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Vol.204 結城浩/本を書く心がけ/比較について/意識して文章を書くようになったのは……/
2016-02-23 07:00220ptVol.204 結城浩/本を書く心がけ/比較について/意識して文章を書くようになったのは……/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年2月23日 Vol.204
はじめに
おはようございます。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/場合の数』は今年の四月に刊行予定です。 いったん脱稿を終え、先週末には表紙デザインの打ち合わせを行いました。
このあたりはいつものメンバーとの打ち合わせなので、 それほど長時間は掛かりません。 それぞれに過去の本と現在の原稿を使って準備を進めておき、 打ち合わせ当日は、確認と決定に時間を使うだけだからです。 打ち合わせは準備が命ですね。
初校が出てくるのは今週末。 そして初校読み合わせは三月に入ってから。 新刊の完成に向かって、一歩一歩進んで行きます。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797387114/hyam-22/
何冊本を書いても、 新しい本ができるときはわくわくします。 ていねいに仕上げていかなくては!
* * *
Twitterの話。
先日、2016年2月12日に、 Twitterで結城をフォローしてくださる人数が三万人を越えました。 フォローしてくださるみなさんに感謝します。
三万人になったから、結城のツイートが大きく変わるわけではありません。 これまで通りに生活の話や、たわいもない軽口や、 お仕事のログや、ときどきの連続ツイート、 それに読者さんへの感謝の毎日が続くと思います。
それでも、たくさんの方にフォローしていただいているのですから、 悲しみよりは喜びを、愚痴よりは祈りを、 非難よりは感謝の多いツイートでありたいと思っています。
これからもよろしくお願いいたします。
◆結城浩のTwitter https://twitter.com/hyuki/
* * *
物質と情報の話。
物質は、渡したらなくなる。 情報は、渡してもなくならない。
物質は、渡しても取り返せる。 情報は、渡したら取り返せない。
これは、物質と情報の大きな違いです (moleculeとbitの違い、と呼んでもいいですね)。
あたりまえのことですけれど、 これをじっくり考えていると、おもしろい考えがわいてきます。
たとえば、契約書をデジタル署名を使って実現するという場合。 物質としての契約書は破ってしまえばなくなってしまう。 でもデジタル署名の場合には、 いくらでもコピー(原本と区別が付かないコピー)が作れる。 それなのに、デジタル署名を使って契約書を作れるし、 破棄することもできるというのは非常におもしろいですね。
昨年第3版が出た『暗号技術入門』の初版は2003年刊行でした。 ロングセラーになっているこの本を書いたとき、 私の興味の奥底には、公開鍵暗号を中心とする暗号技術がありました。 単なるビットの操作なのに、こんなにも不思議なことを実現できる。 不思議への興味、不思議への関心。
bitの性質を使ってmoleculeをシミュレートする場合もあるし、 単なるシミュレートを越えて、新たな性質を作り出す場合もある。
ビットコインに代表されるブロックチェーンの技術もそうですね。 取引が世界中に公開されているのに(公開されているからこそ)、 ビットの操作で、貨幣のように「価値の移動」ができる。 これはたいへん逆説的な話だと感じるのです。
暗号技術を通して、物質と情報の性質をじっと見つめていると、 「もの」の成り立ちについて深く考えさせられます。
◆『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』 http://cr.textfile.org/
* * *
それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください。
目次
はじめに
GitBook/カクヨム/Romancer - 本を書く心がけ
比較について
意識して文章を書くようになったのはいつからですか - 文章を書く心がけ
おわりに
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Vol.203 結城浩/再発見の発想法 - Scope(スコープ)/ソーシャルDRM/気軽に出題する数学の楽しみ/命の話/
2016-02-16 07:00220ptVol.203 結城浩/再発見の発想法 - Scope(スコープ)/ソーシャルDRM/気軽に出題する数学の楽しみ/命の話/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年2月16日 Vol.203
はじめに
おはようございます。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
PDF版『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』の話。
このたび、『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』のPDF版が、 達人出版会から委託販売されることになりました。
◆『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』(達人出版会のサイト) http://tatsu-zine.com/books/mathgirl-himitu-formula-graph
第1章がまるごと読める「サンプルPDF」 も上記サイトからダウンロードできます。 たとえば、お手持ちのタブレットやスマートフォンでの使用感を、 あなたご自身の目で確認することができますので、 ぜひご利用ください。またお知り合いにご紹介ください。
達人出版会でのPDF版は、いわゆる「ソーシャルDRM」という形になっています。 PDFの各ページに購入者のメールアドレスが記入されているだけであり、 特定のデバイスでなければ読めないという仕組みは入っていません。 これによって、購入した方は自分の好きなデバイスで自由に読むことができるのです。
現在は『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』だけですが、読者さんに好評なら、 結城の既刊書についてもPDF版での販売を進めたいと思っています。
以前より、たくさんの読者さんから「PDF版での販売を希望します」 という要望をいただいていました。各方面との調整を終え、 ようやく、達人出版会から販売開始できるようになりました。 結城はとてもうれしいです。 応援してくださる読者さんに感謝です!
