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記事 22件
  • 偽物の個人時代:その17(2,054字)

    2023-11-16 06:00  
    110pt
    「恋愛」をめぐって、今の日本は混乱している。諸外国は詳しくは知らないが、先進国は概ね似たような状況にあるだろうと推測できる。
    例えばアメリカでは「インセル」が問題になっている。インセルとは、「involuntary(不本意)」と「celibate(禁欲)」を合せた言葉。つまり、「はからずも禁欲生活を強いられている者」のことで、別の言い方をすれば「非モテの若い男性」となる。
    このインセルが、よく銃の乱射事件などを起こす。つまり、アメリカでも恋愛できない若い男性が苦しんでいる。これは日本と同じだ。
    そうしてアメリカでも、インセルは日本のマンガやアニメ、ゲームを楽しんでいる。これはフランスやドイツをはじめとするヨーロッパの先進国もやっぱり同じである。日本のオタクコンテンツは、今や世界の先進国中で大人気なのだ。
    あらためていうまでもないが、オタクコンテンツは「恋愛不調」と深い相関関係にある。若者が

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  • [Q&A]2073年はどうなっていると想像しますか?(1.600字)

    2023-11-15 06:00  
    110pt
    [質問]
    早いものでもう11月です。もうすぐ2023年も終わりですね。話は変わりますが、今から50年後の2073年はどうなっていると思いますか? もちろん、そんなの「わかりっこない」ですし、予測することには意味がないかもしれませんが、しかしSF小説を書くような感覚で、自由に想像したところを教えていただけると助かります。
    [回答]
    2073年はまた時代の変わり目かと思います。つまり、これから始まる新しい時代のちょうど終わりかけといったところでしょうか。
    では、これからの時代――つまり2023年から2073年までの主役は何かというと、ありきたりですがAIですね。このAIをどう上手く活用するかが、これからの50年の世界だと思います。
    そう考えると、これまでの50年はちょうどコンピューターの時代でした。コンピューターはいろいろ生み出しましたが、最もインパクトの大きかったのはなんといってもインターネ

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  • アーティストとして生きるには:その30(1,547字)

    2023-11-14 06:00  
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    今、地方に移住する若者が増えている。この現象は、これからのアートの方向性、あるいは価値をとらまえる上で、とても貴重な情報と考える。
    しかしこの「地方に移住する若者が増えている」という現象の本質は、なかなか見えにくく、とらまえづらいところがある。第一、世の中のほとんどの人は、まだ「人は大都市に集中している」と考えている。特に「若者はますます東京へ向かう」と考えている。
    ところが、今日、たまたまこんな記事をネットで見つけた。
    住んではいけない場所を開発している…千葉県郊外で建ち始めた「30坪2500万円の新築戸建て」の根本問題
    この記事の筆者は、長年「限界分譲地」を取材しているライターだ。「限界分譲地」とは、今では過疎化したかつての新興住宅街のことだ。
    高度経済成長期からバブル期にかけて、日本の地価が異常に高騰した。その結果、土地への投機熱が高まって、急ごしらえで安普請の住宅街が次々と僻地に建

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  • 石原莞爾と東條英機:その23(1,604字)

    2023-11-13 06:00  
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    二葉会と木曜会の両勉強会が合流する形で、1929年に一夕会が結成される。ただし両会は、合流後も解散はされず各々継続していた。
    一夕会の中心になったのはやっぱり永田鉄山で、彼はこの頃から陸軍人事の「使い方」をほぼ完璧に掌握するようになり、陸軍内での「静かなるクーデター――乗っ取り」を密かに決行し始める。そうして、自分が人事部の主要ポストに就くと、各部の要所に一夕会メンバーを次々と配置し、また上司も自分たちに近しい人間を擁立するべく、さまざまな形で運動した。
    この頃、山縣有朋の死から7年が経過し、旧長州閥の力は弱体化していた。おかげで、長州閥に恨みを持つ者たちが結束する形で、永田の動きを後押しした。
    また、昭和不況はいよいよ混迷の度合いを深めていた。ちょうどアメリカで株価が大暴落し、いよいよ世界恐慌が始まった。これは、ただでさえ不況で苦しんでいた日本経済にほとんどとどめを刺すような格好となった

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  • 庭について:その53(1,761字)

    2023-11-10 06:00  
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    まず、「蓬莱式庭園」と「縮景式庭園」について見ていく。
    「蓬莱式庭園」というのは、文字通り「蓬莱」を中心に据えた庭のことだ。「蓬莱」とは「蓬莱山」のことで、「不老不死の仙人が住む」とされている。中国の想像上の山のことだ。
    そして、それを信仰することを「蓬莱神仙思想」という。この思想は、「長寿」を願い、それを至上の価値とする考え方だ。そのため、長寿の象徴である鶴や亀をモチーフにすることも多い。
    蓬莱山のビジュアルは、中国の水墨画によく見られるような、崖が切り立った岩のような山である。従って、蓬莱式庭園のビジュアルも、水墨画を模して、切り立った岩で表現することが多い。それを池の中や、あるいは陸地の一番高いところにそり立たせるのである。すると、そこがまるで不老長寿の世界のように見える、という仕組みだ。
    また、周囲には鶴や亀などを、これも岩や植栽で表現して配置する。そうやってこれでもかというくらい

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  • 偽物の個人時代:その16(1,515字)

