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記事 5件
  • Vol.344 結城浩/本当にいい勉強法/書く時間が取れない/思考の瞬発力/

    2018-10-30 07:00  
    216pt
    Vol.344 結城浩/本当にいい勉強法/書く時間が取れない/思考の瞬発力/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年10月30日 Vol.344
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』が出版されて一息ついたのもつかの間、結城は別の本の脱稿に追われています(脱稿に追われるって変な表現ですね)。
    さらに、最近お休み状態になっていた『数学文章作法 執筆編』の執筆も再開しました。これからもどんどん書いていきますよ!

    * * *

    パズルゲームの話。
    結城はiPhoneでパズルゲームをするのが大好きです。
    先日はEvergarden(エバーガーデン)というゲームをコンプリートしました。ポリゴン風味の美しい画像をした楽しいゲームでした。
    一言でいうなら「六角形が並んだ土地に種をまき、植物を成長させるゲーム」なのですが、あちこちに楽しい「仕掛け」がたくさん隠されています。普通のパズルゲームの場合にはチュートリアルやヘルプや基本操作があって、ユーザを導いてくれるのですが、このEvergardenにはそれが何もありません。ルールもわからない。そもそも、何をしたらゲームクリアなのかもわからないのです(!)。
    ルールやゴールすら手探りで進むゲームというのは初めてかもしれません。でも、ちゃんとわかるようになっています。オススメ。
    ◆Evergarden(App Store)https://itunes.apple.com/jp/app/evergarden/id1364677408?mt=8
    ◆Evergardenhttp://flippfly.com/evergarden/

    * * *

    好かれる作品、嫌われる作品の話。
    ある日「作品の好き嫌い」ということをぼんやりと考えていました。
    一つの作品が、ある人には激しく好まれ、別の人からは激しく嫌われるということはよくあります。その作品の熱量の高さのようなものがあって、それが人の好悪に大きく影響するのかもしれません。
    多くの人から嫌われる作品と、多くの人から好まれる作品とは、似ているところがあります。どちらも多くの人の心を揺さぶるという点です。そのときのポイントは正負の向きではなく絶対値にあるのでしょう。
    これはあくまで想像なのですが、深く嫌われる作品を書くことは、深く好かれる作品を書くのと同じくらい困難だと思います。多くの人が(好悪どちらの感情でもいいのだけれど)深く揺さぶられる作品を書くのはとてつもなく難しいと想像します。もしかすると、嫌われる作品を書く方が難しいかもしれませんね。
    なぜかといえば、嫌いな作品のページは単純に閉じられて終わりだからです。大嫌いなのに目を離せない、先を読みたくないのにページをめくるなんて作品を作るのは非常に難しいのではないでしょうか。

    * * *

    こだわりの話。
    作品を作る文脈で「こだわり」という単語がときどき使われます。
    「こだわりを持って作る」という表現には「作者がエゴを通す」ニュアンスが多少あります。でも、それは正しいのかしらん。「こだわりを持って作る」というのは、作者が自分のエゴを捨て、作品のあるべき姿に向き合うことではないでしょうか。作品を、作者のエゴでゆがめてはいけません。作者は、責任を果たす必要があります。読者への責任と、作品への責任です。
    スローガンにするならこうなるでしょう。
     《作者が死ぬことで、作品が生きる》
    もちろん、作者が死ぬというのは生物学的に死ぬという意味ではありません。自分のエゴやわがままを前面に出さず、ときにはばっさりとあきらめるという意味です。

    * * *

    「それは誰が考えるべきことか」の話。
    「それは誰が考えるべきことか」と思うことがときどきあります。
    たとえば、こちらがお金を払って何らかのサービスを受けているとしましょう。そのときに「こんなことをサービス提供者に求めたら、相手は困るのではないか」という場面があります。サービス内容として明示的に書かれていないことをお願いするときや、時間的な融通を利かせてほしいと思うときです。
    「困るかなあ。でも、このくらいやってくれてもいいよなあ」と考えても結論は出ません。サービス提供者が明示していないのだから、結論が出るわけはないのです。困るかどうかは、相手の内部事情しだいであるともいえます。
    不作法な振る舞いをするのはよろしくないけれど、困るかどうかを考え続けても結論は出ません。こちらがお願いしたときに、融通を利かせられるかどうかは、本来、相手が考えることだからです。さらにいうなら、こちらの要望を伝えることは、相手に対してニーズ情報を提供しているという面もあります。
    相手が考えるべきことまで、自分が考えすぎてはよろしくない。
    「いいですよ」となるか「それはできません」となるかは、相手次第なのだから。
    最近、そんな場面に何回か出くわしました。
    実はこれに似た事情はサービス提供者との間だけではなく、一般的な人間関係にもありそうだと思います。《相手のことを考える》のは愛の原則だから悪いわけではないのですが、本来、相手が考えるべきことまで自分が奪い取ってはいけません。結論が出なかったり、もしかしたら相手に対する越権行為になったりしそうです。
    あなたには、似た経験はありますか?
    他の人が考えるべきことを自分が考えてしまう経験や、自分が考えるべきことを他の人が考えてしまうという経験です。

    * * *

    亡き母の言葉。
    結城は、今年の春に母が亡くなるまでずっとメールのやりとりを行っていました。毎朝の日課ですね。
    母は、ちょっとしたことでも励ますのがうまいのです。
    私が脱稿前のたいへんな時期にメールしたとき、私のやや疲れたようすの文章に対して、こんな短い返事が返ってきました。
    「お仕事あるの、すごいです。本書いてるって、大したもの」
    この返事を読んだとき、まるで「けものフレンズ」のサーバルちゃんみたいな母だ、と思いました。
    母と交わした言葉を、折に触れて何度も思い出します。

