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記事 26件
  • あしたの編集者:その3「読みたい気持ちを掘り下げる」(1,939字)

    2016-06-30 06:00  
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    編集者として「こういう本を読みたい」というビジョンを持つにはどうすればいいのか?
    それには、まず「読みたい」ということの概念を徹底的に掘り下げることだ。「読みたいとは何か?」ということを徹底的に考えることである。
    これをすることが、日本人は一般的に苦手だ。
    「読みたい気持ちなんて人それぞれで、概念的に掘り下げられない」
    という先入観を持つ人が大勢いる。
    「読みたいか読みたくないかなんて、感覚でしかないんだよ」
    と、それを不可侵的に考える人も少なくない。
    「私は、読みたいという感覚をだいじにしたいの」
    などと、それを神聖化する人さえいる。
    しかしながら、当たり前の話ではあるのだが、何事にも理由というものがある。「読みたい」という気持ちが沸き起こるのにも、必ず何らかの理由があるのだ。それが掘り下げられないようでは、編集者として安定的に「読みたい」という気持ちを持つことができないし、またそれを作

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  • [Q&A]ゆとりを持つにはどうすればいいか?(1,046字)

    2016-06-29 06:00  
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    [質問]この前。悪い意味で「君はユトリがないね」と言われました。自分でもいつも「心に余裕がない。」「常に緊張状態。」「何かに追われている感じがする。」「他人や周りのことを考えてあげられない。」昔から切羽詰まった。瞬時の状況判断が苦手で、焦って落ち着けずテンパってしまい良い状況、状態に繋がりません。どうしたらいいでしょいか?[回答]逆説的ですが、ゆとりを持とうとしないことです。「ゆとりなんかなくていい」と思うことこそが、「ゆとりがある」ということです。ぼくはそうしてます。[質問]感覚としてですが、30年ほど前はエンターテインメントというものの魅力は、つまるところ「人間」にあったように思います。大物俳優や大物歌手という人が数多く存在していました。しかし最近は、プロデュースだったり、売り方見せ方だったりと、いかに仕組みをつくるかの方に比重がいっていると思います。こういったことに関してハックルさん

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  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その25(1,831字)

    2016-06-28 06:00  
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    さらに、大友克洋が描くこのキャラクターには、もう一つの秘密がある。
    それは、「前後の動きを想像させる」ということだ。大友克洋は、前後の動きを想像させる絵の描き方――キャラクターのポーズの付け方――が抜群に上手いのである。
    例えば、この表紙ではキャラクターである女の子の右足が浮いている。一瞬の動きを写真風にとらえたからこそこのようなポーズとなっているのだが、おかげである感情を読者に催させる効果を生み出している。
    それは、なんとも落ち着かない気持ちにさせるということだ。心をざわめかせるのである。
    なぜかといえば、人はこのようなポーズのままで静止できないため、読者はそこにある種の違和感を直感的に受け取る。そして、その違和感を埋め合わせるように、自然とその前後の動きを想像するようになるのである。
    すなわち、直前の右足が浮き上がった動きや、直後の右足が着地する動き、さらには、その後の左足が浮き上がっ

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  • 「団塊の世代とは何か?」を知ることの重要性(2,100字)

    2016-06-27 06:00  
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    イギリスがEUからの離脱を国民投票で決めた。
    ぼくは知らなかったのだが、その大きな要因の一つに「団塊の世代(ベビーブーマー)の影響」があるらしい。【EU離脱】高齢者に怒り、悲痛な声をあげる若者たち なぜ? (BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース
    イギリスでも、団塊の世代は大きな勢力を誇っている。多数決の世の中では、数の多い方が強いからだ。
    それに比べ、数の少ない若者は冷遇されている。イギリスでも、多くの若者がEU離脱に反対し、離脱することを嘆いているという。
    こうした問題は、対岸の火事ではない。日本でも、今は若者が苦しめられている。
    社会保障のうち、子供のための予算はどんどんと削減されている。幼稚園は地域住民の反対で建たないし、大学も予算が減らされ続けているためランキングは下がるばかりだ。
    その代わり、団塊の世代向けの保証はどんどん厚くなっている。それもこれも、団塊の世

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  • 台獣物語23(2,293字)

    2016-06-25 06:00  
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     オーナー室に入って、ぼくはびっくりした。そこは、想像以上に広い空間だったからだ。体育館……まではいかないが、その半分はあったろう。しかも、左右正面の三面がガラス張りで、右手には日本海、左手には弓ヶ浜半島の全景を見渡すことができた。
    「すごい!」
     と、エミ子は思わず感嘆の声を上げた。ぼくもつい声を上げそうになったが、しかしここはぐっと堪えた。正面の窓ガラスの手前に屏風のような壁があって、さらにその手前にデスクに一人の男性が座っていたからだ。
     男性は、手元のホログラムスタンドを見ているのか、顔を伏せている。
     ぼくたちは、そのデスクに向かって歩み寄った。ここまで先導してきた学が、デスクの男性に声をかけた。
    「お連れしました」
     すると、その男性が顔を上げた。