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新刊の話。
春に刊行の『数学ガールの秘密ノート/場合の数』を書いています。 ちょうど一週間前に編集部に原稿テキストと図版をまとめて送りました。 脱稿です! 応援感謝!
いったん脱稿したことはしたのですが、 レビューアさんからの指摘事項の反映もまだ残っていますし、 これからどんどんブラッシュアップしていかなくてはなりません。 今週末には書籍のデザイン打ち合わせがあります。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797387114/hyam-22/
よい春を迎えられるように、 きっちり仕上げていきたいと思っています。
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SSL対応の話。
Let's Encryptという「自由にSSLのサーバ証明書を作るサービス」があります。 先日から結城はこのLet's Encryptというサービスを利用して、 自分の管理するサイトをいくつかSSL対応しました。 (たとえば「結城浩のブログ」など)。 それは先週の結城メルマガでもお話ししましたね。
◆結城浩のブログ https://snap.textfile.org/
ところで、SSL対応のサイトといっても、URLが https で始まるくらいで、 何かが目立って変化するわけではありませんし、 証明書が壊れてでもいない限り、普通のユーザには何もわかりません。
世の中にはSSL対応のサイトを「チェック」してくれるサービスがいくつかあるので、 SSL対応のサイトを運営している人は、調べてみるのも一興です。 たとえば、現代では「SSLv3はオフ」にしておかなければなりませんが、 実際にオフになっているかどうかは、 意識してチェックしなければわからないものです。
そういうサービスは検索すれば見つかります。 たとえばこんなサービスです。
https://globalsign.ssllabs.com
ここにドメイン名を入れるといろんなチェックを行い、 最後にレポートを表示し、採点してくれます。 ただし、実行結果は良いものも悪いものも「掲示」されてしまうので、 自分の運営しているサイトをチェックする人は、 「Do not show the results on the boards」 のチェックボックスをオンにするのがいいでしょう。
「SSL対応」を謳っているサイトの中にも、 あまりメンテされておらず、低得点のものがたくさんある模様。
ちなみに「SSLって何?」「証明書って意味あるの?」という方は、 拙著をごらんください。
◆『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』 http://cr.textfile.org/
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基本情報を押さえる話。
一般論ですが、何かについて「良い」や「悪い」のように、 ざっくりとした評価を耳にすることがあります。 そんなときには「誰にとって?」や、 「どんな意味で?」と考えたいと思っています。
「誰」や「どんな意味」に限りません。 「いつ」「どこで」「なぜ」などを補って考えるということです。
・それは「誰にとって」良いのだろうか。 ・それは「どんな意味で」悪いのだろうか。 ・その評価は「いつ」の話だろうか。 ・「どこで」その評価が下されたのだろうか。 ・「なぜ」それを良いというのだろうか。
考えてみますと、これは文章を書くときの5W1Hに似ています。5W1Hというのは、
・誰が(who) ・いつ(when) ・どこで(where) ・何を(what) ・なぜ(why) ・どのように(how)
の頭文字を取ったものですね。 文章を書くときにこれらの要素をきちんと書きましょうという話ですが、 それは物事を明確にすることに役立ちます。
結城自身がよく体験すること。 家に帰って妻に「あのね、こんなニュースを見かけたよ」 と説明しようとしても、なかなかうまく説明できないのです。
ぼんやりした印象は残っています。 でも、人に伝えるために基本情報を補って話そうとすると、 自分がそれらの基本情報を押さえていないんだな…… そんな状況に気がつくということです。
その結果、妻に対して、
「どこの誰かは知らないし、 いつの話もわからないし、 そんなことを何のためにやったか、 どのようにやったかも知らないけど、 おもしろい発見があったんだよ」
のような、間抜けな説明をすることになってしまいます。
