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記事 4件
  • Vol.296 結城浩/言葉と思考のどちらを追っているか/何のために、そうするの? - 教えるときの心がけ/

    2017-11-28 07:00  
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    Vol.296 結城浩/言葉と思考のどちらを追っているか/何のために、そうするの? - 教えるときの心がけ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年11月28日 Vol.296
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    知っている人にはすぐわかるクイズの話。
     「あれがカッパ?」  「そうだね。これがエプシロン」
    この会話がなされた「場所」を、 「アルファベット3文字」で答えてください。
    知ってる人にはすぐわかりますが、 知らない人にはわからないので、 あまり長時間考えないでくださいね。
    答えは後ほど。
     * * *
    うたう声の話。
    先日、とあるお店で買い物をしました。
    そのお店では、レジの人はみな「うたう」んですよ。
    歌をうたうというわけではないですね。 独特の音程で品物を読み上げるということです。
     ニンジン〇〇え〜ん  キャベツ〇〇え〜ん  トマト二点で○○え〜ん
    のように。しかも、ある特定の個人がうたうのではなく、 レジの人がみんな、同じ音程でうたうんです。
    そんな話をツイートしていたら、@uni1000yama1000 さんから、 「そろばんの読上算の名残かなぁ」というコメントをいただきました。
    なるほど! 確かに、耳をすましてよく聞きますと、 そのような雰囲気はありますね。 最初に「ご破算で願いましては〜」と言ってもおかしくありません。
    複数のレジが並んでいるので、さながらコーラスか、 教会の交読文のような風情があります(大げさにいえば)。 その店で働き始めた人は、 きっとその「うたいかた」を練習するのでしょう。
    ところで、19世紀フランスの哲学者アランの小文に、 「うたう叫び声」というものがあります。 そこには日常での「うたう声」について書かれています。 以下、ちくま哲学の森6『詩と真実』所収、 アラン「芸術に関する101章より」(高橋正二訳)から引用:
     ----
     朝になると、往来のほうで、  物売りのうたう叫び声を、あなたは聞く。  その叫び声を耳にすると、  いま何時ごろになったかということが、  あなたにはわかる。
     ----
    結城は、この書き出しがとても好きです。 何でもない、当たり前のことを書いているのに、 この文章にはすっと引き込まれるような魅力があるからです。 別の箇所からもう少し引用しますね。
     ----
     遠方へ伝える言葉は、おのずから、音楽的になる。  遠方へ伝える言葉は日常の言葉のアクセントから、  旋律を借用する。  しかし、この旋律は、よりよく理解されるように、  より遠くまでとどくように、  純粋化され、単純化される。
     ----
    いいなあ! こういう文章、大好きです。 この文章自体が、うたうように書かれているみたい。 アランのこの文章を初めて読んだのは、 結城が大学生のころでした。私が書く本のあちこちには、 この文章の香りがほんのわずか残っているかもしれません。
     ----
     「孤独な人は手紙を書く」とミルカさんが言った。  「孤独な数学者は論文を書く。  未来の誰かに伝えるために、論文という名の手紙を書く」
     『数学ガール/フェルマーの最終定理』
     ----
    うたう声が、そこにある。
     * * *
    最大値の話。
    哲学者ベンサムは「最大多数の最大幸福」や「最大幸福原理」を論じたそうです。 社会の幸福は個人の幸福の総和であり、 幸福を最大にするような行為が好ましいといった論です。
    以下、それを耳にして思ったこと(ベンサムとは関係ありません)。
    実数xが 1 < x < 100 の範囲にあるとします。 つまりxは1より大きく、100より小さいとしましょう。 このときxの最大値は存在しません。
    100という最大値があるじゃないか、と勘違いしそうですが、 xは100より小さいというのですから、 xは100という値をとることはないのです。
    xは99になるし、99.9にもなるし、99.99にもなるし……と、 いくらでも大きくなれるのですが、100にはなれません。 いくらでも大きくなれるということは、 最大値は存在しないといえるのです。
    こんなことを考えるのは、 Web連載の第131回と第132回で、 ちょうどそういう話題を扱っていたからです。 「いくらでも大きくなれる」というのは、 必ずしも「無限大になってしまう」というわけではないのですね。
     * * *
    注文の話。
    カフェで注文をします。
    毎日のように同じ店で同じ注文を繰り返していると、 売り手の側が最終的に必要な情報はおおよそわかってきます。 たとえば、
