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記事 5件
  • Vol.018 結城浩/数学文章作法「はじめに」/記憶力/田園/

    2012-07-31 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年7月31日 Vol.018
    結城クイズ
    とある自動車教習所で実際に行われているテストを少しアレンジしてご紹介。
    自動車教習所の生徒達にプリントが配られる。 プリントには交差点の様子がイラストで描かれていて、 たくさんの歩行者や自動車が行き交っている。 そして、
     この中にランドセルを背負った子供は何人いるでしょうか。  (制限時間1分)
    という問題が書かれている。 見ると、ポストの影や商店の中、信号機の後ろなどあちこちに ランドセルを背負った子供がたくさん描かれている。
    さて、
     この問題は何を意図して作られたものでしょうか。
    これが、今回の結城クイズです。 答えは来週のメルマガで!
    はじめに
    おはようございます! 結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読いただき、ありがとうございます。 毎日暑い日が続いています。 熱中症にならないようにこまめに水分をとっているのですが、 ちょっとでも水を飲むとあっという間に汗が噴き出るようです…。
    さて、2012年7月24日の日記でもご紹介しましたが、 英語版『数学ガール』がNotices of the AMSで紹介されるという うれしいニュースがありました。
     ◆結城浩の日記  http://www.hyuki.com/d/201207.html#i20120724120000
     ◆Notices of the AMS (2012 August)  http://www.ams.org/notices/201207/
    AMSというのは American Mathematical Society(アメリカ数学会)の略称です。 この学会は1888年に設立され、 現在3万人以上の個人会員と570以上の組織会員を有しており、 学会誌や書籍の刊行、数学の研究・教育・普及のための活動を行っています。 TeXの有名なマクロパッケージAMS-TeXを配布している"AMS"です。
    "Math Girls"が取り上げられたのは、AMSが刊行している Notices of the AMSの2012 August号のブックレビューです。 その全文は以下で公開されています。
     ◆Math Girls--A Book Review (Reviewed by Mari Abe and Mei Kobayashi)  http://www.ams.org/notices/201207/rtx120700956p.pdf
    この書評では、 前半の数ページで登場人物の名前に対する書評者の推察が展開され、 後半に"Math Girls"における数学(Mathematics in Math Girls)が 解説されています。単に数学が展開されるだけではなく、 "Math Girls"における「対話」について、 また複数人が異なるスタイルで「考える」ということについて、 といった内容が述べられています。
    書評は全体としてたいへん好意的に書かれており、 著者としては素直にうれしくなりました。 英語に翻訳されたことで、 数学ガールの世界がさらに広がっていくのを感じます。
    USのアマゾンでは2012年7月30日現在、10人のカスタマーレビュー全員が 5つ星(★★★★★)を付けるほど好評のようです。
     ◆"Math Girls"(USのアマゾン)  http://www.amazon.com/Math-Girls-Hiroshi-Yuki/dp/0983951306
     ◆"Math Girls"(日本のアマゾン)  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0983951306/hyuki-mm-22/
    今年(2012年)には『数学ガール/フェルマーの最終定理』も 英語に翻訳されて刊行される予定になっています。 この巻も英語圏の数学を学ぶ人たちにたくさん読んでもらえるといいなあ。
    考えてみますと、「数学ガール」シリーズはたったひとつのWebページ 「ミルカさん」から始まったのですよね。 そう考えると8年間でずいぶん世界が広がり、深まったなあと思います。
     ◆ミルカさん(2004年)  http://www.hyuki.com/story/miruka.html
    このページを書いたときには、 現在の状況はまったく想像もしていませんでした。 たとえひとつのWebページでも、自分が書く文章は、 真剣にしっかり書くべきなのだ!とつくづく思います。
    さあ、それでは今回のメルマガを始めましょう!
    目次
    結城クイズ
    数学文章作法 - はじめに
    Q&A - 記憶力を良くするにはどうする?
    結城クイズの答え
    次回予告 - 手書きノートのスナップショット(5)
     
