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記事 5件
  • Vol.357 結城浩/自分の仕事をプランする喜び/高校生とプログラミング/自分と相手の境界線/勉強の楽しさ/

    2019-01-29 07:00  
    216pt
    Vol.357 結城浩/自分の仕事をプランする喜び/高校生とプログラミング/自分と相手の境界線/勉強の楽しさ/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年1月29日 Vol.357
    目次
    高校生のうちからプログラミングを始める利点 - 学ぶときの心がけ
    自分と相手の境界線を意識する
    「勉強が楽しい」という感覚 - 学ぶときの心がけ
    自分の仕事をプランする喜び - 仕事の心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    2019年が始まったと思ったら、もう1月も終わりですか!
    早い早い早い!

    * * *

    結城浩の「ノート」の話。
    Suzuri(スズリ)というサイトで、楽しいグッズ販売を始めました。
    まず第一弾は、ノート!
    結城浩のアイコンである「スレッドお化け坊や」がハートを持っているデザインの表紙のノートです。以下の写真ではサイズ感がわかるように『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の上に重ねてあります。
    ◆結城浩(ハート)ノート
    Suzuriは、画像ファイルをアップロードするとさまざまなグッズを販売できるというサービスを提供しています。ノートだけではなく、スマートフォンケースやマグカップなども販売できるので、ようすを見ながら少しずつ品揃えを増やしていきたいと考えています。
    ◆結城浩のSuzuri(スズリ)https://suzuri.jp/hyuki0000
    先日販売を始めたばかりなのですが、ハル*さん(halringo)がさっそくご購入くださり、インスタグラムで紹介してくださいました。ありがとうございます!
    ◆注文していたスレッドお化け坊やのノートが届いた!https://www.instagram.com/p/BtGkzCrAW1N/
    ◆ハル*さんのツイート(@halringo_)https://twitter.com/halringo_/status/1089182695698063366

    * * *

    サイン本無料プレゼントの話。
    先日、『C言語プログラミングレッスン入門編 第3版』が刊行されました!
    刊行を記念して、サイン本を無料プレゼントいたします。 ぜひご応募ください。
    〆切は2019年1月30日(水)です。応募方法は以下の記事をご覧下さい。
    ◆『C言語プログラミングレッスン入門編 第3版』《サイン本無料プレゼント》https://snap.textfile.org/20190116193719/
    また、中文繁体字版『数学ガールの秘密ノート』と『暗号技術入門』の《サイン本無料プレゼント》も同じ日の〆切になっています。応募なさる方はお早めに!
    ◆中文繁体字版『数学ガールの秘密ノート』他多数《結城浩のサイン本無料プレゼント》https://snap.textfile.org/20190115210052/

    * * *

    Evernote再構築の話。
    堀正岳さん(@mehori)の「Evernoteをもう一度ゼロから始めよう」というブログ記事を読んでいました。
    ◆Evernoteをもう一度ゼロから始めようhttps://lifehacking.jp/2019/01/re-evernote
    ここに書かれているのは、Evernoteのアカウントを二つ用意して、片方をインボックス的にアクティブで軽く使い、他方をアーカイブ的に保存用として使うという話題です。
    結城は知的生活を支えるツールは大好きで、気軽にいろんなサービスを試しています。以前から「Evernoteが重たい感じで、死蔵しているノートがたくさんあるなあ」と感じていたので、この記事の内容に「おっ」と興味を持ちました。
    それと関連して、最近ではScrapbox熱が再燃しています。Evernote以外のストック場所がほしいなと感じていて、Scrapboxはその有力候補になると感じています。
    ◆Scrapboxhttps://scrapbox.io/
    Evernoteが「重い」とすれば、Scrapboxは「軽い」感じがします。ここでいう重い・軽いというのはサービスが遅い・速いという意味ではなく、そこに突っ込んだ情報の動き方のこと。Scrapboxに入れた情報の方が死蔵されにくいように感じることが多いのです。
    サービスを乗り換えてばかりではしょうがありませんが、サービスに使われるのではなく、サービスを主体的に使っていくつもりで、自分の知的生活にいい刺激を与え続けたいと思っています。

    * * *

    主語の大きい主張の話。
    ときどき「主語が大きい主張」を見かけます。「主語が大きい主張」というのはたとえば次のようなもの。
     「日本人というのは、〇〇である」  「男性って、〇〇なものだよね」  「女性はいつも、〇〇になる」
    「主語が大きい主張」という表現は、その主張に対して批判的なニュアンスで使われるようです。「それって、本当に日本人全体にいえることなのかな。主語の大きい主張じゃないのかな」というふうに。
    ところで、「主語が大きい主張」をしたくなる心理はどこにあるのでしょうか。包括的に述べることで、強く主張したいからでしょうかね。
    少し考えてみたのですが、「主語が大きい主張」をするのは単純に「楽だから」じゃないかと思いました。細かい条件を付けたり、場合分けをしたり、調査したりするのは面倒なものです。それに比べると、雑に一般化して主張する方がずっと楽。その結果「主語が大きい主張」が生まれるのではないでしょうか。
    別の言い方をするなら「主語を大きくすることは本意ではなく、自分の世界が狭いためにサンプル数も少なく、その中で論を組み立てようとするため、結果として主語が大きい主張になってしまう」となるのかもしれません。
    「主語が大きい主張」を見かけたときには、「主語が大きいぞ」と批判するだけではつまらないと感じます。思考ゲームとしては「その大きな主語はどこまで小さくできるだろうか」と考えるのが楽しそうだし有意義ですね。
    ところで「日本人」や「男性」や「女性」のような主語はいかにも大きそうですけれど、場合によっては「私」も大きな主語になることがあります。
     「私はいつも失敗ばかりしている」
    という主張を考えてみましょう。そこでは、必要な条件が落ちている可能性があります。必要な条件を想像して補ってみましょう。
     「私は(この作業に関しては)いつも失敗ばかりしている」  「私は(空腹のときには)いつも失敗ばかりしている」  「私は(この一カ月は気がかりなことがあるため)いつも失敗ばかりしている」
    心の中で「主語の大きい主張」をするとき、特に自分に対して否定的な主張をするときには十分注意が必要になります。「私はいつも失敗ばかりしている」「私は馬鹿だ」「私は臆病だ」と思うとき「主語の大きな主張」ではないだろうか。雑に一般化していないだろうか。
    心が疲れているときには、視野が狭くなり、世界が狭くなり、自分が見ているわずかなサンプルで論を組み立てたくなるものです。
    自分について「主語の大きい主張」をしたくなるとき、特に自分に対して否定的な主張をしたくなるときには注意しましょうね。過度な一般化をしないように。

