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令和日本経済の行方:その41(1,526字)
2023-04-11 06:00110pt今回で、この連載は最終回とする。
ぼく自身、この連載を通して、あるいはそれ以外の場所でもずっと「これから経済はどうなるのか?」とあれこれ考えているのだが、なかなか「これ」といった答えが見つからない。そうこうするうちにAIが進化して、いよいよ人間が必要ない――少なくとも「知的労働」といわれるものは大幅に機械に奪われるという時代が来てしまった。
しかしここまで見てきたように、それでも人間には仕事が必要だ。一人一人がなにがしかの価値を創出し、誰かの役に立つ。そのことによってお金を得て、社会に参画する。社会の中に居場所を作る。
人間に必要なのは、必ずしもお金だけではないのだ。お金を得られる仕事が必要だ。だからこそ、どれだけお金を持っている人でも働くのである。
なぜなら、仕事は生きる喜びに直結するからだ。それがないと、人は生の実感が得られない。
そして、だからこそ現代は難しい。仕事というものから人間 -
令和日本経済の行方:その40(1,878字)
2023-04-04 06:00110ptこの連載は令和「日本」経済について書くというものだった。しかし結局今の社会は良くも悪くもグローバル化しているので、それは「世界」との関連を抜きには語れない。だから令和「日本」経済を語ると、結果的には令和「世界」経済を語ることともなった。
そして令和世界経済を語る上で欠かせないのが「人間の不要化」だ。特に「仕事における不要化」、またそれに伴う「経済における不要化」である。人間が生産者になりにくくなった。おかげで経済に参加しにくくなった。
これまでの社会では、人は「生産」と「消費」という形で経済に参加することが基本であり、それ以外はなかった。だから、生産できない者はそれこそ「非生産的」といわれ、経済に参加させてもらえなかった。排斥されたり淘汰されたりするのが常だった。
しかし今、ロボットやAIの登場によってその排斥されたり淘汰されたりする人の方が多くなってしまった。マジョリティになった。今現在 -
令和日本経済の行方:その39(1,654字)
2023-03-28 06:00110pt2GPTに代表されるAIを「LLM」という。「Large Language Model」の略で、日本語に訳すと「大規模言語モデル」となる。
LLMは、AIがあらかじめ言語を大量にインプットしておき、そこで言葉の並び方のパターンを覚える。そうすることで、そのパターンから類推した新たな言葉の並びを生成し、まるで実際にしゃべっているかのように見せる技術だ。
これができたことで、いわゆる「知的労働」と呼ばれるものが、それほど『人間的』ではなかった――ということがバレ始めている。
それまでは、工場などの機械に代替されるような肉体労働が「機械的」な仕事とされていて、頭脳労働――特に過去のデータ(言語)を大量に覚え、それを元に新しい言語を生成する仕事は、最も「人間的」な仕事とされてきた。しかし、LLMができたことで、それらも基本的には肉体労働と全く同じ、機械的な仕事だと分かったのである。
そもそも、肉体労 -
令和日本経済の行方:その38(1,648字)
2023-03-21 06:00110ptここに来て、GPTが評判である。
OpenAIというAI研究所が作ったAIで、2022年に発表されたChatGPTでは、人間の質問に対してきわめて自然な回答ができる(会話ができる)AIだと、世界中で話題になった。
すると年が明けた2023年3月14日。GPT-4を発表。すると今度は性能がさらに進化しており、これまでChatGPTが苦手としていた「正確性」に、各段の進歩を見せた。人間のするあらゆる質問や要望に、ほぼ正確に答え(応え)られるようになった。その知能は、すでに世界最高の知能を持った人間さえをも完全に凌駕している。
「GPT」は「Generative Pretrained Transformer」の略である。意味は、日本語にするのは難しいが、「生成的な、事前に学習を行った、変容機」というものだ。
GPTは、事前に行った深層学習によって得た情報を、生成的に変容して吐き出す。そのため、基 -
令和日本経済の行方:その37(2,026字)
2023-03-14 06:00110pt「人型ロボット」というとまず思い浮かぶのがボストン・ダイナミクス社だ。
ボストン・ダイナミクスは1992年にロボットとAIの研究をしていたMITのマーク・レイバートによって創設された。
当初は主に軍需産業向けのソフトウェアの研究開発を行っていたが、2008年にYouTubeチャンネルをスタートし、そこで物理的な犬型及び人型ロボットの試作機を積極的に公開し始める。
すると、そのリアリスティックな動きと高度な性能が人々を驚かせ、一気に有名になる。ボストン・ダイナミクスは、まずネットで大きな知名度を得るのだ。
そこから数年後の2013年、Googleに買収される。当時のGoogleは業績が好調で、不確定な未来への投資としてさまざまな起業を買収しており、ボストン・ダイナミクスもその一つだった。
しかし2016年、これをソフトバンクグループに売る。というのも、この時期のGoogleは「拡大」から「選 -
