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  • Vol.187 結城浩/イラストがマイブーム/自分の収入を分析する/執筆原稿のバージョン管理とは?/

    2015-10-27 07:00  
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    Vol.187 結城浩/イラストがマイブーム/自分の収入を分析する/執筆原稿のバージョン管理とは?/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年10月27日 Vol.187
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    朝晩冷え込むようになってきました。 お風邪など召しませぬように。
     ◆月曜日は一日、結城メルマガ書いてます(イメージ図)
    気温は低いのですけれど、昼間はよい天気が多くて、 さわやかな秋を楽しんでいる気持ちになります。 もうちょっとで、 そんなことも言ってられないほど寒くなるのでしょうか。
    季節はめぐりゆくものですね。
     * * *
    恋の話。
    夏目漱石が "I love you."を「月が綺麗ですね」と翻訳したとか、 いや翻訳していないとか、そんな話題がTwitterで流れていたので、 こんなことを考えました。
     --------  「恋をしている」とは、  「月が綺麗ですね」という相手の言葉が  "I love you."  という意味に聞こえる状態のことである。
     結城浩(2015年10月12日)  --------
    そう思いませんか。
     * * *
    新刊の話。
    この結城メルマガが配信される2015年10月27日に、 『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』の再校読み合わせが行われます。 結城が編集部に出かけていって、 編集長といっしょに校正紙を一ページ一ページ読んでいくのです。
    一冊の本ができるまでにはいろんな工程があるものですね。 でも、今回の再校読み合わせが終われば、結城の手から仕事は離れ、 出版社+印刷所さんのお仕事へと完全に移って行きます。
    そして、いよいよ来月には出版となります。 楽しみですね!
     ◆これから読み合わせ(二週間前の初校読み合わせの写真)
    今回の新刊は「ベクトル」がテーマです。
    ベクトルは、三角関数や微積分と並ぶ重要な題材ですけれど、 何だか抽象的でわかりにくい題材でもあります。 難しくてわかりにくいというよりも、 「だから何?」といいたくなる。 それがベクトルです。
    数と似ているけれど、数そのものではない。 図形問題で出てくるときもあるし、矢印が出てくるけれど、 図形だけに使うものでもない。
    ベクトルっていったいなんだろう?
    今回の「数学ガールの秘密ノート」では、 テトラちゃんやユーリが、根本的な質問をたくさん投げかけ、 ベクトルの姿を少しずつ明らかにしていきます。
    あまり高度な内容は扱いませんけれど、 ベクトルを習う人がひっかかりそうなところは、 それなりにカバーできたのではないかなあと思います。
    『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』を応援してくださいね!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』  https://bit.ly/girlvector
    恒例の《サイン本無料プレゼント》も実施していますので、 ぜひお申し込みください!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』《サイン本無料プレゼント》  https://bit.ly/vector2015
     * * *
    URLの話。
    Mediumというサイトがあります。
     ◆Medium  https://medium.com
    ここはブログのように記事を書くサイトですが、 そこで記事を書くと、URLの中に「記事のタイトル」が含まれてしまいます。 たとえば、"This is a test."というタイトルを持った記事を書くと、 以下のようなURLになります。 URLの中に "this-is-a-test-" という文字列が含まれていますね。
     ◆This is a test.  https://medium.com/@hyuki/this-is-a-test-146f7b1e35d
    すぐに「では、タイトルを変えたらURLは変わってしまうのか?」 という疑問が浮かびます。答えは「URLはこのまま」です。 つまり、タイトルがURLに反映されるのは初めだけらしいですね。
    実は、タイトルに含まれる "this-is-a-test-"という部分を削除しても、 同じ記事にたどり着くことができます。 でも、リダイレクトされて表示された記事ではやはりタイトルが入った形になります。
     ◆This is a test. (URLは違うけれど、同じ記事へ行く)  https://medium.com/@hyuki/146f7b1e35d
