• このエントリーをはてなブックマークに追加

今なら、継続入会で月額会員費が1ヶ月分無料!

記事 22件
  • Vol.235 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(6)/大人になってから数学をやり直す/嘘をつかない/

    2016-09-27 07:00  
    216pt
    Vol.235 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(6)/大人になってから数学をやり直す/嘘をつかない/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年9月27日 Vol.235
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    朝晩は肌寒い日もあったりしますが、 昼間は妙に暑くなったりして、着るものが難しいです。
    でも秋分も過ぎ、まちがいなく季節は秋へ向かっていますね。
    あなたは、いかがお過ごしですか。
     * * *
    新刊の話。
    『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』は現在再校待ちの段階です。 今週の中頃には編集部から再校ゲラが送られてくる予定ですので、 そこからはまたゲラを読む日々が再開します。
    初校ゲラに比べると再校ゲラはずっとすっきりしている(はず)。 文章のザラザラも取れて読むのが楽しくなる(はず)。
    それはいいのですが、初校の段階で懸案事項だった点や、 大きめの修正が入った部分はまた入念に読み返す必要があります。
    再校読み合わせは来週の水曜日。 そこからは結城の手をほぼ離れ、出版社(+印刷所)マターとなります。
    サイン本を作る予定が10月26日(水)ですから、 書店に並ぶのは最速で10月27日(木)になる可能性があります。 そこから10月末に掛けて刊行ということですね。
    毎回の話ですけれど、新しい本が出るというのはほんとうにうれしいことです。 いつも応援してくださる読者さんに心から感謝です。 今回は「やさしい統計」ということで、 いつもとは違う層の読者さんにも届くといいなあ……
    応援よろしくお願いいたします!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』(アマゾン)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797387122/hyam-22/
    そうそう、恒例の《サイン本無料プレゼント》企画もやっていますので、 ぜひ、ご応募くださいね!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』《サイン本無料プレゼント》  https://snap.textfile.org/20160921120829/
     * * *
    処女作の話。
    先日Twitterで「初めての量産」というハッシュタグを見かけました。 そういえば、本が刊行されるというのも「量産」ですよね。
    結城の初めての書籍『C言語プログラミングのエッセンス』が発売されたとき、 公衆電話から紀伊國屋書店に電話を掛けて「売ってますか?」 と確認したのを思い出します。 電話ボックスで、妻と一緒に書店員さんの声に耳をすましました。
    この結城メルマガでも何回も書いたエピソードですが。 公衆電話とか電話ボックスというのが時代を感じさせますね。 ときは1993年。いまから23年前の思い出です。
     * * *
    数学ガール6の話。
    『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』の再校ゲラを待ちながら、 『数学ガール6』のほうもじわじわと進めます。 少しあいだが空いたので、もう一度最初から読み返しているところ。
    第1章〜第3章はかなり引き締まっているけれど、 あちこちに細かい図の抜けがあったり、 話題を整理する必要がありそうです。 でも、まあ、まずまずの感じ。
    それに比べると第4章〜第6章はまだまだ粗いです。 素材としては十分入っているけれど、洗練されていませんし、 話題をつっこみすぎていて、ぎゅっと絞れていません。 軸がふらふらしている感じが抜けません。
    第7章はぐっとレベルアップしていてたいへんよろしい。 でも、第8章と第9章はぜんぜんだめ。 そして第10章は、第4章〜第6章と同じように絞り込めていない感じ。
    まだまだですなあ……
    次の一歩としては、 第10章すなわちゴールをしっかり定めることでしょうね。 そうすると、おのずから第8章と第9章の膨らませ方も見えてくるし、 第4章〜第6章までの絞り方も見えてくるはずだからです。
    がんばろう、がんばろう!
     * * *
    ハロウィンの話。
    ハロウィンの季節になると、 あちこちで私のアイコンの親戚っぽいお化けが登場します。 いろんな方が写真付きでツイートしてくださるので、 何だか楽しくなります。
    以下、@yamachan_zさん、@ryudvicさん、 @tokoyaさん、 @jr2kingさんのツイートです。

     最近あちこちのスーパーで結城浩さんを見かける(違  https://twitter.com/yamachan_z/status/778236706080174080


     そういえばうちにも結城浩先生が  https://twitter.com/ryudvic/status/778907039707779072


     結城浩先生?!  https://twitter.com/tokoya/status/778583616137801728


     結城…先生…  どうして…こんなところで…内側からピカピカしているのですか…!?  #数学ガール  https://twitter.com/jr2king/status/779991707328716800

    ありがとうございます!
     * * *
    まぐまぐさんの話。
    先日、メールマガジンで有名な「まぐまぐ」さんのオフィスに行ってきました。 この「結城メルマガ」は2012年から「まぐまぐ」さんで配信していますが、 オフィスに行ったのは今回が初めて。
    メルマガのことを含めた今後のお仕事について打ち合わせをしてきました。 未知数の部分も多々あるのですが、おもしろい話に広がるといいなあ。
    また進展がありましたら、結城メルマガでもアナウンスしますね!
     * * *
    定義と呼称の話。
    ときどき、こんな言い回しを見かけます。
     「どうして〇〇はいつも△△なのか」
    形は疑問文ですけれど、 実際には非難や批判のニュアンスが入ってることが多いですね。 「どうして○○はいつも△△なのか。困ったもんだなあ……」 という具合です。 このような疑問文は修辞疑問(レトリカル・クエスチョン) と呼ばれたりします。
    ところで、結城はこの修辞疑問を見るたびに試すことがあります。
     「どうして〇〇はいつも△△なのか」
    という言い方をひっくり返して、
     「いつも△△なものを○○と呼んでいるのではないか」
    と考えてみるのです。ただし実際に口に出すと、 もめることも多いのでご注意くださいね。
     * * *
    演出とプログラミングの話。
    プログラミング言語処理系Gaucheの作者であり、 なおかつ俳優でもあるShiroさんのブログ記事を興味深く読みました。
     ◆Mai Poina in Maui / 演出家の仕事  http://blog.practical-scheme.net/shiro/20160918-mai-poina-maui
    少し引用します。
     --------  何度か演技のクラスで一緒になった俳優のDennis Chun氏は  役者の仕事は"how to make the scene work" を考えることだ、  と言っていた。  とすれば演出は "how to make the play work"  を担当するってことかもしれない。  http://blog.practical-scheme.net/shiro/20160918-mai-poina-maui  --------
    ここには二つの概念と二つの役割があります。 芝居のシーン(scene)と芝居全体(play)。 そして役者と演出。 役者はシーンを担当し、演出は芝居全体を担当。
    記事の中では、 役者の演技と演出の考えがずれたとき、 すりあわせをどうするかについて書かれていました。
    演出は、役者の演技そのものに口を出すのではなく、 演技のもとになっている「解釈」の方をすりあわせする。 そんなお話でした。
    演出と役者が「解釈」においてすりあわせできたなら、 そこからさきの演技は役者にまかせる、と。
    この記事を読みながら、 「部下の行動を細かく指示したがる上司」 という「あるある話」を思い出していました。
    上司と部下の責任分担がしっかりしていて、 それぞれに十分なスキルがあれば、 細かい指示を減らすことができます。 上司の「方針」が何らかの形で部下に伝えられ、 部下はそれを適切な方法で実現する。 その連係プレイが組織で動く妙味になるでしょう。
    それはまた、 プログラミングでのインタフェースの重要性にもつながる話です。 一つのモジュールが、他のモジュールの実装詳細に立ち入ると、 メンテナンス性は悪くなります。
     ・わたしは何に責任があるか。  ・あなたは何に責任があるか。  ・そして、わたしとあなたが協力して目的を達成するため、   わたしたちはどんな情報交換と合意が必要か。
    このくらいの抽象度で考えると、 「演出と役者」「上司と部下」「複数のモジュール」は、 とても似ているように感じますね。
     * * *
    インタビューの話。
    ファイルを整理していたら、2007年に公開した 「数学ガール出版記念(仮想)インタビュー」 というファイルが出てきました。
    「出てきました」といっても、 ずっと自分のWebサイトで公開していて、 その存在を忘れていただけなんですけれどね。
    スマートフォンやタブレットでも読みやすいように、 レスポンシブデザインに修正し、 改めて公開しました。
    無印の『数学ガール』が刊行され、 まだ続編が出るかもわからなかった時代のお話。 読んでいると懐かしくなります。 お時間がありましたらお読みください。
     ◆『数学ガール』出版記念(仮想)インタビュー  http://www.hyuki.com/girl/interview.html
    これは『数学ガール』を紹介する目的で結城が作った文章ですので、 実際にインタビューを受けたものではありません。念のため。
     * * *
    英語の話。
    先日、 @ww_cb さんのうれしいツイートを読みました。
     --------  結城先生の英語版数学ガールの力を借りて、  フィリピンの数学の先生に複素数平面を伝えてみた。  超カタコトだったけど、  複素数の掛け算が回転を表していることはすごく感動してました。  数学ってすごい!っていうか結城先生が書く本は夢中になって読める本です!  https://twitter.com/ww_cb/status/777879203601457156  --------
     --------  複素数の計算がただの計算で終わらない  ということをどうしても伝えたくて、  自分が結城先生の本から感動させてもらったことを  他の国の人に伝えてみようと思いました。  英語苦手ですが、他の国の人にも伝わった瞬間に  数学って英語よりも世界共通言語だなと思いました!  https://twitter.com/ww_cb/status/778005827336548352  --------
    結城はこのツイートを読んで、深く感動しました。 その理由はいくつかあります。
     ・数学的な内容を英語で伝えようと思ったこと。  ・「どうしても伝えたいこと」を伝えたい!と思ったこと。  ・そして実際に感動が伝わったこと。
    結城はこの話のように、 伝えたいことを言葉に乗せて相手に送るというアクションがすごく好きです。 自分が考えるだけではない、自分が納得するだけでもない。 感動を伝えたいという願いを実行に移すところ。そこです。 そこがすごく好きなんです。
    実行したら、成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。 あたりまえのことです。 それでも、どうしてもやってみたいから、 自分の中にその気持ちが強くあるから、チャレンジする。 その感覚が好きです。
    この話題は、今回の結城メルマガで配信する、 「数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)」にも通じる話です。 今日は、生徒さんの質問に答えていますが、 その中に「言葉で伝える」話が出てきますね。
     * * *
    本の話。
    リンダ・グラットンの『ワーク・シフト』の続編が出るらしいです。 タイトルは『ライフ・シフト』とのこと。
     ◆『ライフ・シフト 100年時代の人生戦略』   (リンダ グラットン+アンドリュー スコット)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01LYGI45Q/hyam-22/
    『ワーク・シフト』は、結城にはめずらしく(?)、 かなりていねいに読んだ本のひとつです。 世の中がこれからどのように変化していくのか、 そしてその変化に応じて「労働」はどう変化するのか。 それが描かれています。
     ◆『ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>』   (リンダ グラットン)  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009DFJE9Q/hyam-22/
    大げさな言い方をすると、私は『ワーク・シフト』を読んでから、 世の中の流れを見る自分の視線が変わったように思います。 というのは、日々流れてくるニュースが、 この『ワーク・シフト』で描かれている近未来像の《一例》 のように見えることがよくあるからです。
    『ワーク・シフト』では、 グローバルに活躍して専門能力はあるけれど孤独な人や、 必ずしも収入は大きくないけれど自己の価値観で生きる人や、 大企業に属さず小さなユニットによって活躍する人や…… そのような近未来に働く人たちの姿が描かれます。
    今度の続編『ライフ・シフト』もたいへん楽しみです。
     * * *
    Web連載の話。
    結城はCakesで「数学ガールの秘密ノート」のWeb連載をしています。 現在は「広がる複素数」シーズンが終了し、お休みをいただいているところ。 再開は2016年10月7日(金)です。
    それまでの時間Web連載の新シーズンを準備します。 すでにEvernoteには新シーズンの題材候補が何個もあるので、 その中から一つ選び、お話を膨らませていく作業をするのです。
    先週検討していた題材は、調べているとやや難しすぎることがわかりました。 なので別の案を考えて「一人ブレーンストーミング」をします。 Evernoteに新たなノートブックを作成し、 考えたことをぱたぱた書いていくだけですけれど。
    すでに自分の中にアイディアがあって、 ただ書き出すだけの章もありますし、 キーワードだけ覚えていて、 参考書で調べながら進む章もあります。
    自分がすでに知っていることを書くか、 自分がまだ知らないことを書くか、 そのバランスを取るのは難しいものだと思います。
    Web連載を開始する時点でまったくわからないというのは無茶ですが、 全部わかった状態になってスタートするのも無茶です。
    一番いいのは、毎週書き進めながら、 私自身が新たに学び、新たな発見をしていくくらいの難易度と題材です。 そんなにうまいこと発見できるものかね、と思いたくなりますが、 でもわりとうまく発見できるものです。
    自分で「わかっている」と思った内容であっても、 Web連載を書き進めるために改めてじっくり考えると、 必ず「なるほど!」という発見が見つかるものなのです。 これは結城の経験則です。
    これはほんとにそうです。 「わかっている」と思って説明を省略したり、 例示を怠ったりすると、ふわふわした内容になってしまいます。 けれど「改めて考えよう。自分でていねいに式を追い、論理をつかもう」 と心がけるなら、必ず発見があるのです。不思議なものですね。
    ということで、せっせとEvernoteにメモを取り、 Web連載の新シーズンに備えています。
    どうぞお楽しみに!
     ◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」  https://bit.ly/girlnote
     * * *
    では、今週の結城メルマガを始めましょう。
    今回で「数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)」は終了です。 (1)〜(6)までのすべてのPDFのリンクをお送りします。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(6)
    嘘をつかない - 仕事の心がけ
    大人になってから数学をやり直す - 学ぶときの心がけ
    おわりに
     