    * * *

    では、そろそろ今回の結城メルマガを始めましょうか。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    理科でも、算数・数学を使いますよね
    書く時間がなかなか取れない - 文章を書く心がけ
    本当にいい勉強法を知りたい - 学ぶときの心がけ
    思考の瞬発力がない
    理科でも、算数・数学を使いますよね
    質問
    中学理科や高校理科でも算数や数学の知識は使いますよね?
    算数・数学が分からないままだと、理科も分からなくなりますよね?
    回答
    そうですね。
    数学(算数)は、科学(理科)にとって、最大の道具であり最高の言葉の一つです。
    科学では、数を数えたり、量をはかったり、グラフで表したり、複数のものごとの関係を調べたり、時間的な変化を考察したり、見つけた法則や原理を数式で表したりしますが、それらの活動はすべて数学と関わっています。
    数学のすべてを理解しなければ、理科がまったくわからなくなる! ということはありませんが、理科と算数・数学が違う科目だからといって算数・数学をわからないままにしておくのは非常によくありません。
    しかも、難しい内容になればなるほど、数学の重みは増していきます。なので、科学(理科)を学びたいと思う人は算数・数学も大切に学ぶことを強くお勧めします。
    蛇足ですが「説明文を読んで意味を理解する力」は算数・数学よりもさらに大事になります。
     
  • Vol.343 結城浩/Scrapbox/数学を好きになる/不登校引きこもりからの大学受験/長い文章が苦手/「わからない」とうまく付き合う/

    2018-10-23 07:00  
    216pt
    Vol.343 結城浩/Scrapbox/数学を好きになる/不登校引きこもりからの大学受験/長い文章が苦手/「わからない」とうまく付き合う/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年10月23日 Vol.343
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』が刊行しました!
    ありがたいことに、さっそく数学一般書でアマゾンランキング第1位となりました! 応援してくださる読者さんに心から感謝です!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://bit.ly/hyuki-matrix
    今回のテーマは「行列」です。現代の高校生は学校で「行列」を学びません。でも、行列は数学に欠かせないものの一つですし、大学に行ったら必ず線形代数で行列に接することになります。そのときに行列の基本的な概念に親しんでいるのといないのとでは大違い。『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』は数学を楽しむだけではなく、高校から大学へのスムーズな移行にも大きく役立つと思います。
    「行列」と並んで重要なのは「線型性」です。これは数学に留まらず、数理分野の至る所に登場する概念ですね。「数学ガール」シリーズでも繰り返し「線型性」については触れてきましたが、特に今回の『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』では、あちこちに登場する線型性を整理し直してまとめています。自信作です!
    といっても、難しい本になったわけではありません。いつも通り、数学ガールたちが数学トークを繰り広げ、具体的に数学を楽しんでいます。自分に読めるかなと心配な方のために《Web立ち読み版》も用意しました。第1章がまるまるWebで読めます。もちろん無料。Webブラウザでいますぐ読むことができますのでぜひご覧下さい。
    ◆《Web立ち読み版》『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』http://ul.sbcr.jp/MATH-PAwkh
    今年は結城が最初の本を出版してからちょうど25年目。今回の『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』で結城の著書はちょうど40冊目となりました(!)。これからも継続的な応援をよろしくお願いいたします。
    ◆結城浩の著書一覧http://www.hyuki.com/pub/books.html#pubs

    * * *

    なぞなぞ。
    コーヒーショップで表計算をしています。さてここはどこでしょう。
    答えは後ほど。

    * * *

    パズルゲームの話。
    結城はiPhoneでパズルゲームで遊ぶのが大好きで、執筆の合間に頭をリセットするのに使います。最近のお気に入りはCosmic Expressです。
    スペースコロニーの中を動かす電車の路線を自分でデザインして、そこにへんな宇宙人に乗せるというもの。空の車両が前に来ると宇宙人がそれに飛び乗る。そして自分の住居を通過すると、そこで飛び降りる。そんなパズルです。難易度もちょうど良くてとても楽しいですね。
    ◆Cosmic Expresshttps://cosmicexpressgame.com
    パズルゲームを解いてるときに毎度体験することがあります。たとえば、何回チャレンジしても解けない面があるとします。何回続けて繰り返しても絶対解けない。これは難しすぎるよ……と諦めかける。でも、次の日にもう一度チャレンジすると、一発で解ける。こういう体験、本当によくあります。そしてそれはパズルでの経験のみに留まらず、仕事でのヒントにもなります。
    うまい解決法が見つからないトラブルにぶつかって、いくら考えても突破口が見つからない。そういうときには続けて考えるのではなく、別な仕事をやってみることが功を奏するのではないかというヒントです。
    「あいだを置く」というの、大事なんですよ。

    * * *

    外でお仕事する話。
    結城は毎日カフェでお仕事をしています。
    ある日、気分を変えてファミレスで書き物をしていました。するとようすが見えるくらい近くの席で女性が仕事っぽいことをしています。同業者かな、と思いつつちらちらと観察。
    どうも、文章書きの人ではなくて漫画家さんのようですね。ファミレスでばさばさと紙を広げてどうやらネームをしようとしているようです。
    しかし、なかなか仕事に取りかからず、手にしたスマートフォンでずっとゲームをやっています(手の動きが明らかにゲーム)。
    ねえねえ、せっかくファミレスに着地したんですから、ゲームはそろそろ切り上げて、ネームに取りかかりましょうよ!と心の声を送る。
    そして気がつく。
    結城自身も、せっかくファミレスに着地したんですから、漫画家観察はそろそろ切り上げて、原稿に取りかかりましょうよ!
    まったくその通りですね!

    * * *

     面接官「面接始まるのでスマホはしまってください」  就活生「あっはい。開始…っと」  面接官「どうして机の上にスマホを置いたんですか」  就活生「いえ、大丈夫です」  面接官「どうしてマイクがこっちに向いてるんですか」  就活生「いえ、大丈夫です」
    これは、圧迫面接の話題がTwitterで流れていたので想像した小咄です。

