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記事 22件
  • アーティストとして生きるには:その26(1,802字)

    2023-10-17 06:00  
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    アートには、「未来をリードする」という役割がある。それは、アートが「新しいものの見方」を提示するからだ。それを見てインスパイアされた人々が、その「新しいものの見方」に則った何かを作る。そうして、未来が少しずつその「新しいものの見方」の方向性へと進むのだ。
    ところで、現代には大きく2つの「豊かな欲望」というものがある。それは、「自由になりたい」と「寂しさを埋めたい」である。
    このうち、「自由になりたい」はアートに結びついていない。なぜかというと、この欲望はあらかた満たされているため、必ずしもアートとして表現する必要がないからだ。つまり、「新しいものの見方」を提示する必要がない。
    一方、「寂しさを埋めたい」という欲望は満たされていない。そのため、大量のアートを生み出している。それは、寂しさを埋めるための「新しいものの見方」を、人々が欲してやまないからだ。
    人々は、その新しいものの見方を得ること

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  • 石原莞爾と東條英機:その19(1,936字)

    2023-10-16 06:00  
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    第一次世界大戦まで、戦争は比較的短期間で終わるものだった。一年かかることはほとんどなく、たいていは数ヶ月だった。それ以上長引く場合は、政治的な交渉が難航しているだけであって、戦闘自体が長引くわけではなかった。
    しかし、第一次世界大戦は長引いた。なんと4年の長きに渡ったのだ。しかも、政治的交渉はほとんど行われず、戦闘自体が長引いたのである。
    長引いた最初の原因が「機関銃」であった。これの登場により、戦闘が一気に膠着したのだ。
    膠着したのは、機関銃が敵の「突撃」を封じ込めたからだ。それまで突撃は最も重要な戦闘の一つだった。各国陸軍にとっての伝家の宝刀で、雌雄を決するときに用い、これでだいたい戦闘は終わった。
    ところが、機関銃の登場によってそれが成り立たなくなった。突撃は、文字通り「飛んで火に入る夏の虫」となり、いたずらに自軍の被害を拡大するだけのものとなった。
    そのため、「塹壕」の重要性が急浮

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  • 庭について:その49(1,876字)

    2023-10-13 06:00  
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    日本庭園の神髄は、「放置」と「管理」の間にある。そのバランスを図ることだ。放置と管理の境界を、ぎりぎりまで突き詰めることである。
    ただし、そのバランスは5:5ではない。ウェイトとしては8:2で管理の方に寄っている。ぎりぎりまで管理しつつ、残りの2割を手放して放置するのである。
    日本庭園の代表といえば京都の神社仏閣群だ。その他に日本三名園というものもある。兼六園、後楽園、偕楽園である。さらに、大名由来、個人の資産家由来の名園も無数にある。歴史は、有に1000年以上を数える。
    その中で、まずは広島県にある厳島神社について考えてみたい。厳島神社は、7世紀頃から存在するのだが12世紀に平清盛によって今の形に整備された。有名なのは、海の中に置かれた巨大な鳥居である。その鳥居と対比するように(あるいは従属するように)、湾の淵(砂浜の上)に社殿が配置されている。
    厳島神社は、一般には「建築」として有名だ

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  • 偽物の個人時代:その12(1,769字)

    2023-10-12 06:00  
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    2020年代は偽物の個人時代が花盛りだ。その中心はいうまでもなく「団塊ジュニア」である。特にネットに跋扈して日がな何かを燃やし続けている団塊ジュニアたちだ。
    今、ジャニーズ事務所が大炎上しているが、その火つけ役の中心にいるのが団塊ジュニアである。性加害被害者の中心的なメンバーが団塊ジュニアだし、ジャニーズ事務所を非難する人々も団塊ジュニアだ。あるいは、ジャニーズを擁護するオタクたちでさえ、団塊ジュニアが中心である。この炎上騒ぎは、敵も味方も彼らの世代を中心に回っている。
    そんなふうに団塊ジュニアは今、社会の中心にいる。ちょうど40代である彼らは、まだまだ体力があるし、気力も漲っている。だから、さまざまな社会や組織で、中心的な立場にいる。そうして、知らず知らずのうちに文化や価値の方向性を決定づけているのだ。
    そうして、今のこの「偽物の個人時代」の主役も、また彼らということになる。団塊ジュニア

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  • [Q&A]これからの時代の「結婚」に価値はあるのか?(2,590字)

    2023-10-11 06:00  
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    [質問]
    対面営業のコツを教えていただけますか?
    [回答]
    対面営業は「ノーマルでオープンな雰囲気」をいかに出せるかにかかっていますね。つまるところ、「お母さんが娘に接するような態度」でいることです。コツはそれだけだと思います。ぶっちゃけ気遣いなども要りません。
    ただ、知識と返事のスピードは必要でしょう。知識が確実に顧客より勝っていて、返事が光の速さであれば、次から次へと物が売れると思います。
    [質問]
    結婚について悩んでいます。現在30代後半でそろそろ本気で結婚について考えなければならず、もちろん結婚したい気持ちもあるのですが、なぜかいまだにそこまで前のめりにはなれません。ハックルさんはたびたび結婚についての記事を書かれていますが、ざっくりした質問で恐縮なのですが、これから結婚の価値というのはどうなっていくのでしょうか? 違う聞き方をすると、結婚する価値というのは果たしてあるのでしょうか