     ・基本的な注文  ・飲み物のサイズ  ・ホット/アイスの区別  ・砂糖とミルクの要不要  ・ポイントカードの有無  ・支払いの方法
    などのことです。店頭では、売り手と私(買い手)の対話を通して、 これらの情報を伝えることになります。
     店「いらっしゃいませ。ご注文は?」  私「コーヒーで」  店「大きさはどうしましょう」  私「スモールで」  店「ホットでよろしいですか」  私「アイスにしてください」  店「ミルクはお使いですか」  私「いえ、いりません」  店「ポイントカードをお持ちでしょうか」  私「いいえ」  店「了解しました。お支払いは」  私「現金でお願いします」
    毎日のようにこういった対話がなされることになりますね。 あるとき、相手に必要な情報をぜんぶまとめて言ったらどうなるかな? と考えたことがあります。すると……
     店「いらっしゃいませ。ご注文は?」  私「アイスコーヒーのスモールで、ミルクは不要。   ポイントカードはありません。支払いは現金で」  店「了解いたしました……えっと、ミルクはご不要でしたよね。   恐れ入ります。大きさはスモールでよろしかったですか?」
    こんな対話になってしまいました。 こちらの都合で情報を圧縮して相手に渡しても、 相手がその準備が出来ていなければうまく情報は伝わりません。
    対話は双方向。片方が勝手に最適化しても、 やりとりのプロトコルは最適化されるとは限らないのですね。 むしろ、売り手の想定外の情報がやってくることで、 やりとりに余計な時間が掛かる場合もありました。
    必要な情報を前もって押さえておき、 相手からの問いの順番に乗り、 一つずつ答えていった方がスムーズに行くようです。
    日常のちょっとしたことですが、 こういうところにも「コミュニケーションのあり方」が見え隠れするなあ、 と感じた次第です。
    自分がいて、相手がいる。それでこそ対話。 自分だけの都合でコミュニケーションを整えるのは難しいのですね。
     * * *
    では、クイズの解答です。
    冒頭に出題したクイズの正解は「SFC」でした。
    SFCというのは慶應大学の湘南藤沢キャンパスの略称で、 ここには、カッパ、エプシロン、イオタ、オミクロンという名前の棟があります。 その他にも、アルファとか、オメガとか、シグマとか…… 施設にはギリシア文字にちなんだ名前が多くつけられているようです。
     ◆慶應大学の湘南藤沢キャンパス  https://www.sfc.keio.ac.jp/about_sfc/campus_map.html
    結城は以前、 パターン・ランゲージなどの研究活動をなさっている 井庭崇先生の研究室を訪問しました。 そのとき、キャンパス内で迷った結城は研究室までたどり着けず、 通りかかった学生さんと冒頭のクイズのような会話をしたことがありました。 結城は、
     「あれがカッパになるんですか?」
    と親切な学生さんに尋ねつつ、 我ながらユーモラスなセリフだなあと思ったのです。
    建物が四棟並んでいて、 カッパ、エプシロン、イオタ、オミクロンという名前がついています。 なんて不規則な名前を付けるんだろうといぶかしがっていますと、 その学生さんは「慶應(KEIO)なんですよ」と教えてくれました。
     κ カッパ  ε エプシロン  ι イオタ  ο オミクロン
    なんと! すぐ気がつかないなんて、私はにぶいですねえ。
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    何のために、そうするの? - 教えるときの心がけ
    「読み手の都合」を優先する - 数学ガールの執筆メモ
    言葉と思考のどちらを追っているか - 教えるときの心がけ
    おわりに
     
  • Vol.295 結城浩/意味の深掘り - 数学ガールの執筆メモ/たった一人のために書こう - 本を書く心がけ/

    2017-11-21 07:00  
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    Vol.295 結城浩/意味の深掘り - 数学ガールの執筆メモ/たった一人のために書こう - 本を書く心がけ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年11月21日 Vol.295
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    何だか、ここ数日で急激に寒くなってきました。
    冬、到来ですね。
    結城はのどが弱いので、 外出するときにはマフラーとマスクを愛用しています。 マフラーは首を温めるため。 そしてマスクは冷たく乾燥した外気を吸わないようにするため。
    あなたも、どうぞ風邪など召しませぬように……
     * * *
    新刊の話。
    『プログラマの数学 第2版』が2018年1月に刊行になります。
    先日アマゾンに商品ページが公開され、 ありがたいことに、 数学の新着ランキングで第1位となりました。 応援ありがとうございます!
