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記事 4件
  • Vol.274 結城浩/カクノ/仮想通貨「モナコイン」/「芽」を育てよう

    2017-06-27 07:00  
    220pt
    Vol.274 結城浩/カクノ/仮想通貨「モナコイン」/「芽」を育てよう結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年6月27日 Vol.274
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    いよいよ今週、 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 が刊行になります。
    いよいよです! 自分で言うのも何ですが、 本を一冊書き上げるというのは、本当に時間と手間が掛かるものです。 ようやく、ようやく一冊できました。 どうか、この本を必要としている読者にこの本が届きますように!
    この結城メルマガが配信される火曜日、 結城は編集部に出かけて、「お化け坊や」のキャラクタを描きます! 要は、いくつかの店舗で先行販売される《サイン本》にするのです。
    《サイン本》は三桁の冊数がありますが、 各書店さんに配本になると、どうしても数が少なくなってしまいます。 もうしわけありません。
    また、《サイン本》とは別に、チェーン書店さん経由で 《メッセージカード》が同梱された本も発売されます。
    詳しい日程や《サイン本》取り扱い書店さん、 《メッセージカード》同梱のチェーン書店さん一覧については、 以下のページをご覧ください。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』サイン本&メッセージカード 取り扱い店舗一覧  https://bit.ly/note9msg
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://note9.hyuki.net
    応援よろしくお願いします!
     * * *
    「継続は力なり」の話。
    今週は、結城が「継続は力なり」を実感する週になります。 どういうことかといいますと、今週は……
     『数学ガール』が刊行してからちょうど十年目で、
     Web連載「数学ガールの秘密ノート」が第200回を迎えて、
     「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第9冊目、  『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』が刊行される。
    そのような節目となる週だからです。 これはひとえに、読者さんのおかげです。
    そういえば、2012年4月に開始したこの結城メルマガも、 いつのまにか6年目に入っていました。 購読者さんも、少しずつ増えていき、ほんとうに感謝です。
     ◆結城メルマガ購読者数のグラフ
    購読者数のグラフを作るたびに、 結城は、しばしこれを見つめてしまいます。 文字通り、じっと見つめます。
    グラフを全体として眺めるなら、 購読者数がじわじわ増えていることがわかります。 でも、ある一部分だけを区切って眺めるとどうでしょう。 そうすると、 購読者数ががくっと減っているところが多々ありますね。 そのタイミングで「ああ、もうやめよう」 と思う可能性もあったわけです。 そして、もしそこで結城メルマガ執筆を止めていたならば、 グラフはそこで終了していたことになります。
    ですから、購読者数のグラフをこれだけ長く描けたというのは、 それだけで大きな意味があることじゃないかと思うのです。
    もちろん、 購読者数の増減を意識して改善することは必要です。 でも、それはそれとして、まずは継続する。 継続してみる。長く続ける。続ける。 何年も継続する、そのことを通して、 結城は自分の中に大事な土台を作っているように思います。
    うまくいくときもある。うまくいかないときもある。 でも続けていけば、グラフは伸びる。 そして、新たに描かれるグラフの背後には、 結城の文章を読んでくれる読者さんがしっかり存在している。
    結城がこのグラフを見つめてしまうのは、 そんなことを考えるからです。
    継続は力なり。
    これは結城の父親が繰り返し語っていた言葉でもあります。
     * * *
    Draftの話。
    以前から「数式をさっとメモするWebアプリDraft」を作り、 少しずつ改良を続けています。 Web連載のアイディアを練るときも、 ちょっとLaTeXの書式を確かめたいときも、 結城はDraftを便利に使っています。
    今回「複数シート」対応を行ってみました。 その結果、7枚の「シート」があって、 それぞれ独立に数式が保存されるようになりました。 感覚としては、7ページ分のノートが手元にある気分です。
    神経を使ったのはユーザインタフェースです。 もともとDraftは「Distraction Free」を売りにしています。 つまり、執筆している最中に「気が散らない」ということ。 でも新たな機能を入れちゃうと、 そこを使うための情報が表示されてしまいます。
    まず、7枚の「シート」に番号を付けました。 そして、メニューバーには7個の番号が並んでいて、 好きな番号をクリックすればそのシートが表示されるようにしました。 まあ、そこまではいいでしょう。 でも、常に7個の数字がピカッと光っているのは気になりますね。
    ということで、 数字を暗く表示するようにCSSを調整し、 目立たないようにしました。 ユーザ(自分)の気を散らさないように。
    しばらく使っていると、 「あの文章は7枚のどこに書いたっけ?」 という現象が起きるようになりました。 順番にシートをめくっていかなきゃいけないのはナンセンス。 でも内容の一部がいつも表示されているというのも気にくわない。
    ということで、 「シート」が空っぽかどうかを判断しやすくしました。 「シート」が空っぽなら、番号を暗く表示する。 「シート」に何か書いてあれば、番号を明るく表示する。 これなら許せる範囲でしょう。
    Draftで「複数シート」を使っている動画を作ってみました。
     https://twitter.com/hyuki/status/874624399713775617/photo/1
    数式をさっとメモできるDraftは、 なかなかいいですよ。
     * * *
    不自由律短歌の話。
    先日、Twitterを眺めていたら「不自由律短歌」というハッシュタグを見つけました。
    不自由律……短歌?
