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Vol.361 結城浩/面接が苦手/劣等感と向き合う/数学を楽しむために/インクリメンタルな環境改善(4)/建設的な議論/
2019-02-26 07:00220ptVol.361 結城浩/面接が苦手/劣等感と向き合う/数学を楽しむために/インクリメンタルな環境改善(4)/建設的な議論/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年2月26日 Vol.361
目次
面接が苦手だけれど、どうしたらいいですか
インクリメンタルな環境改善(4) - 仕事の心がけ
口論と建設的な議論との違い
どのように劣等感と向き合うか
数学を楽しむために - 学ぶときの心がけ
はじめに
結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
もうすぐ三月になりますね……毎回書いていますが、時間が過ぎるのは本当に早いです。
* * *
マグカップの話。
「結城浩のマグカップ」を作りました!
スレッドお化け坊やと数式をあしらったマグカップです。
◆結城浩のマグカップ
左手で持つと数式は相手に向かい、右手で持つと数式は自分に向かうようにデザインしています。
ここに描かれている数式は「数学ガール」や「数学ガールの秘密ノート」シリーズで、本のカバーを外すと現れるもので「恋の冪級数」と呼んでいます。この数式が何を表しているかは自由に想像してください。
このマグカップ、私も自宅で毎日使っていますが、なかなか素敵ですよ。にっこりしているスレッドお化け坊やを見ていると、こっちまでにっこりしてしまいます。
以下のページで販売していますので、よろしければぜひどうぞ!
◆結城浩のハートとシグマ マグカップ - SUZURI(スズリ)https://suzuri.jp/hyuki0000/1613145/mug/m/white
* * *
それでは今回の結城メルマガを、どうぞごゆっくりお読みください。
面接が苦手だけれど、どうしたらいいですか
質問
自分は面接が苦手で、面接の試験になるとすぐ選考に落ちてしまうのが悩みです。
面接が得意になるにはどのようなことを心がけるといいと思いますか。
回答
ご質問ありがとうございます。
面接のどういうところが苦手なのかを調べる必要があると思いますが、ここでは一般的な話を書いてみますね。
「正しい答えを書けばいい」という筆記試験とは違い、面接は「こうすればいい」という判断が難しいものだと思います。でも、不利にならないという方法はありそうです。まずは、自分がどんな「印象」を相手に与えているかを確認することです。
誰かに協力してもらって面接の練習をしましょう。できれば面接官の経験がある人がいいです。そして、気になる点がないか率直に言ってもらいましょう。自分の見た目、態度や、振る舞い、それに話し方の癖などを自分一人で気づくことは無理ですから。
印象は馬鹿に出来ません。たとえば面接のときに、
信頼できそうもない印象
おどおどして自信がなさそうな印象
逆に、自信たっぷりに見せているが空回りしている印象
を与えるのは明らかに損です。協力者に練習を見てもらい、自分がどんな印象を相手に与えているか、それを率直に言ってもらうことは大事です。
協力者を確保することがどうしても難しいなら、次善の策として自分の姿を録画してみましょう。自己アピールの様子や、何かを説明している様子や、あるいは典型的な質問に答えているようすを撮影するのです。スマートフォンがあればすぐにできますよね。
撮影したものをじっくり見てみましょう。もしやったことがないなら、自分の姿にたぶん驚くと思います。気付いたことをメモして、何回かやってみてください。練習すると変化していくことがわかります。
結城は、会社の入社面接官をした経験が少しあります。面接は多くのことを伝えます。印象で損をする方はたくさんいると思いますよ。たとえば、ちゃんと考えて答えているのに、ちゃんと考えて答えているように見えないというのは損です。
ちょっと注意したいのは、立て板に水でペラペラ話せることや、質問に対して即答できることが必ずしも最優先ではないという点です。質問されている内容をよく聞き、意味を理解し、それに対して答えているかどうかは大事ですね。要するに、きちんと受け答えできているかということです。
あなたの実力が大事なのはいうまでもないですが、相手の話をきちんと聞いて、きちんと答える力も大事ですね。そして、あなたの実力に見合った適切な印象を与えることも大事です。
主に「印象」を中心にお答えしました。自分の考えだけで面接の判断や対策をするのではなく、他者の目を借りることを検討してみてください。
面接、がんばってね!
