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記事 26件
  • 台獣物語28(2,059字)

    2016-07-30 06:00  
    108pt
    28
     夜、施設の西端にある住居棟の、居室のベッドに横たわりながら、エミ子はいろいろなことを考えていた。
     エミ子の居室は、ベッドこそ二段ベッドが左右に二つの合計四床あったものの、同居者はいなかったので、エミ子は一人で寝ていた。
     部屋の左側にある二段ベッドの下段の一つに寝転がりながら、エミ子はあえてカーテンを開けたままにして、窓の外をぼんやりと眺めていた。
     隠岐の島は、湿度こそ高いものの、米子とは違って自然が豊かなので、温度はぐっと低かった。真夏であるにもかかわらず、窓を開けていれば夜は冷房が要らないほどだ。
     網戸の外からは、賑やかな虫の音が聞こえてきていた。窓は西側に向かって開いていて、すぐが下り斜面になっているので、そのまま海まで見通すこともできる。
     今日、エミ子は初めて自分やぼく以外のヲキやトモと出会った。正確には、朋美や耀蔵には会ったことはあるものの、彼らは自分たちがヲキや

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  • 相模原の事件の犯人にあったであろう二つの正義(1,850字)

    2016-07-29 06:00  
    108pt
    相模原の障害者施設で大量殺人事件があった。
    今回は、これについてのぼくのとらえ方を書く。
    まず、犯人には「正義感」があったのではないかと見ている。なぜかというと、正義感は大量殺人の大いなる動機付けとなるからだ。人は、怨恨だとなかなかたくさんの人を殺せない。そもそも、多くの人を憎むというのも大変なことである。
    それに比べると、正義感というのは大量殺人につながりやすい。その最も有名な例がヒトラーだろう。ヒトラーは、徹頭徹尾正義感に突き動かされて行動していたが、その結果が未曾有の大量殺人を招いた。ヒトラーに限らず、多くの兵士が戦争でたくさんの人を殺せるのは、彼らに正義感があるからだ。正義感は、普通の人をいともたやすく殺人鬼に変貌させることができるのである。
    今回の事件も、ぼくは普通の人が正義感にとらえられたことによって殺人鬼に変貌したものと見ている。
    そもそも、一時に十人以上を銃以外の凶器で殺害

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  • あしたの編集者:その7「アマ語とは何か?」(1,708字)

    2016-07-28 06:00  
    108pt
    編集者は、プロ語とアマ語を話さなければならない。作家の話す「プロ語」を聞きつつ、彼らにアマ語(アマチュアからの言葉、欲求)を伝えなければならない。このとき、気をつけなければならないのは、編集者は基本的にプロ語を話す(プロと話す)ことの方が多い、ということだ。編集者といえども、読者と話す機会は滅多にない。また、読者と話しても、必ずしもそこで実りある意見を得られるわけではない。マーケティングの世界ではよくいわれることだが、顧客は基本的に彼ら自身の欲求を知らない。また知っていても、それを意識化したり、言語化したりすることが非常に苦手である。それゆえ、例えば女子高生に「どんな携帯電話がほしい?」と聞いても、彼らは既存の機能しか応えられない。そのため、新商品、あるいは新機能を開発する際には、全く役に立たないのだ。そこで編集者は、アマ語を話すときには、彼らの言葉を直接聞くのではなく、心の声を聞かなけれ

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  • [Q&A]人から強く言われないためにはどうすればいいか?(1,770字)

    2016-07-27 06:00  
    108pt
    [質問]
    社会人必須項目。「報告」「連絡」「相談」いわゆる「ホウレンソウ」に苦手意識があります。頭の中では連絡しないといけないだろうなこれはしたほうがいいかな~、と思っていても実際億劫になってためらったり「そんなことで連絡してくるな。自分で考えたら
    分かるだろう?」とか勝手に嫌なトラウマイメージ。「叱られたら嫌だな」「言う必要なくね~」「なんとかなるっしょ」「ごまかしちまえ。」自分の中の悪魔がささやいて勝手な自己判断したり人見知りを言い訳にしたり面倒が勝ったりで結局、不安にかられたり後々、雲行きが怪しくなる怒られるのがオチが多かった気がします。今まで。どうすれば苦手意識が消えて円滑になりますか?ミスが減ると思いますか?
    [回答]
    この場合は、「ホウレンソウ」が苦手というより、自分に都合の悪いことを隠そうとしているだけですね。なぜそうなのかというと、相手への敬いの気持ちがないからです。だから

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  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その29(1,921字)

    2016-07-26 06:00  
    108pt
    一九六〇年、『西遊記』でアニメの制作現場に直に触れた手塚治虫は、翌年の一九六一年、マンガ工房を拡張する形で、自前のアニメスタジオを創設する。これが虫プロであった。
    虫プロは、創設時はいくつかの実験的なフィルムを単発で作っていたが、一九六三年、日本で初めての三〇分テレビアニメシリーズである、『鉄腕アトム』を制作する。
    これが、爆発的なヒットを記録した。視聴率も高かったが、それ以上に社会に与えたインパクトが大きかった。『鉄腕アトム』は、放送当時から現在に至るまで、日本人なら知らない者がいないくらいの、国民的な作品となったのである。
    これによって、いくつかの歴史的な流れが生まれた。
    まず大きかったのが、「三〇分のアニメを毎週作る」という制作スタイルが確立したことだ。
    それまで、アニメ制作には大きな予算と長い時間とが必要とされるということが常識だった。ところが虫プロは、その常識を覆した。少ない予算

