• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 22件
  • マンガの80年代から90年代までを概観する:その24(1,855字)

    2021-09-30 06:00  
    110pt
    ここまで見てきたように、植木等と赤塚不二夫は、同じ流れを汲みながら、微妙に違う。
    植木等は、真面目なことを考えるのはやめて、人生を楽しみましょう――というものだ。
    一方の赤塚は、真面目なことを考えることも、そうでないことも、どっちも楽しみましょう――というものだ。赤塚の方が、視点がさらに一段階メタなのである。
    実際、植木は裏では真面目な人間であったらしい。一方の赤塚は、裏でも不真面目だった。
    赤塚は、どこまでも不真面目に不真面目をやった。植木は1926年の生まれで、赤塚は1935年の生まれだ。約10年の差があるが、これが大きかった。同じ虚無主義でも、解決の仕方が違ったのだ。
    赤塚は、植木的な実存主義に影響を受けながらも、そこにさらにメタ的な視点を加え、全てを受け入れる「容認主義」を提唱した。つまり、真面目に考えることも否定しなかった。
    これが、受験勉強をはじめとして窮屈な学校生活に苦しみな

    記事を読む»

  • [Q&A]自分の言葉を持つにはどうすればいいか?(2,693字)

    2021-09-29 06:00  
    110pt
    1
    [質問]
    自分の言葉を持つためには何が必要と感じますか? 何に気を付けて執筆活動をしていますか?
    [回答]
    実際のところ、物心ついたときにはすでに自分の言葉を持っていたので、「自分の言葉を持つこと」に関して気をつけているところはありません。ただ、無意識のうちでは、欲得で物事を考えないようにしているということはあると思います。常に客観的にいようしています。
    それは、「神のような視点を得たい」と思っているからでしょう。ぼくは、神になりたいとは思いませんが、子供の頃から「神のような視点を得たい」とは思っていました。これは、欲得と言えば欲得ですが、もっと深い本能のようなものでもあると思います。
    ぼくは、なんでも知りたいのです。そして、人は基本、誰でもそうだと思います。
    なぜなら、人には知れたときの喜びがあるからです。いえ、それは喜んでいることを実感できないくらいに、興奮し、熱中することです。人は誰

    記事を読む»

  • 生きるとは何か?:その3(2,022字)

    2021-09-28 06:00  
    110pt
    メタ思考は、どのように持てばいいのだろうか?
    それは、とことんまで考える――ということだ。
    例えば、子供が事故死して、悲しいとなる。
    そこで、ほとんどの人は、その悲しさに身を任せる。これでは不幸のままである。
    メタ思考というのは、その悲しんでいる自分を、客観的に見るということだ。そして「なぜ悲しんでいるのか?」と考えることだ。それが、メタ思考の第一歩だ。
    つまりメタ思考とは、「なぜ○○なのか?」を考えるということである。しかも、徹底的に考えることだ。
    例えば、「自分はなぜ悲しいのか?」と考える。すると「それは、子供が事故死したからだ」となる。そこで、今度は「子供が事故死すると、なぜ悲しいのか?」という問いを投げかける。
    ところが、たいていの人は、まずここで嫌になる。
    「そんなことを考えても仕方ないだろ! 悲しいものは悲しいんだよ!」
    「子供が事故死して悲しいのは当たり前だろ! そんなことも

    記事を読む»

  • 好きなことを見つける方法:その18(1,573字)

    2021-09-27 06:00  
    110pt
    その人の生い立ちを聞けば、その人のことが分かる。
    それは、人間というのは3歳までで、脳のOSが構成されるからだ。そして、その0Sに則って、生涯にわたって思考したり行動したりする。だから、その人のOSを知れば、その人の思考パターンや行動パターンも読めるようになる。そしてその人のOSを知るには、その人の生い立ちを聞くのが一番というわけだ。
    では、その人の生い立ちはどのようにOSに反映されるのか?
    その人の生い立ちで重要なのは、その人が「聞いた言葉」と「見た景色」である。この2つで、OSはほとんど決定される。
    では、「聞いた言葉」とは何か?
    それは、日本語や英語といった言語そのものではない。その人の近くにいる大人の――特に親の、「言葉との距離感」だ。親が言葉とどうつき合っているか――がその人のOSとしてインストールされる。
    例えば、親が言葉を丁寧に扱っていたら、その人も言葉を丁寧に扱うようになる

    記事を読む»

  • マンガ界の庵野秀明は誰か?:その2(1,666字)

    2021-09-24 06:00  
    110pt
    庵野秀明は、創作物のパロディ――すなわち二次表現を一つの技法(芸術スタイル)にまで昇華させた。
    それまでにも真似る(盗む)というのは多くの人がしていたが、だいたいは元ネタとの関連性をむしろ消そうとした。それがピカソが言う「すぐれた芸術家は真似る。偉大な芸術家は盗む」というものだ。
    つまり、偉大な人は盗んでいたのだ。しかし庵野秀明は、「盗む」のではなく「真似る」ことをむしろ前面に押し出した。それを連続させることで、初めて「偉大」の域に達した。
    これは、庵野が世界初の「オタク世代」の代表であり、浴びるようにコンテンツを吸収してきた生い立ちがあるからだろう。1950年代後半に生まれたいわゆる「オタク第一世代」は、ありとあらゆるコンテンツが生活の中に溢れる環境で生まれ、それをほとんどストレスなく吸収しながら育ってきた。
    それが、新しい芸術領域を生んだ。近年、アニメやマンガでは「異世界もの」が流行っ