  • Vol.234 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(5)/自分の判断、自分のリアル/繰り返しに耐える作品/学びの秋/

    2016-09-20 07:00  
    216pt
    Vol.234 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(5)/自分の判断、自分のリアル/繰り返しに耐える作品/学びの秋/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年9月20日 Vol.234
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    最新刊の話。
    『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』の、 初校ゲラ読み合わせが済みました。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797387122/hyam-22/
    来週に再校ゲラが届くまで、 ほんのちょっと一息つくことができそうです。 ……はっ、いやいや『数学ガール6』を進めなくては!
    なお、今回も『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』では、 以下のような企画で盛り上げていきたいと思っています。
     ・サイン本無料プレゼント企画(結城の個人企画)  ・サイン本の先行販売(北海道から沖縄までのいくつかの書店にて)  ・メッセージカード付き書籍販売(全国のチェーン書店にて)
    日程などは、決定次第Twitterなどでアナウンスしていきますね。
    応援よろしくお願いいたします。
     * * *
    写本の話。
    先日、@okariiiinrinさんのツイートを見て驚愕しました。それは、 結城の『数学文章作法 基礎編』を手書きで写したというツイートでした。
     --------  結城浩さんの『数学文章作法 基礎編』の本文を写本しました。  毎日の日課として(毎日はできていませんが笑)少しずつ進めてきました。  約5ヵ月、ノート1.5冊、本日完了です。  https://twitter.com/okariiiinrin/status/774853328266145792  --------
    これまでタイプして写したという方は何人かいらして、 それにもたいそう驚き、また感謝したものです。 しかし今回は「手書き」で写したとのこと。 約5カ月……なんという。
    結城もたまに文章練習の一環として書籍を写すことがありますが、 そのときでもタイプで写しますね。 手書きというのはすごいです。
    別に拙著の宣伝をするわけではありませんが、 あの本を書き写すのはよい練習になるような気がします。 いえ、私の本でなくてもいいです。 自分が好きな本を書き写すというのは、 長期的に効く栄養のような役目を果たすのではないでしょうか。
    スピードは大事です。早いからいい、遅いからわるいというのではなく、 読み書きのスピードの差は、思考に違う影響を及ぼします。
    著者は、どんな書籍でも短くて数ヶ月、 長くて一年以上の時間を掛けています。 それだけの時間を掛けて一つのテキストに向かっているわけです。
    読者は、著者が掛けたその長い時間を数倍、 数十倍のスピードで読むことができます。 もちろんそれがわるいわけではありません。 しかし、書き手としては、 その読み書きスピードのギャップを考えることは有益でしょう。 「書き写す」という作業は、 擬似的にその書き手の時間をトレースしているのかもしれませんね。
     * * *
    世界のむかしばなし、執筆編。
     湖の精「あなたが湖に落としたものは、  金のキャラクターですか、  それとも銀のストーリーですか」
     作家「執筆に使える時間です」
     湖の精「それは湖の底には落ちていませんねえ…」
     * * *
    では、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(5)
    自分の判断、自分のリアル - 仕事の心がけ
    繰り返しに耐える作品について - 本を書く心がけ
    相談事と《新しい問題》 - 仕事の心がけ
    今年の秋は、学びの秋だ - 学ぶときの心がけ
    おわりに
     
  • Vol.232 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(4)/これからの10年/高校時代の学び/

    2016-09-06 07:00  
    216pt
    Vol.232 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(4)/これからの10年/高校時代の学び/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年9月6日 Vol.232
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    最新刊の話。
    ようやく『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』がアマゾンで 予約開始しました。発売は2016年10月中旬ころの予定です。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797387122/hyam-22/
    ありがたいことに、たくさんの方がすでに予約注文なさっています。
    その!予約に!応えるべく! 著者である私は、初校ゲラが出てきてせっせと読んでいる段階です。 がんばらなくては!
    「本を書くのは最高の勉強法」の思いを今回もまた新たにしています。 一冊本を書くたびに、その本の内容そのものと「本の書き方」を学びますね。
    今回のテーマは統計です。 ずっと本のことを考えているので、 Twitterで「君はレアな人間か」というタグがトレンド入りしたときに、 レアというのはいったい「何σ」なのだろうかと考えてしまうほどです (σは標準偏差で、σが大きいほど平均からのずれが大きいという意味)。
    今回もレビューアさんからの指摘メールに山ほど助けられています。 レビューアさんから、数学的な誤りの指摘を受けることはもちろん大助かり。 でも助かるのは誤りの指摘だけではありません。 レビューアさんからの「これってどういう意味でしょう」のような、 何気ない一言が重要だったりするのです。 ちょっとした疑問や、ふと感じた違和感によって、 まったく違う章の修正に結びついたりするからです。 「他者の目」の重要性はいくら強調してもし過ぎることはありませんね。
    またその「他者の目」も多様であることが大事です。 つまり、レビューアさんが複数人いると助かるということ。 「ここは読みにくいかもね」みたいな一言を一人のレビューアさんからもらう。 結城自身は「うーん、そうかなあ」と思う。 でも、複数人からまったく同じ箇所に対して「読みにくいかもね」 という指摘があったら話は違います。 その箇所は、再検討の俎上に上ることになります。
    独立に読んでいるレビューアさんが同じ箇所に言及するとしたら、 きっと出版後の読者さんも同じ箇所で「読みにくい」 と感じるに違いありません。 出版後に直すよりも、出版前に直す方がはるかに手間は少なくてすみます。
    まったくありがたいことですね。
    ということで、 『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』の校正がんばりましょう! 応援よろしくお願いいたします。
     * * *
    Kindle Unlimitedの話。
    Kindleの読み放題サービスのKindle Unlimitedは、 継続しないことにしました。
    一カ月の間でKindle Unlimitedを使って読んだ本は、 結局2冊どまりだったので、 あまり継続する意味がないと判断したためです。
    今後自分が本を買おうとしたときに、 「おっ、これもKindle Unlimitedか」 と思うことがしょっちゅうあるようだったら、 再開を検討したいと思います。
     * * *
    時給の話。
    先日スタバで書き物していたら、 女子高生らしい二人連れが、
     「1時間かけて100円安いものを探すのは時給100円の人がやること」
    という話をしていて思わず聞き入りました。 でもこれをそのままツイートしたら、 「マックで女子高生が話してたんだけど……」 というジョークのテンプレートのように聞こえますね。
    「1時間かけて100円安いものを探す」というのは「時給100円」 と言えなくはないですけれど、損かどうかはわかりませんね。 何もせずにぼーっとしていたら「時給0円」ですから。
    スタバの女子高生の結論は、
     「100円安いものを買う」や、  「セールをねらう」や、  「ポイント2倍のタイミングで買う」よりも大きな節約は、  「買わない」という選択だよ。
    というものでした。確かに、一つの正論ではありますね。
     「お金が制御できてないんじゃない。  心が制御できてないんだよ」
    というのが女子高生の話し相手の決め台詞でした。 思わずスタバで正座(比喩)しそうになりました。
     * * *
    詩的な言葉について。
    Twitterで @yu_yurs さんからこんな質問をいただきました。
     --------  質問です。  詩的なことばと独りよがりなことばとの違いはなんでしょうか?  私は独りよがりなことばしか書けなくて、  おのれの文才のなさに悔しくなってしまいます。  https://twitter.com/yu_yurs/status/768415264039800835  --------
    結城は詩人ではないので、 このような質問にきちんと答えられるわけではありません。 でも、このような質問に答えようと試みることは、 私自身にとって必要ではないかと思いました。
    以下は返信ツイートを元に書き直した文章です。
    私は詩人ではないのではっきりはわかりません。 しかし大切なポイントは、
     「その言葉を受け取った人が新たな発見をするかどうか」
    ではないかと想像しました。 「言葉だけ」を考えていても答えは見えず、 言葉を受け取った「人」に注目するのが大事ですね。
    たとえ言葉そのものはありふれていても、 その言葉を受け取った人の心に新しい発見があるならば、 それは素敵な言葉といえるのではないでしょうか。
    さらにいうならば、 発した言葉が受け取り手に「発見」を生むためには、 言葉を発する人とその言葉を受け取る人との間の「関係」 が大事であると思います。
    言葉を発する人は受け取り手のことを考える。 言葉を受け取る人は誰がその言葉を発したかを考える。 それがすべてではないですが、 人と人との「関係」は重要な要素であると思います。
    いみじくも @yu_yurs さんは「ひとりよがり」 というキーワードを書いていらっしゃいました。 それです。もしも言葉が「ひとりよがり」なら、 その言葉を発した人だけの小さな世界で閉じてしまいます。 相手と関係を結ぶことなく、 ひいては相手に発見をうながすこともないでしょう。
    詩的な言葉かどうかはいったん置いておきます。 相手にしっかりと届き相手の心に発見をうながす言葉、 それを生むためには、
     ・言葉で表現しようとする対象、  ・言葉そのもの、そして、  ・相手。
    を理解する必要があるのでしょうね。
    結城はネットで活動していますが、 そこには直接顔を合わせたことがない読者さんがたくさんいます。 そんな中で、どうやって理解が進むのか。
    結城自身が「顔を合わせたことがない読者」 を理解するために心がけていることは、
     ・相手の言葉に耳を傾ける  ・言葉の向こうにはその言葉を発した「人」がいると意識する  ・言葉はその人を語るけれど、   その人のすべてを語るわけではないと意識する  ・自分の発する言葉の届く範囲と相手に与える印象を意識する
    といったことです。くどくど書きましたが、 一言で表現するならば、言葉を使うためには、
     「想像力と愛」
    が大切であると考えています。
     * * *
    では、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(4)
    図版について - 本を書く心がけ
    これからの10年をどのように過ごすか - 仕事の心がけ
    高校時代の学びについて - 学ぶときの心がけ
    おわりに
     