令和日本経済の行方:その36(1,648字)
2023-03-07 06:00110pt令和日本には新しい建築・移動・教育が求められている。それが開発されないことには、経済の伸張も覚束ないだろう。
そもそも日本は人口が減少し続けているので、閉塞感が著しい。人口減少は100年も経てばやがて収まるだろうが、それまでの時間をどのように乗り切っていくのか、重い課題が突きつけられている。
経済というのは、実は人々の心理に影響されるところが大きい。解放された気分であれば伸びるし、閉塞した気分であれば縮む。「景気がいい」とは、「人々が物を買いたい気持ちになっている」という意味でもある。だから「景気よくいこう」というのは、文字通り「元気を出そう」という意味なのだ。
そして、元気を出すという意味においても建築・移動・教育の新しい発明――イノベーションは重要だ。これらに限らず、近年人々がイノベーションを強く求めるようになったのは、イノベーションが人々を元気にした実例がいくつも生まれたからだろう。 -
令和日本経済の行方:その35(1,722字)
2023-02-28 06:00110pt令和の日本経済には、「新しい移動」への移行が切実に求められている。なぜなら、現在の日本の移動はあまりにも成熟しているため、イノベーションが起こしにくくなっているからだ。それが、経済の停滞を招いてもいる。
例えば、在来線の速度やダイヤはもう50年も固まったままだ。つまり、成熟が極まって、変化が起きにくくなっている。
一方自動車は、電車に比べるといまだに進化はしている。50年前よりはるかに安全で便利になり、しかもスピードは増した。
それに伴って利用者も増えた。地方では、今や電車の存在感がかすんでしまい、完全な車社会が実現した。その意味で、ゆるやかに「モータリゼーション」が進化した。
しかしその自動車とて、肝心の「道を人が運転して走る」という基本的な構造やシステムは変わっていない。それのブラッシュアップをしてきたに過ぎない。
だから、人々にできるのはせいぜいが道と自動車を整備するくらいで、逆にい -
令和日本経済の行方:その34(1,936字)
2023-02-21 06:00110pt最近、ぼく自身が「輸送」をよくしている。部屋の模様替えを頻繁に行うからだ。
その際、「トランスポート」というキーワードが頭に浮かび上がる。「これからはトランスポーテーションがだいじになるだろう」とつい思う。
「トランスポート」とは、何かをある地点からある地点まで運ぶという行為のことである。これを頻繁に行える生活が、これから主流になるのではないだろうか。
これは「住み方」とも深く関わってくる。部屋の模様替えが頻繁に、しかも簡単に行えるようになれば、それだけ住みやすさは増すだろう。
部屋に求められる要件は、朝と昼、そして夜など時間によっても違う。そうしたときに、同じ模様のままよりは違っていた方が断然いい。朝は朝用の、昼は昼用の、夜は夜用の部屋模様になっていてほしい。
そのため、家具も含めて大胆に、そして簡単に模様替え(トランスポート)できるような住環境があれば、多くの人がそれを選択するのではな -
令和日本経済の行方:その33(1,738字)
2023-02-14 06:00110pt今回は、新時代の「移動」の話である。
ところで、地方に暮らしていると日々「輸送」のだいじさが身に染みる。本当は都会にいたときも感じられていたら良かったのだが、いかんせんぼくの場合は自分で輸送する機会がほとんどなかった。たいてい運送業者にアウトソーシングしていた。
しかし地方に暮らし始めると、自分で輸送する機会が各段に増えた。きっかけはやはり自家用車を持ったことだ。また、自宅の他に仕事場と貸倉庫を借りた。その3箇所を自家用車で回るようになり、急に輸送のだいじさに気づいたのだ。
地方に引っ越してからは、新しい仕事に取りかかるとき、必ず仕事部屋を大胆に模様替えするようになった。特に道具を最適な場所に配置するようになった。そのカスタマイズに、時間と知恵、そして労力を割くようになった。
というのも、道具が適切な場所に配置された部屋というのは、仕事の効率を大きく高めてくれるからだ。そもそも部屋は、創作 -
令和日本経済の行方:その32(1,666字)
2023-02-07 06:00110pt新しい時代が来ると新しい「移動」が起こる。
明治維新のときは、なんといっても鉄道だった。このメルマガでもさんざん書いてきたが、鉄道こそが明治維新を成功させた陰の、そして真の立役者だ。鉄道の圧倒的な迫力に直に触れることができたからこそ、当時の日本人は西洋文化を受け入れることができた。それが、近代化そのものを促進もしたのだ。
では、戦後に起きた「移動」の変化はなんだろう?
大きく2つあって、1つは新幹線。もう1つはモータリゼーションである。
終戦当時、明治の鉄道はすでに全国に行き渡っており、これ以上のイノベーションを起こしにくくなっていた。ぼくが今でも感慨深く思い出すのは、ぼくが子供の頃(1970年代)、住んでいた高幡不動という駅から新宿駅まで特急で「30分」かかったことだ。それが今はどうなっているかというと、なんと「30分」なのである。50年間、1分も短くなっていない。
それほど、鉄道は当時
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