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記事 22件
  • セレブ気分をどう味わわせるか(1,649字)

    2017-06-16 06:00  
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    最近の外食産業は、どうやらインスタ(をはじめとするSNS)に最適化してきている。美味しいかどうかよりも、写真映えするかどうかがポイントになっている。
    ぼく自身はインスタを使っていないのだが、あれはセレブ気分をインスタントで味わえるサービスだというのを最近知った。スターがマスコミできらびやかな生活を紹介するということを、マイクロレベルで一般の人も味わえるようにした、という仕様である。
    この、昔だったらセレブにしかできなかった「体験」を主にインターネットやテクノロジーを活用して提供する――というビジネスには、まだまだ鉱脈があると思う。
    ぼくが最初にそれを意識したのはAKB48の総選挙だった。あれはマイクロ「タニマチ」だ。昔は飛び抜けたお金持ちにしか味わえなかった「タニマチ」体験を、それなりの値段で一般の人にも味わえるようにするサービスだった。
    これは楽しいだろうと思った。「お金で人を買う」とい

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  • 「きみは勉強ができないんじゃない、勉強の仕方を知らないだけなんだ」第15回(1,915字)

    2017-06-15 06:00  
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    日本語というのは、世界のさまざまな言語の中でもきわめて特殊なポジションにある。
    それは「変化が激しい」ということだ。
    英語では、400年前に書かれたシェークスピアの戯曲を原語で読める。スペインでも、400年前に書かれた『ドン・キホーテ』を原語で読める。
    しかし日本で400年前というと江戸時代で、大坂夏の陣が行われた頃だ。その頃に書かれた文章を今読める人はその道の専門家しかいない。それどころか、200年前の日本語だってほとんど読めない。ぎりぎり100年前の夏目漱石あたりから読めるようになるが、それでも、昭和に書かれた文章だっていたって読みにくい。
    なぜそうなるかというと、日本語は変化が激しいからだ。そしてなぜ変化が激しいかというと、内部における流行の移り変わりが激しい訳ではなく、外部からたくさんの言葉が流入し、その影響を受けざるを得ないからだ。それが理由でどうしても変化してしまうのである。

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  • [Q&A]大人になってから言語をしっかり習得する方法は?(2,022字)

    2017-06-14 06:00  
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    [質問]小さい頃、アメリカなど外国に数年行っていて、当時は英語を話せた人がいたとします。そういう人が日本に帰ってくると、日本語は正確ではないし、英語は忘れるしで、踏んだり蹴ったりな状態になります。私はそういう人を少なくとも二人は知っています。そんな人が大人になってから言語能力を高めるにはどうしたらいいのでしょうか?
    [回答]
    それは難しい問題ですね。実はぼくも小6から中1の2年間外国に行っていたのですが、英語は中途半端だったものの、日本語は正しく身に付けられて今に至っています。ではなぜ日本語が正しく身についたかといえば、結局本を読んでいたことと、日本語の表現に興味があったからなんですよね。
    これは身も蓋もないことですが、興味があることは簡単に身につきますが、興味のないことはなかなか身につきません。例えばぼくはファッションに興味がなかったので、なかなか身につかなかった。
    しかし40近くでスー

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  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その73(1,826字)

    2017-06-13 06:00  
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    マンガの神様といわれた手塚治虫が語っていた「創作の方法論」の中でも、取り分け印象的なのが「アイデアは必ず堂々巡りし、最後は『一番初めに考えたアイデア』のところに戻ってくるから、最初にアイデアを考えたらそれ以上考えないようにしている」というものだった。つまり彼は、ものごとが一周回ることこそ本質だと分かっていたために、あえて最初のところから動かないで、その分時間短縮を図っていたのである。
    ところで、日本の美的感覚においてひときわ顕著なのが、「すぐれたコンテンツを生むのは組織ではなく、個人である場合が多い」ということだ。すぐれた個人がほとんど一人で状況を打ち破り、革新的な仕事を為す。
    日本には、マンガ、アニメ、ゲームといういずれも社会の中で大きな役割を果たしている巨大なエンターテインメントジャンルがあるが、そうしたジャンルそのものを強い力で牽引し、また可能性を切り開いてきたのはいずれもすぐれた個

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  • 奥ゆかしいメッセージは届かない(1,983字)

    2017-06-12 06:00  
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    9月に『空からのぞいた桃太郎』という絵本を岩崎書店から発売する。影山徹さんが作者でぼくが編集した。絵本で32ページあり、値段は1500円+税の予定である。
    この絵本は、もともとはジブリ発行のフリーペーパーである『熱風』に載っていた高畑勲さんの講演録から着想を得た。高畑さんは岡山県に暮らしていたこともあり、そのゆかりで「桃太郎」のアニメを作ってくださいといわれることも再三なのだが、それらは全て断っているという。なぜかというと桃太郎が嫌いだからだ。嫌いな理由は、桃太郎が侵略戦争をしているからである。自分の領地が襲われたわけでも、親類が傷つけられたり金品を奪われたりしたわけでもないのに、鬼の領地に乗り込んでいって彼らを攻撃したばかりか、金品までせしめて帰ってくるからである。
    「桃太郎」を批判しているのは高畑さんだけではなく、過去には福沢諭吉、芥川龍之介らも批判している。現代でも文学者の池澤夏樹さ