     それを見て、ぼくは意外な感じがした。それは、その男性――山神達雄が、想像していたのとは違っていたからだ。
     ぼくは、もっ

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  • 多くの人が貧困への想像力を欠落させてしまう理由(2,915字)

    2016-06-24 06:00  
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    最近、貧困についての記事がよく話題になっている。先日もこんな記事があった。
    階級社会の「想像力欠如」が貧困問題の壁だ | 「貧困報道」は問題だらけだ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
    この記事は、日本の多くの人が貧困に対して想像力が欠落している――ということについて書いてある。とても興味深いので、ぜひ読んでもらいたい。
    そしてぼくは、この記事を読んで、「ぼく自身に貧困への想像力があるかどうか?」ということについて、あらためて考えてみた。
    そうしたところ、「あるのではないか」という結論になった。同時に、そこには一つのきっかけがあったということにも気づかされた。そして、そのきっかけがあることによって、ぼくは「多くの人が貧困に対して想像力が欠落している」ということの理由も、だいたい想像できるようになったのだ。
    そこでここでは、ぼくが貧困の実相を知るようになったきっかけと、考察した

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  • あしたの編集者:その2「これからの時代に必要な編集者としての自覚」(1,754字)

    2016-06-23 06:00  
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    これからの編集者は、作家からお願いされる人にならなければならない。編集者がイニシアチブを握って、もらうのではなく、与える人にならなくてはならない。そのために最も必要なのが、与える人としての「自覚」だろう。ぼくが、作家を志していたときに知って、今でも心に残っている言葉がある。それは作家についての心構えなのだが、そのまま、今の編集者にも当てはまる。その言葉とは、次のようなものだ。「作家というのは、『もう読む本がなくなった』というところまで、既存の本を読み尽くさなければならない。その上で、読みたい本がなくなったから、仕方なく自分で書く。そういう心持ちがだいじである」編集者にも、これと同じ心構えが必要だろう。まず何よりも、「もう世の中には自分が読みたい本が一冊もない」という心境を獲得することが必要となってくるのだ。その上で、「読みたい本を読むためには、他人に任せていられないから、仕方なく自分で作る

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  • [Q&A]舛添都知事の退職についてどう思いますか?(1,764字)

    2016-06-22 12:19  
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    [質問]
    ネガティブな質問ばかりで申し訳ないです。これで終わりにします。僕は、「バカにされたり」「イジメにあったり」したことで、未だに「あいつらのせいで青春時代がダメになった」「あいつらのせいでいろいろ苦労するはめになった。」「神様はなんでこんなに不公平なんだ。」「あいつらも同じような苦労や不幸を味わえ」「天罰が下ればいい」などと、どす黒い感情が、まだ消えないであります。そういった「恨み」「怨み」「つらみ」
    「怒り」「憎しみ」などの「負のオーラを発する」ような「感情」に対してハックルさんは、どう対処したらいいと思いますか?
    [回答]
    バカにされたりイジメにあったりしたのはあいつらだけのせいではなく自分のせいでもあるので、「あいつらのせいで」というのは公平な見方ではありません。ですので、まずは公平な見方を身につける必要があります。
    「恨み」「怨み」「つらみ」はぼくにもたくさんあり、それをエネ

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  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その24(1,634字)

    2016-06-21 06:00  
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    マンガ家というのは、本能的に「絵を写実的に描きたい」「描き込みを多くしたい」という欲望があるらしい。そのため、マンガの歴史は常に、絵がより写実的に、描き込みの多い方向へと変化してきた。
    しかし、絵を写実的にしすぎたり、描き込みを多くしすぎたりすると、その記号性が失われ、読むスピードが遅くなってしまうという弊害があった。そうなると、物語が頭に入ってこなくなり、マンガとしての面白さが失われてしまう。
    それゆえマンガ家たちには、物語を読むスピードを落とさずに、絵を写実的にしたり描き込みを多くしたりしなければならないという矛盾した要件が課せられていた。
    その要件に、逆転の発想で解決を図ったのが大友克洋であった。
    彼の絵は、そもそもキャラクターも背景もともに写実的で描き込みが多く、その分の読みにくさは否めないところがあった。ところが、そこでキャラクターを簡素化するという方法ではなく、あえて背景の描き

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  • なぜ小説が必要とされていない時代に小説を書くのか?(2,207字)

    2016-06-20 06:00  
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    先日、『台獣物語』についての感想を読者の方々に質問した。
    そうしたところ、あまり芳しい評価を得られていないことが分かった。特に、このメルマガで掲載していることに違和感を感じている方が少なからずいた。あるいは、小説を細切れで読みたいくないという方もいた。
    それで、いろいろ考えたが、『台獣物語』は毎週金・土曜日の週2掲載から、土曜日だけの週1掲載に変更しようと決めた。土曜日は、本来は休載日なので、オマケ的な扱いとしてとらえていただければと思う。『台獣物語』を好ましく思っていない方々には、この形でご容赦願いたい。それでも必要ないという方々がいるなら、そのときはまた考えるつもりだ。みなさんのご意見は、コメント欄か、下記のアドレスまでお送りいただきたい。
    huckletv@gmail.com
    ところで、『台獣物語』が受けないということは、ぼくには薄々分かっていた。理由は、一つしかない。それは、『台

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