     ◆数学ランキング(新着)  http://amzn.to/2B1rAEF
     ◆数学ランキング(新着スクリーンショット)
    現在は初校のゲラ読みをしているところで、 今週は編集部での初校読み合わせがあります。
    第2版では書籍全体に細かい語句の修正が入りますが、 メインとなるのは、
     機械学習への第一歩
    という付録の加筆になります。
    どうぞこの第2版も、 いろんな方を新しい世界へ導くきっかけとなりますように。
    応援よろしくお願いいたします。 目次などは、以下のページをご覧ください。
     ◆『プログラマの数学 第2版』(結城のページ)  http://www.hyuki.com/math/
     ◆『プログラマの数学 第2版』(アマゾン)  https://bit.ly/hyuki-math
     * * *
    『数学ガール6』の話。
    先週の結城メルマガで、 「ともかく、現在は第7章に集中、集中」 と書いていた『数学ガール6』の執筆。
    土曜日に第7章がなんとかまとまり、 残りは第8章、第9章、第10章となりました。 これまでに書いたものをすべてプリントアウトしてみたところ、 「どさっ」という分量の紙の束となりました。
    第8章を書き始める前に、 第1章から第7章までを紙で読み返すためです。
    大変といえば大変ですが、 むしろ楽しさの方が強いですね。 そのつどがんばって書いている内容なので、 読み返すと自分にとってしっくりくるからです。 もちろんアラは見つかりますが、それはむしろ執筆への力となります。 アラが見つかるとなぜ力になるかというと、
     「ここまで出来ているんだから、もう少し頑張ろう!」
    という気持ちになるからです。 自分で自分の目の前に、 ニンジンをぶら下げて走ってるようなものですね。
    ともかく、次は第8章!
     * * *
    数学を学ぶ人の話。
    『数学ガール』の第1巻(いわゆる無印)が刊行されたのは2007年でした。 つまり「数学ガール」シリーズは今年で十年になります。
    十年前に中高生で、 『数学ガール』という本を読み始めました、 と言っていた読者さんがいます。
    十年経ったいま、そんな読者さんが、
     「結城がさっぱり理解できない難しい数学の話」
    をしているのを見かけることがあります。 そのような体験は、率直に言って、すごくうれしいものです!
    そのうれしさというのは、 「未来に対する貢献」を自分なりにできたのかも、 といううれしさかもしれません。
    十年前に書いていたときには、 「未来に対する貢献」などということ、 まったく考えていなかったのですけれど。
     * * *
    ミュートの話。
    Twitterには「ミュート」という機能があります。
    Twitterアカウントの「ミュート」は、 相手を「ブロック」したり「フォローの解除」をしたりせずに、 相手のツイートがタイムラインに流れなくなるという機能です。
     ◆Twitterアカウントのミュート  https://support.twitter.com/articles/20171588
    結城は、ミュートのことをたいへんいい機能だと思っており、 できるだけブロックせず、気軽にミュートするようにしています (念のため:定期的に見直してミュート解除もしています)。
    Twitterは、みんなが自由に書き、 みんなが自由に読めるところが魅力だと考えています。 相手に「こんなことをツイートするな!」と押しつけることはしない。 相手のツイートを読みたくなかったら、 相手を黙らせるのではなく、自分の側で相手をミュートする。 これは、とても平和です。
    不愉快なことを言ってくる人はミュート。 みんなリツイートしてくるけれど、 自分はその人のツイートを読みたくないときにはミュート。 とにかく気軽にミュートして、タイムラインを平和に保ちます。
    ミュートとブロックはちょっと似ていますが、実はずいぶん違います。
    相手をミュートすると、相手のツイートは自分には見えなくなります。 相手をブロックすると、相手のツイートは自分に見えなくなると同時に、 相手がこちらをフォローできなくなります。
    ミュートは「私はあなたのツイートを見ませんけれど、 あなたは自由にツイートしてください。それはそれとして、 私のツイートは自由にお読みください」 というもの。
    ブロックは「私はあなたのツイートは見ませんけれど、 あなたは自由にツイートしてください。そしてさらに、 私のツイートも読まないでください。また、 私のフォローもしないでください」 というもの。
    結城の正直な気持ちとして、 「私のツイートは読まないでください。 私のフォローもしないでください」 となることは、今のところありません。
    ブロックは積極的な拒否ですけれど、 現実的には意味がありません。 だって別のアカウント作れば読めるからです。
