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記事 23件
  • [Q&A]ジャニーズ事務所の性加害謝罪について(1,757字)

    2023-05-17 06:00  
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    [質問]
    陸上自衛隊幹部ら10人が搭乗していたUH60JA多用途ヘリコプター1機が先月、沖縄県の宮古島周辺で行方不明になりました。インターネット上では、「外国の攻撃」だと噂が広がってもいます。不明になる2分前まで交信していたようなので、事故にしては不自然だからでしょう。
    もし仮にこれが他国の攻撃だとしたら、やられる方は戦争状態にならないために、知らんふりをするしかないのでしょうか。もちろん戦争は嫌ですが、こういう嫌がらせも好きではありません。ハックルさんは、これら一連の事故(?)と報道、憶測をどのように見ていらっしゃいますか?
    [回答]
    合理的に考えて、「攻撃」だとしたら日本が黙っている理由はないので、その線はかなり薄いと思います。ただ、もし本当に不自然だったとしたら、確かに何らかの異変が起こっていると考えるのは自然なことでしょう。
    その場合に、「最も合理的な思考」をするのが最善手かと思い

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  • アーティストとして生きるには:その5(1,885字)

    2023-05-16 06:00  
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    TOTOの『アフリカ』という曲がある。TOTOは必ずしも「アーティスト」ではないが、この曲だけは「アート」として残った。
    ではなぜアートとして残ったのか?
    ここで結論をいえば、それは「妄想」に基づいて作ったからだ。作曲したペイチとポーカロ、二人の妄想によって作られた曲だからである。
    ペイチとポーカロは、この曲を作るまで、まだアフリカに行ったことがなかった。ただテレビでアフリカの飢餓のニュースを見て、ふと「アフリカについての歌を作ろう」と思い立った。
    しかし二人にはアフリカの知識が全くなかったので、仕方なく妄想で書くことにした。これが良かった。妄想で書いたから、『アフリカ』はアート作品として音楽史に刻まれることとなったのだ。
    つまり、アートは妄想に基づいて作られるものなのである。では妄想とは何か?
    こう聞かれると、多くの人は「豊かなイマジネーションの産物」と思う。しかし、それは必ずしも正解で

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  • マンガのはじまり:その31(1,673字)

    2023-05-15 06:00  
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    近藤日出造は、戦争直後に郷里上田に無事帰還し、しばらくは平穏に暮らしていた。しかし何もすることがないのと出身地であるにもかかわらず田舎の暮らしに馴染めなかったので、数ヶ月後に菅生定祥に手紙を書き、東京に戻ってもいいかと打診した。すると、なんと菅生はすでに「漫画」誌を細々とながらも再開しており、すぐに戻ってきてまた編集を頼みたいという。
    そこで近藤は妻子を郷里に残したまま勇躍上京し、西荻窪にある弟子の塩田英二郎宅に仮住まいしながら、漫画家及び編集者生活を再開するのだ。
    しかしながら、近藤のこの活動はしばらく迷走を続けた。というのも、近藤は元々保守派の人間だったのだが、戦後の世の中の急な左傾化ですっかり調子が狂ってしまったのだ。そうして世を儚み、厭世的になった。GHQや政府が信じられず、緩やかなアナーキストとなっていった。
    ところで、これは近藤も含め多くの人が誤解しがちなのだが、戦中の陸軍はけ

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  • 庭について:その29(1,539字)

    2023-05-12 06:00  
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    リチャード・ペイン・ナイトは1751年生まれの貴族だ。莫大な遺産を継いで国会議員なども務めたが、ほとんど名誉職のような感じだった。
    それよりも、彼は貴族の出らしく「文化人」として生きた。莫大な領地を所有したことから造園に興味を抱き、たまたま隣人だったユーヴドール・プライスとともにランスロット・ブラウンのなだらかな庭を批判して、「ピクチャレスク論」を押し進めた。
    ただ、ナイトの頃になるとそれはもはや単なる芸術論ではなく、ある種の政治的なイデオロギーへと転換していた。というのも、18世紀後半になるとにわかに起こった産業革命によって、新興のブルジョアたちが台頭してきた。ナイトら古くからの貴族たちは、そんな彼らに対抗する必要があったから、自分たちの優位性を誇示する論陣を張ったのだ。
    それで、プライスやナイトは新興のブルジョアたちを「成金趣味」だと批判した。そうして、自分たちは彼らには分からない「侘

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  • お金にまつわる思考実験:その28(1,697字)

    2023-05-11 06:00  
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    お金は「欲」と不可分の関係にある。人には「欲」があるからお金を使い、経済が成立する。
    しかしながら、人間――とりわけ日本人は、「欲」について無知である。なぜなら、「臭いもの」として「蓋」をしがちだからだ。見て見ぬ振りをしてきた。これまでなきものとして扱ってきた。
    ただし、日本人には二枚舌で裏表のある人間も多い。そういう人間は、表では欲についての無知を装いながら、裏ではしっかりと欲について勉強した。
    その結果、日本人の欲についての知見には大きな格差が生まれることとなった。欲に無知な人間はそのままだが、詳しい人間は裏でこっそり学んでいるのだ。
    そこで、ここでは欲について少し考えてみたい。人間にはどんな欲があるのか?
    まず、「生きたい」という欲がある。これは見落とされがちだが、ほぼ全ての人間にとって最も根本的、根源的な欲だ。
    それから、「負の欲」というものもある。これは、「嫌なもの・ことから避け

