• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 26件
  • 教養論その38「歴史から学ぶ認知フィルター」(2,041字)

    2016-05-19 06:00  
    110pt
    人間というのは、自分の五感を通して世界を認知する。そして通常、人はその五感の能力を疑わないので、自分の認知の仕方が、そのまま世界の「事実」だと思い込んでいる。
    しかしながら、それは端的にいって誤りだ。人間の五感には、さまざまなフィルターがかかっているから、事実をその通りには受け取れないのである。
    例えば、手持ちカメラの映像は、激しく揺れており、見ているとやがて気持ちが悪くなってくる。しかしながら、我々が普段肉眼で歩きながら世界を見ているときには、激しく揺れているにもかかわらず、気持ち悪くならない。それは、脳内で揺れを補正しているからだ。「事実」は、手持ちカメラの映像のように揺れているのに、五感は揺れていないように感じているのである。
    そういうふうに、人間の五感を初めとする認知の仕方にはフィルターがかかっている。それゆえ、どんな人でも事実をそのまま受け取ることはできない。
    そこで重要になって

    記事を読む»

  • [Q&A]慶応大卒の男性と結婚する方法(2,778字)

    2016-05-18 06:00  
    110pt
    [質問]
    別に過去に戻りたいとか若かりし頃が良かったとかはないですが、気持ちの老化は防ぎたい願望はあります。何かありますかね?
    [回答]
    答えから先に言うと、「気持ちの老化を防ぎたいという気持ちをなくすこと」です。
    ぼくは、気持ちの老化をウェルカムしています。気持ちの老化とは、面倒くさいとか、疲れたとか、今の若者はダメだとか、そういう気持ちです。
    そういうふうに、気持ちの老化をウェルカムしていると、至って快適に日常を過ごせるのですよね。それよりも、変に若作りする方がよっぽどつらいです。
    そして、そういうつらさは、端から見ても分かります。変に若作りしている人は、周りからはかえって老けて見られるのですよね。
    実は「気持ちの老化を防ぎたい」という気持ちこそが、一番の老化現象だったんです。子供は「気持ちの老化を防ぎたい」とは思わないですからね。
    ですので、回答は「気持ちの老化を防ぎたいと思わない」

    記事を読む»

  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その19(1,866字)

    2016-05-17 06:00  
    110pt
    『あしたのジョー』を描き始めた頃、作画担当のちばてつやは、従来からの彼の画風を踏襲する形で描いた。すなわち、3Dの背景に、2Dのキャラクターを重ねて画面を構成した。キャラクターは、相変わらず記号化された、簡素なものだった。
    ところが、連載を重ねるうち、その画風が大きく変わってくる。それは、原作者である高森朝雄(梶原一騎)の影響であった。
    高森朝雄は、小説家志望の若者だった。彼は、それほどマンガに精通していたわけではなかった。また、これまで『巨人の星』の原作を担当していたことから、どちらかといえば劇画の絵に慣れていた。漫画調の、記号化された簡素な絵にはあまり馴染みがなかったのだ。
    例えば、『巨人の星』では、主人公の星飛雄馬が非常に小さく描かれている。それとは反対に、彼が相対するライバル、オズマや伴宙太といった存在は大きく描かれている。なぜなら、登場人物の大きさは、『巨人の星』の重要なテーマで

    記事を読む»

  • 『ズートピア』のキャラクターやストーリーが甘い理由(2,117字)

    2016-05-16 06:00  
    110pt
    1
    映画『ズートピア』を見た。
    感想は、結論からいうと物足りなさを感じた。子供向けで、とても「甘い」と感じた。
    もちろん、『ズートピア』は子供向けの映画なので、それに対して「子供騙しだ」というのは的外れな議論かもしれない。しかし現状では、この映画は多くの大人たちが見て、しかも大ヒットしている。多くの大人が絶賛している。つまり、大人向けの映画としても語られているのだ。
    そして、その観点からいえば『ズートピア』は、大いに甘く、また物足りなかった。
    そこで今日は、そう思った理由について書いてみたい。
    『ズートピア』は、まずキャラクターが物足りなかった。どのキャラクターも好きになれなかった。
    なぜ好きになれないかというと、「欠点」に欠けていたからだ。欠点がなく、美点だけが集積したような感じだ。つまり、ちっとも人間的ではないのだ。絵に描いた模範生であった。
    そのため、映画を見ている間も、見終わっても、彼

    記事を読む»

  • 台獣物語12(3,020字)

    2016-05-14 06:00  
    110pt
    12
     その人物は、馬にまたがった格好でステージ上に現れた。全身には、何やら甲冑のようなものを身につけている。さながら中世の騎士のようだ。
     しかしぼくは、そんなエミ子を落ち着かせようと、努めて冷静に言った。
    「いや、あれはそもそも立体映像だから、あそこに本当にいるわけじゃないよ」
    「あ、確かに……」
    「それに、あいつはけっして『馬にまたがっている』んじゃない」
    「えっ?」
    「ほら、よく見て。あいつの下半身……」
     それで、エミ子は目を細めて、もう一度ステージ上を確認してみた。すると、先ほどより一段高い声で、再び驚きの声を上げた。
    「あの人……下半身が馬になってる!」
    「そう――」
     と、ぼくは頷いた。ステージに現れた男は、馬にまたがっているのではなく、下半身がそのものが馬になっていた。つまり、ギリシア神話に出てくるケンタウロスのような格好をしていたのだ。
     といっても、もちろん本物のケン