世間話ならそれでも笑い話ですむけれど、 自分がしっかり考えるべき話題では、 こうならないようにしなければ、ね。
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Apple Pencilの話。
大阪大学で理論物理を研究なさっている橋本幸士さん(@hashimotostring)が、 最近iPad Pro + Apple Pencilのツイートをなさっている。 たとえば、以下。
https://twitter.com/hashimotostring/status/697597174184615937 https://twitter.com/hashimotostring/status/695042770327572480
これがうらやましくてしょうがない。 結城もやってみたい(理論物理という意味ではなく、 iPad Pro + Apple Pencilで好きな計算するというワークスタイルのこと)。
デザイナーさんも、漫画家さんも、 Apple Pencilを使った人はみんな口を揃えて、 「これはいい。これまでとは違う」というんですよね。
結城もApple Storeに行って実際に使ってみて、 「うん、確かにいいかも!」と思うのですが、未だ注文するには至らず。 Apple StoreでiPad Proを見るたびに、 「これはちょっと大きすぎないか?」と思ってしまうのです。
結城はふだんタブレットとしてiPad miniを使っています。 これは手軽でいいのだけれど、こっちは逆に小さすぎる感じがする。 手書きで自由に計算する感覚は、紙の方がずっといい。
しかし、この橋本先生のツイートを見て「うわ、欲しいなあ」と購買欲が再燃。 思い切って、買っちゃう? 買ってみちゃう? とりあえず、リンクだけはしておこうかな。
◆iPad Pro http://www.apple.com/jp/shop/buy-ipad/ipad-pro
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画像付きツイートの話。
OneShot for Screenshotsというアプリがあります。 簡単にいえば「スクリーンショットをツイートする」というアプリですね。
◆OneShot https://itunes.apple.com/jp/app/oneshot-for-screenshots/id953724147
たとえば、先日のWeb連載のスクリーンショットを取って、 こんなツイートをしました。
◆sin x と cos x https://twitter.com/hyuki/status/696246194557685760/
◆ツイートのスクリーンショット
Webサイトをツイートで紹介するときでも、ちょっと画像があるといいですね。
iPhoneで「自分はこんなふうに読んでますよ」というアピールにもいいかも。 たとえば、以下のようなツイートです。
◆epubでも読めますよ https://twitter.com/hyuki/status/696248828601589760/
◆ツイートのスクリーンショット
スクリーンショットは、 「アイキャッチとしての画像」ではなく、 「自分が体験しているものを相手に体験させる画像」 考えることもできそうです。
つまり、読んでいる人に、
「ああ、そうか、こんなふうに見えるのか」
と「体験」させるのが目的ですね。 百聞は一見に如かずと言われる通り、 相手に「そのものを見せてしまう」 のは重要なことかもしれません。
ところで、このOneShotのようなアプリを使うと、 「自分専用のサービス」が欲しくなってきます。 以前、tweeter.hyuki.net という、 「自分がよく行う画像付きツイート」というサービスを作りましたが、 それをもっと手軽にしたようなものです。
「iPhoneでスクリーンショットを取り、 コメント付きでツイートする」というアクションを、 自分用に細かくカスタマイズできるようなサービス。 そのうち考えてみよう。
OneShotについては後ほどもうちょっと書きます。
* * *
「うとい」話。
結城はnote(ノート)を使っています。
この結城メルマガの過去の記事をコーナーごとに個別販売したり、 あるいは結城浩ミニ文庫の個別販売所として使ったり。 「投げ銭」形式で読者さんから応援をいただいたりと楽しく使っています。
◆結城浩のnote(ノート) http://www.hyuki.com/note/
ところでそのnote(ノート)というプラットホームが、 いわゆる「情報商材」の販売で話題になっていることを最近になって知りました。
詳しくは知らないのですが、ある有名なブロガーのnote(ノート)の使い方は、 note(ノート)の規約で禁止している「情報商材」にあたるのではないか、 といった話題があるようです。
