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記事 5件
  • Vol.070 結城浩/フロー・ライティング/マルチン・ルターとスクリーンショット/

    2013-07-30 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年7月30日 Vol.070
    はじめに - マルチン・ルターとスクリーンショット
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    結城はCodeIQというIT技術者向けのサイトにときどき問題を出しています。 先週の月曜日に出した問題に対して、一週間ほど過ぎてみると挑戦済みは98名にものぼりました。 たくさんの挑戦者が出てうれしい限りです。 あまりにも好評だったので、128名だった受付枠を256名に増枠してもらいました。
    問題は難しすぎると解けなくてつまらないし、易しすぎると解いてもつまらないので 難易度の調整がほんとうに難しいんです。自分で問題を作っていると、 その問題のことを長時間ずっと考えているので、だんだん易しく見えてくるんですよね。 挑戦した方が、
    「なんだ、あっけなく解けてつまらなかったな」
    と思われてしまうんじゃないかとドキドキします。
    解答者への評価とフィードバックは受付終了後に行うことにしているのですが、 いままでに提出された解答をちらちら見ると、 みなさんそれなりに楽しんでくださっているようなので一安心です。 問題を解く過程の中にストーリーというかドラマを見いだした方もいて 問題を作ってよかったなと思います。
    〆切は2013年8月5日ですので、もしあなたがプログラミングをなさる方なら、 ぜひチャレンジしてみてくださいね。 評価5の方から抽選で『数学ガール/フェルマーの最終定理』の コミックス最新刊をプレゼントいたします
     ◆星間飛行ルートを作ろう!  https://codeiq.jp/ace/yuki_hiroshi/q411
     * * *
    最近はずっとMacBook Airを使っています。 新しい環境なので学ぶことも多く、ツイッターで他の方に教えてもらったり、 Webで検索していろんなやり方を見つけています。 そして、学んだことを自分なりにまとめてWebに書くようにしています。 たとえば、以下のように。
     ◆Macで以前のWindowを復帰させずに新たにファイルを開く方法(open --fresh)  http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20130723/mac
     ◆Vimで三点リーダー周りで表示が乱れる現象を解決(ambiwidth)  http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20130724/vim
    それはそれでいいんですが、こういうページ(これをするにはこうすればいいよ)を 書くときには「パターン」の技法に則って書くようにしています。 具体的には、
     前提、問題、解法
    という見出しを立てて、 「このブログエントリは《こういう問題を解決するものです》」 ということがわかりやすくなるように書くということです。
    自分がそこに至った経緯とか、 いろいろ試行錯誤したことなど、細かい苦労話はいったん忘れる。 そして、
     ・こういう問題がある  ・それはこう解決する
    のようにドライに書くのです。 それは自分自身があとから読み返してわかりやすくするためでもありますが、 このようなパターンに乗せること自体がなんだか書いていて楽しいんですよね。
    という具合でしばらく書いていたのですが、 最近どうもこの「前提」というのがうっとうしく感じるようになりました。 もっとギュッと圧縮した形で書けないかな……。
    そこで前提、問題、解決というパターンではなく、 もっと短く「問い」と「答え」にして、次のようなエントリを書きました。
     ◆Macでスクリーンショットを撮るのはCommand + Shift + 3 や 4  http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20130725/mac
     問い  ・Mac OS Xでスクリーンショットを撮るにはどうしますか。  答え  ・Command + Shift + 3 で「画面全体」のスクリーンショットが撮れます。  ・Command + Shift + 4 で「範囲指定」したスクリーンショットが撮れます。  ・Command + Shift + 4 の後に Space で「ウインドウ」のスクリーンショットが撮れます。  ・撮った画像ファイルはデスクトップに保存されるようです。
    あるいはまた、こんなエントリも書きました。
     ◆Macでコマンドラインからコピー&ペーストを行う(pbcopy, pbpaste)  http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20130729/mac