    ミュートは違います。 私が何を読むかは、私のこと。 あなたが何を読むかは、あなたのこと。 このように分けて考えられるので、とても平和。 結城にとってのミュートは、そういう世界を作る機能です。
    ミュートする相手は、必ずしも嫌な相手とは限りません。
    誰しも、 「最近、じぶんは調子が悪いから、友達の幸福そうなツイートはつらい」 ということがあります。 その友達が嫌だというのでもないし、友達が幸福なのが嫌なわけでもない。 ただ、友達の幸福そうなツイートをいま見せられるのはかなわない…… というタイミングです。
    そのような、一時的に距離を置きたいときにブロックで対処していたら、 かえってややこしいことになる場合もあるでしょう。 ここひと月だけミュート。ここ半年だけミュート。 そのような工夫は、SNS時代の心の健康術といえるでしょう。
    大切な時間、大切な心を守るために、 ミュートを活用するのはよいことだと思っています。
     * * *
    仕事の見極めの話。
    結城は個人で仕事をしており、上司はいません。 ですから、 自分の仕事の管理は自分でしなければなりません。
    自分の仕事の進め方を振り返ったり、 何か違和感がないか内省したりするのは大切なことです。 この結城メルマガ自体も、そのための一助となっています。 仕事について文章を書こうとすると、 自分の仕事を自然に振り返ることになりますから。
    最近、気になっているのは、
     疲れるまで仕事をしがち
    という傾向です。
    言い換えると、 「今日の仕事をどこまで進めるか」 そして「今日の仕事をどこでやめるか」を判断するときに、
     もう疲れたからやめよう
    と考えるということ。それが気になります。
    言うまでもなく、疲れたときに無理して仕事を進めるのはよくありません。 疲れても無理して進めなくては!という言いたいのではなく、 自分の心の中に、
     疲れるまで仕事をしなければいけない
    という気持ちがある点を問題にしています。
    少し考えれば、その背後にある論理も見えてきます。 私は自分に対して「言い訳」をしたいのです。
     こんなに疲れたんだから、  今日はもう仕事をやめてもいいよね!
    と。でも、私はいったい誰に言い訳しているんでしょう。 そして何のために言い訳しているんでしょう。 そこに引っ掛かるのです。
    一日の仕事を終える判断には、いくつか選択肢があります。
     (1)定時になったから、仕事を終えます(時間で判断)  (2)今日のやるべきことを終えたから、仕事を終えます(成果で判断)  (3)疲れたから、仕事を終えます(疲労で判断)
    コンスタントに毎日の仕事を続けるなら、 時間で判断する(1)は無難。 でも、(1)だけを続けていると予定通り進まなくなるかも。
    進捗をきっちり出していくなら、 成果で判断する(2)がいい。 でも、成果が出せなかったら無理してしまい、 継続性があやうくなりそうです。
    そう考えると、自分の体調を基準にした、 疲労で判断する(3)は安全? 進捗を出しつつも、継続性を保てるから? でも、それは本当でしょうか。
    自分の胸に手を当てて考えると、 どうも自分は「仕事がしたくない」ときに、 無意識のうちに「疲れる作業をチョイスする」 という傾向があるようです。
    やっても無駄だとうすうすわかっている作業を始めたり、 難しすぎて読みこなせない本を読み始めたりするということです。 それで自分を早めに疲れさせて、
     あー、もー、疲れちゃった。  こんなに疲れたんだから、  今日はもう仕事をやめてもいいよね!
    と自分に言い訳をしたがっているみたい。
    そんなことに気づきました。
    人間の心って、何てめんどくさいんでしょう。 いや、単純なのかな?
    あなたは、 勉強や仕事の終わりをどう判断していますか。
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    意味の深掘り - 数学ガールの執筆メモ
    たった一人のために書こう - 本を書く心がけ
    おわりに
     
  • Vol.294 結城浩/機械学習への第一歩/数学ガールの執筆メモ/平和なSNS/

    2017-11-14 07:00  
    216pt
    Vol.294 結城浩/機械学習への第一歩/数学ガールの執筆メモ/平和なSNS/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年11月14日 Vol.294
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    『プログラマの数学 第2版』が2018年1月に刊行になります。
    ここしばらく『数学ガール6』と並行して作業を進めていましたが、 先日ようやくアマゾンにも商品ページが公開されました。 ただし、書影はまだダミーになっています(2018年11月14日現在)。
     ◆『プログラマの数学 第2版』(アマゾン)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797395451/hyuki-22/