  • Vol.017 結城浩/物語とは/文章の練習/どうしてライターになれたの?/

    2012-07-24 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年7月24日 Vol.017
    結城クイズ
    あなたが記憶している中で、最も昔に聴いた音楽は何ですか。
    はじめに
    結城です。いつもメルマガをご愛読ありがとうございます。
    先日、書籍を裁断してPDFに変換するBOOKSCAN(ブックスキャン)という サービスを使ってみました。 BOOKSCANは有名なサービスなのでご存じの方も多いでしょう。
    「紙の書籍をPDF化する」というサービス。
    ダンボールに書籍を詰めてBOOKSCANに送ると、 PDF形式のデータにして返してくれる。
    価格はページ数やオプションに依存するのですが、 ざっくりいって「1冊100円」です。 スキャンした後の本は溶解処理して廃棄します。
    結城は普段、ScanSnapというスキャナを使って 自分で書籍をPDF化しています。いわゆる「自炊」ですね。 すでに500冊以上を自炊してあります。
     ◆ScanSnap  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B005UXGP8S/hyuki-mm-22/
    そんな私ですが、ネットでBOOKSCANのサービスの良い評判をよく聞くので、 自分でも試してみたくなり、自分の書棚から20冊をPDF化してみました。
    驚いたのは、時間的な「待ち」が結構あること。 結城がスキャンしてほしい冊数を申し込むと、 おおよそ一ヶ月先の日付を指定されました。 「この日までに書籍を送ってくださいね」ということです。 けっこう人気のサービスなのだなと思いました。 ちなみに「思った」のは約一ヶ月前です。 やっと先日順番が回ってPDF化されました。
    BOOKSCANのWebサイトは、できるだけ利用者の不安を減らすように、 現在の「状態」を細かく教えてくれます。 「書籍はまだ到着していません」や「書籍が到着しました」という状態は もちろんのこと、ずっと細かい進捗がWebで確認できます。 たとえば、次のように。
    作業に使用する端末準備中(クリーニング・確認)
    書籍スキャン中
    作業サーバーへデータをアップ中
    スキャンしたPDFの全ページチェック中
    スキャンしたデータの問題を検知&確認
    書籍OCR中
    サーバーへデータをアップ中
    このように細かく状況がわかるので、あまり焦らずにすみます。 また、気になることがあったら、Web経由で質問を送ることができ、 すぐに答えてくれます。対応はなかなかしっかりしていました。
    PDFができあがるとメールで教えてくれるので、 あとはWebのマイページからダウンロードすればPDFが手に入ります。
    送った書籍をスキャンするわけなので、書籍に自分の手書きメモや アンダーラインなどがあれば、PDFにももちろん反映されます。 OCRオプションをつければ、検索も可能になります。
    肝心の品質ですが、自分でPDFに変換するのと比較して、
    傾きが少ないこと
    ページの抜けや重複がないこと
    もちろん、スキャンの手間がかからないこと
    が最大のメリットだと感じました。 自分でスキャンすること自体は慣れれば手間と感じないのですが、 紙詰まりや紙の重なりなどでエラーが発生するのはちょっとストレス。 BOOKSCANにまかせてしまえばそのストレスはなくなります。 BOOKSCANでは全ページを目視チェックして、 ミスがあったらそのページを再スキャンしてPDFを作成しているようです。
    もっとも、スキャンの手間はなくなりますが、 段ボールに詰めたり送ったりという手間は発生します。
    BOOKSCANは、今後も継続して利用するとは思いますが、 あまり頻度は高くないかもしれません。 その大きな理由は「待ち」ですね。
    結城は「今日買ってきた本をすぐスキャンして明日からiPhoneで読みたい」 と思うのですが、その目的にはBOOKSCANは向きません。 もっとも、プレミアム会員になれば「待ち」がかなり減らせるし、 さらにはアマゾンから直接BOOKSCANに送るということもできるらしいです。
    BOOKSCANは、ある程度まとまった冊数の本を、 書棚のスペースを空けるという目的で電子化する場合に 使うことになりそうです。
    ご興味がある方はBOOKSCANのWebをご覧ください。
     ◆BOOKSCAN  http://www.bookscan.co.jp/
    なお、結城はBOOKSCANとは特に関係はありません。 いわゆるステルスマーケティング(ステマ)ではありませんという意味です。
    BOOKSCANに限らず、このようなサービスの動向は 注目していきたいと思っています。どんな形であれ、 書籍をデバイスで読むという流れがなくなることはないですからね。
    おっと「はじめに」が長くなってしまいました。 それではメルマガを始めましょう!
    目次
    本を書く心がけ - 物語とは何だろうか
    文章を書く心がけ - 文章の練習方法
    Q&A - 結城先生はどうしてライターになれたんでしょうか
    結城クイズの答え
    次回予告 - 新企画「数学文章作法」(すうがくぶんしょうさくほう)
     