     問い  ・Macでコマンドラインからコピー&ペーストを行うにはどうしますか。たとえばファイルの内容をクリップボードに入れたりしたいのです。  答え  ・pbcopyとpbpasteというコマンドを使います。pbはpasteboardの略のようです。
    問いが問題で、答えが解決です。 しばらくはこういうパターンで書き進めてみようと思っています。 そして気づいたのですが、このような「問い」と「答え」は、 まさに「対話」なのですよね。問いかけがあって、答えがある。 そのやりとりで問題が解決していく。そういう対話です。
    このような「問い」と「答え」のパターンは信仰問答集(カテキズム)にも見られます。 神学者のような人ではなく、一般の人や子供に対してキリスト教の教義を伝えるための文章ですね。 問いとそれに対する答えという「ミニマムな対話で教える」ということです。
    結城は以前、マルチンルターの信仰問答集を翻訳したことがあります。
     ◆マルチン・ルターの小信仰問答書  http://www.hyuki.com/trans/smallct.html
    Macのスクリーンショットの撮り方を伝えることと、 神様の意味を伝えることはずいぶん次元が違うようですけれど、 「問い」と「答え」という「ミニマムな対話で教える」 というのはとてもおもしろいと思います。
     * * *
    問いと答えで思い出しました。
    ツイッターで先日、ある方から
     問い:  数学ガールの設定やプロットの制作には  どれくらいの時間をかけているのでしょうか。
    という質問をいただきました。 こういう質問はとてもありがたいです。
    というのはこのような問いかけに答えることによって、 この秋9月に刊行される書籍『数学ガールの誕生』の告知を行うことが できるからです(!)
     答え:  半年から一年くらいです。  数学ガールの執筆にご関心があるなら、  この秋に刊行の書籍『数学ガールの誕生』をお見逃しなく!(^^)
    こういう質問はありがたいですね。
     * * *
    別の話題。
    家内がきゃあきゃあ声を上げておもしろがった「動き出す塗り絵アプリ」の話。
    要するにいわゆるAR(Augmented Reality, 拡張現実)のアプリで、 iPhoneやAndroidのアプリのカメラで紙に描かれた鳥や飛行機を写すと それが立体的な動画になって動き出すというものです。詳細は以下に。
     ◆「ここにぬりえがあるじゃろ?」  http://togetter.com/li/537683
    話に聞いたりテレビで見たりするのと違い、 いつも使っているiPhoneの手元で動き出す感覚はなんともいえず楽しいです。 しかも、このアプリは紙に描いた絵にじぶんで色を塗ると、 その塗り絵が立体になって動き出すのです!
    そういえば今年の5月にロッテのアイス「爽」のパッケージの上で ももいろクローバーZがライブを行うというARのコラボレーションもありました。
    何とも楽しい時代になりましたね。
     * * *
    そして先週最大のニュース(結城の中で)がこれです。
     ◆Knuth先生から小切手をいただきました!  http://www.hyuki.com/d/201307.html#i20130726235959
    Knuth先生(クヌースせんせい)というのは、コンピュータ科学者・数学者で、 アルゴリズムに関する決定版的な書籍The Art of Computer Programmingを 執筆なさっている方です。 Knuth先生はまた数式を含んだ文書を組版するときに全世界で使われている TeXというソフトウェアを開発した方でもあります。
    このKnuth先生はたいへんな完璧主義で有名でして、 自分の書籍の誤りをできるだけなくそうと考え、 読者が書籍の誤りを指摘した場合には$2.56の小切手をプレゼントしましょうと 呼びかけています。 ただし、そのためには「世界で最初にその誤りを指摘する」のが条件です。
    でも、そんな呼びかけをするほどの完璧主義者の先生が書いた本の 誤りを見つけるのは容易なことではありません。ということで、 「Knuth先生の小切手をもらった」というのはコンピュータに関わる人にとっては たいへん名誉なことなのです。いわばアルゴリズマー垂涎のプラチナチケットです!
    結城は1997年に一度、Knuth先生の乱数アルゴリズムのパラメータに条件が 抜けているのを発見して連絡しました。しかし、そのときはすでに先に指摘をした人がいて、 残念ながら小切手をゲットすることはできませんでした。
    しかし今回、Knuth先生の最新刊The Art of Computer Programming,Vol.4Aでの 誤りを見つけ、めでたく(?)世界で最初に指摘することができたのです。
    ところでこの小切手は、実は本物の小切手ではありません。 数年前からセキュリティ上の理由により、本物の小切手ではなく、 架空のBank of San Serriffe(サンセリフ銀行)のものになっています。
    実際のところ、Knuth先生のプラチナチケットをゲットした人で、 それを換金するなんて人はほとんどいません。 換金してもたった $2.56 にしかならないんですから、 それよりは知り合いに自慢した方がいいですよね!