    * * *

    では、そろそろ今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    高校生のうちからプログラミングを始める利点 - 学ぶときの心がけ
    質問
    プログラミングに興味がある高校生です。
    高校生のうちからプログラミングを始める利点はありますか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    プログラミングに限りませんが、興味を持ったことはどんどんやればいいと思います。
    興味を持っていることはよく吸収できますし、学びも深くなるものです。
    「利点があるかどうか」を気にするのは「興味はあるけれど、とてもお金が掛かるとき」や「興味は持てないが、やらなきゃいけないとき」ですよ。
    プログラミングを始めるのにとてもお金が掛かるわけではありませんし、あなたはプログラミングに興味があるのですから、利点があるかどうかは気にしなくてもいいでしょう。
    あなたが質問の中に書いていた「高校生のうちから」というフレーズがやや気になります。「プログラミングは高校生のときに学ぶのではなく、もっと後になってからやった方がいいのだろうか」というニュアンスを感じました。そんなことは気にしないで、興味があることなら、どんどん学びましょうよ。
    やってみて「おもしろい!」となるかもしれないし「わからん、ツマンネ」になるかもしれません。でも、興味を持ったときに触れてみる、興味があるうちにやってみるのはすごく大事です。
    高校生が持っている頭の柔軟さ、元気さ、情熱を注げるパワーは高校生のときだけなんですから、どんどん行きましょう!
     
  • Vol.356 結城浩/インクリメンタルな環境改善(1)/人生の決断/失敗と挑戦/パズルゲームから得られる知見/

    2019-01-22 07:00  
    216pt
    Vol.356 結城浩/インクリメンタルな環境改善(1)/人生の決断/失敗と挑戦/パズルゲームから得られる知見/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年1月22日 Vol.356
    目次
    人生で決断をくだすとき
    インクリメンタルな環境改善(1) - 仕事の心がけ
    失敗が怖くて挑戦できない
    パズルゲームで遊ぶときに考えていること - 学ぶときの心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    今回は「おわび」から。
    先週のVol.355でnote(ノート)での配信が1日遅れるという事故がありました。
    これは、結城が配信予約の際に設定ミスしていたためです。
    たいへん申し訳ありませんでした。
    なお、今回のミスは講読者さんからご連絡いただいて初めて気付きました。連絡がなかったら、さらに配信が遅れてしまうところでした。ご指摘くださった講読者さんに深く感謝します。

    * * *

    確定申告の話。
    毎年、いまごろの時期になると「確定申告」が気になります。結城は個人事業主なので、2018年1月1日から12月31日までが「2018年度」となり、そのあいだの収入や支出などをまとめる必要があるのです。
    もちろん会計仕事は毎月やっているのですが、あちこちに細かいミスや漏れがあったりするので、確認作業が意外にたいへんなのです。
    「ええと、どこから手を付けたらいいかな」と思ったときに私は気付きました。
     「2018年の自分」は「2019年の自分」に対して、申し送りの情報を残しておいたはずだ!
    探してみると「いかにも私が探しそうなところ」に、確定申告作業リストがチェックボックス付きでまとめられていました。2018年の自分、えらいぞ!
    ……大げさでしたね。
    それはそれとして「確定申告」の機会に、2018年という一年間の活動を振り返るのは重要なことだと思っています。自分の活動というと結城の場合は「本を書くこと」なのですが、それを「一年間のお金の出入り」という視点から見直すというわけです。
    ふだんは「この文は誤解を招くから直そう」や「ここの『は』は『が』の方がいいな」のようにミクロな視点で仕事をすることが多いです。それに対して「一年間のお金の出入り」という視点に立つと、自ずから全体を俯瞰することになります。
    全体を俯瞰するとは、たとえばこんな問いに答えることです。
    本の売上は、収入全体の何割に当たるか。
    紙の本と電子書籍の売上は、どういう比率か。
    新刊と増刷の売上は、どういう比率か。
    何年も増刷を繰り返している本の、売上推移はどうか。
    国内と海外の売上は、どういう比率か。
    つまり、自分の収入を構成する要素をよく知り、全体像を正しくとらえようとしているのです。
    必要な会計データはスプレッドシートに入れてあるので、並べ替えをしたりグラフを描いたりして全体を俯瞰します。個々の会計データを入力するのは決しておもしろい作業ではありませんが、全体を俯瞰する作業は非常におもしろいです。見ているのは世界のここにしかない会計データだからですね。
    たとえば、次のようなことがわかります(もちろん実際はもっと深く調べます)。
    電子書籍は安定して伸びている。
    海外の売上も伸びている。特に中国。
    新刊と増刷の比率には大きな変化はない。
    「結城メルマガ」は貴重な安定収入源である(あなたがいま読んでいるこれのことです。感謝!)
    結城は、会計データをおもしろがっているだけではありません。全体を俯瞰する作業を通して現状を理解した上で、自分の「未来の活動」に結びつけようと思っています。売上が上がるのは重要です。しかし、そこだけに注目するのではなく「自分が望むポートフォリオになっているか」という確認が重要だと私は思っています。
    ……などと書いてきましたが、実は、売上に関しては単純な法則がわかっています。それは「新刊を出すことは、全体に多大な好影響を与える」という身も蓋もない法則です。
    ということで、2019年もがんばって新しい本を書かねば!