     ◆書影(まだダミーです)
    『プログラマの数学』の第1版が刊行されたのは2005年のこと。 結城が生まれて初めて「数学」という言葉を書名に入れた本となりました。 たいへんな人気となり、ネット書店やリアル書店で、 何週にもわたってランキング入りしたのを覚えています。
    現場で働いているプログラマは、 必ずしも理数系の専門的な学びをしてきたとは限りません。 「文系プログラマ」と自称する方もときどきいらっしゃいます。 『プログラマの数学』は、そんな方向けに、 基本的な離散数学とコンピュータ科学の話題を書いた本です。
    「数学」の本ではありますが、 数式はほとんど出てきません。 クイズと図と説明文を使って、 プログラミングにもよく出てくる「数学の考え方」 に親しんでもらおうという本です。
    ところで『プログラマの数学』と銘打ちましたが、 実際の読者さんはプログラマばかりではありませんでした。 理数的な読み物を純粋に楽しむ一般の方や、 中高生、大学生などにもたいへん人気となったのです。
    さて、今回の第2版でのもっとも大きな変更は、
     「機械学習への第一歩」
    と題した付録を巻末に付けたことです。
    最近は、機械学習、ニューラルネットワーク、 ディープラーニング(深層学習)、強化学習、 人工知能(AI)といった用語がニュースなどでもよく登場します。
    『プログラマの数学 第2版』では、 「機械学習」を学び始めるための第一歩として、
     ・機械学習とは  ・予測問題と分類問題  ・パーセプトロン  ・機械学習における「学習」  ・ニューラルネットワーク  ・人間は不要になるのか
    といった項目についてお話ししています。 数式も少し登場しますが、ごくごく基本的なものだけで、 登場する数式はすべてていねいに解説しています。
    機械学習は、現在たいへんホットな分野ですし、 そのカバーする範囲は広大、話題もいっぱいあります。 当然ながら、 本書ですべてがわかるわけではありません。
    機械学習を学び始める「とっかかり」として、 本書を読んでいただければいいなあと思っています。
    刊行は2018年1月になります。 応援よろしくお願いいたします。
     ◆『プログラマの数学 第2版』  http://www.hyuki.com/math/
     * * *
    Web連載の話。
    毎週金曜日に、 cakes(ケイクス)で「数学ガールの秘密ノート」というWeb連載を書いています。
    先週から、10週にわたる新シーズンが始まりました。 今回のテーマは、
     「無限を探そう」
    です。数学では「無限」という概念があちこちに登場しますし、 しかも非常に重要な意味を持っています。
    その一方で「無限」はなかなかとらえどころのない面を持っています。 数学以外でも「無限」という単語はしょっちゅう出てきますね。 新シーズンでは、 数学ガールたちにいろんな無限を探してもらいたいな、 と思っています。
    そこであなたにお願いがあります。
     ・「無限」のイメージ  ・「無限」のここがわからない  ・「無限」ってこういうものだ!
    というあなたの考えを、 ぜひ結城あてに送っていただけませんか。 数学の話である必要はありません。 「無限」という単語を聞いたときの、 あなたの心に浮かんだことを教えてください。
    TwitterのDMで @hyuki あてにお送りいただければ感謝です。 もちろん、 この結城メルマガへの返信という形でもかまいません。
     ◆結城浩  https://twitter.com/hyuki/
    なお、個別に返信するのは難しいので、 その点はご了承ください。「無限はこれでいいんですか?」 という質問にもお答えはできかねます。ごめんなさい。
    また、お送りいただいたDMの内容は、 無断で使用させていただく場合がありますので、 その点もご了承ください(ご本人の名前やユーザ名は出ません)。
    先日Twitterで同様のお願いをしたところ、 たくさんのDMをいただきました。 ぜひ、あなたもお送りください。
    先週は「無限ポテチ」の前編を公開しました。 今週はその後編になります。 一週間は無料で読めますので、ぜひどうぞ。
     ◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」  https://bit.ly/girlnote
    また後ほど「数学ガールの執筆メモ」のコーナーで、 「無限ポテチ」(前編)での「発見」のお話をしましょう。
     * * *
    アイキャッチ画像の話。
    「無限を探そう」シーズンのアイキャッチ画像は結城が作りました。
     ◆「無限を探そう」のアイキャッチ画像
    結城はいつも、MacのPixelmatorというアプリを使います。 適当に選んだイフェクトを試しに掛けてみて、 何となくそれっぽいものが作れたら完成!という雑な作り方なので、 同じ画像は二度と作れません。それはそれとして、 自分が書く文章のアイキャッチ画像を自分で作るのは、 とても楽しい作業ですね。