    * * *

    Scannableの話。
    iPhoneアプリのScannable(スキャナブル)はすばらしいですね。日々の生活シーンで「10枚くらいの書類をささっとPDFにしたい」というときってよくありますよね。ScanSnapを使えばPDFにできますけど、それすらめんどうなときがあります。ScanSnapが置いてある部屋に行って、電源入れて、コンピュータをつないで……という手間がすでにめんどう。
    書類が目の前にあるとき、手元のiPhoneでScannableを起動するだけでさっと撮れる。複数枚を撮影して、ページの入れ換えや切り取り枠の変更もアプリ上でできる。あとはPDFに変換してEvernoteに送る。紙の書類にメモ書きした上でPDFにする場合もあります。手軽でとてもいい。
    たとえば、事務的な書類が郵便で届いたとします。「この書類のことはあの人にも送りたい」というときにPDFにしてメールで送る。あるいはまたDropboxに入れて複数人で共有する。あるいはまた純粋に自分の記録用として保存する。そんなときに手軽にPDFにできるのはうれしいことです。
    ScannableはPDFでも画像でも保存できます。手書きメモを単に写真撮ると変な陰影がついたり斜めになったりするけど、Scannableではそれを補正して、あたかも白い紙にまっすぐ書いたように直してくれます。それがほんとに便利。そういう機能はScannableに限らず、いわゆる「スキャンアプリ」ならどれでもやってくれる。まったくいい時代になりました。
    ◆Evernote Scannablehttps://itunes.apple.com/jp/app/evernote-scannable/id883338188?mt=8

    * * *

    現場の話。
    先日、自動販売機でコーヒーを買ったとき、BOSSコーヒーのこんなキャッチコピーに目が留まりました。
     時代がどうあれ、現場で働く。
    これはなかなか渋くてカッコいいですね。コーヒー飲みながら頭の中でこれを改変してみました。こんなふうに。
     時代がどうあれ、会社で働く。
    「現場」を「会社」に変えただけでキャッチコピーにならなくなりますね。不思議です。「現場で働く」と「会社で働く」では、いったい何が違うんでしょう。
    「現場」という単語で思い出すのが「踊る大捜査線」の映画に出てきた有名なセリフです。
     事件は会議室で起きてるんじゃない!  現場で起きてるんだ!
    というもの。会議室であれこれ議論するんじゃなくて、身体を張って泥臭く動く現場との対比が伝わります。
    ところでさらに頭を回転させると「実は、現場というのは多層的に存在するんじゃないだろうか」とも思えます。泥臭く働くという感じの現場だけが現場ではなく、会議室で方針を考えるのも現場じゃないかということです。
    誰しも、自分に密接に関係した階層については強い関心を持ちます。そして他の階層で活動している人のことを「わかっちゃいない」と考えがちです。でも、本当にそうなのかな。
    会議室で経営者が議論をするのは、現場のことをわかっちゃいないのかもしれないけれど、実は重要な活動のはずです。各階層には各階層の評価基準があり、それを満たしているかどうかで判断すべきなんでしょうね。
    ……などと思いつつコーヒーを飲んでいました。まあ、やぼな話です。
    村上春樹が以前どこかで書いていた「長編小説が自分の主戦場」というフレーズも思い出したり。
    他ならぬ、あなたの「現場」はどこでしょう。

    * * *

    それでは、そろそろ今回の結城メルマガを始めましょうか。
    どうぞごゆっくりお読みください。

    * * *

    そうだ、なぞなぞの答え。
    コーヒーショップで表計算をしています。さてここはどこでしょう。
    答えは「エクセルシオール(Excelしよーる)」
    ◆エクセルシオール カフェhttps://www.doutor.co.jp/exc/
    目次
    Scrapboxでノートの「死蔵」を防ぐ - 仕事の心がけ
    数学を好きになるには - 学ぶときの心がけ
    不登校引きこもりからの大学受験
    「長い文章が苦手」と言いたくなるときに考えること - 文章を書く心がけ
    「わからない」とうまく付き合いたい - 学ぶときの心がけ
    Scrapboxでノートの「死蔵」を防ぐ - 仕事の心がけ
    結城は技術評論社Software Design誌に「再発見の発想法」というコラムを連載しています。この「結城メルマガ」に連載しているものとほぼ同じものになります。
    ◆再発見の発想法http://www.hyuki.com/discover/
    あの連載は「バッファ」や「トリガー」などといった「技術的なキーワード」をベースにして古くて新しい発想を見つけ出そうという読み物になっています。
    ところで、連載コラムのためには普段から題材となるキーワードと、それに関連する話題をストックしておく必要があります。
    結城はこの連載コラムのためにずっとEvernoteを使っていたのですが、最近「どうも死蔵しているノートが多いな」と感じることが多くなりました。死蔵しているというのは、ノートに保存したものの、読み返したりそれに書き加えたりすることが少ないという意味です。
    Scrapboxは「キーワードごとにアイディアを広げていき、十分に熟成したら文章にする」という目的に最適じゃないか! というわけで、連載コラム用のアイディア出しをEvernoteからScrapboxへ移行することにしました。
    結城は連載コラム用に「こういうことを考えたいな」というキーワードのリストを持っています。キーワードだけで中身はありません。そのキーワードを一つ一つ [ ] でくくってScrapboxにペーストするだけで、全キーワードが自動的にリンクになってくれます。そしてScrapbox上でリンクをクリックすると、そのキーワード専用のページが自動的に作られるので、そこに内容をメモしていくのです。ページをざくざく作ってガシガシと書いていくのにScrapboxは便利です。
    そんな調子で連載コラム「再発見の発想法」用のたくさんのノートはScrapboxの方に全面的に移行し、EvernoteにはScrapboxへのリンクだけ入れておくことにしました。これからはScrapboxで連載コラムのアイディア出しを行いましょう。
    個人利用ならprivateなプロジェクトを無料でいくつも作れるので、複数のプロジェクトで活用しています。たいへんありがたいですね。
    ◆Scrapboxhttps://scrapbox.io
     
  • Vol.342 結城浩/数学ガールの図版をどう作っているか/パソコン買いたい/暗号を学ぶ/再発見の発想法/ゆさぶられない人生/

    2018-10-16 07:00  
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    Vol.342 結城浩/数学ガールの図版をどう作っているか/パソコン買いたい/暗号を学ぶ/再発見の発想法/ゆさぶられない人生/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年10月16日 Vol.342
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    今週はいよいよ『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』が刊行!
    《サイン本》と《メッセージカード》を取り扱う書店のリストを以下に公開しました。お近くの書店をぜひご確認ください!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』《サイン本》《メッセージカード》取り扱い店舗情報https://mm.hyuki.net/n/n4d951aecebb6
    刊行に先立って、『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の第1章がまるまるWebでいますぐ読める《Web立ち読み版》を公開しました。登録する必要もありませんし、もちろん無料です。Webブラウザで直接読むことができます。
    ◆《Web立ち読み版》『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』http://ul.sbcr.jp/MATH-PAwkh
    ぜひ、応援よろしくお願いいたします。
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://bit.ly/hyuki-matrix

