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Vol.087 結城浩/数学文章作法 - 推敲の基本/新しい本を書く下準備/
2013-11-26 07:00220ptVol.087 結城浩/数学文章作法 - 推敲の基本/新しい本を書く下準備/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年11月26日 Vol.087
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
結城はゲラに朱を入れるのに「フリクション」という 消すことのできるボールペンを使っています。 摩擦熱で消えるという仕組みらしいですね。
◆消える筆記具フリクション http://www.pilot.co.jp/promotion/frixion/info/
先日ツイッターを見ていたら、肉まんをゲラの上に置いたところ、 (おそらく熱のために)肉まんの形に赤い色が消えてしまったという ツイートを見かけて思わず笑ってしまいました。
結城は試していないのですが、そういう状況になったとしても、 いったん凍らせると赤色が復活するらしいですね。
それから、ある方から「普通の消しゴムでも消えるボールペン」 というものを紹介していただきました。
◆ユニボール シグノ イレイサブル http://www.mpuni.co.jp/products/ballpoint_pens/gel/signo_cap/signo_erasable.html
いろいろ便利な道具がありますねえ。
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来月刊行になる『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』の無料プレゼントの抽選を 先週行いました。応募総数は101名と、たくさんの方にご応募いただきました。感謝です。 多くの方が、応募のメールの中に結城の活動に対する感想や要望を書いてくださいました (抽選には影響しません)。
メールに書かれたそのような読者さんの生の声は、執筆するときにとても参考になります。 いつも結城は《読者のことを考える》のが大事だと思っているのですが、 その「読者」とはいったいどんな人なのか、メールを通して感じることができるのは、 ほんとうにありがたいことだと思っています。
具体的な要望もたくさんあり、これからの執筆に有効に生かしていきたいと思っています。 あっと、これは社交辞令ではありません。 多くの読者さんが共通の「こんな本を」というメッセージを結城に送ってくださっていましたので、 結城はそれを真剣に受け止めて活動しようと思っています。
(もちろん、すべての読者のすべての要望に満足いくようにすることは 不可能ですけれども、可能な限りそれに向かうことは大切だと思っています)
考えてみますと、このように直接読者の声を聞くことができるというのは、 ネットが自由に使える現代ならではのことですよね。 昔から「読者のハガキ」のようなものはありましたが、 現代のようにWebで著者が呼びかけ、それにメールで読者が応えるというのは、 ハガキとはずいぶん違うものです。
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その『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』ですが、 アマゾンで予約可能になりました! 予約でもランキングというのがありますが、 ありがたいことに、数学一般の新着ニューリリースというジャンルで、 第一位になっていました! それだけ多くの方の期待をいただいていると思い、 たいへん励みになりました。ありがとうございます。
◆『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』(アマゾン) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797374152/hyuki-22/
残念ながらまだ表紙はアップされていませんが、 今回も、たなか鮎子さんのすてきな表紙になります。どうぞお楽しみに。
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アマゾンといえば。
アマゾンでは「数学ガール」シリーズを5冊+小冊子をまとめた 「数学ガール」セットというものを売っています。 先日さりげなくそのカスタマーレビューを見て思わず感動で涙ぐんでしまいました。 「教師でよかった」というタイトルのカスタマーレビューです。
◆「数学ガール」セット http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00EDEMQ92/hyam-22/
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Webといえば。
結城はCakes(ケイクス)というサイトでWeb連載をしています。 先日そのサイトでリニューアルがあり、その影響で、 ちょっと結城の入稿手順が変わるという出来事がありました。
あまり細かい話をしてもしょうがないので簡単に書きますが、 入稿手順(HTMLを作成するための手順)が変化したので、 それに対応するためのツールも書き換えることにしました。
入稿のためのツールは結城が自分でプログラミングしたものですから、 内容もよくわかっているし、今回のような手順変更があっても すぐに直すことができます。
ちょっとしたことですけれど、 自分でプログラムを書けるというのはたいへん便利なものだなあと 改めて思った次第です。
特に現代は多くの情報が電子的なファイルやネットを介して やりとりされます。ファイルを作ったり、ネットで送ったりする仕事の 細かい手間(特に機械的な作業)をプログラムで代替できるのは ありがたいものです。
プログラムのいいところは、 機械的で煩雑な手順を「忘れることができる」点にあります。 あとはプログラムにお任せすればいい、という状況にしておけば、 人間は人間がやるべき仕事に集中できます。 また、めんどうじゃないので何度も繰り返すことができ、 しかもミスが少なくなります。
仕事のちょっとした手間軽減は気分的にもいいですね。 自分の仕事を自分で改善できるというのは、 仕事をきちんと把握していると実感できるからかもしれません。
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さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回のメインコンテンツは「数学文章作法」です。現在「推敲編」を執筆中で、 そのプレビュー版を章ごとにお送りしています。今回は第2章「推敲の基本」です。 また「本を書く心がけ」として「新しい本を書く下準備」というお話もお送りしますね。
どうぞお楽しみください!