    記事を読む»

  • 台獣物語11(2,412字)

    2016-05-13 06:00  
    110pt
    11
     その日の放課後、ぼくらは米子駅から電車に乗ると、一〇分ほど北上したところにある皆生駅までやってきた。皆生駅近くにあるゲームセンターへ行くためだ。
     台獣が来るようになって以降、皆生は、この一帯のターミナルとして急速に発展した。
     まず、それまで浜だったところが観光客用の港に改築された。おかげで、国内はもちろん、海外からも多数の観光客が訪れるようになった。
     次いで、獣道の観光ポイントである淀江と、米子や境港といった大きな街とを結ぶ鉄道が整備された。それと平行して、皆生には高級ホテルをはじめとする高層ビルがグングンと建ち始め、今や西日本一の観光都市へと変貌を遂げた。 そのため、人々は米子駅周辺の古くからある街並みを「旧市街」、新しく発展した皆生を「新市街」と言って区別した。 その、「新市街」皆生駅を出てちょっと歩いたところに目的のゲームセンターはあった。 一九七〇年代の終わり頃、イン

    記事を読む»

  • 教養論その37「歴史の距離感」(1,655字)

    2016-05-12 06:00  
    110pt
    人間は、さまざまな経験を積むことによって教養を育む。だから、経験を積めば積むほど、教養もまた育まれるといっていいだろう。若者より老人の方が、一般的に教養が深いのはそのためである。一方で、人間が積める経験には自ずから限界がある。この世の中には、自分では体験できないこともたくさんある。そのうちの代表的なものの一つが「歴史」だ。例えば我々は、どんなに努力しても江戸時代を体験できなければ。明治時代も体験できない。我々は、常に現代しか体験できない。しかしながら、単に経験できないからという理由で歴史を軽視するのはあまりにももったいない。それは、歴史は教養の宝庫であり、そこからいろいろなことを学ぶことができるからだ。しかもそれは、ほとんど人類始まって以来の伝統でもある。学問とは、まさに歴史を学ぶことから始まった。人間は、歴史を学ぶことで今のような進歩した文明を手に入れることができたのだ。そんな教養を育む

    記事を読む»

  • [Q&A]連休明けに気分良く仕事するには?(1,653字)

    2016-05-11 06:00  
    110pt
    2
    [質問]
    このQ&Aで質問する人は、ハックルさんが、自分で自分に質問するのを含めて3~4人しか、いないみたいです。同じ人間で回しても新陳代謝も競争力も切磋琢磨も育まれません。正直。私も、そろそろ無くなってきました。結果が出ている。それで、飯が食えてる人の話は素直に聞くべきだし、日々どうしたら良くなるか自問自答してこのコーナーとかでも吐き出さないと120%成長しないような気がします。それが、どんな主観的にも客観的にもつまらない、くだらない、些細な、ものだとしてもメルマガや講演会の最後で振られても大抵手を挙げません。個人的な見立てでは「深いところでは、今のまま現状維持でいいと思っているんだろうな~」というのが印象です。
    自分のことを棚に上げますが、覚えてないかも知れませんが僕も、ハックルさんが講師のお笑いスクールに数年前に通ってそこで、ネタ云々よりも「人格面」を「ボロカス」に言われました。しか

    記事を読む»

  • 世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その18(1,950字)

    2016-05-10 06:00  
    110pt
    『巨人の星』が大ヒットしたことを受け、『少年マガジン誌』はこれに続く新たな人気作品を生み出そうと考えていた。そうして始まったのが『あしたのジョー』である。
    『あしたのジョー』は、原作が『巨人の星』と同じ梶原一騎。当時はまだ『巨人の星』が連載中だったので、こちらは別名義の高森朝雄で書いていた。
    『少年マガジン』誌が梶原一騎を原作に起用したのは、ズバリ、『巨人の星』のような作品をもう一つ作ってほしいと期待したからだ。
    そして、作画はちばてつやが担当した。この起用にも意味があった。
    ちばてつやは元々、『少年マガジン』誌で『ちかいの魔球』という野球マンガを描いていた。『巨人の星』は、この『ちかいの魔球』の大きな影響を受けている。先行した『ちかいの魔球』を分析し、それを進化させたのが『巨人の星』だった。そのため、この両作には、舞台がプロ野球の巨人軍であることや、主人公が投手でありなおかつ魔球を操るこ

    記事を読む»

  • 少子化を解消する方法(2,920字)

    2016-05-09 06:00  
    「少子化を解消する方法」を思いついたので、少し長くなるが、なるべく簡潔に記してみたい。
    「少子化を解消する方法」を考える上で、まず考えたのが「少子化はなぜ起きたのか?」ということだ。
    すると、そこで参考になるテレビ番組があった。
    NHKスペシャル『ママたちが非常事態!?〜最新科学で迫るニッポンの子育て〜』
    この中で、子供を産んだ母親というのは、誰でも不安や孤独感を感じるものだ――ということがトピックとして取り上げられていた。それは、妊娠中に分泌されていたエストロゲンというホルモンが、産後になると急激に分泌されなくなるからだそうだ。
    エストロゲンは、母親に安心感をもたらすために、それが急激になくなることによって、不安や孤独感が増大するらしい。
    では、なぜ母親の身体はそういう仕組みになっているのか?
    それは、「母親に他者や共同体とのつながりを促すため」という仮説があるらしい。
    不安や孤独感に苛

    記事を読む»