    * * *

    日常の中の推理クイズ(問題編)
    朝、洗面所に入ったら、いつもちょうど見える位置に置いてある小さな置き時計がくるりと壁の方を向けて置いてありました。当然、時刻が見えなくなっています。家人がその向きに置いたようですけれど、さてその理由はなんでしょうか。
    解決編は少し後に書きます。

    * * *

    対数の話。
    「対数なんか役に立たない」という意見をネットで見かけました。
    役に立たないという方は「対数」が何かをよく理解していないで言っているのだろうと思います。
    たとえば「その数には、桁を表すゼロが何個つくのか」や「大きな数を書き表したときに何桁になるか」というのは、対数の考え方を利用していることに他なりません。大きな数を書き表したときに何桁になるかというのは、大事な感覚ですよね。
    対数には「掛け算を足し算に変換する」というすばらしい性質があります。たとえば、100×1000は100000になりますが、ゼロの個数に着目すると、2個+3個=5個という関係が成り立っていますよね。対数を使うと、100のようにキリのいい数以外であっても似たような計算ができるのです。
    大きな数を扱うときには対数の考え方が必ず出てきます。対数はもともと大きな数を扱うために生まれたものですから。対数を考えないというのは、極論をいえば大きな数を扱うのをあきらめるということになります。
    統計のグラフを見るときに目盛りがどうなっているかを調べるのは基本的な統計リテラシーですが、対数目盛りになっているかどうかの知識は極めて重要です。さもないと、ある量が倍増しているのか否かの判断をミスすることになるからです。
    ということで、対数が何かを知っている人は決して「対数なんか役に立たない」とは言いません。
    対数については『プログラマの数学 第2版』で楽しく解説しています。
    ◆『プログラマの数学 第2版』http://www.hyuki.com/math/

    * * *

    ものを食べる女の子の話。
    結城はなぜか、駅のホームでものを食べている女の子をよく見かけます。
    クレープやアイスを美味しそうに食べているのを見かけて微笑ましい気持ちになることが多いのですが、先日は驚きました。
    女性がケーキを美味しそうに食べているのを見かけたからです。駅のホームで立ったままケーキを食べるというのもすごいですが、その女性は美しい金髪で、上品にフォークを使って食べていました。そのようすが印象的で、思わず二度見してしまいましたね。
    「ガールズ&パンツァー」という作品に登場するダージリンという女の子を思い出しました。彼女は戦車の中で紅茶をたしなむのです。

    * * *

    共和国の話。
    ふと、Webサイトの「矛盾した紹介文」というものを思いつきました。
     このWebサイトは〇〇好きな人が集う〇〇共和国。  そして管理人の私はこの国の王様ということになります。
    この紹介文がどうして矛盾しているかというと「共和国」には「王様」がいないのが通常だからです。
    はい、どうでもいい話ですね。
    こういう、どうでもいい話というのはどこからやってくるのでしょう……

    * * *

    憲法と人権の話。
    ある人が職業を選ぼうとしているときに、その選択を妨害するようなことがあったらその行為は人権を侵害しています(職業選択の自由の侵害)。
    ある人が何かを学ぼうとしているときに、それを妨害するようなことがあったらその行為は人権を侵害しています(学問の自由の侵害)。
    ある種の罵倒の言葉は、しばしば人権を侵害する主張になります(生命、自由及び幸福追求権の侵害)。
    日本国憲法を読むと、人権の基本的な理解が得られます。生命、自由及び幸福追求権は第13条。生存権は第25条。職業選択の自由は第22条。学問の自由は第23条。
    憲法と人権を大事にしたい人は、自分の発する言葉に注意しましょう。その言葉は、誰かの人権を侵害する主張ではないでしょうか。その言葉は、憲法をないがしろにする主張ではないでしょうか。
    マイノリティと差別の議論を見ていて、そんなことを思いました。

    * * *

    あおるセリフとマウンティングの話。
    「あんたのやっている仕事なんか、誰でもできるよ」や「あんた、こんなことも知らないのか」などと人を馬鹿にしたり、あおったりするセリフがあります。それに対する返答を考えていました。
    ケンカごしに返答すると、相手のあおる土俵に乗ることになるのでおもしろくないですね。実は「素直に返事する」のがいいのではないかと考えました。
    たとえば、こんなふうになります。
     「あんたのやっている仕事なんか、誰でもできるよ」  「はい!」  (会話終了)
    もしも自分のやっている仕事が、誰でもできるものならば「はい」と答え、そうではないなら「いいえ」と答える。それで会話は終了です。
    素直に答えるというのは、汎用性高い返答であることに気付きました。
     「あんた、こんなことも知らないのか」  「はい!」  (会話終了)
     「あんたのやってる研究なんか自分にもできるよ」  「はい!」  (会話終了)
     「あんたが書いてる本なんて、誰だって書けるさ」  「はい!」  (会話終了)
    もともと「あおるセリフ」というのは「あおる」ことが目的なので、あおられる側がそれに反発しなければマウンティングとして成立しにくいんですね。「売り言葉に買い言葉」とはよくいったもので、相手が売りつけてくる「あおるセリフ」は買わなければ何も起きないのです。
    結城の発想は、ここから別の方向に進みました。
     「あんた、こんなこともできないのか」  「ふふふ、教えてあーげない(はーと)」  (恋の開始)
     「ふん!千尋っていうのかい?」  「はい!」  (湯婆婆との契約開始)
    こういう、どうでもいい話というのはどこからやってくるのでしょう……

    * * *

    問い。
    人生の喜びとは何か。
    答え。
    仕事の帰り道でふと立ち寄った百均の店で二十四色の色鉛筆を買って帰ったときに「この緑色、すごくきれいだね! これで何描くの?」と言われること。

    * * *

    日常の中の推理クイズ(解決編)
    置き時計を壁に向けて置いてあった理由は「電池が切れて時計が止まってしまったので、電池交換するまで誤認を防ぐため」でした。奥さん賢いなあ、と思いました。

