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2023年を振り返る(1,673字)
2023-12-29 06:00110pt今回は今年最後の記事になるので2023年を振り返ってみたい。といっても、今年は特筆するようなことがなかったので、ぼくの55年の人生を2000字弱で振り返ってみようと思う。みなさんも、今年の終わりにぜひご自身の人生を2000字程度で振り返ってみてはいかがだろうか。
ぼくは1968年に生まれた。自分はこの生まれ年を気に入っている。ぎりぎり60年代にかかっているからだ。ぼくが生まれたとき、まだビートルズは解散していなかった。
生まれてすぐにアメリカに行き、ボストンのハーバード大学で2年間暮らした。もちろん当時のことは全く覚えていないが、大人になって幼年期のことを学ぶに連れ、この2年間がぼくに圧倒的な影響を及ぼしたということが分かってきた。
ぼくという人間は、そもそもハーバードなのだ。ハーバード人間である。幸か不幸か、他のハーバード人間にはこれまで1人も会ったことがない。厳密にいうと、そこにはぼく -
偽物の個人時代:その23(1,805字)
2023-12-28 06:00110pt偽物の個人時代を抜け出すためには、「自動化された言葉」から脱却する必要がある。自分の言葉で話す必要がある。
では、自分の言葉で話すにはどうすればいいか?
それには、小津安二郎の映画を見るのがいいだろう。なぜなら小津映画の出演者たちは皆、自分の言葉で話すよう演技指導を受けているからだ。そうして彼らは、「自分で自分を演じる」という術を身につけている。
では、「自分で自分を演じる」という術を身につけるにはどうすればいいか?
最も基本となるのは、「上手く話そうとしない」ということだ。小津映画の出演者たちも、上手さは全く求められなかった。むしろ、「上手さへの執着」を捨てることを求められた。上手くなろうとしないよう要求された。
そこで、上手く話さないようにするにはどうすればいいか?――ということについて考えてみたい。
それにはまず、「他人に良く思われたい」という執着を捨てることである。「他人からどう思 -
[Q&A]2023年の10大ニュースは?(1,472字)
2023-12-27 06:00110pt[質問]
健康保険証が2024年12月2日に廃止され、マイナンバーカードと健康保険証が一体の「マイナ保険証」へ移行するようです。実はマイナンバーカードは日本復活のカギの一つになるのではないかと期待しています。政府がマイナンバーカードの一体化を進めることによっていろいろなことがDXへと向かいキャズムを越えたら一気に変化が進むと思うのですが、岩崎さんはどう思いますか?
[回答]
ぼくもマイナ保険証は大賛成です。そもそも、そういう変化にはいち早く乗るようにしています。マイナンバーカードもすぐに作りましたし。
最近、マイナンバーカードを返却している人がいますが、どういう神経か分かりませんね。まあ、左翼的な価値観に基づいた過去への執着がそうさせているのだとは思いますが、そういう人から没落していく世の中になったので、いい傾向だと思います。
2023年は、そうした状況に大きな風穴があいた年でもあったと思 -
劣化する人:その4(1,773字)
2023-12-26 06:00110pt考える人と考えない人の違いはなんだろう?
ぼくは、これはほとんど「先天的」なのではないかと思う。教えられて身につくものではない。
例えば、幼い頃に逆境に遭遇した者でも、考える人と考えない人とにはっきりと分かれる。また、恵まれた環境で育ったからといって、考える人になるとは限らない。むしろ、恵まれた環境に安住し、考えなくなる人もたくさんいる。
また、過保護にされて、考えなくなる者がいる。「親の言うことさえ聞いておけばいい」となって、もともと考える力があったとしても、考えないクセがついてしまうからだ。
そのように、才能を伸ばすことはできないが、潰すことはできる。だから、最低限「途方に暮れる」という状況は子供にとって必要だろう。答えがない中でそれを手探りで見つける――そんな経験が必要となる。
そしてこのとき、道が二つに分かれるのだ。一つは、先達の真似をする人。もう一つは、自分なりのやり方を模索する -
石原莞爾と東條英機:その29(1,830字)
2023-12-25 06:00110pt2石原莞爾は1918年(29歳のとき)に陸大を卒業する。その後、1920年(31歳)に中国に転出。さらに1923年(34歳)にはドイツに留学している。陸大を優秀な成績で卒業した者は数年ヨーロッパに留学するのが陸軍のならわしとなっていたからだ。
この頃の石原は、世界を視察しながら自身の人格と思想とを育んでいた。日蓮主義に傾倒するのもこの頃だし、「世界最終戦争論」をかためていくのもこの頃のことだ。
「世界最終戦争論」とは石原の代表作のようなもので、第一次世界大戦によって兵器が超絶的に進化した結果、やがて世界は二つの国に集約される。そしてその二つの国が、さらに進化した兵器で短期決戦による最終戦争をし、最後は一つになる。以降戦争は行われない――というものである。
ここだけ見ると、その後の「アメリカとソ連の二大超大国化」及び「核兵器」や「両者のあったかもしれない核戦争」あるいは「冷戦の終結」を思い浮か -
