-
トヨタ生産方式について考える:その17(2,123字)
2022-04-15 06:00110pt最近、『アポロ10号 1/2 宇宙時代のアドベンチャー』という映画を見て感動した。
これは、1960年生まれの監督が、少年だった頃(9歳の頃)の1969年を振り返って作った作品だ。フィクションだが、自伝的要素も強い。監督はテキサスの生まれで、近くにはNASAがあった。父はNASAの職員だった。だから、アポロの月面着陸という史実が、一つの主要なテーマとなっている。
1969年当時、ぼくはアメリカのマサチューセッツ州に暮らしていた。まだ1歳で全く覚えていないが、間違いなくアポロの月面着陸が引き越した喧噪は体験したはずだ。そのせいか、この映画はなんともいえず懐かしい。とにかく、とても良い映画だ。
この映画で印象に残ったのは、「当時は子供たちがたくさんいて、遊び場や遊び相手には困らなかった」という回想が挟まるところだ。これは、監督よりは8歳年下だが、ぼくの体験とも重なる。
1968年生まれのぼくも -
マンガの80年代から90年代までを概観する:その50(1,541字)
2022-04-14 06:00110pt50年代から60年代にかけて、日本ではモダン・ジャズがブームになった。モダン・ジャズというのは、いわゆるマイルス・デイヴィスが創始し、極めたジャンルのことだ。
タモリは1945年の生まれで、福岡で育った。1958年に中学生となるが、その頃からラジオばかり聞いていた。おそらくそこでモダン・ジャズ、あるいはマイルス・デイビスと出会ったのだろう。
一浪後の1965年(20歳になる年)に早稲田大学に進学。モダン・ジャズ研究会に所属し、トランペットを吹く。ところが、演奏の腕はいまいちだったため、得意のトークを活かし、専属の司会者として活動する。
このモダン・ジャズブームというのが、現代からはなかなか理解しにくいところがある。ぼくは1968年の生まれだが、ぼく自身が育った頃(1970年代)にはもう全くの下火になっていた。
それはビートルズの影響だ。ビートルズは1960年代の前半から日本でも本格的なブー -
[Q&A]何者にもなれない人は、どうすればいいのか?(2,526字)
2022-04-13 06:00110pt2[質問]
高校を卒業して10年ぶりくらいに高校の友達と再会しました。僕から声をかけています。
彼はメガベンチャーにいるので、僕がベンチャー企業に就職しようと彼から色々教わってたら、見返りとして金銭を請求してきました。
僕は今はお金が払えないので少し支払いを待ってもらっていますが、友達としてというよりはお金のことしか考えていない感じです。こういう人とは縁を切ったほうがいいと思いますか?
[回答]
いえ、それはおそらく向こうが、「お金を請求すれば、嫌気を出して離れていくだろう」と思っているのです。つまり、向こうから縁を切ろうとしている。そういうことは、よくあります。ぼくは、そういうふうに相手に気を遣わせるのが嫌なので、なるべく人に頼らず生きてきました。
ただ、そういう生き方は不利だと思うので、おすすめはしません。ですので、ぼく自身だったら、縁を切るというより、「向こうに嫌われているんだな。もう -
生きるとは何か?:その29(1,859字)
2022-04-12 06:00110pt生きることの正解は、大工である。大工的に生きることが、人間にとって一つの理想となる。
思えば、キリストの父親であるナザレのヨセフが大工だった。大工は、その意味で人類にとって、ある種の象徴的な職業なのかもしれない。
実際、あらゆる社会に大工は存在する。そして面白いのは、あらゆる社会で尊敬はされるものの、けっして中心にはならない。リーダーやハブにはならない。
なぜなら、全ての大工が「人間関係」をあまり持たないからだろう。だから中心的な立場にはならないし、周囲もそれを求めない。それよりも、黙々と家を作ることに集中してもらう。それが社会の総意である。
だから、実に「キリストの父的な立場」がお似合いなのだ。リーダーではないが、リーダーを育むものとして尊敬される。
大工は、重要なものを作りはするが、それだけである。評価は作ったものになされ、人物にはなされない。また、社会も大工に人間性を求めていない。た -
知らないと損をする世界の裏ルール:その14「科学的なエビデンスなど存在しない」(1,731字)
2022-04-11 06:00110pt最近、仕事の関係で凄く行き詰まっている。行き詰まっているのは、今回取り上げる、この「科学的なエビデンスなど存在しない」という事実を理解していない人が多いからだ。
たまたま今日、Twitterをなにげなく見ていたらすごいことに気づいた。それは、今は「科学的エビデンス」というものが、人々の盲信の「糧」となっていることだ。人々を知性から遠ざからせ、世の中の迷信を加速させている要因となっている。
それによって、世の中は生きづらくなっている。さらに状況がややこしいのは、そういう迷信を抱く人たちも、生きづらくなっているということだ。特に経済的に困窮している。だから、ますます迷信を抱いていない人との格差が広がり、それによって社会全体が沈滞したムードに包まれている。完全な悪循環で、これがおそらく人口減少の最大の理由だろう。
ただ、人口減少そのものはいいことなので、結局大局的に見れば人類はいい方向に行ってい -
