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記事 26件
  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その21(2,135字)

    2016-05-31 06:00  
    108pt
    一九七三年六月、「あしたのジョー」の連載を終了させたちばてつやは、二ヶ月後、二つの連載を開始する。
    一つは、同じ少年マガジン誌で発表した『おれは鉄兵』。もう一つは、『ビッグコミック』誌で発表した『のたり松太郎』だった。
    この二つの作品は、マンガ史的にも当時の状況を色濃く反映している。
    まず後者の『のたり松太郎』が掲載された小学館のビッグコミック誌は、大手出版社が手がけた初めての青年誌であった。
    マンガは、戦後すぐは子供向けにスタートしたが、やがてその最初の読者が大人になりかからんとした一九六四年、日本最初の青年誌である『ガロ』が創刊し、大きな話題を集める。『ガロ』は、その芸術的な内容とも相まってカルト的な人気を博した。
    これに触発された小学館が、よりエンターテインメント性の強い『ビッグコミックを一九六八年に創刊し、それ以上に人気を集めていた。この頃から、マンガは単に子供が読むためだけのもの

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  • 人が間違う理由(1,647字)

    2016-05-30 06:00  
    108pt
    ものごとが上手くいかないのは、端的にいって「間違う」からだ。
    だから、間違わないようにすれば、多くのことは上手くいく。
    では、間違わないようにするにはどうすればいいのか?
    それは、深く考えることである。深く考えることができれば、たいていのことは間違わない。
    その逆に、たいていの間違いは深く考えないことから起こる。間違うときというのは、たいてい判断のスピードが速い。判断のスピードが速すぎるから、深く考えられないのである。
    例えば、仕事で失敗をしたとする。
    そういうとき、ぼくはよく「なぜ失敗をしたのか?」と尋ねる。
    すると、驚くことにたいていの人は「すみません」と答える。そうして、失敗した理由を考えようとしないのだ。
    なぜ考えないか?
    それは、彼らが「自分は失敗した理由を分かっている」と判断しているからだ。光の速さでそう決めてしまっている。
    あるいは、ぼくの「なぜ失敗したのか?」という質問に対

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  • 台獣物語16(2,827字)

    2016-05-28 06:00  
    108pt
    16
     その手帳を届ける場所は、春香が通う赤松小学校というところだった。そこで今日、午後一時から何かの集会があるらしい。
     手帳は、その集会に出席する、子供会会長の日田朋美に渡してほしいとのことだった。
     赤松小学校は、米子市の東隣、大山町にあった。
     大山町は、もとは農業と大山への観光が主な産業の、人口二万にも満たない小さな町だった。ところが、台獣が来るようになって状況が一変した。今日では、台獣の格好の見学スポットとして、日本有数の観光地になっており、宿泊施設をはじめ、たくさんの関連施設が建っていた。
     そればかりか、台獣の研究所や、それに付随した国立大学、あるいは獣道を警備するための軍の施設など、公的機関も多数設置されるようになった。そのため、観光地とは別に、学園研究都市の趣をも兼ね備えるようになったのだ。
     その中でも赤松は、エミ子の叔父の英二が務めている台獣防衛研究開発センターや、

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  • 台獣物語15(3,112字)

    2016-05-27 06:00  
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    15
     二時間後、エミ子は、皆生駅にほど近い米子市立病院の廊下のベンチに一人でポツンと座っていた。そこに、バスタオルを肩に羽織って、ジャージに着替えたぼくが現れた。それで、立ち上がったエミ子はぼくの方へと駆け寄ってきた。
    「榊くん! 大丈夫だった?」
    「ぼくは大丈夫。一応検査してもらったけど、なんともないって」
    「そう! 良かった……」
    「彼女の方は?」
     と、ぼくは飛び降りた女に子について尋ねた。
    「あの女の子は、まだショックで眠っているらしいけど、命に別状はないって。身元も分かって、今はお母さんを呼んでもらってる」
    「そうなんだ。じゃあ、ひとまずは安心だね」
     それからぼくは、エミ子を促すと廊下のベンチに並んで腰かけた。すると、エミ子の方からこう切り出した。
    「榊くん……えらいね。凄かったよ。あんなふうに飛び込んで」
    「いや、泳ぐのは比較的得意な方だから」
     と、ぼくは首をすくめながら

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  • 教養論その39「教養とは何か?」(2,033字)

    2016-05-26 06:00  
    108pt
    教養論という連載を続けてきて分かったのは、教養とは「知る」ということだ。そして教養を育むというのは、知るということは何かを理解することも含めて、多くのことを知るということである。
    ところで、「知る」という事象についての有名な言葉で、「無知の知」というのがある。この言葉は、多くの人が知っているようで実は知らない、というものの代表格のような存在だ。つまり、「無知の知」の本当の意味を知っているか知らないかで、教養のあるなしが測れるといってもいいだろう。「無知の知」は、面白いことに教養のあるなしを測るリトマス試験紙のような役割を持っているのだ。
    では、多くの人はこの「無知の知」という言葉をどのように理解しているだろうか?
    もちろん、全く知らないという人もいるだろうが、現代日本人のほとんどは、聞いたことはあるのではないだろうか。そしてそのうちの大部分は、これをソクラテスが言った言葉として理解している

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  • [Q&A]中学生の息子が片付けができるようにするには?(3,277字)