    * * *

    アイコンの話。
    結城さんのアイコン「スレッドお化け坊や」がかわいいので、自分のアイコンにしたいのですが、大丈夫でしょうか……というお問い合わせをいただきました。
    それに対して結城は、「スレッドお化け坊や」は結城浩のアイコンなので、あなたご自身のアイコンとして使うことはご遠慮ください……というお返事をしました。
    アイコンやアバターは重要です。特にネットではそれが「顔」の代わりになりますから。ツイートでも、ブログ記事でも、結城浩のアイコンが表示されることで「あ、結城浩が書いてるんだな」と認識できます。「名前もIDも覚えていないけど、アイコンだけは覚えている」というケースもよくありますよね。
    ネットでの活動を大事だと考えている方は、アイコンをよく考えて決め、それを継続的に使うことをお勧めします。クリエイタ系の人は特に当てはまると思います。「この作品はあの人が作ってる」ということを認識してもらうための大きな手がかりがアイコンになるからです。
    結城は「スレッドお化け坊や」という同じアイコンを20年近く使っています。
    ◆結城浩のアイコンhttp://www.hyuki.com/icon/

    * * *

    コミックの話。
    Web連載「数学ガールの秘密ノート」に登場した新キャラ「ノナちゃん」は絵を描くのが好きなようです。ノナちゃんからのご紹介でこんなコミックを知りました。
    『ブルーピリオド』は藝大を目指す高校生の物語です。自分に何ができるのかを考えること、言葉ではなく絵を使って表現すること、自分の生きていく方向を見定めていくこと……そのようなテーマが青春群像として描かれている作品です。
    ◆山口つばさ『ブルーピリオド』https://amzn.to/2U6rhRT

    * * *

    毎日「お題」を与えられる話。
    Daily UIという企画を知っていますか。
    メールアドレスを登録すると、ユーザインタフェースの「お題」が毎日ひとつ与えられ、そのお題に答えるデザインをする。そういう無料企画のようです。
    ◆Daily UIhttp://www.dailyui.co
    ユーザインタフェースのお題というのは、たとえば「Advertisement(広告)」や「Calculator(計算機)」や「Search(検索)」のような単語として与えられます。それをもとに自由にWebやアプリをデザインし、それをツイートする。それだけといえばそれだけ。
    毎日、お題が与えられ、それをデザインすることで、デザイン力をつけていくというチャレンジ企画なのでしょう。
    DailyUIというハッシュタグを検索すると、たくさんの人が日々チャレンジしているようすをうかがうことができます。
    ◆TwitterでDailyUIを検索するhttp://bit.ly/hyuki-dailyui
    結城がこの企画を知ったのは、灰色ハイジさん(@haiji505)が「100日続けたDaily UIの記録」という記事をnoteに書いていたからです。
    ◆100日続けたDaily UIの記録|灰色ハイジ @haiji505|note(ノート) https://note.mu/haiji505/n/n4c58da2f6154
    これを見て結城が思ったのは、同じノリで「Daily ○○」というサービスが作れそうだなということでした。Webサービスの仕組みとしてはそれほど難しくはないでしょう。登録されたメールアドレスに、毎日一個ずつメールを送るだけですから。気の利いた「お題」を100個(あるいは256個)用意するところがポイントですね。
    たとえば「Daily Math(毎日1つ問題を解く)」や「Daily Blog Topic(毎日ブログ記事を書く)」や「Daily Programming(毎日プログラムを一つ書く)」というのはどうでしょうね。
    「Daily ○○」に挑戦するのもいいけれど「自分が作れるDaily ○○は何だろう」という発想はおもしろそうです。チャレンジするとおもしろい項目を自分は100個見つけられるだろうか。それはどんな分野だろうか。そういう発想です。
    あなたなら、どんな「Daily ○○」を作りますか。
    私なら「Daily 「Daily ○○」」を作りたくなります。毎日「○○」が送られてきて「Daily ○○」に使える単語を100個作るチャレンジ企画です。メタだ!

    * * *

    では、そろそろ今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    人生で決断をくだすとき
    質問
    結城先生は、人生で何か決断をくだすときに、何を基準にしていますか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    「決断の基準」といっても、人生の決断は規模や種類や重大性がさまざまなので一概には言えません。答えるのがすごく難しい質問です。
    選択肢がある場合には、割と「エイヤ」で決めちゃいます。決めてから、がんばる。十分がんばったら、うまくいってもうまくいかなくても後悔しない。そういうパターンが多いようですね。
    どういう選択肢を選ぶかについては、感覚的な話で恐縮ですが「未来に広がる方を選択する」ように心がけています。つまり、すぐには役立たないかもしれないが、長期的には望む方向になる選択肢を選ぶという意味です。
    ◆未来に広がる一手https://mine.place/page/0687be6b-1aaa-471b-9ba6-03dff459adbd

    * * *

    人生の決断という話になると、論理的に割り切れないものも多数ありますし、そもそも未来は目に見えないので「確実にこうなる」とはいえない中で判断することになりますよね。人生は簡単には割り切れない、と腹をくくって決断します。
    結城はクリスチャンですから、決断においては「神さまに祈る」ことが欠かせません。また、結城の決断には「聖書に基づくキリスト教的な価値感」が大きな影響を与えていると思います。
    ◆将来の住まいについて考えるhttp://www.hyuki.com/dig/tolive.html
    「決断の基準」という話からは少し離れますが、結城は「全部賭け」が好きな傾向があるようです。特に大事なものほどそうです。一つのことに集中する。一つのことに時間を注ぎ込む。一点買いする。そんな感覚です。

    * * *

    決断するときには、自分の人生全体に思いを馳せることは重要です。いま私が立っている場所はどこか。何のためにいまここに立っているのか。何のためにいまこの決断と向かい合っているのか。そのような大きな問いに必ずしも答えが得られるとは限りませんが「思いを馳せる」ことは重要です。大きな決断は、自分の人生に大きなインパクトを与えるからです。
    ◆あなたがもし、このような時に黙っているならばhttps://story.hyuki.net/20180623075359/

    * * *

    重大な決断は当然ながら重大です。しかし、決断しない方がいい場合もあります。特に体調が良くないとき。結城は、体調が良くないときには重大な決断はしないように心がけています。
    ◆心の状態が良くないときにはhttps://story.hyuki.net/20150926224914/

    * * *

    決断することは重要で、一度決断したことは守った方がいいと思います。しかしながら、どうしても上手く行かないときには、大胆に決断を翻すこともときには大事です。矛盾しているようですが、割り切れないのが人生です。
    自分を律するという意味で、あるいは多少の困難に負けないという意味で、いったん行った決断を大事にするのはいいことです。しかしながら、過去の決断にこだわることが「関係者の誰も幸せにしない」ということも人生にはよくあります。
    決断を翻すことで、一時的に自分が非難されたり恥をかいたりするけれど、長期的には関係者が幸せになるというケースです。その場合には「決断を翻す」という「新たな決断」が大事なこともあるのです。
    以上、「決断の基準」に限らず「決断というもの全般」について思うことを書きました。あなたに何か伝わるものがあればうれしいです。
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.355 結城浩/数学の勉強方法を教えてください/「ノナちゃん」の書籍化/再発見の発想法/生きる気力/人生を共にする/センター試験/

