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記事 22件
  • ライトノベルの書き方:その23「『桃太郎』における旅の意味」(2,097字)

    2015-06-16 06:00  
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    ここまで見てきたように、「桃太郎」の旅は神話的だ。
    それは、逆にいえば「桃太郎」を子細に見ていけば、「神話における旅とは何か?」が見えてくる――ということでもある。
    そこでここでは、桃太郎の旅とは一体何か? その本質には何があるのか?――ということを、事象を分析しながら見ていきたい。
    まず、桃太郎の旅の動機とは何か?
    彼はどのように旅に出るのか?
    それは、「遠征」という形で出る。
    「鬼」という悪者がいて、方々で悪さをしている。桃太郎は、この鬼を成敗するために、彼らの本拠地である鬼ヶ島へと乗り込む――それが、彼の旅の動機なのだ。
    ここにおいて注目すべきは、桃太郎自身、実は鬼から何の被害も被っていない――ということである。桃太郎は、鬼にはなんの恨みもない。
    つまり、この遠征は、桃太郎の「一方的な攻撃」になっているのだ。その意味で、桃太郎の旅の動機には、「正当性」が存在しないのである。
    ここから

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  • 電車で化粧をしてはいけない理由(1,964字)

    2015-06-15 06:00  
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    1
    こんなネットの記事があった。
    何回も思うけど電車で化粧する事の何がいけないの?
    内容はというと「電車で化粧をしてはいけないという理由には根拠がない。したがって、マナーとして守る必要がない」――というものである。
    これを読んで気づいたのは、「電車で化粧をしてはいけない理由」を知らない人が多いということ。それと同時に、考えても分からない人も多いのではないか――ということだった。
    しかしこれには、非常に明確な理由がある。そしてそれは、深層心理に訴えかけてくるものなので、確かに分かりづらいものでもあった。
    そこで今回は、電車で化粧をしてはいけない理由について書いてみたい。
    この理由は、分かりづらくはあるものの、とても簡単でもある。
    まず、電車の中で化粧をしている人を見ると、人々はどう思うか?
    それは、「これから誰か大切な人に会うのだろう」と思う。化粧をするのは、誰か大切に思う人に会うからだ。
    一般

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  • 本が売れない理由を考える(2,047字)

    2015-06-12 06:00  
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    最近、本が売れない。その理由はいろいろあるだろうが、まず、ぼく自身が本を読まなくなった。ぼくは、炭坑のカナリアみたいなところがあって、ぼくの好きなものは流行るし、嫌いなものは流行らない。いうなればアーリーアダプターだ。ぼくは狙って、あるいは好きこのんでアーリーアダプターになったわけではない。気づいたらなっていた。それも、子供の頃にほとんどその骨格ができていた。その頃から、ぼくが好きなものは流行るし、嫌いなものは流行らないという傾向があった。そのぼくが、昔は本を読んでいたが、今は読まなくなったわけだから、本というものは本当に売れなくなったのだろうと思わされる。だから、本が売れない理由を分析するには、ぼく自身を分析するのが、一番手っ取り早い。ところが、ぼく自身を分析しても、よく分からないところがある。というのも、ぼく自身、なぜぼくが本を読まなくなったのかは、よく分からないのだ。だから、本が売れ

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  • 教育考:その22「神話に見る父親の教育」(2,242字)

    2015-06-11 06:00  
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    1
    神話の中で、父親というのは大きなテーマである。それはしばしば主人公に敵対する形で描かれる。それも、単に敵対するのではなく、味方であることが複合した、複雑な形で描かれる。まさに「祝福」であると同時に「呪い」でもあるのだ。
    古今東西の物語における、「祝福」であると同時に「呪い」でもある父親の代表格は、「オイディプス」に登場するライオスだろう。
    ライオスは、神託によって呪われているとされた息子を殺そうとするが、しかし殺しきれずに助ける。ところが後年、その息子が目の前に立ちはだかって、しかもそれを息子と知らないまま喧嘩になる。そうして、激高した息子に殺されるのだ。
    父親というものは、当然のように子供に対する愛情がある。しかしその愛情は、ほとんどの場合で裏目に出る。裏目に出るが故に、それは深刻なわざわいをもたらす。
    ところが、そのわざわいが子供にとっては「試練」となる。そうしてその試練が、子供の成長

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  • [Q&A]「勝つ」とは何か?(2,284字)

    2015-06-10 06:00  
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    1
    [質問]
    ハックルさんにとっての「勝つ」とはなんですか?
    「勝つまでやる」の勝つってなんですか?
    悔しさを持続して本をヒットさせ、大金が手に入って、再婚もして、色んな著名人と以前より会うことが出来て、自分がそれまでの人生の不遇を納得させるポイント、悔しさの終着点はございますか?
    [回答]
    「勝つ」とは、逆境にもめげず素晴らしいコンテンツを作るということと、その間隙を縫って大ヒットを飛ばすということの、二つの意味があります。ぼくにとって素晴らしいコンテンツを作るということと大ヒットを飛ばすということは全く別の作業なので、二つの分野でともに成果を上げることがすなわち勝つということになります。
    「勝つまでやる」というのは素晴らしいコンテンツを作り続ける、もしくはより素晴らしいコンテンツを作るということと、大ヒットを飛ばし続ける、もしくはより大きなヒットを飛ばす、ということです。そこに終わりはあり

