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記事 124件
  • Vol.386 結城浩/理解を確かめる/編集者との関わり/考えることに無関心な生徒/対話とマウンティング/新しいカバン/

    2019-08-20 07:00  
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    Vol.386 結城浩/解を確かめる/編集者との関わり/考えることに無関心な生徒/対話とマウンティング/新しいカバン/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年8月20日 Vol.386
    目次
    どんなときに「理解できた」と感じるか
    編集者は著者の文章にどこまで手を入れていいのか - 本を書く心がけ
    考えることに関心がない生徒 - 教えるときの心がけ
    専門知識でマウント取りたがっていると思われないために
    新しいカバンと一貫性
    はじめに
    結城浩です。
    いつもご愛読ありがとうございます。
    先週はとんでもない暑さでした……
    今週はだいぶやわらいでいるようですが、それは比較しているからであって、正直暑いです……
    世の中はお盆明けでしょうか。学校の生徒さんは、そろそろ夏休みの宿題が気になる頃? 暑さに負けずがんばってくださいね。
    私は先週もいつもと変わらず仕事を続けておりました、暑かったけど!
    (さっきから「暑い」しか言ってない)
    * * *
    そ、それでは、今回の結城メルマガ、どうぞごゆっくりお読みください。
     
  • Vol.380 結城浩/緊張と体調不良/ほめることが苦手/漢字とひらがなの使い分け/思考の言語化/人に相談できない/

    2019-07-09 07:00  
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    Vol.380 結城浩/緊張と体調不良/ほめることが苦手/漢字とひらがなの使い分け/思考の言語化/人に相談できない/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年7月9日 Vol.380
    目次
    緊張と体調不良
    ほめることが苦手 - 教えるときの心がけ
    漢字とひらがなの使い分け - 本を書く心がけ
    思考を言語化するのが苦手
    辛いときや悲しいときでも人に相談できない - コミュニケーションのヒント
    はじめに
    結城浩です。
    いつもご愛読ありがとうございます。
    今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    緊張と体調不良
    質問
    作業に集中したり、ストレスを感じる環境にいたりすると、身体が緊張して、あとから肩こり・首こり・頭痛といった体調不良に悩まされます。
    結城さんはそのようなことはありますか。もしあれば、対処法をお聞かせ願いたいです!
    自分では温める、ストレッチするくらいしか思いつきません。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    私は以前たいへんな頭痛持ちでしたが、肉類よりは野菜類を多くとり、ヨーグルトなどでお腹の調子を整えるようになってから、頭痛はほとんどなくなりました。
    体を冷やしたり疲れたりすると、私の場合には喉が痛くなります。喉の痛みは私の体調をはかる指標になります。
    対処法というほどではありませんが「あ、何だか変かも……」と思ったら「すぐに葛根湯を一包飲む」ようにしています。携帯しやすいスティック型のものを箱買いして、つねに数本持ち歩いています。
    葛根湯を飲んで少し経つと身体が温まり急激に喉の痛みが引いて楽になるのがわかります。外に出ているときに身体を温めるのは難しいので、葛根湯はとてもいいですよ。水分を多めにとります。
    家にいるときには葛根湯の他に「お腹にドライヤーの温風を当てる」という対処法もよくやります。体調が崩れかけているとき、とても効くんです。
    私は洗面所だけじゃなくて寝室にもドライヤーを常備しています。旅行用の小型ドライヤーを「お腹あたため専用ドライヤー」としているのです。気分が低調なとき、夜眠る前、朝起きて何となく気分が乗らないとき、どんなときでもドライヤーの温風をお腹や背中や太ももやお尻に当てるとすごくいいです。もしやってみるなら火傷には注意してくださいね。
    外でも自宅でも、ストレスを感じたり疲れたりしたときには「目を閉じる」という対処法もなかなかいいものです。十分でも、五分でも、それが難しいならたとえ一分でもいいから目を閉じてぼうっとするのです。眠りこむのが恐いなら数分後にタイマーをセットします。これは驚くほど気分が変わります。
    なお、私は医者ではありませんし、健康に関わる話ですので、以上はあくまで「私の場合の話」です。試す場合にはご自身の判断でお願いします。
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.376 結城浩/人と楽しく話す/数学的な図版/言語化が苦手/線型代数を学ぶ意味/プログラミングを初学者に教える/魅力とは/

    2019-06-11 07:00  
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    Vol.376 結城浩/人と楽しく話す/数学的な図版/言語化が苦手/線型代数を学ぶ意味/プログラミングを初学者に教える/魅力とは/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年6月11日 Vol.376
    目次
    人と楽しく話す方法 - コミュニケーションのヒント
    数学的な図版をどう作るか - 本を書く心がけ
    イメージを言語化するのが苦手
    線型代数を学ぶ意味 - 学ぶときの心がけ
    プログラミングを初学者に教えるには - 教えるときの心がけ
    魅力とは何だろうか
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    新刊の話。
    『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』は出版に向けて少しずつ作業が進んでいます。
    先週は編集部で初校ゲラの読み合わせがありました。編集者と椅子を並べて座り、初校ゲラ用紙を机に置き、一ページずつめくっていくのです。今回は私が事前にファイル整理を済ませていたので、思ったよりも短時間で終了しました。
    「読み合わせ」についてはずいぶん以前(Vol.028)になりますが、この「結城メルマガ」でも簡単にご紹介したことがありますね。この記事から7年近く経過しました(!)けれど、現在でも同じような方法で進めています。
    ◆書籍の品質を向上させる「読み合わせ」の進め方(本を書く心がけ)https://mm.hyuki.net/n/n24cc7c12d4f5
    今後の予定としては、来週に再校ゲラ到着、再来週に再校読み合わせ、そして7月の3週目ごろに刊行になります。いよいよです!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』https://bit.ly/hyuki-note11
    それから恒例となりました《サイン本無料プレゼント》の企画も開始しました! あなたもぜひご応募ください。
    ◆『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』《サイン本無料プレゼント》https://snap.textfile.org/20190610093524/
    * * *
    古本購入の話。
    先日、伝統のある出版社から刊行されている古典的な数学書を買おうと思いました。仕事の都合上、すぐに調べたい本なので電子書籍があるといいなと思ったものの、あまり電子書籍に力をいれてなさそうな出版社なので、もしかしたらないかもしれないなあと思って検索。
    ところが、その古典的な数学書は、電子書籍になっているどころか「版元品切れ」になっていました。たいへんがっかりです。しかたがないのでアマゾンのマーケットプレイスで買いました。定価の倍の値段がしましたが、仕事で必要なものなのでしょうがないですね。
    とにかくすぐに入手したいというのは私の希望であり、その希望には市場原理が働くので、値段が高くなるのは避けがたいでしょう。数日かけて探せば、どこかの古本屋でもっと安い本が見つかるかもしれません。でも高くてもすぐに買える方を選ぶことが多いです。それは「自分の時間を買っている」のだと考えているからです。
    私は本を書いて生活していますし、古本屋やマーケットプレイスで買っても著者にお金が1円もいかないことを知っています。ですから、私の心がけとしては、たとえ古本が安くても新品が買えるなら新品を買います。それは著者に利益還元するためです。しかしながら、存在しないものは買えません。
    ですから「出版社さん、どうか古典的な本を品切れにしないでほしい。せめて電子書籍で置いてほしい」というのが私の正直な気持ちになります。出版社には出版社で言い分があるのでしょうけれど。
    * * *
    数学に興味を持ったきっかけの話。
    「結城先生が数学に興味を持たれたのはいつ頃なのでしょうか。きっかけなどはありますか」という質問をいただきました。
    数学というか、理系っぽいことには昔から興味はありました。理科教師の父の影響が大きいと思います。父からは多くのことを学びましたね。以前の「結城メルマガ」で詳しく書きました。
    ◆父から学んだ「教える」ということ[Part 1](教えるときの心がけ)https://mm.hyuki.net/n/n478ee16c8dc7
    ◆父から学んだ「教える」ということ[Part 2](教えるときの心がけ)https://mm.hyuki.net/n/n10830453d0c8
    ◆父の思い出 - TK-80 -http://www.hyuki.com/dream/tk80.html
    自分の父という存在は一人しかいません。だから、実際のところ父の影響がどれだけ大きいのかを推し量るのは難しいです。「別の父だとしたら」と想像するしかないためです。しかしながら、年経るごとに父の影響は大きいなあとしみじみ思います。
    * * *
    それでは今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
     
  • Vol.355 結城浩/数学の勉強方法を教えてください/「ノナちゃん」の書籍化/再発見の発想法/生きる気力/人生を共にする/センター試験/

    2019-01-15 07:00  
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    Vol.355 結城浩/数学の勉強方法を教えてください/「ノナちゃん」の書籍化/再発見の発想法/生きる気力/人生を共にする/センター試験/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年1月15日 Vol.355
    目次
    生きる気力を失っている
    センター試験直前のアドバイス - 学ぶときの心がけ
    数学の勉強方法を教えてください! - 学ぶときの心がけ
    人生を共にする相手としての「好き」とは
    数学苦手な新キャラ「ノナちゃん」の書籍化へ向けて - 本を書く心がけ
    アーカイブ - 再発見の発想法
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    * * *