    2019-01-15 07:00  
    216pt
    Vol.355 結城浩/数学の勉強方法を教えてください/「ノナちゃん」の書籍化/再発見の発想法/生きる気力/人生を共にする/センター試験/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年1月15日 Vol.355
    目次
    生きる気力を失っている
    センター試験直前のアドバイス - 学ぶときの心がけ
    数学の勉強方法を教えてください! - 学ぶときの心がけ
    人生を共にする相手としての「好き」とは
    数学苦手な新キャラ「ノナちゃん」の書籍化へ向けて - 本を書く心がけ
    アーカイブ - 再発見の発想法
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    * * *

    結城は、物理学者ファインマン先生の名言を紹介するbot (@ProfFeynman)をフォローしています。含蓄のある明言が多いのですが、先日は、こんなツイートがありました。
    >>>
    There is no authority who decides what is a good idea.
    https://twitter.com/ProfFeynman/status/1080146955022553090
    <<<
    翻訳すると「何が良いアイディアかを判断する権威など存在しない」とでもなるでしょうか。
    ファインマン先生がどういう意図でこの言葉を出したのかはわからないので、以下に書くのはこの言葉からの連想です。
    確かに、権威によって「これは良いアイディアである」や「これは良いアイディアではない」と判断することはできません。
    もちろん、えらい先生や有名な先生が何かを言ったとき、それを尊重するのは悪いことではないでしょう。経験が豊かで、他の人が知らないことや気付かないことに目を向けることができている可能性があるからです。
    しかし、「これは良いアイディアである」という主張が「なぜならば」という理由を持たないとき、その権威はいささか怪しくなります。それは、つまり「権威のみ」が根拠になることの危うさともいえるでしょう。
    数学や自然科学では特によく当てはまります。どんなにえらい先生が何かを考え何かを主張したとしても、数学の論理やこの自然のあり方をねじまげることはできませんから。数学や自然科学の研究においては、謙虚さが必要なのです。
    そこで私はふと、cakesでのWeb連載「数学ガールの秘密ノート」第249回で「僕」が語ったことを思い出しました。
    >>>
    僕「そこに、数学のおもしろさの一つがある。誰がなんと言おうとも、正しいものが正しい。話す人がどれだけ偉いか、どれだけ年が上か、どれだけパパッと答えるか、どれだけ大声を出すか、そんなことは、正しさとは無関係」
    ユーリ「《ささやき声でも真理は真理》」
    https://bit.ly/girlnote249
    <<<
    私も同じように感じます。ここでユーリが言っている《ささやき声でも真理は真理》というのは、数学ガールに登場する双倉図書館に掲げられている言葉です。
    権威というものについて、あなたはどう思いますか。

    * * *

    二つの軸で整理する話。
    湊川あいさん(@llminatoll)が一つの図と共に、こんなツイートをしていました。
    >>>
    A.楽しいしお金になる活動 B.楽しくないけどお金になる活動 C.楽しくてお金にならない活動 D.楽しくないしお金にもならない活動
    Cの時間を意識して増やすと、引きずられるようにAが自然と現れる
    https://twitter.com/llminatoll/status/1074282798003810304
    <<<
    ◆「楽しいかどうか」と「お金になるかどうか」という二つの軸で活動を整理した図(湊川さんによる)
    この図は「楽しいかどうか」と「お金になるかどうか」という二つの軸で整理しています。二つの軸があるので四つに分かれるというのは、当たり前といえば当たり前です。でも、一つ一つを見てじっくり考えるのは意味がありそうです。
    湊川さんが書いているように「Cを育ててAにする」(お金にならないけれど楽しい活動を育てて、楽しい上にお金になる活動にする)というのは素敵な考えですね。
    もしかしたら、たとえばBとCの活動しか経験がない人もいるかもしれません。つまり「B.楽しくないけどお金になる活動」と「C.楽しくてお金にならない活動」という二つです。そういう人は、楽しくてしかもお金になる活動(つまりA)の経験がないので「お金をもらう仕事は楽しくなくて当然」という発想になるかもしれません。
    また、こんなケースもありそうです。お金を度外視して楽しいからやっている活動(つまり右下のCの部分)があった。でもふと気がつくと右下のCから、右上のAにポンと移動していたというケース。言い換えると「お金にならないと思っていたのに、お金になった!」というケースです。
    活動を育てているという意識はなかったのに、 自分の「楽しい!」という気持ちを追求して活動した結果、他の人にも「楽しい!」というインパクトを与えて、結果的に収入につながるような場合といえます。
    右上のA「楽しくてお金になる」は楽しいので、注意しないとワーカホリックになりそう!
    「楽しくなくてお金にもならない」(つまり左下のD)という部分を、「お金にはならないとしても楽しい」(つまり右下のC)という部分に移動する試みも生活の品質を上げてくれそうです。
    たとえば「確定申告の準備」という活動は、左下のDに相当すると私は感じます。でも「確定申告の準備のためのプログラムを作って使う」という活動に変化させれば右下のCに移動してくれるのです。
    湊川さんのこの図は、そんな発想をうながす図になっています。
    この図では、自分の活動を「楽しいかどうか」と「お金になるかどうか」という二つの軸で整理しています。でも他の軸を持ってくることもできるでしょう。ちょっと考えると以下のような軸が思いつきます。
    未来につながるかどうか
    自分のためか社会のためか
    これまでの継続か新規開拓か
    インプットかアウトプットか
    あなたなら、自分の活動を俯瞰するのにどんな軸を考えますか。
    なお、湊川あいさんは『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門』など、楽しい本をたくさん書いていらっしゃいます。
    ◆湊川あいさんの著者ページ(アマゾン)https://amzn.to/2CnPcFk