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  • ぼくは恐怖が苦手である(2,126字)

    2016-07-25 06:00  
    暑い夏が来て、恐怖の季節になった。日本では、夏といえば怪談がつきものだ。ホラー映画を見に行く人も多いし、お化け屋敷も人気である。
    そんな中、ニコ動でもホラー特集をくり広げている。
    山奥のフル旅館「お宿ニコニコ | niconico
    ニコ動のファンは若者が多いから、きっと若者もホラー好きが多いのだろう。
    ところで、タイトルにも書いた通り、ぼくは「恐怖」が苦手である。
    といっても、怖いのが嫌いなのではなく、怖がることができないのだ。怖いと思うことがほとんどないのである。
    僕は、必ずしも恐怖の感情が欠落しているわけではないが、そう思うことが人より少ない。特に、お化けの類いがからきし怖くない。生まれてから一度もお化けを怖いと思ったことがない。
    だから、お化けの話でみんなが盛り上がっているときに、全然ついていけなくて非常な疎外感を味わう。ぼくにとっては、皮肉にもその方が恐怖である。みんなと話が合わな

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  • 台獣物語27(2,328字)

    2016-07-23 06:00  
    108pt
    27
     その日の夜、夕食を終えたエミ子は、一人でお風呂に入っていた。
     宿泊棟にある女性用の共同浴場は、銭湯ほどの広さとまではいかないが、それでも一度に五人くらいは入れそうな大きさがあった。しかも驚いたことに、お湯は温泉なのだという。昔、この近くに旅館があって、そこで使っていたものを引いてきているらしい。
     その広いお風呂にエミ子が一人で浸かっていると、後から一人の女の子が入ってきた。彼女の名前は朽木碧。少し明るめに染めた長い髪の毛の、派手な顔立ちをした、胸の大きな女の子だ。朽木碧
    「あら、こんばんは」
     と碧は、エミ子を見るとニッコリ微笑んで、それから洗い場で体を洗い始めた。
     その碧に、エミ子は浴槽から身を乗り出して声をかけた。
    「こんばんは! 確か……朽木さんですよね?」
    「『碧』でいいよ。私も中三だから、同い年のはず」
    「そうなんですね! 私は、大宮エミ子といいます」
    「知ってるよ

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  • 人々は今「出版残酷物語」を求めている(1,714字)

    2016-07-22 06:00  
    108pt
    最近、出版界を舞台にしたコンテンツが目につく。
    ドラマになった『重版出来』もそうだし、ネットで連載されているそれをパロディにした『重版未定』というマンガも面白かった。
    重版未定 - DOTPLACE
    それに最近、『小説王』という小説を読んだ。これは、大手出版社(小学館がモデル)の文芸の編集部、及びそこに勤める編集者と、彼の担当する小説家の物語だ。

    小説王 - Amazon
    なぜそういう作品が目につくかといえば、ぼく自身が、出版界に興味があるからだろう。
    ぼくは今、作家をしながら編集者を始めた。だから、出版界と関わりが深く、興味があるのは当然といえば当然だ。
    ただ、それとは関係なく、「出版界が急激に縮小している」ということに、強い興味がある。その激変に、自分とのかかわりを超えた関心を抱いているのだ。
    その意味で、『小説王』は興味深い内容だった。なぜなら、これは「出版界の縮小」がメインテーマ

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  • あしたの編集者:その6「『プロの興味』と『アマの興味』」(2,037字)

    2016-07-21 06:00  
    108pt
    人間は、「自分と関係がある」と思えると、その事象に興味を持てる。
    そして、編集者は「人間の興味をひもとく」というのがだいじな仕事の一つだから、「人間の興味の本質」について知っておく必要がある。
    「人間の興味の本質」について知るためには、ある事象に興味を持っている人を観察して、「なぜこの人はこの事象に興味を持っているのだろう」と考えてみるといい。
    例えば、長嶋茂雄を観察して「なぜこの人は野球が好きなのだろう」と考える。
    あるいは、羽生善治を観察して「なぜこの人は将棋が好きなのだろう」と考える。
    考える対象は、何も有名人でなくともよい。例えば親戚の男の子が昆虫好きだったら「なぜ彼は昆虫が好きなのだろう」と考えてみる。そうすることで、「人間の興味の本質」が見えてくる。今日は、そのことについて見ていきたい。
    例えば、あなたが編集者だとして、「素数」の本を作ることになったとする。
    そうしたら、まずは

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  • [Q&A]知能を鍛えるためにはどうすればいいか?(1,786字)

    2016-07-20 06:00  
    108pt
    [質問]
    僕は、今年、32になりましたが他人から「失礼ですが、○○さんはおいくつですか?」と言われて実際の年齢より2、3歳若くサバをよみ例えば「30歳です。」と言ってしまう自分がいますひどい時期は30歳の時に「25」です。と言ってました。必ず自己嫌悪になります。僕の経験上、社会に飛び出す18歳~25歳、26歳ぐらいまでは、ある程度若さに誇りを持つのか何なのか「25歳です。」と胸を張って年齢を言えました。しかし、27歳位から年齢に対して卑下するようになりました。まだ20代だが、そこまで、言うほど若くないと。もう、いい年だと。大した能力もないのに体力や気力、肌の艶で「若者」が「無敵、正義」と思われ30歳近辺に差し掛かると世間的にその人個人の人生が終わったようなもう、可能性が無いと「何か罪を犯したかのように歳を言うのを後ろめたく感じます。」これからは「あなたの」じゃなく「次世代の」「社会の」「国

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