    結城は、物理学者ファインマン先生の名言を紹介するbot (@ProfFeynman)をフォローしています。含蓄のある明言が多いのですが、先日は、こんなツイートがありました。
    >>>
    There is no authority who decides what is a good idea.
    https://twitter.com/ProfFeynman/status/1080146955022553090
    <<<
    翻訳すると「何が良いアイディアかを判断する権威など存在しない」とでもなるでしょうか。
    ファインマン先生がどういう意図でこの言葉を出したのかはわからないので、以下に書くのはこの言葉からの連想です。
    確かに、権威によって「これは良いアイディアである」や「これは良いアイディアではない」と判断することはできません。
    もちろん、えらい先生や有名な先生が何かを言ったとき、それを尊重するのは悪いことではないでしょう。経験が豊かで、他の人が知らないことや気付かないことに目を向けることができている可能性があるからです。
    しかし、「これは良いアイディアである」という主張が「なぜならば」という理由を持たないとき、その権威はいささか怪しくなります。それは、つまり「権威のみ」が根拠になることの危うさともいえるでしょう。
    数学や自然科学では特によく当てはまります。どんなにえらい先生が何かを考え何かを主張したとしても、数学の論理やこの自然のあり方をねじまげることはできませんから。数学や自然科学の研究においては、謙虚さが必要なのです。
    そこで私はふと、cakesでのWeb連載「数学ガールの秘密ノート」第249回で「僕」が語ったことを思い出しました。
    >>>
    僕「そこに、数学のおもしろさの一つがある。誰がなんと言おうとも、正しいものが正しい。話す人がどれだけ偉いか、どれだけ年が上か、どれだけパパッと答えるか、どれだけ大声を出すか、そんなことは、正しさとは無関係」
    ユーリ「《ささやき声でも真理は真理》」
    https://bit.ly/girlnote249
    <<<
    私も同じように感じます。ここでユーリが言っている《ささやき声でも真理は真理》というのは、数学ガールに登場する双倉図書館に掲げられている言葉です。
    権威というものについて、あなたはどう思いますか。

    * * *

    二つの軸で整理する話。
    湊川あいさん(@llminatoll)が一つの図と共に、こんなツイートをしていました。
    >>>
    A.楽しいしお金になる活動 B.楽しくないけどお金になる活動 C.楽しくてお金にならない活動 D.楽しくないしお金にもならない活動
    Cの時間を意識して増やすと、引きずられるようにAが自然と現れる
    https://twitter.com/llminatoll/status/1074282798003810304
    <<<
    ◆「楽しいかどうか」と「お金になるかどうか」という二つの軸で活動を整理した図(湊川さんによる)
    この図は「楽しいかどうか」と「お金になるかどうか」という二つの軸で整理しています。二つの軸があるので四つに分かれるというのは、当たり前といえば当たり前です。でも、一つ一つを見てじっくり考えるのは意味がありそうです。
    湊川さんが書いているように「Cを育ててAにする」(お金にならないけれど楽しい活動を育てて、楽しい上にお金になる活動にする)というのは素敵な考えですね。
    もしかしたら、たとえばBとCの活動しか経験がない人もいるかもしれません。つまり「B.楽しくないけどお金になる活動」と「C.楽しくてお金にならない活動」という二つです。そういう人は、楽しくてしかもお金になる活動(つまりA)の経験がないので「お金をもらう仕事は楽しくなくて当然」という発想になるかもしれません。
    また、こんなケースもありそうです。お金を度外視して楽しいからやっている活動(つまり右下のCの部分)があった。でもふと気がつくと右下のCから、右上のAにポンと移動していたというケース。言い換えると「お金にならないと思っていたのに、お金になった!」というケースです。
    活動を育てているという意識はなかったのに、 自分の「楽しい!」という気持ちを追求して活動した結果、他の人にも「楽しい!」というインパクトを与えて、結果的に収入につながるような場合といえます。
    右上のA「楽しくてお金になる」は楽しいので、注意しないとワーカホリックになりそう!
    「楽しくなくてお金にもならない」(つまり左下のD)という部分を、「お金にはならないとしても楽しい」(つまり右下のC)という部分に移動する試みも生活の品質を上げてくれそうです。
    たとえば「確定申告の準備」という活動は、左下のDに相当すると私は感じます。でも「確定申告の準備のためのプログラムを作って使う」という活動に変化させれば右下のCに移動してくれるのです。
    湊川さんのこの図は、そんな発想をうながす図になっています。
    この図では、自分の活動を「楽しいかどうか」と「お金になるかどうか」という二つの軸で整理しています。でも他の軸を持ってくることもできるでしょう。ちょっと考えると以下のような軸が思いつきます。
    未来につながるかどうか
    自分のためか社会のためか
    これまでの継続か新規開拓か
    インプットかアウトプットか
    あなたなら、自分の活動を俯瞰するのにどんな軸を考えますか。
    なお、湊川あいさんは『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門』など、楽しい本をたくさん書いていらっしゃいます。
    ◆湊川あいさんの著者ページ(アマゾン)https://amzn.to/2CnPcFk

    * * *

    映画の原題の話。
    映画『アナと雪の女王』の原題は『Frozen』です。直訳すれば「凍り付いて」ということになります。『アナと雪の女王』の方が未視聴段階でも内容がわかりますが『Frozen』の方が深みがあってすごいと感じます。深みがあるというのは、凍り付くという表現が、この映画の中では多義的で比喩的な意味も持っていることに気付くからです。登場人物の心理の変化ですね。
    映画『塔の上のラプンツェル』の原題は『Tangled』で、こちらは「もつれて」という意味。ラプンツェルの長い髪の毛がからみあいもつれるだけではなく、状況がもつれているのも表現しているのでしょうか。
    映画『カールじいさんの空飛ぶ家』の原題はすごいです。何と『Up』という一単語ですから。確かに「上へ」ですし、一度聞いたら忘れませんが、タイトルをこの一単語にするという思い切りに感動します。
    スティーヴン・キングの『IT』は有名なので、さすがに邦画になっても『IT』です。でも副題が付いて『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』となります。
    タイトルを付けるのは難しいものですね。
    拙著『数学ガール』は、たいへんうまくいったタイトルだと思っていますが、最初のアイディアでは『数学ガール/ミルカさんとテトラちゃん』というタイトルにする予定でした。でも編集長から『数学ガール』だけにしましょうという提案を受けて修正したのです。いまにして思えばその提案は大正解だと思います。
    『数学ガール』という五文字は短くてインパクトもあり、しかも内容をよく表しているからです。

    * * *

    では、そろそろ今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    生きる気力を失っている
    質問
    愛する人に疎ましがられ、いまの私は生きる気力を失っています。
    こういうとき、どうしたらよいのでしょうか。
    回答
    時間です。
    時間を味方につけましょう。つらいつらいつらいときは私もありました。つらいつらいつらいときを、何とかやり過ごすだけの力をかき集めましょう。気持ちをしっかり持って時間を過ごすのです。
    あくまで私の場合ですが「信頼できる他者」が、大きな助けになりました。自分じゃない誰かと関わること。それは大事な一手です。
    愛する人に疎ましがられることは本当につらいです。愛する人との関係は、人の心と身体に直接的な影響を与えます。気力を失い、どうすればいいか、まったく困り果てます。こんな状態が永遠に続くなんてと感じます。
    しかし、信じられないかもしれませんが、人は変わり、状況は変化します。
    ですから、時間を味方につけるのです。自分一人では難しいことが予想されるので、何とか「信頼できる他者」と関わり、乗り切りましょう。
    あなたのこと、祈っています。
    センター試験直前のアドバイス - 学ぶときの心がけ
    質問
    センター試験が近づいてきて、不安や何やらで押しつぶされそうです。何かアドバイスを頂けないでしょうか。
    回答
    センター試験はとても大きな試験ですから「不安やら何やら」で押しつぶされそうになるのは無理もありません。当然といってもいいです。
    アドバイスといっても、すでにあなたがいろんな方から聞いているアドバイスしかできません。落ち着いて・体調に気を付けて・睡眠をよく取って・これまでの勉強の成果を生かして……のようなアドバイスです。
    不安は、結果がどのようになるかわからないところから生じます。人間には未来が見えませんから、それは当然です。それを完全に消すというのは人間わざではないでしょう。でも、できることは何もないかというと、そうでもありません。
    これまでのノートを振り返ったり、スケジュールを再確認したり、会場までの交通手段をチェックしたり、持ち物を確かめたり、そのような「具体的に自分の身体を動かしてでき、しかも無駄にならないこと」があります。それをしましょう。
    そして、受験生は、多かれ少なかれ、あなたと同じように「不安」を感じてるはずです。表面上はつくろっているかもしれませんが、それぞれにそれぞれの不安を感じています。決して、あなただけではありません。
    私に言えるのはそのくらいです。不安は不安として、具体的にできることをしましょう。そして勇気を持って試験に立ち向かってください。実力を発揮できますように。結果は後からついてくるものです。がんばってください。応援しています。
     
  • Vol.352 結城浩/カスタムキャストで遊びたい/計画/表現するときの恐怖心/問題を解くときの詰めの甘さ/

    2018-12-25 07:00  
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    Vol.352 結城浩/カスタムキャストで遊びたい/計画/表現するときの恐怖心/問題を解くときの詰めの甘さ/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年12月25日 Vol.352
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    一年は早いもので、もうクリスマスですね……あなたはどんなクリスマスを過ごしておられるでしょうか。
    今回が2018年最後の「結城メルマガ」配信となります。
    今年もたいへんお世話になりました。
    新年もよろしくお願いいたします(ぺこり)。