    結城は、URLにタイトルが入る仕様があまり好きではありません。 なぜなら、記事を公開した後、タイトルを変更することだってあるじゃないですか。 場合によってはタイトルを正反対の意味にしたくなることもある (This is not a test.のように)。 そうすると、タイトルとURLに齟齬が出てしまう。 でも、すでに世界に公にしたURLを変えて回るわけにはいかないですよね。
    有名な "Cool URIs don't change" という記事では、 作者名、表題、状態、アクセス権、拡張子、ソフトウェアメカニズム(cgiやexecなど)を避けよ、 と書かれています。
     ◆Cool URIs don't change  http://www.w3.org/Provider/Style/URI.html
    もっとも、URLの中に具体的な名前を入れるというのは、 検索エンジンで優位になるという意味があるかもしれません。 たとえば、Amazonでは商品名などがURLの中にばっちり書かれています。
    結城は、日付と時刻を使ったURLが好きです。 なぜなら、最初に作った日時というのは、 いくら記事が編集されようとも変わることがないからです。
    あなたには、好きなURLの形式はありますか。
     * * *
    暗号本の話。
    今年の8月に刊行された『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』は、 たくさんの読者から応援をいただいております。 先日、編集部から連絡があり増刷が決定しました。 今回の増刷で第3刷となります!感謝です!
     ◆『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』  http://cr.textfile.org/
    驚くほど速いペースでの増刷です。8月に初刷、9月に2刷、10月に3刷! これだけ速いペースになったのは、 この本がちょうどタイムリーなものだったのかもしれませんし、 前回の第2版(2008年)からだいぶ時間が経っていたからかもしれません。 あるいは、今回は単なる情報のアップデートではなく、 加筆部分も多かったというのが喜んでもらえたのかもしれません。 いずれにしましても、第3版を出してほんとうによかった!と思います。
    これからも応援をよろしくお願いします。
     * * *
    それでは今週の結城メルマガを始めます。
    最近、イラスト描き(というか「お絵描き」)をするのがマイブームなので、 その紹介と、何を考えているかについてお話しします。
    また、もうすぐ今年も終わりになるので、 「自分の収入を分析する」ということについて考えます。
    また、Q&Aのコーナーでは、 「執筆原稿のバージョン管理」についてお話しします。 あまり複雑な話ではなく、バージョン管理の基本的な話をしましょう。
    では、どうぞごゆっくりお楽しみください!
    目次
    はじめに
    最近はイラストがマイブーム
    自分の収入を分析する - 仕事の心がけ
    執筆原稿のバージョン管理とは? - Q&A
    おわりに
     
  • Vol.186 結城浩/村上春樹『職業としての小説家』を読みながら/焦りを抑える工夫/わかりやすい文章/

    2015-10-20 07:00  
    220pt
    Vol.186 結城浩/村上春樹『職業としての小説家』を読みながら/焦りを抑える工夫/わかりやすい文章/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年10月20日 Vol.186
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    ちょうどいま、カバー画像が到着しました!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』カバー画像より
    秋の雰囲気でいいですよねえ!
    さて、来月2015年11月に刊行される『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』 ……と毎回この結城メルマガに書いています。
    ここまで書けました……レビューアさんのメール読んでます…… 脱稿しました……初校ゲラを読んでます……そんなことをずっと書いています。 そして、現在は再校ゲラを待っている状態です。再校ゲラは、 この結城メルマガが届く火曜日には、出版社から結城へ送られていることでしょう。
    今週は再校ゲラを読む週です。 一冊の本ができあがるまでには、たくさんの行程があり、 そこを通過していくうちに、少しずつではありますが、 本は確かに良くなっていきます。
    最初はあちこちにアラが目立つ。 でもそれを一個一個直していくうちに、 いつのまにか「けっこういい」状態に仕上がってきて笑みがこぼれる。 そのプロセスはいいものです。
    今週は再校ゲラを読み、来週には(なんと、もう10月も終わりです!) 再校の読み合わせがあります。そこでいったん私の手から離れます。 あとは11月に入ってサイン本を作り、出版です!! 待ち遠しい!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』  https://bit.ly/girlvector
     * * *
    そうだ、サイン本!