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Vol.360 結城浩/専門学校に通っているけれど、その仕事が好きじゃない/くどくない文章を書く/インクリメンタルな環境改善(3)シェルフ(本棚)/
2019-02-19 07:00220ptVol.360 結城浩/専門学校に通っているけれど、その仕事が好きじゃない/くどくない文章を書く/インクリメンタルな環境改善(3)シェルフ(本棚)/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年2月19日 Vol.360
目次
2018年の振り返り - 仕事の心がけ
くどくない文章を書くにはどうするか - 文章を書く心がけ
専門学校に通っているけれど、その仕事が好きじゃない - 仕事の心がけ
インクリメンタルな環境改善(3)シェルフ(本棚) - 仕事の心がけ
はじめに
結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
どうぞごゆっくりお読みください。
2018年の振り返り - 仕事の心がけ
突発的に「2018年の振り返り」をしたくなりました。一つの理由は確定申告の作業が終わって、仕事を俯瞰する気分になったからです。もう一つの理由は、最近何かと「えっ!あれから一年経ったんだっけ?」という気持ちになることが多いからです。
2018年の1月には『プログラマの数学 第2版』を刊行しました。新たな版を出すときには、できるだけ新しい情報を盛り込むことにしていますが、この本の場合は難しいです(何しろ数学ですから)。なので「機械学習への第一歩」という付録を追加しました。
◆『プログラマの数学 第2版』https://www.hyuki.com/math/
2018年の4月には待望の『数学ガール/ポアンカレ予想』を刊行しました。結城メルマガでも何度か書きましたが、これは難産でした。時間が掛かったということでもそうですけれど、内容的にも苦労しました。書き直した章も多かったですが、そこが輝く部分ともなりました。特に自信作は第3章です。距離空間から位相空間へ移っていく部分。これは自信を持ってお勧めできます。
◆『数学ガール/ポアンカレ予想』https://www.hyuki.com/girl/poincare.html
2018年の5月ごろには「結城浩のpixivFANBOX」を立ち上げました。おもしろそうだな、と軽い気持ちで立ち上げたのですが、何名かの支援者さんに恵まれて、現在も続けています。特典はありませんが、たまに「支援者限定」でちょっとした文章を書いています。
◆結城浩のpixivFANBOXhttps://www.pixiv.net/fanbox/creator/24344450
また「結城浩の数学ノート」という小さなWebサイトも立ち上げました。結城は不定期に「小さなWebサイト」を立ち上げる習性があるのですが、これもその一つです。本の紹介やTwitterで結城が出題した数学の問題をまとめるのが中心になっています(記事の日付はTwitterでの出題した時点です)。
◆結城浩の数学ノートhttps://math.hyuki.net/
2018年6月には「ひとりSlack」という活動を始めました。開発者のお友達がみんなSlackで盛り上がっているので、楽しそうだなと思い、ひとりでSlackを始めたのです(それ、さびしい発想じゃないか?)。いろんなトライアルを行い、いまも続けています。「結城メルマガ」にも何度か「ひとりSlack」の話を書きました。
日付は前後しますが、cakesでのWeb連載は以下の四シーズンにまたがりました。
「無限を探そう」シーズン(2017年11月〜2018年3月)
「関数を組み立てよう」シーズン(2018年4月〜6月)
「群とシンメトリー」シーズン(2018年8月〜10月)
「ノナちゃん(仮題)」シーズン(2018年11月〜2019年1月)
こうやって並べてみると、一年でけっこうな分量を書いていますね。そしてもちろん最後の「ノナちゃん(仮題)」シーズンが私にとっては大きなチャレンジでした。この「結城メルマガ」でも、その舞台裏を書きましたね。このシーズンは私にとって重要なものとなったのです。
◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」https://bit.ly/girlnote
夏の終わりから秋にかけて、またまた突発的に「圏論」の勉強を始めました。Scrapboxにプロジェクトを立て、小さなWebサイトを作りました(またかい)。
◆結城浩の圏論勉強プロジェクトhttps://scrapbox.io/category/
◆結城浩の圏論ノートhttps://cat.hyuki.net/
2018年10月には『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』を刊行しました。高校では学ばなくなった「行列」というテーマを扱いましたが、まさにそのことのゆえに重要な一冊として扱われているようです。高校では学ばないけれど、大学では必須になるからですね。
◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://note10.hyuki.net/
上に書いた以外の活動としては、もちろんこの「結城メルマガ」を継続して書くこと。それから技術評論社のSoftware Design誌へのコラム連載などがあります。
以上、駆け足で2018年の活動を振り返りました。振り返ってみると「なるほどね」と思うことがあります。それは、結城の活動は、
書籍の刊行、結城メルマガ、Web連載など、じっくり継続させている部分
小さなWebサイト作りや急に始める勉強など、ちょっとしたノリで始める部分
が入り交じっているということです。私はこれは健全なことだと思っています。自分の生活を安定させ、活動を深めていくためにはじっくり継続する必要があります。でもそれだけだと陳腐化したりジリ貧になったりしますから、実験的な部分も大事です。
たとえば「ノナちゃん(仮題)」シーズンはその両方がうまく融合した手応えがありますね。じっくり継続している中に、新しいチャレンジを埋め込んでいく。いままで積み重ねてきたものに新しい息吹を送り込む。うん、そういう活動をこれからも行っていきたいものです!
以上、季節外れの「2018年の振り返り」でした。
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Vol.359 結城浩/職場を選ぶとき/気になる異性/共同執筆を支える技術/教える側が最初に伝えるべきこと/専門書の読み方/
2019-02-12 07:00220ptVol.359 結城浩/職場を選ぶとき/気になる異性/共同執筆を支える技術/教える側が最初に伝えるべきこと/専門書の読み方/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年2月12日 Vol.359
目次
共同執筆を支える技術 - 文章を書く心がけ
気になる異性の注目を集めたい
教える側が最初に伝えるべきこと - 教えるときの心がけ
専門書の読み方 - 学ぶときの心がけ
職場を選ぶとき、就職や転職を決断するときには何が重要か - 仕事の心がけ
はじめに
結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
寒いです。
このあいだまで「確かに暖冬だなあ」や「あまり冬という感じがしない」と思っていたのがウソのようです。
寒いです。
気温の変化、気候の変化、気圧の変化は、心と身体に負担になるので注意しつつ進みたい今日このごろです。
あなたも、どうぞお身体を大事にしてくださいね。
* * *
ファンタジーの効用の話。
先日私は、とあるお店で「○○味噌」を探していました。愛用している特定の銘柄のお味噌です。いつもはこのお店にあるのですが、今日は見つかりません。
そこで店長さんに尋ねました。以下、私と店長さんとの会話。
私「〇〇味噌が棚にないんですが、在庫もないんですか」 店長「ないですねえ」 私「いつ入荷しますか」 店長「すみません」 私「いつ入荷しますか」 店長「今週は入りませんねえ」 私「来週は入りますか」 店長「ご迷惑おかけします」 私「来週は入りますか」 店長「売り切れておりますので…」