    * * *

    場所と記憶の話。
    結城はあちこちのカフェを移動しながら仕事をしています。
    ある日、何気なく、いつもと違うカフェに行きました。ところが、そこに足を踏み入れたとたん、ぱああっと記憶がよみがえりました。あっ、ここは『数学ガール/ポアンカレ予想』がなかなか進まないときに来てたカフェだ! 書いては消し、書いては消し、もがいていたあのカフェだ……
    「数学ガール」シリーズの第6巻目『数学ガール/ポアンカレ予想』を刊行したのは今年2018年の春。苦労していたころのことはすっかり忘れていました。でも、そのカフェという場所がまるで私の代わりに記憶してくれていたかのように、一気に記憶がよみがえったのです。大変だったときの記憶が。
    過去を振り返り過ぎるのは良くありませんが、自分の過去はすべて順調だったと自己の歴史を改竄するのも良くありません。一つの仕事が完成するまでには、紆余曲折があったこと。どうしても進まない時期があったこと。けれどもめげることなく(何度めげても)続けたこと。そういう記憶は大事です。
    そういう記憶は「現在と未来の自分」を支えてくれるからです。
    私は「どうも最近うまく行かないなあ、これまではいつもうまく行ったのに」という錯覚に陥ることがよくあります。でも、実は、昔だってそれほど順調じゃなかったのです。つまずいたり、ころんだりした。思うように進まないこともあった。進んだと思ったけど、また振り出しに戻ることもあった。でも、ジグザグながらも進んできた。単に自分が忘れてるだけで、実際はそうだった。
    だから、たとえ、最近うまく行かなくても、順調でなくても、つまずいても、ころんでも、思うように進まなくても、振り出しに戻っても、またきっとジグザグながらも進める。過去の、大変だったときの記憶が、現在と自分の未来を支えてくれる。
    その日。久しぶりに『数学ガール/ポアンカレ予想』執筆当時によく使っていたカフェに行ったとき。私はそんなふうに考えていました。大変だったときの記憶をきちんと味わいながら。ほんとに、今年刊行できてよかった……
    ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』http://www.hyuki.com/girl/poincare.html

    * * *

    テキスト+静止画像→動画の話。
    以前から「簡単に動画を作ることはできないかな」と思っています。YouTuberの話題を読んでいると動画の編集はたいへん時間を食いそうで二の足を踏んでいます。
    次善の策として「テキストを自動読み上げした音声と静止画像を組み合わせた動画」はどうだろうと思うことがあります。以前Vol.338の結城メルマガで紹介したAmazon Pollyという自動読み上げサービスはとても手軽で便利です。
    Amazon Pollyでmp3ファイルを作り、静止画像のjpgファイルを用意し、ffmpegというプログラムを動かすと、Twitterに直接投稿できるmp4ファイルが作れます。簡単な手順を以下にまとめました。
    ◆画像ファイル(jpg)と音声ファイル(mp3)から動画ファイル(mp4)を作成する(ffmpegを使う)https://snap.textfile.org/20181129204816/
    ◆テキストから音声を合成し、Twitterで公開できる動画に変換する手順(Amazon Pollyとaudio2videoを使う)https://snap.textfile.org/20180902204857/
    たとえばWeb連載「数学ガールの秘密ノート」の宣伝動画(動いてないけど)は次のようにツイートできます。
    ◆宣伝動画ツイートhttps://twitter.com/hyuki/status/1068114990643593218
    ◆宣伝動画ツイート(スクリーンショット)
    自動読み上げのためにAmazon Pollyに与えたテキストは、静止画像に貼られているものと(改行を除いて)同じです。画像一枚とテキストから自動生成した音声をもとにツイートができるのはなかなか手軽でいいと思っています。
    ◆Amazon Pollyを使って簡単音声合成(結城メルマガVol.338)https://bit.ly/hyuki-mm338
    後ほど、VTuberの話題も少し書こうと思います。

    * * *

    行列の話。
    黒狐さん(@inaba_darkfox)が、『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』に出てくる「行列による線形変換」をヴィジュアル的に表現するWebアプリを作って下さいました。ありがとうございます!
    2×2行列の四つの成分を入力すると、座標平面上に描いたたくさんの点を動かして表示してくれます。
    ◆黒狐さんのツイートhttps://twitter.com/inaba_darkfox/status/1069333381844938752
    ◆線型変換ビジュアライザー(ver3.1)https://inaridarkfox4231.github.io/LT/
    ◆線型変換ビジュアライザーIIhttps://inaridarkfox4231.github.io/LT_2/
    ◆スクリーンショット(2,2,3,1を入力した例)
    このような変換は『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の中でコンピュータ少女のリサちゃんがやってみせたものでした。黒狐さんはそれを実際のWebアプリにしてくださったのですね。感謝です!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://note10.hyuki.net/

    * * *

    教えるときの話。
    「人に教えるときには、何を意識すれば上手に教えられるでしょうか」という質問をいただきました。
    結城が思うに、人に教えるときには「上手に教えること」ではなく「相手がわかること」を目指すのが大事です。
    これは言葉のあやではありません。「上手に教える」というときには意識が「自分」に向かっています。意識を「自分」に向けるのではなく「相手」に向けることはとても大切。教えるという活動では「相手がわかること」がゴールの一つですから。
    極論をいうならば、どんなに下手くそな教え方でも、相手の思考パターンにぴったりと合って「なるほど!」という状態になるならば、それはいいことです。《相手のことを考える》のが大原則といえます。
    「相手がわかること」を考えるなんて、当たり前のように思えますよね。実際、当たり前のことです。でも教える人の多くがこれを忘れています。また、覚えていても実践するのはとても難しいもの。相手のことではなくて、教える側である自分のことだけを考えがちだからです。
    「相手がわかること」を考えるなんて抽象的な話ではなくて、もっと具体的なコツはないのかね……と尋ねたくなるかもしれません。でも、具体的なコツは《相手のことを考える》という原則を真剣に考えると無数に見つかるものです。そして《相手のことを考える》ということが腹に落ちていないと、具体的なコツを知っても効果は激減するでしょう。
    以下のWebページには、結城が考える「教えるときの心がけ」の要点がまとめてあります。
    ◆教えるときの心がけhttp://www.hyuki.com/writing/teach.html
    もちろん、noteにもたくさん書いています(多くは「結城メルマガ」からのピックアップです)。
    ◆教えるときの心がけ - マガジンhttps://mm.hyuki.net/m/md7abcdf8eaf5
    《相手のことを考える》というのは、単純だけど、とても奥が深いスローガンだと思います。

    * * *

    長文をまとめる話。
    Ryoto_Sawadaさん(@Qhapaq_49)が、長文をまとめるサービスIMAKITAを公開していました。
    ◆長文を3行ぐらいで纏めてくれるエンジン IMAKITAを作ってみましたhttp://qhapaq.hatenablog.com/entry/2018/12/09/234447
    さっそく試してみました。結城が書いた文章をIMAKITAで要約させてみます。
    ◆文章を書く心がけ(原文)http://www.hyuki.com/writing/writing.html
    上の「文章を書く心がけ」は約1万2千文字ありますが、5行で要約する(!)と以下のようになります。なかなかいいですよね。
     (「文章を書く心がけ」を5行にしたもの)  したがって、読者のことを考えるのは当然のことと言える。  読者は何を知っているかを考えよう 。  読者は何を知っているだろう。  あなたの文章を「そこまで読んできた」読者は何を知っているだろう。  読者にまずうなずかせよう。
    次に「教えるときの心がけ」(約1万文字)を5行で要約してみましょう。これもいいですね。
    ◆教えるときの心がけ(原文)http://www.hyuki.com/writing/teach.html
     (「教えるときの心がけ」を5行にしたもの)  生徒に安心して質問させるように心がけよう。  生徒はびくびくしている。  生徒はこんなことを考えながら質問しようか迷っている。  生徒に安心して質問させよう。  生徒をおどかしてはいけません 。
    小説のようなものは難しいですが、記事や説明文ならばかなりいい感じに要約されると思います。ぜひあなたも試してみてください。
    ◆IMAKITA Document Squeezerhttps://www.qhapaq.org/imakita/

    * * *

    Skebの話。
    先日Skeb(スケブ)というサービスを知りました。同人作家さんなど、個人として活動しているクリエイタにお仕事を発注できるサービスです。
    ◆Skebhttps://skeb.jp
    ◆同人作家にイラスト発注できる「Skeb」公開 海外からの依頼も自動翻訳、未払い回避もhttp://www.itmedia.co.jp/news/articles/1811/30/news137.html
    このサービスの大きな特徴は、クライアント(発注する側)よりもクリエイタ(作成する側)に大きなメリットがあるように設計してある点ですね。
    短文+自動翻訳による発注(依頼内容の確認などのコミュニケーション負担がない、海外からの依頼も受けやすい)
    リテイクなし(描き直しが発生しない)
    報酬の未払回避(報酬はクライアント先払いで、納品するとクリエイタに支払い)
    権利はクリエイタ側に(クライアントが使えるのは限られた用途のみ)
    もしもこれがうまく回るならばクリエイタ側にとてもいいシステムになりそうです。
    「クライアントは鑑賞目的の他、SNSアイコンなど一部の用途に限り二次利用可能」という制約があるので、大きなイラスト仕事発注用というわけではありません。サービス名の「スケブ」が方向性を明示していますね。同人作家さんなどにスケッチブックを渡してそこに描いてもらうことをスケブ依頼といいますが、Skebはそれのオンライン版なのです。
    Skebのクライアントガイドラインによると「リクエストは140文字以内で入力してください。URLなど外部への誘導は禁止されています。金額は3,000円以上300,000円未満で設定できます」とのこと。140文字でリクエストを出すというのは「ツイートで発注する」感覚といえるでしょう。
    ◆クライアントガイドラインhttps://skeb.jp/client
    Skebのクリエイターガイドラインも大変興味深い。「クライアントは作品の原寸ファイルをダウンロードすることができます。クライアント以外には横幅最大800pxの縮小画像が表示されます」「作品の権利はクリエイターに帰属しますが、作品の販売に関する一切の責任もまたクリエイターが負います」なるほど。
    リクエストに対して「再アップロード不可」だから本当に一発勝負。リテイクは不可能になっています。このサービスは、割り切りが明確なところがポイントなのでしょう。利用規約に併記して「重要なポイント」を併記してあるのはわかりやすいし、好印象です。
    ◆クリエイターガイドラインhttps://skeb.jp/creator
    たとえば、このSkebのサービスを経由して、電子書籍の表紙を描いてもらうのはなかなかいいアイディアかもしれません。「個人利用の範疇を超える二次利用を行いたい場合には、別途クリエイターの許可を取るか、リクエストに記入してください」とクライアントガイドラインにあるので「電子書籍の表紙」はたぶんセーフでしょう。むしろクリエイターさんの方でもそのポイントでアピールチャンスかも。
    結城はKDPの表紙を自分で作っていましたが、こういうところに発注するというのも世界が広がって楽しいかもしれませんね。
    ◆結城浩の個人出版(KDP)http://www.hyuki.com/pub/kdp.html
    このSkebというサービスのポイントに「コミュニケーションをこれ以上削れないくらい減らしている点」があると思います。クライアント、クリエイターどちらにとっても大きな負担になりうる「やりとり」の部分をルールによって回避しています。
    Skebのようなサービスが増えてくるのは、個人クリエイタがマネタイズする選択肢が増えるのでとてもいいことだと思います。それは個人が自分の力を発揮する場面が増えるということであり、また個人のニーズに合わせた多様な働き方を支えてくれることだからです。