    * * *

    映画の原題の話。
    映画『アナと雪の女王』の原題は『Frozen』です。直訳すれば「凍り付いて」ということになります。『アナと雪の女王』の方が未視聴段階でも内容がわかりますが『Frozen』の方が深みがあってすごいと感じます。深みがあるというのは、凍り付くという表現が、この映画の中では多義的で比喩的な意味も持っていることに気付くからです。登場人物の心理の変化ですね。
    映画『塔の上のラプンツェル』の原題は『Tangled』で、こちらは「もつれて」という意味。ラプンツェルの長い髪の毛がからみあいもつれるだけではなく、状況がもつれているのも表現しているのでしょうか。
    映画『カールじいさんの空飛ぶ家』の原題はすごいです。何と『Up』という一単語ですから。確かに「上へ」ですし、一度聞いたら忘れませんが、タイトルをこの一単語にするという思い切りに感動します。
    スティーヴン・キングの『IT』は有名なので、さすがに邦画になっても『IT』です。でも副題が付いて『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』となります。
    タイトルを付けるのは難しいものですね。
    拙著『数学ガール』は、たいへんうまくいったタイトルだと思っていますが、最初のアイディアでは『数学ガール/ミルカさんとテトラちゃん』というタイトルにする予定でした。でも編集長から『数学ガール』だけにしましょうという提案を受けて修正したのです。いまにして思えばその提案は大正解だと思います。
    『数学ガール』という五文字は短くてインパクトもあり、しかも内容をよく表しているからです。

    * * *

    では、そろそろ今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    生きる気力を失っている
    質問
    愛する人に疎ましがられ、いまの私は生きる気力を失っています。
    こういうとき、どうしたらよいのでしょうか。
    回答
    時間です。
    時間を味方につけましょう。つらいつらいつらいときは私もありました。つらいつらいつらいときを、何とかやり過ごすだけの力をかき集めましょう。気持ちをしっかり持って時間を過ごすのです。
    あくまで私の場合ですが「信頼できる他者」が、大きな助けになりました。自分じゃない誰かと関わること。それは大事な一手です。
    愛する人に疎ましがられることは本当につらいです。愛する人との関係は、人の心と身体に直接的な影響を与えます。気力を失い、どうすればいいか、まったく困り果てます。こんな状態が永遠に続くなんてと感じます。
    しかし、信じられないかもしれませんが、人は変わり、状況は変化します。
    ですから、時間を味方につけるのです。自分一人では難しいことが予想されるので、何とか「信頼できる他者」と関わり、乗り切りましょう。
    あなたのこと、祈っています。
    センター試験直前のアドバイス - 学ぶときの心がけ
    質問
    センター試験が近づいてきて、不安や何やらで押しつぶされそうです。何かアドバイスを頂けないでしょうか。
    回答
    センター試験はとても大きな試験ですから「不安やら何やら」で押しつぶされそうになるのは無理もありません。当然といってもいいです。
    アドバイスといっても、すでにあなたがいろんな方から聞いているアドバイスしかできません。落ち着いて・体調に気を付けて・睡眠をよく取って・これまでの勉強の成果を生かして……のようなアドバイスです。
    不安は、結果がどのようになるかわからないところから生じます。人間には未来が見えませんから、それは当然です。それを完全に消すというのは人間わざではないでしょう。でも、できることは何もないかというと、そうでもありません。
    これまでのノートを振り返ったり、スケジュールを再確認したり、会場までの交通手段をチェックしたり、持ち物を確かめたり、そのような「具体的に自分の身体を動かしてでき、しかも無駄にならないこと」があります。それをしましょう。
    そして、受験生は、多かれ少なかれ、あなたと同じように「不安」を感じてるはずです。表面上はつくろっているかもしれませんが、それぞれにそれぞれの不安を感じています。決して、あなただけではありません。
    私に言えるのはそのくらいです。不安は不安として、具体的にできることをしましょう。そして勇気を持って試験に立ち向かってください。実力を発揮できますように。結果は後からついてくるものです。がんばってください。応援しています。
     
  • Vol.354 結城浩/文章をなかなか公開できない/集合・位相や代数を学ぶ意義/本を書き始めるタイミング/読書術/

    2019-01-08 07:00  
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    Vol.354 結城浩/文章をなかなか公開できない/集合・位相や代数を学ぶ意義/本を書き始めるタイミング/読書術/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年1月8日 Vol.354
    目次
    自分の文章をなかなか公開できない - 文章を書く心がけ
    どこまで理解してから本を書き始めるか - 本を書く心がけ
    数学を専門としない学生が、集合・位相や代数を学ぶ意義はあるか - 学ぶときの心がけ
    経済学を学ぶうちに数学に興味を持ったが、内容がなかなか頭に入らない - 学ぶときの心がけ
    結城浩の読書術
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    2019年になって早くも一週間が過ぎました。一年は約52週あるので、一週間は一年の約2%にあたります。さて「約2%」は大きいのか小さいのか……微妙な値ですね。

    * * *

    数学が苦手な登場人物の話。
    「数学ガール」シリーズで七年ぶりに新しいキャラクタが登場しました……という話題は結城メルマガで何回かお話ししました。
    ◆数学ガールに新キャラ登場 - 本を書く心がけ(Vol.347)https://bit.ly/hyuki-mm347
    ◆数学ガールに数学苦手なキャラクタが登場するという新しいチャレンジ(Vol.350)https://bit.ly/hyuki-mm350
    時の経つのは早いもので数学苦手な新キャラ「ノナちゃん」が誕生してから八週間が過ぎ、今週と来週の二回で今シーズンの十回が終了します。本当に早いものですね。
    今回の新キャラ登場についてはかなり準備をし、時間を掛けて執筆してきました。今回、Webでの連載のもっともいい側面を体感できていると思います。それは「読者からのリアルタイムな反応」です。
    Web連載を更新すると、多くの方がいつも話題にしてくださるのですが、今回の「ノナちゃん」については、いつもよりもずっと多くの反応がありました。しかも、いつもとは異なる読者さんも読んでくださったり、書籍で読むからWeb連載は追っていないという読者さんも読んでくださったりという状況になっていました。たいへん感謝です。
    ノナちゃんとは長い付き合いになると思いますが、まずは残り二週分の更新に力を注ぎたいと思います。また、今シーズンの記事に関しては(まだ検討中ですが)早めの書籍化も考えたいですね..oO
    ◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」https://bit.ly/girlnote

    * * *

    「そういえば」の話。
    結城は人と話すとき「そういえば……」と始めることが多いようです。つまり、相手が言ったことや話題にのぼったことに対して、何かしら連想したことや思いついたことを話すというスタイルですね。
    個人的な考えですけれど、会話は「でも」で始めるより「そういえば」で始める方がうまく流れるように思います。相手が言ったことを否定するよりも、そこから続けていく方がスムーズなのでしょうか。議論の場合には「でも」が登場することは多いでしょうけれど。