私は○○味噌の入荷時期を知りたかったのですが、店長さんはかたくなに入荷時期を言いません。もしも来週に入荷するなら待つけれど、入荷しないなら別の味噌を購入したい。ところが、入荷時期がわからなければ判断できません。
どうしてこの店長さんは入荷時期を言わないのだろう!と解せない気持ちになりました。
それと同時に、こんなふうに思いました。
もしかしたら、この店長さんは幼少期に「お味噌の入荷時期を言ってはいけない魔法」を悪い魔女からかけられてしまったのかもしれない! だとしたら、入荷時期を言わないのも納得だなあ……
「お味噌の入荷時期を言ってはいけない魔法」というのは、グリム童話の「いばら姫」(眠れる森の美女)の物語に似ていますね。お城の地下室にはお味噌が醸してある。そこに入った幼少期の店長はついうっかり蓋を開けてしまう……などと空想が広がりました。悪い魔女の造形は実写版のディズニー映画『マレフィセント』で行きましょう。
そのようにファンタジー風味で考えると、コミュニケーションのイライラが緩和されるのでお勧めです。
不思議なことに、この店長さんとの会話を続けているうちに、店長さんの様子から「入荷時期は来週になることがほぼ確実だけど、もしかしたら再来週になってしまう可能性もある。どちらになるか確実なことはいえない」という気配を感じ取ることができました。人間のテレパシー能力ってすごいです。
ところで内緒の話ですが、私も編集者さんからの問いに対して、この店長さんと同じような返答をする場合があることに気付きました。
編集者「いつ脱稿になりますか」 私「だいぶコアになる部分はつかめてきました」 編集者「いつ脱稿になりますか」 私「あとはこの章を突破すれば」 編集者「いつ脱稿になりますか」 私「えーと……」
私は幼少期に「脱稿時期を言ってはいけない魔法」を悪い魔女から(以下略)。
真面目な話をすると、入荷時期を聞かれた店長さんと、脱稿時期を聞かれた私とは同じ誤りに陥っています。それは自分を守る方に意識が向かい、質問者のことを考えられなくなっているという誤りです。質問者は状況を知りたいと思っている。もちろん早いに越したことはないけれど、状況がわからないことには判断を下すことができない。でも回答者は質問者の意図にまで気を回すことができず、口ごもってしまう。そういう誤りですね。
結論? ○○味噌は、次の週に無事入荷しましたよ!
めでたし、めでたし。
* * *
では、今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞごゆっくりお読みください。
共同執筆を支える技術 - 文章を書く心がけ
ブログ記事の紹介です。
『ゼロからわかるRuby超入門』(五十嵐邦明+松岡浩平)という書籍の著者の一人、松岡さんが、Qiitaで「執筆活動を支える技術」という記事を公開しています。
◆執筆活動を支える技術https://qiita.com/machu/items/4a133e83f58f82459e56
◆『ゼロからわかるRuby超入門』https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07KQXFF6D/hyuki-22/
この記事では「複数人が共同して作業をするためにどのような技術を使ったか」が以下の四ステップに分けられて具体的に書かれています。
原稿を書く (Asciidoc, Atom, Visual Studio Code)
共有する (GitHub, Slack)
HTML/PDF形式に変換する (Rakefile, CircleCI)
限定公開する (docker, nginx)
この記事は、書籍執筆者、編集者、技術文書の関係者は必見でしょう。簡潔ではありますが、どんな道具をなぜ使ったかという知見が書かれています。たとえここに書かれていることが自分の環境では実現できなくても、その精神や考え方を自分の執筆・編集作業に取り入れることは有益でしょう。
この記事を見ていると、技術の力は個人のパワーを増幅させて、さらに技術を使える人が複数人集まるとそのパワーがさらに何倍にもなるということがよくわかります。
この記事を読みながら、大事なのは「Slackを使ったからうまくいく」や「GitHubを使ったからうまくいく」という話ではないのだろうと思いました。「執筆者たちが自分たちのワークフローを考え、適切なツールを選んだからうまくいく」ということではないでしょうか。