庭について:その59(1,817字)
2023-12-22 06:00110pt金閣寺(正式名称は「鹿苑寺舎利殿」)は、全ての日本人はもちろん世界中の人が知っている超有名な存在だ。そのことは子供の頃から「常識」だったから、ほとんど何の疑いも抱いていなかったが、よく考えればすごいことである。エジプトのピラミッドや万里の長城、パリのエッフェル塔にも比肩する存在ということだ。日本の人工物でいえば、間違いなく一番だろう。
そして、金閣寺の魅力は多くの人が「建築」だととらえているが、それは違う。ためしに「金閣寺」で画像検索してみると、すぐに分かる。最初の数ページには、「建物だけ映っている写真」は一枚も出てこない。
必ずその周囲の庭が映っている。特に「池」が映っている。金閣寺は、この庭と池が込みでないと成立しないのだ。庭と池抜きの建築は、目の入っていない達磨のようなものである。
お寺の庭というものは、普通はその前に建てられた本殿から眺めて楽しむ。そうしてそこに、極楽浄土の存在を感 -
偽物の個人時代:その22(2,134字)
2023-12-21 06:00110pt「自動化された言葉」を話す人は世の中に多い。というより、自動化された言葉から完全に自由な人はひとりもいないだろう。
というのも、そもそも言葉というのは誰かが作ったものを借りているだけなので、それを使っているだけで、それこそ自動的に、借り先のニュアンスや意味合いを借りてくることになる。そうなると、自動化は避けられないのだ。
そこで、ポイントとなるのはそれを借りるときに咀嚼しているかしていないかということになる。「咀嚼」とは、具体的にいえば「言葉の定義」を腹落ちさせるということである。言葉が指し示すものを、自分の中できちんと了解している、ということだ。それをした上で話すと、自動化された言葉になりにくい。
ところで、小津安二郎の映画の特徴として、「役者が同じようなセリフを3度以上くり返す」というものがある。例えば――
A「そうかな」
B「そうだよ」
A「そうだな」
B「そうさ」
A「うん、そうだ -
[Q&A]最近お気に入りのYouTubeは?(2,092字)
2023-12-20 06:00110pt[質問]
最近お気に入りのYouTubeはありますか?
[回答]
ほんとについ最近見つけたのですが、ここはなかなかいいですね。
祖国日本 - YouTube
昭和軍人についての動画がいくつもあがっているのですが、なかなか公平性が担保されていて見応え十分です。これを見てあらためて思ったのは、石原莞爾と東條英機は「どうとらえるかが難しい」の二大巨頭であるということでしょう。
その最大の特徴は、二人とも部下に対して絶対に威張らなかったので、部下からの評判がすこぶる良かった、ということです。石原莞爾は、たとえ部下でもバカだと容赦しませんが、それでも彼の連隊にいた兵士たちにとって最高の上司だったようです。
その意味で、「上司とは何か?」ということも考えさせられますね。「最高の上司が最高のマネージャーとは限らない」というドラッカーの言葉は重たく響きます。
ただし彼らは、身内には優しかったが、外部には敵 -
劣化する人:その3(1,824字)
2023-12-19 06:00110pt劣化する人の割合はどれくらいなのだろう?
体感としては70%くらいか。ちなみに、「劣化する人」というのは、もともと能力が低い人のことではない。また、病気や老いなどによって能力が衰える人のことでもない。40歳で賞味期限が切れてしまう人のことだ。それ以降、能力が青息吐息になる人のことである。
ところで、サッカーでブラジルのロナウドとロナウジーニョは、子供の頃にモノマネが上手かった。この二人は、劣化する人の典型のように見える。一方で、まだ現役だがポルトガルのロナウドとメッシは、なかなか劣化しないように見える。この差は一体どこからくるのか?
ぼくは「修羅場をくぐってきたかどうか」ではないかと思っている。それも、子供の頃に、死線をくぐってきたかどうか。
ポルトガルのロナウドのことはよく知らないが、メッシにはそれがある感じがする。幼い頃に故郷を離れたので、相当に大変だったのではないだろうか。
だから、 -
石原莞爾と東條英機:その28(1,974字)
2023-12-18 06:00110pt石原莞爾は1918年(大正7年)、29歳のときに陸軍大学を「次席」で卒業する。「首席」は鈴木卒道であった。
完爾はもともと陸軍大学に興味はなかったのだが、士官学校卒業後に配属された連隊で、連隊長から「絶対に行くべきだ」と強く勧められて入った。
というのも、陸軍大学は誰でも行けるようなところではなかった。陸軍士官学校を卒業したエリートでも、一握りのトップ集団しか行けなかった。連隊長は、部下である完爾の卓抜した才能を見て、行かなければもったいないと思ったのだ。
このように、完爾は上司からも一目置かれるほどの才気煥発とした人物だった。特にそのカリスマ性が際立っていた。陸軍大学の首席は卒道だったが、誰もが完爾の方が能力は上だと思っていた。卒道とて、音に聞こえた秀才だったが、やっぱり「自分が完爾に敵うはずはない」と思っていた。
それで、「完爾が次席になったのは、きっと大学での態度が悪かったからだろう
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