    なので、実は本物の小切手である必要はまったくないのです。 ということで、サンセリフ銀行の口座はWeb上に掲示されています。 Hiroshi Yukiもちゃんと掲載されていますよ!
     ◆The Bank of San Serriffe  http://www-cs-faculty.stanford.edu/~uno/boss.html
    Knuth先生、 「書籍の誤りを見つける」というだけのことを これだけ楽しく盛り上げるユーモアというか茶目っ気というか、 なかなかすごいですよね! このサンセリフ銀行のロゴマークは奥さんのジルさんがデザインしたらしいです。 楽しんでるなあ。
    TwitterやWeb日記でこの「Knuth先生の小切手もらった話」をしてから、 その意味をよくわかっている方々からお祝いのメールやメッセージをたくさんいただきました。 結城のWeb日記も、最近ではめずらしくたくさんのはてなブックマークがつきました。 とてもうれしいです。みなさんありがとうございます。
    ちなみに、盛り上げるという意味ではうちの家内も一役買っています。 家に帰ったとき、ふだんは何もない床の上に、ぽつんと封筒がひとつ。 私はそれを「これ、何だろう……」と思って拾い上げます。
     めずらしいな、海外からの封筒……どこからだろう。  ん、Stanford?……お?  こ、これは、おおおおおおおっ!!!
    という感じで、一人玄関で盛り上がっていました。 封筒をそんな風に置いたのは家内の演出です。 リビングに行ったら、家内はすました顔で、
     「驚いたでしょ?」
    と一言。驚きました。
    実はKnuth先生に誤り指摘のメールをしたときに、 奥さんにちらっと話したんですよ。ここが気になるからメール送るよって。 誰も換金しない小切手の話とかも合わせて、その意味を説明して。 話したのはずいぶん以前のことなのに、 Stanfordから封筒が届いたとき、家内は「ははん、これか」と思い出したんですね。
    「よく思い出したね」と私が言うと家内は「ふふ。当然でしょ」という顔でした。
     * * *
    さてさて、そんなところでそろそろ結城メルマガを始めましょう。 今日はフロー・ライティングのコーナーで「月に託す」というお話をお送りします。
    それから「文章を書く心がけ」では、 先週のWeb連載『数学ガールの秘密ノート』で公開した「金属でできた変なサイコロ」の 作ったときの裏話をお届けします。
    それでは、どうぞお読みください!
    目次
    はじめに - マルチン・ルターとスクリーンショット
    フロー・ライティング - 月に託す
    文章を書く心がけ - 変なサイコロを作る
    次回予告 - 教えるときの心がけ
     
  • Vol.069 結城浩/自分のなすべき仕事とは/教えるときの心がけ/再発見の発想法/

    2013-07-23 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年7月23日 Vol.069
    はじめに - 自分のなすべき仕事とは
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    ふだん私は「いつもと同じこと」をするのが好きです。 正確に決まった時間に起き、曜日ごとに決まった仕事をこなし、 決まった時間に眠る。そういう毎日が大好きです。
    でも、そういう日が続くと私の中の何かがうごめいてきて、 それをゆさぶりはじめるようです。 いつもと違うことがしたくなる。 何か新しいことを始めたくなる。 きっと何かが私の中のバランスをとろうとしているのでしょう。
    うわ! まさにいま、Macがクラッシュしました。 いやほんとに。冗談抜きで。 ゆさぶられた!