    刊行直前に販売される《サイン本》とは別に、 結城は個人的に《サイン本無料プレゼント》の企画を行っています。 今回のベクトル本もいつも通り《サイン本無料プレゼント》を行います。
    〆切は2015年11月3日ですが、早めにお申し込みくださいね。 詳しくは以下に書きましたのでお読みください。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』《サイン本無料プレゼント》  https://bit.ly/vector2015
     * * *
    リサージュ図形の話。
    『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』にはリサージュ図形の章が出てきます。 いろんなリサージュ図形を描くプログラムを @norioc さんが作ってくださいました。 感謝です。楽しい!
     ◆実行例画像(アニメーションGIF)
     ◆p5.js リサージュ図形(解説)  http://qiita.com/norioc/items/442a1cf4c170a081e5fa
     ◆実際に試すサイト  http://noriok.sakura.ne.jp/p5js/lissajous-curve.html
     * * *
    パソコン教室の話。
    阿部和広先生(@abee2)が、 パソコン教室の「現実」について書いていらしたのでご紹介。 「不幸なパソコン教室が生まれていること」についての現実と考察です。
     ◆幸せなパソコン教室のために(PDF)(情報処理2014年6月号)  https://www.ipsj.or.jp/magazine/9faeag0000005al5-att/5506.pdf
     * * *
    積分の話。
    Web連載「数学ガールの秘密ノート」は10月になってから「積分」がテーマとなりました。 秘密ノートシリーズは「やさしい数学」を扱うので、 積分といってもやさしい内容にするつもり……で、始めたのですが、 実際に書いてみると、なかなか思うとおりにはいかないようです。
    「どうしても難しくなってしまう」という意味ではありません。 「やさしい内容を語っていたつもりが、 深い内容まで自然と入り込んでしまう」という意味です。
    たとえば、先週金曜日に公開された第133回のこと。
     ◆第133回 はさみはさむ(前編)  https://bit.ly/girlnote133
    積分を学ぶ話として面積を求める話をし、 面積を求めるために区分求積法という方法の話をする。 それはまあよくあることなんですが、 区分求積法で極限の概念を説明していると、 数学ガールの一人、中学生のユーリが「グラフにスキマがある」と言い出しました。 スキマがあるから面積は正しく求められてないと。
     ◆グラフと長方形のあいだにスキマ(スクリーンショット)
    もちろんそこが極限のキモになるのですけれど、 《お兄ちゃん》の「僕」がユーリにていねいに説明していると、 いつのまにか、大学で登場するεδ論法の一部が自然に登場してきました。 さらには「面積というのはいったい何だろう」 という深い議論にもちょっぴり入りかけたりして。
    結城は二人の会話を書き留めながら、 「なるほど!」と感動することしきりです。 数学っておもしろい。学ぶっておもしろい。 そんなふうに思う瞬間です。
    第133回の記事がWebで公開されて、 何人かの方は、結城が感動したのと同じことに気付き、 たいへん楽しまれたようでした。
    中学生・高校生の数学だからといって、あなどることなく、 きちんと考えたり説明したりすることはとても大事なんだな…… とそんなふうに思えた体験でした。
     ◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」  https://cakes.mu/series/339
     * * *
    ゆきのさん( @sequen_11235813 )が、 プラ板で数学ガールのロゴ(恋の冪級数)を作ってくださいました。 ありがとうございます!