この記事のあちこちに「この技術を選んだ」や「こういうやり方もできるが、それは選ばなかった」ということが書かれています。そのような選択ができること自体が技術力の一つでもあるなと思いました。技術力があるというのは、自分たちには何が適切なツールなのかを判断できるということでもあるのです。
また、執筆者たち・イラストレータ・編集者との間に信頼関係があるから、この記事に書かれているようなコミュニケーションがうまくいくのだろうとも思いました。それは、記事中に示されたやり取りの例を読みながら感じたことです。ある程度以上の信頼関係がなければ、いくらツールを揃えてもこうはいかないでしょう。
そもそも「今回私たちはこういうやり方で執筆を進めました」という記事を書けること自体がすごいことです。なぜなら、執筆の内容を意識するだけではなく、執筆の進め方も意識している証拠ですから。プログラミングが得意な人は、そのようなメタな発想が得意な人が多いと私は感じています。
◆執筆活動を支える技術https://qiita.com/machu/items/4a133e83f58f82459e56
なお、以下はイラスト担当のべこさん(@becolomochi)視点からの別記事です。
◆Ruby超入門のかわいいキャラクターたちが生まれるまでhttps://note.mu/becolomochi/n/nbfac9ad3a8d0
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Vol.358 結城浩/自分の作品の価値がわからない/インクリメンタルな環境改善(2)/就職活動と進路選択/
2019-02-05 07:00220ptVol.358 結城浩/自分の作品の価値がわからない/インクリメンタルな環境改善(2)/就職活動と進路選択/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年2月5日 Vol.358
目次
もう一度新卒で就職活動をするならどんな進路を選ぶか - 仕事の心がけ
インクリメンタルな環境改善(2)ポータルページ・ポータルメモ・ダストリンク - 仕事の心がけ
自分の作品の価値がどこにあるのかわからない - 本を書く心がけ
はじめに
結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
早いもので、もう2019年も2月なんですね。
あなたは「今年の目標」を立てましたか。
結城は特に大きな目標は立てていません。いつも通り毎週の執筆を進め、いつも通り書籍を何冊か書き上げるつもりではおりますけれど。
でも今年は「意識的に本を読む」ことと「インクリメンタルな環境改善をする」ことは心がけたいと思っています。
今回の結城メルマガでは後ほどその「インクリメンタルな環境改善」についてお話ししますね。
* * *
早朝の話。
駅に向かっていると、私の前を親子連れらしき二人が歩いている(母と娘)。娘さんは小学校の低学年くらいだろうか。だいぶ小柄で歩幅もせまい。しばらく見ていると、お母さんが二歩進むあいだに娘さんは三歩進むことに気付いた。
前を行く母娘の足音ポリリズム(結城浩)
朝のちょっとした発見である。
◆ポリリズム - Wikipediahttp://bit.ly/hyuki-Polyrhythm
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かわいい「掛け算の本」の話。
Jo Morganさん(@mathsjem)のツイートで、かわいい「掛け算の本」の話。「4倍の表(4 TIMES TABLE)」と書かれた表紙をくるくると開いていくと、開くたびに●が4個ずつ増えていきます。三回開いたところでは、4×3と、12と、3×4とが書かれているのが見えますね。
◆ツイート(スクリーンショット)
◆ツイート本文https://twitter.com/mathsjem/status/1086287614095867904
* * *
二世代に渡る話。
結城は読者さんから、こんな感想をいただくことがあります。
「私は結城さんの本を読んで学びましたが、最近になって私の子供も読み始めました」
このような感想には感激しかありませんね!