    そのハッシュタグに続いて、
     729796
    のような謎の数列が書かれています。 どうも、その数列に従って「短歌」を作る試みのようです。 つまり、
     7 2 9 7 9 6
    という音数で短歌を作るのです。
    なるほどね! 通常の短歌なら57577になるところを、 別の数列を使うという試みだと理解しました。
    こういうのを見ると、とりあえずやってみたくなるのが人情。 ということで、729796で作ってみました。
     夜きみと会い  朝  きみと別れる日々  地球の自転  背負い投げしていま  森を抜ける  (結城浩)
    いかがでしょう。
     ◆Twitterで「不自由律短歌」を検索  http://bit.ly/2sHheYI
    こういう試みを見ると「文字数の制約」というのは、 いわゆる制約にはならず、 むしろ創造性を発揮する源になるように感じます。 不思議なことですね。
    形が決まっている方が、自由になれる。
     * * *
    「それな」の話。
    先日、こんなツイートを見かけました。
     ◆【緩募】「それな」「わかる」に該当する論理記号  https://twitter.com/fujisyu/status/875596188426289154
    おもしろい発想! と思いました。
    「それな」というのは、 正確にニュアンスを表現するのは難しいですが、 「そのとおり! そうだよね!」に近い表現です (乱用するとうるさがられます)。
    「それな」を表す記号って何でしょう。
    数学で使う記号にはいろいろあります。
     ◆数学で使う記号いろいろ
    「したがって」や「なぜならば」は手書きでは使いますが、 あまり本の中では使いませんね。まあ、それはさておき…… 結城は先ほどのツイートを見て、
     「それな」に該当する記号を考案せよ
    という問題を見出しました。そして考えたのがこれです。 残念ながら「論理記号」とはいいがたいですけれど。
     ◆「それな」を表している数式?
    (x-μ)/σというのは形として、人が指をさして「それな」 というようすを表しています。そしてそれと同時に、 この数式自体に数学的な意味があります。
    xを自分の試験の点数とし、 μを平均点とし、σを標準偏差を表すとします。 すると、(x-μ)/σの値は、
     自分の点数が平均点からどれだけ「すごい」位置にあるか
    を教えてくれる場合があります。 この値に10を掛けて50を足すと、 いわゆる「偏差値」になりますね。
    それな。
     * * *
    TeX2imgとimgcatの話。
    結城は書籍の図版をTeX2imgというツールで作っています。 LaTeXやTikZで書いたソースをTeX2imgで変換すると、 epsやpdfやpngなどの好きなフォーマットにしてくれるのです。 「数学ガール」シリーズの執筆でも欠かせないツールになっています。
     ◆TeX2img - TeX Wikiのページ  https://texwiki.texjp.org/?TeX2img
    ところでTeX2imgとは別にimgcatというツールがあります。 これは、MacのターミナルソフトiTerm2の画面内で画像を表示するためのもの。
     ◆iTerm2 - Images  https://www.iterm2.com/documentation-images.html
    結城はこの両方を知っていたのですが、 あるときふと、
     TeX2imgとimgcatを同時に使えば便利じゃね?