    今回は「無限」がテーマなので「無限大」の記号をあしらい、 ふわふわっとした背景に半分とけこんだものを作りたい! と思って作り始めました。うまくいったでしょうか。
    妻にこの画像を見せて「これどう思う?」と聞いたら、 「まあいいんじゃない」という塩対応。 「私がゼロから作ったんだけど」と言ったら 態度ががらっと変わって、 「え、えええっ!絶対どこかからダウンロードしたと思った!」 とほめられました。
    先日、妻とお出かけしたときに見たミナペルホネンのお店や、 渋谷Bunkamuraのオットー・ネーベル展を妻に誘われて見た経験が、 この画像のどこかに影響しているような気もします。
     ◆オットー・ネーベル展(渋谷Bunkamura)  http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_nebel/
     * * *
    イヴァンカ氏の話。
    トランプ大統領の娘、イヴァンカ氏の話。
    とある場所で「イヴァンカ氏の服装」についてからかって笑い合い、 それに絡めてイヴァンカ氏の能力を批判している人たちを見かけました。
    ふだんは「女性の活躍」について述べたり、 「見た目で人を批判するな」と言ってる人たちだったので、 私は、とてもがっかりしました。
    私自身は、イヴァンカ氏の服装や能力を判断できません。 またそもそも、 彼女の服装や能力について議論したいわけでもありません。
    私ががっかりしたのは二点。 その人たちが、ふだんの自分の主張と矛盾している行動をとっている点。 そして、その矛盾に気づいていない点。
    誰かを批判しようとするとき、 自分の倫理基準が甘くなるものかもしれません。 これが高じるといわゆるダブルスタンダード(Aに対する基準と、 Bに対する基準を恣意的に切り換えること) につながりそうです。
    特に「この相手ならいくら批判しても、 自分の仲間から賛同されるから大丈夫」 というときがあぶない。 安全圏にいて誰かを批判するときには注意が必要でしょう。
    他山の石とします。
     * * *
    『数学ガール6』の話。
    『数学ガール6』第7章を書いています。
    「なかなか進まないなあ」と思っていて、あるとき、 ふと「盛り込み過ぎかも」ということに気づきました。 ものは試しで、読み返して大手術をしてみました。 後半部分をばっさりと別の章に移動します。
    『数学ガール6』はぜんぶで10章になるのですが、 どこかの章の題材がどっとあふれたときのために、 第8章は「空き」にしていたのでした。 これでおそらく第1章から第10章までがうまくフィットすることになる(はず)です。
    大手術の後全体を読み返して、 30〜40ページに収まるはずという目算が立ちました。 おそらく大手術して正解。 そして、第7章もいい感じに収まりそうです。すばらしい!
    大手術の成果か、登場人物の声が聞き取りやすくなりました。 とても楽しいですね。私が勝手に話を進めると、 引っかかりが生じてあまり気持ちがよくありません。 でも、登場人物にとって自然な流れにすると、 節のつながりもスムーズになり、 たいへん気持ちがいいのです。
    第7章もがんばって仕上げなくてはなりません。 第8章と第9章の分担がまだ決まっていませんが、 「未来の私」がきっとがんばって考えることでしょう。 よろしくね!未来の私! ……なんてことを言ってると「未来の私」 から反発をくらうのですけれどね。 「そういうのはやめてくれないかなあ」って! いや、反発するのも考えるのも「現在の私」なのか?
    ともかく、現在は第7章に集中、集中。
     * * *
    ほめて、ほめて、ほめ続ける話。
    先日公園を通りかかったときのことです。
    公園には木がたくさんあり、 落ち葉が一面に広がっていました。
    そんな中に、足元がおぼつかない小さな子と、 そのママさんらしき人がいました。
    小さな子は、両手でいっぱいに落ち葉をつかんでは、 よたよたと歩いて、ぱあああっと散らしています。 何度も何度も繰り返して、散らしています。 あたりまえですが、どこかに落ち葉を集めるわけでもなく、 落ち葉を選んできれいに並べるわけでもありません。 ただ単に、ぱあああっと散らしているだけです。
    でもそのあいだ、ママさんは子供の隣でずっと、
     じょうず、じょうず! じょうずだね!
    と言い続けています。
    子供はうれしそうに、落ち葉散らしを繰り返し、 ママさんもうれしそうに、ほめ続けます。 ほめて、ほめて、ほめ続けているのです。
    通りかかった私は、そのようすを見て、 とても幸せな気持ちになりました。
    私も、文章を書きながら、自分自身に対して、
     じょうず、じょうず! じょうずだね!
    とほめ続けましょう。
    それはきっと、 うまずたゆまず繰り返すための、 大きな力となるはずだから。
     じょうず、じょうず! じょうずだね!
