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記事 20件
  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その54(2,201字)

    2017-01-31 06:00  
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    『スーパーマリオブラザーズ』とは何か?
    それは、一言で言えば「日本の美的感覚の集約」である。とても日本的な作りになっているのだ。
    『スーパーマリオブラザーズ』に見られる「日本の美的感覚」は、大きく分けると以下の三つになるだろう。
    1.狭いところに詰め込む
    2.空気を読む
    3.翻訳世界のごった煮
    まず、「狭いところに詰め込む」。
    『スーパーマリオブラザーズ』(およびファミコン)には、決定的な弱点があった。それは、「容量が少ない」ということだ。メモリが足らず、情報量の多いゲームが作れなかった。
    その中で、画面がスクロールするゲームを作ったのだ。しかも、それを膨大な面数作った。そこには、容量を減らすための徹底的な工夫があった。
    日本人は、かねてから貧乏性ということがあり、物を「減らす」ということが苦手である。それよりも「足す」ことの方が好きだ。だから、黙っているとごてごてとした装飾になりやすい。

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  • 映像表現の新しい世紀:その3(1,635字)

    2017-01-30 06:00  
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    映像は、まずフィルムから始まって、その後にビデオができた。
    しかしビデオは、フィルムに比べると表現力に劣り、なかなか映画には使われなかった。ドキュメンタリーならなんとか見られたが、フィクションだと取り分けがっかりさせられた。
    ところが、その後にデジタルカメラが現れた。デジタルカメラは、出始めはビデオ以下の表現力しかなかったが、驚くべき速さでめきめきと性能をアップさせた。そうしてやがて、ビデオどころかフィルムにさえ遜色ない性能を持つようになった。というより、ルーカスが『スター・ウォーズエピソード2』のためにそれを作った。2002年のことである。
    もちろん、当時のデジタルカメラはとても高価だったが、そこからどんどん安くなり、EOS5Dでとうとう一般人でも手軽に買える値段にまで下がった。
    それによって、ゲームがチェンジした。
    どうチェンジしたかというと、個人が映像を撮り始めたのだ。集団や組織では

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  • 台獣物語51(2,645字)

    2017-01-28 06:00  
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    51
     台獣は再び変態した。これで三つ目の形態だ。ここでは仮に第三形態と呼んでおこう。
     台獣の第三形態は、象のような体躯と、鷺のような大きな羽根を持っていた。蛇のような頭の他に、背中には花のような開口部を持っていて、内部が薄赤く光って見えている。
     やがて第三形態は、羽を羽ばたかせると、ゆっくりと浮かび始めた。

     シビライザーは、その前に立ちはだかった。そして、しばらくはその第三形態を見つめていたが、やがて再び腹部から、高速タービンのような音色を響かせ始めた。
    (また撃つのか?)
     そうぼくが思った瞬間、シビライザーは再び光線を発射した。
     するとそれは、正確に第三形態の顔の部分を射貫いた。そして、再び大量の煙が湧き上がった。
    「やった……かっ!?」
     台獣は、再び白煙に包み込まれた。
     ところが、その白煙がやがて風に吹き流されると、ぼくらは驚くべき光景を目の当たりにする。第三形態の頭

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  • 作り方の発明が必要だ(1,917字)

    2017-01-27 06:00  
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    『シン・ゴジラ』を見ていて、あるいは『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』を読んでいて強く感じたのは、何かコンテンツの大ヒット作品が生まれる背景には、「新しい作り方が発明されている」ということだ。『シン・ゴジラ』の映画制作は、そのまま新しい映画制作スタイルの発明であった。平たくいうと、映画の作り方をこつこつと発明していたということである。
    これは『君の名は。』にも『この世界の片隅に』にも共通しているだろう。両作品とも作品作りを通して新しい作り方を発明できた。だから、それが作品にフィードバックし、あれだけのヒットにつながったのだ。
    あるいは近年の映画だと、『ゼロ・グラビティ』や『マッドマックス』も新しい作り方を発明していた。それが作品に反映されて、面白さが増していたし、ヒットにもつながった。
    さらにいえば、ディズニーやピクサーなども、ここ10年新しい作り方を発明し続けていた。映画を作ることそのも

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  • あしたの編集者:その31「知識におけるパンドラの箱」(1,851字)

    2017-01-26 06:00  
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    人間には、恐怖心に対して「敏感」という性質がある。恐怖心に対する免疫が低い。
    一方で、恐怖心に対する好奇心もある。恐怖心に対して好奇心を持つことは、その恐怖心の緩和にもつながるので、これは一つの循環活動になっている。すなわち、恐怖心を怖れ、同時に興味を抱くからこそ、その恐怖の解明に成功し、恐怖心を和らげることができたのである。
    この循環活動によって、人間にはさまざまな知識が集積するようになっていった。どんどんいろんなことを知るようになっていったのだ。別の言い方をすれば「文明が進歩」していった。
    これは、ある意味人間の宿命ともいえる。恐怖心に興味を持ち、それを解明することで恐怖心を和らげる循環活動を、一つの生きるエンジンとしているのだ。そのことによって、人間に際限なく知識が集積していくことは、ある意味避けられない事態だった。
    しかしそんな中で、今度は新たな恐怖心が生まれるようになった。それは