    * * *

    体調がちょっと変なときの話。
    結城は個人で仕事をしているので、自分の体調管理はとても大事です。この「結城メルマガ」も、Web連載「数学ガールの秘密ノート」も、私が寝込んでしまったら誰も代わりに書いてくれないからです。
    結城は喉が弱くて、疲れたときや体調が変なときに、喉に違和感を覚えることが多いようです。「む、何だか喉がおかしいぞ」というときには、次のような対策を取ります。
    水分を摂る
    空腹が原因のときには食事をする
    食事は、冷たいものではなく温かいものを選ぶ
    漢方薬の「葛根湯」を飲む
    お腹にドライヤーをかける
    早めに眠る
    これは結城個人に「効く」方法なので、あなたに合うかどうかはわかりません。基本的には「身体を温める」ことで解決しているような気がします。いくつか解説します。
    「葛根湯(かっこんとう)」は、市販されている葛根湯エキスを顆粒状にしたものをまとめて買っておき、何包かをいつもカバンに入れています。完全に「これは風邪だな」という状態になる前に「何となく身体が冷えて調子が悪いぞ」というときに一包飲みます。
    「お腹にドライヤーをかける」は、結城がもう何年も愛用している方法です。自分の部屋に小型のドライヤーを置いておき、「調子が出ないな」や「何となく気分が乗らない」や「気持ちがザワついて落ち着かない」というときに、お腹(特に下腹部)にドライヤーで温風を当てるのです。驚くほど気分が変わり、ぐっと落ち着くことができます。
    「早めに眠る」は、いうまでもなく睡眠ですが、実は一番効くのがこれですね。体調がちょっと変なときは、とにかく早めに眠る。睡眠重要です。
    体調がちょっと変なとき、あなたはどうしていますか。

    * * *

    時間で区切る話。
    インフラガールエンジニアのなつよさん(@infragirl755)がこんなツイートをしていました。
     >>>>
     定時で帰る人、仕事が早いから帰るのではなくて定時だから帰っているということに気づいた
    https://twitter.com/infragirl755/status/1074664163916505089
     <<<<
    なるほど、確かに。
    「定時で帰る人」は「自分の仕事を手早く片付けて帰っている人」と錯覚しそうだけど、実はそうではない。「定時で帰る人」は「定時だから帰っている人」なのだという気付きですね。まったくその通りです。
    ところでこの気付きは「日々の仕事の中で、コンスタントに進捗を出す方法」にも通じているように思います。仕事をしていると、つい「手応え」や「成果」に注目します。もちろんそれは悪くないのですが、手応えや成果だけに注目していると、それらがないときに、つらくなってしまいがち。
    仕事に「手応え」があってもなくても、開始時間が来たら開始する。終了時間が来たら終了する。
    仕事で「成果」が出せても出せなくても、開始時間が来たら開始する。終了時間が来たら終了する。
    そのような進め方も大事です。やるべきことを「時間で区切る」わけですね。
    「手応え」が得られない原因を探ったり、「成果」が出せない理由を調べたりするのは、また別途行うことにします。日々の仕事を続けていくためには「時間で区切る」という発想も重要だと思います。仕事は一日で終わるものではないので、コンスタントに進捗を出していくために時間で区切り、今日の分だけは進めるということですね。

    * * *

    小早川さんの話。
    先日Twitterで「メモリちゃんと積んでくれ」という文を見て、一瞬「何を積むの?」と思ってしまいました。
    もともとこれはどういう話かといいますと……会社で開発者にコンピュータを配布するときには、開発作業に支障をきたさないように「十分な量のメモリを積んでほしい」という意味でした。
    でも「メモリちゃんと積んでくれ」というのを見て、結城は「メモリちゃん」という女性の名前だと勘違いしてしまったのですね。伝わるでしょうか。名字は、たとえば「小早川」とでもしましょう。小早川メモリさん。小早川メモリちゃん。
    そういう女性の存在を仮定すると「メモリちゃんと積んでくれ」の「メモリちゃん」が人名に見えてきませんか、どうですか。「メモリちゃんと積んでくれ」……何を積むの?
    この文の揚げ足取りをしているわけではありません。話し言葉ではよく「を」が省略されますよね。「メモリをちゃんと積んでくれ」の代わりに「メモリちゃんと積んでくれ」のようになります。
    Web連載「数学ガールの秘密ノート」は対話形式の文章なので、口語的な言い回しをどう書くかはずいぶん考えています。テトラちゃんは比較的ていねいな語りをするので書きやすいのですが、ユーリの語りを書くのは難しいのです。
    たとえば「逆行列が作れないよ」という発言は「逆行列、作れないよ」のように表現することがあります。「が」を省略する代わりに読点「、」を入れていますね。
    その他に頻出するのが「○○とは○○」という言い回しの代わりに「○○って○○」というもの。「とは」が「って」になっています。「aの逆数とは1/aのこと?」や「aの逆数というのは1/aのこと?」の代わりに「aの逆数って1/aのこと?」のようになります。
    数学の物語なので、誤読や誤解を生まないようにしつつも、カジュアルな会話のようすを作り出すような調整をあれこれ行っているのです。

    * * *

    それでは、そろそろ今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    自分の文章をなかなか公開できない - 文章を書く心がけ
    質問
    結城さんのいろいろな文章を読んで、私もブログを始めたくなりました。
    ただ、自分の内面をさらけ出すのは、やっぱり勇気がいります。公開を何度も考えましたが、なかなか行動に移せません。
    Web日記やブログ、Twitterを長年続けている結城さんから、何かアドバイスをいただけませんか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。また、結城の文章をお読みくださり、感謝です。
    慣れるまでは、なかなか自分の文章を公開することができないものです。それはあなただけではないと思いますよ。
    まず、あなたが書いた文章を公開するかどうかというのは、100%あなた自身の選択です。誰かから強制されるものではありませんし、誰かから禁止されるものでもありません。あなたが公開しようと思ったタイミングでいいし、無理しなくてもいいのです。
    一つ言えるのは、文章を書く側の人(つまりあなた)が意識するほどは、文章を読む側の人(つまり読者)は意識しないものです。「こんなこと書いたらどう思われるだろうか」と意識するのは大事ですが、意識し過ぎる必要はありません。リラックスして「試しに公開してみる」くらいの感覚でもいいと思います。
    そもそも、書き手が気にするほどは多数の人には読まれませんし、反応も来ません。一生懸命「読んで読んで!」と宣伝すれば別ですけれど。
    その一方で、文章を公開することで得られるメリットはたくさんあります。文章を読む力や書く力は確実に磨かれるといえます。「読むのは自分だけである」というのと「誰か一人でも自分以外の人が読むかもしれない」というのとでは全然違います。
    変な言い方になりますが、あなたが公開をためらう意識が大きいほど、公開したときの文章力向上は大きいかもしれません。それだけ自分の文章を意識的に書くことになるからです。
    ご質問の中であなたは「内面をさらけ出す」という表現をしました。あなたがどのような文章を公開しようと思っているかはわかりませんが、文章は必ずしも「内面をさらけ出す」ものでもないように思います。また、現実問題として「内面をさらけ出す」ような文章を書くのは難しいです。文章を通して自分の考えていることを人に伝えるためには、しっかりと考えを深める必要があるからです。その意味では、公開することを前提として文章を書くことは、自分の考えを整理し、深める働きもあるといえるでしょう。
    あなたは「公開を何度も考えた」ということですので、自分の文章を公開するかどうかを迷っているわけですよね。私の考えはこうです。
     文章を書くかどうか迷っている人は、書き始めた方がいい。  文章を公開するかどうか迷っている人は、公開した方がいい。
    きっと、新しい世界が広がると思いますよ。
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.353 結城浩/難しい問題にチャレンジ/大学名か学ぶ内容か/数学的思考/数学の理解/人生の目標/