    * * *

    そんなところで、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    カスタムキャストで遊んでみました
    計画はどのように立てていますか - 仕事の心がけ
    表現するときの恐怖心に対処する - 本を書く心がけ
    問題を解くときの詰めの甘さを解消する - 学ぶときの心がけ
    カスタムキャストで遊んでみました
    「カスタムキャスト」というのは、3Dのキャラクタを簡単に作り、VTuberのモデルを作ったり、ネット配信を行ったりできるスマートフォン向けのアプリです。
    ◆カスタムキャストhttps://customcast.jp
    結城はいまのところVTuberになる予定はないのですが、こういうおもしろそうなものは一度触れてみたくなります。スクリーンショットを撮るだけで「数学を学んでいる女性のイラスト」を以下のように簡単に作ることができます。ちなみに、この方は数学ガールに出てくるミルカさんではありません(タイプとしては近いですが)。
    ◆Studying epic morphism
    この画像を作るには以下のような手順を踏みました。
    まず、カスタムキャストのアプリで体型、洋服、髪形、表情、眼鏡などを設定し、ポーズを選びます。
    ◆カスタマイズのようす(洋服を選んでいる画面)
    好みの場面が作れたら画像ファイルに落とし、レタッチソフトのPixelmatorで背景を透明にし、以前結城が作った板書の画像と合成します。
    それだけだと、ジャギーがやや目立つ画像になるので、DistressedFXとPixlrという二つのアプリを使ってイフェクトを掛け、雰囲気を出しました。
    先ほどの画像(Studying epic morphism)の製作に掛かった所要時間は合計で30分ほどです。作成に使った道具はiPhoneのみ。 はっきり言って、とても手軽。しかも楽しい!
    結城はいまのところVTuberになる予定はないのですが、本当にないのですが、試しに女性に動きをつけて、Amazon Pollyの音声と合わせた動画を作ってみました。
    ◆最近、結城さんは圏論を勉強しているようですね - YouTubehttps://youtu.be/fJAb7oEZ_Qg
    この女性の口の動きは、Amazon Pollyの音声とはあまり同期していませんが、結城の口の動きと同期しています(リップシンク)。カスタムキャストの機能で、カメラで発話者の口や顔の動きに合わせてキャラクタの動きも同期するのです。上の動画では、Amazon Pollyで合成した音声を結城が耳で聞きながら発声し、リップシンクでキャラクタの口を動かすという迂遠な方法を取っているのであまりうまく行ってないのですね。
    それはそれとして、自分の動きに合わせてキャラクタが動くというのは非常に強い魅力があります。VTuberの動きを見るのと、自分のキャラクタの動きを見るのとでは感覚がずいぶん違います。
    しかも、カスタムキャストで「外カメラAR」にするとリアルな世界を背景にしてキャラクタを表示することもできます。自分の生活空間に、アニメのキャラクタが登場するというのはかなりの衝撃です。リアルな世界の黒板をARの背景にしてキャラクタがしゃべるというのもすぐにできちゃいますね。
    バーチャルな美少女になることを「バ美肉(バーチャル美少女受肉)」と呼ぶそうです。バ美肉して、やさしい数学トークをする……なんて、楽しそうです!
    残る問題は、声です。自分の声で動画配信はあまりやりたくないので、男声女声のリアルタイム変換ができればなあ……実際「バ美肉」を検索すると「ボイチェン(ボイスチェンジャ)」が検索候補に出るので、みんな同じこと考えているのでしょうね。
    結城はいまのところVTuberになる予定はないのですが、もうちょっとで始めたくなるかも……と思う最近の技術進歩です。

    * * *

    すでに、学問的なことを解説するVTuberの活動はさかんに行われています。たとえば以下の「VRアカデミア」ではVTuberのみなさんが、バーチャル講師としてバーチャル空間で講義を行っています。
    ◆VRアカデミアhttps://sites.google.com/view/vr-academia
    講義情報などは、Scrapboxにある以下の「VRアカデミア公式Wiki」を参照してください。
    ◆VRアカデミア公式Wikihttps://scrapbox.io/vr-academia-wiki/
     
  • Vol.349 結城浩/スマートフォンで絵を/「良問」とは何か/読み飛ばしても大丈夫という自信/「壁」を越えて作品を作り続けよう/

    2018-12-04 07:00  
    216pt
    Vol.349 結城浩/スマートフォンで絵を/「良問」とは何か/読み飛ばしても大丈夫という自信/「壁」を越えて作品を作り続けよう/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年12月4日 Vol.349
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    * * *

    スマートフォンで絵を描く話。
    最近「3Dモデルを作成してそれを絵画風にする」という活動がお気に入りです。といってもイメージが湧かないと思うので例を挙げますね。
    ◆追憶。
    ◆追憶。- Instagramhttps://www.instagram.com/p/BpwWDQ7AwnC/
    この壺は水彩画っぽいですけれど、紙やリアルの筆記具はいっさい使っていません。iPhoneとアプリだけで作ったものです。結城は絵心があまりないのですが、それにも関わらずこんな画像が作れるなんて感動です。
    この絵を作るのに使ったのは、Potteryという「ろくろを回して陶芸作品を作るアプリ」と、Waterlogueという「画像を水彩画風にするアプリ」と、Pixlrという「写真加工するアプリ」の三つです。いずれもiOSで動作するもので、製作時間はわずか20分たらず。しかもごろんと寝転んだままで作ったものです。率直に言いましょう。手軽で楽しい!
    ◆Pottery(陶芸作品を作るアプリ)https://www.idreams.pl/ja/our-products/show/product/21-Lets-Create-Pottery
    ◆Waterlogue(水彩画風の画像処理をするアプリ)http://www.tinrocket.com/apps/waterlogue/
    ◆Pixlr mobile(レタッチ&画像加工アプリ)https://pixlr.com/mobile
    Potteryを使うと以下のような画像を数分で作ることができます。もちろん形や大きさは自分のイメージ通りに指先だけで作れます。リアルに見える壺ですね。
    ◆「追憶。」を作るもとにした3DイメージをPotteryで作る。
    この画像をいったん保存しておき、それをWaterlogueに掛けると水彩画風になります。Pixlrでそれを正方形に切り取って自分のサインを入れると一枚の作品ができあがり!
    20分足らずという短い時間で、陶芸と水彩画を楽しめるなんてすごい時代ですね。
    結城浩のインスタグラムには他にもいろんな「作品」があるので、ぜひご覧下さい。
    ◆結城浩のインスタグラムhttps://www.instagram.com/hyuki0000/