  • Vol.230 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(3)/終戦記念日/時間・脳みそ・言葉/挑戦状/

    2016-08-23 07:00  
    216pt
    Vol.230 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(3)/終戦記念日/時間・脳みそ・言葉/挑戦状/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年8月23日 Vol.230
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    台風が次々に来ています。 このメールマガジンが届くのは23日の火曜日。 そのころにはどうなっているでしょうか……
     * * *
    新刊の話。
    今年の秋に「数学ガールの秘密ノート」シリーズ第8弾、
     『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』
    が刊行されます。 先日、ようやく原稿ファイルを編集部に送ることができました。 まだまだ編集作業は続きますけれど、まずは一段落。 少しほっとしました。
    すべてのファイルを集計してみたところ、
     LaTeXのファイル数、29 個。  LaTeXのファイルサイズ、322441バイト(180115文字)。  画像のファイル数、87個。
    という感じでした。ただし、これはすべてのファイルなので、 個人的なマクロ定義が入っているものなども含まれています。 章末問題・解答・プロローグ・エピローグなどを除いた本文のみですと、
     LaTeXのファイル数、5個  LaTeXのファイルサイズ、229797バイト(121387文字)
    という感じになります。平均は24277文字、標準偏差は5476です。
    先週の結城メルマガにも細かく書きましたが、 Web連載から第5章を「再構成」するのはほんとうに難産でした。 でも、十分に練ることができたので、いまは大きな手応えがあります。 これから出版までさらに磨きをかけていかなくては。
     * * *
    画一化と型の話。
    先日ある方が、子供の読書感想文に関するツイートをしていました。 その方はもう元ツイートを削除してしまったので、 ここではリンクしません。
    ツイートの主旨は、読書感想文の書き方に関して、 学校から渡されたプリントがあまりにも画一的なので、 これではまずいのではないかというものでした。
    以下は概略です。 実際にプリントでは各項目に具体例も付記されていました。
     ・書き出しは、小説の一部を抜き出す。  ・書き出しの続きは、自分の考えを書く。  ・本文1、本を選んだきっかけ、読み始めの感想を書く。  ・本文2、自分の体験を書く。  ・本文3、書き出しに戻り、最初の感想に付け足す。  ・本文4、その本を読んで自分がどう変わったかを書く。
    ツイート主は「画一的な読書感想文が生まれる」 という危機感を抱いたようですが、 結城はその正反対で、とてもよいプリントだと思いました。
    文章の型を具体的に提示し、 ここにはこういう内容を書きなさいと指導するのは、 文章を学ぶいい方法の一つであると思います。
    確かに、文章の型は画一的に見えますが、 もともと「型」というのはそういうものです。 この型に対して書く人が内容を注ぎ込んでいくのですから、 内容まで画一化されることはありません。
    型が決められることで、自分の心の中から何を取り出し、 それを文章のどこに入れるかが明確になります。 これによって助かる子供は多いのではないかと想像します。 そしてこのような「型」に従うことは読書感想文に限らず、 論文など多くの文章にあてはまるはずです。
     * * *
    文明の利器の話。
    暑いとクーラーをつけます。 クーラーで涼みながら、 「ああ、クーラーは文明の利器だなあ……」 と思います(思いませんか?)。
    ところでふと、
     クーラーは文明の利器である
    とは考えるけれど、
     スマートフォンは文明の利器である
    とはあまり考えないな、と思いました。 そんな話をツイートしたら、@akiyama924 さんから、 こんなリプライをいただきました。
     --------  自然に勝利した感覚が薄いからではないか?はと思いました。  https://twitter.com/akiyama924/status/761365640250699777  --------
    なるほど、と膝を打ちました。 確かに、暑くて暑くてしょうがないという自然界の状況を、 われら人間は文明の利器たるクーラーをもって改善する。 暑さに勝利! それに対して、スマートフォンは「自然に勝利」した感じがしません。 確かにそうですね……
     * * *
    藤井さんの話。
    ボイジャーのパンフレット『これからの本の話をしよう』2016年版に、 作家の藤井太洋さん(@t_trace)の文章 「世界への挑戦」が掲載されていました。
    この「世界への挑戦」には、藤井さんが『Gene Mapper』を 世界で売っていこうとするようすが描かれています。 いくぶんかは技術の問題、いくぶんかは文化の問題、 そしてまたいくぶんかはビジネスの問題として描かれています。 藤井さんがそれらをどう考えて乗り越えようとしたかが、 具体的&簡潔に書かれているのです。
    結城はたままたこの文章を読んで、大きなはげましを受けました。 作家を目指す人、文章を書いて生きていくことを考えている人には 特におすすめです。
     ◆『これからの本の話をしよう』2016年版  http://www.voyager.co.jp/archive/pamphlet/main_pamph_2016_japanese.pdf
     * * *
    いらいらの話。
    ある日、スーパーのレジに並んでいました。 いつもと違って長時間待たされています。 長い列になるのはいつものことだけど、 ふだんはもっとサクサクとお客さんがさばかれていくはずなのに。
    少々いらいらしつつ、前の方をながめてみると、 どうやらレジに立っていたのはアルバイトの高校生のようでした。 元気に作業しているのだけれど、どうしても手際が悪い。
    ああ、このために待たされていたんだな……と気付くと同時に、 さっきまで感じていたいらいらが、 いつのまにか消えていたことにも気付きました。
    待たされる原因がわかったから「いらいら」が消えたのか。 それともアルバイトの高校生を応援する気持ちから 「いらいら」が消えたのか。 本当の理由はわかりませんが「いらいら」が消えたのは確かです。
    人間の心は不思議ですね。 状況は変わらないのに「いらいら」が消えたことを興味深く思いました。 待たされることは「いらいら」の原因すべてではないのですね。
     * * *
    戦争の話。
    戦争というと「悲惨な事態」を想像する人が多いと思います。 私もそうです。でも、こんなことをふと思いました。
    自国が、ある国に対して戦争を仕掛けたら、自国経済が上向きになるとする。 それとともに国内問題の大半が、短期間できれいさっぱり解決する。 客観的に考えても、確かにそうだと思える。 そのような場合であっても戦争を開始しない勇気が必要ではないか。
    要するに、自国に悲惨な事態がまったく起きないと仮定した場合に、 戦争を開始しないのは可能だろうかということ。
    現実的な仮定じゃないって? でも、軍需景気というのはよくある話ですよね。
    もう少し考えを進めてみましょう。
    ある国に戦争を仕掛けたときに、自国の誰も怪我したり死んだりせず、 さらに、相手国の誰も怪我したり死んだりしない場合はどうだろう。 相手国のすべてが自国のものになり、 結果として、相手国の国民が豊かな生活を享受できるという場合、 その場合はどうだろうか。 それでもやはり、戦争は絶対的な悪だとみんなは考えるだろうか。
    戦争とは何か、戦争はなぜいけないかに関連した話題は、とても難しい。 命を奪うのはよくない。怪我をさせるのはよくない。 では、命を奪わず怪我もさせないならいいのか。 経済的損害を与えるのはいいのか。 経済的制裁と呼ばれる行為はどうか。 どこかに恣意的な線引きを入れないと何も主張できそうにない。
     * * *
    経済的初等整数論の話。
    先日、パソコンのサポート業務契約の「m年縛り」の話を聞きました。
    たとえば「2年縛り」と「3年縛り」を組み合わせると、 解約時の「違約金」を0円に抑えるためには実質「6年縛り」 になるという話です。 「2年縛り」が切れる2年後には「3年縛り」が生きているからです。
    これを一般化すると、「m年縛り」と「n年縛り」を重ねることで、 「mとnの最小公倍数」ごとにしか解約しにくい仕組みということですね。
    恐るべし、初等整数論を知らないと不利益に気が付かない世の中……
     * * *
    ペンの力の話。
    先日の都知事選挙で候補者の一人が「ペンの力」を信用していない、 という発言をしていました。 この候補者がもともとジャーナリストだったこともあり、 ネットのあちこちで物議を醸していました。
    政治的な話はさておき、結城はこの話題を見かけたとき、 「ペンの力」とは何だろう、と思いました。 また「ペンの力を信じる」とはどういうことだろうとも。
    もちろん、一般的な比喩として「剣」に対抗する「ペン」、 すなわち武力や権力に対抗する学問や文筆は知っています。 しかしながら、自分の言葉として的確に「ペンの力」 を定義したり説明したりすることは難しいな、と思いました。
    考えてみればそれは当然です。メタファーというのは、 複雑な要素が絡み合うものを端的に表現するために使われるわけですからね。 簡単に説明できるなら「ペンの力」なんて持ち出す必要はないのです。
    「ペンの力」とは何だろうと考えた理由は何かというと、 最近ずっと『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』 の執筆と推敲を行っていたことにあります。 結城は、文章を書きながら、一つ一つの言葉に対して、
     ・具体例と共に適切に説明されたか  ・読者の中にわかりやすいイメージは伝わっているか  ・そして、正確な定義もまた伝わったか
    を検討する作業を延々と続けているのです。 そのため、ふと耳にした「ペンの力うんぬん」 という言葉に対しても同じような態度で接してしまったのですね。 頭がいわゆる「推敲モード」になってたわけです。
    たとえば、こんなことを考えます。
     ・「ペンの力を信じる」のと「言葉の力を信じる」は同じか?  ・「ペンの力を信じる」のは書く側か読む側か?  ・「ペンの力を《信じる》」というのは、   「ペンには力が《ある》」や「ペンには力が《あると考える》」と、   同じなのか?
    半分言いがかりみたいな問いかけで構わないから、 自分に対していくつも発して、それに答えてみる。 自分が「いじわるな読者」になったつもりで問いを作り、 それに対して誠実に答えようと試みる。
    そのような自分自身との対話を繰り返すと、 一つの概念(たとえば「ペンの力」)を、 自分がよく理解しているかどうか試すことができるのです。 これは、結城が本を書くときに日常的に行っている行為そのものです。
    「いじわるな読者」というのはもちろん仮想的な存在です (ええと……そう、願いたいです)。 文章の言葉尻をとらえて、わざと曲解したり、読み飛ばしたりする存在。 心の中にそのような読者を持っている著者は、 推敲のときにたいへん助かります。 書かれた文章の弱い部分を発見することができるからです。
    推敲モードの結城は、 一日中ずっと「心の中のいじわるな読者」と対話を続けているようです。
     * * *
    Kindle Unlimitedの話。
    アマゾンでKindle Unlimitedのサービスが始まりました。
    Kindle Unlimitedなら、電子書籍読み放題といわれて、 試しに使用開始してみました。ただし読み放題といっても、 「(Kindle Unlimitedとして登録されている電子書籍は)読み放題」 という条件が付きます。
    さっそく何冊かピックアップして読もうとしたのですけれど、 読み放題だからといっても、そうそう読めるものではありませんね。 それに何より、すでにお金を払って購入した本(いわゆる積ん読) がたくさんありますし。
    結局、何日か利用した後、ぜんぶの本の利用を終了しました。 Kindle Unlimitedで読み放題だからたくさん読める! ……という本の選び方は、どうも私にはあまり向かないようです。
    もちろんこれはKindle Unlimitedやそのユーザを批判したり、 非難しているわけではありません。 本の選び方や読み方というのは個人の自由ですからね。
    もともと結城は「セールだから買う」という行動を取ることは少ないようです。 私の場合、読書に対する障害は、 時間と読みたい気持ちと能力であることが多いです。 時間がなくて読めない、あまり気が乗らなくて読めない、 難しすぎて読めないという三パターンですね。
    読みたい本や読むべき本は、セールだろうがそうでなかろうが、 読みたい気持ちが湧いたとき、すぐに入手しようと心がけています。
    読みたいときにすぐ買って読みたい。 電子書籍は、その気持ちを実現させてくれる仕組みだと思います。
    先日、調べたいことを急にバスの中で思いつき、 その場ですぐに電子書籍で参考書を購入し、 バスの中で読み始めました。そしてバスが目的地に着く前に調べ物は解決。 こういうことができるのは、電子書籍の素晴らしい点ですね。
    Kindle Unlimitedの品揃えが変われば、 以上のような考えはまた変化するかもしれませんけれど。
    Kindle Unlimitedが、 アマゾンプライムの1サービスになってくれたらいいのになあ。
    とりあえず「無料お試し期間が終了したら課金されない」 という以下の設定をしておきました。
     ◆【要注意】Kindle Unlimitedの30日間お試し期間以降、   自動更新されないように設定する方法  http://www.danshihack.com/2016/08/04/junp/kindle-unlimited-5.html
     * * *
    では、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(3)
    終戦記念日に思うこと
    イチローと、時間・脳みそ・言葉 - 仕事の心がけ
    ロマンティック数学ナイトへの出題、結城浩の《挑戦状》
    おわりに
     