    * * *

    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    文系大学生、暗号を学ぶのにどうすればいいか
    数学科、パソコンを買ってプログラミングをしたい
    才能か、努力か、経験か - 学ぶときの心がけ
    『数学ガール/ポアンカレ予想』に出てきた図形の描き方 - 本を書く心がけ
    人を好きになるとはどういう感覚か
    ファーストフィット - 再発見の発想法
    他人にゆさぶられない人生を歩むために■
    文系大学生、暗号を学ぶのにどうすればいいか
    質問
    大学受験以来、数学の勉強をしていない文系大学生です。
    あるきっかけで暗号学にとても興味が湧き、勉強しようと思い立ったのですが、何から手をつけていいかわからず迷っています。暗号学の勉強をする前にやるべき数学の分野を教えてください!
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    新しいことに興味が湧き、勉強しようと思うのはとってもいいですね!
    数学に取り組む前に、暗号の概要を知るために拙著『暗号技術入門』はぜひお読みください。
    ◆結城浩『第3版 暗号技術入門 秘密の国のアリス』http://www.hyuki.com/cr/
    結城の本を読んだ後に読むのには、内容的にも難易度的にもサイボウズ・ラボの光成滋生さんの『クラウドを支えるこれからの暗号技術』がおすすめです。
    ◆ 光成滋生『クラウドを支えるこれからの暗号技術』https://herumi.github.io/ango/
    結城の本には数学がほとんど出てきませんが、光成さんの本には数学が少し出てきますので、感触をつかむのにいいと思います。そこまで読んで来てめげないようなら、結城の本や光成さんの本の参考文献をチェックしてもいいかもしれません。
    数学専門書なども置いてある大きな書店に行きますと、暗号に関する書物はセキュリティの棚や数学の棚にたくさんありますから、いくつか眺めてみるのを強くおすすめします。「大学受験以来数学の勉強をしていない」だけだと、あなたがどの程度難しい本を読めるのか、誰にもわからないからです。
    暗号に関わる数学ということですと、整数論、情報理論(符号理論)や群論といった分野名がすぐに思いつきます。でも、それらをすべてマスターしてから暗号を学ぶというのは、あまり現実的ではありません(それぞれが非常に深い分野ですから、そもそも「マスター」できるかどうか……)。
    ですから、結城の本や光成さんの本で「自分が詳しく学びたいもの」の目星を付け、暗号に関する数学書でそれに関係しそうなものを見つけ、それを読むのに必要な数学は何だろうか、と逆に考えるのが無難だと思います。
    暗号に限りません。何か新しい分野を自分が学ぼうと思ったら、大きな書店に行くのはおすすめです。そして、難しい本、易しい本をあちこち開いてみて、自分の興味や現在の知識に合いそうな本を探すのです。本には相性がありますので、他の人に紹介してもらっても自分にしっくりくるとは限りません。必ず、自分の目で見て判断することが大事です。
    暗号について、あなたが求めているものとは違うかもしれませんが、日本には、「情報処理安全確保支援士試験」というものがあります。情報として一応お伝えしておきます。
    数学科、パソコンを買ってプログラミングをしたい
    質問
    自分は数学科の者です。
    プログラミングというものをやってみたいのですが、数学書しか触れてこなかったので、どうすればいいのか分かりません。なので、結城先生に本などどう読めばいいのか教えていただきたいです。
    また、パソコンを買いたいのですが、数値計算とプログラミングをやる上で具体的にどういうパソコンがオススメなのか教えていただきたいです。
    長々と申し訳ございません。よろしくお願いします。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    パソコンをこれから買うということですと、プログラミングを行う以前にいろいろとハードルがありそうなので、そちらを中心にお答えします。
    コンピュータはポンと買っておしまいではなく、日々のメンテ作業や、新しいソフトのインストールや、トラブルシュートが必要になります。ですから、細かいトラブルが起きたときに相談できる人がいるかどうかが重要になりそうです。大学ではコンピュータの授業やガイダンスはないのでしょうか。
    OSをどうするか、ソフトは何を入れるか、そもそもあなたが何をしたいのか、そもそもパソコンでどういうことができると思っているのか……そのようなことをていねいにあなたにインタビューしないと、ほんとうに的確なアドバイスは難しいと思います。
    数学科ということですけれど、コンピュータに詳しくて親身に相談に乗ってくれる知人や友人はいないのでしょうか。相談に乗ってくれる方にアルバイト的にお願いしてマンツーマンでお話をするという方法は取れないでしょうか。
    生協書籍部などでコンピュータやプログラミングの本を探してみてください。いろんなレベルの入門書もたくさんあります。どれが正解ということはないので、情報収集してください。
    あなたが求めているのは一般的なコンピュータの使い方(WebとSNSとメール)以上のものですから、あなたの立場に似た人(つまりあなたのまわりにいる人)で詳しい人に尋ねるのは大切だと思います。
    不安になる要素をたくさん書きましたが、現代で数理的な活動をしていて、自分のコンピュータを持っていないという選択肢は考えられません。結局コンピュータは投資のようなものですから、どこかの段階では「えいや」と進むしかありません。がんばってください。
    以上です。
    あまり役に立たない回答でごめんなさい。
     
  • Vol.341 結城浩/数学は何から学ぶ?/アプリを作りたい/受験生、気付く力/「とりあえずやれ」が苦手/亡き母/

    2018-10-09 07:00  
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    Vol.341 結城浩/数学は何から学ぶ?/アプリを作りたい/受験生、気付く力/「とりあえずやれ」が苦手/亡き母/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年10月9日 Vol.341
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    いよいよ今週末には『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』が刷り上がり、結城は全国の書店に送られる《サイン本》を作る作業を行います。今週末から来週にかけて書店に並び始めることになります。
    先週もお話ししましたが、正確に「何日にどこの書店に並びます」ということは結城にはわかりません。申し訳ありません!でも、公開できる情報はTwitterを中心にアナウンスしていきたいと思います。どうぞご理解ください。
    《サイン本》や《メッセージカード同梱本》などの情報もアナウンスします。配本される書店さんのリストは、結城が入手できしだいTwitterやnoteなどでアナウンスする予定です。
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://bit.ly/hyuki-matrix
    いよいよです。ぜひ、応援よろしくお願いいたします。