    * * *

    Dynalistの話。
    結城は、アウトライナーとして無料のDynalistを愛用しています。以前はWorkFlowyを使っていたのですが、無料で作れる上限に達してしまったのでDynalistに移行してしまいました。
    ◆Dynalisthttps://dynalist.io
    ずっとWeb版を使っていたのですが、あるときふと「Dynalistにアプリケーション版はあるのかな」と思いつきました。結城は「ふと」思いつくことがしばしばあります。
    MacのApp Storeでちょっと探して見つからなかったので、TwitterでDynalist公式アカウントにダウンロード場所を教えてもらっちゃいました。考えてみれば公式Webサイトに行けばよかったんですね。
    ◆公式アカウントに聞いちゃうの図
    ◆Get Dynalist for macOShttps://dynalist.io/download
    Dynalistのように「さっと使い始めたいツール」はアプリになっていると便利です。というのは、HotKeyのようなショートカット設定ツールを使って、キーボードワンタッチで起動することができるからです。Web版でもURLをもとにしてキーボードワンタッチで起動させることはできますが、タブが開いて二重起動になってしまうことが多いんですよね。
    Dynalistで何をやっているかというと「いろんなこと」です。本の章立てに使うこともあれば、思いついたアイディアメモに使うこともあれば、Web連載の下書きをすることもあります。
    いま現在のDynalistのスクリーンショットを以下に示します。非公開部分はモザイクが掛かっていますが、雰囲気はわかると思います。
    ◆Web連載準備中(Dynalistのスクリーンショット)
    画面の左側にあるのは現在のドキュメント一覧です。Web連載の下書きが何点かと、書籍の章立てが何点か、あとは企画趣旨書や打ち合わせ準備資料などが並んでいます。
    画面の右側は現在選択されている「第243回のWeb連載」のアウトラインが書かれています。最初からアウトラインになっているわけではなく、数学ガールの登場人物の対話を箇条書きにしていきながら、少しずつ舞台のようすが結城自身に見えてくるので、そのつど加筆していくのです。
    企画趣旨書や打ち合わせ資料のような文書の場合には、Dynalistのアウトラインをそのままエクスポートして使います。たとえば編集者にメールで送ったり、プリントアウトして打ち合わせで使ったりするのです。
    でも、Web連載の執筆の場合には、Dynalistのアウトラインをごっそりとエクスポートしてテキストを作るわけではありません。何回か試したのですが、あまりそういう「機械的」な作り方はなじまないようです。 Dynalistで作ったアウトラインをちらちらと眺めながら別途新規にVimでLaTeXファイルを編集していくことが多いですね。
    思うに、結城にとってテキストをキーボードでタイプするというのは「声に出して話す」ことにかなり近いようです。ですから、対話形式の文章であるWeb連載の場合、タイプするという行為を通して話が進んでいくのでしょう。どこかに作ったテキストをポンとコピーしてしまうと、そこから話を続けるのが難しい。いったんタイプし直すとスムーズに話が流れる。なかなかめんどうな話です。
    ツールにエクスポートの機能があるからといって無理に使う必要はありません。あくまで自分がやりたいことをやりたいように進めるための補助をしてくれるのがツールなのですから。
    以上、Dynalistについてのお話でした。
    ◆Dynalisthttps://dynalist.io

    * * *

    数学を学ぶ話。
    結城のところにはよく「大学数学をどのように学んだらいいですか」という質問が来ます。もちろん結城は自分に理解できる限りのお答えをしますが、数学科出身でもないし、数学者でもないので自ずから限界もあります。
    そんな中、可換環論botさん( @CommAlg_Bot )が「大学数学に憧憬を抱いている高校生」の質問に答えているツイートを見かけました。この答えの冒頭に書かれていた「数学はお好きですか?」と「数学を学びたいですか?」という二つの質問に心動かされたのでリンクにてご紹介します。
    ◆可換環論botさんのツイートhttps://twitter.com/i/web/status/1061264209722261504
    質問者は大学数学の習得方法を尋ねているのですが、回答者は習得方法に答える前に「数学はお好きですか?」と「数学を学びたいですか?」という逆質問をしています。結城はこの点はとても大切だなと強く共感しました。
    「この2つがともにイエスなら、学びようはあるものです」と続く回答は、一見精神論のようにも見えますが、実際にはたいへんプラクティカルな答えだなとも思いました。
    「大学数学を学ぶこと」についての回答全体については、上記のリンクからたどってください。

    * * *

    note(ノート)の話。
    結城のnote(ノート)のフォロワーさんが二万二千人を越えていました。ここしばらくフォロワー数をチェックしていなかったので、そんなに増えていたなんてびっくりです! フォローしてくださる方々に感謝です。
    ◆結城浩のnote(ノート)https://mm.hyuki.net
    Twitterでのフォロワーさんが47000人であることを考えると、noteでのフォロワーさんが22000人という凄みがよくわかると思います。
    少し調べてみたところ4年前は約2000人でした。それを考えると22000人というのはすごい増加ですね。きっとこの背後にはnote自体のユーザ数が大きく増えているという要因もあるのでしょう。
    ユーザの伸びを考えると「結城メルマガ」をnoteでもホスティングするようにしたのは、なかなか良いチョイスだったとわれながら思います。読者さんにとっては選択肢を増やすという意味で、私にとっては購読者さんを増やすという意味で良いチョイスでした。
    結城浩のnote(ノート)は、当初はnote.muドメインでやっていましたが、いまは結城が持っているmm.hyuki.netドメインで運営しています。mm.hyuki.netをnoteにホスティングしてもらっている形ですね。これはnoteの販売機能を自分のドメイン下で運営しておくと何かと便利かもしれないなと思ったからです。
    でも、まあ、現在のところ販売機能として使っているのは「結城メルマガ」と「結城浩ミニ文庫」くらいですけれど。
    ◆結城浩ミニ文庫http://www.hyuki.com/mini/
    将来的にnote(ノート)がSuzuriやBOOTHのような物販を扱わないかなあと期待しています。

    * * *

    アフリカのことわざの話。
    あるときこんなツイートを見かけました。
    「アフリカのことわざ」さん(@africakotowaza)のツイートです。
    ◆「月の動きはゆっくりだけど、かならず町をよこぎります」 ガーナ(アシャンティ人)https://twitter.com/africakotowaza/status/1060088973261860864
    「月の動きはゆっくりだけど、かならず町をよこぎります」 というのは短い一文ですが「はっ」とさせられました。納得感とその情景とが相まって、なんともいえない味わいがあります。こういうの、いいですね。
    『アフリカのことわざ』は本になっているようですよ。
    ◆『アフリカのことわざ』https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4809415937/hyuki-22/

    * * *

    ではそんなところで、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    「良問」とは何か - 学ぶときの心がけ
    読み飛ばしても大丈夫という自信を身につけたい - 学ぶときの心がけ
    「壁」を越えて作品を作り続けよう - 本を書く心がけ
    「良問」とは何か - 学ぶときの心がけ
    質問
    現在、高校生で受験勉強中です。予備校や参考書(問題集)で「良問」と書いてることがありますが「良問」とはどのような問題のことをいうのでしょうか。
    そんなこと気にしている場合じゃないのはわかっていますが、どうしても気になってしまい、誰に聞けばいいのかわからなくて……
    回答
    「良問」とは「この一問から大切なことが学べるので、しっかりと時間を掛けて取り組む価値がある問題」というものではないでしょうか。
    問題に取り組むのは時間が掛かります。せっかく時間を掛けるのだから、得るものが多かったり、よいものを得られる問題にチャレンジしたいですよね。「良問」という名称は「取り組む価値がある問題」に付けられるものだと思いますよ。
    逆に「良問じゃない問題」を想像してみます。計算がややこしいだけの問題や、思いつきで作られたような問題や、特殊すぎて応用が利かない問題などは「良問」とはいわれないでしょうね。
    言い換えるなら「良問」と言われる問題からは得るものがあるので、解いたあとの振り返りが大事でしょう。問題を解いて、解答を確かめておしまい!じゃなくて「この問題から結局わたしは何を得たのかな」と考えるということです。
    基本問題や例題からは得られない応用例となっているのか、公式の意外な使い方を示しているのか、より難しい問題に向かうための技法を解説しているのか……具体的にはわかりませんが「何か」大事なものが語られているはずです。
    別の方から「結城先生がこれまで出会った中での最良の問題はなんですか」という質問もいただきましたので、それにも回答しておきます。
    受験勉強とは直接関係がないのですが、結城が出会った最高の「良問」というと、中学校に入学して算数が数学になった最初の授業で出会った問題ですね。それは、最初の授業のしょっぱなに先生が発した「1とは何ですか」という問いです。
    いま気付いたことがあります。先日刊行した『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の冒頭でユーリが「ねー、お兄ちゃん。ゼロって何?」と尋ねます。もしかしたらこの背後には、いまお話しした「1とは何ですか」という問いの存在があったのかもしれません!
    受験勉強お疲れさまです。風邪など引かないようにがんばってくださいね。
     