  • Vol.228 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(2)/夏休みの読書案内/

    2016-08-09 07:00  
    216pt
    Vol.228 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(2)/夏休みの読書案内/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年8月9日 Vol.228
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    暑くて、解けかけています……
     * * *
    講演会の話。
    今週の結城メルマガでは、 先週に引き続き「数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)」として、 講演を読み物にしたものをお送りします。
    この講演は筑紫女学園中学校の「夏休み期間の特別授業」 という位置づけになっています。 結城が中学生に講演をするというのは初めてのことなので、 たいへん楽しい時間でした。 企画してくださった先生に心から感謝です。
    結城は本を書くことが仕事ですし、 顔出しNGで活動をしていますので、一般向けの講演会は行っていません。 これまでに何回か行った講演は、 ほぼすべてが学校関係者向けのものでした (研究者、大学院生、大学生、高校生、高校教師など)。 今回もその流れではありますが、中学生は初めてですね。
    単純にコストパフォーマンス(単位時間あたりに稼ぐお金)でいえば、 講演会というのは割に合いません。 講演会向けの話を考える時間、講演の練習をする時間 (ある程度の長さのお話をするわけなので、必ず練習を何回か行います)、 当日の移動時間などを考えると、どうしても……
    しかしながら、若い人へメッセージを送るというのは、 とても大事なことだと思っていますので、 オファーがあると結城なりに調整したり、 ギャラの交渉をしたりして、 何とかいい方向に持って行こうと思っています。 結城を呼んでくださる学校の方は、 数学ガールや結城の活動を熟知しているので、 かなり頑張ってくださっています。感謝です!
    でも、交渉ごとは、いったん決まってしまった後では、 あまり意味を持たなくなります。 講演をすることも、本を書くことも、 《読者のことを考える》というスタンスに変わりはないからです。 いったん引き受けたお仕事ならば、 《相手》のことをよく考えて、そこに最高の私を注ぎ込む。 その心意気が大事であると思っています。 仮にギャラが一万円アップしたから、 品質も一万円アップ!なんて器用なことは難しいですしね。
    お金はお金に過ぎません。時間は時間に過ぎません。 でも、他ならぬ《わたし》が、 他ならぬ《あなた》に出会う場面というのは、 たぶん一生に一回きりです。その場を最高に演出し、 結城が話す中学生たちに最高の体験をしていただくことは、 何よりも大切なことだと思うのです。
    なぜなら、未来を作るのは彼女たちだからです。 自分が老いた後、自分が死んだ後、彼女たちがみずから考え、 判断し、未来を作っていく。だとしたら、 彼女たちに「結城が与えることのできる最高のメッセージを送る」 という態度は、私自身が未来に生き、 間接的に未来を作っているといえないでしょうか。
    言い換えるなら、若者によいメッセージを送るというのは、 自分の命を効果的に使っているといえます。 若い人に、若い心に、自分が送ることのできる最高の言葉を送る。 最高のメッセージを伝える。その言葉を、 そのメッセージをどのように具体的に使うかは、若者に託す。 それは、自分の願う最高の未来を作る方法ではないでしょうか。
    結城はそんなことを考えながら、講演用のスライドPDFを読み返し、 こまごまと直して当日に臨みました。
    これまでの講演会は、みなさんにとても好評でした。 数学の先生にお会いしたときには、講演会後に、 書籍にサインしたり握手したりはげましたり、 お互いにエールを送り合うよい時間となりました。 結城は、生徒に接している現場の先生方を深くリスペクトしているのです。
     * * *
    ポケモンGOの話。
    ポケモンGOが流行しています。
    いちおう結城もインストールして少し試しているのですが、 あまり熱心ではないのでレベルがさっぱり上がりません。
    先日の講演会から帰ってきたら、 妻が満面の笑顔で「ポケモンGO楽しい!」 と私を迎えてくれたのが印象的でした。 あなた、いつ始めたんですか。
    それはそれとして、 確保したポケモンに名前を付けられるというので、 少し数学的な名前を付けてみました。
    ちょうどWeb連載「数学ガールの秘密ノート」の「広がる複素数」 を書いているところなので、それに関連して……
     ◆ドードリオに名前を付けました
     * * *
    なまけごころの話。
    あなたは、
     「夏休みは、時間がたくさんある」
    などと思っていませんか。それはまちがいです。
     夕方には「明日の朝があるからなあ」と思い、  明日の朝になったら「夕方があるからなあ」と思い……
    詳しくは徒然草第92段をお読みください。
     ◆夕べには朝あらむことを思ひ(徒然草 第九十二段)兼好法師作 結城浩訳  https://note.mu/hyuki/n/n3e3340ada890
     * * *
    割り込みの話。
    先日 @naoya_ito さんがこんなツイートをしていました。
     -----------  Slack や SNS や iPhone の通知そのほかによる割り込みを  自分なりにマネジメントして  より長く集中力維持できる自己マネジメントができる人が  そうでない人を出し抜く世界は今後も続くでしょう  https://twitter.com/naoya_ito/status/756263944780513281  -----------
    なるほど。確かに、深く考えたり、集中して作業したりしているときの 「割り込み」というのはとても破壊的です。 たとえば、何かを考えている途中に電話が掛かってくる。 これはちょうど「賽の河原」で石を積んでいるときに鬼がやってきて、 ガッシャーン!と石をひっくり返していくのに似ています (似ていますといっても見たことはないですが)。
    自分の方から「どれ、一息入れようか」として中断するのと、 外部からの割り込みによって中断させられるのとでは天地の違いがあります。
    幸いなことに現在の結城はカフェで仕事をすることが多く、 外部から割り込みが掛かることはほとんどありません。 メールは自分で取りに行きますし、 メッセンジャーの類いも通知はほとんど切っています。 仕事で私に電話を掛けてくる人は誰もいません。 仕事以外でも、私に電話を掛けてくるのは妻だけです。
    結城は午前9時ころから18時〜20時ころまで、 外部からの割り込みをまったく受けずに済む環境で 仕事が出来ていることになりますね。 これはたいへんすばらしいことです。
    知的生活者に取って、 集中して考えることができる時間は宝物です。
    そのためには、割り込まれないようにする工夫と努力が必要です。 もちろん、仕事によっては、 他の人とのやりとりが不可欠な人は多いでしょう。
    しかし、それでも、まとまった時間は必要です。 集中して、思考の品質を高くするための時間がなければ、 アウトプットの品質も高くはならないはずですから。
    あなたは、自分が集中して考える時間をどのように確保していますか。 外部からの「割り込み」を防ぐ工夫をしていますか。
     * * *
    「ハンロンのかみそり」の話。
    世の中にはときおり「陰謀論」が流行ります。 「陰謀がない」ことを証明するのは、 いわゆる悪魔の証明になりますので、極めて困難です。
    そんなとき、 心の片隅に「ハンロンのかみそり(Hanlon's razor)」 を置いておくのは無駄ではないでしょう。 「ハンロンのかみそり」というのは、
     「無知や誤解から起きたことを、   悪意のせいにしてはいけません」
    という主張です。陰謀論に適用するならば、
     「それは、あいつの陰謀じゃない。   あいつが無能なだけだ」
    となるでしょうか。
     ◆ハンロンのかみそり(Hanlon's razor) - Wikipedia  https://en.m.wikipedia.org/wiki/Hanlon%27s_razor
     * * *
    プログラミング言語の話。
    プログラミング言語を学んでいる人はよく感じると思いますが、 世の中には無数のプログラミング言語があり、 それぞれのスピードで進化をしています。
    最先端でプログラミングをしている人は、 それらの技術を概観しつつ、 ここぞという大事なポイントでは深く学ぶことを繰り返していると思います。 技術の進化に合わせて言語も変化することがあるからです。
    ところで、それとは別の観点もあります。 プログラミング言語は「言葉」なのですから、 長い時間にわたって考えを伝え続けるという役割もあります。
    ですので、変化せずに(あるいは変化がゆっくりで)、 長く続いていることもまたプログラミング言語の美徳の一つ。 その意味で、昔生まれたプログラミング言語で、 いまでも使われているものは注目に値すると思っています (C, Lisp, Smalltalkなどを念頭に置いて書いています)。
    要するに私は、最新技術を使って大量のコードを生み出すだけが、 プログラミング言語の役割ではないと思っているということです。 自分のちょっとしたニーズを満たすため、 他人にアルゴリズムを伝えるため、 さらには純粋に楽しみのため。 プログラミング言語は、 さまざまなコーディングシーンの基盤となる存在なのです。
     * * *
    Evernoteに定型文を書き込む話。
    プログラミングといえば、 先日 @rashita2 さんがこんな記事を書いていました。
     ◆対話で進捗を記録し、Evernoteにノートを作る「進捗くん」  http://rashita.net/blog/?p=18588
    詳しくは記事を読んでいただく方がいいのですが、 内容はタイトルの通りです。
    「実行すると、進捗を問い合わせるダイアログが表示され、 それに答えると整形してEvernoteにノートを作る」というプログラムです。 プログラムといっても、 AppleScriptという簡単なスクリプト言語で書かれているので、 手直しして自分なりのプログラムに改造するのは難しくないでしょう。
    ポイントは二点あります。
     ・対話的なやりとりによって入力を促す仕組み。  ・定型文をEvernoteに書き込む仕組み。
    あの記事に書かれている「進捗くん」というプログラムを読めば、 この二点がどのように実現されているかがわかります。
    そこで、こういう問いかけができます。 この二つの仕組みが自由に使えるとしたら、 どんな便利な自分用のツールができるだろうか?
    進捗の記録というのは一つの応用例に過ぎません。 Evernoteを使っている人ならば、 自分が繰り返し記録している内容に思い当たるでしょう。 「それ」を対話的に実行するツールが作れる (かもしれない)ということですね。
    何かおもしろいもの、できないかな。
     * * *
    表現と関係の話。
    たとえば、それは大きな音だ。感動的な愛の告白でもいい。 あるいは視界のすべてを覆う深紅でもかまわない。 とにかく何らかの意味で注目を集めることが必要になる。
    何のために?
    そのまま続けて見てもらうために。 そのまま続けて読んでもらうために。 そのために、注目を集めることが必要になる。 作り手にとってはね。
    本当かなあ。
    本当だよ。注目を集めることは、 何らかの方法で受け取り手との関係を作り出すことになるから。 ある作り手は残虐な表現やエロティックな表現で 関係を生み出すことを試みる。 またある作り手は素朴な表現や可愛らしい表現や切ない表現で 関係を生み出すことを試みる。
    関係を、生み出す?
    作り手と受け取り手の間に関係が構築できなければ、 どんな映像もどんな言葉も虚空に消えてしまうから。
    本当かなあ。
    本当だよ。しかし大切なことはもっとあって、 それは、生み出した関係が、 刹那的なものなのか継続的なものなのかということ。 大きな音で今回は見てくれるさ。 可愛らしい表現で今回は読んでくれるさ。 でも、次はどうだろう。さらにその次はどうだろう。 継続的に見てくれるか読んでくれるかという問題に、 どう対処すればいいんだろう。
    もっと大きな音を出す? もっともっと可愛らしくする?
    そんなのは、インフレを起こすに決まっている。 だとしたら、どうすれば、 作り手と受け取り手の間に継続的な関係が結べるのだろうか。
     * * *
    iTerm2のインライン画像の話。
    先日 @mzp さんの以下のツイートを見て、 iTerm2でインラインに画像表示ができることを知りました。
     ----------  iTerm2のインライン画像表示を試したかったので、  NEW GAME!のコマを検索するコマンドラインツールを作ってた   https://twitter.com/mzp/status/756689753412476928  ----------
    調べてみると、imgcat(画像表示)、imgls(画像一覧) などのコマンドがすでに公開されているようです。
     ◆Images - iTerm2  https://www.iterm2.com/documentation-images.html
    たとえばimglsは画像の一覧表示(画像版のls)ですが、 中身はスクリプトなので、 自分好みに大きさや表示形式をいじることも簡単にできそうです。 結城はコマンドラインの操作が大好きなのですが、 画像の一覧を得るときだけはFinderを使っているので、 このimglsを改造して自分用のツールが作りたくなってきました。
     ◆imgls  https://raw.githubusercontent.com/gnachman/iTerm2/master/tests/imgls
     * * *
    円周率の話。
    「円周率の日」というと「3月14日」が思いつきます。 もちろん、円周率の近似値である 3.14... から来ています。
    ところで先日は別の「円周率の日」というのが話題になっていました。 結城はこれを @hisano_yuki さんのツイートを見て知りました。
     https://twitter.com/hisano_yuki/status/756282442428715009
    その日というのは7月22日のことです。 「7分の22」という比の値は円周率にとても近いというのです。 実際、
     22/7 = 3.142857142857...
    ですので、3.14 まではしっかりと円周率の近似値になっていますね。 いわば、22/7というのは「円周率の日」ならぬ「円周率の《比》」と言えましょう。
    ところで、結城はふと、 「月と日の比が3.14...になるのってそんなに少ないの?」 という疑問を抱きました。22/7以外にも三つくらいありそうじゃないですか。
    ということで、3.1ナントカになる日を計算してみました。 すると、
     6月19日 19/6 = 3.166666666666666...  7月22日 22/7 = 3.142857142857143...  8月25日 25/8 = 3.125  9月28日 28/9 = 3.111111111111111...  10月31日 31/10 = 3.1
    ということで、 なんと3.14まで正しい近似値になるのは、22/7唯一なのです! ちょっと、驚きです。
    なお、この計算は以下のRubyプログラムを書いて行いました。
     ◆一年で、月と日の比が円周率に近いのはいつか?  https://gist.github.com/hyuki0000/adcc535e5faa17af8e9f5995ac1f34e8
     * * *
    では、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(2)
    夏休みの読書案内 - 数学ガールの次に何を読みましょうか(中学生・高校生へ)
    個人的な数学愛好家として数学を学ぶ
    賢さを誇るということ
    おわりに
     