  • Vol.016 結城浩/小さな目標/とっておきの話題/リスーピア/

    2012-07-17 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年7月17日 Vol.016
    結城クイズ
    正12面体を机の上に置く置き方は何通りあるでしょうか。
    はじめに
    おはようございます。
    結城メルマガは午前7時に配送していますので、 いちおう「朝のあいさつ」をしてみました。 ご機嫌いかがですか。今日もすてきな一日になりますように!
    最近はこのメルマガの購読者数はあまり変化がなかったのですが、 7月の連休で何人かの新規購読者さんが増えてくださったようです。 ありがとうございます(^^) (連休が関係しているかどうかは不明ですが…)
    さて、先日、結城のところに新しいコンピュータがやってきました! うれしいなあっ!
    やってきたのは、Lenovo社のThinkPad X230というノートパソコンです。 これまではThinkPad X200sを使っていたのですが、 どうも最近調子が悪くて、ノートを閉じても休止状態にならなかったり、 マシンの電源がいきなり落ちたりするので新規購入したのでした。
    修理するという手もあったのですが、 2008年から使っていましたから、そろそろ買い換えてもいいですよね。
     ◆Lenovo ThinkPad Xシリーズ  http://shopap.lenovo.com/jp/notebooks/thinkpad/x-series/
    ノートパソコンは結城の執筆作業でもっとも重要なアイテムですから、 できるだけ快適になるようにしました。 (とはいえ、お値段とのかねあいはもちろんあるのですが…)
    Windows 7 (64bit) でメモリを16GB積み、ドライブはすべてSSDにしました。 SSD(Solid State Drive)はメモリですから、 ハードディスクと違って動く部品がありません。 そのため音も静かで高速、それから発熱も少ないすぐれものです。 (でも高いのであまり容量は増やせませんでした…)
    現在は、X200sからX230へのファイル移行作業もすみ、 すっかり快適になりました。今回のファイル移行作業では、 USBの外部ハードディスクでのファイル移動だけではなく、 DropboxやSugarSyncなどのいわゆる「クラウドストレージ」も活躍しました。 バックアップも兼ねていったんクラウドストレージにファイルを移しました。 これで手元のマシンが万一壊れてしまっても、 クラウドストレージに大切なファイルが残っていることになります。
    最近は、音楽も写真もビデオも自分の原稿もスキャンした書籍も、 すべて電子的なファイルになっていますから、 ファイルを失うというのはかなりの打撃になります。
    いま書いている原稿ファイルを失うと収入に大きな影響を与えますし、 昔の家族の写真などはもう取り返しがつきません。 バックアップはとても重要なことですよね。
    以前「複数フォルダを個別に同期できるSugarSyncはなかなか便利」という 記事を書いたので、よろしければご覧ください。
     ◆SugarSyncの簡単な使い方と紹介リンク  http://bit.ly/OfASeZ
    さて、それではメルマガを始めましょう!
    目次
    教えるときの心がけ - 小さな目標
    コミュニケーションのパターンランゲージ - とっておきの話題
    Q&A - 良い文章を書く方法をずばりと教えてください
    次回予告 - 物語とは何だろうか
     
  • Vol.015 結城浩/結城浩セミナー(2)/きかん業務と品質ほしょう/

    2012-07-10 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年7月10日 Vol.015
    結城クイズ
    「  」の中のひらがなを漢字に直せますか(かな漢字変換を使わずに)。
     「きかん業務」の部署から「品質ほしょう」の部署へ  「人事いどう」になった。  製品が「左右たいしょう」かを調査し、  統計的処理を行うため「かくりつ論」の知識は必須。  「オブジェクトしこう」の知識も必須。  「衆人かんし」の中で発生した先日のトラブルでは  事態を「しゅうしゅう」する役目も担った。
    はじめに
    結城です。いかがお過ごしですか。 いまこれを書いているのは2012年7月6日ですが、とても、蒸し暑いです…。
    最近はずっと、次に書く本の下準備をしています。 具体的に何をしているかというと、
    どういう本を書くかを頭の中で考える
    出版社向けの企画書を書いてみる
    章立てを考える
    章の構成を考える
    その本でいちばん書きたい部分を書いてみる
    美しいものや楽しいものに触れ、 どうしてそれを美しいと感じるか、 どうしてそれを楽しいと感じるかを研究する
    ということをやっています。
    結城の本の準備はそれほどシステマティックなものではありません。 とにかく、その本のことをどっぷりと考え、 「こうやったら、どうなるかな?」と思ったことを 全部やってみるという準備の仕方をしています。
    このような準備の仕方は、効率が良くないといえばそうなのですが、 マニュアル化してしまうと、その本がどこかよそよそしくなって、 あまりうまく行かないのです。
    どうも私は、 「その本に関して、私は全権を担っていて、何でもやっていいんだよ」 という状態が好きなようです。わがままといえばわがままなんですが、 著者(author)というものはそういうものだと思っています。
    結城は本を書く仕事が大好きで、いろんなことを試してみたい。 おもしろくて、よい本をたくさん書きたい。 そして私が書く本を必要としている読者さんにきちんと届けたい。
    もちろん本を書く仕事は私の生活を支える大切な「お仕事」なんですけれど、 お金がもうかればいいというものではないと思っています。
    自分が見つけた「そうなんだ!」や、自分が学んだ「なるほど!」を 読者さんに届けたい。そのために適切な形式や経路をいつも探りたい。 結城はそんな風に思っています。
    さてさて、それでは今回のメルマガを始めましょう。 今回は特別企画「結城浩セミナー/プレビュー版(2)」がありますので、 このメール自体は、いつもよりも短くなっています。ご了承ください。
    目次
    特別企画 - 結城浩セミナー/プレビュー版(2)
    Q&A - どうしたら作家になれますか?
    次回予告 - とっておきの話題
     