目次
はじめに
数学文章作法 - 推敲の基本
本を書く心がけ - 新しい本を書く下準備
次回予告 - 再発見の発想法
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Vol.086 結城浩/数学文章作法 - 語句/本を書く心がけ - 図の描画/
2013-11-19 07:00220ptVol.086 結城浩/数学文章作法 - 語句/本を書く心がけ - 図の描画/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年11月19日 Vol.086
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
ザ・インタビューズというサイトがもうすぐ終わりになるというので、 自分のインタビューテキストをダウンロードしておこうと思いました。 Webサイトにその機能がなかったので、少しスクリプトを書いて実行。 せっかくなので、備忘録を兼ねてQiitaで公開しました。
◆ザ・インタビューズをテキストに変換するRubyスクリプト http://qiita.com/hyuki/items/25731079d8a6129e81d5
公開したところ「ループをプログラムで書かなくても、 連番のテキストをダウンロードするならcurlで一行で書けますよ」や、 「SAXを使って試しに書いてみました」という反応があって、 たいへん勉強になりました。人がいるところに自分のちょっとした書き物を 公開するというのはいいものですね。
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技術評論社の月刊誌Software Design (2013年10月号)に掲載された、 「Vimで快適執筆環境」という結城の記事をPDFで公開します。 (もちろん編集部の許可は得ています)。
結城がThinkPadからMacBook Airに移ったいきさつや、 Vimを執筆に使えるようにするためのいくつかのささやかな工夫について 書いています。
以下の「技術情報」というページから自由に閲覧できます(無料)。
◆技術情報 http://www.hyuki.com/techinfo/
MacBook Airはとってもいいマシンなんですが、 どうしてもキーボードがときどき指にひっかかるときがあります。 特に右手小指の守備範囲になっている記号類がどうも苦手 なので、 自分用のタイピング練習テキストを作ってみました。 たいへんストイックなテキストなので、私以外に役に立つかわかりませんが公開します。
◆MacBook Air (JIS)で記号タイピング http://www.hyuki.com/techinfo/typing.html
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最近は時間を見てTikZの写経をしています。 TikZというのはLaTeXで使うことのできる描画パッケージです。 うまくTikZを習得したら、今後「数学ガール」シリーズや 「数学ガールの秘密ノート」シリーズで図を描くときに 利用していきたいなと思っています。 いくつかのサンプルは後ほど「本を書く心がけ」にてご紹介します。
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『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』は今週ずっと再校読みです。 初校のときに比べると内容的にもひっかかる点は少なくて、 非常に細かい修正になります。
いつも感じるおもしろい現象があります。 校正の終わりの段階になると「いったん直したものの、とりやめる」という箇所が出てくるんです。 たとえば「うーん、ここの『テトラちゃんが…』の部分は『テトラちゃんは…』にしようかな」と いったん直す。でも何回か読み返すうちに「いや、やっぱり『テトラちゃんが…』に戻そう」 と思い返すという状況です。
このように「いったん直したものの、とりやめる」という現象が起き始めると、 校正も終盤戦という感じがします。 きっとテキストが局所最適な状態になっているのだと思います。 だから、小さな修正で状態を少し変えても、 「いや、やっぱり……」と元の局所最適な状態に戻る。
「少し動かしたらいつも現在よりちょっと悪くなる」というのは 局所最適な証拠ですよね? 校正でもそのような状況が見られるのがとても興味深いです。
そんなこんなで今週末が再校の読み合わせ。 それが済んだら、結城の手からほとんど離れます。 あとは(結城は)出版を待つばかり。 もうひとがんばりです!