  • Vol.227 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(1)/なぜあの人は、いつもああなのか/

    2016-08-02 07:00  
    216pt
    Vol.227 結城浩/数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(1)/なぜあの人は、いつもああなのか/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年8月2日 Vol.227
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    もう八月になりました! 毎日暑くて、解けてしまいそうです…
    私のまわりには暑さのためか体調を崩している人が多いのですが、 あなたはいかがですか。
     * * *
    「数学ガールの特別授業」の話。
    ちょうど一週間前、2016年7月26日(火)に結城は、 福岡の筑紫女学園中学校で特別授業(講演)を行いました。 夏休みの特別企画として生徒さんに「言葉が持つ力」という話をしたのです。
    いつものように当日の講演会は録音してきましたので、 これを文字に起こして加筆修正を行い、 読み物としてこの結城メルマガで配信したいと思います。
    数回に分けて配信しますが、今回はその一回目です。 ぜひお読みくださいね。
    今回の配信分PDFのURLはこのメールに含まれています。 過去に実施された「数学ガールの特別授業」のようすは、 以下のページにバックナンバーとしてまとめてあります。
     ◆数学ガールの特別授業  http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
     * * *
    重版出来の話。
    『数学文章作法 推敲編』と『暗号技術入門』 の重版連絡が相次いでやってきました。 「重版出来!」はとてもうれしいニュースですね。 どちらの本もロングセラーとして、 この本を必要とする読者さんのお役に立つのを願っています。
    『数学文章作法 推敲編』は刊行したのが2015年でしたから、 一年ちょっとでの重版になりました。 基礎編に比べるとゆっくりしたペースですが、 初版の部数がずいぶん多かったことと、 また電子書籍が健闘していることが影響しているかもしれません。
    『暗号技術入門』は今回で5刷となります。 こちらも多くの人に大事にされるロングセラーとなっています。
    みなさんの応援、いつもありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    新刊『百年後の詩人』(結城浩著)のあらすじは以下です。
    その時代、詩人たちは、 「プログラマに適切な比喩と関数名を与える」 という仕事だけをこなす毎日を過ごしていた。
    あるとき、ひとりのカリスマのもとで詩人たちはついに蜂起した。 「言葉は力である」と自覚していた詩人たちが取った革命の方法は、 やがて予想もしなかった未来を生み出していく。
    詩人たちがカリスマの助けを得て取った方法とは、 《語義の間隙》をねらう方法だった。 「一つの単語には一つの意味」という《単一語義原則》に慣れたプログラマは、 詩人たちのその仕掛けに足をすくわれる形となる。 プログラマがパッケージ名、モジュール名、関数名、メソッド名、 というそれぞれの名前空間で同じ語句を使ったときに発動する、 《語義の間隙》とは。
    主人公のプログラマ「ロゴス」は、 日々の労働に嫌気がさしていた。 生活のためと飛び込んだ企業では、 毎晩のように真夜中過ぎまでの労働が続く。 確かにプログラマは「言葉を並べる仕事」だ。 しかし、自分が思っていたのはこういうんじゃないんだ。
    ロゴスの恋人「ラング」は逆だった。 自分にプログラマの才能があると知りながら、 絵本に関わる出版社に勤務する毎日。 自分が書くならまだしも、 わけのわからない絵本作家におべっかを使う毎日。 しかし彼女はコンピュータに関する天賦の才能があった。 その力はまさに《語義の間隙》事件によって開花する。
    一ヶ月ぶりに出会い、愛を確かめるロゴスとラング。 しかし、その場で二人は同じプロジェクト「コンテキスト」 に関わっていることを知る。 偶然だね、と笑ったのもつかの間、 ロゴスのクライアントであるチョムスキーが不可解な事故に遭い、 その犯人としてロゴスが指名手配になる。
    ロゴスを助けようとするラングの働きは、 ラングと関わりの深い絵本作家ヘボンによって阻止される。 反発するラング。しかし、そこに働いていたのは、 名前空間を支配する謎の組織「メタコンテキスト」の強大な力であった。
    ロゴスの疑いを晴らし、 メタコンテキストの野望を打ち砕く方法は「言葉の種」 を見つけることと知ったラング。 しかし、苦労の末に見つけた「言葉の種」は偽物であった。 絶望に陥るラング。しかしその時ロゴスが残したメモに気づく。 そこに本物の「言葉の種」を見出す方法が書かれていた。
    苦難の末に本物の「言葉の種」を見つけたラング。 これでロゴスを救い出せると思ったが、 すでにロゴスはメタコンテキストの洗脳にあっていた。 だれの愛も信じられないロゴス。 ラングは「言葉の種」がそのままでは「種」にすぎないことを知る。 芽を出し成長させなくては言葉に意味はない。
    それに気づいたラングは、 ロゴスがもとの心を取り戻すために「言葉の種」をすべて費やす。 持っているすべてを失ったラング。 しかし、その腕を支え抱きかかえたのは、洗脳が解けたロゴスだった。 彼はラングの活躍によって、 言葉が固定的なもの・死んだものではなく、 生きているものであることを知ったのだ。
    「言葉は、誰かのところで止まったときに死ぬ。 しかし、次の誰かに伝わったときに新たな命を得る」 ロゴスとラングが悟ったのはこのことだった。 メタコンテキストは、言葉を固定することで、 世界を支配しようとしていたのだ。 二人は力を合わせてメタコンテキストのアジトにたどり着く。
    しかしすでにもぬけのから。 メタコンテキストの幹部らは、劣勢を悟って逃亡していた。 「言葉は固まってるのに、逃げ足だけは早いな」 と嘯くロゴス。蹴飛ばすラング。
    ロゴスとラングの生きた言葉を守る小さなユニットと、 死んだ言葉で世界を膠着させるメタコンテキストとの、 長い戦いがいま始まったのだ。
    以上が『百年後の詩人』のプロットになります。 壮大だ!
    ……という新刊ジョークを考えたんですが、 ジョークとしてプロットを書いているうちに、 私自身も読みたくなってしまいました。
    いったい、いつ書くんでしょうね!
     * * *
    (ほんとうの)新刊の話。
    秋に刊行予定の『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』 の執筆が佳境に入っています。7月末までに本文を仕上げるつもりでしたが、 さまざまな理由によりだいぶ遅れています。
    現在は第4章に取り組んでいます。第4章と第5章の内容配分で、 あれこれ練り直しを行っていたのがようやくかたまったところ。 だいたい執筆が遅れるときというのは理由があって、 盛り込みたい内容が多すぎるんですよ。
    内容が多すぎるために整えるにも時間が掛かり、 全体像を把握して取捨選択するためにも時間が掛かる。 書くのも読み返すのも時間が掛かる。 ですから「どうも進捗が悪い」というときには、 自分の能力を疑う前にページ数を数えるというのは現実的な話。 現実のページ数を把握せずに、自分の理想を追っても、 なかなか進捗せずにいやになってしまいますからね……
    ……などと他人事のようにいってはいられないので、 ちゃくちゃくと書き進めなくては。
    がんばろー!
     * * *
    表現する話。
    Twitterで @51D_Mustang さんが、 『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』 のエピローグに出てきた《微分する機械》をプログラムとして表現していました。
     https://twitter.com/51D_Mustang/status/754029211464019968
    多項式として表現されている関数の係数列から、 微分した導関数の係数列を得るという処理を行うプログラムですね。 こんなふうに、プログラムを使って《表現する》 というのはとてもすばらしいことだと思います。
    プログラミング言語は言葉。 プログラムを書くというのは、文章を書くことに似ていて、 自分が考えたことを「こういうことだよね」と表現する行為です。 しかも、実際にプログラムを動作させて、 「ほら、確かに思った通りに動いた」と確かめることができる。
    時代が時代なら、研究者がのどから手が出るほどほしがった計算機資源を、 現代の私たちはたっぷり手にしています。 「プログラミングによって自分の考えを表現する」というのは、 現代ならではの表現方法ですよね。
     * * *
    疲れているときの話。
    結城は、疲れているときやがっかりしているとき、 他の人をはげましたり応援したくなる場合がある。 それは、自分に何か見返りが欲しいという気持ちとは少し違う。 自分が受け取りたいものを、せめて人には渡したいという気持ちなのだ。
    よく似ているのは、身体が疲れてこわばっているとき、 妻の肩を揉んだり背中をマッサージしたくなること。 なぜかわからないけれど、 自分が苦しいところを見極めて相手に仕えると、 自分も楽になる。不思議な法則がそこにある。
    聖書の「自分がして欲しいことを相手にしてあげなさい」 というのは真理なのだ。
     * * *
    「連ツイ最前線」の話。
    結城は日常的にTwitterでツイートしています。 また、意識的に「自分あてにリプライ」をする「連ツイ」を行っています。
    ところで、ある瞬間を切り取ってみると、 複数の「連ツイ」が「書きかけ」になっていることになります。 たとえば結城は毎日「森を抜けて仕事場へ」のツイートを行いますが、 そこには「お仕事の作業記録連ツイ」が続いています。 その他にも、ハイになったときに書く突発的な連ツイがありますし、 特定の話題に関して少しずつ進んで行く連ツイもあります。
    そこで、 現在の「連ツイ書きかけ最前線ツイート群」 がわかるといいんじゃないかな!と思いました。 そういう「最前線」が見やすくなっていれば、 「さっきまで考えていたこと」 の続きとしてリプライをそこに繋げることができる。
    ……と考えたので実際に 「連ツイの最前線ツイート群」が自動的に作られるようにしました。
     ◆連ツイの最前線ツイート群  http://rentwi.textfile.org/html/latest.html
    これで、複数個流れている「結城の連ツイ」スレッドの最前線が 伸ばしやすくなったはずです。 「最近、どんなこと連ツイしてたっけ?」へ答えるソリューションです。
    こういうプログラミングしているときって、 すごくワクワクします。アイディアが形になり、 しかも毎日が少し便利になる。これってなかなかいい感じ!
     * * *
    ゲームの話。
    結城はiPhoneでパズルゲームを解くのが好きです。 アクションゲームみたいなのはぜんぜんだめなんですが、 静かに考えて解くタイプのゲームは大好き。
    特に今回ご紹介するようなアブストラクトなゲームはすごく好き。 この klocki というゲーム(クロッキーと読むのかなあ)は、 言葉で説明するのは難しいんですが、とにかく「繋げる」パズル。
     ◆Maciej Targoni「"klocki"」楽しいパズルゲーム  https://itunes.apple.com/jp/app/klocki/id1105390093?l=en&mt=8
    説明は言葉でいっさい出てこないし、 チュートリアルもない。ただ画面にオブジェクトが表示されて、 「さあどうぞ」といわんばかりにユーザの操作を待つ。
    そこに置かれる丸いものはタッチするたびに回転する。 レバーがあったら回すことができる。 触れると色が変わる四角いパネルは、他のパネルと交換できる。 ……といったゲームのルールはいっさい《説明されません》。
    ルールを自分で見つけ、求められている最終形態も自分で想像する。 そんな不思議なパズルがklockiなのです。
    たとえば、この画面、どんな操作が可能か、想像できますか?
     ◆klocki(スクリーンショット)
    そしてたとえば、この画面。 何をどうすれば「解けた状態」になるか想像できますか?
     ◆klocki(スクリーンショット)
    結城はすでに全面コンプリートしたのですが、 そのミニマルでおしゃれなデザインが好きなので、 いまでもときどき遊んでいます。
    それにしてもこういうパズルゲームを考える人の頭の中って、 いったいどうなっているんでしょう!
     ◆Maciej Targoni「"klocki"」楽しいパズルゲーム  https://itunes.apple.com/jp/app/klocki/id1105390093?l=en&mt=8
     * * *
    Evernoteの話。
    先日書籍執筆に関係した調べ物で、Webを検索していたところ、 Evernoteが、
     「いま検索した語句と関連しているノート」
    というものをチラ見せしてくれました。 それが意外にもたいへん有効で、
     「おお、そういえばこれも必要な話だった。ありがとうEvernote!」
    という経験に結びつきました。 Evernoteはなかなかあなどれません。
     ◆Evernoteは関連したノートを見つけ出してくれる(スクリーンショット)
    正直な話をしますと、 この機能がいままで役立ったことはほとんどありません。 でも、今回はたいへん役立ちました。
    何しろEvernoteに入っている情報は、すべて私の関心事でありますし、 また世界中を検索しても見つからないものである場合も多いのです (当然ながら)。
    今回「関連したノート」をチラ見せしてもらい、結城は、 自分の個人的な秘書がそばでささやいてくれたような、 そんな気持ちになりました。
    こういう道具をずっと進化させた先には、 未来の知的生活者の道具があるのかしら。
    自分が本を書いていると、ときどき、 「ねえ、結城さんが最近書いている文章のことだけどさあ……」 と教えてくれるような知的主体のような存在が。
     * * *
    では、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(筑紫女学園編)(1)
    「なぜあの人は、いつもああなのか」
    教師とは何だろうか - 教えるときの心がけ
    おわりに
     
