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ライトノベルの書き方:その10「物語の解体方法」(1,912字)
2015-03-17 06:00110pt若者たちに読まれるライトノベルを書くためには、若者たちの「物語」を解体しなければならない。ここでいう「若者たちの物語」とは、「自分は特別な存在なんだ」という思い込みのことだ。自分は作家になれる才能があるし、自分は恋愛においても優位性を持っている、という自分についている「嘘」である。それを解体することは、彼ら自身の「実は自分は間違っているかもしれない」という深層心理に訴えかけることなので、強く響く。そこでここでは、小説における物語の解体方法について、詳しく見ていきたい。ところで、有史以来、「物語を解体する物語」として最も有名で、また最も機能したものの一つといえば、ギリシア悲劇の「オイディプス」だろう。「オイディプス」は、ほとんどの人間が持っている「短気」という欠点について、それに見て見ぬ振りをする人々の「物語」を解体してみせた。そこでここでは、この「オイディプス」を参考に、物語の解体のしかた -
苦戦する店舗物件(1,898字)
2015-03-16 06:00110pt2今、店舗が苦戦している。特に物を売るお店が厳しくなった。
ぼくの事務所は原宿にあるのだが、近辺からは次々とアパレルショップが撤退している。代わりに何が入るかというと、飲食店か美容院だ。原宿はもともと美容院が多かったのだけれど、アパレルの跡地に次々と美容院ができたので、今や美容院の洪水のような状況になっている。ほんの数十メートルの間に10軒くらいあって、文字通りの美容院街となってしまった。
なぜ店舗で物が売れないかといえば、それはみんながインターネットで買ってしまうからだ。
そのことを如実に感じさせる店が、かつて原宿にあった。それは無印良品だ。無印良品は、かつて原宿に店舗を構えていたのだけれど、やがて売れなくなって撤退した。今日は、そのことについて書いてみたい。
ぼくは、無印良品のファンである。だから、原宿の無印良品はよく利用していた。事務所から近くて便利だったからだ。
しかしながら、いくつ -
週末に読みたい本#11「RED」(2,045字)
2015-03-13 06:00110pt最近、山本直樹さんの「RED」という漫画を読んでいる。これは、登場人物の名前こそ違うものの、「山岳ベースリンチ殺人事件」や「あさま山荘事件」を起こした連合赤軍のメンバーたちの歴史物語だ。ぼくは、以前から「あさま山荘事件」が日本という国の文化に与えた影響は計り知れないぐらい大きいと考えていた。あさま山荘事件を経験した子供たちが、その後「シラケ世代」になり、やがてバブル経済を経て、彼らの子供をゆとり世代としていくからだ。「あさま山荘事件」は、ゆとり教育が育まれる遠因ともなったのである。ではなぜあさま山荘事件は起きたのか? そのことは、ぼくの積年の疑問だった。というのも、ぼくの父親は60年安保で戦ったクチだった。国会までいって投石したと、自慢げに語っているのを何度も聞いた。報道写真を見せられて「おれはちょうどこの辺にいたんだ」というのも聞いた。ただし、逃げ足が速かったので機動隊には捕まらなかった -
教育考:その9「子供をなめることの効用」(2,103字)
2015-03-12 06:00110pt基本的に、誰かを「なめる」ことは悪いとされている。そこには、慢心したり、問題の本質から目をそらしたり、根本的な解決に至らなかったりというデメリットがある。
子供をなめることにも、同種にデメリットがないわけではない。しかしながら、それ以上に大きなメリットがあるため、これをむしろ励行した方が、大きな教育効果が得られるのだ。
そこで今回は、子供をなめることによって得られる教育効果について考えてみたい。
まず、子供をなめるという行為には、必ず責任感が伴われる。例えば、子供があまりも非力で「この子は自分がいなければ生きてはいけない」という押しつけがましい愛情を抱いたとき、その親の胸には「自分がしっかりしなければ」という思いが去来するはずだ。
これは、一見当たり前のことのようにも思えるが、しかし生きていく上では大きなモチベーションになる。勤労意欲や学習意欲の源泉となる。生きていくための活力になるのだ。 -
[Q&A]クリエイターの生き方を描いた素晴らしい映画を教えてください(1,446字)
2015-03-11 06:00110pt[質問]
ボクが最近見た映画は、『ビッグアイズ』『6才のボクが、大人になるまで』『はじまりのうた』などです。偶然なのか先週のQ&Aでハックルさんが言われていたクリエーターを主人公にしたものばかりでした。
そこで質問です。それが名作ではなかったとしても、クリエーターの生き方を描いた素晴らしい映画があったら教えて下さい。
[回答]
パッと思いつくのは、ドキュメンタリーなのですが、椅子で有名なイームズを描いた「ふたりのイームズ:建築家チャールズと画家レイ」ですかね。これを見ると、イームズは本物だったのだなというのがよく分かります。
それから、「アマデウス」もとても面白いです。これもクリエイターの本質にかなり迫っていますね。モーツァルトは嫌いだけどモーツァルトの曲は好き、というサリエリの造形が秀逸です。
「陽のあたる教室」もとてもいいです。プロの作曲家を目指していたけど、なりきれず、一生を音楽教師 -
ライトノベルの書き方:その9「若者たちの『物語』を解体する」(1,878字)
2015-03-10 06:00110pt読者に受け入れられるラノベを書くためには、読者の不安や恐れが的中するような物語を書かなければならない。だから、ライトノベルを書くことは、まず読者の不安を知ることから始める必要があるのだが、現代のライトノベルの読者の多くは、「恋愛」と「作家になれないかもしれない」という不安を抱いている。そのため、その恐れが的中するような物語を書くことを、ここでは目指していく。ところで、この二つの不安には共通項がある。それは、いずれも「自己イメージが肥大している」ということだ。そうして、それが傷つけられることを恐れているのである。「肥大した自己イメージ」とは、「自分は恋愛が上手くいくはず」と思ったり、「自分には作家としての才能がある」と思ったりしているということだ。自分が優れた人間だと思っているのである。そして、それが傷つけられることを恐れている。ということは、彼らの中には「自分はもしかしたら優れた人間ではな -
デザインの優位性はいかに確立されたか?(1,801字)
2015-03-09 06:00110pt現代では、デザインの優劣がビジネスの勝敗を分ける。アップルが強いのはデザインが強いからだし、大塚家具が弱いのはデザインが弱いからだ。
ではなぜ、デザインの優劣がビジネスの勝敗を分けるようになったのか?