  • Vol.014 結城浩/手書きノート(4)/生徒をあえてつまずかせる/

    2012-07-03 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年7月3日 Vol.014
    結城クイズ
    ギリシャ神話に登場する「腫れた足」という意味の名の人物は誰でしょう。
    はじめに
    こんにちは、結城です。
    文章を書くときには「型(かた)」が決まっている方が書きやすいものです。
    たとえば、結城は毎週このメルマガを書いていますが、 自分で「本を書く心がけ」のようなコーナーを定め、 そのコーナーの「型」に沿って文章を書いています。 「型」が何もない、まっさらなところに書くよりも、 このほうがずっと書きやすいのです。
    「型」というのは一種の制約です。
    「すべてが自由であるより、制約があった方が書きやすい」というのは、 少し変な感じもしますが、考えてみると例はたくさん見つかります。
    たとえばアンケート。 レストランのアンケートで、
     「何でも自由にお書きください」
    と言われても、何を書けばよいのかすぐには思いつかないですよね。 けれども、
     「値段についてはどうでしたか」  …ちょっと高いかなあ。  「味はいかがですか」  …うん、まあまあよかったよ。  「接客サービスは満足いただけましたか」  …そうだね。満足満足。
    このように個別に聞かれれば、答えやすいものです。 つまり、制約がある方がずっと話が進めやすいものです。
    メルマガに話を戻します。 コーナーに分けて、「型」を定めると書きやすいです。
    でも。
    話はここで反転します。
    でも、そのような「型」を定めた書き方だけをやっていると、 何だか文章がコンパクトにまとまってしまいがちだなあ、 と思うこともあるんです。
    文章のスケールがちっちゃくなってしまう。 それから、読者さんの心にもあまり残らない。 きちんと「ひっかかって」くれない。 可もなく不可もなくという文章になってしまう危険性を感じるんです。
    変な比喩かもしれませんが… きちんとコーナーに分けられ、 「型」が定められ、コンパクトに区切られた文章は、 素因数分解できる合成数のようです。たとえば24のように。
     24 = 2×2×2×3
    として、ばらばらっと分けられてしまう。 別にそれが悪いわけではないけれど、 ときに私は「大きめの素数みたいな文章」を書きたくなります。
    たとえば、24じゃなくて、29のように。
     29
    29は素数です。これ以上素因数分解はできません。
    12や、24や、36みたいな合成数は区切りもいい感じ。 親しみも持てる。とらえやすい。わかりやすい。ひっかからない。
    それに対して、 11や、17や、19や、29みたいな素数は、 塊を塊としてとらえるしかない。 どうもごつごつして落ち着かない。そんな印象があります。
    そんな文章って書けないのかな、と最近よく思うんです。
    (感覚的な話ですみません)
    この文章は、何を言いたいのかよくわからない。 でも、なぜか気になる。 無視できない。 ちょっと落ち着かないけれど、先が読みたくなる。 一度読み終えてからも、むしょうに読みかえしたくなる。
    そんな不思議な文章は書けないかな、と思うんです。
    人間の理解は、単純じゃない。まっすぐじゃない。 話を聞いて理解するときでも、 文章を読んで理解するときでも、 すぐにパッとわかることもあるけれど… そうじゃないときもある。
    昔の「なにげない一言」が、ずっと心にひっかかったままになっていて、 あるときフッとわかる。「ああ、そういうことだったのか」って。
    いつの日か、そんな体験をするような文章を書いてみたい。
    結城は最近、そんなことを考えています。
    …おっと、いけない!
    メルマガの「はじめに」がこんなに長くなっちゃった。
    今回のメルマガを始めましょう。目次をどうぞ!
    目次
    本を書く心がけ - 手書きノートのスナップショット(4)
    Q&A - 生徒をあえてつまずかせることについて
    次回予告 - 結城浩セミナー/プレビュー版(2)