    2019-01-01 07:00  
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    Vol.353 結城浩/難しい問題にチャレンジ/大学名か学ぶ内容か/数学的思考/数学の理解/人生の目標/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年1月1日 Vol.353
    はじめに
    結城浩です。
    あけましておめでとうございます!
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    本年もどうぞよろしくお願いいたします。

    * * *

    今年の目標の話。
    新年といえば「今年の目標」ですが、ふと思うことがあります。
    「そもそも、2018年の1月に掲げた目標って何だっけ……」
    すっかり忘れていますので、一年前の結城メルマガを引っ張り出してみます。
    (ごそごそ)
    2018年1月2日のVol.301が2018年最初の結城メルマガでしたが、読んでみると「今年の目標」など掲げてないのです(!)。それは覚えていないわけですよね……
    2019年も特に「目標」というのはありません。継続的にいまの仕事を続けていく予定です。
    毎週「結城メルマガ」を配信する。
    毎週Web連載「数学ガールの秘密ノート」を配信する。
    『数学文章作法 執筆編』を刊行したい。
    『数学ガールの秘密ノート』を二冊刊行したい。
    というのが現在のところ見えている2019年のお仕事ですね。さて、どうなるでしょうか。
    「継続」といえば、結城は2015年(4年前)の1月にこんな写真をInstagramで公開していました。
    ◆結城浩の一週間(画像)
    ◆結城浩の一週間(Instagram)https://www.instagram.com/p/yRco9wDSh1/
    この一週間の流れは現在とまったく変わりません。結城は四年間、変化のない一週間を過ごしてきたのですねえ(しみじみ)。
    あなたの「今年の目標」は何でしょうか。昨年の目標は何でしたか。あなたの目標は数年前から何か変化があったでしょうか。

    * * *

    コミックの話。
    お正月休みなので、楽しいコミックの紹介をしましょう。
    『映画大好きポンポさん』というのは「作品を作る」ことに関心がある人ならば特に楽しめるコミックです。映画がとても好きだけど地味でさえないアシスタント「ジーンくん」が、映画監督の「ポンポさん」からある日「監督をやりなさい」と命じられる……というハリウッドならぬニャリウッドでの映画製作をめぐるストーリーです。
    とにかくテンポがよくてスピーディ、そして「作品を作る」というのがこういう世界だったらいいな……と思わせる場面が各所にあり、楽しめます。
    ◆『映画大好きポンポさん』(杉谷 庄吾【人間プラモ】)https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B074NSW7TS/hyuki-22/
    ◆『映画大好きポンポさん2』(杉谷 庄吾【人間プラモ】)https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07H7YNV5F/hyuki-22/

    * * *

    アニメの話。
    お正月休みなので、楽しいアニメの紹介をしましょう。
    SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)というアニメが話題になっています。すでに完結しており、アマゾンプライムビデオで全話視聴できますので、ぜひごらんください。私はたいへんおもしろく、どきどきしながら見ました。
    すでにネットでは話題が流れていますし、あらすじやネタバレや考察サイトもありますが、可能なら予備知識なしで順番に視聴するのがお勧めです。
    少年が変身するウルトラマンのようなヒーローが怪獣と戦う。そして美少女も出てくる学園もの……というと、ありがちなアニメのようになってしまいますが、SSSS.GRIDMANはアニメの定型を踏まえつつも、それを越えた新しさがふんだんに盛り込まれた物語だと思いました。
    日常が持つ軽さと現実が持つ重さが隣り合わせになっていること、それから日常生活と異世界が隣り合わせになっていることが巧妙に描かれており、隅々まで考えつくされている物語です。軽さと重さの同居、日常と異世界の同居というのは物語としてはめずらしくありませんが、SSSS.GRIDMANではそれらが自然で絶妙なバランスの上にあるのです。
    オープニングの曲に出てくる「これは訓練でもリハーサルでもない」という歌詞もいいですね。物語が進むに連れて、この歌詞の意味もまた深みを増してきます。
    ◆SSSS.GRIDMANhttps://amzn.to/2zXraAw