     ◆ゆきのさんのツイート  https://twitter.com//status/652440805030780928
     ◆ゆきのさんのツイート(スクリーンショット)
    私も何となく手書きしてみました(iPhoneのZenBrushというアプリ)。
     ◆結城のツイート(スクリーンショット)
    そうしたら、ゼルプスト殿下(@tenapyon)が、「計算しました!」とツイート。
     ◆ゼルプスト殿下のツイート  https://twitter.com/tenapyon/status/652475101628076032
     ◆ゼルプスト殿下のツイート(スクリーンショット)
    こういうやりとりは楽しいですね。
     * * *
    先月末の話。
    月末から月初めにかけては有料メルマガ発行者にとってはどきどきの時期です。 なぜなら課金は月単位なので、何人が新たに購読解除するだろうかと思うからです。
    でも、よく考えてみると、そんなにどきどきする必要はないともいえます。 というのは、購読解除する読者さんというのは、 配信されているメルマガを継続して読みたくはない気持ちを持っているわけですから。 それを無理に継続してもらっても、不満が募るばかりでしょう。
    そこで試しに、9月末に何回かこんなツイートをしてみました。
     --------  結城メルマガを購読している方で、  購読ストップしたい方は今日のうちに解除忘れずに!  逆に、今月分を読みたい方も今日のうちに購読登録を!  --------
    つまり明示的に「月末ですよ」というリマインドをしたのです。 その結果、どうなったか。
    いつもとほとんど変わりはありませんでした。 むしろいつもより少し購読者数が増えたくらいです。
    もう少し詳細に見てみると、単純に購読者数が増えたわけではなく、 購読解除した人と、新規購読した人の両方が増えたようです。 そのプラスマイナスした結果として、 購読者数が微増したということのようです。
    これをどのように理解すればいいのかは、 まだよくわかりませんけれど。
     * * *
    TeXの話。
    今月(2015年10月)の始めに、 使っているMacBookのOSをEl Capitanにアップグレードしました。 たくさんの方に教えていただき、 何とかEl CapitanにTeX Live 2015をインストールできました。 その経緯と要約は以下に書きました。
     ◆OS X El Capitan に Homebrew を使って TeX Live 2015 をインストールする手順  http://snap.textfile.org/20151006085255/
    結城は何かやったわけではなく、 TeX関係の方々が解決してくださった結果を享受しているだけです。 どんなことがなされたのかは、id:doraTeXさんの以下の記事をごらんください。
     ◆TeX界の El Capitan 迎撃戦記  http://doratex.hatenablog.jp/entry/20151008/1444310306
    id:acetaminophenさんのこちらの記事も合わせてごらんください。
     ◆「TeX 界の El Capitan 迎撃戦記」のコメントに対する回答と本質  http://d.hatena.ne.jp/acetaminophen/20151010/1444491444
     * * *
    自宅で働くという話。
    台風が来るたびに「風雨にも関わらずがんばって出社」という話がTwitterに流れる。 結城も若い時代に満員電車で会社勤めしていたことを思い出し、 事故など起きませんようにと思う。
    海外でプログラムの仕事をしたときがちょっとあって、 そのときに知人が "WFH" という表現を使っていた。 WFHというのは "Work From Home" の略で、 要するに「今日は出社せずに家で仕事するよ」という意味である。
    日本のIT企業でこの "Work From Home" は、 どのくらい自由に使えるのだろうか、とよく思う。 毎日自宅で仕事できるとまではいかなくていい。 毎日とはいわなくても、
     今日は打ち合わせもないし、来客予定もない。  つまり、物理的にオフィスに行く必要はない。  通勤時間分をがっつり作業にあてた方が絶対はかどる。
    という場合はあると思うのだ。 その場合でも出社しなければならないか、という問題である。
    台風などの悪天候のときに出社するのは体力を消耗する上に、 時間も無駄になることがある。電車が乱れていると駅で待たされて無為な時間を使ったり、 振替輸送で別の路線に乗り換えるためにまた時間を使ったり。
    ふだんから人に会うことが仕事になっていると難しいけれど、 開発系ならば比較的WFHはやりやすいんじゃないかな。 そういう働き方で、生産性が上がるのはいいことだと思う。 職種や、会社の状況や、各人の性格などでいちがいには言えないけれど、 WFHの方が生産性が高くなることが多いんじゃないだろうか。
     * * *
    ビデオの話。
    結城は映画館でたまに映画を観るけれど、 DVDをレンタルして家で観ることはほとんどない。 家で観ていると割り込みがいろいろ入って集中できないからだろうと思う。
    先日からAmazonのプライムビデオというサービスが始まった。 Amazonのプライム会員になっている人向けのおまけ(?)サービスで、 ビデオが見放題になるサービスである(すべてのビデオではない)。
    ふーんと思って眺めていたら『舟を編む』があったので試しに観ることに。 辞書を編纂するお話で、松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョーらが出ている。 この映画は2013年に夫婦で映画館に観にいった。なつかしい。
    AmazonのプライムビデオはiPhoneでも観られるので、 電車の中やベッドの中など、細切れの時間で観ている。 でも、あまり興ざめではない。雰囲気のいい映画なので、 一シーンをちょっと観るだけでも心に新しい風が吹くみたい。
    なるほどなあ、こういう映画の見方もあるのか、と思った。
     ◆『舟を編む』  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00GCHGF72/hyam-22/
     * * *
    それでは今週の結城メルマガを始めます。 今回は「結城浩ミニ文庫」のコーナーで、
     「資格について」
    という文章をお送りします。 この文章は、村上春樹の自伝的エッセー『職業としての小説家』を読みつつ書いたものです。
    では、どうぞごゆっくりお楽しみください!