  • Vol.174 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(4)/自分を発見する - 本を書く心がけ/中断の効用 - 文章を書く心がけ/

    2015-07-28 07:00  
    216pt
    Vol.174 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(4)/自分を発見する - 本を書く心がけ/中断の効用 - 文章を書く心がけ/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年7月28日 Vol.174
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    偏差値の話。
    ここしばらくWeb連載「数学ガールの秘密ノート」は「やさしい統計」シーズンです。 先週は、偏差値と標準偏差についての数学トークでした。
    「偏差値」というのは現代日本で非常によく使われる単語ですよね。 偏差値について、受験に関わる人はいつも意識していますし、 へたすると大学に入ってからも意識するかも。 でも、意識している人数に比べたら、 偏差値の「定義」をきちんと言える人数はずっと少ないはず。 今回のミルカさんはそのあたりをきちんと突いていましたね。
     ◆第124回 散らばりの驚き(後編)  https://bit.ly/girlnote124
    世の中にはそういうことは意外と多いです。 ふだんから気に掛けているけれど、正確な定義を知らない概念。 正確な定義を知らず、その意味を明確に理解しないまま、 一喜一憂するというのは考えてみればおかしなものですね。
    などと上から目線で書きましたが、 結城自身、今回の「やさしい統計」シーズンを書いてみて、 初めて正確に偏差値の意味を学ぶことができました。 そしてその偏差値が持つ意味についても。
    「やさしい統計」シーズンの残りは6回分ありますので、 これからも統計に関した「やさしいけれど大切な話題」 を中心に紹介していきたいと思います。 ご期待ください!
     * * *
    新刊の話。
    先週は『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』の初校読み合わせがありました。 比較的にスムーズに進み、短時間で終了しました。 今回の結城メルマガの配信予約をするくらいのタイミングで再校のPDFが届くはずです。
    また、現在は暫定版として公開されている書籍カバーデザインも、 新しい正式版が結城に届くはず。確認するのが楽しみです。
    再校のチェックが終われば、ほとんど結城の手から離れることになるでしょう。 あとは出版を待つばかり。うれしいですね。
    アマゾンの予約状況もたいへんよく、出版社の営業さんからも喜ばれています。 みなさん、応援ありがとうございます! アマゾンに現在掲載されている8月15日発売予定は難しいと思いますが、 8月末日までには刊行の運びとなるでしょう。どうぞご期待ください!
     ◆『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』  http://www.hyuki.com/cr/
    そうだ。いつもの無料サイン本プレゼント企画もアナウンスしなくては……
     * * *
    結城浩(ミニ)書店の話。
    『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』の出版に関連して、 ある書店さんから依頼がありました。
    書店の店舗内に、 結城の書籍と結城が選んだ書籍を並べた「ミニ書店」を作るという依頼です。 フェアのようなものですけれど、結城が本を選ぶことで、 「結城浩っぽい」コーナーができるのではないかということ。 その書店さんではよく行う企画のようです。
    結城は三つのテーマに分けて17冊を選びました。 プログラミングの本、数学を楽しむ本、そして数学を深める本です。 また公開できるタイミングになりましたら、 Twitterなどでアナウンスしたいと思います。
    本を選ぶというのは楽しい作業ではありますが、 なかなか時間の掛かるものでもありますね。 でも、書店さんから依頼されるというのはたいへん光栄なことだと思います。 感謝ですね。
     * * *
    徒然草の話。
    昔、はてなダイアリーというサイトに書いていた日記のファイルを整理していて、 吉田兼好の徒然草を現代語訳に翻訳したものが数点出てきました。 なつかしいなと思い、あらためてnote(ノート)のマガジンとして公開しました。
     ◆徒然草  兼好法師の「徒然草」から気に入った段を現代語訳でお届けします。  https://note.mu/hyuki/m/m7758fdc5d61f
    このマガジンで公開しているのは、以下の段です。
    「良き人の物語するは(徒然草 第五十六段より)」。 これは、品のいい人はどのような話し方をするかを語ったもの。
    「この木、無からましかば(徒然草 第十一段)」。 これは、人間はなかなか俗っぽい考えから離れられないというもの (吉田兼好の一ひねりがありますが)。
    「夕べには朝あらむことを思ひ(徒然草 第九十二段)」。 これは、人には自分が気がつかないような怠け心があるという話。
    それからもちろん「つれづれなるままに」という序段です。
    ……と紹介文を書いていて思ったのですが、 これってこの結城メルマガで扱っている題材と同じですね! 当たり前のことですけれど、結城は自分に関心のある題材を選び、 それを翻訳していたのだなあと改めて思いました。なるほど。
    「古今和歌集を読む」のときも書きましたが、 このように古文を現代語訳するというのは優雅な楽しみだなあと思います。 いつもと違う気分になって文章に接するのですが、 ぐるりと一回りして、現代の自分との共通点を見出したりする。 それはまさに温故知新というものではありますまいか。
     ◆古今和歌集を読む  古今和歌集(こきんわかしゅう)から親しみやすい歌を読みます。  やさしい解説付き。ちょっぴり優雅な言葉の時間をあなたに。  https://note.mu/hyuki/m/mfa4fe40c022b
     * * *
    Twitterの話。
    Twitterでいろんな人のツイートを見ているのは楽しい。 「なるほどなあ」や「そうそう、私もそう思う!」というツイートがあると、 「お気に入り」にして「リツイート(RT)」する。
    ところで、「そうそう、私もそう思う!」と感じても、 RTをためらってしまうようなツイートもある。 それは、ツイートの最後の一文で他の人を罵倒しているツイートである。
    RTすらしないのだから、ここに例を挙げるのはためらうので、 少し抽象化し、伏せ字を使って説明します。
     最近の○○って○○だと思います。  昔は○○といえば○○だったのに、  どうして最近は○○になっちゃうのかなあ。  こないだ見た○○なんて、まったく★★★だ!
    このようなツイートですね。 ○○には名詞や形容詞的なものが入り、 ★★★には侮蔑の言葉や罵倒の言葉が入ります (あなたの語彙で補ってください)。
    この最後の一文「こないだ見た○○なんて、まったく★★★だ!」 がなかったらRTしたくなるような主張なのに、 ★★★という侮蔑の言葉が入っているのでRTをやめてしまうことも多い。
    私は★★★という侮蔑の言葉を自分のタイムラインに流すのがいやなので、 RTを行わない。それだけのこと。でも「もったいないな」とも思う。 最後の一文を除いたら、きっと広い人の賛同を得られるつぶやきなのにな。 そんなふうに思ってしまうのである。
    この最後の一文が「なからましかばよからまし(なかったらよかったのに)」 と思ってしまう。
    といっても、このツイートをしている人を責めたいというのとも違う。 Twitterはもともと自由につぶやく場所であり、 そのツイートをしている人をフォローする/しないは、 私自身が決めていることですからね。
     * * *
    翻訳の話。
    先日実施したハングル版「数学ガールの秘密ノート」サイン本無料プレゼントで、 当選者のおひとり(詩衣さん @krxiahfan)がお礼のツイートをしてくださいました。
     ◆詩衣さんのツイート  https://twitter.com/krxiahfan/status/623705345152516096
    ここに登場したハングルが読めなかったので、 ふと思ってGoogle翻訳に掛けてみたところ、 「数学ガールの秘密ノート数列の広場いただきました!」 と完全な日本語に変換されました。すごいですね。
     ◆スクリーンショット
     * * *
    GoogleのSpotlight Storiesの話。
    Googleが、360度の映像作品を楽しめる Spotlight StoriesというアプリのiOS版を出しました。
     ◆グーグル、360度エンタメ映像アプリ「Spotlight Stories」のiOS版リリース  http://japan.cnet.com/news/service/35067865/
    さっそくiPhone 6でダウンロードして動かしてみました。 なるほどこれは新感覚のムービーという感じですね。
     ◆Google Spotlight Stories By Google, Inc.  https://itunes.apple.com/app/google-spotlight-stories/id974739483
    簡単にいえば、自分が映像世界の中に入り込んで、 スマートフォンという窓を通してその映像世界をながめているような感覚です。 上下左右にスマートフォンを動かすと世界の「そっち方向」が見える。 スマートフォンを動かして、登場人物の一人をずっと追いかけていくこともできる。
    たとえば、"Windy Day" という作品は、 ネズミが帽子を追いかけるという単純な(でもすごく楽しい)ムービーです。 キャラクタを追いかけてぐるぐるiPhoneを回して眺めてしまいました。
     ◆Windy Day(スクリーンショット)
    また、"Duet" という作品では、 「男性側」と「女性側」を別々に追いかけることができ、 ひとつのムービーを多視点で体験することができます。
     ◆Duet(スクリーンショット)
    何度も見ていると飽きてくるといえば飽きてくるのですが、 この仕組みを生かした映像手法やトリックが今後出てくれば、 おもしろい作品が作れそうですね。
     * * *
    もう一つ、iPhoneアプリの話。
    まだ使い込んでいないのですが、 「Forest: スマホ中毒の解決法」というアプリを入れてみました。
     ◆Forest: スマホ中毒の解決法  https://itunes.apple.com/jp/app/forest-sumaho-zhong-duno-jie/id866450515?mt=8
     ◆スクリーンショット
    Forstをいったんセットすると、 画面がロックされたような状態になり、何もできなくなります。 最低30分以上「スマートフォンをいじらない」と、 ご褒美として「木」が成長します。 スマートフォンの誘惑にまけていじってしまうと、 「木」は枯れてしまいます。
    「スマートフォンをいじらない」というネガティブな方向を、 「木を枯らさないようにする」というポジティブな方向に向けたのがおもしろい。
    スマートフォン中毒にかかっている人は試してみてはいかがでしょう (と、他人事のようにまとめてみました)。
     * * *
    さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
    今回は、
     「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」
    の第四回目をお送りします。 先日結城が国際基督教大学高等学校(ICUHS)で行った講演を、 読み物形式にしたものです。 「問題と解答」という概念を軸にして、 数学に限らない「考えること」や「学ぶこと」の意味を問いかけます。 今回は最終回ですね。
    なお、過去の「数学ガールの特別授業」は以下からバックナンバーをたどれます。
     ◆数学ガールの特別授業  http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
    では、どうぞごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(ICUHS編)(4)
    自分を発見する - 本を書く心がけ
    中断の効用 - 文章を書く心がけ
    おわりに
     