トヨタ生産方式について考える:その16(1,736字)
2022-04-08 06:00110pt11970年代まで、子供たちは放っておかれた。それは数が多かったからだ。大人たちは、とてもではないが子供の面倒を見切れなかった。しかし、それが良かった。数が多いからこそ放っておかれた子供たちは、そこで自由を謳歌し、能力を育んだ。
しかし、80年代に入った頃から次第に大人たちの数が増え、また子供の数が減りだした。おかげで、大人が子供にかまうようになった。逆に言えば、子供は大人から干渉を受けるようになった。それだけではなく、監視されるようにもなった。そうして自由が次々に奪われ、それに伴って能力を育む機会を逸してしまったのだ。
その傾向が、なんと40年経った今も継続している。この40年の間に、干渉の度合いは深まるばかりだ。監視の目は増えるばかりである。
そのため、今こそ子供たちには逃げ場所が必要である。大人たちから干渉されない、自由な空間が必要だ。
だから、本当は学校をそういう空間にすべきなのだ。 -
マンガの80年代から90年代までを概観する:その49(1,747字)
2022-04-07 06:00110pt赤塚不二夫という人は、調べれば調べるほど面白い。
赤塚不二夫は、タモリに大きな影響を与えた。これは多くの人が知るところだ。と同時に、松本人志にも大きな影響を与えている。これは意外と知られていない。
松本人志は、年代が異なるので、活躍していた時期の赤塚不二夫と直接会ったわけではない。しかし彼は、子供の頃に読者として赤塚不二夫の大ファンだった。赤塚世代(バカボン世代)のど真ん中だった。その意味で、甚大な影響を受けた。松本人志は、そのことを何度となく広言している。
その通り、松本人志のお笑いにはどことなく『天才バカボン』の影響が見て取れる。特に、コントにその影響が色濃い。
では、その影響とはどんなものか?
それは、「丁寧で日常的な設定と、そこで巻き起こる乱暴で非現実的な展開とのアンバランスさ」だ。一つの設定を丁寧に構築しながら、それを意図的にナンセンスな方向へと破壊していくジャズ的な構成の面白さ -
[Q&A]本来の目的を忘れて失敗してしまった経験はありますか?(2,180字)
2022-04-06 06:00110pt3[質問]
4月になりました。岩崎さんが大学に入学したばかりの頃で、今でも覚えているエピソードがあれば教えてください。
[回答]
入学してすぐに、大学の校舎内で教授も出席する新歓コンパがあったのですが、そこで普通にビール瓶一本を一気させられたのには驚きました。というのも、当時一気は世間的には普通のことでしたが、ぼくはまだ18歳でしたので、飲酒は法律違反だったのです。
法律違反以前に、ぼくの高校で飲酒は校則で禁止されており、罰は停学処分でした。実際、飲酒で停学になった同級生もいます。だから、お酒は二十歳になってからと、なんとなく信じ込んでいるところがありました。
それが、国立大学の、しかも校舎内の、教授がいる前で、堂々と破らされた。ぼくは、高校と大学の規範のあまりの乖離に、頭がくらくらしたことを覚えています。
しかしそのおかげで、法律や校則の欺瞞性といいますか、建前性といいますか、「それは共同 -
生きるとは何か?:その28(1,859字)
2022-04-05 06:00110pt「生きるとは何か?」
この疑問は、知識を得ることで湧き上がってくる副産物だ。そして、この疑問を持つことは若干生きにくくなることでもあるから、ある種の「副作用」といってもいい。
現代において、知識というのはある面ではきわめて有用である。知識を活用することで生活が改善し、より良く生きられるというケースは実に多い。その逆に、知識がないばっかりに損をするというケースも数限りなくある。
だから、知識を持つこと自体は疑わなくても良さそうだ。そうなると、問題は知識の「得方」にある。知識の得方を間違うと、「生きるとは何か?」という疑問をこじらせ、生きにくくなる。その逆に、正しい知識の得方をすると、「生きるとは何か?」という疑問とも適切な距離を保っていられ、より良く生きることの助けとなるだろう。
そうなると、「生きるとは何か?」ということの答えの一つは、「正しく知識を得る」ということとなる。これは、「無意識 -
知らないと損をする世界の裏ルール:その13「怒られることこそが人を成長させる」(2,201字)
2022-04-04 06:00110pt2ぼく自身、これまで生きてきた中でかなり大きな衝撃を受けたことの一つが、人間と「唐辛子」の関係について――だ。
みなさんは、「唐辛子」のことをご存じだろうか? 例えば、唐辛子で「無農薬」を謳っている商品はこの世にない――ということはご存じだろうか?
なぜ唐辛子が無農薬を謳わないかといえば、それは「農薬がないと育てられないから」ではない。その逆に、そもそも唐辛子には虫が絶対につかない。だから、農薬を用いる必要がない。そもそも、全ての唐辛子が無農薬なのである。全ての唐辛子が無農薬である以上、わざわざ「無農薬」と謳っても他との差別化を図れない。それで、無農薬と謳わないだけなのだ。
では、唐辛子にはなぜ絶対に虫がつかないのか?
理由は簡単で、全ての虫にとって唐辛子は「猛毒」だからである。食べるとすぐに死んでしまう。だから、虫がつかない。
では、人間はなぜそんな「虫が食べると必ず死んでしまう植物」を食
2 / 3