    目次
    はじめに
    『資格について』 - 結城浩ミニ文庫
    焦りを抑える工夫 - 仕事の心がけ
    わかりやすい文章を書くには? - Q&A
    たった一つの心を抱えて
    おわりに
     
  • Vol.185 結城浩/再発見の発想法 - Library(ライブラリ)/原稿依頼を受けたときに考えること/

    2015-10-13 07:00  
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    Vol.185 結城浩/再発見の発想法 - Library(ライブラリ)/原稿依頼を受けたときに考えること/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年10月13日 Vol.185
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    この「はじめに」を書いているのは2015年10月12日。 世の中は祝日のようですが、私は普通に仕事をしています(^^)
     * * *
    ベクトル本の話。
    『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』は、 来月(2015年11月)に刊行されます。
    今週の火曜日(ちょうどこの結城メルマガの刊行日ですね)に、 編集部に行って初校の「読み合わせ」を行います。 初校ゲラを前にして、著者の私と編集者とが一ページ一ページめくりながら、 内容を確認していく作業です。
    まあ、本を出版するときにはいつも行っている作業ですが、 毎回新鮮な気持ちで向かうようにしています。 熟練するのは大事なことですが、慣れたり馴れ合ったりするのはよくありません。
    初校→読み合わせ→再校→読み合わせ、と来るまでがんばり、 あとはいったん出版社におまかせ。来月の刊行が楽しみです!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』  https://bit.ly/girlvector
     * * *
    こんな対話を考えました。
     A「数学なんて、いったい何の役に立つのかね?」  B「『役に立つ』とはどういう意味ですか」  A「役に立つっていうのは…そりゃ、何だ、そんなこと、なあ、わかるだろ?」  B「言葉の意味が合意できていないと、実りのある議論は難しいですね」  A「そりゃそうだが…」  B「数学を学ぶと、それを痛感します」
    これは半分ジョークですが、 「数学は何の役に立つのか」という問いについて少し話します。
    この問いをする人は主に二つに分かれるように思います。
     ・純粋な問いとして「何の役に立つんだろう」という人  ・「何の役にも立たない」と思っている人
    純粋な問いをしている人に対して、 答える人は真摯な態度で向かうべきです。 特に数学の面白さを知っている人や、 数学の喜びを知っている人は、決して相手を茶化すことなく、 きちんと答えるべきと思います。 (「べき」と書いてしまいましたが、そのように期待しますという意味です)
    それに対して、数学を「何の役にも立たない」と思っている人への回答は難しいですね。 そういう人は「数学は何の役にも立たない」という自分の考えを、 「数学は何の役に立つのか」という問いの形で表現しているわけです。 これは修辞疑問(レトリカル・クエスチョン)の一種です。 この場合、質問者はそもそも回答を聞く耳を持っていない可能性がありますね。 そうすると、なんらかの形で答えても、 「ああ、ごちゃごちゃ言ってるね」で終わることもあるでしょう。
    話は少しずれますが、世の中には、 「自分が理解できないものは無価値なものだ」と思う人もいます。 でもさすがにそうは言えないので「役に立つ」という言葉を使います。 「自分が理解できないものは他人も理解できない」と考える人もいます (いや、ほんとにいるんです)。 また、歴史的に無数の数学愛好者がいたことを想像しない人もいます。