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この結城メルマガの読者さんの @aramisakihime さんのツイートを見かけて、 たいへん驚きました。なんと毎回メモを取りながらこの結城メルマガを 読んでいらっしゃるとのことです(!)。
https://twitter.com/aramisakihime/status/400245358342594561/
感謝なことですけれど、ちょっと恐縮しております……
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ショップでiPad AirとiPad mini Retinaをいじりながら迷っています。 両方とも画面はたいへんきれい。違いは大きさと値段。 でも、そもそも結城の目的(参考書を読む読書マシン)としては、 現在実働中のNexus 7がまだ現役で十分動ける。 そもそも買う必要ないのでは。
迷う迷う迷う……
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さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回のメインコンテンツは「数学文章作法」です。 いつもと同じくPDFでお送りします。 それから「本を書く心がけ」のコーナーでは「図の描画」についてお話しします。 こちらもいくつかPDFをお送りします。
どうぞお楽しみください!
目次
はじめに
数学文章作法 - 語句
本を書く心がけ - 図の描画
次回予告 - フロー・ライティング
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Vol.085 結城浩/数学ガールの特別授業/Evernoteを執筆にどう生かすか/
2013-11-12 07:00220ptVol.085 結城浩/数学ガールの特別授業/Evernoteを執筆にどう生かすか/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年11月12日 Vol.085
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
子供の話。
先日のこと、中学生の息子から数学の問題を解いてほしいと頼まれました。 聞くと、数学のプリントで先生が解答を渡し忘れたものがあるとのこと。 いくら考えてもわからないので教えてほしいと。
子供が私に数学や理科のことを聞くときには、 「お父さんなら当然知っていると思うけど」 という不穏な枕詞をつけてきます。 それがまたまたプレッシャーになる。
こんなふうに子供に尋ねられるのは誇らしい気持ちになる反面、 父親の威信を保てるかどうかということでいささか緊張します。 見てみると幸いそれほど難しい問題ではなく、すぐに方針が立ちました。 でも、複数の変数が入り組んでいるので、実際に計算するのはめんどうそうです。
おおまかな方針を示し、
こういうときは、 何を元にして何を求めようとしているかを はっきりさせるといいんだよ。
などともっともらしくまとめました。 そして、
じゃあ、あとはわかるよね。 根気よく計算してごらん。
と逃げてしまいました。 めんどうくさがりな著者は「証明は読者の演習問題とする」などとうそぶく ……という数学書ジョーク(?)があるのですが、 そのような著者の気持ちが少しわかったような気もしました。
* * *
教える話。
先日、高等学校で数学の特別授業を行ったという話はこの結城メルマガでも、 またWebの日記でもご紹介してきました。
◆東海大学付属第三高等学校で「フィボナッチ数列の表現」という特別授業をしました http://www.hyuki.com/d/201310.html#i20131025120000
この高校から、特別授業を受けた生徒さんの感想文を送っていただきました。 ひとりひとりがプリントにたくさんの感想を書いてくださり、 読みながら私はずっとにこにこしていました。
授業中は比較的おとなしめな生徒さんだったのですが、 感想文では元気いっぱいいろんなことを書いてくださいましたよ。 私のキャラクタ(スレッドお化け坊や)のバリエーションを たくさん書いてくださった方や、 もっと年とった先生かと思っていたとか、 公式をぽんぽん話す難しい授業だと思っていたけど、 そんなことはなくておもしろかった……などといった 率直な感想が書かれていました。
担当してくださった先生が
「子供たちからは、いつも元気をもらいます」
ということをおっしゃっていましたが、 その気持ちの一端がわかりました。
ともかく、生徒たちはそれなりに楽しんでくださったようなので、 私としてもほっとしています。
結城メルマガでは、そんな特別授業をベースにした読み物、 「数学ガールの特別授業」を連載しています。 今回はその二回目、PDFにてお送りいたします。 詳細はこのメルマガの後半で。 生徒さんが描いてくださったイラストもちょっぴりご紹介しますね。
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ブログの話。
結城はいくつかのWebサイトで書き物を公開しています。
◆結城浩のWeb日記(メインの日記) http://www.hyuki.com/d/
◆結城浩のはてな日記(技術的な話やTipsなどの話) http://d.hatena.ne.jp/hyuki/
◆結城浩のタンブラー(毎日の仕事) http://hyuki.tumblr.com/