    きっと、あなたにとっても。
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    平和なSNS
    再発見の発想法 - 過学習
    無限ポテチの「発見」 - 数学ガールの執筆メモ
    おわりに
     
  • Vol.293 結城浩/ハンロンのかみそり/不得意なことのメリット/自分という大きな本を書く - 仕事の心がけ/

    2017-11-07 07:00  
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    Vol.293 結城浩/ハンロンのかみそり/不得意なことのメリット/自分という大きな本を書く - 仕事の心がけ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年11月7日 Vol.293
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    『数学ガール6』の話。
    最近はずっと『数学ガール6』を書いています。
    ようやく先週、第6章をまとめてレビューアさんに送りました。 現在は第7章に突入しました。
    予定では第6章は2017年10月中にまとめるつもりだったのですが、 11月まで入り込んでしまいました。 10月の終わりには、以下のイラストのような気分でした!
     ◆わーん、もうすぐ月末!
    結局、2017年10月34日……じゃなくて、11月3日にまとめました。
    『数学ガール6』は第10章までなので、 残りは第7章、第8章、第9章、第10章ですね。
    何とか今年中に脱稿したいのです……!
     * * *
    トイレットペーパーの話。
    生物学者のHiroshi Sasakiさん(@popeetheclown)が、 こんなツイートをしていました。
     トイレの紙切れ問題に対する、とてもアメリカらしいソリューション。
     https://twitter.com/popeetheclown/status/922975337746706433
    投稿された写真は、 トイレの中にトイレットペーパーホルダーを 約20個(!)設置して、 トイレットペーパー切れを防ごうというものです。
    日本のトイレだと、ロールが二個収納できるホルダーはよくありますが、 それを(力まかせに)増やしたものといえるでしょうか。
    この写真を見て「なるほどね」と思いつつ、 「これってうまくいくのかな」とも思いました。
    「ペーパーが切れたらいや」だから、 「たくさんのペーパーをストックすればいい」 というのは確かに良い考えのようです。
    でも、いくらたくさんのペーパーをストックしても、 使い続けていたら、いつかは切れることになります。 そのときにペーパーが適切に補充されなければ、 結局はペーパー切れが発生してしまいます。
    たくさんのペーパーをストックすることは、 補充回数を減らす役には立ちますが、 補充回数をゼロにはできません。 ちゃんと補充するという「運用」は残るのです。
    結城は、先ほどのツイートに対して、 「すべての紙が切れてたら
     『運用の大切さ』
    と見出しがつきそうですね」 とリプライしました。すると、 「実際、ほとんどが切れかかっていたこともありました」 とのお返事をいただきました。なんと!
    「運用」が大事という話では、
     「薬を飲んで病気を治す方法」
    というものがあります。 どういうことかというと、 薬を飲んで病気を治すためには:
     ・良い薬を手に入れること  ・その薬を忘れずに飲み続ける仕組みを作ること
    という二つが必要だというのです。 もちろん「その薬を忘れずに飲み続ける仕組み」が、 「運用」に相当します。
    似た話は、いくらでも考えられますね。
     「問題集を使って学力を上げる方法」
    というのは:
     ・良い問題集を手に入れること  ・その問題集を使って継続的に勉強すること
    という二つが必要ですね。
    「運用」を考えるのは、とても大事なのです。
     * * *
    新聞の公正さの話。
    あるとき、結城は、
     「新聞というメディアは公正さが必要ではないだろうか」
    という主旨の話をネットに書いていました。 すると、
     「新聞に公正さを求めるなんて誤りだ」
    という主旨の意見がやってきました。
    確かに現実問題として、 新聞に公正さはないのかもしれません。
    だったら、新聞社自身はどう考えているんだろう、 と結城は思いました。
    現実問題がどうか、というよりも新聞の理想の姿として、 公正さは必要だと思っているのか、どうか。
    そこで、日本新聞協会の新聞倫理綱領を見てみると、 以下のようにありました。
     ----    新聞は歴史の記録者であり、  記者の任務は真実の追究である。  報道は正確かつ公正でなければならず、  記者個人の立場や信条に左右されてはならない。  論評は世におもねらず、所信を貫くべきである。  日本新聞協会 新聞倫理綱領    http://www.pressnet.or.jp/outline/ethics/    ----
    これはたいへんいい主張である、と結城は感じました。 特に「報道」と「論評」を分けているところがすばらしいと思います。 「報道」するときと「論評」するときの基準を明確に分けており、 「公正」は「報道」の方に登場していますね。 これはもっともです。 「論評」の方は新聞としての主張を行うことになりますから、 「公正」を押し出すわけにはいきません。
    上に書いたのは「日本新聞協会」のものですが、 おそらく各新聞社にも同様の綱領があり、 その中には「公正な報道」という趣旨のことが書かれているはずです。 少なくとも朝日新聞と読売新聞にはありました。
