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  • Vol.251 結城浩/再発見の発想法/いにしえの数学/

    2017-01-17 07:00  
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    Vol.251 結城浩/再発見の発想法/いにしえの数学/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年1月17日 Vol.251
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    Vol.250を過ぎた「結城メルマガ」の話。
    今回の結城メルマガはVol.251です。 つまり、これまで251通の結城メルマガを配信してきたことになります。
    毎週火曜日に休みなく……といいたいところですが、 体調を崩して何回か極端に短いメールになったことはありますね。 つまり「実質上のお休み」です。
    購読者さんの数は、 ここしばらく400名前後を推移しています。 読者層は学生さん、研究者さん、数学関係・教育関係・技術関係の方々、 それから出版・編集に携わる方々、作家さん、イラストレータさん、 主婦の方など……もちろん、 すべてを結城が把握しているわけではありませんが、 いただく感想メールから判断すると、読者さんは多様です。
    結城メルマガは2012年4月に配信開始しました。 今年の春(2017年4月)で丸五年になります。 購読者数の推移グラフは以下の画像の通りです。 これほど長いあいだ有料メールマガジンを運営できているのは、 ひとえに購読者さん(あなた)の応援のおかげです。 深く感謝します。
     ◆結城メルマガの購読者数 推移グラフ
    フリーの著作者として生活していると、 特に書籍を中心に執筆していると、収入が不安定になりがちです。 でも、結城メルマガは毎月の定期収入となり、大きな助けです。 購読者さんには深く感謝しております。
    先ほど掲げた購読者数の推移グラフをじっと眺めますと、 「継続は力なり」という言葉をしみじみと思います。 推移グラフを見るとわかる通り、常に細かいアップダウンがあります。 ときには続けてダウンしていく時期もあります。 でも、五年を通して眺めると、 少しずつアップしているのが読み取れます。 まさに「継続は力なり」ですね。
    この推移グラフを見ていると、 一喜一憂せずに続けることの大切さに気付かされます。 必要以上に数字に振り回されず継続することの意味、 自分の身の丈にあったスタイルでコツコツと続けることの意味です。
    はっと、気がつくともうすぐ五年。 有料メルマガを始めたのはほんのちょっとしたきっかけでした。 「有料メルマガ」を運営しようと思っていらっしゃるライターさん、 クリエイタさん向けに「マガジン航」で短期集中連載を書いたことがあります。 ここには結城がどんなことを考えてきたかを、 以下のような三回に分けてまとめてあります。
    第一回 皮算用編では、 私が「結城メルマガ」を始めようとした経緯と、 始めたばかりの頃に起きたことについて書きます。
    第二回 転換編では、 初期の体験から自分が考えたこと、 そしてそれを踏まえて行った「結城メルマガ」の方針変更を書きます。
    第三回 継続編では、 現在の私が考えていることを中心に、 メルマガ執筆を継続させることの意味、 継続させるために工夫していることなどを書きます。
    少し古い情報ではありますが、ご興味のある方はお読みください。
     ◆私と有料メルマガ - マガジン航  http://magazine-k.jp/category/series/on-my-paid-email-magazine/
     * * *
    入試の話。
    先週末(土日)は大学のセンター試験でした。 大雪に見舞われて、受験生のみなさんはほんとうに大変そう。
    結城の受験時代は「センター試験」ではなく「共通一次」でした。 私が受験したときも試験の日はとても寒く、たいへんだった記憶があります。
    私の妻は毎年「しょっちゅう大雪になって、 これほど寒くなる時期に大学入試があるのはまちがっている!」 と怒ります。実施する側にさまざまな事情や理由があるとしても、 その怒りは至極ごもっとも。
    それはそれとして、この季節には受験生はもちろんのこと、 そのご家族の心労を思います。 どうか試験に集中できますように。 そして実力を十分に発揮できますように。 心から願い、祈ります。
    合格不合格は同じ大学を受ける他人が関係しますから、 自分がすべてコントロールできるわけではありません。 でも、受験生ひとりひとりが、 現在の力を十分に発揮できることはとても意味があります。 力を尽くしてチャレンジした体験は絶対に無駄になりません。 がんばれ受験生!
