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第一〇章「アイル・ビー・ゼア」
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ぼくたちは、碧への挨拶もそこそこに劇場を後にすると、大急ぎでエミ子の家へと向かった。
家に着いて食堂に入ると、机の上に二通の封書が几帳面に並べられていることに気がついた。二通にはそれぞれに宛名が書かれており、一通は智代、もう一通はエミ子宛だった。
「英二からだ!」
と智代が言った。その通り、裏を見るとどちらにも「大宮英二」と記されている。
智代は、その二つの封書を手に取ると自分宛のものを自分が受け取り、エミ子宛のものをエミ子に手渡した。
「読んでみて! 私も読んでみる」
「うん!」
それで、二人はその場で封筒を開き、中から便箋を取り出すと、そこに書かれている文面に目を通したのだった。
ぼくは、固唾をのんでその様子を見守った。
やがて、便箋から顔を上げた智代が、エミ子を見てこう言った。
「どうだった?」
するとエミ子は、訝しげな顔でこう答
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