    ……こほん。取り乱して失礼しました。話を続けます。
    フリーで仕事をしていると、自分で自分をゆさぶることができないと、 どうしてもジリ貧になってしまいます。いつの間にか自分の可能性や 自分の仕事をこぢんまりとまとめてしまいがちなのですね。
    なので、そういう「ゆさぶり」が自分の内部に起こり始めたときには 積極的にそれに乗るようにしています。 多少失敗したり、無駄な時間を過ごしてもいいや。 「いったい何が始まるのだろう」 という思いでわくわくするほうを選ぼう。
    考えてみますと、これまでの私の学びや仕事ではそういうことがよくありました。 プログラミングを学び始めるときでも、 コンピュータの雑誌に原稿を書き始めたときでも、 本を書き始めたときでも、いつもと違う何かがうごめき、私をゆさぶる。 そのゆさぶりにのっかって新しいことを始めたのかもしれません。
     * * *
    あなたは心理学者の河合隼雄さんをご存じですか。 結城は河合さんの本を以前よく読んでいました。 ここしばらくは読んでいなかったのですが、 先日ふと『こころの最終講義』という文庫本を見かけて読みました。
    それを読みながら、最近私がもやもやっと考えていたことに ぴったりするものを感じました。
    あ、といってもこの本に書かれている内容が直接のヒントになった というわけではないのです。ですから本の内容をここで詳しくは繰り返しません。
    私はここ数年「物語」について考えています。 実際「数学ガール」シリーズは「数学物語」ということになっていますから、 私はお仕事として読者さんに一つの物語を提示しているわけです。
    私はさらに深く「物語」を書きたいという思いをずっと抱き続けています。 それがどんなものなのかは、 私自身にもまだわかっていないのですけれど。
    でですね、河合隼雄さんの『こころの最終講義』を読み進めていくと、 「物語」について書かれているわけです。 以前、河合さんの何かの本を読んだとき、 「ああ、この人は物語について深く考えているんだな」 と思いました。でも今回読み始めたときはそのことをすっかり忘れていたのです。
    何を言いたいかというと、自分が「物語」について考えているときに ふと手に取った本が「物語」についての本であるという、 その不思議さについて思うところがあったからなのです。
    偶然と呼んでもいいですし、神の導きと呼んでもいいですが、 そのようなタイミングのよい出会いというものは意外にあるものです。 そしてまたこの『こころの最終講義』の中にはそういうタイミングのよい 出会いについて書かれているという。それもまた不思議なことです。
     * * *
    ぜんぜん別の話です。
    結城は、IT技術者向けにプログラミングの問題を出すサイトCodeIQに出題しています。 『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』の脱稿のあたりから間隔が開いて しまったのですが、先日(7/22)にようやく新作問題を公開することができました。
    今回は「ディーペスト問題 - 星間飛行ルートを作ろう!」と題した問題です。 キュラゲ銀河政府に雇われたプログラマという設定のもと、 ある星からべつの星へ飛行するためのルートを作成しましょうという問題を作りました。
    今回の問題の最大の特徴は「必要な情報一式は与えられない」というものです。 必要な情報はまとめて与えられるのではなく、 Web APIを使って少しずつ得ることができるようになっています。 つまりこの問題への挑戦者は、問題を解くために必要な情報を、 Web API経由でWebサービスから得つつ進まなくてはいけないのです。
    情報を提供する側のWebサービスは、もちろん出題者である結城が作成しました。 このような状況では、非常に興味深いことが起きます。 それは、結城はいわば舞台裏から「挑戦者(の書いたプログラム)がどのような 情報をWebサービスにもらいに来ているか」をのぞき見ることができるという点です。 挑戦者の書いたプログラムが粛々とWebサービスにアクセスする様子を眺めながら、 挑戦者の組んだアルゴリズムを想像して楽しんでいます。
     * * *
    またまた別の話。 刊行されたばかりの『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』には、 たくさんの方から感想メールをいただいています。 自分の子供のため、また親戚の子供のために買いましたというメールもその中に何通かありました。 学校で習う数学を違う角度からながめたり、学ぶことの楽しさや意味に気付いたりしてほしい という願いを込めて…とのことだそうです。著者としてとてもうれしいメールです!
    また先日、無料プレゼント用の書籍を七冊、当選者に送付しました。 こういう作業は意外に時間がかかるのですけれど、 あまり苦にはなりません。なんといいますか、 新しい本が出たときの祝祭的なイベントの一つという感じがするからでしょうか。
    新刊刊行直後に書店に行くと、当然ながら 自著が売られているかどうかすばやくチェックします。 先日行った書店さんでは「数学一般書」の棚と「学習参考書」の棚が 離れておりました。結城の本は「数学一般書」に平積みになっていたのですが、 読者さんとなる生徒さんは「学習参考書」の方にたくさんいました。 思わず平積みになった本の一部を「学習参考書」の方に移動したくなりましたよ!
