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明日のライティング術:第22回(1,781字)
2019-04-11 06:00110pt次に、ライティングの構造における「仮説」の役割について見ていきたい。
文章は、まず導入で引きつけた後に、問題提起でメインとなるテーマを提示する。このとき、そのテーマは読者にとっても興味があるようにするのはもちろんのこと、自分にとっても興味があるようにする。そうして、自分の熱意もそこに込める。その上で、今度は仮説を提示する。
仮説というのは、一つの結論でもある。推理小説でいうなら、探偵が「犯人はあなたです!」と宣言するようなものだ。つまり、文章に強い方向性を示すものである。
仮説の「作り方」については、ここまで見てきた。そこでここでは、文章の構造における第3段階の「仮説」は、第2段階の「問題提起」をどう受け継ぎ、第4段階の「検証」にどう受け渡していくか――ということについて詳しく見ていきたい。
仮説というのは、作者が最も読者に伝えたいことである。その意味で、それは一つの「結論」といってもいい -
明日のライティング術:第21回(2,358字)
2019-04-04 06:00110pt3の「エコロジカルな関係を構築する」というのは、1の「読者の利益に資する」、2の「作者の利益に資する」という両者を上手くバランスさせることである。そして相互補完的にさせるということだ。問題提起においては、その部分を特に留意しなければならない。
では、どうすれば両者をバランスできるか?
ここに、一つの目指すべきポイントがある。それは、問題提起をすることによって、読者の興味を喚起するとともに、作者の興味・関心の本質をも掘り下げていくということだ。そして、それは「議論」に近い。つまり問題提起においては、そこを議論の場――とりわけ「自分内議論」の場とすることが重要なのだ。
では、「自分内議論」とは何か?
その前に、まずは「議論」について見ていきたい。
「議論」というのは、人間の思考にとってはきわめて有効なソリューションだ。それは、相手の意見を聞くことによって考えが深まる場合があるからというのもある -
明日のライティング術:第20回(2,239字)
2019-03-28 06:00110pt次は「問題提起」である。
「問題提起」とは、言い換えるなら作者の「言いたいこと」である。ライティングは、基本的には作者に言いたいことがあるから書く。
作者以前に、そもそも人には基本的に「言いたいこと」がある。それは人間の本能に根ざしている。なぜなら、人は人に何かを伝えることで生活を向上させてきたからだ。
例えば太古の時代、村人の一人が「狼が村を襲いに来る」という情報を得たとき、それを自分だけが独占して一人で逃げるのではなく、村人と共有してみんなも逃した方が利益が大きかった。
あるいは、誰かが稲作の技術を向上させたときにも、自分だけがその情報を独占するより、村人みんなに伝えて全体で稲作の技術を向上させていった方が最終的には利益が大きくなった。
そんなふうに、太古の時代から「誰かに何かを伝えること」は、直接的にも間接的にも自分の利益に資していた。だから人類は、基本的に伝えたい欲求を持ち、またそ -
明日のライティング術:第19回(2,240字)
2019-03-21 06:00110pt1ここからは、ライティングの「構造」について、順を追って見ていく。
まずは「導入」について。
文章の導入は、いつも「読者を引き込むため」にある。というのも、文章はいつでも読み飛ばされる恐れがあるからだ。途中で読んでもらえなくなる危険性がある。
それを避けるには、まず導入部分で読者を惹きつけなければならない。その後の内容に期待を持たせなければならない。そうした意味で、きわめて重要なのだ。
小説の評論家は、よく「小説の価値はほとんど冒頭に現れる」という。実際、冒頭について論じられるケースが少なくない。そのため、有名な小説の冒頭だけを集めて解説した本やインターネットサイトもあるくらいだ。
だから、文章の導入について学ぶのは比較的簡単である。まずは、いろんな小説の冒頭部分を読むのだ。そして、それがいかにすぐれた導入なのか、解説を読んでもいいし、自分で考えてもいい。とにかくそこから学んでいく。そうする -
明日のライティング術:第18回(1,930字)
2019-03-14 06:00110ptここからは、ライティングの「構造」について見ていきたい。
ライティングをする際、「構造を知る」というのは不可欠のことだ。なぜなら、構造を知ると文章が強くなる。文章が強くなれば、その分魅力が増す。リーダービリティが高まり、読者に与えるストレスが軽減される。
もちろん、読者にストレスを与えないことが、必ずしもいいライティングとは限らない。激辛ラーメンのように、ときには強いストレスを与えた方が、かえってお金を払ってもらえる可能性が高まる場合もある。
それでも、基本的にはストレスの強いもの――辛すぎたりするものは敬遠される。それ以上に、シンプルに美味しいものの方が、多くの人が好む。
だから、文章もシンプルに構造の強いもの――分かりやすくリーダービリティの高いものが、多くの人に喜ばれる。そのため、文章の構造について、知っておいて損はないのだ。
では、文章の構造とはどのようなものか?