  • Vol.172 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(3)/「お言葉ですから」というキーフレーズ/

    2015-07-14 07:00  
    216pt
    Vol.172 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(3)/「お言葉ですから」というキーフレーズ/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年7月14日 Vol.172
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    来月刊行になる、
     『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』  http://www.hyuki.com/cr/
    の初校がやってきました。 今週は楽しい初校読みになりそうです。
    前回の版に比べて、 今回の第3版ではざっくり40ページも増加していました。 ビットコインの話や楕円曲線暗号の話などの加筆があるからでしょう。
    暗号というと何だかうさんくさい、 アングラというイメージがあるかもしれませんが、
     ・情報を特定の人だけに伝えたい  ・情報を誰かに書き換えられずに受け取りたい  ・自分が対話している相手は確かに本人か知りたい  ・約束したことを反故にされたくない
    というのは私たちの生活で自然な要求です。 ネットワーク社会で生きる私たちは、 これらの要求を満たすために暗号技術に頼らざるを得ません。
    たまたま先日、テレビで映画「サマーウォーズ」の放送がありました。 あの映画でもセキュリティと暗号解読が、 ときに命に関わるものだという場面が随所に出てきます。
    技術者以外の人でも、 暗号技術に対するある程度のリテラシーが必要になるでしょう。 今回の私の本が少しでもその役に立つことを願っています。
     * * *
    セキュリティの話。
    情報処理推進機構(IPA)が2015年7月の呼びかけとして、
     「その秘密の質問の答えは第三者に推測されてしまうかもしれません」
    というフレーズを提示しています。
     ◆2015年7月の呼びかけ(IPA)  https://www.ipa.go.jp/security/txt/2015/07outline.html
    さまざまなWebサイトで、パスワードを忘れたときの備えとして、 「秘密の質問と答え」をユーザに設定させています。 でも、この仕組みはたいへん危険なものをはらんでいます。
    「秘密の質問」の性質上、 悪意のある人から予測されてしまう答えでは困るのですが、 「母親の旧姓は?」と言われて正直に答えてしまうと、 「佐藤」や「高橋」や「鈴木」になる可能性が高いですよね。 ということは、いくら強いパスワードを設定しても、 「秘密の質問」に安易な解答を書いていたら、 それを悪用されてアカウントが盗まれてしまう可能性がある。
    結城は、この「秘密の質問」の答えとして、 ほんとうのことを《書かない》ようにしています。 パスワードと同じ価値を持つわけですから、 パスワードと同様に、ランダムな文字列を使って作成し、 それを「鍵」と同じように大切に管理するようにしています。
    それに関連して、 ランダムな文字列を自分で作成しやすいサイトを作ってみました。
     ◆hash.textfile.org  http://hash.textfile.org
    このサイトでMessageのところに自分でキーボードを乱打して、 非常に長い文字列を入力します。たとえば、 すると、その文字列をSHA-1やSHA-2などの ハッシュ関数で変換した文字列が表示されます。
    たとえば、
     「母親の旧姓は?」
    という秘密の質問に対して、
     「Zr8RPbxDBIgYoQ22a+nqNn5EqjpinS」
    を答えにするのです。
    なお、セキュリティに関わることなので、 上記サイトのご利用は自己責任でお願いします。
     * * *
    エディタの話。
    結城はふだんテキストエディタとしてVimを使っています。 「カッコ開き」つまり "(" を入力したときに、 自動的に「カッコ閉じ」")" を入力させるようにしたいな、 とTwitterでつぶやいていたら、Leximaというプラグインを紹介してもらいました。
     ◆Lexima  https://github.com/cohama/lexima.vim
    デフォルトがよくできていますね。 入力した "(" に対して ")" が自動入力されるのは当たり前だけれど、 開きカッコに続けて手がつい ")" まで打ってしまっても大丈夫。 ちゃんと "()" となってくれます。 つまり、"())" のような不格好なことにはならないのです。
    通常のカッコ () だけではなく、{} や "" も自動的に閉じてくれる。 結城はLaTeXを使っていて、数式の範囲である $$ をしょっちゅう使う。 "Vim Lexima LaTeX"で検索して、$もカッコのように自動的に閉じてくれる設定を見つけました。
    Leximaを作った作者さんがユーザの質問に答えていたのです。
     https://github.com/cohama/lexima.vim/issues/9
    こういう質問はたいへんありがたいですね。
    開きカッコを入力すると自動的に閉じカッコを入力してくれるというのは、 うまくはまるとたいへん便利なので、 結城もしばらくは嬉々として楽しんでいました。
    しかし、しばらく使っているとユーザインタフェースはそれほど単純じゃないんだな、 と気付くようになりました。
    というのは、こういうことです。 普通にテキストを頭から入力しているときには、 "{"を入力して"}"が自動的に入るのはとてもいいのだけれど、 文章がすでにあって、そこにカッコを付けたいときには不都合なのですね。
    たとえば、
     This is Japan.
    という文章で "is" の部分を強調したいとき、LaTeXでは
     This \textbf{is} Japan.
    と書きます。すでに This is Japan. という文章があるとき、 isのところで、
     This \textbf{is Japan.
    と入力すると、自動的に "}" が入力されてしまうので、
     This \textbf{}is Japan.
    という悲しいことになってしまう。
    テキスト入力やテキスト編集はほとんど反射的に手が動くものだから、 こういう予想外の動きにはリズムを崩されてしまいます。
    なかなか難しいものですね。
     * * *
    フォントの話。
    三重大の奥村先生のサイトに「数式フォントの比較」というページがありました。
     ◆数式フォントの比較  http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texfaq/mathtime/comparison.html
    ひとことで「数式フォント」といっても、 いろんな種類があることがよくわかります。 結城はこういうフォントが大好きなので、ついつい見入ってしまいます。
    こうやって比べてみると、数学ガールで使っているEuler + Concrete という組み合わせはなかなかユニークであるのがわかります。
    どういうところがユニークかというと、 たとえばシグマ(Σ)にセリフ(端の跳ねた部分)がないところや、 ゼロ(0)の上のほうがとがっているところ。 それから、変数名がそもそも斜字体になっていないところなどですね。
    結城はこのEulerフォントが好きなのですが、 困ったこともありました。 『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』では、 フォントの違いを利用して意味の違いを表現する局面があるのですが、 Eulerフォントが斜字体でないため、その違いを明確にするのがちょっと難しかったのです。
    まあ、細かい話といえば細かい話なんですけれどね。
     * * *
    多様性の話。
    多様性という言葉を見ると、こんな聖書の言葉を思い出します。
     そこで、目が手に向かって、  「私はあなたを必要としない」と言うことはできないし、  頭が足に向かって、  「私はあなたを必要としない」と言うこともできません。  それどころか、からだの中で比較的に弱いと見られる器官が、  かえってなくてはならないものなのです。  (第1コリント12章から)
    相手を自分の姿と同じにするのがいいわけではありません。 また、相手を自分の価値観で裁くのがいいわけでもありません。 違っていても一つになることはできるし、 違っていなければならないこともある。
    身体中が手になったり、 身体中が目になったりするのは恐い。 多様性という言葉を見ると、 私はそんなことを思います。
     * * *
    さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
    今回は、
     「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」
    の第三回目をお送りします。 先日結城が国際基督教大学高等学校(ICUHS)で行った講演を、 読み物形式にしたものです。 「問題と解答」という概念を軸にして、 数学に限らない「考えること」や「学ぶこと」の意味を問いかけます。
    なお、過去の「数学ガールの特別授業」は以下からバックナンバーをたどれます。
     ◆数学ガールの特別授業  http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
    では、どうぞごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(ICUHS編)(3)
    Web連載を本にまとめる工夫 - 本を書く心がけ
    夢中になることの大切さ - 仕事の心がけ
    「お言葉ですから」というキーフレーズ - 仕事の心がけ
    おわりに
     
  • Vol.170 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(2)/学ぶときの心がけ/仕事の心がけ/

