャラクターグッズ」の売上げが無視できない大きさになってくる。特に『宇宙戦艦ヤマト』はキャラクターグッズがよく売れたため、この頃からキャラクター商品の売上げを見込んだ作り方をするようになっていったのだ。
もちろん、それ以前にもキャラクター商品はあった。その一番大きなものはプラモデルで、特に乗り物やロボットのプラモデルは男の子に大人気だった
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