    * * *

    おもしろい本の話。
    ふと思ったこと。
    「こういう本を書こう」としっかり考えて書くと、いい本ができる。
    でも「どんな本になるかわからないけど、おもしろいからこれ書く!」みたいに突き動かされて書くと、ものすごくおもしろい本ができるのではないだろうか。
    とはいえ、突き動かされて書いたものは独り善がりになることも多い。
    また、ひととき燃え上がった情熱がすぐに冷めてしまって最後まで行き着かないことも多い。
    それに、なにより「突き動かされる」という表現から自明なことだが、そんな状況はそもそも自分で制御できない。「よし、次の本は突き動かされて書こう!」なんて言えないよね。
    せいぜい言えるのは「突き動かされて書きたい気分」になったときにそれを大事にすることくらいだろうか。
    まるで、恋だな。
    ◆文章を書くのは、恋に似ている。http://www.hyuki.com/dig/bunkoi.html

    * * *

    カメラで写真を撮ることとグラレコの話。
    先日、朝の食卓で彼女(妻)が「カメラで写真を撮るというのはどういうことか」を結城に話してくれました。興味深く聞いていたのですが、聞いているうちに「グラレコ」(グラフィックレコーディング)したくなったので、手元にあった紙に描いてみました。これです。
    ◆カメラで写真を撮るということ
    自分が撮りたいイメージをパラメータに変換し、カメラを操作し、カメラが写真にする流れを描きました(写真の構図などは無視しています)。
    左側には自分が思い描くイメージがある。撮影者はそれをイメージしながら写真撮影のためのパラメータを調整する。そのパラメータをカメラで設定する。そして撮影すると写真ができる。そのような流れです。
    どうして結城がこういう図を描きたくなったかを自己分析してみました。どうも、たくさんの用語(露出、ISO感度、シャッタースピード……)が出てくると同時に、たくさんの存在(自分、カメラ、写真、イメージ)が出てきたからのようです。
    たくさんの用語や存在が出てくると話がごちゃついてきますよね。何と何が同じレベルの用語なのか、何から何へどんな情報が伝わっていくのか、それらを整理しないことには頭にうまく入ってきません。それが気になったので図を描きたくなったというわけです。
    図に描いていると、ものごとが整理されていくようすがよくわかります。カメラを学ぶことについて、こんなふうに思いました。
    「カメラを学ぶというのは《自分の作りたいイメージをどのようなパラメータで表すか》を学ぶ側面と、《自分のカメラのどこを操作すればそれぞれのパラメータを設定できるか》を学ぶ側面があるわけなんですね」
    図を描くことで整理する。それはとてもおもしろい感覚です。

    * * *

    学校で習ったかどうかの話。
    「数学ガール」シリーズや、「数学ガールの秘密ノート」シリーズの読者さんからときどき「内容が中学や高校の範囲を越えている」という感想をいただくことがあります。「だから難しい」というニュアンスの場合もあるし、「だからおもしろい」というニュアンスの場合もあります。感想をいただけるのはありがたいことです。
    作者として(あるいは一読者として)結城が思うことは、両シリーズに登場する彼女たちはおそらく「『中学や高校の範囲を越えている』という概念を越えている」のだと思います。彼女たちは、自分が知りたいと思うことを知ろうとし、考えたいと思うことを考えている。そして気になることや疑問に思うことを質問しあっている。「学校で習った範囲かどうか」ということをそれほどは意識していないように思います。
    たとえば文章を読んでいて、知らない言い回しが出てきたとき「これは学校で習った言い回しか」ということはあまり意識しないと思います。それよりも「これってどういう意味だろう」と考えますよね。人に聞いたり調べたり。それと同じことなんじゃないでしょうか。
    「学校で習ったかどうか」はどうでもいいと言いたいのではありません。そうではなくて、「学校で習ったかどうか」はさておき、知りたいと思うことを知り、学びたいと思うことを学ぶことは楽しいですよと言いたいのです。「学校でまだ習っていないから知らなくても不思議ではない」というのは理解できます(これから学べばいいんだよということです)。でも「学校でまだ習っていないから知る必要はない」というのは理解しにくい態度ですね。

    * * *

    おもしろい本を読む話。
    ある小説を読んで考えさせられた。時代考証いい加減で、論理的にも破綻していて、登場人物の行動は一貫性に欠けている。のに、めちゃめちゃおもしろい。設定がいいのかもしれないし、キャラが立っているからかもしれない。落ち着いて考えると話が大半破綻しているのだけど、おもしろくて最後まで一気読みしてしまった。
    破綻していると思ったけど、表現には勢いがあるし、登場人物の書き分けもなされている。それがあるので完全崩壊は免れている。最もすぐれていたのはテンポだ。新しい事件がどんどん起こるので、登場人物はそれに必死に対処せざるをえない。スピーディ。登場人物がほっとする間もなく次の事件が起こる。読者は飽きる暇がない。
    二回読みたいか、というと「うーん」とうなってしまうけれど。

    * * *

    ことわざの理屈っぽい解釈の話。
    「帯に短し襷に長し」ということわざがあるということは「帯と襷の適切な長さ」を比較すると「帯>襷」だなあ、と思いました。
    どうして「帯>襷」といえるかを理屈っぽく説明します。
    「帯に短し襷に長し」というのは、ひも状の何か(たとえばそれをXとしよう)を見たときに「帯にするにはXは短すぎるし、かといって襷にするにはXは長すぎる」という感覚を利用して「中途半端」を表現したことわざですね。つまり、帯>X>襷ということ。ですから「帯>襷」となります。
    ちなみに「帯に短し襷に長し」の英語訳をさくっと検索してみると「帯>X>襷」的なニュアンスの表現はほとんどありませんでした。そういう不等式ではなくて「Xは帯にできないし、Xは襷にもできない」という否定された等式のような表現が多かったですね。たとえば「X is good for neither 帯 nor 襷」といった表現です。適切なものの集合をSとして「∀C∈S(C≠X)」みたいな表現もありました。
    だから何? という主張は特にありません。単にことわざを理屈っぽく解釈したかっただけでして……