    いずれにしても、新刊刊行直後のあれこれを十全に楽しみつつ、過ごす毎日は感謝ですね。
     * * *
    先週の結城メルマガでWindowsからMacBookに執筆環境を移した話を書きました。 それに対してたくさんの方から反響のお便りをいただきました。 結城と同じようにWindowsからMacBookに環境を移した方、 移そうとしている方は意外にいらっしゃるものなのですね。
    先週は、MacBookに「プログラミングに便利なフォントInconsolata」をインストールしました。 たいへん美しく、またTwitterでどなたかがおっしゃっていましたが、 涼しげなデザインのフォントです。年を取るとどうしても目が弱くなって、 細かい字や識別しにくい文字は疲れを増すのですよね。しばらくInconsolataを試してみます。
     ◆Inconsolata  http://www.levien.com/type/myfonts/inconsolata.html
    Macといえば先週、TimeMachine(タイムマシン)を初体験しました。 TimeMachineというのはMacのバックアップソフトウェアで、 非常にすぐれたユーザインタフェースを持っています。 バックアップソフトウェアですから、保存しておいた過去の時点でのファイルを 探したり取り出したりしたいわけです。そのときにまさに「タイムマシン」で 過去にさかのぼるようなアニメーションとフォルダ表示が行われるのです。
    話にはちらちら聞いていたのですが、 自分がそれを実際に使うとまったく違う感動がありますね。 ものの見せ方はほんとうに大事なものだと思います。
     ◆TimeMachine  http://www.apple.com/jp/findouthow/mac/#timemachinebasics
     * * *
    ちょっとまじめな話。
    最近、年齢についてよく考えます。 特に加齢に伴ってさまざまな能力が落ちていくことについて考えます。 そういえばついさっきも「目が弱くなった」という話をしましたね。
    たとえばCodeIQのプログラムを夜の九時に書き始めるとしますよね。 そうするともうだめなんです。頭が回らない。 考えようとしてもぐるぐると同じところを回るばかり。 プログラムよりも前に自分自身が無限ループに入ってしまいます。
    仕方なくその晩は眠る。 そして次の日に起きる。朝の九時に書き始めるとまったく効率が違う。 きちんと考えることができる。前の晩がっかりしたことも吹き飛んで、
     「いやあ、プログラミングは楽しいな」
    などとうそぶく。
    でもね。20代30代だったら、夜の九時でも朝の九時でも同じように さくさくプログラミングできたなあ、とも思うんですよ。
    年齢を重ねるごとに能力が落ちるのはしょうがないけれど、 そういう自分と、どのようにつきあっていけばいいのか。 思いをめぐらせることが多くなってきました。
    すごく高い視点に立って言い換えると、 それは、
     私のすべき仕事って何だろう?
    という問いかけともいえますね。 年を取って若い時代ほどたくさんの仕事ができないとしたなら、
     自分はどの仕事をすべきなのか?
    を考える必要がある。選ぶ必要がある。見極める必要がある。 そして、さらにさらに高い視点に立つならそれは、
     私って何だろう?
    という問いかけでもあります。アイデンティティというか。
    考えてみますと、アイデンティティで悩むのは若者の特徴でもあります。 ということは私もまだまだ若いのかな。
    ふだん私は「いつもと同じこと」をするのが好きです。 正確に決まった時間に起き、曜日ごとに決まった仕事をこなし、 決まった時間に眠る。そういう毎日が大好きです。 でも、新しい何かにチャレンジするのも大好きなんです!
    といったところで、長い前書きは終わりにして、 メルマガを始めましょう!