    と気づきました。 つまり、
     (1)LaTeXでソースを書く  (2)TeX2imgで画像に変換する  (3)imgcatで画像を表示する
    という流れで作業するということです。 具体的には、
     tex2img input.tex output.png   imgcat output.png 
    という二つのコマンドを実行することになります。
    いままでは、TeX2imgで変換した画像を、 Macのプレビュー.appを使って表示していました。 そのため、プレビューのウインドウがたくさん開き、 画面がうるさくなっていました。
    関心があるのは、最後に作った画像だけです。 それをチェックしたいだけなのに、 ひとつ前、ふたつ前の画像がちらちらしているのは無駄です。
    imgcatを使ってターミナル上に画像を流し、 そこで確認すればとてもすっきりします。
    なぜこんな簡単なことに気づかなかったんだろう!
    簡単な実行のようすを動画にしてみました。
     https://twitter.com/hyuki/status/874790731767980032/photo/1
    たくさんの画像をLaTeXで作り、 しょっちゅう確認する作業をしている人にはとても便利です。 書籍の図版を作っているときの結城のことですが……
     * * *
    勉強の話。
    数学の本を読んで勉強していました。 それほど長くない証明だったので、 これは自分にも読めるかな……と思って進んでいきました。
    一ページの証明を、具体例を作って一歩一歩読んでいきます。 確かめつつ読んでいくので時間がかかります。
    苦労しつつも最後まで来て、 最後の最後に「ここで明らかに定理が成り立つ」と書かれていてショック。 その最後のステップが理解できなかったから。
    「なぜ? なぜ成り立つの?」
    夜道を歩いてきて、ようやく玄関前まで来たのに、 ポケットに鍵がないみたいな気分……わーん!
    そんな話をしていたら、ある数学者さんから、 「それは、その証明を書いた人が悪いですよ」 と慰めていただいた。
    ありがとうございます……でも、 この証明を書いたのはガウスなんです……
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    仮想通貨「モナコイン」のポータルサイト
    カクノで書くの?
    芽を育てよう
    おわりに
     
  • Vol.273 結城浩/結城タスクと進捗コマンド/仮想通貨「モナコイン」とネットでの「投げ銭」/

    2017-06-20 07:00  
    220pt
    Vol.273 結城浩/結城タスクと進捗コマンド/仮想通貨「モナコイン」とネットでの「投げ銭」/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年6月20日 Vol.273
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』は、 2017年6月末に刊行の予定です。
    表紙の画像がやってきたので、新刊が出るたびに作っている 「書籍紹介ランディングページ」 も作りました。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://note9.hyuki.net/
     ◆ランディングページ(スクリーンキャプチャ)
    ランディングページというのは、 自分の著書を紹介・宣伝するときの必須ツールのひとつです。
    メールでも、SNSでも、自分の本を他の人に伝えるときに、 「こんな本が出ます。詳しくはこちらのページをみてくださいね」 と簡潔に紹介することができるからです。
    また著者自身が紹介するときだけではなく、 読者さんが検索するときにも有効です。
    たとえば、2016年に結城が刊行した統計の本を 試しに検索してみましょう。 「数学ガールの秘密ノート やさしい統計」 を検索したときの順位は、
     (1)アマゾン(紙の本)  (2)アマゾン(Kindle)  (3)ランディングページ  (4)シリーズのページ
    となりました(スクリーンショット参照)。
     ◆「数学ガールの秘密ノート やさしい統計」の検索順位
    このような順位になるのは著者にとってはうれしいことです。
    ランディングページは、結城メルマガでも何回か紹介した 「でんでんランディングページ」 をもとに作っています。
     ◆でんでんランディングページ  http://lp.denshochan.com
     ◆書籍のランディングページの作り方(結城浩ミニ文庫)  https://note.mu/hyuki/n/n75de4c371507
    結城は書籍一冊ごとにランディングページを作っています。 そうすると共通点が非常に多くなるので、 どうしてもコピー&ペーストが多くなってしまいます。 それを避けるため、erbというプログラムを使って、 決まり切った部分をプログラムで生成するようにしています。 以前作ったerbファイルは以下で公開しています。
     ◆erbファイル(make-landing-page-for-note6.erb)  https://gist.github.com/hyuki0000/469aa65677849265c4e2
    使い方については、 結城メルマガのVol.205で詳しく紹介しました。
    ランディングページは、結城が個人的に管理している、
     hyuki.net
    という独自ドメインのサブドメイン上に作っています。 新刊の『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の場合は、
     note9.hyuki.net
    になります。独自ドメインに作っておくのはとても大事です。 ランディングページを実際に運用するサーバが変化したとしても、 URLが変化しないからです。
    実際、結城は以前自分のランディングページを Tumblrというサービスを使って公開していました (Tumblrには独自ドメインを使う機能があります)。
    ある時点で、TumblrからさくらVPSのWebサーバに切り換えたのですが、 その場合でもURLは変わりません。 ドメインを考えてWebページを公開するというのは、 検索順位を落とさないため、 またリンク切れを防ぐために大事なことですね。
    ともあれ、新刊刊行までもう少し。 ぜひ応援ください!