◆Twitter https://twitter.com/hyuki/
他にもいくつかアカウントがあります。
先日はMedium.comで試しに書いてみましたが、 そこでは数式が使えないのでちょっとつまらないとも思いました。
そういえば、と思い出したのはQiita(キータ)というサイトです。 アカウントだけ作って放置していましたが、 技術的なTipsなどはこちらに書くのもよさそうです。 ということで、LaTeX関連のちょっとした記事を試しに書いてみました。
◆Qiita http://qiita.com/hyuki
たとえばこんな記事です。
◆LaTeXの小さなサンプル http://qiita.com/hyuki/items/afe6b4124a01d27b1e77
◆TikZの小さなサンプル http://qiita.com/hyuki/items/10dffbf3dbc676f250aa
◆ザ・インタビューズをダウンロードするRubyスクリプト http://qiita.com/hyuki/items/104fbdc7614b3db6683b
これをご覧いただくとわかるように、Qiitaは技術者向けのサイトなので、 プログラム(やLaTeX)のソースコードを張りやすくできています。
細かいTipsや実験的に作ったものは、すぐに散逸してしまうものです。 このようなWebサイトにアップしておけば、散逸しにくくなりますし、 他の人にとっても参考になります。
自分のWebサイトがあるのですから、 こういう細かい記事を自分のサイトで公開する手もあります。 でも、いろんなサイトで試しに書いてみるのも勉強になるものです。 特にQiitaはKobitoという専用の更新アプリがあって、 ドキュメントを編集・更新するのがたいへん楽になっています。 こういうツールも、遊び気分で試してみると学ぶことが多いですね。
◆Kobito - プログラミングのメモやスニペットの記録に最適なMacアプリ http://kobito.qiita.com
* * *
別の話。
ブログに書くほどでもないけれど、 Twitterでテキストを流しておしまい、にはできない情報というものがあります。
たとえば、LaTeXを学んでいて「こんなPDFファイルができたよー(見て見て!)」と言いたいとき、 小さなPDFをサーバ上においてURLをツイートしたい。
現代ならばEvernoteやDropboxというサービスを使うのが一般的だと思います。 これらのクラウドサービスには「ファイルを共有する」という機能が必ずあって、 URLを伝えるだけでクラウド上のファイルを他人と共有できるのです (参照のみという形か、参照+編集という形で共有可能)。
ただ、EvernoteとDropboxは結城の普段使っている重要ツールなので、 あまりそれを不特定多数との共有には使いたくないなあと思っていました。
そこで、マイクロソフトのSkyDriveというサービスを使ってみることに。 SkyDriveはDropboxと同じようなクラウドストレージサービスです。 無料で7GBもの容量を自由に使うことができます。
◆SkyDrive https://skydrive.live.com
先日からここに「試しに作ってみたepubファイル」や「実験的に作ったPDFファイル」などを 放り込んで、Twitterで「こんなん作りました」とツイートをしています。
◆Eulerフォントを使ったPDFファイル http://sdrv.ms/1fvcmqN
◆めえめえさんが、しんぶんはいたつをするおはなし(epubファイル) http://sdrv.ms/1iYj0FM
上記の「めえめえさん……」というepubファイルは、 実はiPhoneのみで作成から配送まですべて行っています。
1. iPhone上のEvernoteのノートにテキストを入れる。 2. iPhoneのEverEPUBというアプリでepubに変換する。 3. できたepubファイルをEverEPUBから「SkyDriveで開く」で配布する。
できたepubファイルは上記のようにシンプルなものですけれど、 このくらいのepubファイルなら、 テキストさえ用意すればiPhoneだけで配布までできるのだなあと感動しました。
EverEPUBというアプリは、Evernoteに入れたノートをもとにしてepubファイルを作るものです。
◆EverEPUB https://itunes.apple.com/jp/app/everepub-for-evernote/id487503625
画像のノートを入れておけば、画像を含むepubファイルも作ることができそうです。
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別の話。
近藤嘉雪さん (@yoshiyuki_kondo) 経由で知った「バイナリーツリーは存在した!」。
◆Binary trees - they really exist!! https://twitter.com/yoshiyuki_kondo/status/397879819846688768
アルゴリズムに登場する「二分木」が実際の木として存在したという話。
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しょいんさん(@shoin39)の「数学ガール痛車」の 動画がありましたのでご紹介します。 茉崎ミユキさん作画による数学ガールのキャラクタが 車体の全面に描かれていて圧巻です!