    ですから結城は、 新聞に対して、少なくとも新聞の「報道」に対して公正さを求めることは、 まちがっていないと思っています。 なぜなら、新聞自身が「公正な報道」を掲げているからです。
     * * *
    京都の話。
    「日本に、京都があってよかった。」というコピーを見かけました。
     ◆日本に、京都があってよかった。  http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000035115.html
    これは、京都市が、全国に京都をアピールするポスターだそうです。 上のリンクでは京都の美しい情景を使ったポスターを多数見ることができます。
    ところで結城は「日本に、京都があってよかった。」は、 どうして京都弁じゃないんだろうか、と一瞬思いました。
    地域をPRするポスターは全国にありますが、 少なからぬ数が地元の「方言」をフィーチャーしていますから。
    でもすぐに、 「日本に、京都があってよかった。」というコピーならば、 京都弁にしないのが正しいし、 またそこが「うまい」ところだと気づきました。
    地元の「方言」を使ったコピーは、 その地元の人が「自分の町においでよ」とアピールするものです。 それに対して「日本に、京都があってよかった。」というのは、 「京都以外の人が思わず口にした京都評価」 という姿をしているからです。
    そういえば、有名な「そうだ 京都、行こう。」というコピーも、 当然ながら京都弁じゃないですね。
     ◆そうだ 京都、行こう。  http://souda-kyoto.jp
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    引用リツイートの話。
    Twitterには、 誰かのツイートをそのままリツイートするだけじゃなく、 コメントを付けてリツイートする機能があります。 Twitter公式では「引用ツイート」と呼んでいますが、 一般には「引用リツイート」と呼ぶこともよくあります。
     ◆既存のツイートのリツイート - Twitter  https://support.twitter.com/articles/20170062
    自分へのリプライならばすぐにわかるのですが、 引用リツイートでコメントされると、 見逃してしまうことがあります。
    そこで、自分のユーザ名を入れると「引用リツイート」 を検索してくれるサイトを作りました。 自分のツイートがどんなふうに誰から「引用リツイート」 されているかを見たい人向けです。
    場合によっては、 自分が批判されているのを目にするかもしれませんので、 そういうのが苦手な方は使わない方がいいと思いますが……
     ◆引用リツイート検索  https://depot.hyuki.net/retweet-search/
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    アイコンの話。
    結城はTwitterのアカウントを二つ持っています。 一つは普段使っている @hyuki で、もうひとつは @hyukibot です。 @hyukibot はTwitterのbotを作る練習として作ったもので、 一日一回、自動的にツイートしています。
     ◆結城浩(自動投稿)  https://twitter.com/hyukibot
    このhyukibotは、普段放置していて読んでもいないのですが、 あるとき見てびっくり。なんということでしょう。 アイコンがたいへん汚くなっていたのです。 そこで、きれいなアイコンに変更してみました。 Before/Afterは以下の画像の通りです。 だいぶきれいになりました!
     ◆アイコンのBefore/After
    汚くなったといっても、 電子ファイルですから経年劣化したわけではありません。 コンピュータやスマートフォンの画面の解像度が大きくなり、 ピクセル数が多いアイコンが主流になったため、 むかし作った小さなアイコンが拡大表示され、 そのためにギザギザ(ジャギー)が目立つようになったのですね。
    結城がアイコンにしている「スレッドお化け坊や」は、 2012年にアウトライン化をすませていますので、 任意の解像度での画像ファイルを作ることができます。
    「スレッドお化け坊や」は2001年頃にビットマップで作りました。 2012年ごろに「これからずっとディスプレイの解像度は高くなるから、 これじゃらちがあかないな」と思いアウトライン化を行ったのです。
    画像のアウトライン化(ベクタ化)というのは、 画像をビットマップとして作るのではなく、 ベジエ曲線などのカーブの集まりとして作るということです。
    ビットマップをアウトラインにするツールもあるようですが、 結城は原始的な方法で作りました。 つまり、手動です!
    ドローツールとして結城はVisioを使いました。 もとのビットマップを一つのレイヤーで表示しておき、 そこに重ねた別のレイヤーでカーブを描いていきます。
    環境をMacに移すときに、 VisioのファイルをOmniGraffleに移し、 現在はOmniGraffleでメンテナンスをしています。 もとのファイルはアウトラインのままにしておき、 アイコンを作りたくなったときに、 必要な大きさのビットマップにしています。
     ◆OmniGraffleで「スレッドお化け坊や」を編集
    ネットで活動する人にとってアイコンは重要です。 ビットマップで管理していると解像度の問題が生じるので、 アウトライン化しておくといいですよ。
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    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    冬物のコートを買いに出て
    ハンロンのかみそり
    自分という大きな本を書く - 仕事の心がけ
    おわりに