私は、このような感想をいただくと「中学校の教師をしていた父」のことを思い出します。父は長年教師をしていたので、親と子の二世代に渡って教えることがよくあったらしいのです。
あるとき、父が笑いながらこんな話をしてくれました。
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授業で「よし、じゃあ〇〇に答えてもらおうかな」と生徒を指名した。するとその生徒は、苦笑しながら「先生! それ、母親の名前です!」と答えたんだ。
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父がしてくれたこの話を思い出すとき、私はいまは亡き父にこう伝えたくなります。
「ねえ、お父さん。私の本も二世代に渡って読者さんに読んでもらっているみたいですよ」
「二世代に渡る生徒」に「二世代に渡る読者」。父と私は「二世代に渡る相手に伝える仕事」を二世代に渡って行っていることになりますね。
* * *
では、そろそろ今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞごゆっくりお読みください。
もう一度新卒で就職活動をするならどんな進路を選ぶか - 仕事の心がけ
質問
就職活動中の大学生です。
もう一度、新卒で就職活動をするとしたら、結城さんはどんな進路を選びますか。
会社に勤めますか、フリーランスですか。
もし会社に勤めるならどんな会社でどんなふうに活躍したいですか。
回答
ご質問ありがとうございます。
やや難しい質問です。
「もう一度就職をやり直すとしたら」というとき、現在自分が持っている記憶や経験は有効なんでしょうかね。
もしも、すべての記憶を失ってやり直したら、結局同じ進路を選びそうです(そりゃそうだ)。
もしも、現在の経験と記憶を持ったまま新卒になるなら、そうですねえ、恐らくフリーランスを選ぶことになると思います。わざわざもう一度会社に入りたいとは思わないかなあ。
ところであなたの質問の中で「新卒で就職活動をするなら」という表現がありました。別に文句をいうわけではありませんが、自分が何をして生活していくかという判断をするとき「新卒採用」だけが道ではないということは心の片隅に置いてもいいと思います。新卒採用以外の道を無理に選ぶ必要はありませんけれど。
話がそれました。
どんな労働形態を選び、どんな職種を選び、どんな会社を選ぶかというのは重大な選択だと私は思います。
私はといえば、恥ずかしながらあまり深く考えたことがありませんでした。雑に要約すると「その都度その都度おもしろそうなことをやってきた」と言えるかもしれません。でも、改めて思うと、もう少し「自分の成長」について考えておくべきだったなと思います。
別の言い方をするなら「《資産》をどこに、どのように蓄えるか」という意識があったらよかったなと思います。もちろんここでいう《資産》というのはお金だけの話ではありません。いわゆるキャリアパスに近いのかなあ。「宝をどこに積むか」という聖書の表現がありますが、それにちょっぴり通じるかもしれません。
私はフリーランスを選ぶと言いました。会社で仕事をするのは悪いことではありません。仲間とともに大きな仕事をできるというのはすごいことです。一人ではできないほどスケールの大きなことも、力を合わせることで可能になります。ただ、私は、スケールはそれほど大きくなくても、すみずみまで自分の考えで満たされる作品を自由に作る方が好みですね。
当たり前のことですが、会社に属することと、仕事とは独立の話です。キャリアパスを考えるというのは、言い換えるなら「自分には何ができてなにができないか。自分はどんなふうに成長して何をおこなうべきなのか。そのために、いつ、どこにいるのがいいか」といった内容を、時間の推移と変化に合わせて考えることです。
その際に「会社という存在」を不可欠な前提だと考えるのはそれほど正しくないと思います。もちろん、雰囲気で会社を忌避するのも正しくありません。私が言いたいのは「当座の仕事内容」を考えるだけではなく「仕事の変遷」を考えるのも大事だということです。変遷を考えるとき、ひとつの会社内で考えるものではありません。
私にとって幸いだったのは「プログラムを書くこと」と「文章を書くこと」の両方が好きで楽しくて、しかもつぶしが効く活動だったことです。あまりキャリアパスについて考えては来なかった私ですけれど、それでも読者さんからたくさんの応援をもらうことで、現在生活することができています。感謝ですね。プログラムを書くことも、文章を書くことも、自分個人の《資産》として積み上がっていることがありがたいです。ある会社の中でしか生かされない《資産》ではなく、どこで活動しようとも生かされる《資産》ということです。
何を自分の《資産》としていくかということを考えずに、会社で何十年も過ごすのは悪い意味での冒険だと思います。会社は社員の人生に無限の責任を持つわけではありませんから。変化の大きな現代では特に、自分の生き方を変化するもの、変化に耐えられるものにしておくことが望ましいと思います。
何だか偉そうな就職談義になってしまいましたので、このへんで。
よい仕事との出会いがありますように。
そして、あなたならではの《資産》を積み上げていくことができますように!
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