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記事 22件
  • マンガの80年代から90年代までを概観する:その58(1,680字)

    2022-06-30 06:00  
    110pt
    1970年代後半の書店というのは、今考えると信じられないくらい加熱していた。沸騰して煮えたぎっていた。
    そこは、「知のテーマパーク」のような活況を呈していた。日本の知の権利をほとんど一手に独占していた。
    1970年代、知は、書店以外に提供する場がなかったのだ。そして70年代後半は、ちょうど日本人全体が知に飢え始めていた時期だった。だから、人々が書店に殺到し始めた。それが、1970年代後半だったのだ。
    1980年代に入ると、そこに目をつける経営者が現れて、書店は大きく様変わりし始めた。続々と大型化していったのだ。
    それまでは、どこの町にも面積が数坪の小さな書店というものがあって、そこが雑誌や書籍の流通を担っていた。しかし、残念ながら在庫量が少ないために、新たな知と出会うというテーマパークとしての役割は果たせていなかった。
    だから人々は、知の楽しみを求めて、大型書店に殺到した。ぼくの場合でいう

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  • [Q&A]子供から「なぜ勉強しなければいけないの?」と聞かれたらなんと答えるか?(1,863字)

    2022-06-29 06:00  
    110pt
    [質問]
    子供から「なぜ勉強しなければいけないの?」と聞かれたら、岩崎さんならなんと答えますか?
    [回答]
    難しい問題ですね。そういう質問は、ぼくの子供からはおそらくされないだろうと思うので、イメージがしづらいということがあります。また、ぼく自身勉強など全くする必要がないと思っているので、もし子供からそう聞かれたら、「する必要はないよ」と答えて終わりということもあります。
    その逆に、「なぜ勉強しなくていいの?」と聞かれたらどう答えるか?
    この答えもシンプルで、「全くのムダだから」という答えになります。
    ぼくは、自分の人生ではそれなりに勉強しました。といっても大学受験のための勉強だけですが。受験勉強で、美術の勉強は大いに役立ちましたが、筆記の勉強は全く役に立たず、今では完全に忘れています。ぼくは芸大以外を受験しなかったので、筆記の勉強は最低限で済ませましたが、それでもムダなことをしたという徒

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  • 令和日本経済の行方:その2(1,646字)

    2022-06-28 06:00  
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    老齢になっても稼ぎ続けられるポジション。それは有り体にいってひとつしかない。経営者である。
    これからの時代は、雇用者が圧倒的に不利になっていく。それに反比例して、経営者が有利になっていく。だから、経営者になるしか生き残る道はないのだ。
    では、どのような経営者になればいいのか?
    それ以前に、そもそも「経営者」とは何か? その定義は?
    経営者の定義は、ここでは「マーケットに対して何かの物品やサービスを提供できる立場を有する」ということにしたい。だから、必ずしも会社の経営者である必要はなく、個人事業主であってもいい。
    ただし、そうなると会社・個人事業主いずれの場合でも「他の企業の下請け」は経営者とは言いがたい。なぜなら、それは「マーケット相手」ではないからだ。そのため、その取引企業との隷属関係になってしまう。
    これでは、会社員と一緒である。だいじなのは、誰かの隷属関係ではなく、マーケットと直取引

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  • 知らないと損をする世界の裏ルール:その21「曖昧さが増してきている」(1,868字)

    2022-06-27 06:00  
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    「コロンブスの卵」という諺がある。
    コロンブスが航海中、船員から「卵を立ててみろ」と言われ、底を潰してあっさり立てたという逸話を基にしている。船員は最初、「それはずるい」と抗議したが、コロンブスから「底を潰すなとは言われていない」と反論され、渋々納得せざるを得なかった。
    このことから「コロンブスの卵」は、人がなんとなく「してはいけない」と思っていることでも、実はルールとして明文化されていない場合、してもいい。むしろすると大きな利益になる――という意味で使われるようになった。
    ただ、この逸話は実際にあったわけではないらしい。後世の人が、いかにもコロンブスがしそうな話として創作したものが、いつの間にか人口に膾炙し、今ではすっかり定着してしまったというわけだ。いうならばTwitterのデマのようなものである。
    それでも、この故事は一方で、重要な真実を提示している。だからこそ、今もって使われ続けて

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  • トヨタ生産方式について考える:その24(1,639字)

    2022-06-24 06:00  
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    2
    工場は人を圧倒的に成長させる。それは、同じものを作り続けるからだ。そのため、そこで定点観測をすることができる。
    定点観測をすると、そこで「気づく」ことができる。気づきは、アイデアの閃きや改善の実行へとつながり、そこでまたフィードバックが得られる。
    このサイクル(定点観測・気づき・アイデア・実行・フィードバック)が回り始めると、人は否応なしに成長していく。だから、工場で同じものを作り続けることは、そこに従事する者を自動的に成長させる。そういう、実に偉大な教育装置なのだ。
    そう考えると、工場のシステムは成長の要である「気づき」にフォーカスを当てた方がいい。すなわち、より多く気づけるような生産体制にした方がいい。
    では、どうすればより多く気づける生産体制になるのか?
    それを考えるには、まず「気づき」とは何かということから考えたい。
    ぼく自身が、「気づき」といってまず思い出すのは、若い頃の通勤路に

