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偽物の個人時代:その19(1,817字)
2023-11-30 06:00110ptここまで「偽物の個人時代」について考えてきた。そこで分かったのは、それが「偽物」である最大の要因こそ、若者における「恋愛の不足」であるということだ。
これはほとんどの人が理解できていないのだが、今、多くの若者が、恋愛不足と「それを自覚できないこと」に悩んでいる。というのも、今の若者はある種のマインドコントロールのように「個人主義」にとらわれており、深層意識では「したい」と思っている恋愛を、表層意識では「したくない」と思うようになっているのだ。
そのため、多くの若者が疑似恋愛に逃げ込んでいるのだが、そこは決して安住の地ではない。むしろ煉獄のような場所で、恋愛したい気持ちをかえって刺激され、精神のバランスを崩壊させられてしまう。ホストにハマって人生を狂わせる若い女性の急増が、そのことを端的に物語っている。
ところで、恋愛食物連鎖において、ホストは最強の捕食者である。ホストこそが百獣の王ライオン -
偽物の個人時代:その18(1,917字)
2023-11-23 06:00110pt偽物の個人時代における最大の懸案は「恋愛」だろう。恋愛の問題を解決しないまま、個人時代を始めてしまった。だから、いつまで経っても恋愛が、問題の火種としてくすぶっている。
人は、個人時代を求めている。それでいながら、恋愛も求めている。しかし、個人主義と両立できる恋愛の形が、今のところない。だから、多くの人がその板挟みに苦しめられている。その矛盾を解消しようと、あの手この手を尽くしている。
その試行錯誤が生み出した最大の文化が「オタクコンテンツ」だ。オタクコンテンツは「疑似恋愛」として機能するため、個人主義と恋愛とを擬似的に両立できた。
ところが疑似恋愛には、最終的に「疑似のままやめづらい」という欠陥のあることが、近年露呈した。それがさまざまな業界――ジャニーズ、宝塚、ホスト、フィギュアスケートなど――でさまざまな事件を起こし、今、限界を迎えつつある。
疑似恋愛は、特に女性にとってハードルが高 -
偽物の個人時代:その17(2,054字)
2023-11-16 06:00110pt「恋愛」をめぐって、今の日本は混乱している。諸外国は詳しくは知らないが、先進国は概ね似たような状況にあるだろうと推測できる。
例えばアメリカでは「インセル」が問題になっている。インセルとは、「involuntary(不本意)」と「celibate(禁欲)」を合せた言葉。つまり、「はからずも禁欲生活を強いられている者」のことで、別の言い方をすれば「非モテの若い男性」となる。
このインセルが、よく銃の乱射事件などを起こす。つまり、アメリカでも恋愛できない若い男性が苦しんでいる。これは日本と同じだ。
そうしてアメリカでも、インセルは日本のマンガやアニメ、ゲームを楽しんでいる。これはフランスやドイツをはじめとするヨーロッパの先進国もやっぱり同じである。日本のオタクコンテンツは、今や世界の先進国中で大人気なのだ。
あらためていうまでもないが、オタクコンテンツは「恋愛不調」と深い相関関係にある。若者が -
偽物の個人時代:その16(1,515字)
2023-11-09 06:00110pt恋愛は、何のために「ある」のか?
生物学的に考えると「婚姻を促すため」という答えになりそうだ。もっというと「性交を促すため」だ。恋愛があるおかげで、性交に対して積極的になり、結果として子供が生まれ、子孫を残しやすくなる。子孫を残すことは遺伝子の究極の願いなので、これは理に適っている。
実際、高齢化して子供を生めない状態になると、多くの人が恋愛意欲を減退させる。しかしながら、近年は高齢者の恋愛意欲がなかなか減退しないという傾向も見られる。子供を生めなくなる40代以降にも、恋愛をすることが珍しくなくなった。
あるいはその逆に、「若者たちが恋愛しなくなる」という現象も見られる。そのため、性交の機会も減り、少子化は加速するというわけだ。
そう考えると、恋愛というのは必ずしも「本能的にするもの」ではないということになる。俗に、人間の三大欲求は「食欲」「睡眠欲」「性欲」だといわれるが、上記2つと比べる -
偽物の個人時代:その15(1,948字)
2023-11-02 06:00110ptぼくはここ数年、YouTubeで「婚活チャンネル」を見るのが習慣になっている。婚活アドバイザーが出てきて、婚活に関するさまざまなアドバイスを提供するチャンネルだ。
なぜこれを見ているのか、最初は分からなかった。ただ興味があったから見ていたのだが、最近になって「時代の変化を確かめているのだろうな」と思うようになった。
ぼくは、婚活に「今の時代」というものが端的に表れていると考えている。もっというと、「今の時代の『変化』」が端的に表れている。
その「変化」がどのようなものかというと、「価値観の変化」だ。つまり、「結婚する時代」から「結婚しない時代」への変化である。婚活者というのは、その変化の矛盾に引き裂かれている。
つまり、意識の上では結婚したいが、無意識では結婚したくない。あるいは、本音は結婚したくないが、建前として結婚したい。そういう矛盾を抱えている。
ところで、結婚というのは、今は「ステ -
偽物の個人時代:その14(1,702字)
2023-10-26 06:00110ptこれからの10年で、「偽物の個人社会」は暴走する。いや、その暴走はすでに始まっているといっていい。
では、「暴走」とは具体的にどのような事象を指すのか?