いろんな方から、 「結城さん知らなかったんですか? あちこちで話題になってる有名な話ですよ」 と言われて、「へえ、そうだったんだ。私って《うとい》なあ」と思いました。 ただ、それと同時に「まあ、そんな話題は知らないくらいでちょうどいいか」 とも思ったりしています。
* * *
私の大好きなおばあちゃんは、
「お金さえあれば幸せになると思っている人ほど、 お金によって不幸になるんだよ、覚えておきなさい」
って言ってた。
「お金がないから不幸になる」のではなく、 「お金さえあれば幸せになるのにな」という考えが不幸を呼び込むんだって。
あなたはどう思いますか。
* * *
それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください。
目次
はじめに
再発見の発想法 - Scope(スコープ)
気軽に出題する数学の楽しみ
開発者向けの「命の話」
ソーシャルDRM本の販売に関して思うこと - 本を書く心がけ
おわりに
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Vol.202 結城浩/『老いに備える知的生活(2)』 - 結城浩ミニ文庫/生きている意味と自分に与える猶予/
2016-02-09 07:00220ptVol.202 結城浩/『老いに備える知的生活(2)』 - 結城浩ミニ文庫/生きている意味と自分に与える猶予/
結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年2月9日 Vol.202
はじめに
おはようございます。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
新刊の話。
春に刊行の『数学ガールの秘密ノート/場合の数』を書いています。 おそらく2016年2月9日(つまり、この結城メルマガが配信される日) のうちには、いったん脱稿して編集部にまとめてメールすることができるはず。
もちろんまだまだ校正は必要ですが、一区切りとなります。
これから初校・再校・デザイン打ち合わせなど、 書籍刊行のための作業が続きます。 すでにアマゾンでは予約が始まっているので、 きっちりと仕上げていきたいと思います。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797387114/hyam-22/
ぜひ、本書も応援してくださいね!
* * *
Slackの話。
開発者のコミュニケーションツールとして、Slackが人気です。 詳しくは説明しませんが、チームメンバー内で使うチャットのようなツールで、 プログラマが便利にカスタマイズできるようになっています。
◆Slack https://slack.com/
開発チームのメンバーが連絡しあうというのが基本のツールなので、 結城はあまりこれまで使ってきませんでした。 何しろチームメンバーといっても私一人……
そんな中、tDiaryのただただしさんが書いた、 以下のブログ記事を読みました。
◆Pushbulletと並行してSlackも試用中 http://sho.tdiary.net/20160112.html
ここに書かれているのは、 「Rubyで短いプログラムを書けば、 自分が管理しているSlackのチャンネルに、 好きなメッセージを流せる」という話題です。 たださんが書いていたのはわずか4行のコード。
これを眺めているうちに結城は、
「そうか、自分がふだんメールで受け取っている《通知》 をSlackで受け取るようにすれば軽い感じになるな」
と思いました。
結城は小さなプログラムを書いてcronという仕組みを使い、 毎日一回「結城メルマガの購読者数」を自分宛にメールしています。 つまり、メールという仕組みを使って、 購読者数をウォッチしているのですね。
でも、結城メルマガの購読者数って、そんなに大きなデータではありません。 「あ、現在の購読者はXXX人か。昨日よりも1人増えた。感謝!」 と確認するものです。それだったら、 Slackに流れるメッセージの一つとして「ちょっとお知らせ」 という形にするのもいいのでは。と思いました。
たださんの記事からたどり、slack-posterを読みます。
◆Slack Poster https://github.com/rikas/slack-poster
これなら自分にも使えそうと判断し、 まずは、自分用のSlackプログラムを作ってみることにしました。 その結果は以下のブログ記事にまとめました。
◆RubyでSlackにメッセージ送る方法(slack-poster使う) http://snap.textfile.org/20160131215310/
