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記事 23件
  • 1994:その27(1,641字)

    2024-10-31 06:00  
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    ぼくはバブル時代というのは1994年に強く影響していると思う。バブルはだいたい1985年に始まり1991年に終わる。約6年間の狂騒だった。
    そしてその終焉は、ある日突然起こったわけではない。段階的、なし崩し的にずるずると終わっていった。そのため、1994年にはまだその残像、残響、残滓というものが多数あったのだ。社会の至るところにまだまだバブル気分が居残っていた。
    それが最終的に排除させられるのが1995年である。つまり阪神淡路大震災とオウム真理教事件によってだ。ここが明確な潮の変わり目となったから、1994年はまだギリギリバブル時代だったといえなくもない。
    しかしこの頃になると経済は明らかに冷え込んでいて、特に就職戦線は異状をきたし、いわゆる氷河期世代が始まっていた。だから、その気分は高校生にももちろん伝播して、若者たちに暗い影を投げかけていた。
    その暗い影を振り払おうとして、少女たちは援

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  • [Q&A]50歳を目前に募る焦りをどうすればいいか?(1,837字)

    2024-10-30 06:00  
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    [質問]
    娘がもうすぐ大学受験で、400文字程度で書く小論文があるようです。少ない文字数ですが、ちゃんと流れを作り内容を深める必要があると思います。でもそこが難しいところでしょう。
    本人は、論旨の流れや内容の深まりを、娘は新聞の社説などを参考にしたいと言っています。親としては、知らないながらも新聞の社説よりもマシなものがあると思っています。
    ハックルさんは、400文字程度でいい見本になるような文章をご存知ないでしょうか?
    教えていただければ助かります。
    [回答]
    ぼくはよく歴史の本を読むのですが、そこでこぼれ話的にコラムが載っている場合が数多くあります。例えば『数学の歴史』という本を読んでも、「ガロアの決闘話」などがコラムとして書いてあります。ぼくはそういうものを読むのがとても好きだったので、そこだけ拾い読みしたりしていました。
    そう考えると、Wikipediaというのはとてもいいと思いま

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  • 本質的に生きる方法:その5(1,812字)

    2024-10-29 06:00  
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    本質的に生きる方法は、これまでの社会では賢者がしていれば良かった。なぜなら、これまでは愚者の社会だったからだ。
    なぜ愚者の社会だったかというと「文明」の助けがあったからだ。文明は愚者を助け、賢者をそれほど必要としなかった。それでおよそ5000年前から、どんどんと愚者が増えていったのだ。
    文字が発明された5000年前、エジプトでは愚者が増えることが社会問題化されていた。文字の発達によって、ものを覚えることができない愚者が増えたからだ。その現状を見て、ときの王様は「文字というのは悪魔の発明ではないか」と恐れおののいた。
    その後キリスト教が生まれるが、これも基本的には愚者の広がりに対する懸念をベースとしている。「この世界は悪くなり続けている」というのが、キリスト教の基本的な世界観である。つまり、愚者が増え続けているという考えだ。それをなんとか押しとどめるために、キリスト教は存在した。そんなふうに

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  • 石原莞爾と東條英機:その59(1,847字)

    2024-10-28 06:00  
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    化物と化した戦前の陸軍。その中で石原莞爾はどのような存在だったのか?
    彼は陸軍内で、誰からも文字通り一目も二目も置かれていた。いろいろな理由はあるが、やはりその独特の個性に因るところが大きい。誰に対しても一歩も引けを取らない。しかも満州事変を主導したという実績もある。
    満州事変は陸軍の「心の拠り所」だった。なぜなら、陸軍が日本の歴史を変えた最大のできごとだったからだ。陸軍が主導して、日本の未来を動かしたのだ。何より政府を、そして国民を動かした。これは陸軍の自信につながった。陸軍は政府よりも強力な指導力を持っていると証明することになったからだ。
    しかし同時に過信にもつながった。政府は頼りにならん、陸軍しか日本を救える存在はないという奢りが、後の暴走を招いたのだ。
    つまり石原莞爾は、そんな陸軍の暴走を引き越した張本人ともいえた。だから陸軍の誰にとっても一目置く存在であった。ただし上の者からは目

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  • 野球道とは負けることと見つけたり:その2(1,656字)

    2024-10-25 06:00  
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    2
    今回は、蔦文也を主人公とした5話完結のドラマの、構成について書いてみたい。
    第一話「死ねなかった男」
    蔦文也は、特攻隊員だった。
    徳島県三好市池田町の素封家の息子として生まれた文也は、何不自由なく甘やかされて育った。そのため心が弱かった。
    幼い頃から野球が得意で、徳島商業に入学すると、見事甲子園出場を果たす。その後同志社大学に進むも、折からの戦争で学徒出陣をする。そうして特攻隊員になり、出撃を命じられる。
    死の恐怖から、酒ばかり飲んで酔っ払い、数々の失態をくり返す。そうした中でも仲間たちが次々と死んでいき、いよいよ自分の番が来たかと思ったそのとき、不意に終戦を迎える。
    そうして彼は、とうとう死ねなかった。特攻隊では、隊員たちに葉隠の一節「武士道とは死ぬことと見つけたり」をくり返し説いていたが、蔦はとうとう死ぬことを見つけられなかった。
    第二話「サインを出せなかった男」
    終戦後、蔦はすぐに郷