◆「痛車フェス」に行ってきました! 25 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=raSuROi3bYk
* * *
自己分析の話。
ブログをあれこれ試したり、 小さなepubやPDFファイルを作って遊んだりしているのには理由があります。
一言でいえば、 『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』の初校読みの反動です。 校正を読むときにはすごく細かいところまで神経を使うので、 もっと大ざっぱにざくざく文章書いたり、本を作ったりしたくなるのです。
Evernoteにテキスト入れて、画像入れて、EverEPUB動かして、 はい電子書籍一丁あがり!って気分になりたいのですね。
* * *
そしてその『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』ですが、 先週末に初校の読み合わせが終わりました。
読み合わせでは毎回「それには気づかなかった、あちゃー!」 というシーンがあります。 今回編集長に指摘されたミスで驚いたのは、次の二つです。
・99までの素数で43が抜けていた(43は素数) ・134+30=174 という計算をしていた(本当はもちろん164) ・11より小さい素数を2,3,7と書いていた(5が抜けている)
こういう大ポカを指摘されると「やられた」と思うと共に、 「編集長にしっかり読んでいただいている」と感じてうれしくなりますね。
逆に編集長が気づかなかったミスでレビューアさんが気づいたものとしては、
・音引き(ー)を書くべきところが半角マイナスになっていた
というミスがありました。 これには編集長も、うなっておりました。
そんなこんなで現在は、 編集部と印刷所にボールが渡っている状況です。
再校の読み合わせは来週の末か、再来週の初めです。 それが済めばあとは年末の刊行を待つばかり。
新しい本が出るというのは、いつもわくわくします。
今年はなぜか例年になくたくさんの新刊を出す年となりました。
・『数学文章作法 基礎編』 ・『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』 ・『数学ガールの誕生』 ・『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』
この四冊です。幸いそれぞれに売れ行きも良く、 読者さんからたくさん応援をいただいています。 ほんとうに感謝なことです。
今年も早11月です。 来年もまた、一生懸命すこしでも良い本を作るように 努力していきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。
* * *
さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回のメインコンテンツは「数学ガールの特別授業」です。 先週の予告では「数学文章作法」でしたが、 準備の都合上、来週にシフトさせてください。 それから読者さんの「Q&A - Evernoteを執筆にどう活用するのか」です。 先週もEvernoteの質問でしたが、その続きの質問がやってきました。
どうぞお楽しみください!
目次
はじめに
数学ガールの特別授業
Q&A - Evernoteを執筆にどう活用するのか
次回予告 - 数学文章作法
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Vol.084 結城浩/再発見の発想法/Evernoteの使い方/まどか☆マギカ/
2013-11-05 07:00220ptVol.084 結城浩/再発見の発想法/Evernoteの使い方/まどか☆マギカ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年11月5日 Vol.084
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
先日当選者4名に発送したサイン本は、無事に到着したようです。 当選なさった方、おめでとうございます。どうぞお楽しみください。
また結城が具合が悪くなったときにはサイン本プレゼントの企画をしようと思いますので、 お楽しみに(??)