    目次
    はじめに - 自分のなすべき仕事とは
    教えるときの心がけ - 難易度調整
    再発見の発想法 - Interface(インタフェース)
    次回予告 - フロー・ライティング
     
  • Vol.068 結城浩/MacBookの執筆環境/講演集を作るにあたって/

    2013-07-16 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年7月16日 Vol.068
    はじめに - 書く環境
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    すっかりMacBook Airになじんでしまいました。 先週この結城メルマガを書いてから今日まで、 すべての文章をMacBook Airで書いています。 なにしろ修理から帰ってきたThinkPadには 秀丸エディタをまだインストールしていないくらいですから。
    今回の「ThinkPadからMacBookに移行する経験」では、 「書く環境」について考えさせられました。 結城は「書く環境」というのは繊細なものであって、 ドラスティックな変化は難しいと思っていたのですが、 重要な要素(キーボードとエディタ)が解決したら 意外にポンと移れるものなんですね。
    ということで、今回の「文章を書く心がけ」では、 「MacBookに執筆環境を移す」という話題をお届けいたします。
    今回の結城メルマガでは、その他に、 書籍『数学ガールの誕生』を脱稿して気づいたことと、 読者さんからの質問に答えるコーナーをお送りします。 どうぞお楽しみください!
    目次
    はじめに - 書く環境
    本を書く心がけ - 講演集をまとめて
    文章を書く心がけ - MacBookに執筆環境を移す
    Q&A - ネットがこわい
    次回予告 - 再発見の発想法
     
  • Vol.067 結城浩/フロー・ライティング/チームリーダーになったけど/

    2013-07-09 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年7月9日 Vol.067
    はじめに - 数学ガール、入試に登場
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読いただきありがとうございます。
    「マシンが壊れた!」という話題がここ数週間続きましたが、 さすがに今週はマシンは壊れませんでした。 というか、ThinkPadが修理を終えて帰ってきました。 よかった。
    「PCが壊れる」のような出来事は確かにショックなんですが、 毎週メルマガを書いている身にしてみれば、
     「お、これは話のネタになるかな」
    という気持ちになるのもまた真実です。 文章書きのさがでしょうか。
    ThinkPadというWindowsマシンが修理に旅立っている間、 AppleのMacBook Air 13インチを使って仕事を続けていました。 最初のうちは、タイプするときにキーの端に指がちょっとひっかかる感じがして たいへん不愉快でした。一日のかなりの時間をタイプして過ごしますので、 ほんの少しの不具合が気にかかるのです。 ちょうど、靴の中に小さな石が入っているようなもので、 それがどれほど小さかろうと、気になって仕方がありません。
    でも、結城メルマガに書籍原稿にWeb連載にと、 たくさんの文章をMacBook Airのキーボードで書いているうちに、 手が次第になじんできました。 具体的には、それぞれのキーの中心を指がしっかり打つようになり、 キーの端でのひっかかりが少なくなってきたのです。
    以前2011年にMacBook Air 11インチに乗り換えようとしたときには、 このような境地まで至ることはありませんでした。 もしかしたらこのままWindowsじゃなくてMacに乗り換えたままで いられるかもしれない、と初めて思いました。
    たかがキーボード、されどキーボードです。
    そして驚いたことが一つ。 修理が終わって戻ってきたThinkPadのキーボードが打ちにくく感じるように なってしまったのです(!)。 ついこの間まで「ThinkPadのキーボードはいいけど、 MacBook Airのキーボードは打ちにくい」と真剣に思っていたのに。 単に慣れの問題ということですね。
     * * *
    別の話題。
    Macという新しい環境が楽しくていろんなことを試しています。 Macには音声認識の機能がデフォルトで組み込まれており、 その機能をONにしておくと、テキストを入力できるところではどこでも 音声を使って文章を入力することができます。
    マシンに向かって話しかけるだけで漢字まじりの文章にしてくれます。 この認識率がけっこう良いんですよ。「おっ」と驚くほどです。 以下にいくつか例を示しますね。 手でまったく修正をせずにこのくらいの認識ができます。 (ひらがな部分を音声で入力していると思ってください)
    例1:この変換ではまったくミスをしていません。
     このついいとはおんせいにんしききのうをつかってにゅうりょくしていますまる  ↓  このツイートは音声認識機能を使って入力しています。