    * * *

    「トリカラ」は鳥の唐揚げ。では「ヒトカラ」は何だろう。
    「ヒトカラ」は一人カラオケ。では「トリカラ」は何だろう。

    * * *

    ライブコーディングの話。
    Rui Ueyamaさん(Googleのソフトウェアエンジニア&スタンフォードの学生)が、簡単なプログラミング言語を作るコーディング動画を公開しています。プログラムを少しずつ大きくしていくようすを解説つきで紹介しています。C言語を使ってプログラミング言語処理系のプログラムを作っているようすを「ライブで」見ることができます。
    プログラミングに関心があるなら、たいへん楽しめると思います。途中でマニュアルを調べ出すようすも動画に登場しますよ。
    ◆簡単なプログラミング言語を作るライブコーディングhttps://twitter.com/rui314/status/1040247100238262272
    結城も若い頃、こういう感じで「小さなプログラム」をどんどんふくらませていくプログラミングをよく行いました。とても楽しいんですよ!

    * * *

    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    大学レベルの数学を学びたいとき、まず何から? - 学ぶときの心がけ
    プログラミングを始めて2ヶ月、iOSアプリを作りたいが進展がない
    受験生、気付く力を養うには - 学ぶときの心がけ
    ひらがなは読みやすいか - 文章を書く心がけ
    「とりあえずやれ」が苦手です - 仕事の心がけ
    いまは亡き母に会いたい
    大学レベルの数学を学びたいとき、まず何から? - 学ぶときの心がけ
    質問
    大学レベルの数学の勉強を始めたいです!
    まずは微分積分から手を付けた方がいいでしょうか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    あなたが興味があるところ、自分の力に合うところから始めて構わないと思います。
    特にこれというのがなければ「論理と集合」という分野から学ぶのもお勧めできます。
    なぜ「論理と集合」をお勧めするかというと、これからどのような数学の本を読むにせよ、論理と集合が必ず出てくることになるからです。
    こちらのページで紹介している『論理と集合から始める数学の基礎』という本を推薦します。
    ◆嘉田勝『論理と集合から始める数学の基礎』https://math.hyuki.net/20180513225240/
    この本は数学で出てくる数式や言い回しなどについての説明もありますので、今後あなたが数学の本を読んでいく上での基礎力をつけるのに大いに役立つと思います。
    ただし、小説を読むみたいにさささっと読む本ではありません。頭をフルに使ってしっかりと考えながら読む本ですので、その点はご理解ください。
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.340 結城浩/的外れな指摘/難しいことを書きたくなる衝動/「愛」の概念が食い違っている人同士の恋愛/やってみたい!という気持ちを殺さない/

    2018-10-02 07:00  
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    Vol.340 結城浩/的外れな指摘/難しいことを書きたくなる衝動/「愛」の概念が食い違っている人同士の恋愛/やってみたい!という気持ちを殺さない/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年10月2日 Vol.340
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    十月ですね!
    今年はとても災害が多い年じゃないでしょうか……九月の最後も台風24号が荒れ狂いました。
    被災した方々にお見舞いを申し上げます。

    * * *

    さて、『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』は編集部から組版+印刷の方に作業が進んでいるようです。来週の2018年10月12日よりも後で、次第に書店に並び始めることになると思います。
    いつものことですが「何日に店頭に並びます」というはっきりしたことはいえません。せいぜいいえるのは「この日よりも前には店頭にはありません」ということくらいです。Twitterなどで「そろそろ本屋さんにあるかな」というツイートを見るたびに、はっきりした情報がいえなくて心苦しく思っています。
    先日は結城が個人的に《サイン本プレゼント》の企画を行いましたが、それとは別に今回も《サイン本》の販売が予定されています。これは《通常本》とほぼ同日か少し先行しての販売になると思います。《サイン本》が配本される書店さんのリストは、結城が入手できしだいTwitterやWebなどでアナウンスする予定です。
    できるだけ全国の書店さんに配本されるように出版社にはお願いをしていますが、冊数に限りがあるのでご了承ください。
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://bit.ly/hyuki-matrix
    もしも私の数え方が間違っていなければ、今回の『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』は結城の50冊目の本となります(!)。
    新版や増補改訂版などいろんな改版を合計しての話ですけれど、50冊というのはなかなかの冊数だと思います。ひとえに読者さんがいらっしゃるからですよね。本当に感謝します!
    ◆結城浩の著書一覧(PDF)http://www.hyuki.com/pub/pubs.pdf

    * * *

    ブラックアウトステッカーの話。
    「数学ガール」シリーズにはリサちゃんという寡黙なコンピュータ少女が登場します。彼女はプログラミングが得意で真っ赤なキーボードを使うのですが、彼女の使うキーボードの上には文字が書かれていません。キートップの文字を見ることはないので、そもそも文字が不要だからです。無刻印キーボードを駆使するリサちゃんはカッコいいです!
    ところで先日「キーボードを無刻印化するシール」というリアルな製品の存在を知りました。さすがに真っ赤なキーではなく、真っ黒なキーで「ブラックアウトステッカー」というそうです。
    ◆ブラックアウトステッカー(アマゾン)https://amzn.to/2DFQxLy
    MacBook Proのキーボードにこのシールを貼ると、文字がすべて見えなくなり無刻印キーボードに変身です。カッコいい! というか、カッコよさだけが目的ではなくてキートップの保護になりそうです。キーボードを酷使していると、キートップが削れてしまうのです。

    * * *

    教師と生徒の仮想的な《対話》、その1。
    教師「この方法はまだ教えてないだろう。教わってない方法を使っちゃだめだ」
    生徒「もう教わりました!」
    教師「誰から?」
    生徒「いま読んでいる本から教わりました」

    * * *

    教師と生徒の仮想的な《対話》、その2。
    教師「この方法はまだ教えてないだろう。教師から教わってない方法を使っちゃだめだ」
    生徒「もう教わりました!」
    教師「どの教師から?」
    生徒「私は、私という教師から教わりました」