    受験といえば先日、カフェで仕事しているときに、 近くの席に赤ちゃんを抱っこした若いお母さんがいました。
    それは別に珍しいことではありません。 でも、そのお母さんの前に置かれている本は、 大学入試の問題集のようです。たぶん英語。 がっつり勉強しているみたい。
    ときどき赤ちゃんをあやしながら問題に取り組む姿に、 思わず心の中で強く応援エールを送りました。
     * * *
    ノイタミナとエマープの話。
    「ノイタミナ」は深夜アニメーション放送枠の名称です。
    最初に「ノイタミナ」という単語を目にしたのがいつか、 もう覚えていません。 でも「いい感じの音が並んだ言葉だなあ」と感じたのは覚えています。
    ノイタミナ、ノイタミナ。
    「ノイタミナ」という言葉の意味を音から勝手に想像しました。 きっと「ノイタミナ」というのは、 エスペラントか、あるいは北欧のどこかの言葉をもじったもので、 「自由の国」みたいな意味なんだろうな……そんなことを思いました。
    そんな私が初めて「ノイタミナ」の綴りを見たときの衝撃といったら。
     「Animationを逆さに綴ってnoitaminAなのか!」
    アニメーションはAという母音から始まっていて、 逆さ綴りにしたときにも 自然(?)な日本語のローマ字綴りになるんですね。 これには驚きました。
    数学で逆さ綴りというと「emirp」(エマープ)というものがあります。 これは「prime」(素数)の逆さ綴りですね。 emirpの定義は、MathWorldによると以下の通りです。
     --------  An emirp ("prime" spelled backwards) is a prime  whose (base 10) reversal is also prime,  but which is not a palindromic prime.  http://mathworld.wolfram.com/Emirp.html  --------
    すなわち「逆方向にしても素数になっている素数で、 回文になっていないもの」がエマープだそうです。 たとえば、13は素数ですが、逆方向にした31も素数です。 したがって13はエマープのひとつ(31も同じようにエマープ)。 一方、101は素数で、逆方向にしても同じ101なので素数ですが、 エマープではありません(回文になっているから)。
    エマープには、
     13, 17, 31, 37, 71, 73, 79, 107, 113, 149, 157, ...
    などがあるそうです。おもしろいですね。
     * * *
    元号の話。
    平成が終わって新しい元号になるかも、という話題が流れていました。
    新しい元号になるといえば、 当然「どんな元号になるか」という予想したくなるのは人情です。
    どんな元号かなあ……と思っているうちに、 ふとこんなことを思いつきました。
     これまでに元号で使われた文字をもとにして、  すべての二文字の可能性を考えたらどうだろう!
    ということで「元号ジェネレータ」を作りました。 これは「これまでに元号で使われた漢字」からなる、 すべての二文字列を生成するRubyスクリプトです。
     ◆gengo.rb - 元号ジェネレータ。  https://gist.github.com/hyuki0000/44d889b29a5320493e987020adfd8385
     ◆元号ジェネレータで生成した「元号」たち(一部)
    なお、元号に使われた漢字として以下の文字を選びました。
     万中久乾亀亨享仁保元勝化吉同和喜嘉国  大天字安宝寛寿平康延建弘徳応感慶成承  授政文斉昌明昭景暦正武永治泰白祚神祥  禄禎福老至興衡観護貞銅長雉雲霊養
    これは、Wikipediaから手動で持ってきたので、 誤りがある可能性があります。
    見ていると、確かに趣のある文字が多いことがわかります。 時間を表しそうな文字(久、永、暦)や、 落ち着きを表しそうな文字(平、中、安、泰)や、 幸福と感情を表す(喜、感、慶、福)や、 大きさ(大、長)や、財産(宝、禄、銅)など……
    元号にはその時代ごとの「願い」が込められているのでしょう。
    その一方で、現代では選ばれなさそうな文字もあります。 選ばれなさそうな文字としては「武」「老」「銅」「霊」など。
    結城はクリスチャンなので、ここにはありませんが、 「信」「望」「愛」などが入ってほしいですね (参照:コリント人への第一の手紙13章13節)。
    これは軽口ですが、新元号を「西暦」にして、 新元号が開始する西暦の数値から開始したら、 とてもいいと思うのですがどうでしょう。 たとえば、2019年から新元号が始まるとしたら、 その年を「西暦2019年」とするのです。
    ふだん西暦に慣れている人にとっては、 役所の手続きや書類を書くときだけ元号に変換するというのは、 やっかいに感じるものです。またコンピュータで使われているシステムでも、 元号との変換プログラムが必要になります。 新元号を西暦にすれば、その問題が一気に解消すると思うのですけれど。