    そういう方々に何と答えればいいのか、私にはわかりません。 でも、そのような問い「数学は何の役に立つの?」に対して、 自分なら何と答えるだろうかと考えるのは無駄ではないと思います。
    私自身は(数学者ではありませんが)、
     「数学は言葉である」
    と思っています。考える・表す・伝える・残す。 数学的な思考を数式や論証で表現する。 それは「役に立つ」し、価値がある。
    「数学が何の役に立つか」への答えは、 「言葉が何の役に立つのか」の答えとよく似ています。
    「数学は一般の人・普通の人に役に立つか」という問いも興味深い。 数学は広くて深い。人の理解や状況に応じて、 いろんな数学は役に立ち、いろんな数学は役に立たない。 これもまた言葉と同じ。 深く学べば多くの数学が「役に立つ」し、そもそも美しい。 ほんとうに言葉と同じですね。
    そういえば、プログラムも同じなのに、 「プログラムは何の役に立つのか」という人がいないのはなぜかしら。
    あなたはどう思いますか。
     * * *
    それでは今週の結城メルマガを始めます。
    今回は「再発見の発想法」のコーナーで、
     Library(ライブラリ)
    についてお話しします。
    それから、「文章を書く心がけ」のコーナーでは、 『月刊群雛』から原稿依頼を受けたときの経験を題材に、
     「原稿依頼を受けたときに考えること」
    をお届けします。
    先日読んだ、
     『凡庸な作家のサバイバル戦略──結局どうすりゃ売れるのさ』  http://amzn.to/1MmKSBI
    という本の感想も少し書きました。
    また、先週の結城メルマガでお話しした生活改善の話が、 一週間経ってどうなったか、
     「自分を誘って、新しい場所へ行く」
    というタイトルでご報告します。
    では、今週も、どうぞごゆっくりお楽しみください!
    目次
    はじめに
    再発見の発想法 - Library(ライブラリ)
    原稿依頼を受けたときに考えること - 文章を書く心がけ
    『凡庸な作家のサバイバル戦略』を読んで - 本を書く心がけ
    自分を誘って、新しい場所へ行く - 仕事の心がけ
    おわりに
     
  • Vol.184 結城浩/時間を味方につける - 仕事の心がけ/「わからない」の管理と心の中の教師/

    2015-10-06 07:00  
    220pt
    Vol.184 結城浩/時間を味方につける - 仕事の心がけ/「わからない」の管理と心の中の教師/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年10月6日 Vol.184
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     ◆おはよー!
     * * *
    ベクトル本の話。
    『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』は、現在初校を校正中。 初校ゲラ(著者校正紙)が編集部からどさっと送られてきて、 それをじっくり読んでいるところです。
    レビューアからの指摘事項はすでに手元のファイルに反映しているので、 それを初校ゲラに転記する作業が必要です。 でも、そういう機械的な作業に終始するわけではありません。 もう一度「読者の帽子」をかぶり直して、 まっさらな気持ちでゲラを読む。それが大事です。
    脱稿した時点から何日も経っていますので、 書いたときの自分のことを忘れて読み直すチャンス。 つまり「著者の帽子」が自然と脱げている状態なので、 読者の気持ちがわかりやすい状態になっているのです。
    初校読み合わせは来週。そしてしばらくして再校ゲラがやってくる。 同じように校正を続け、再校読み合わせ……そこまでいけば、 結城の手を離れ、出版を待つばかりです。
    おっと、また例によってサイン本を作ったりするお仕事はありますが、 そこはもう純粋な「お楽しみ」です。感謝でいっぱい!