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  • アーティストとして生きるには:その25(1,955字)

    2023-10-10 06:00  
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    最もありがちな哲学的命題として「生きるとは何か?」というものがある。人類の長い歴史の中で、多くの人がこれにもっともらしい答えをしてきたけれども、そのうちの少なからずの人が「何でもない」と答えている。違う言い方をすると「『生きる』ということは存在していない」と答えている。つまり、「そもそも質問が無意味なのだ」と言っている。
    「生きる」とは虚である。幻である。空想上の概念だ。これはもうかなり前から科学的に立証されているが、しかし概念としては受け入れられていない。むしろ、近年ますます「生きる」ということの実存を信じる人が増えている。
    2500年前に、ソクラテスも孔子も仏陀も「『生きる』ということは存在しない」という趣旨のことを言った。しかしその言葉はほとんどの人に理解されず、従って否定されるのではなくスルーされた。聞き間違いかと思ってなかったことにされてきたのだ。
    植物は「生きる」などということ

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  • 石原莞爾と東條英機:その18(1,669字)

    2023-10-09 06:00  
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    永田鉄山は1910年(明治43年)に陸大を卒業する。26歳のときである。そこからヨーロッパに留学し、ドイツ、デンマーク、スウェーデンなどに10年間駐在する。
    そこで永田は、第一次世界大戦を目撃する。第一次世界大戦は、1914年から1918年にかけて行われた。だから、滞在期間の中にまるまるすっぽり納まるのだ。
    永田は第一次世界大戦を開戦前から見、戦闘中も見、戦後の状況もつぶさに見た。そうした、日本人いや日本軍人の中でもかなり特殊、あるいは特権的な立場にいた。軍人としてまさに特等席から戦争を見る――いや経験することとなるのだ。
    しかも永田は、敗戦国ドイツにいた。だから、その悲惨な有り様をなおさら直視することとなった。それが、軍人永田あるいは日本人永田の心に計り知れない衝撃と危機感とを植えつけたことは想像に難くない。「もし日本がドイツだったら」と想像し、「そうならないために自分には何ができるか」

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  • 庭について:その48(1,668字)

    2023-10-06 06:00  
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    1
    「水」とは何か?
    取り分け庭、あるいは日本庭園にとっての水とは何か?
    まず、日本は水が「豊富」である。それは、日本列島に雲がよくぶつかり、そこで雨が発生するからだ。発生した雨は山を下り落ち、谷に沿って川を形成する。ところどころのくぼみには池ができ、やがて全ては海に流れ落ちる。
    日本は四方を海で囲われており、よっぽどの山奥でも行かない限り、海からの距離はそう遠くない。現代日本人で、海を見たことがないという人はなかなかいないだろう。
    また、日本は水が豊富であるゆえに多湿で、そのことが独特の植生を生み出している。有り体にいうと、豊かで多様な植生を生み出している。日本ほど植物が元気な国も少ないが、さらにいうと多様な国はもっと少ない。日本の植物はバラエティに富んでいるのだ。
    なぜバラエティに富んでいるかというと、気象が多様だからだ。気象は、季節によっても異なってくるが、それ以上に地形によって大きく異

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  • 偽物の個人時代:その11(1,793字)

    2023-10-05 06:00  
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    団塊ジュニアの親である団塊世代は、バブル崩壊で大きく挫折した経験を持ち、また「子育ても上手くいかなかった」という感慨を持っているので、自信を失っている。だから、就職や結婚をしない団塊ジュニアには強く出られないケースが多かった。
    また、団塊ジュニアはその逆に、最近まで自信を持っている人が多かった。それは、子供時代はまだ自信のあった親に厳しく育てられたからだ。そこでさんざん抑圧され、「自由になりたい」と思いながら育った。
    ところが、思春期になってバブルが弾けると、親が自信を失ったため、いきなり解放され、自由になった。そして、それに強い快感を覚えた。
    これが、子供のときから自由だったら、状況は大きく違っていただろう。彼らは、思春期になって初めて自由を勝ち得た。だから、必要以上に自由を尊ぶようになったのだ。
    また、彼らはそれを「自分で獲得した」と錯覚した。本当はバブル崩壊の副産物に過ぎないのだが、

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  • [Q&A]岩崎夏海クリエイター塾とは何か?(2,656字)

    2023-10-04 06:00  
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    [質問]
    読売ジャイアンツの松田選手が、引退セレモニーを東京ドームで行いました。BSで放送していたので、ついつい見てしまいました。
    4人から届いていたビデオメッセージは、全員ソフトバンク。小久保2軍監督、工藤元監督、秋山元監督、そして王貞治さんです。
    読売で選手生活のラスト1年を送った選手に、ここまで手厚いセレモニーをしてあげるのか、というくらいの立派なものでした。内容も良かったと思います。
    2023年はポストシーズンがなくなったからとは言え、高橋由伸選手や阿部慎之助選手のような、ファン感謝デーのイベントではありません。シーズン中のセレモニーです。ジャイアンツの HPを見ると
    https://www.giants.jp
    2001年の長嶋監督や1995年の原辰徳選手以来になるようです。一体どうしてこのようなことが起きたのでしょうか? ジャイアンツのコーチなどを約束されているのでしょうか? ハ

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