    2016-05-25 06:00  
    108pt
    [質問]
    もしドラのアメリカバージョンの進捗状況は最近記事がないので気になっています。
    [回答]
    『もしドラ』のアメリカバージョンは今のところ進んでいません。
    ここだけの話なのですが、舞台をアメリカの高校のアメフト部にしようと思っています。
    アメフトのシーズンは9月から始まるのですが、そこで9月にアメリカに取材旅行に行こうかなどと考えております。少なくともそれまでは書き始められない状況ですね。今は『台獣物語』に集中しています。
    [質問]
    人は他人に言うほど興味がないのは理解しているつもりですが、まだ自意識過剰に考えたり、変なプライドがあったり、「我」が出てしまったりします。ハックルさんは、坊主に
    することを薦めたりしますが、何故に坊主にすると「自我」を消しやすくなるのか? 和らぐのか? 坊主にするメリットを教えて下さい。また、他に自意識を無くす又は小さくする秘訣はありますか? やはり「虫け

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  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その20(1,853字)

    2016-05-24 06:00  
    108pt
    『あしたのジョー』においてちばてつやは、その作画のスタイルをどんどんと変更させていく。はじめは漫画調にスタートしたのが、どんどんと劇画調になっていくのだ。
    後年、ちばてつやは当時の作画を振り返って、「今はもう、あの頃のような絵は描けない」と述べている。だから、連載が終わってからも時折ジョーの絵を描く機会はあったが、そこで描いたものは、当時のものとは似て非なるものになってしまっているというのである。
    そういわれてみると、確かに連載終了間際の『あしたのジョー』の絵は独特だ。線がとても細密になっているのに加え、顔の表情にちばてつや特有の丸みがなくなり、きわめてシャープになっている。ちなみに、連載開始当初の表紙と最終巻の表紙を比べると、その違いは一目瞭然だ。


    これを見ると、大きく変わっている一方で、変わらないところもあるということが分かる。それはヘアスタイルの表現だ。
    主人公のジョーは、独特の

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  • 『エンピツ戦記 誰も知らなかったスタジオジブリ』を読んで(2,142字)

    2016-05-23 06:00  
    舘野仁美さん著・平林享子さん構成の『エンピツ戦記 誰も知らなかったスタジオジブリ』という本を読んだ。
    エンピツ戦記 - 誰も知らなかったスタジオジブリ
    舘野さんは、長らくスタジオジブリのアニメーターとして、主に動画チェックを務められていた方だ。そして平林さんは、ジブリ雑誌『熱風』の編集者さんである。この本は、『熱風』に連載されていたものをまとめたものだ。
    ぼくはジブリが好きである。作品も好きだが、同時にジブリにまつわるドキュメンタリーが大好きだ。映画のメイキングがあれば必ず見るようにしているし、関連書籍もできうる限り読むようにしている。特に、ジブリが映画を作る度にNHKで放送されていたドキュメンタリーシリーズは、何度も見返すほどのファンだ。
    なぜそんなにジブリのドキュメンタリーが好きかと言えば、それはぼくが「芸術の神は『作り方』に宿る」と考えているからだろう。仕事というのは作り方のことに他

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  • 台獣物語14(2,874字)

    2016-05-21 06:00  
    108pt
    14
     それから数日後の土曜日、ぼくはエミ子を連れ立って、二人で日野川の土手道のところまでやってきた。
     日野川は、米子市を南北に貫き、最後は日本海に注ぎ込む一級河川だ。河口近くだと川幅が二〇〇メートル以上にもなる、ここらでは一番大きな川である。
     そのため、両端には広い河川敷や堤防が築かれており、市民の憩いの場所となっていた。休日ともなると、散歩をしたりピクニックをしたりする人たちの姿が数多く見受けられた。
    「さて――」
     と、東山公園駅から東に歩いて一五分ほどのところにある河川敷にまで来たぼくは、エミ子に向き直ると言った。
    「今日は、ここである訓練をしようと思います」
    「訓練?」
    「そう、この前からきみを見ていて、一つ気づいたことがあったんだ」
    「なに?」
    「きみには、とある大きな弱点がある」
    「ええっ? 何それ?」
    「それは……『声』だ」
    「声?」
    「そう。きみは、さすがに優れたヲキ

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  • 台獣物語13(2,509字)

    2016-05-20 06:00  
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    第四章「青い影」
    13
     いよいよ、エミ子と度会の対決が始まった。
     ただし、ゴングが鳴っても、両者はしばらく見つめ合ったままだった。それは、エミ子はもちろんだが、度会も、初めての対戦相手に慎重になっていたからだろう。
     と、そのとき――いきなり、エミ子の方から仕掛けていった。彼女は、遠い間合いからの回し蹴りを試みた。
     それに対し、度会も動いた。寸前のところでキックを見切ると、カウンターで小さなジャブを繰り出した。
     するとエミ子はそれをまともに受けてしまい、もんどり打って転倒した。
    「――っ痛ぁ」
     その瞬間、ブース内の実際のエミ子も、背中に軽い痛みを感じたので驚いてのけぞった。
     それを見て、ぼくは慌てて言った。
    「ヘッドセットからは、軽くだけど痛みの信号もフィードバックされるから気をつけて!」
    「ええっ! それを早く言ってよ……」
     と、エミ子がぼやいた瞬間だった。立ち上がったエミ

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