ぼくは、それが端的にあらわれているものに「婚活」があると考えている。また、その先の「家」さらに「子育て」が暴走している。つまり、夫婦や家族を巡る状況が、混沌とし、混乱をきたしているのだ。
おそらく、偽物の個人時代において、あるいは本物の個人時代においても、最大の懸案となるのは「家族」だろう。家族の扱いをどうするのか――というのが問われざるをえないのだ。
そして、偽物の個人時代と本物の個人時代の違いは、「偽物」の方が古い家族観を引きずっているのに対し、「本物」の方は新しい家族観を構築しているということである。その意味で、新しい家族観の構築こそが、本物の個人社会の到来に欠かせない要件ということになるだろう。
ただ、いずれにしろそれはまだ先の話 -
偽物の個人時代:その13(1,683字)
2023-10-19 06:00110pt団塊ジュニアは今、急速に自信を失い始めている。きっかけは「子供たち」だ。自分たちの子供世代であるα世代を見て、長年保持してきた強固な自信が揺らぎかけているのだ。
しかしながら、それはまだ表面化していない。つまり、意識できていない。彼らはまだ、意識の上では自信がある。しかし、深層の無意識のところで、自信が微妙に揺らぎ始めているのだ。
なぜかというと、Z世代が社会に出て、α世代が成長するに連れ、言いようのない不安を覚え始めたからである。その不安とは、「自分たちの教育が間違っていたのではないか」という疑念だ。特に、「子供を支持し、応援する」という教育方針に、拭いがたい疑義が生じ始めている。
最近、ネットはもちろんリアルでも、ホワイト化社会に対するバックラッシュが起きている。つまり、ホワイト社会、リベラル社会を否定する、昔ながらの考えを持つ人が増えてきた。特に子供に対して、「もっと厳しく躾けるべき -
偽物の個人時代:その12(1,769字)
2023-10-12 06:00110pt2020年代は偽物の個人時代が花盛りだ。その中心はいうまでもなく「団塊ジュニア」である。特にネットに跋扈して日がな何かを燃やし続けている団塊ジュニアたちだ。
今、ジャニーズ事務所が大炎上しているが、その火つけ役の中心にいるのが団塊ジュニアである。性加害被害者の中心的なメンバーが団塊ジュニアだし、ジャニーズ事務所を非難する人々も団塊ジュニアだ。あるいは、ジャニーズを擁護するオタクたちでさえ、団塊ジュニアが中心である。この炎上騒ぎは、敵も味方も彼らの世代を中心に回っている。
そんなふうに団塊ジュニアは今、社会の中心にいる。ちょうど40代である彼らは、まだまだ体力があるし、気力も漲っている。だから、さまざまな社会や組織で、中心的な立場にいる。そうして、知らず知らずのうちに文化や価値の方向性を決定づけているのだ。
そうして、今のこの「偽物の個人時代」の主役も、また彼らということになる。団塊ジュニア -
偽物の個人時代:その11(1,793字)
2023-10-05 06:00110pt団塊ジュニアの親である団塊世代は、バブル崩壊で大きく挫折した経験を持ち、また「子育ても上手くいかなかった」という感慨を持っているので、自信を失っている。だから、就職や結婚をしない団塊ジュニアには強く出られないケースが多かった。
また、団塊ジュニアはその逆に、最近まで自信を持っている人が多かった。それは、子供時代はまだ自信のあった親に厳しく育てられたからだ。そこでさんざん抑圧され、「自由になりたい」と思いながら育った。
ところが、思春期になってバブルが弾けると、親が自信を失ったため、いきなり解放され、自由になった。そして、それに強い快感を覚えた。
これが、子供のときから自由だったら、状況は大きく違っていただろう。彼らは、思春期になって初めて自由を勝ち得た。だから、必要以上に自由を尊ぶようになったのだ。
また、彼らはそれを「自分で獲得した」と錯覚した。本当はバブル崩壊の副産物に過ぎないのだが、 -
偽物の個人時代:その10(1,763字)
2023-09-28 06:00110pt今の時代の流行哲学は、「人生を楽しく、賢く生きる」というものだ。そして、それを第一に実践しているのが今の若者である。今の20代だ。Z世代からα世代にかけてである。
そして、そんな若者を指示・肯定・絶賛している大人たちがいる。それは、今や大人の中の最大ボリュームともいえる「団塊ジュニア」だ。
団塊ジュニアの親である「団塊の世代」は、今や平均寿命にさしかかってかなり減ったため、発言権も自ずから小さくなった。おかげで、次のボリュームゾーンである団塊ジュニアが、今や最大勢力の時代となった。
そんな団塊ジュニアが、Z世代やα世代の生き方を肯定している。Z世代やα世代は、団塊ジュニアから見れば自分たちの子供世代に当たるが、だから応援しているというわけではない。歴史的には、親と子の世代は反発することが少なくない。団塊ジュニアとZ世代、α世代が異例なのだ。
ではなぜ団塊ジュニアが自分たちの子供世代を肯定す
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