結城はときどき読者プレゼント企画で書籍を送ります。 特に新刊が発売されるときには必ず読者プレゼント企画を実施しています。
梱包材に書籍を入れたり、住所を書いたりして発送準備をしていると、 自然と頬が緩んでにこにこしてしまいます。 普段はあまり意識していないのですが、自分で梱包していると、
「ああ、この本があの県やこの市に送られるんだなあ」
のように実感するんですよ。全国に自分の本を読んでくれる読者さんがいらっしゃる。 そのことを実感すると、胸の奥からじんわりと幸せな気持ちになる。 それで、にこにこしながら発送準備をすることになるのです。
* * *
映画の話。
「劇場版魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」を観てきました。 たいへんな人気なので、ネットでネタバレをうっかり見る前に観ようと思っていました。 フリーの身は自由(?)なので平日ちゃちゃっと観ましたよ。 これからごらんになる方もいらっしゃると思うのでネタバレになりそうなことは書きませんが、 何を書いてもネタバレになるので何も書けないですね。 しかし、体調が万全でないときには観るべきでなかったかもしれません……疲れました。
あ、書ける話題がありました。 結城は「魔法少女まどか☆マギカ」オープニングテーマの 「コネクト」という曲がたいへん気に入っています。 もともと女性ボーカルは好きなんですが、 この曲では「声」になんともいえない魅力を感じます。
歌っているのは現役女子中学生ユニットClariSです。 以下のアマゾンサイトで視聴できます。
◆コネクト - TVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」オープニングテーマ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B004DGD4AA/hyam-22/
「なんともいえない魅力」ではさっぱり伝わりませんね。 無理に言葉にしてみると「不安定さと危うさを持ちつつ突っ走る感じ」とでもいえるでしょうか。 その場に居合わせた自分も急いでいっしょに突っ走る必要がある、 そんな気持ちにさせられる曲と声だと感じました。
映画や音楽に限らず、多くの人をなぜか揺さぶるものに関心があります。 ベストセラーや人気のアニメなどを軽蔑する人も世の中にはいるみたいですが、 私はあまりそういうふうには思いません。
多くの人が魅力を感じるものには何かしらの理由があると思いますし、 それを単純に切り捨てるのはもったいないなとも思うのです。 もちろん、多くの人が魅力を感じるから正しいとは限りませんけれどね。 正しさや美しさは多数決で決まるものではないからです。
そんなふうに私は思っています。
* * *
言葉の話。
Mediumというブログサイトが一般に使えるようになりました。 このMediumはTwitterの創業者Ev Williamsが作ったサイトで、文章を書き文章を読むことに重きを置いています。
◆Medium https://medium.com
このサイトの精神は以下のA better place to read and writeと副題の付いたエッセイによく書かれています。
◆Welcome to Medium - A better place to read and write https://medium.com/about/9e53ca408c48
これによると「Twitterのような短い文章ではなく、 もっと深い考えを言葉で表現しシェアするための場所を作った」ということのようですね。
さっそく、ひとつだけ記事を書いて感触を試してみました。 サイトの使い勝手は自分で使ってみないとわからないからです。
以下は、結城メルマガに書いた文章の一部を手直ししたもの。
◆LaTeX定番入門書『美文書』の最新版が刊行 https://medium.com/click-the-shutter/289fa4445e40
使ってみると、確かにシンプルな作りになっていて気持ちよく文章を書けると思いました。 画像を多数入れたり、凝ったレイアウトを求めたり、フォント弄りをしたい人には向きませんが、 普通の文章を普通に書くにはよいかもしれません。 ただ、日本語フォントの扱いがちょっとおかしいときがあり、 違和感を感じる部分もありました。
シンプルなデザインで、言葉を使って考えをシェアする場というのはすばらしいと思います。 それが実際にどれだけ実現できるかどうかは、 このMediumというサイトにどのような書き手と読み手が集まるかにかかっているでしょうね。
Webサイトのような「仕組み」は大事ですが、 その仕組みが書き手と読み手をうまく集めることができれば、 おもしろいことが始まるかもしれません。
* * *
図形描画の話。
先日ThinkPadからMacBook Airにメインマシンを移しました。 そのいきさつはこの結城メルマガでも何回か書いてきました。
MacBook Airになると、必然的に使うツールも変わってきます。 現在のところ、次のように変わりました。
・テキストエディタ(文章)は「秀丸エディタ」から「Vim」へ。 ・ペイントソフト(画像)は「Paint.NET」から「Pixelmetor」へ。 ・ドローソフト(図形)は「Visio」から「OmniGraffle」へ。