ここに書かれていることはSlack Posterのページに書いてあることと、 技術的には変わりません。単に自分で書き直して、 ちゃんと自分の環境で動くことを確認しただけのブログ記事です。
でもこの「ちゃんと自分の環境で動くことを確認」が大事なのです。 というのはプログラムが動いたということは、 それに関する自分の理解がある程度正しいことの証明になるからです。 プログラムは動いてなんぼですからね。
自分の環境で動くことを確認したら、 あとは、購読者数をメールで送るプログラムを改造して、 Slackで送るように変更を加えるだけ。 これで、毎日メールを開いて確認していた購読者数が、 Slackの通知を使って確認できるようになりました。
今回の「結城メルマガの購読者数をSlackを使って受け取る仕組みを作る」 というのは一日二日の作業でしたが、 たださんのブログ記事がなかったら、試さなかったかも。 こういう「きっかけ」は重要だと思います。。
何年か前はRubyのバージョンやGemのことがよくわかってなくて苦労しましたが、 最近はだいぶハマることが減ってきたようです。 技術的ブログを読んで「これおもしろそう」と思うことは、 どんどん試していきたいですね。ブログ記事は断片的なことが多いですが、 うまく自分の知識や試行錯誤で補うことができれば、 自分の理解を確認できるし、さらに知識をリフレッシュできるのでいいですね。
後ほど、この続きの話をもう少し書きます。
* * *
Evernoteの高速化の話。
結城は日々の作業でEvernoteを使っています。 書籍に関するメモはもちろんのこと、日常生活のあれこれを記録するため、 Evernoteは大活躍です。
ところが最近、MacBookで使っているEvernoteクライアントの起動が、 たいへん遅くなってしまいました。 原因はよくわかりませんが、起動してからしばらく、 約30秒ほど無反応になってしまいます。
約30秒くらいいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、 Evernoteを起動するときというのは、何か思いついたことがあって、 それを「さっと記録したい」わけですから、待ち時間はつらいのです。
この状況を改善すべく、 検索して「データベースを再構築する」という方法を試すことにしました。 行ったことは以下のブログ記事にまとめました。
◆Evernoteの起動を速くする方法(データベース再構築) https://snap.textfile.org/20160130221828/
が、実際にやってみると約30秒が約27秒に。 たいして速くなっていませんね。
そこで発想を変えることにしました。 遅いのは起動なのですから、起動しなければいいのです。 そもそも、Evernoteを何度も起動するのは、 結城がついCommand + Qというショートカットを使って、 Evernoteを「終了」させてしまうから。 だったら、Command + Qを効かないようにしてしまえばいい!
以下のブログ記事を参考にして、 Command + Qを無効に(別のキーに割り当てるように)してみました。
◆Command + Qのショートカットを変更して悲劇を防ぐ | Macの手書き説明書 http://veadardiary.blog29.fc2.com/blog-entry-3195.html
結果は、大成功。Evernoteの終了が激減したので、 自動的に再起動の回数も激減しました。
発想の転換によるイライラ軽減、という一幕でした。
* * *
それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください。
目次
はじめに
『老いに備える知的生活(2)』 - 結城浩ミニ文庫
小さなサービス作るのは楽しい
生きている意味と自分に与える猶予
おわりに
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Vol.201 結城浩/苦戦からの脱出 - 本を書く心がけ/2015年の振り返り/思考力を訓練する方法は?/
2016-02-02 07:00220ptVol.201 結城浩/苦戦からの脱出 - 本を書く心がけ/2015年の振り返り/思考力を訓練する方法は?/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年2月2日 Vol.201
はじめに
おはようございます。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
早いもので、もう二月ですね!