    * * *

    正しい目的のためだとしても嘘をいうのはよくないという話。
    ネットを見ているとよくわかるのですが「『世の中を良くする』という目的を達成するためには、嘘を言っても構わないし、デマを飛ばしても構わない」と考える人は存在します。でも結城は、それはまちがっていると思いますし、自分はそのような行動をとらないようにしたいと思っています。
    「良い目的のためには嘘を言っても構わない」と考える人は、簡単にいうなら話し相手を「だまそう」としています。目的の良し悪しは関係なく「嘘を言う」のは相手をだまそうとしていること。その時点で、相手を自分の目的のための道具扱いしていると言えます。そんなことをしてはいけません。
    人間だから誰しもまちがいます。意図せずして嘘を相手に伝えてミスリードしてしまうこともあります。それはしかたがありません。でも、明らかな嘘だと自分がわかっているのに、良い目的のためだからといって相手に「嘘をつく」のは悪いことです。そう思わないとしたら、何かがおかしくなっています。
    嘘をつくのは、基本的に相手をだますこと。つまりそれは、相手との信頼の絆を切っても構わないと言ってることになります。たった一回の取引相手のように相手を扱い、だませたらもうけものだという状態に近いのです。
    と、ここまで書いてくると、極限状況にある例外も思いつくのですが、またそれは別の話となるでしょう。

    * * *

    VRoid Studioの話。
    VRoid Studioというのは3Dのアバターを作るためのツールです。WindowsおよびMacで動作する無料アプリケーションで、3Dのモデルを作ることができます。
    ◆VRoid Studiohttps://vroid.pixiv.net
    興味があったので、ダウンロードしてちょっとだけ使ってみました。ダウンロードしてからほんの数分で以下のようなキャラクタが作れます(スクリーンショットは少し昔のバージョンです)。といっても顔を調整して髪の毛をささっと描いただけですけれど。
    ◆VRoid Studioダウンロード後、数分でこのくらいまで来ます(スクリーンショット)
    とても楽しいので、キャラクターの表情を変化させる様子を動画で撮ってみました。
    ◆キャラクターの表情変化https://youtu.be/d9pEQfJfIAc
    VRoid Studioでキャラの表情を変えていて思ったんですが、表情を変えると、見ているこちらもつられて同じ表情になりますね。それから表情の変化で感情の変化が引き起こされるのがよくわかります。なごやかな表情に変わるとこちらもほっとしたりして。
    人間の心は、人間の顔に敏感に反応するのかもしれません。

    * * *

    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    的外れな指摘をしてくる人への対処 - 文章を書く心がけ
    数学書の書き手として、難しいことを書きたくなる衝動をどう抑えるか - 本を書く心がけ
    「知る」と「理解する」との違いは何か - 学ぶときの心がけ
    「愛」の概念が食い違っている人同士の恋愛
    自分の「やってみたい!」という気持ちを殺さないために - 学ぶときの心がけ
    的外れな指摘をしてくる人への対処 - 文章を書く心がけ
    質問
    自分が作ったものや、自分の活動に対して、誰かから指摘を受けたとします。
    「確かにその通りだ」と思う場合は、その指摘に感謝したくなりますが、「いやいや、それは的外れな指摘だぞ」と思う場合は、どう反応するのがいいのでしょうか。
    結城さんのところにも、著書に対して「的外れな指摘」をしてくる人もいると思いますが、どのように答えていらっしゃいますか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    まず「指摘に感謝」という表現には、二つの意味が混じっていることに注意します。
    (A)「指摘してくれた行為に感謝」と(B)「指摘の内容に感謝」という二つの意味です。
    (A)のように「指摘してくれた行為に感謝」する場合は、指摘の内容に依存しません。
    (B)のように「指摘の内容に感謝」する場合も、何通りものパターンがありそうです。書籍に関していうと、誤字脱字の指摘などは内容的に特に問題になりません(誤字は誤字だし、脱字は脱字ですから)。でも「この表現だと、このような意味になってしまいます」のように、表現をどう解釈するかになると、話は単純ではないですね。
    読者さんからの指摘に関して「それは的外れの指摘だ」と思うことは確かにあります。でもそこで単純に「それは的外れの指摘だから、無視していい」と考えるのは表現者としてはもったいないと思っています。
    結城はたとえ「的外れの指摘」のように思えても「メタな発想」に進もうとすることが多いです。どういうことかというと「どうしてこの読者はそのような理解をし、このような的外れな指摘をしたのだろうか」と考えるのです。読者さんが誤読したのなら、誤読をした理由がどこかにある可能性が高いからです。それを考えることは表現者にとって有益なことです。
    文章を書くときには《読者のことを考える》という原則が大事です。読者さんからの指摘は「的外れな指摘」であったとしても、読者さんの情報であることにはまちがいありません。「なるほど、この読者さんは、結城が書いたXの部分をYだと思ったから、このような誤解をしてしまったんだな」のように分析するということです。
    何を作るにしても、どんな活動をするにしても、指摘は重要な意味を持ちます。「的外れな指摘」であったとしても、「こういう指摘をしてくる人がいるんだ」というのが有益な情報になる場合が多いからです。
    ここまでは「的外れな指摘」をどのように受け止めるかという話です。
    では、「的外れな指摘」をしてきた人にどのように対処するのがいいのでしょうか。
    もちろんどのような対処をするのがいいかは場合によるでしょうね。でも、どんな場合でも、感謝して損になることは少ないですし、感謝することは可能です。手間がかかる場合には、相手にその感謝を実際に伝えるのは難しいかもしれませんけれど、感謝するのは大事です。
    個人的には「うっかり返信するとめんどくさいことになりそうになる的外れな指摘が書かれたメール」が届く経験はしばしばあります。やや差し障りがあるので「めんどくさいこと」を具体的には書きませんが、想像はできると思います。そういうときには、感謝しつつもスルーすることが多いです。つまり、返信しません。めんどくさいメールへの対処は、信じられないくらい時間と心的なパワーを消費することがあるからです。でも、指摘してくれた行為(A)には深く感謝しています。
    ということで「的外れな指摘」に関しては、以下の通りです。
    (1)指摘してくれた行為はすべて感謝
    (2)その指摘が来た理由を考えるのは役に立つ
    (3)返信するかどうかは状況次第
    ご質問ありがとうございました。