    記事を読む»

  • マンガの80年代から90年代までを概観する:その23(1,942字)

    2021-09-23 06:00  
    110pt
    2
    1960年代。マンガは市民権を得る。
    そこで主役となったのが、マンガの神様である手塚ではなく、塚は塚でも赤い塚――赤塚不二夫であった。赤塚は、「1960年代に日本中に蔓延した窮屈さ」を解消する救世主として、大スターに上り詰めた。
    この新しい窮屈さは、戦前の窮屈さとは違った。
    戦前の窮屈さは、ロープで締められるような苦しさだった。つまり、肉体的な苦しさだ。
    だから、そこからの脱却は「肉体の解放」を意味した。それは、例えば手塚の『新宝島』にあるような車での暴走だったりした。
    対して、戦後のそれは真綿で首を絞められるような苦しさだった。つまり、精神的な苦しさだ。
    だから、マンガにも「精神の解放」が求められた。それに答えたのが、イヤミの「シェー」であった。
    では、このシェーは、どんな「精神の解放」を果たしたのか?
    それは、「その発想はなかったわ」という発想である。考え方の自由さを持つことだ。特に、

    記事を読む»

  • [Q&A]両親の墓についてどうすればいいか?(1,813字)

    2021-09-22 06:00  
    110pt
    1
    [質問]
    お墓について質問です。
    Aの父は次男としてうまれて、父の母のお墓は父の兄の名義で建立しました。
    費用は父がだしました。
    父の名義のお墓がありません。
    Aは両親がなくなったときに、両親用に新しいお墓を買って建てるべきなのでしょうか。
    また、お墓は樹木葬、納骨堂などもあるようですが、どのようなお墓がよいのでしょうか。
    [回答]
    分かりませんね。これは分かりません。ご両親が亡くなったときに、そのときのフィーリングで決めるのが一番いいと思います。
    そもそも、ご両親より先に自分が死ぬ可能性だってあるわけです。そういう可能性を考えないことは、生きる上ではあまり良くありません。常に今日どう生きるかを、そしてどう死ぬかを真剣に考える。そうしていたら、両親のお墓のことは後回しにしてもいいと思えるはずです。
    ジョブズはいつも、朝起きたら「今日が人生最後の日だとしたら、それでも今日予定していることをす

    記事を読む»

  • 生きるとは何か?:その2(1,653字)

    2021-09-21 06:00  
    110pt
    人間には、考えるという特性がある。これは、他の動物にはあまり見られない傾向だ。
    そして、考えない他の動物には、幸不幸の概念がない。自然のまま、無意識的に生きている。
    そもそも、人間もかつては無意識的に生きていたらしい。今でも無意識的に生きている時間はあるが、ふと意識的になる時間もある。
    人間が意識的になるのは、言葉を操るようになってからだ。特に、比喩的表現を使うようになってから、脳の機能が劇的に進化した。脳の機能というより、OSが進化した。
    比喩的表現は、脳のメモリ消費量を少なくできるすぐれたOSだった。これによって、人間の記憶量が爆発的に増大した。いろんなことを覚えられるようになると、それらを関連させることで「思考」が促進する。思考は知識を前提としているから、知識量が多ければ多いほど、思考もまた深まるのである。
    そして思考が「意識」を生み出した。意識はさらに、幸不幸の概念を生み出した。そ

    記事を読む»

  • 好きなことを見つける方法:その17(1,691字)

    2021-09-20 06:00  
    110pt
    これからの時代に、「自分を知ること」はきわめて重要だ。なぜなら、自分という人間を知っていれば、その特性を活かした生き方ができる。そして、これからの競争が激化する時代に、自分の特性を活かした生き方をすることは、大きなアドバンテージになるからだ。
    自分の生き方を決めるのは、たいていの場合において自分である。自分はいわば、自分という船の船長だ。
    その船長が、自分という船のことをよく知らなかったら、航海もままない。もちろん、海図すなわち社会を知ることもだいじだが、それ以前にまずは自分の船の性質すなわち自分という人間の性質を知り、それを海図つつき合わせることで、はじめて航海は上手くいくのである。
    それにもかかわらず、多くの人が海図の方は気にかけるが、船の方つまり自分のことはあまり気にかけない。なぜかといえば、理由は簡単で、みんな自分のことは「知った気」になっているからだ。あえて調べる必要はないと思っ

    記事を読む»

  • マンガ界の庵野秀明は誰か?:その1(1,754字)

    2021-09-17 06:00  
    110pt
    その昔、ドキュメンタリーで宮崎駿が「最近の若いアニメーターは雲のアニメを見て雲を描くからダメなんだ。おれが若い頃は本物の雲を見てアニメの雲を描いていた」と言っていた。
    これは、誰が聞いても否定しようがない考えに聞こえるが、否定した人がいた。庵野秀明だ。
    そもそも、宮崎の言う「最近の若いアニメーター」とは庵野のことを指していた。庵野はこの頃、開き直って本物の雲を見ずに雲を描くというやり方――つまりアニメのパロディを突き詰め、一つの表現技法にしようとしていたのだ。
    ただ、元々庵野は原爆実験の映像を集めて「爆発」を模写していたくらいだから、必ずしもアニメだけを見て雲を描いていたわけではない。しかし、逆に歳を重ねるほど、映像を元に二次創作するというスタイルを押し進めていった。そうして、とうとうパロディを芸術の域にまで高めたのである。
    翻って、マンガである。マンガにも、「パロディを突き詰めて表現にす

    記事を読む»