    2023-11-09 06:00  
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    恋愛は、何のために「ある」のか?
    生物学的に考えると「婚姻を促すため」という答えになりそうだ。もっというと「性交を促すため」だ。恋愛があるおかげで、性交に対して積極的になり、結果として子供が生まれ、子孫を残しやすくなる。子孫を残すことは遺伝子の究極の願いなので、これは理に適っている。
    実際、高齢化して子供を生めない状態になると、多くの人が恋愛意欲を減退させる。しかしながら、近年は高齢者の恋愛意欲がなかなか減退しないという傾向も見られる。子供を生めなくなる40代以降にも、恋愛をすることが珍しくなくなった。
    あるいはその逆に、「若者たちが恋愛しなくなる」という現象も見られる。そのため、性交の機会も減り、少子化は加速するというわけだ。
    そう考えると、恋愛というのは必ずしも「本能的にするもの」ではないということになる。俗に、人間の三大欲求は「食欲」「睡眠欲」「性欲」だといわれるが、上記2つと比べる

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  • [Q&A]日本はなぜ朝鮮や中国などを侵略したのか?(2,520字)

    2023-11-08 06:00  
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    [質問]
    岩崎さんはよく「才能」という言葉を使われますが、どのような定義で使ってらっしゃるのでしょうか。また、それとあわせて「天才」の定義とはなんでしょうか。
    [回答]
    人には誰も、「先天的に備わっている資質」があります。「遺伝子の性質」といってもいい。例えば、背が高いとか、低いとか。
    しかし、背の高さは、それだけでは良い悪いもありません。ただの性質です。
    ところが、バスケットボール選手としてとなると、良い悪いが出てきてしまいます。背の高さは、俄然「良い性質」ということになります。そのため、背の高いという性質は、バスケットボール選手にとっては「才能」といえるでしょう。
    そんなふうに、才能は固有の分野にマッチした性質のことです。そして天才は、その「固有の分野にマッチした性質」が、マッチする度合いが飛び抜けており、かつ複数あること、と考えています。
    例えば、ジャンプ力がある、俊敏性が高い、目が

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  • アーティストとして生きるには:その29(1,692字)

    2023-11-07 06:00  
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    1970年代、来るべき80年代の「大量消費社会」を予感しながら、若者たちは「新しい生き方」を模索していた。すると、その取り組みがやがて巨大なアートムーブメントになった。特に「イラスト」は、70年代アートシーンをリードした。それに、ファッションや音楽、マンガやアニメなどが追随して、独特の文化が生み出された。
    それより半世紀前の1920年代にも同様のムーブメントがあった。世界中を近代化の産物である工業製品が席巻したが、それらはどれもデザイン性の乏しい醜いものだった。
    そこで有志の若者たちが、「工業製品を美しくしよう」と立ち上がり、デザイン性を伴った工業製品の設計に取り組んだ。それらがバウハウスやアールデコ、あるいはカリフォルニアスタイルの誕生につながった。
    そうした新しいアートムーブメントの機運というものが、現在――2020年代にも感じられる。人々は、新しい世の中の到来を予感しながら、さまざま

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  • 石原莞爾と東條英機:その22(1,842字)

    2023-11-06 06:00  
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    永田鉄山の作った勉強会(軍閥)である「二葉会」は、主に「陸軍人事」についての研究をしていた。陸軍人事の仕組みを解明して、どうすれば山県有朋の権力を希釈化できるか、またどうすれば自分たちの権勢を強めていけるのか、綿密に戦略が練られたのだ。
    一方、鈴木貞一が作った勉強会「木曜会」は、石原莞爾が参加していた。後に永田鉄山や東條英機も参加するのだが、そこでは「満蒙」の問題が研究された。
    「満蒙」とは何か?
    それは日露戦争後に日本の領有となった満州と内蒙古のことだ。これらの領土をどうするか、というのが当時の若手将校――特に陸軍にとってはホットな話題だったのである。
    なぜかというと、1920年代の後半となると、ソ連も建国から10年が経過し、国家の基盤が整いつつあった。そうして、まだロシアだったときに失った満蒙の土地を、取り返そうと虎視眈々と狙い始めた。
    同時に、中国でも清国が1912年に崩壊し、新しく

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  • 庭について:その52(1,972字)

    2023-11-03 06:00  
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    他の数多くの日本文化と同様に、「庭」も中国から輸入された。その中でも象徴的なのが「浄土庭園」だ。「浄土式庭園」ともいう。
    一般に、我々が豪邸の――あるいは古式ゆかしい神社仏閣の日本庭園と聞いたとき、頭の中に思い浮かべるのはこの浄土庭園である。
    「浄土庭園とは何か?」というと、文字通り「浄土=極楽浄土=天国」をイメージした庭である。中国人が考える天国の姿を、そのままビジュアル化したものだ。
    その中心はなんといっても「池」である。そして、その池に浮かぶ「島」だ。そこでは、植栽は取り立てて重要ではないが、しかし仏陀の象徴でもある「蓮」は、必ずといっていいほど池に浮かべられる。
    また、島にはほとんどの場合で橋が架かっていて、渡って行くことができる。それも含めて、散策を楽しむことを一つの目的としている。
    池の前には「阿弥陀堂」が据えられている。そして、その阿弥陀堂から見た池(庭)が浄土だ。そのため、

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