それは、デザイン以外の分野ではなかなか勝敗を分けられなくなったからだ。具体的には、価格やアイデア、技術といったものでは他への優位性を築けなくなった。それで、相対的にデザインの優劣を分ける割合が高まったのだ。
ではなぜ、価格やアイデア、技術では優劣がつけられなくなったのか? それは、そうした情報がインターネットによって瞬く間に共有されるようになったからだ。例えば、iPhoneのアイデアやデザインは、発売されたその日に解体され、分析され、共有される。そうして、ほんの一月後には、他の企業がキャッチアップできるようになったのだ。
しかし、デザインはそうはいかない。デザインばかりは、一年経っても二年経 -
川崎市で中学一年生が殺された事件の「劇的空間」について(1,529字)
2015-03-06 06:00110pt川崎市で中学一年生が殺された事件において、犯人グループは「川崎国」を名乗っていたそうだ。これは明確に「イスラム国」の影響だろう。ここのところ、メディアでは連日イスラム国についての報道が為され、それを見た少年たちが「憧れ」て、それと似たような行動を起こしたのだ。
――と、ここでぼくが注目したいのは、「イスラム国」には少年たちが憧れるような何かがあった、ということだ。そこで今日は、その「何か」とは何か、ということについて考えてみたい。
イスラム国の「憧れを喚起するところ」といえばどこか?
これは、結論からいってしまえば簡単である。「独立国家を作る」ということだ。人は「独立国家を作る」という夢想に取り憑かれると、そこからなかなか離れられないのである。
独立国家といって思い出すのは、ナチスや連合赤軍やオウム真理教だ。いずれも犯罪組織であるが、犯罪組織である以前に、強烈に「独立国家を作る」ということ -
教育考:その8「子に理解を示した親が辿る末路」(1,631字)
2015-03-05 06:00110pt教育のことを考えるたびに思い出す話がある。それはキタキツネの教育だ。
キタキツネは、自分の子供が大人になるまでは大事に育てる。それこそ命がけで育てる。外敵が来たら、身を挺して守る。子供は、そんな親の庇護の元、ぬくぬくと育つ。
ところが、その子供が大人になったとき、今度はその親から急に敵認定される。そうして、テリトリーを追い出されてしまうのだ。
キタキツネというのは、テリトリーを守りながら生きている。家族のテリトリーに他のキタキツネが侵入してくると、これを命がけで追い払う。そうして、家族ごとの単位で暮らしている。
成長した子狐は、このテリトリーから追い出されるのだ。つまり、侵入してきた外敵と見なされてしまうのである。
そのことを、子狐は最初、理解できない。だから、なおも母親に甘えようとする。そんな子供に、母親は牙をむくのだ。そうして、それこそ殺しかねない勢いで、テリトリーから追い払う。以降 -
[Q&A]アカデミー賞の結果についてどう思われますか?(2,126字)
2015-03-04 06:00110pt[質問]
先週アカデミー賞の発表がありました。予想というものは外れがちになるものかもしれませんが、なんとなく意外な結果になったような気がします。
ハックルさんは今回のアカデミー賞の結果についてどう思われますか?
また歴代アカデミー賞で印象に残っているものがあれば教えて下さい。
[回答]
今回のアカデミー賞で「バードマン」が受賞したのは「やっぱりか!」と思いました。
理由はいくつかありますが、「バードマン」は今のトレンドがたくさん詰まっているので、その受賞はきわめて妥当だと感じたからです。
そのトレンドとは、以下のようになります。
1.撮影が熱い
今、世界中の映画関係者の間で「撮影」が注目を集めています。なぜなら、「撮影」は映画のフロンティアだからです。
昨今、CGでは新しい映画を作れなくなりました。しかし撮影技術の進歩には、まだまだ新しい映画の作られる可能性が秘められている。
なので、撮影
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