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  • [Q&A]子供と映画の話をするためにはどうすればいいか?(1.353字)

    2017-01-25 06:00  
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    [質問]
    小学校4年生の娘と『インディー・ジョーンズ/魔宮の伝説』をDVDで見ました。「面白い!」と言っていました。もう少し作品の内容について詳しく聞きたいな、と思ったのですが質問で誘導するのもどうかと思いあまり話が続きませんでした。
    子どもと映画の話をする場合、話がはずむコツのようなものはありますか?
    [回答]
    誘導してもいいと思います。
    その上で、映画に限らずコンテンツというのは一つの「ボケ」なので、ツッコミを誘導してあげるといいかもしれませんね。例えば最初の飛行機から脱出するくだり、あれはさすがにめちゃくちゃじゃないか、とか。あるいは最後のワニは、あんなに都合良く人を食べたりしないだろう、とか。
    それから、映画のトリビアを教えてあげるのもいいと思います。
    刀を持った敵に対し、インディがにやりと笑うのですが、あれは最初の作品が伏線になっているんだよと、とか。インディが旅に出るというのも

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  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その53(1,849字)

    2017-01-24 06:00  
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    『スーパーマリオブラザーズ』は、ファミコンが発売された1983年から2年後の、1985年に発売された。
    ところで、当時の商習慣の常識であれば、玩具というのは発売された直後の売上げが最も伸び、その後徐々に収束していくというものであった。また、その耐用年数もそれほど長くはなく、数年にわたって売れ続けるというものはほとんどなかった。
    また、ゲームというものもコンピューターの一種である以上、日進月歩の進化が伴うので、2年も前に発売されたハードから、新たなヒット作が生まれるとは考えにくいところがあった。
    しかしファミコンは、その常識を覆したのである。発売から2年後に、最も大きな売上げの伸びを示したのだ。
    覆せた理由は、大きく二つ。
    一つは、ファミコンというのはプラットフォームであるため、普及すればするほどそこで動くソフトの売上げが高くなる可能性がある。そのため、ソフトメーカーにとっては発売直後よりむ

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  • キングコング西野さんの絵本の売り方について(3,823字)

    2017-01-23 06:00  
    86
    キングコング西野さんの『えんとつ町のプペル』の売り方について、感想を聞かれたので書いてみたいと思います。
    1月19日に、西野さんがブログの記事を上げました。
    それは、こんなタイトルです。
    お金の奴隷解放宣言。
    その中で、こんなふうに書いています。
    少し長いですが、引用します。
    ==========
    その中で一通、とても気になった声がありました。
    それは、
    「2000円は高い。自分で買えない」
    という意見。
    小学生からでした。
    『えんとつ町のプペル』は2000円です。
    色を綺麗に出す為に特殊なインクを使っていて、使用するインクの数も一般的な作品より多く、そしてページ数も多いので、2000円という値段設定はギリギリまで頑張ったのですが、それでも2000円。
    たしかに、小学生からしてみると大金で、自分の意思で買うことは難しいです。
    実は、ここ数日、このことがずっと気にかかっていました。
    《自分は

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  • 台獣物語50(2,606字)

    2017-01-21 06:00  
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    「やった!」
     と、ぼくは思わず叫んだ。
     光線が体を貫くと、台獣は風船のように丸くなって膨らんだが、次の瞬間には一気に収縮して弾け飛んだ。直後、白い煙のようなものが立ち上がり、台獣のいた辺りを覆い尽くした。
     それは、煙というよりは雲に見えた。前に早回しの映像で見たことのある、猛烈な勢いでもくもくと湧き上がる夏の入道雲ようだった。
     ぼくらは、しばらく固唾を飲んでその雲を見守った。しかしやがて、西の方からそよそよとした風が吹き始めると、その雲は次第に押し流されていった。
     すると、それを見たエミ子がまず「あっ!」と声を上げた。
     次いで、ぼくもその姿を確認した。その霧散しつつある雲の中に、何やら黒い影が確認できたのだ。
    「生きてる?」
     ぼくは、破裂したように見えた台獣が、再び形を為して立ち上がったのかと最初は思った。ところが、雲があらかた払われて、その異様が次第に露わになってくる

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  • 映像表現の新しい世紀:その2(2,015字)

    2017-01-20 06:00  
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    2008年にキャノンはEOS 5D MarkII(以下「5D2」)というカメラを出した。このカメラが「ゲームチェンジャー」といわれている。ゲームチェンジャーとは、市場のあり方を変えるような革命的なイノベーション製品のことだ。我々に最も身近なゲームチェンジャーといえば、最近ではiPhoneだろう。その昔、ポルシェが発明した自動車や、エジソンが発明した電球なども、やっぱりゲームチェンジャーだった。
    ところで、この5D2がなぜゲームチェンジャーだったかというと、一眼レフカメラに動画撮影機能がついたからだ。そしてこの画質が、驚くほど良かったのである。当時発売されていた民生用ビデオカメラとは格段の違いがあった。美しかったのだ。
    なぜビデオカメラの画質が悪く、一眼レフカメラの画質が良かったかといえば、理由は大きく二つある。
    まず一つは、ビデオカメラのレンズというのは、基本的に本体と一体型であり、またズ

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