    * * *

    そんなところで、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    難しい問題にチャレンジするときの心構え
    大学名よりも学ぶ内容が大事ではないか - 学ぶときの心がけ
    数学的思考は結局は慣れか
    数学で「理解した」と感じるとき - 学ぶときの心がけ
    人生の目標は何ですか
    自分のために生きてはいけないのか
    難しい問題にチャレンジするときの心構え
    質問
    勉強をしていてちょっと難解なところや分からないところがあると、いやだな、面倒だ、自分にはむずかしい、自分はだめだ…とすぐに考えてしまいます。
    いま学んでいるものがおもしろい、楽しいとイキイキ話す人を本当に羨ましく思っています。私もそうなりたいです。
    勉強以外でも同じで、自分の力量より難しそうな物事に挑戦するのに及び腰になってしまっています。
    難しい問題にチャレンジするときの心構えを教えていただきたいです。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    あなたは、いろんなことが見えているようです。そもそも「難しい問題」というのは「自分にできないかもしれないからつい及び腰になりかねない問題」なんですよ。だから、難しい問題に直面して及び腰になるというのは当然のことです。
    あなたが「うらやましい」と思っている方と、あなたの差はほとんどありません。ほんの一歩くらいしか違わないように感じます。その違いは「感情と行動の分離」にあります。
    難しくて嫌だな、とは誰でも思うのです。めんどくさいな、解けないな、できないな、嫌だな、と誰でも感じます。大事なのはそこから次の一歩。そこに分岐点があります。
     嫌だな → 自分はダメだな
     嫌だな → でもやってみるか
    この違いだけ。本当にこの違いだけなんです!
    人により、パターンはいろいろです。いままであまり成功体験が少なかったり、他人から認められた経験が少ないと「ああ、やっぱり自分はダメなんだ」と感じがちです。でも「自分はダメだな」と思った瞬間、自分の意識は「解くべき問題」から「自分自身」にスッと移ることになります。わかりますか。
    そして、ただでさえ難しい問題に向かっているのに、解くべき問題から目をそらしていたら、解決から余計に遠ざかります。
    自分のダメだった経験や、失敗体験を振り返り、自分がいかにダメであるかの証拠固めをしていては、問題は解けません。
    「自分はダメだな」と進みたくなる誘惑は「だから解けなくても仕方がないのだ」という安心感を求める気持ちでもあります。
    おっと、あわてて補足しておきますが、もしもあなたが心を病んでいる場合には無理してはいけませんよ。私は、あなたが弱気だけど健康であるという前提でこの文章を書いています。
    あなたの質問文に「いやだな、面倒だ、自分にはむずかしい、自分はだめだ」とありました。ここに、問題から自分自身に意識が移っている様子がはっきりと描かれていますよね。
    あなたが憧れている人のことをよく見てみてください。その人は「自分ってスゲーだろ」のように自分自身について語る人ではなく、「これはおもしろい!」のように、自分が夢中になっているものについて語る人ではないでしょうか。
    対象に集中せよ。
    これが一つのアドバイスです。「対象に集中せよ」を別の言い方でいうなら「自分を忘れよ」です。
    自分を忘れると、何が起こりますか。自分を忘れると、気分が楽になります。
    できることはできること。できないことはできないこと。ただ、それだけのことです。
    自分という存在はここまではできるはず!や、やっぱり自分にはこれは無理だあ!というのから離れ、淡々と進もう。
    「自分の力量」が先にあるのではありません。問題や課題が先にある。やってみよう! やってみたら、できた。やってみたが、できなかった。その集合体が、自分の力量なのです。「自分はダメだ」でなく「やってみよう」と考えるのです。
    気負いはいりません。やってみるだけです。力量は結果に過ぎません。うまく行かなかったらもう一度。もう一度。もう一度。何度やってもうまく行かなかったら別の角度からやりましょう。
    自信がある人が有利な点は、自分の心のメンテに奪われるエネルギーが少なくて済むというところです。でも、自分の心のメンテがゼロの人はいません。
    自信がない人が不利な点は、自分の心をなだめたり、自分ができなくても構わない理由をいつのまにか探してしまうところ。自分の心のメンテがたいへんなために、問題に向かうエネルギーが目減りしているのです。
    そこから逃れるいい方法は「対象に集中せよ」というスローガンです。自分を忘れ、対象に集中せよ。問題に、課題に、なすべきことに、目の前の相手に集中せよ。
    ところで、このような話をすると「ああ、自分は対象に集中できず『自分はダメだ』と考えてしまう」という人がいます。いわば「自分は『自分はダメだ』と考えてしまうからダメだ」という思考ですね。私もこの「ダメダメ音頭」を踊り始めることがあります。そういうときには、ダメダメ音頭を踊り始めた自分を笑い飛ばして、改めて対象に向かいます。
    以上です。がんばってね!
    大学名よりも学ぶ内容が大事ではないか - 学ぶときの心がけ
    質問
    どこの大学に入るか・入ったかよりも、大学で何を学ぶか・学んだかの方が大事だと思います。結城先生はご自身の体験に即してどう思いますか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    基本的には、あなたのおっしゃる通りだと思います。どこの大学に入ったかよりも、そこで何を学んだかが大事ですね。
    でも、この問いの立て方にはやや引っかかりを感じます。というのは、その比較はそもそも妥当なのだろうかと首をひねりたくなるからです。
    第一志望の大学に入れずに第二志望の大学に行った人に対して「どこに行くかではなく何を学ぶかが大事だ」と伝えることはまったく正しいことです。また、第一志望の大学に入ったものの、そこで何も学ばないというのは困ります。
    しかしながら、第一志望の大学に入るために努力したことは無意味ではありませんよね。学習を進め、努力を重ね、必要なだけの点数を勝ち得たからその大学に入ったわけです。「何を学ぶか」だけではなく「その場所までたどり着いた事実」をきちんと認めて喜ぶのも、無駄なことではありません。
    私はそんなふうに思うので、「どの大学かよりも何を学ぶかが大事だ」という問いにやや引っかかりを感じたのです。
    私の体験でいうならば、まず「大学で学んだこと」というのは曖昧な表現だと感じます。というのは「大学で学んだこと」というのは大きく二つの意味を含んでいるからです。
    「大学で学んだこと」の一つの意味は「(1)教育機関としての大学が提供している教育サービスを通して学んだこと」です。大学の教授陣がいて、授業があって、図書館や研究施設があって……という部分ですね。
    「大学で学んだこと」のもう一つの意味は「(2)大学で過ごした期間に、自分が自主的に読んだ本や、友人と共に体験した無数のできごとを通して学んだこと」です。大学が直接的に提供したものではなく、その期間に、その場に集ったことによって間接的に醸し出された学びがあります。それは「何を学んだか」の方に属する内容ともいえますが、その大学だから集えた仲間という側面もあるので、それほど単純な話ではなさそうですよ。
    自分の体験でいうなら(1)もさることながら(2)の方がずっと大きかったかもしれません。
    あれこれ考えてみたのですが「どこの大学に入ったか」と「大学で何を学んだか」とは簡単に分けることは難しいかもしれませんね。ただし「どこの大学に入ったか」だけを振り回して「そこで何を学んだか」を無視するような行為は問題でしょうけれど。
    ともあれ、若い人には、その場所、その期間、そこで出会う人たちの「すべて」からたっぷりと学んでほしいと願っています。
    ご質問ありがとうございました。