    例2:この変換では一カ所だけ「Pages」を「エイジス」と間違っています。
     さきほどぺいじずをつかってじっけんしていたのですがてん  おんせいにんしききのうはたいへんすばらしいですまる  にんしきりつがとてもたかいですまる  ↓  先ほどエイジスを使って実験していたのですが、  音声認識機能は大変すばらしいです。  認識率がとても高いです。
    例3:この変換では「原稿を書く」を「、降格」と間違っています。
     もしかしたらたいぷにゅうりょくをまったくしなくても  まっくにむかってはなしかけるだけでてん  げんこうをかくことができるのではないでしょうかまる。  ↓  もしかしたらタイプ入力を全くしなくても  マックに向かって話しかけるだけで、  、降格ことができるのではないでしょうか。
    このように、けっこう認識率が高いので、 これを使えば夢の「口述筆記で原稿を書く」が実現できるかもしれません。
    ただ問題が二つほどあります。 まず一つの問題は、私のように外のカフェで原稿を書いている場合には マイクに向かっておしゃべりすることが難しいということ。
    もう一つの問題は、自分が無言でタイプすることに慣れてしまっているので、 「声を出しながら考える」というのが意外に難しいということ。 声を出しているとなんだか妙にせかされている気持ちになり、 文章をしっかり考えることができないのです。
    ただ、二つ目の問題は単に慣れの問題なのかもしれません。 ちょうどThinkPadからMacBook Airのキーボードに移った直後には キーボードが打ちにくいと思ったのと同じように、 「口述する」という入力方法に慣れれば、考えつつ自然に話せるのかもしれません。
    以前、早稲田大学の理工展で結城が「タイピングで講演をする」という企画を やったことがあるのですが、あの企画は音声認識機能を使えばもう少し楽に実現できたかも しれませんね。
     * * *
    別の話題。
    先日、書籍をスキャンしてPDFに変換してくれるサービスを行っている BOOKSCAN(ブックスキャン)さんからインタビューを受けました。
     ◆BOOKSCAN  http://www.bookscan.co.jp
    数学ガールの新シリーズのこと、本を書くこと、本を読むこと、 子供時代の読書について、電子書籍についてなど、楽しくおしゃべりしました。 今週のどこかでBOOKSCANのWebサイトで公開されると思います。
    インタビューを受けたとき、インタビューアさんに「どうして私に?」とお聞きしました。 なぜかというと、 http://www.bookscan.co.jp を見るとわかるんですが、 たいへん有名な方が多くインタビューを受けていたからです。 たとえばノーベル物理学賞を受賞した益川先生とか!
    インタビューアさんの話によりますと、 BOOKSCANのユーザさんから「結城浩さんにインタビューして欲しい」 という要望が多かったのだそうです。要望を出してくださったみなさんに感謝です!
    インタビュー記事が公開されましたら、 またTwitterなどでアナウンスしますので、ぜひお読みくださいね!
     * * *
    別の話題。
    先日、ある受験参考書の出版社から「数学ガールが入試に登場しました」という メールが入りました。
    それによれば「2013年度、長崎大学教育学部の推薦入試問題(小論文向け出題) の一部として拙著「数学ガール」からの引用が使われている」とのことです。
    なぜそれで出版社から連絡が来るかといいますと、著作権の問題があるからです。 入試問題はその性質上、著作権者に無断で著作物を使用することができます。 でも、その入試問題を収録する参考書や問題集を出版社が出す場合には、 著作権者の許諾が必要になります。 なので、この入試問題を収録しようと考えた出版社さんから、 結城のところに連絡がきたというわけです。
    これまでにも何回か拙著の文章が入試問題などに使われたことがあり、 同様の連絡がやってきました。 現在のところ結城は(手続きがめんどうなのがいやなので)すべての 出版社に対して「どうぞご自由に出版してください」と返信しています。 でないといちいち契約書を交わしたりしなければならないからです。
    それにしても、自分の文章が入試問題で使われるというのはたいへん光栄な ことで、うれしくなります。だって、入試問題というのはある意味その大学の 「顔」になるわけですからね。 入試問題を作っている先生が、結城の文章を選んでくださった。 これを光栄と言わずになんといえばよいでしょう。
    しかも今回、 『数学ガール』からの引用は、あの有名な『ご冗談でしょう、ファインマンさん』 などの引用と並べて出題されました。
    問題文は 「(これらの文章が)共通して主張していることを簡潔に論じて下さい」 というものです。名エッセイと並べられるなんて感動です!
    以前、2011年度の佐賀大学医学部入試に 『数学ガール』からの引用が使われたことがあります。 そのときの佐賀大学の問題では饒舌才媛「ミルカさん」が登場していました。 今回の長崎大学入試では元気少女「テトラちゃん」が登場していましたね。 ということは(出題年度がもし等差数列になるならば)2015年度に どこかで「ユーリ」が登場することになるのでしょうか(!)