    2015-06-30 07:00  
    216pt
    Vol.170 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(2)/学ぶときの心がけ/仕事の心がけ/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年6月30日 Vol.170
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    先日刊行をアナウンスした結城の最新刊、
     『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』
    の話題です。先週末から早くもアマゾンで予約が始まりました。

     ◆『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797382228/hyuki-22/
    ありがたいことに、予約開始早々に、 暗号理論カテゴリでランキング第一位となりました! みなさんの応援に感激です。
    原稿の大半は編集部に渡っており、 これから校正作業に入るという状況です。 最後まで気を抜かずがんばりますので、どうぞご期待ください!
     * * *
    まちがいの話。
    先日、国語の教科書に「まちがい」があったため、 出版社が自主的に一万冊を回収するというニュースがありました。
     http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150623/k10010124651000.html
    小学校一年生の国語の教科書のイラストで、 下書きを消し忘れて、手が三本あるように見えるのだそうです。
    教科書がまちがっているのは確かによくないことだし、 出版社としても恥ずかしいことなので回収する気持ちはわかります。 出版社が自主回収することが悪いわけではありません。
    でも、その一方でふと思うこともあります。 「人はまちがうものだし、国もまちがうものだ」 ということを伝えるいいチャンスだったのではないかということです。
    国語で言葉のまちがいがあったわけではないし、 美術でイラストのまちがいがあったわけではない。 「まちがいましたけど、資源を大切にしたいので、回収しません。 すみませんでした」という解決法ではだめなのかな、と思いました。
    まあ、もちろん、まちがいがあるのに「まちがいじゃない」 と抗弁するよりはずっといいと思うのですけれど。
     * * *
    Twitterの話。
    結城はまだ試していないのですが、 Privatter(プライベッター)というサービスに興味があります。
     ◆Privatter  http://privatter.net/
    これは、Twitterのフォロー関係を利用して、 「Twitterのフォロワーさんにだけ見られるテキスト・画像」 を公開できるようにするサービスのようです。
    「全体公開・ログイン限定公開・フォロワー限定公開・ 相互フォロワー限定公開・リスト限定公開・パスワード限定公開・非公開」 という七段階の公開範囲が設定可能らしいですね。
    テキストや画像を限られた人だけに見せたいという気持ちは確かにあるので、 Twitterのフォロー関係や、ログインの有無などを使うというのは名案です。 そのうち試してみたいものです。
    ただ、結城は基本的に「限定公開」に依存した公開方法はとらないようにしています。 その理由の一つは「管理が複雑になるから」です。 「これは誰に見せるか」というのを考え始めると、 複雑なことを覚えておかなくちゃいけなくなります。 頭はできるだけクリアにしておきたいので、 限定公開を使うことは少ないのです。
    別の理由として「誰かのミスやバグで公開されると困るから」もあります。 限定公開するということは、 そのサービスに依存して何かを守っているわけですよね。 でもどんなサービスも万全ではない。だから、 万一そのサービスが破綻したとしてもひどいことにならないようにしたい。 そういう気持ちが働くのです。
    なので、結城としては「公開なら公開」「非公開なら非公開」 という管理方法がいちばんいいバランスかなと思っています。
     * * *
    素朴な疑問。
    アマゾンの電子書籍(Kindle本)って、 Kindleの機械を買わなくてもスマートフォンやタブレットで読めますよね。 つまり、スマートフォンやタブレットに「Kindleアプリ」があるので、 それをインストールすればふつうに読めます。
    この事実は、知っている人にとっては「あたりまえ」のことですけれど、 意外と知られていないようです。 つまり、Kindleの機械を買わないと読めないと思っている人は意外に多い。
    アマゾンが積極的にこのことを宣伝しないのは、 Kindleの機械を売りたいからなんでしょうかね。
     * * *
    イノベーションの話。
    会社でも社会でも、本当に有効なイノベーションを起こす人って、 多数から嫌われたり疎まれたり非難されるんじゃないだろうか。 そんなことをふと思った。
    イノベーションというのは見方を変えると、 「既存の何か」を壊すわけだから、その「既存の何か」 を頼りにして生きている人は必死で抵抗するはずだ。
    会社や社会をちょこっと改善するならみんなニコニコしてくれるかもしれないが、 本気で会社や社会を変えようとする人は多数の抵抗にあう、と想像できる。 みんなから嫌われているから正義の人だとはいえないが、 みんなから嫌われているから悪い人だとも言えない。
    大きな改革を行なう人と、 単に破壊だけして終わる人を見分けるのはかなり難しいはずだ。 改革が失敗したらきっと「ほら、やっぱりね」と言われるだろうが、 そう言っている人の反対がなかったら成功していたかもしれない。
    紙、印刷機、電話、自動車、インターネット。 何を想像してもいいけど、きっとそれらが世に出始めるとき、 大きな抵抗があったはずだ。
    新しいものが常に善とは限らない。 言いたいのは、あとから考えるとあたりまえのものでも、 変化の最中には抵抗があるだろうということ。
    イノベーションは良いものとみなされることが多いが、 総論賛成各論反対にあうことも多いはずだ。 多くの人は、そんなに変化を求めていない。
    会社や組織で「イノベーションを求める」を掲げるところは少なくないが、 ほんとうにイノベーションを求めているのだろうか、と思うことがある。
     * * *
    さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
    今回は、
     「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」
    の第二回目をお送りします。 先日結城が国際基督教大学高等学校(ICUHS)で行った講演を、 読み物形式にしたものです。 「問題と解答」という概念を軸にして、 数学に限らない「考えること」や「学ぶこと」の意味を問いかけます。
    では、どうぞごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(ICUHS編)(2)
    《問いかけ》について - 学ぶときの心がけ
    《問いかけ》を言葉にする意味 - 仕事の心がけ
    おわりに
     
  • Vol.168 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(1)/どんなふうに生きていこうか/いつもと違う選択をする週/

    2015-06-16 07:00  
    216pt
    Vol.168 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(1)/どんなふうに生きていこうか/いつもと違う選択をする週/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年6月16日 Vol.168
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    講演会の話。
    先週の結城メルマガで「国際基督教大学高等学校(ICUHS)」 で講演会をした話をちょっと紹介しました。
    今週から、そのときの講演を文章に起こして、 結城メルマガで連載いたします。題して、
     「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」
    です。数回に分けてお届けすることになります。 どうぞお楽しみください。
    なお、過去の「数学ガールの特別授業」は、 以下のページにまとめてあります。
     ◆数学ガールの特別授業  http://www.hyuki.com/girl/lesson.html
     * * *
    未来大の話。
    講演会といえば、 結城は三年前に「公立はこだて未来大学」で講演会をしました。
    ちょうど先日、以下のビデオを教えていただいたのでご紹介。 公立はこだて未来大学のバーチャルツアーです。 ご存じない方はぜひご覧ください。 まるでSF映画みたいなキャンパスですね。
     ◆公立はこだて未来大学バーチャルツアー  https://www.youtube.com/watch?v=FIVITZaZen8
    ここでの講演会は、
     ◆『数学ガールの誕生』  http://www.hyuki.com/girl/birth.html
    という書籍になりました。
     * * *
    組み合わせの話。
    結城は見ていないのですが、テレビで、 「四桁の暗証番号の組み合わせは十万通り以上ある」 なんてことを言っていたそうだ。
    もちろんこれは計算違い。 暗証番号の一桁が0,1,2,3,4,5,6,7,8,9の十通りあるとすると、 四桁なら、
     10×10×10×10 = 10000
    とちょうど一万通りになる。十万通りは多すぎます。 掛け算の理屈がわからない人でも、
     0001, 0002, 0003, 0004, ...
    と順番に暗証番号を作っていけば、 最初の0001から9999までで九千九百九十九通りあって、 もう一つ 0000 があるので全部で一万通り作れることがわかるでしょう。
    と、ここまで考えて、簡単な算数の問題を作ってみました。
     【問題】  ある星の暗証番号は数字四桁で「104976通り」  の組み合わせがあるという。  この星の数字一桁は何通りか。
    つまり、もとのニュースを誤りだというのではなく、 もとのニュースの説明を「正しい」と仮定した場合、 数字一桁は十通り以上あるはず。それは何通りか。 と、そういう問題ですね。
    答えは目次の前に!
     * * *
    Web連載の話。
    先日、結城がCakesで行っているWeb連載「数学ガールの秘密ノート」が、 第120回を迎えました。みなさんの応援を感謝します! 連載が10回を迎えるたびに数週間のお休みをいただいており、 次回の更新は2015年の7月3日になります。
    連載が10回を迎えるたびにお休みをいただいているのは、 頭のリフレッシュのためもありますし、次の10回のテーマ探しの意味もあります。 このWeb連載は10回分で一冊の単行本にしていく予定なので、 だいたい10回ごとにまとまるように構成しているのです。
    先日終了した第111回〜第120回までは「行列が描くもの」というテーマでした。 高校から行列が外されるということもあって、どうかなあと思っていましたが、 想像よりも反響が多かったので、やってよかったと思いました。
    次の10回のテーマはいくつか考えているのですが、 まだ「これ」とは決まっていません。 もしなにかよいアイディアがあったら教えてくださいね。
     * * *
    書籍刊行の話。
    そのWeb連載は毎年二冊のペースで書籍化しています。 これまでに五冊書籍化しており、今後の予定と題材は次の通りです。
     2015年秋「ベクトル」  2016年春「場合の数」  2016年秋「指数と対数」  2017年春「踊る曲線」  2017年秋「不等式」  2018年春「ビットとパターン」  2018年秋「行列が描くもの」
    と書き上げていつも思うのですけれど、 Web連載のペースが書籍刊行のペースよりも早いために、 だんだんストックが多くなってしまっていますね。 それに「来年のことをいえば鬼が笑う」というのに、 「2018年秋」なんて話をしていていいのでしょうか。 ともあれ、一冊一冊ていねいに作っていきますよ〜!
    本編(数学ガール6)もがんばって書いていますが、 「数学ガールの秘密ノート」シリーズもよろしくお願いします!
     * * *
    さて、それでは今週の結城メルマガを始めます。
    今回の結城メルマガは「数学ガールの特別授業」シリーズの第三弾として、
     「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」
    の第一回目をお送りします。 先日結城が国際基督教大学高等学校(ICUHS)で行った講演を、 読み物形式にしたものです。 「問題と解答」という概念を軸にして、 数学に限らない「考えること」や「学ぶこと」の意味を問いかけます。
    どうぞ、ゆっくりお楽しみください!
    あ、そうだ。先ほどのクイズの答え。
     【問題】  ある星の暗証番号は数字四桁で「104976通り」  の組み合わせがあるという。  この星の数字一桁は何通りか。
     【解答】  18通り。  18×18×18×18 = 104976通り
    もともと、10通りより多いのはすぐ分かりますし、 あとは順番に11, 12, 13 ,... で試せばいいことです。
    直接計算したければ、4乗して104976になる数を求めるので、 電卓を使って、
     104967 √ √
    と入力すれば求められますし、 Googleの検索窓に、
     sqrt(sqrt(104976))
    と入力しても求められます。
    ある方は、104976は偶数で3の倍数だから、 結局6の倍数だけ試せばいいと考えて、 すばやく18にたどり着いたようです。
    ちょっとした問題でも、いろんな解き方ができるものですね。
    では、結城メルマガをどうぞ!
    目次
    はじめに
    数学ガールの特別授業(ICUHS編)(1)
    他人を馬鹿にする心理
    どんなふうに生きていこうか - 仕事の心がけ
    五つのパンと二ひきの魚
    いつもと違う選択をする週 - 仕事の心がけ
    おわりに