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  • [Q&A]オッペンハイマーについてどう思うか?(2,736字)

    2023-05-10 06:00  
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    [質問]
    今年の夏に公開されるクリストファー・ノーラン監督の新作映画、『オッペンハイマー』の予告が公開されています。
    Oppenheimer | New Trailer
    オッペンハイマーは原爆制作を総指揮した人物として知られていますが、ノーラン監督はなぜ今この人物を映画にしたのでしょうか? また、ハックルさん自身、オッペンハイマーについて何か見解や思い入れはありますか?
    [回答]
    ぼくは20世紀前半の科学者たちが好きで、とりわけジョン・フォン・ノイマンとリチャード・ファインマンが好きなのですが、この2人がともにかかわっていたのがマンハッタン計画なんですよね。さらに、まあまあ好きなエンリコ・フェルミも指導的な役割を担っているので、マンハッタン計画にはやはり相当な興味があります。
    マンハッタン計画の舞台となったロスアラモス国立研究所は、ぼくが好きなドラマ『ブレイキング・バッド』の舞台であるアル

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  • アーティストとして生きるには:その4(1,774字)

    2023-05-09 06:00  
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    TOTOの『アフリカ』は実に面白い作品だ。Wikipediaに、2018年に出たこんな記事が紹介されている。
    2018年、TOTOの「アフリカ」がなぜか再注目されている
    この記事でも強調されているが、TOTOの『アフリカ』において重要なのは、ここで描かれたアフリカが「本当のアフリカ」とは無関係なことだ。TOTOの『アフリカ』は「空想のアフリカ」なのである。
    では、「空想のアフリカ」とは何か?
    この曲を作ったデヴィッド・ペイチとジェフ・ポーカロは、ともにアメリカ人で、それまで一度もアフリカに行ったことはなかった。しかし、あるときテレビでアフリカの飢餓を伝えるニュースを見て、アフリカについての曲を作ろうと思い立った。
    この曲が作られたのは1981年だから、ちょうど東アフリカで大規模な干ばつが起こり、多数の餓死者が出たときだ。それを見たペイチとポーカロに、一つのイマジネーションが沸き起こった。

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  • マンガのはじまり:その30(1,689字)

    2023-05-08 06:00  
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    1944年11月、空襲で「漫画」誌のオーナーである管生定祥の家が焼け、家族が皆死んでしまうという悲劇があった。これを機に「漫画」誌は休刊になる。さらに、翌1945年3月、今度は漫画家仲間たちが合宿していた借家も空襲で焼けてしまう。そうなると、近藤日出造にもすることがなくなり、すでに家族を疎開させていた自分の郷里である長野県上田市に戻った。
    故郷に戻った近藤は、ただごろごろ寝て過ごしていたという。漫画を描けなくなったということもそうだが、戦争にも負けそうだということが肌感覚として実感できたため、何もする気が起きなかったからだ。それまでがむしゃらに働いてきた分、糸が切れてしまったように動けなくなった。
    そんな近藤に、ほどなくして新たな展開が訪れる。それは徴兵である。なんと7月になって召集令状が来るのだ。
    このとき、戦況はすでにどん詰まりだったが、当然のように全ての日本人はまだ一月後に「終戦」を

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  • 庭について:その28(2,033字)

    2023-05-05 06:00  
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    プライスにおけるピクチャレスクの3つの要素は「粗さ」「急激な変化」「不規則性」である。そして面白いことに、そんなプライスがピクチャレスクの代表として掲げているのが「廃墟」なのだ。
    廃墟には、粗さと急激な変化と不規則性の3つがあるという。その意味では、原初のブラウンが創始したイギリス式庭園に戻ったともいえる。
    ただ、もちろんプライスは先人たちのイギリス式庭園は必ずしも肯定していない。それにもかかわらず、「廃墟」を一つの理想としているのだ。なぜか?
    ここで、「廃墟」におけるプライスが提唱したピクチャレスクの三要素を見ていきたい。
    まず「粗さ」だが、これは廃墟の見た目そのままといえる。廃墟が持つ文字通りの粗さを基調とした佇まいこそが、「絵になる」というわけだ。
    次に「急激な変化」だがこれは言葉だけだと少々分かりにくい。「急激な変化」は、もともと「緩やかな変化」の対立概念として掲げられた。そして「

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  • お金にまつわる思考実験:その27(1,629字)

    2023-05-04 06:00  
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    もう何度目かの問いになるが、そもそも「経済」とはなんだろう? それは、本質的には「価値の交換」のことだが、なぜそれが発生するのか?
    それは、「自分が欲しいものを相手が持っているから」である。それを手に入れる対価として、自分の持っているお金や物を差し出す。そうして、経済が発生する。
    そんなふうに、経済の根底には「欲しい」という気持ち、つまり「物欲」がある。あるいは、単なる「欲」がある。
    そのため、これは多くの人が見落としがちなことだが、経済が活性化するときは人々の「欲」が豊かなのだ。その逆に、経済が落ち込むのは人々の「欲」が落ち込んでいるからである。このように、欲と経済とは密接な相関関係にある。
    だから、経済について考えるとき、「欲」を抜きにはできない。「欲」についてきちんと考察を深めてこそ、初めて経済を理解できるようにもなるのだ。
    ところが、最近では「欲がないこと」を逆に自慢げに語る人もい

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