    『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』は来月11月刊行です。 どうぞお楽しみに!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』  https://bit.ly/girlvector
     * * *
    連ツイの話。
    結城はよくTwitterで「連ツイ」をします。 これは、長い文章をツイートするときに
     「自分あてにリプライ」
    することを繰り返すというツイート方法です。 このようにすると、一連のツイートがちょうど鎖のようにつながって、 一つの文章のように読むことができます。 結城はこれを「連続ツイート」や「連鎖ツイート」の意味で、 「連ツイ」と呼んでいます。
    Twitterでツイートを見ると、 いろんな人の会話がつながっている状態で読むことができますが、 あれを一人でやっているようなイメージです。
     ◆連ツイのイメージ
    「自分あてにリプライ」することを繰り返すと、 たとえばその「連ツイ」の中のツイートが一つでも読者の手に届けば、 そこから他のツイートをすぐにたどることができます。 つまり、一連のツイートがまとめて読める。
    もし、リプライを使わなければ、 個々のツイートはばらばらになり、 もとの一連のツイートを探し出すのはとても手間がかかります。 よくツイートに(1), (2), (3), ... と連番を振っている人がいますが、 それよりずっといい方法です。
    なので、長い文章をたくさんのツイートにわけてつぶやくのが好きな人は、 この「自分あてにリプライ」する「連ツイ」を試してみてくださいね。
     ◆Twitterで長めの文章をまとめて「連鎖ツイート」する方法   (自分あてにリプライするだけ)  http://snap.textfile.org/20140110000000/
    なお、結城は自分の「連ツイ」を自動的に収集するプログラムを作り、 ブログ風に公開しています。
     ◆結城浩の連ツイ  http://rentwi.textfile.org
     ◆結城浩の連ツイ(スクリーンショット)
     * * *
    メール送信の話。
    今年の8月から、結城浩の活動をときたまメールでお知らせする、 「結城浩ニュースレター」という無料企画をやっています。
     ◆結城浩ニュースレター  http://www.hyuki.com/newsletter/
    結城メルマガのように読み物が書いてあるわけではなく、 結城の最近の活動を簡潔に、リンクを添えてメールするイメージです。 こういうメールはたくさんくるとうるさいので、 「多くて月に二回」という頻度にしています。
    先日「早くも400人が登録してくださいました!」 と結城メルマガで喜びましたが、計算間違いがありまして、 実際には約360人でした。もうしわけありません。 もちろん、それでもたいへん多くの方に登録いただいていることは変わりません。 感謝しております。
    この企画を始めた理由はいろいろあるのですが、 最近の結城の活動が複数サイトにまたがっているから、 というのが理由の一つです。 むかしは hyuki.com だけに自分のコンテンツがあり、 そこでの更新がほぼすべてでした。 最近は、cakes.mu, note.mu, など、あちこちで書いており、 それをまとめて把握することが難しくなってきました。
    一つのサイトでの結城のことは知っているが、 他のサイトでの活動は知らない方、 あるいは「結城の活動に少し興味あるけど、 結城のツイートを追っかけるというのもちょっとな…」という方、 そんな方に購読していただけたらいいな、 という思いがあります。
    裏の理由としては「なんとなく、やったほうがいいんじゃないか」 と感じたから、というのもあるのですけれどね。 これは前回の『フロー・ライティング』に書いた、 「世界を変える第一歩」のような話です。「やってみる」ということ。
    結城浩ニュースレターは、メールアドレスを登録していただいた方に メールを送るというものです。 いわば、メールマガジンと仕組みは同じです。
    でも結城浩ニュースレターの配信では、 既存のメルマガ配信サイトは使わないようにしようと思いました。 その代わりに自分でプログラムを組んで、 一通一通メールを配信するようにしてみようと思い、 それを実行しています。
    なぜ既存のメルマガ配信サイトを使わなかったのか。 その理由は…と、ここでカッコイイ「なるほど!」という理由が書ければいいのですが、 実は、これもまた「なんとなく」なのです。