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  • ライトノベルの書き方:その22「なぜラノベに旅は必要なのか?」(1,854字)

    2015-06-09 06:00  
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    ライトノベル――もっというと物語にはなぜ「旅」が必要なのか?
    それは、人間の来し方そのものに由来がある。
    人間は、胎児のときは誰でも他者とつながっている。しかし、出生時にそれが切り離され、孤独のうちに放り込まれる。それゆえ、人の一生は「他者とのつながりを回復するための旅」とも言い換えられる。
    それが、人間が「旅」を必要とする理由である。
    では、「なぜ旅が他者とのつながりを回復するのか」ということを、ここでは考えてみたい。
    ところで、神話にはよく旅が登場する。神話における旅で、ぼくが真っ先に思いつくのは「桃太郎」だ。
    「桃太郎」は、とてもよくできた神話である。子供の頃、桃太郎の話を聞いたぼくは、一発で引き込まれた。それはほとんど条件反射のようなものだ。「桃太郎」には、どんな人をも魅了してしまう不思議な力がある。
    ところで、これは余談であるが、「桃太郎」は20世紀に大きな試練に遭遇した。神話と

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  • 他人から興味を引かれるための最も本質的な方法(1,614字)

    2015-06-08 06:00  
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    ぼくは面白いことを考えるのが好きだ。それは面白いことを考えるのが面白いからだろう。
    ところで、面白いことを「考える」のは好きだが、「面白いこと」そのものは、あまり好きではない。ぼくはどうにも、人が面白いと思うことを心から面白いと思えないようにできている。
    面白いことには、子供の頃から向いていなかった。それを観察したり、分析したりするのが好きだった。
    なぜかといえば、小さい頃から自分を少なからず持て余していたからだ。それで、「自分は何者なのか?」ということをよく考えていた。一番の興味や観察対象が自分であった。だから、面白いことが起きても「あ、おれ今面白がっているな。どうしてだろう?」と考え、それにあまり集中できなかった。
    子供の頃は、高校野球のファンだった。特に池田高校が好きだった。池田高校が浪商に勝った試合があって、池田高校が点を入れたとき、小躍りしている自分がいた。
    そのとき、とても不思

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  • 枠組みについて(1,961字)

    2015-06-05 06:00  
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    2
    桜井章一さんは、麻雀のツモや打牌を「型」として教えている。その中で「狭い箱の中で体を動かすような感覚だ」と説いている。自分の肩幅以上には体を動かさないよう、きつく戒めているのだ。
    なぜそうするかといえば、枠組みを作ることによって、逆に狭い中での自在性を獲得できるようになるからだ。その中で動けるようになると、むしろ体の使い方の幅は広がるのである。体の多様な使い方を覚えられるのだ。
    昔、テレビで見た書道の大家が、書道というのは「墨で字を書くのではない」といっていた。「余白の白で空間を描くのだ」といった。だから、字の墨の部分から半紙の端のところまでの距離感とバランスがだいじなのだそうである。
    書道は半紙という枠組みの中で、はじめて完成する。
    ドラッカーは、「自由」のことを「責任ある選択」と表現した。責任という枠組みの中で自由に選択できることこそ、本当の自由なのだと。
    何でもかんでも許されることを

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  • 教育考:その21「続・子供を差別する上での大人の責任」(1,854字)

    2015-06-04 06:00  
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    子供を差別する上で、親が果たすべき責任の三つ目は何か?
    それは、「背中」を見せることである。背中で語ることだ。
    よく「親は子供の背中を見て育つ」というが、あらゆる人間が他人の背中を見ている。「背中を見る」というのは、その人の「言うこと」を聞くのではなく、「していること」を見る――ということだ。
    なぜかといえば、人間の放つ言葉というのは、ほとんどの場合他者に向けられる。それゆえ、そこには飾られたり偽られたりしている部分が多く、必ずしも正しくないし、真実ではない。そのことを、幼い子供でも知っているからだ。
    では、真実はどこにあるのか、その人の本質はどこにあるのか――ということになったとき、多くの人はそれを「背中」――つまりその人の行動に見出すようになるのである。
    ところで、なぜ行動のことを「背中」と表現しているかといえば、それは、その人が「意識していない」ということの比喩である。多くの人は、自

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  • [Q&A]早咲きと遅咲きの違いは?(2,631字)

    2015-06-03 06:00  
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    [質問]
    クリエーターや芸能関係など周囲や他者の評価や認知が必用な職業では早咲きと遅咲きが見受けられます。
    ハックルさんが講師をしているスクールだと、最近では「あったかいんだからぁ」のクマムシや外人が漢字の造りを揶揄する厚切りジェイソンは、芸歴を重ねてないにも関わらず売れたり。逆にいつまでも日の目をみない方もいます。
    早咲きと遅咲きの違いと、また、遅咲きのメリットを伺いたいです。
    [回答]
    売れるか売れないかというのは、世間の求めるものに合致しているどうかで、これはいくつかの要素から決定されます。早咲きと遅咲きの違いというのは、早咲きはこの合致するタイミングが上手いこと早く来た人。遅咲きは、合致するタイミングがなかなか来なかったのにもかかわらず、粘ってやっていた人――ということになります。
    遅咲きのメリットというのは、そこまで時間がかかった分、咲いても有頂天にならないこと、ではないでしょう

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