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新刊の話。
現在は必死になって「数学ガールの秘密ノート」新刊を書いています。 心づもりでは2016年1月中に第5章までは脱稿するつもりだったのですが、 第4章で意外に手間取り、2月にもつれこんでしまいました。
それはそれとして、アマゾンでは早くも予約が始まっています (カバーはまだダミーです)。
◆『数学ガールの秘密ノート/場合の数』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797387114/hyam-22/
まだ書いていないのに予約が始まっているなんて、 焦る!焦る!……ということはありません。 「数学ガールの秘密ノート」は、もう7冊目なので、 だいたいどのくらいで無事着地できるかは見えているからです。 焦ることなく淡々と(しかししっかりと)進めることが何よりも大事。
逆に「いつも通り」に収めないように意識する必要があると思っています。 気を引き締めていかなくては。 新刊を書くときにはいつも思うことですが、
「自分が生まれて初めて書く本」のつもりで書く。
という心がけを持ち続けていきたいのです。
ところで今回のテーマは「場合の数」。順列や組み合わせですね。 「場合の数」というと、公式を当てはめて計算する分野と思われがち。 でも、背後には数学の「構造」を探る面白い物語があるのです。 もちろんその全貌を描こうというわけではありませんが、 数学が持つ「構造」の一端に触れた一冊にしたいと思っています。
第4章で苦戦したときの対処については、 後ほど「苦戦からの脱出 - 本を書く心がけ」でお話しします。
* * *
ミンスキーの話。
マーヴィン・ミンスキーが88歳で亡くなったというニュースを聞きました。
近年も人工知能が話題になっていますが、 数十年前も人工知能ブームがありました。 ホフスタッターの『マインズ・アイ』やミンスキーの『心の社会』など、 人間の思考や心についての本をよく読みましたね。
◆『心の社会』(マーヴィン・ミンスキー) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4782800541/hyam-22/
Wiredには、ロボット記者が書いた訃報が掲載されました。
◆人工知能学者M・ミンスキーの訃報を、ロボット記者が書いた http://wired.jp/2016/01/28/robot-write-obit-ai-pioneer/
人工知能というと、数十年前のときも「機械は知能を持てるか」 や「機械は感情を持てるか」などという議論がありました。 人工知能は、何をやるかが明確になると「単なる一つの技術」 のように思える傾向があります。 「こんなのは人工知能じゃなく○○にすぎない」というわけです。 人工知能という用語は、 まるで逃げ水のように人の意識をすり抜ける傾向があります。
でも、そんなことを言ってるうちに、 少しずつ人間の行う仕事を変化させている(職業を奪っている) ようですね。
ともあれ、ミンスキーは懐かしく思い出す名前の一つです。 彼の業績もさることながら、 ちょうど結城が若い時代によく書籍で見かけた名前だからでしょう。
作家の森博嗣さんは「最後に残るのは名前である」 という主旨のことをどこかに書いていたように記憶しています。
やがて、人工知能の「名前」が記憶されることになるのかな。
* * *
数式プレビューができるメモの話。
以前から、文章をざくざく書くためのエディタとして、 Draftというものを公開し、自分でも使っています。 この結城メルマガも、最初の下書きはこのエディタで書いています。
◆Draft - A Distraction Free Editor http://draft.textfile.org/
ちなみにソースコードは(上記Webページのソースを見ればいいのですが)、 以下で公開しています。
◆Draft - A Distraction Free Editor (GitHub) https://github.com/hyuki0000/draft
あるときふと「これにMathJaxを入れたら、数式プレビューができるな」 と思い、さくさくと作ってみることにしました。 それが以下のページです(そのうち削除するかもしれません)。
◆Draft/Math http://draft.textfile.org/math/
テキストエリアに入力された文字列を、 JavaScriptを使って動的に表示しているだけですが、 MathJaxを再度走らせて数式のレンダリングをしなければなりません。 その方法は、MathJaxの公式ページに書いてありましたので、 これを読んで作りました。
◆Modifying Math on the Page http://docs.mathjax.org/en/latest/advanced/typeset.html
実際に動かすと、以下のような感じで表示されます。 右側の数式はブラウザ上にリアルタイムで表示されています。
◆Draft/Math(スクリーンショット)
うむ。できたできた……でも、あれ?