    まぐまぐ!やブロマガでのメール配信はしたことがある。 でも、自分の手でメールを送れば(というのは比喩で、 正確には「自分が作ったプログラムでメールを送れば」ですね)、 「何か」がわかるんじゃないだろうかと思ったからです。
    いえ、まだ、その「何か」について、 まとめてお話しできるようなことはありません。 でも、いつかわかったことがあったら、 文章にしてみようと思います。
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    Apple Pencilの話。
     ◆「Apple Pencil」は未来の鉛筆--書き心地を松村太郎が体験  http://japan.cnet.com/sp/iphone2015/35070641/
    上の記事を読んで「うわ、試してみたい!」と思いました。
    初代のiPadが出たとき、購入して夢中になって手描きを試しました。 これで紙のノートが不要になり、 思いついたことをささっと書け、しかもファイルとして扱える! ……と興奮しました。
    でも、現在はiPhone 6とMacBook Airを使うだけで、 タブレットは使っていません。なぜでしょう。
    私にとってはタブレットの位置づけが中途半端なのかも。 手元にいつもあって、さっと何かを書くときはiPhone 6を使う。 大量の文章をがりがりと書くときにはMacBook Airを使う。 そうするとそのあいだに挟まるようになるタブレットを、 毎日持ち歩くというメリットがどうも薄れるようです。
    でも、以下のApple Pencilの紹介ビデオを見ると、 何だかきゅううっと引き込まれるような気がします。 またタブレット熱が再燃する……かも?
     ◆Apple Pencilを紹介します  https://youtu.be/jtI4Fe0zoik
    タブレットを何に使うかといえば、 おそらくはメモ書きできる読書端末として使うと思います。 Apple Pencilで手描きのメモを書きながら読めるなら、 かなり有効な端末になるんじゃないでしょうか。
    iPhoneを使っていて思うのは、 「目と画面の距離」の重要性です。 iPhoneは目に近い。年齢のために目が悪いせいかもしれないけれど、 目の近くに持ってきて読むテキストは心の近くまで届く。
    鉛筆を手にして、ときに大きく、ときに小さく、 気分のままに文字を書ける(描ける?)という体験は、 どんな感じがするだろう。
    スワイプで入力するテキストもなかなかいいけれど、 それほどカチッと書けない(書きたくない)気分のときもある。 そんなとき、Apple Pencilですうっと書けたら楽しいのでは!?
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    Google Apps for Workの話。
    一ヶ月「Google Apps for Work」をFree Trialしていた。 Google Apps for Workは、ひとことでいえば「仕事で使うGoogle」である。 メールや予定表やファイルや文書共有などを、 Googleのインフラを使って行いましょうというもの。
     ◆Google Apps for Work  https://www.google.com/work/apps/business/
    一ヶ月使ってみて(といっても自分一人で使っていたのですが)、 結局私の仕事にはいらないと判断した。
    そもそも私は一人で本を書いているだけなので、 誰かと密に連携を取ったり情報をやりとりすることはそれほど多くない。 いちばん多いやりとりはレビューアさんとのメールだけれど、 それは現在の環境でもほぼ十分。
    でも、このGoogle Apps for Workは、 普通の会社には普通に便利そうである。 Gmailなど、慣れてるUIでそのままお仕事ができるので、 情報システムで教えることが少なくてすむし、 トラブルや不満も少ないのではないだろうか。
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    それでは今週の結城メルマガを始めます。
    今回は「仕事の心がけ」のコーナーで、
     「時間を味方につける」
    というお話をします。 ここしばらく結城が自分の仕事について悩んでいたことをお話しし、 その対策についてスケッチ風にお届けします。 この10月、11月、12月を実り多きものにするためのスタートです。
    では、どうぞごゆっくりお楽しみください!
    目次
    はじめに
    時間を味方につける - 仕事の心がけ
    想像する力と罵倒の言葉
    「わからない」の管理と心の中の教師 - 教えるときの心がけ
    おわりに