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  • 面白いと役に立つを掛け合わせる(1,747字)

    2017-06-09 06:00  
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    本でもなんでも売るのが難しい時代になっている。そんな時代にレバレッジを利かせて売る方法は、口コミを誘発することだ。それもSNSだけではなく、「リアル口コミ」を誘発させることである。
    「うんこ漢字ドリル」という本が話題になっている。ぼくがすごいなと思ったのは、もう3回も街中で「うんこ漢字ドリル」の話題をしている人たちを見かけたことだ。彼らはリアル口コミで「うんこ漢字ドリル」について話題にしていたのである。これは強いと思った。
    一度などは、若い女性の集団が話していた。なぜうんことも漢字ドリルとも縁遠い彼らが「うんこ漢字ドリル」について話していたかといえば、電車の中で広告を見たからである。
    今、都内のJRの各電車に「うんこ漢字ドリル」の宣伝が大きく掲載されている。電車の車内で「うんこ」という文字はやはり強烈な違和感があるので、強烈なメッセージとなって見る人に伝わる。それを見たら、その驚きや感動を

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  • 「きみは勉強ができないんじゃない、勉強の仕方を知らないだけなんだ」第14回(1,990字)

    2017-06-08 06:00  
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    「ハチのムサシは死んだのさ」はユニークな詩である。タイトルに直接的に「死」という文字が書かれており、見る者の目を引きつける。また書き出しがタイトルと同じだから、歌でいうとサビがイントロに来ているようなもので、そのくり返しが一種の強調となり、なおさら印象深くなっている。
    この「ハチのムサシは死んだのさ」も「七五調」である。
    ハチのムサシは/死んだのさ
    畑の日だまり/土の上
    遠い山奥/麦の穂が
    キラキラゆれてる/午後でした
    こうしてみると、前段は7字の場合と8字の場合がある。
    出だしの4行の構成は、
    7/5
    8/5
    7/5
    8/5
    で、7と8が交互に来ている。これが独特のリズムを生み出しているから、聞いていて心地良い。音読するだけでも心地いいが、メロディに乗せるとさらにそれが際立つ。この言葉を身体に入れると、日本語が持つ独特のリズムも身体に入ってくることになるから、言語能力は自然とアップするだ

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  • [Q&A]老後の備えをしていますか?(1,788字)

    2017-06-07 06:00  
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    [質問]
    ハックルさんは東京芸大を卒業したと著者プロフィールに書かれていています。ということは、子どもの頃から絵が上手かったのか好きだったんだと思います。
    小学校の図工か何かで、すごく褒められたとか、自信作ができたとか、なにか今でも憶えているエピソードがあったら教えて下さい。
    [回答]
    物心ついた頃から絵を描いていて、親から褒められたということはあります。その絵はいまでも実家に飾ってあります。
    褒められたエピソードはたくさんあるので、自然と「ああ、ぼくは絵が上手いのだな」とは思っていました。また親が絵画教室を開いていたので、そこに通ってくる他の子供たちを見たりしても、自分は絵が上手いというのを実感していました。
    しかしながら、小学校3年生くらいのときに、その絵画教室に通っていた3歳年上の女の子がいて、彼女の描く絵にどうしても適わないと思いました。なぜかというと、ぼくには努力が足りないのです

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  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その72(1,643字)

    2017-06-06 06:00  
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    宮崎駿は『千と千尋の神隠し』の前作である『もののけ姫』を制作しているときから引退をほのめかしていた。それは『もののけ姫』に自分の人生をかけるくらい集中していたからでもあるが、もう一つ大きかったのは『もののけ姫』が若い頃に考えた映画企画の最後だったので、これ以上アイデアは出ないように思えてもいたからだ。
    このため『千と千尋の神隠し』以降の作品について、宮崎駿は「何もないところから絞り出すように作った」と言っている。しかし、この「何もないところから絞り出すように作る」ということが、宮崎自身の大きな転機ともなるのである。
    『千と千尋の神隠し』は実は企画が二転三転している。『もののけ姫』以降引退をしようという気持ちはおさまり新たな作品こそ作ろうと思ったものの、何を作るかというのはなかなか決まらなかった。いうなれば「生みの苦しみ」を味わっていたのだが、興味深いのはその過程で奇妙な堂々巡りをくり返して

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  • 書きづらいことを書いてみる(2,120字)

    2017-06-05 06:00  
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    先日も書いたが、一生懸命生きていると、やがて生きづらさを感じるようになる。
    しかしこの言い方は公平ではないかもしれない。
    一生懸命生きていると、生きやすい面と、生きづらい面が出てくる。短期的には生きづらいが、長期的には生きやすくなる。
    今日は、そのことについて書きたい。
    生きていると、「分かれ道」が出てくる。どちらか選ばなければならない場面が出てくる。
    分かれ道のことを英語で「クロスロード」という。そこでここではクロスロードという言葉を使いたい。
    クロスロードというのは、どちらかが正しい。どちらかが間違っている。そしてどちらを選ぶかによって、その後の人生が大きく変わってくる。
    クロスロードというのは、どちらが正しいか分からない場合というのは、ほとんどない。たいてい、どちらかが正しい。どちらかが間違っている。
    そうなると、「正しい道を進めばいい」となりそうなものだが、しかしここに一つの罠があ

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