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  • マンガの80年代から90年代までを概観する:その57(1,904字)

    2022-06-23 06:00  
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    思えばマンガがマンガ家を最も消耗させたのは1970年代後半だろう。小林まことの『青春少年マガジン1978~1983』という作品があるが、これは涙なしには読めない当時のマンガ家の壮絶なドキュメンタリー(回想記)なので、ぜひ読んでほしい。

    青春少年マガジン1978~1983
    このマンガを読むと、そもそも当時のマンガ家は「消耗されて当然……」という過酷な環境の中にあった。そうした環境が「前提」だったので、マンガ家も消耗されることを覚悟しながら描いていた。
    取り分け、ギャグマンガを描いていたのは20代前半の若者が多かったから、まだ分別がついていない分、そうした覚悟を持ちやすいというところがあった。後先を考えず、今この瞬間マンガに全てを捧げようとする傾向が強かった。
    1970年代後半に20代前半ということは、年齢的には1950年代後半生まれということになる。小林まことは1958年の生まれだ。197

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  • [Q&A]テレビはなぜオワコン化したのか?(1,826字)

    2022-06-22 06:00  
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    1
    [質問]
    フジテレビが19日に予定していた格闘技の大型特番「THE MATCH」(那須川天心と武尊が目玉カード)の放送を急きょ取りやめた件に関して、ハックルさんはどのように思われますか? 
    [回答]
    ホリエモンがこれについて解説していましたね。
    那須川天心vs武尊の一戦で明らかになったテレビ局の限界について解説します
    基本的にここで言われていることに同意なのでそれ以上言うことはないのですが、ぼくもこれは、はっきりと「テレビの凋落」の結果だと思います。ただし、テレビは90年代にはすでに凋落し始めていて、ぼくはそのことに気づいていたのではないか、と最近では考えるようになりました。
    90年代はまだインターネットがありません。95年に本格的に普及し始め、これが決定打となってテレビが凋落したように言われていますが、それ以前からテレビの凋落は始まっていました。ぼくは1990年代の前半あるいは半ばにそれ

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  • 令和日本経済の行方:その1(1,672字)

    2022-06-21 06:00  
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    今回から、令和時代の日本経済の行方について考えてみたい。
    まず、今インフレが起こっている。これは、アベノミクスでお金をすりまくったのだから当然といえば当然だが、それにしてもインフレになるまで相当な時間がかかった。アベノミクスが始まって10年くらいだから、それほど日本のデフレ圧力は強かったわけだ。
    また、今の日本のインフレは、アメリカのインフレに牽引されて起こったという側面もある。アメリカでインフレが起こったのは、基本的にはGAFAに代表されるテック産業のスタートアップが、世の中を決定的に変えるという事例が2000年以降に相次いだ事態を受けてのことだ。スタートアップに資金を集中した方が儲かるという考えが定着し、それによって株式市場に大量のお金が流れ込んだ。アメリカの低金利もこれを後押しした。これらは全て、スタートアップに勝ってもらい、世界経済の覇権を握るためだった。
    おかげでアメリカは、世界

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  • 知らないと損をする世界の裏ルール:その20「弱者が増えている」(1,883字)

    2022-06-20 06:00  
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    人間にはそもそも「弱者を守らなければならない」という本能が備わっている。その意味で、弱者はそもそもが強者だった。
    そして近年、この本能を利用して「弱者という強者」になる人(なろうとする人)が増えている。いうならば、弱者という強者ポジションを利用して弱肉強食社会を生き抜こうとしているのだ。実にややこしい話である。
    ではなぜ、人間においては弱者が強者になり得るのか?
    それは、大きくは子供との関係だろう。人間は、頭脳をより発達させるため、他の動物に比べ、子供を未成熟なままで生む。胎内で成熟してしまうと、情報が少なすぎて、頭脳が発達しないからだ。
    おかげで、人間には長い長い「子育て期間」が発生した。これは、他の動物にはない。他の動物は、生んだらすぐに歩き始める。子育ても、長くて1年で終わる。
    ところが人間は、歩くまでに最低1年かかる。1人で生きていけるようになるには、早くても10年かかる。人間の子

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  • トヨタ生産方式について考える:その23(1,689字)

    2022-06-17 06:00  
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    工場は、産業革命によってたまたま生まれ、広まったものだが、しかしこの工場こそが、現代文明を破格に押し上げた一番の立役者かも知れない。
    19世紀の後半から20世紀の前半にかけて、科学が急速に進歩した。それによって近代化がなされたように思われがちなのだが、しかし実際のところ、例えば蒸気機関などはもっと以前――18世紀には発明されていた。そのため、それが効果的に活用されるまでには、なんと100年もの歳月を要したのだ。
    そう考えると、必ずしも科学の進歩だけが近代化に決定的な影響を与えたのではないと分かる。それと同等かもしくはそれ以上に重要なのが、もしかしたら工場だったのではないだろうか。
    なぜなら工場では、そこに働く人々が決定的に変化するからだ。決定的に成長する。近代人として長足の進歩を遂げる。それこそ近代人に生まれ変わる。人類を近代人に生まれ変わらせた場所、あるいは装置こそ、工場だったのである。

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