  • Vol.326 結城浩/数学に熱中するきっかけ/タイムマネジメント/学ぶときの心がけ/本を書く心がけ/

    2018-06-26 07:00  
    216pt
    Vol.326 結城浩/数学に熱中するきっかけ/タイムマネジメント/学ぶときの心がけ/本を書く心がけ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年6月26日 Vol.326
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    新刊のアナウンスです!
    今年の秋に『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』が刊行されます。
    アマゾンでは早くも予約が始まっていますので、ぜひどうぞ!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://bit.ly/hyuki-matrix
    目次
    数学に熱中したきっかけ
    大学一年生のタイムマネジメント
    専門外の人に専門的なことを説明するとき
    「いつも明るい人」に不信感を抱いてしまう
    証明の細部は読者の練習問題とする - 学ぶときの心がけ
    堅固な「理解」を構築するコツ - 学ぶときの心がけ
    「みんなが読みたいもの」と「自分が書きたいもの」をすりあわせる方法 - 本を書く心がけ
    数学に熱中したきっかけ
    質問
    結城先生が数学に熱中したきっかけってありますか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    そうですねえ、小中学生のころに講談社の「ブルーバックス」のような本を読んだ経験は、数学に興味を持つきっかけになっていると思います。いわゆる一般向けの科学啓蒙書でしょうか。
    ところで、いまにして思えば、小中学生のころに読んだ啓蒙書の内容、私は「ほとんど理解してなかった」といえます。ブルーバックスはたくさん買いましたが、理解したのはほんの一部分だけだったんじゃないかなあ。
    理解してはいませんでしたが、読んで「こりゃおもしろい話だ」と感じることはたくさんありました。
    トポロジーの本を読んで、ぐにゃぐにゃした変な形を楽しみました。自分で大きな模造紙にトーラスを描いて遊んだのを覚えています。相対性理論ではローレンツ収縮の話や、ウラシマ効果の話など。その他「ブルーバックス」以外にも、カタストロフィ理論やフラクタル幾何学などなど。さっぱり「理解」はできてませんでしたが「ここにはおもしろい話があるぞ!」という体験はたくさんありました。
    ふと気がつくと自分自身がそのような一般向けの啓蒙書を書く立場になっていることに気付きました。子供のころに私が「ブルーバックス」を楽しんだように、現代の中高生は「数学ガール」を楽しんでくれています。
    ですから、私の書いた「数学ガール」を読んだ小中学生から「数式はさっぱりわからなかったけど、とってもおもしろい話でした!」という感想が来ると「わかる、わかるよ、その気持ち!」と言いたくなります。
    それから、ときどき読者さんから「私は『数学ガール』に興味があるんですけれど、読んで理解できるかどうか心配です(震え声)」というメッセージをいただくこともあります。そんなときには、自分の経験を踏まえつつ「無理に読んで嫌いになられても困りますけど、でも実は、理解できるかどうかというのは、それほど大きなことじゃないんですよ」とお返事したくなります。
    話がちょっとそれちゃいましたけれど、そんなところです。本との出会いは大事ですね。
    ご質問ありがとうございました。
    大学一年生のタイムマネジメント
    質問
    「大学は自由なところだ」という言葉を信じて「大学に入ったら、自分でこんなことを勉強するんだ」ということをモチベーションに入学しました。でも現在、与えられた課題だけで毎日が終わってしまい、自分の勉強したいことにはまったく手をつけられず、悲しく過ごしています。
    こつこつ課題は進めているつもりなのですが「私の作業効率が悪すぎるのか」と凹むこともあります。
    どうしたら、時間をうまく使っていけるでしょうか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    自分で学ぼうという姿勢はすばらしいですね。ぜひその意気を忘れないでくださいね。
    課題は次々に与えられるでしょうから、それをこなすのに時間が掛かると、確かに凹みたくなるかもしれません。
    あなたは「作業効率が悪すぎるのか」と考えていらっしゃるようですが、解決方法を探るためには、まずはデータ収集が必要です。データ収集をし、解決方法を事実に基づいて考える必要があるでしょう。
    データ収集というのは、つまり自分の時間の使い方の調査です。「自分は毎日、何にどれだけ時間を使っているのか」という記録を付けるということ。どんな形でもいいですから、一週間、二週間、一カ月記録を付けてみましょう。まずはそこからですね。
    自分が使える時間(いわば、可処分時間)がどれだけあるのかを考えます。もちろん、勉強だけしているわけにはいきませんから、他の活動をよく考えて自分の時間を何にどれだけ割り振るかを考える必要があります。
    ところで、大学からの課題とは別に、あなたには「自分で勉強したいこと」があるのですよね。その時間は半ば強制的に確保した方がいいと思いますよ。たとえ長時間が無理でも、わずかな時間でいいのです。大事なのはコンスタントに確保すること。毎日、毎週、毎月。どういうペースがいいかはわかりませんが、自分の学びを育てていくことはとても大事です。
    大学で過ごせる時間というのは長いようで短いもの。あっというまに卒業になってしまうでしょう。もちろん大学の課題は大事ですが「自分の外からやってくるもの」だけではなく「自分の内から出てくるもの」にも時間を割り振るのは大事ですよ。
    まとめますと、こんなことに注目してみてはいかがでしょう。
    自分の時間の使い方を調査する
    可処分時間を確認し、活動へ時間を割り振る
    自分で勉強したいことのためにはコンスタントに時間を割り振る
    あなたの学びが豊かな実を結びますように!
    ご質問ありがとうございました。
    専門外の人に専門的なことを説明するとき
    質問
    私は、複雑系科学を専攻しています。
    自分の専門分野は、数物系の大学院生やハイレベルな学部生を除くと世間的な認知度が非常に低く、理解してもらうために毎回苦労します。
    専門外の人に、自分の専門について説明するときに心がけていることはありますか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    「適切な具体例」を見つけるように心がけています。
    ある分野について専門外の人は、当然のことながら専門的な知識や考え方を持ちません。でも、何も知らないわけではありません。ですから、話を聞いてくださる人が知っていることに関連した具体例を使うようにするのはいいことです。
    いくら探してもそのような具体例がない場合には、比喩のような形でもいいです。話を聞く人が頭の中で類推できるような具体例を使って話すのがいいですね。
    よく練った具体例を見つけるのは一朝一夕にはできないことですから、普段から意識して探し、ストックしておくのがいいと思います。
    また「常識に反する知識」を話すと興味を持ってもらえる可能性が高くなります。
    「常識的に考えると、ついこんなふうに考えがちですけど、実はそうじゃないんですよ」という話をすると「へえ!どうしてですか?」という反応を引き出すことができるからです。いわゆる「食いつきがよくなる」ということですね。
    「常識に反する知識」までいかなくても、おもしろい法則、意外な規則、一見すると無関係に見えるような事柄に存在する関係などを伝えると、興味深く聞いてくれる可能性が高くなります。
    専門性が高いものを、そのままの粒度で伝えようとするのは無理があります。ですから、何か一つのことをよく練った具体例で話し、関連することはさらっと流すようにメリハリを効かせるのも有効です。専門家はそのことを四六時中考えているので、たくさん話したくなりますが、非専門家にとっては新しい情報が多すぎて処理しきれない状況になりがちですから。
    その一方で、聞く相手の熱意によりますが、非専門家であっても話を単純化し過ぎない方がいいこともよくあります。話を単純化し過ぎると、かえって興味を失う結果になることもあるからです。
    専門家が非専門家に対して適切に説明する技術というのは、これからの時代で非常に重要だと思います。がんばってくださいね。
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.325 結城浩/再発見の発想法/「ひとりSlack」で知的生活のパワーアップ(2)/角の立たない伝え方/書いたものへの攻撃/

    2018-06-19 07:00  
    216pt
    Vol.325 結城浩/再発見の発想法/「ひとりSlack」で知的生活のパワーアップ(2)/角の立たない伝え方/書いたものへの攻撃/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年6月19日 Vol.325
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    月曜日(2018年6月18日)の朝、大阪方面で震度6弱というたいへん大きな地震がありました。
    被害に遭われた方へ、心からお見舞いを申し上げます。
    目次
    「自分の得意なもの」を判断する基準
    角の立たない伝え方 - 教えるときの心がけ
    自分が書いたものに対する攻撃への対処 - 本を書く心がけ
    エクスポート/インポート - 再発見の発想法
    「ひとりSlack」で知的生活のパワーアップ(2) - 仕事の心がけ
    「自分の得意なもの」を判断する基準
    質問
    学部三年の者です。
    結城さんは「自分の得意なもの」を判断する基準は何だとお考えですか。
    そろそろインターンを含む就活や院進を意識して動かないといけないのですが、将来何をしたいのか決まりません。
    「何もしたくない」のではなく「やりたいことや興味関心のある分野が多すぎて決められない」という状態です。
    そこで「自分の得意なもの」 を基準に考えてみようとしたところ、今度は自分の得意なこととは一体何なのかという問題にぶつかり先に進めずといった状況です。
    これまで「自分の得意なもの」は何かを探るために、数学、生物、法律、経済、プログラミング、哲学というさまざまな分野に手を出してきましたが、どれも自分では得意だと確信はできません。
    ぜひお考えをお聞かせください。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    まず、「好き・嫌い」が自分で判断するものなのに対し、「得意・不得意」は他人から判断されるものじゃないでしょうか。
    この活動は好き、この分野は嫌い、というのは自分の気持ちですが、得意・不得意というのは他人の判断や評価も大事になるという意味です。
    その意味では、普段からさまざまな種類のアウトプットを出し、他者から何らかの評価を受けておくというのは、得意・不得意を知る上で大切なことだといえると思います。これまであなたは、自分の活動で第三者から評価を受けたことはあるでしょうか。
    わたくしごとで恐縮ですが、結城は周りの人から「説明がうまい」「わかりやすい文章を書くのがうまい」という評価をいただくことがよくあります(感謝)。なので、それが得意なのだなと認識している部分があります。自分自身ではなかなか判断はできないものです。
    ところで、あなたのように、自分のやりたい分野がいっぱいあって決められないというのは結構なことです。多くの人が「やりたいこと」を見つけられないでいます。
    その一方で「どの分野が得意か」に対する自己理解ではなく、もう少し抽象度を上げた自己理解が必要なのではないかとも感じました。たくさん関心があるように見えても、そのコアのところ、核になる部分に「共通の何か」はないでしょうか。
    人は変化するものです。これが不得意だと考えていたのに実際にやってみたら得意だった。あるいは、これは嫌いだと考えていたけれど実際にやってみたら意外に好きだったということもあります。少なくとも表面的な活動に関しては変化する場合があります。でも自分のコアの部分の価値観や興味・関心はあまり変化しないように思います。
    ということで「自分の得意なもの」を判断するときには、
    自分の考えだけではなく、他者からの評価はどうか
    関心のある具体的な分野だけではなく、抽象度を上げたときの「共通の何か」はないか
    を考えてみてはどうでしょうか。この二つをまとめるなら「自分自身を多面的に見る」ということになるわけですけれど。
    あなたが、よい進路を見つけることができますように。
    ご質問ありがとうございました。
    角の立たない伝え方 - 教えるときの心がけ
    質問
    「自分の考えていることを伝えたい」と思っています。
    人と話しているときに「この人とは考えが違うな」ということが多いです。
    そんなとき、うまく自分の考えを相手に伝えたいのですが、伝える時点で相手に反対しているようになってしまい、角が立ってしまいます。
    しかし、結城先生の文章にはそのような印象を感じません。
    先生がご自分の考えを相手に伝えるとき、角が立たないようにされているのでしょうか…
    もしあれば、どのような工夫をなさっているか、教えてほしいです。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    以下はあくまで自分の「心がけ」とご理解ください(つまり、実際にできてるかどうか怪しい場合もよくあるという意味です)。
    結城は「角が立たないようにしている」というよりも「相手を動かそうとしていない」ように思います。
    多くの人は、自分の考えや行動について他人からあれこれ指図されるのを嫌います。「あれしろ、これしろ、こう考えろ」なんて言われたくないのが多くの人の気持ちです。そうですよね。ふだんと違うことを強制されるのは好みません。
    他人からあれこれ指図されたくはありませんが、でもその一方で、自分とは違う人の新しい話やおもしろい話を聞きたいという気持ちも同時に持っているものです。つまりふだんと違うことを求める気持ちもあります。
    ふだんと違うことを強制されたくはないが、ふだんと違うことを求める気持ちもある。そのように、ちょっぴり矛盾しているのが多くの人の状態ではないでしょうか。
    さて、自分の考えを相手に伝えようとするとき、少なからぬ人が「相手に伝える」ではなく「相手を動かす」ことをねらってしまいます。つまり新しい情報を与えて相手が自分から動くことを期待するのではなく、相手を直接的に自分の言葉で動かそうとしてしまうのです。それをやってしまうと相手は自分の身を防衛するような気持ちになってしまいますね。
    書き言葉でも話し言葉でも同じですが、言葉は人の心を浮き彫りにしてしまいます。自分の考えを「相手に伝えたい」だけと思っているつもりでも、心の中に「あわよくば、自分の考えを認めさせたい。相手の考えを変えさせたい」という気持ちを持っていると、それは相手に伝わります。
    人は、誰かから何かを言われて考えを変えることは滅多にありません。たいていは自分で納得して初めて考えを変えるものです。
    また、考えを変えるよりもずっと以前の話として、多くの人は、他人の話を上の空で聞いています。多くの人は、大事だと思う人の話や、自分が「これは重要だ」と感じた話にしか耳を傾けないものです。
    そしてまた多くの人は「他人の話を聞くこと」よりも「自分の話を他人に聞いてもらうこと」を求める場合が多いものです。自分が伝えたいことを受け入れてくれる人を求めるのが人情です。ちょうど、あなたと同じように(そして私と同じように)。
    そのように人間というものを考えてみるならば、自分の考えていることを相手に伝えるには三つのことが大切だとわかります。
    相手の行動を変えようと思わないこと。
    相手に信頼してもらうこと。
    先に、相手の話を聞くこと。
    この三点は、とても逆説的です。
    あわよくば相手の行動を変えたいなら、そんなことは思うな。
    信頼してもらうために自分の考えを伝えたいなら、まず信頼してもらえ。
    相手に伝えたいなら、まず聞け。
    まるで、自分のやりたいことと真逆なことが要求されているようですけれど、よく考えれば当たり前のことです。「自分がしてほしいことを相手にする」こと、そして「自分がされたら嫌なことは相手に対してもしない」こと。それはコミュニケーションの黄金律ですから。それを守るのは大事ですね。
    あなたの質問への直接的な回答ではありませんが、以上です。
    ご質問ありがとうございました!
     