ありがたいことにLaTeXを処理してPDFを作る部分はThinkPad(Windows)でも、 MacBook Airでも変わりません。
新しいツールで仕事をしながら使い方を身につけるのは なかなか大変ですが、真剣さが違うので習得は速いかもしれません。
特に気に入ったのはOmniGraffleです。 説明図を描くのに欠かせないドローソフトですが、 Visioに近い発想の部分もあり、比較的スムーズに習得できました。
先日、OmniGraffleの公式Webサイトを眺めていたら、 なんとビデオのチュートリアルがあるじゃないですか。 さっそく観ました。図形描画ソフトの使い方は、説明文を読んでもわかりません。 自分がいままで気づいていなかったボタンや機能も教えてもらい大満足です。
◆Omni Graffle Video http://www.omnigroup.com/video/omnigraffle
「教える」シーンで、 このような短時間のビデオ活用はきわめて重要だなあと感じた次第。 まさに「百聞は一見に如かず」ですね。
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授業の話。
前回の結城メルマガから連載が始まった「数学ガールの特別授業」ですが、 そのもとになった高校のWebサイトに、結城の特別授業の様子がニュースに なりましたのでご紹介します。東海大学付属第三高等学校さんです。
◆SPP講座『フィボナッチ数の奥深き世界』の第三回講座を行いました http://www.daisan.tokai.ed.jp/tokai3/news/20131029_1.html
◆数学ガールの特別授業 http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
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Macの話。
結城はMac初心者なのでTwitterなどで臆面もなく「教えてクン」になっています。 優しいフォロワーさんたちが丁寧に教えてくださるのに感激です。 ちょっとした操作方法の違いでも、作業効率に大きく影響するので重要です。
「教えてクン」をやっているだけではまずいので、 教えていただいた分についてはブログ(はてなダイアリー)にまとめるようにしています。 まとめることで自分の記憶にも定着しますし、 結城と同じような疑問を感じる人への助けとなることを期待しています。
最近の「教えて」は以下のようなものです。
◆MacでCommand+Tabキーを使って(アプリではなく)ウインドウを切り換える方法 http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20131030/mac
◆Macのダイアログでキーボードを使ってボタン間のフォーカス移動&決定する方法 http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20131001/mac
◆VimでLaTeXのファイルを編集するときのオートインデントを停止する方法 http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20130921/vim
◆給電のためにPocket WiFiをMacにつなぐとFinderがフォルダを自動的に開くのをやめる方法 http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20130806/mac
◆MacVimでコピーした文字列が自動的にクリップボードに入るようにしたい http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20130803/vim
Twitterで質問して答えをもらうやりとりはたいへん助かるのですが、 それはフローとストックでいえばフローになります。 蓄積されたものではなく、その場限りで流れていくものという意味です。 でも、いくつかのやりとりをまとめてブログの記事にすると、 フローがストックに変わります。
ストックになると再利用性が高まり、 他の人が(あるいは将来の自分自身が)その情報を活用できるようになります。 実際、マシンを変えたときなどには自分のブログ記事が環境再構築にたいへん役立ちますね。
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さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回のメインコンテンツはSoftware Designとのコラボ連載の「再発見の発想法」です。 それから読者さんの「Q&A」は「Evernoteの使い方」です。 結城がどんなふうに執筆にEvernoteを利用しているかをご紹介します。
どうぞお楽しみください!
目次
はじめに
再発見の発想法
Q&A - Evernoteの使い方
次回予告 - 数学文章作法
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