     * * *
    さて、今回の結城メルマガです。 今回のメインコンテンツは「フロー・ライティング」です。 どうぞお楽しみください!
    目次
    はじめに - 数学ガール、入試に登場
    フロー・ライティング - 書けない自分と付き合って
    Q&A - チームリーダーになったけど
    次回予告 - 新書向け新企画
     
  • Vol.066 結城浩/再発見の発想法/マシンが再度壊れて/講演とメルマガと書籍/

    2013-07-02 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年7月2日 Vol.066
    はじめに - マシンが再度壊れました(大泣)
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読いただきありがとうございます。
    先々週「マシンが壊れた!」というお話をして、 先週「マシンが直りました!」というお話をしましたが、 あれから再びマシンが壊れました(大泣)。
    故障した箇所はまたまたThinkPadのSSDです。 もうあきらめてとっととサポートセンターに電話しました。 次の日に宅配便のお兄さんに引き取られて行きました。
    今回も恐らくSSDが交換されてまっさらのWindows 7が インストールされて帰ってくるのでしょう。早くて来週ぐらいのことです。 数日前に修理したばかりなので保証期間は延長され、今回も無償の修理になります。 それはたいへんけっこうですね。
    ただ問題は使った時間です。 たくさんの時間を使ってSugarSyncやDropboxからファイルを戻したのに、 またゼロからやり直しなのはとても悲しいです。
    まあでも、(先週も書いた通り)クラウドに常時バックアップを とっているのでファイル的にはまったく問題はありません。 現在はMacBook Airでシームレスに仕事を継続しています。 この結城メルマガもMacBook Air上で書いています。
    やはりこういうセーフティネットは何も手間を掛けなくても 自動的に行われているようにしておいたほうがよいですよね。 …という先週と同じ結論になったのでした。
    マシンが不調になったタイミングがまた絶妙でした。
    結城は毎週金曜日にWeb連載を公開していますので、木曜日はたいへん忙しい。 一日掛けて連載記事を仕上げていきます。
    ぱたぱたと書いているうちはケイクスのプラットホームで 「下書き」という状態にしておきます。 この状態では期日が来ても公開はされません。 しばらく書いて「まだ荒いけれど人様にお見せできる」 という状態になったら「公開」という状態にします。 そこから時間の許す限りブラッシュアップしていくのです。 そして「よしかなり磨いたぞ、もう変更はなし」という状態になったら 結城の忙しい木曜日が終わります。
    今回もまた不幸中の幸いといいましょうか、 マシンが不調になったのは、 その最後の段階「もう変更はなし」になった直後でした。 これはたいへん助かりました。 ぎりぎりセーフというところですね。
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    さて、早いもので、もう7月です。 これで2013年も半分が過ぎたことになりますね。 上半期の終了です。
    上半期には本を一冊刊行できました。 ちくま学芸文庫の『数学文章作法 基礎編』ですね。感謝です。 いつもと違う出版社で、いつもと違う内容の本を出せたのは、 世界がほんの少し広くなったようでうれしいです。
    下半期が始まってすぐ、今月半ばには『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』が刊行されます。 現在執筆しているのは『数学ガールの誕生』という書籍でこちらは秋に刊行予定。 それから年末には『数学ガールの秘密ノート』の第二弾が刊行予定。 新しい書籍が出るのは毎回とても楽しみです。
    でも、新しい書籍を出すのはあくまで「ハレ」のこと。 その日に向けて毎日「ケ」の作業を進めて行かなくては。 自分の書きたい本を書いて、それを期待してくださる読者さん、 読んでくださる読者さんがいるというのはたいへん幸福なことですよね。 感謝を忘れずに今日も進みたいと思います!
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    さて、今回の結城メルマガです。 今回のメインコンテンツは「再発見の発想法」です。 どうぞお楽しみください!
    目次
    はじめに - マシンが再度壊れました(大泣)
    再発見の発想法 - Cache(キャッシュ)
    本を書く心がけ - メディアが変われば中身も変わる?
    Q&A - 次の講演はどこですか?
    次回予告 - フロー・ライティング