  • Vol.322 結城浩/「ひとりSlack」を活用しよう/文章力/想像力を膨らませる/頭が良い人に嫉妬/企画書をまとめる/

    2018-05-29 07:00  
    216pt
    Vol.322 結城浩/「ひとりSlack」を活用しよう/文章力/想像力を膨らませる/頭が良い人に嫉妬/企画書をまとめる/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年5月29日 Vol.322
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    関東ではあちこちで紫陽花(あじさい)の花を見かけるようになりました。
    「あ、こんなところに紫陽花が咲いてる」
    道を歩いていてそんなことに気がつきます。
    私はそれと同時に「桜」のことを思い出しました。
    一年間、気に留めていないけれど、春になると「桜」のことを思う。
    一年間、気に留めていないけれど、梅雨が近づくと「紫陽花」のことを思う。
    最近、あなたが思っていることは何ですか。
    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    目次
    はじめに
    目次
    どうしたら文章力がつくのか - 本を書く心がけ
    サービスを作るときに想像力を膨らませるコツ - 仕事の心がけ
    頭が良い人にすぐ嫉妬してしまう - Q&A
    「ひとりSlack」で知的生活のパワーアップ - 仕事の心がけ
    企画書をまとめながら考えていたこと - 仕事の心がけ
    おわりに
    どうしたら文章力がつくのか - 本を書く心がけ
    質問
    『数学ガール』とても楽しませて貰っております。
    ところで、数学の内容はともかく私が気になるのは先生の文章力です。
    理系の私は文章力が皆無なのですが、実は本を書いてみたいな〜なんて思うこともあります。
    どうしたら文章力がつくのでしょうか。
    ちなみに、読書についてはかなりの量をこなしてきました。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    文章力をつけるというのは大きな話ですから、簡単にお答えしますね。
    (1)文章をコンスタントに書きましょう。
    (2)そして、書いたものを誰かに読んでもらいましょう。
    この二点です。
    素朴な方法として、決まった分量でまとまった文章を定期的に書き、自分で何度も読み返す。つまり(1)だけでも悪い方法ではありません。誰かに読んでもらわなくても書く練習にはなります。でも、「これでいいや」という思い込みが強い場合、自力で文章を改善することは難しくなります。ですから、忌憚ない意見を言ってくれる人に文章を読んでもらうという(2)も合わせることをお勧めします。
    ブログなどで不特定多数の人に読んでもらうことも悪くありませんけれど、文章力をつけたいなら、書きっぱなしにしない方がいいですね。一つ一つの文章をしっかり読み返し、少しでも良くしたいと考える気持ちを持った方がいいです。ただし、それを厳しくしすぎると継続できませんから、自分で調整することも必要になります。結城が好きな方法は、書いたらまずWebで公開しちゃう!……そして公開したものを何度も読み返して、少しずつ直していく。これだと継続できますし、何度も読み返すことにもなります。
    ところであなたは「他人に読んでもらう文章」を書いた経験はありますか。もしも他人に読んでもらった経験が少ないとすると、最初のうちはかなり理想と現実の差に苦しむかもしれません。率直にいうならば「適切な言葉が出てこない!」や「言いたいことがぜんぜん表せない!」に苦しむかもしれないということです。でもそれは誰しも通るところなので、がんばって乗り切ってください。そのためにも誰かに読んでもらうことが有効です。
    美味しいフランス料理を味わえることと、美味しいフランス料理を作れることとは別の技能ですから、たくさんの読書をしたからといって文章がすぐにうまく書けるとは限りません。しかしながら、文章の良し悪しを判断できる力を持っているのであれば、それを自分の文章に適用することで文章力を向上させることができるかもしれません。
    質問文で「理系の私は」という箇所が少し気になりました。「理系である」ことは「文章力がない」ことの免罪符にはなりません。むしろ現代社会では、いわゆる理系の人こそ、正確で読みやすい文章を書く力が求められているのではないでしょうか。想定した読者に対して、複雑で誤解されがちな事柄を解きほぐし、正確で読みやすい文章によって伝える力は社会にとって重要といえるでしょう。
    なお、私の『数学文章作法』では説明文を書くときの基本的なことが載っていますので、ご参考に。以下のサイトには、目次から第一章の終わりまで全文読める《試し読みPDF》が無料でダウンロードできるページへのリンクがあります。
    ◆ 『数学文章作法』http://www.hyuki.com/mw/
    合わせて、こちらのページからたどれる「文章を書く心がけ」もお読みください。
    ◆結城浩の心がけhttp://www.hyuki.com/writing/
    これまでの「結城メルマガ」で配信したもののうち「文章を書く心がけ」に関わる記事はこちらにピックアップしてあります。
    ◆「文章を書く心がけ」マガジンhttps://mm.hyuki.net/m/m427a78a1adf7
    こちらには「本を書く心がけ」があります。
    ◆「本を書く心がけ」マガジンhttps://mm.hyuki.net/m/m715a102cda18
    あなたが「本を書きたい」という気持ちを持つことは本当に素晴らしいことです。良い本はいつの時代にも求められており、真に価値のある仕事の一つです。それは未来を作る仕事の一つともいえます。
    がんばってください。応援しています!
    サービスを作るときに想像力を膨らませるコツ - 仕事の心がけ
    質問
    僕は将来、自分でなにかサービスを作って生きていきたいと考えています。
    いまよりもずっと無知だったころは「こんな壮大なものを作りたい!天才の僕ならできるやろ!!」と考えていたこともありました。
    しかし、プログラミングを勉強し、強い人を目の当たりにすると「こんな壮大なものを思いついたけど、あの天下のGoogleさんでも実現できていないなら僕には無理だ」と思うようになり、しまいには、壮大なものを思いつく「想像力」自体がなくなってきました。
    「誰もやったことのないことをしてみたい気持ち」なら今でもあります。でも、サービスを作るに当たって「想像力」がないのはとても問題だと思っています。
    想像力を膨らますコツはあるのでしょうか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    想像力を膨らませるには、意識して「制約を取り払う」ことが必要です。制約というのは「○○でなければならない」という縛りのことです。
    想像力が膨らまない原因の一つは「既存の技術でできることから発想をスタートさせてしまう」ことにあります。既存の技術でできることから始めると、なかなか話は広がりません。広がったとしても誰でも思いつきそうなことや、どこかで見たようなものばかりが出てきがちです。
    想像力を膨らませるためには「既存の技術で実現できなくてはならない」というところ、つまり制約をいったんストップさせる必要があります。
    あなたの質問の中でも「自分が壮大なサービスを作る」というところに制約がほの見えます。つまり、「自分が作らなくてはならない」「壮大でなくてはならない」「サービスでなくてはならない」「作らなくてはならない」という制約のことです。「○○でなければならない」が見え隠れしますね。想像力を膨らませるときには、そういうものをいったん全部とっぱらって考えた方がいいのではないでしょうか。
    さて。
    そのように言っておいて変な話ですが、制約をとっぱらって考えるだけでも困ります。想像力を膨らませるだけでは、何も始まりません。想像力をできるだけ膨らませた。どんなことができたらいいかという話をできるだけ広げた。その上で「さて」と真顔に戻って、いま考えてきたことの中で本質的にすごいところは何だろうかと振り返るのです。いま考えてきたことを、既存(+α)の技術で実現できる範囲はどの程度だろうか。そのように見極める力が大事になります。
    制約を取り払って想像力を膨らませ、真顔に戻って実現方法を考えましょう。
    あなたの活動が世界を豊かな喜びで満たすことを期待しています。がんばってくださいね!
     