    ところで、先ほどの「元号ジェネレータ」は、 「窓の杜」というサイトのコラムで取り上げられました。
     ◆次の元号は?『数学ガール』の結城氏が元号ジェネレータスクリプトを公開  http://forest.watch.impress.co.jp/docs/serial/yajiuma/1038540.html
    ここで取り上げられてから数日間、エゴサーチ(自分の名前や作品名で検索) がこのコラム関連のツイートで埋まりました。 「窓の杜」で取り上げられるというのは、 想像したよりも大きな影響があるんだなと思った次第です。
     * * *
    音声とテキストの話。
    有名なソフトウェア技術者、宮川達彦さんが運営しているPodcastで、 結城の『Java言語で学ぶデザインパターン入門 マルチスレッド編』 が紹介されていました。ありがとうございます。
     ◆171: Psychologically Safe Podcast (naoya)  https://rebuild.fm/171/
    ところで、Podcastは音声なので、検索にひっかかりません。 今回の紹介は、ソフトウェア開発者のてぃーびーさん(@tbpgr) のツイートで知りました。感謝です。
     https://twitter.com/tbpgr/status/818807912705323008
    将来的には、音声も自動的にテキスト化され、 検索可能になるんでしょう。
    と、いうところで自分の執筆の話に発想が移ります。
    結城の仕事は本を書くことなので、 文章をどのようにテキスト化するかにはとても関心があります。 これまでも音声入力⇒テキスト化を何回か考えたことがありますが、 結局、タイプによるテキスト化しかやっていません。
    理由はいくつかあります。大きな理由のひとつは、 結城は外のカフェで執筆していることが多いので、声に出せないというもの。
    それから、タイプの作業(指を動かす作業)自体が楽しいので、 あまりその手順を省略したいと思わないという理由もあります。 いくら効率的だといっても、自分の楽しみを省略してしまっては、 つまらないです。
    最近行った大掛かりな「音声⇒テキスト」変換作業は、 筑紫女学園での特別授業(講演会)の録音をテキストにしたときですね。
     ◆数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)  http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
    そのときに結城がとった方法は、 iTunesで音声データを断続的に再生しながら、 それをタイプするという原始的(?)なものでした。
    ただし、この方法はいわゆる「文字起こし」とは異なります。 それは、語られた言葉を一字一句テキストにしているわけではなく、 そこで語られた内容を読み物の形に変換したからです。 話そうと考えていたけれどうまく言葉にできなかったところを加筆し、 言いよどんだ部分を削除し、文章を整え(でも整えすぎず)、 読みやすい形に直す作業です。
    その作業は、結城にとって「とても楽しい」ものでしたから、 そこをあまり機械化したいとは思いませんでした。
    なぜ楽しかったのでしょう。 一般に、文章を書くときには「《次》に何を書くか」に頭を使います。 でも、自分の語った内容をテキスト化するときには、 《次》に書くべきもので悩むことがありません。 なぜなら、書くべきことが自分の音声を通じて次々に与えられるからです。
    自分がやるべきことは、 いま聞いた内容を自分の意図に合わせて整えることだけ。 それを繰り返していくだけで、 意味のある文章がぞくぞくと作られていくのは、 とても気持ちのいい作業でした。
    この楽しさは、あくまで、 自分が語ったことを自分で編集しているから来るものです。 他人の語った音声をテキスト化するとなったら、 いったん機械の助けを借りたくなるのかもしれません。 やったことがないので、わかりませんけれどね。
    そういえば、文字起こしのときには「自分の音声」を聞くことになります。 自分の音声を自分で聞く作業を苦痛に感じる人は多いらしいです。 そもそも、録音した自分の声は、自分の声に聞こえませんからね。 「このしゃべってる変な声のヤツは誰だ?」という気持ちになるものです。 結城も若いときは、 自分の声を聞くのが死ぬほど恥ずかしかったのを覚えています。
    でもあるとき「実際に他人が聞いている声はこっちの方なんだよな」 と気付いてからは、それほど恥ずかしくなくなりました。 自意識の変化とでもいいましょうか。
    あなたは、自分の音声をテキストにしてみたことはありますか。
    そのとき、どんなことを感じましたか。
     * * *
    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学の問題に挑戦しよう!(問題編)
    再発見の発想法 - ad hoc(アドホック)
    正しい答えを持っている人ほど、丁寧な言葉遣いをしてほしい
    Web連載「数学ガールの秘密ノート」新シーズン「いにしえの数学」開始!
    数学の問題に挑戦しよう!(解答編)
    おわりに