結城がWeb連載「数学ガールの秘密ノート」を書くときには、 素のLaTeXではなくて、自分用にカスタマイズした書式を使っています。 ですから、このDraft/Mathで書くためには機能が足りない。 それに実のところ、結城はリアルタイムでプレビューして書く習慣はないのでした。
じゃ、何でDraft/Mathを作ろうとしたかというと…… いや、ただ、やってみたかったから! (仕事からの逃避ともいいます)
Draft/Mathで入力したテキストは、使っているブラウザ上で自動的に保存されています (localStorageを使用)。 間隔は三秒です。ネットの外にテキストを送信しているわけではありません。 またブラウザを急に閉じても、再度ブラウザでこのページに来れば、 同じテキストが表示されます。 LaTeXのプレビューは5秒に一回機械的に更新するので、ちらちらします。
ご興味がある方は遊んでみてくださいね。
◆Draft/Math http://draft.textfile.org/math/
* * *
確定申告の話。
春に向けての仕事は新刊だけではありません。 個人事業主として確定申告をしなくてはいけません。
毎月いちおう整理していたはずなのですが、 いざ集計しようとするといろいろズレを発見したり、 書類が見つからなかったり、毎年やっているはずなのに、 やはり今年もどたばたです。
確定申告の準備とともに、 ファイルした書類の中に混じっている不要物を廃棄していました。 金融機関やカード会社から送られてくる封書では、 非常に大事なものと、まったく不要な広告が混じってきます。 あれ、やっかいですね。
大事な書類はまとめ、広告は紙ゴミにすればいいだけですが、 広告の中には個人情報が印刷されているものがあるから油断ができません (たとえば、保険の新規申込書に自分の住所氏名が印刷されているようなもの)。 個人情報が印刷されているものはシュレッダーに掛けなくては。
結城が使っているシュレッダーは2014年に購入したこれです。
◆コクヨ パーソナル シュレッダー http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001MSQWJ2/hyam-22/
音は気にならず、ゴミも捨てやすいので、 ちょっと大きめですが愛用しています。 机の下において使っています。
確定申告自体は面倒なものですが、 一年間の自分の活動を振り返るには絶好の機会です。 後ほど「2015年の振り返り - 仕事の心がけ」で軽く仕事の振り返りをします。
* * *
堀口さんの話。
堀口智之さん(@imakarasuugaku)は、 大人のための数学教室「和」(なごみ)を開いていらっしゃる方で、 現在「和から」という会社を経営しておられます。
◆大人のための数学教室 和(なごみ) http://imakarasuugaku.com
「和から」(わから)というのは不思議なネーミングだと思うのですが、 堀口さんによれば「和はいろんなものの基本である」ことと、 「わからない」というところからも学びを始められるという意味合いで、 このような名前にしたとのことです。
◆「和から」(わから) http://wakara.co.jp
堀口さんとは三年前に一度お会いしたことがあり、 つい先日もお誘いいただいて楽しい会食のひとときを持ちました。
社会人になっても数学(というか算数)から、 わからない人はたくさんいらっしゃいます。 あるいはまた、基本はわかっているけれど、 もっと難しい数学を学びたいという方もいるでしょう。 さらには、仕事で数学・統計が必要になってきたから学びたいという方も。 そのような方々に学びの場を提供し、事業にしていらっしゃるのは、 たいへん有意義なことだと思います。
* * *
人に対してあれこれ言いたくなるときの話。
以下は、結城がふだんから思っていることですが、 誰かのことを想定して書いているわけではなく、 あくまで一般論です。
他者の行動に対して批判的なことを言いたくなるのは誰にでもあることです。
「あなたは、何でまた、そんなとんでもないことをするの?」
と言いたくなる状況のことです。
少なくとも自分の常識では考えられないような行動をする人、 まったく想像のつかないような理由を行動基準にしている人、 あるいは自分が何回命じても(お願いしても)その行動をとってくれない人。
結城も、以前会社に勤めていた頃、 上に述べたような思いにかられることが多くありました。
「なんであの人は、ああいうことするかなあ……」
・ちょっと考えれば、無駄だってわかるだろうに。 ・失敗することが目に見えているじゃないか。 ・こないだも同じ注意をしたよね。
頻繁に、そういう気持ちになったものです。
でも、最近は違う見方をするようになりました。
不思議で不可解で理不尽だとしても、 それはあくまで「わたしにとって」の話である。 もしかしたら「当人にとって」は合理的なのかも。
という見方です。別の言い方をするなら、
何度言っても行動が変わらないなら、 この人にはそうするだけの十分な理由がある。 (それを当人が意識しているかはさておき) (それを当人がよしとしているかもさておき)
ということです。
そして「理不尽な行動を取る理由」というのは、 当人にとってはある意味「命がけ」である場合も。 命がけが大げさだとしても、自分のすべてのプライドや存在理由が、 そのなにげない行動に掛かっている場合もありうる。
なので、他の人の行動にあれこれ口を出すとき (口を出したくなるとき)には、 十分な注意が必要だな、と思うようにしています。
「自分は絶対に正しい」と思ったときは特に注意。 自分は正しいという意識が、行動の強さに現れ、 その強さによって他者を深く傷つける可能性があるからです。
正しいと思うときほど、慎重に。
* * *
それでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください。
目次
はじめに
苦戦からの脱出 - 本を書く心がけ
2015年の振り返り - 仕事の心がけ
思考力を訓練する方法は? - Q&A
おわりに
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