  • Vol.321 結城浩/チームで仕事/大学院へ進む/いい編集者とは/わかりやすく教える/愛し合うために/

    2018-05-22 07:00  
    216pt
    Vol.321 結城浩/チームで仕事/大学院へ進む/いい編集者とは/わかりやすく教える/愛し合うために/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年5月22日 Vol.321
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    先日、こんなツイートを見かけました。
    ◆龍谷ミュージアム前館長のつぶやきhttps://twitter.com/tirisawa/status/995199021412057088

    学生諸君には「学問を愛する人」になってもらいたいと思っています。社会人になっても「学問のアマチュア」でい続けてほしいのです。「アマチュア」の語源はラテン語のアマートル。「愛する者」という意味です。学問は人生に豊さをもたらし、謙虚さを身につけさせます。彩りある人生を

    結城は「アマチュア」が「愛するもの」という意味だというのは知らなかったので、ネットにあるオックスフォードの辞書で「amateur」という単語の語源(Origin)を調べてみました。
    ◆amateur - English Oxford Living Dictionarieshttps://en.oxforddictionaries.com/definition/amateur

    Origin


    Late 18th century: from French, from Italian amatore, from Latin amator ‘lover’, from amare ‘to love’.

    ほんとうでした。「アマチュア」という言葉の語源は「愛する者(lover)」なんですね。
    「愛する者」に関連して、結城は「哲学」のことを思い出しました。「哲学」は英語でフィロソフィー(philosophy)といいますが、これは確か「知恵を愛すること」だったはずです。先ほどと同様にオックスフォードの辞書で語源を調べてみます。
    ◆philosophyhttps://en.oxforddictionaries.com/definition/philosophy

    Origin


    Middle English: from Old French philosophie, via Latin from Greek philosophia ‘love of wisdom’.

    確かに「知恵を愛すること(love of wistom)」でした。
    ちなみに、フィラデルフィア(Philadelphia)は「兄弟愛(brotherly love)」で、フィルハーモニック(philharmonic)は「ハーモニーを愛すること(loving harmony)」ですね!
    あなたは「何を愛する人」ですか。
    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    目次
    はじめに
    目次
    チームで仕事をする上で大切なこと - 仕事の心がけ
    障害者に配慮した環境の過ごしやすさ
    「好き」だけを理由に院進していいか - 学ぶときの心がけ
    いい編集者とは - 本を書く心がけ
    どうしても院試準備以外の数学に耽溺してしまう - 学ぶときの心がけ
    わからない子にわかりやすく教える方法 - 教えるときの心がけ
    自分の文章を読んで嫌悪感を抱いてしまう - 文章を書く心がけ
    互いに愛し合うために - コミュニケーションの心がけ
    おわりに
    チームで仕事をする上で大切なこと - 仕事の心がけ
    質問
    チームで一緒に仕事をする上で「大切なこと」は何でしょうか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    チームで一緒に仕事をする上で大切なことは大きく二点あります。
    (1)チームのゴールを理解すること。
    (2)チームメンバーの役割と多様性を理解すること。
    この二点です。
    「チームのゴールを理解すること」というのは、言い換えるなら「チームが存在する意味を考えること」ともいえるでしょう。
    チームとして仕事をするということは、そのチームが持っているゴール(目的、目標、存在意義、役割、達成すべきこと……)が必ずあります。それを理解しなかったら、チームで仕事をするのは困難です。
    「チームメンバーの役割と多様性を理解すること」というのは、言い換えるなら「チームメンバーが存在する意味を考えること」ともいえるでしょう。
    チームメンバーが協力して仕事をするためには、チームメンバーが互いに互いの役割を理解している必要があります。それが必要であることは、サッカーをやっているときのことを想像すればわかりますね。誰がフォワードで、誰がゴールキーパーであるかわかっていないサッカーチームが勝てるはずがありません。役割を理解するというのは多様性を理解することにも通じます。いくら「チーム一丸となってがんばる」といっても、チーム全員がボールを追いかけていてはだめです。
    「チームのゴールを理解すること」と「チームメンバーの役割と多様性を理解すること」という二点を挙げました。この二点は「チーム」というものが何であるかをよく表していると思います。
    (1)は、チームが一つの存在であることを表現しています。
    (2)は、チームが一人で成り立っている存在ではないことを表現しています。
    一人で成り立っているのではない存在なのに、あたかも一つの存在であるかのように仕事をする。それがチームということですね。
    (1)と(2)の両方を満たすとき、チームは初めて個人を超えるのだと思います。
    あなたのチームはいかがでしょうか。
    ご質問ありがとうございました。
    障害者に配慮した環境の過ごしやすさ
    障害を持っている人やお年寄りに配慮している環境は、それ以外の人にも過ごしやすくなることが多いと感じます。
    以前、私が関わっていたとある会社で、聴覚がとても弱い人が入社してきたことがあります。その方は補聴器を付けてはいるのですが、それでもリアルタイムでの聞き取りは難しかったようです。
    会社の中で報告会を行うとき、口頭だけの報告では、聴覚が弱いその人に情報が伝わりにくいので、スライドや配布資料を充実させることになりました。聴覚情報だけではなく視覚情報を提示してわかりやすくしたのです。また、口頭での説明も要点を整理して、一つ一つの言葉を明確に発音し、あまり早口の発表にならないように心がけることとなりました。
    その結果、聴覚が弱いその人だけではなく、関係者全員の理解度が増したのです。障害を持っている人に適切な配慮をすることで、それ以外の人にメリットがあったという一例ですね。
    新幹線に「多目的室」という部屋があるのを知っていますか。「多目的室」というのは身体が不自由な方が予約して利用できる個室です。昨年、車いすの義母が移動する際にもこの多目的室を利用してたいへん助かりました。ところでこの多目的室は、身体が不自由な方でなくても、車掌さんにいえば気分が悪いときに横になったり、授乳のために利用したりできるのです。
    私は特に障害を負っているわけではありませんが、障害者に配慮した環境によって助けられたことをいくつか思い出します。たとえば、仕事の帰りに身も世もなく疲れていて、電車の中でもう立っていられないときに空いている「シルバーシート」で一休みできたことがあります。また、両手に荷物がいっぱいになって歩きにくいときに「自動ドア」や「段差が少ないバス(ノンステップバス)」をたいへんありがたいと思います。
    疲れているときや両手に荷物がいっぱいのときというのは、いわば一時的に身体が不自由な状態になっているわけですね。健康な人であれ誰であれ、そのような不自由な状態になることはあるはずです。
    障害を持っている人に配慮した環境は、結果的に社会全体を過ごしやすくするのではないかと思っています。
    「好き」だけを理由に院進していいか - 学ぶときの心がけ
    質問
    物理を勉強している学部生です。
    私は特別優秀でもなく、物理を仕事にする道は険しいと思うのですが、単純に物理が好きという理由から大学院にも進みたいと考えています。
    私のような人間が就職せずに勉強を続ける意義をどうお考えでしょうか。
    親が納得してくれるよう、「好きだから」以外に院進の理由を探していますがあまり思いつきません。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    私は「学べるチャンスがあるなら、そのチャンスを生かして学ぶのがいい」と基本的に思います。「好きだから」というのは学ぶ理由として悪いとはまったく思いません。本来、好きだから学ぶものです。
    ただし、その「学べるチャンス」の中には経済的な要因も多く含まれています。学んでいるあいだの経済はどうするのか、またそのあとの身の振り方をどうするのか、そのような心配は尽きません。
    あなたとあなたの親の関係について私にはわかりませんので、外した答えかもしれませんが、「親の納得」というのは大学院への進学そのものというよりも、そこから先も含めたあなたの人生についての心配に関係していると想像します。
    「院進の理由」を見つけて親を納得させることも大事ですが、「自分は今後どのように生きていきたいか」について考え、それを親に伝えることが大事ではないでしょうか。「物理が好きだから大学院で学びたい」まではいいのですが「そこから先はまったく考えていない」となると、親としては「それでいいのか? 大丈夫なのか?」と言いたくなると思います。
    たとえ、そこから先はわからないし決められないとしても「どのようなパターンが可能性としてありうるか」くらいは考えたり調べたりしてはどうでしょう。精密な答えは提示できないとしても、数年後に結果としてウソになったとしてもいいのです。自分の将来について、第0近似も第1次近似も考えてないのはいかがなものでしょうか。
    不正確な未来像を提示するのは抵抗があるかもしれませんが、自分の今後について「ノープランではない」ことを示すのは、親との関係で無用なトラブルを減らすと思います。
    自分の「好きだから」を現実にするために、知恵をしぼりましょう。
    ご質問ありがとうございました。