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  • 1994:その26(1,698字)

    2024-10-24 06:00  
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    1980年代後半に「おニャン子クラブ」ブームが到来する。これはぴったりバブル経済とシンクロしている。
    おニャン子クラブは1985年4月にデビューし、1987年9月に解散する。たった2年半の活動でしかなかった。しかし時代に強烈な爪痕を残した。
    おニャン子クラブは『夕やけニャンニャン』というテレビ番組を母体としている。この番組に出演していた女子高生を主体とする女の子たちのグループがおニャン子クラブだ。
    『夕やけニャンニャン』は、『オールナイトフジ』のスタッフが夕方の帯番組枠(月〜金の17時〜18時)を任されたことで始まったテレビ番組だ。企画主旨は、『オールナイトフジ』のテーマが女子大生だったからこっちは女子高生にしよう――という非常に安直なものだった。
    当時まだ女子高生ブームは来ていない。誰も女子高生などに注目していなかった。もちろん一部好事家の間ではセーラー服が性的アイコンとして定着してはい

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  • [Q&A]仕事を抱え込む人の対処法(1,990字)

    2024-10-23 06:00  
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    [質問]
    ハックルさんがときどき言及される「自分はいない」という感覚について、もう少し詳しく説明してください。
    [回答]
    「自分はいない」というのは、「精神的な自分」「内面の自分」「魂」というものは存在しない――ということです。それは架空の物語です。お金のようなものです。
    お金は、それ自体に価値はありません。しかし社会のルールの中で、食べ物や道具など、価値のあるものと交換できるという仕組みになっています。そういう架空の物語を構築しているのです。これを「共同幻想」といいます。
    「自分」も同じで、脳の中で自分がいるということにしているだけなのです。そういう幻想です。
    なぜそういう幻想を持つかというと、都合がいいからです。どう都合がいいかというと、記憶するのに都合がいいのです。
    例えば自分が相手に肉をあげるということをしたとき、自分や相手の境界があいまいだと、その行動は非常に覚えにくい。しかし自

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  • 本質的に生きる方法:その4(1,850字)

    2024-10-22 06:00  
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    なぜ釈迦をはじめとして偉大な人たちが偉大な発見を過去に何度もしているのに、それは広まらないのか?
    それは、人間を含むあらゆる生き物の生存は、「賢者」よりも「適者」の方が有利だからだ。適者生存の法則である。これが人間界でも成り立っている。
    そして人間界において、「生存適者」とは幸か不幸か「愚者」なのである。だからこの社会は愚者ばかりなのだ。
    ではなぜ愚者の方が生存に適しているのか?
    それは「文明」の存在と深い関係がある。
    人間は元々文明なしで生きていた。そのときは賢者の方が生存に適していた。そのため適者が多かった。
    しかしあるき賢者の一人が文明を発展させた。例えば石器を作った。すると、それは愚者を強力に助けた。そうして社会の生産性が上がった。人類全体の生存確率も上がった。
    その結果、愚者の側からの強烈な「文明発展圧力」が強まった。なぜなら文明が発展することで得をするのは賢者よりも愚者の方だか

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  • 石原莞爾と東條英機:その58(1,885字)

    2024-10-21 06:00  
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    皇道派は荒木貞夫と真崎甚三郎を旗頭としていた。荒木も、元々は一夕会の領袖を務めるなど、統制派の永田鉄山とは非常に近しい関係にあった。永田鉄山が荒木を引き立て陸軍大臣に仕立て上げたという経緯さえあった。
    ところが荒木は、陸軍大臣になってからは、腐敗した閣僚や経済人を一掃し、陸軍が中心となる国家を作ろうという考えをこじらせ、天皇の名の下、武力によるクーデターを起こし自分が首相になろうと目論むようになった。この考えに多くの若手将校が感銘を受け、皇道派が形成される。
    そうして皇道派に与しない、静かなるクーデターを志す永田や東條らとの間に亀裂が生じた。それがやがて「統制派」という派閥の形成を促す。統制派は必ずしも積極的に派閥を組んだわけではないが、皇道派に与しないものは自動的に統制派と見られるような状況が生まれたのだ。
    そして統制派の領袖はもちろん永田鉄山だった。永田鉄山と彼に近しい者たちが、荒木や

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  • 野球道とは負けることと見つけたり:その1(1,451字)

    2024-10-18 06:00  
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    I found that the path of baseball means losing.
    大谷翔平選手の活躍や、その前のイチロー選手や松井秀喜選手の活躍、あるいはWBCでの三度の優勝などで、世界野球における日本の地位はいやがうえにも向上した。野球は、他のメジャースポーツに比べると人気そのものは下降気味ではあるものの、それでもまだまだ十分メジャーで、アメリカを中心に世界中にファンがいる。
    そこでこの連載では、そんな世界的スポーツで特異な地位を築いてきた「日本野球」とは何なのか――ということについて考えてみたい。それを通じて、日本の文化や歴史、あるいは世界とのかかわり、そして何より野球というものについて描けたらと思う。
    これを書こうと思ったきっかけは、Netflixのドラマ『極悪女王』を見たことだ。女子プロレス――つまり女性がするプロレスというのは、1980年当時日本にしかなかった。アメ

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