閉じる
閉じる
×
第八章「俺たちの旅」
29
隠岐の島の朝というのは、米子とはまた違った雰囲気がある。
まず、日差しが強い。海抜は米子とそれほど変わらないのだろうけど、隠岐の島には背の高い建物がほとんどないので、その分影が少ない。この道場も、屋内とはいえ、窓から差し込む光で明るさに溢れている。
次に、やっぱり湿気が多い。特に、この施設の周囲にはうっそうとした森が広がっているから、木々の吐き出す呼気のようなものが感じられて、独特のみずみずしい空気が一帯を満たしている。
しかしながら、それに矛盾するようだけど、空気は爽やかだった。米子の、都会特有のムッとした暑さはほとんどなく、冷房をつけていなくても不快さはほとんどない。
きっと、穏やかな風が絶えず吹いているからだろう。特に、この施設は急峻な丘の頂上付近に建っているから、さまざまな風が四方八方からぶつかり合って、空気を淀ませるということがほとんどないの
この記事は有料です。記事を購読すると、続きをお読みいただけます。
入会して購読
この記事は過去記事の為、今入会しても読めません。ニコニコポイントでご購入下さい。