それを知るには、 -
明日のライティング術:第17回(1,956字)
2019-03-07 06:00110pt連想というのは、対になるものを探すのが一つの道筋となる。なぜなら「2」というのは人間にとって極めて特別な数字だからだ。
現実世界は、「男」と「女」の2種類の性別があることをはじめ、二元論的な考えを持つような「きっかけ」であふれている。1から9の一桁の数字には、古来よりどれも象徴的な意味合いがあるが、中でも2は、1と並んで最も重要なものの一つなのである。
これはけっして極端な物言いではなく、どんなものにも「対」になる概念はある。それゆえ、対義語辞典などというものも成り立つのだ。何にでも「反対」がある。
そのため、もし何かを連想するときには、積極的に対になるものを探すといい。そうすれば、そこから一つの道筋が見出され、仮説の構築に結びつく場合が多い。
以上、見てきたように「クイズ問題」というのは、仮説を構築するためのヒントに満ちている。だから、クイズ問題に習熟することで、仮説の構築力はぐっと高ま -
明日のライティング術:第16回(1,878字)
2019-02-21 06:00110pt続いては、三の「類似」である。
人は、あるものから何かを連想するとき、それと似たものを連想する傾向がある。なぜかといえば、「似ている」というのは人間にとってきわめて重要な概念だからだ。
まだ科学が発達していない頃、人間は食べ物を探す際、それが毒か否かを判断しなければならなかった。あるいは、食物以外の危機に出くわしたときにも、それが危険かどうかを判断しなければならなかった。
例えば、人間が初めて虎に出くわしたとき、虎はもちろん危険な動物だから、逃げなければならない。知らないものに対して警戒するということはあるにせよ、もし虎が「自分が知っている危険な動物に似ている」という状況があれば、そのセンサーはさらに敏感に作動することになる。
もしライオンの危険性をよく知る人物が生まれて初めて虎に出くわしたなら、間違いなく「危険だ」と判断でき、いち早く逃げられるだろう。なぜなら、虎とライオンはとても似てい -
明日のライティング術:第15回(2,336字)
2019-02-14 06:00110ptクイズ主題パターンの四つ目は「連想」だ。以前には、そのものズバリの名前がついた「連想ゲーム」というクイズ番組もあったが、これに限らず連想は、クイズ出題における一つの鍵となっている。
なぜなら、連想はクイズ問題においてきわめて重要な役割を果たすからだ。
例えば、これまで見てきた「二カ国語を話せる人をバイリンガルといいますが、では三カ国語を話せる人のことを何というでしょうか?」という問題も、「バイリンガル」や「トライアングル」という言葉から上手く連想すれば、「トリリンガル」という答えに辿り着くことができる。あるいは、「上は洪水、下は大火事、これなあに?」というなぞなぞにおいても、「洪水」から「水」、「大火事」から「火」という言葉を連想し、またそこから「お風呂」を連想しなければ答えには至らない。つまり、連想が解答の鍵になっているのだ。
このように、あらゆるクイズにおいて「連想」は一つの「前提」と -
明日のライティング術:第14回(1,918字)
2019-02-07 06:00110pt1960年代に、医学が急速に進歩した。その結果、乳児――特に男児の死亡率が劇的に下がった。
それまで、男児は女児に比べると死亡率が高かった。また、乳児そのものもたくさん死んだ。おかげで、成人するのは男性よりも女性の方が多かった。この世の男女比は、ずっと男性より女性の方が多かったのだ。
取り分け、戦争が起きると多くの男性が死んだ。おかげで、男女比はますますアンバランスになった。元々女性が多いところに男性がたくさん死ぬものだから、女性の比率がとても高くなったのだ。
おかげで、戦中や戦争直後は結婚できない女性がとても多かった。一夫一妻制を敷く以上、余るのは必ず数の多い方――つまり女性であった。
そのため、こと結婚市場においては、男性が圧倒的に有利な立場にあった。男性に選ぶ権利があり、女性は選ばれるのを待たなければならなかった。
選ばれないと、一生独り身として過ごし、当時の社会としてはひどく惨めな -
明日のライティング術:第13回(2,002字)
2019-01-31 06:00110pt仮説というのは、いくつかの事実を組み合わせて作る「積み木」のようなものだ。もろくても構わないが、これまでにないような「新しい形」が構築できていなければ価値がない。
そして、その形は意外であればあるほど価値が高まるだろう。また、「形としての納得感」も必要だ。先ほど「もろくても構わない」と述べたが、一定の安定感は必要だし、何より「鑑賞に耐えうる美しさ」は備えていなければならない。
そもそも仮説は、ある種の美しさがないと成立しない。その美しさとは「アハ感」の持つ会館ともつながる。見るものを納得させる説得力である。それがあれば、仮説として成立するし、価値も高まる。
ところで、ぼくは長年「男と女の立場の違い」というものについて考えてきた。特に、「現代の女性上位」について考えていた。
それを考えるようになったのには、一つのきっかけがある。それは、ぼくが若い頃(80年代)に、モテない男性が「アッシー」や
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