     * * *
    はてなダイアリーの話。
    「はてなダイアリー」の新規開設受付終了というアナウンスが出ました。
     ◆ はてなダイアリーの新規開設受付を2017年7月3日をもって終了します  http://d.hatena.ne.jp/hatenadiary/20170605/1496643809
    このアナウンスには時代の移り変わりというものを感じます。
    結城は「はてなダイアリー」でたくさんの記事を書きました。 「はてなブログ」が出てからも、 メインの軸足をそちらに移すことはありませんでしたね。
     ◆結城浩のはてな日記  http://d.hatena.ne.jp/hyuki/
    はてなダイアリーをせっせと更新していたときは、 Perlで作った「はてなダイアリーライター」 というスクリプトを使っていました。 2004年〜2009年ころの話題になります。
     ◆はてなダイアリーライター(略称:はてダラ)  http://www.hyuki.com/techinfo/hatena_diary_writer.html
    このツールは、自分の手元にあるテキストをアップロードし、 はてなダイアリーの記事にするという簡単なものです。 現在の「はてなブログ」でいえばAtomPubに相当する機能を、 自前でごそごそ作っていたことになります。
     ◆はてなブログAtomPub - Hatena Developer Center  http://developer.hatena.ne.jp/ja/documents/blog/apis/atom
    このときに考えていたことの根底には、
     ・Web上で入力したものをマスターにしたくない  ・テキストは自分のエディタで書きたい
    という感覚があったように思います。 はてなダイアリーのUIを使って入力したテキストは、 自分の手元に残りません。 またテキストを書くときのUIもはてなダイアリーに縛られます。 それが嫌だったため、 手元にあるテキストファイルをマスターとし、 それをWebにアップロードするツールを作ったのです。
    時代は流れ、現在の結城の感覚はやや変化しています。 それは、
     ・場合によってはローカルにあるよりもWeb上にあった方が残る  ・Web上で入力しようが、自分のエディタで書こうがかまわない
    というものです。
    結城は、 Twitterで連続的なツイート(連ツイ)を行い、 それをテキストにして自分の手元に持ってくるツール(autogetter) を使っていますが、 その「連ツイ」の発想は「はてなダイアリーライター」 とはほぼ反対になっていますね。 Webで書いたものを手元に持ってきているわけですから。
     ◆AutoGetter - Twitterで自分のツイートから自分へのリプライをまとめるRubyスクリプト(連ツイまとめ作成用)  https://gist.github.com/hyuki0000/85989bcf78d1476d74d3
    時代が変わればツールも変わります。 でも、ツールが変わっても「文章を書く」 という行為についてはあまり変わらないように感じます。
     * * *
    PR表記の話。
    数日前に「広告記事やタイアップ記事のタイトルにPR表記するべきか」 という話題が出ていました。
    いかにも、論点が多岐にわたりそうな話題ですし、 発言者の立ち位置(広告主側、ライター側、読者側) で紛糾しそうなテーマです。
    以下で書くのは、あくまで結城の限られた観点での意見です (他の人に押しつけたり、声高に主張したいわけではないの意)。
    結城は《読者のことを考える》という原則に照らすのが好きです。 《読者のことを考える》ならば「タイトルにもPR表記する」 方に軍配を上げたくなります。
    必ずしもタイトルの一部に文字列として入れる必要はありません。 それは方法にすぎません。 大事なことは、読者に対して記事を見せる前に (リンクをたどってジャンプする前に)、 「これは広告記事である」と知らせる方が読者に喜ばれそうだ、 という点です。
    タイトルにPR表記するとガクッとPVが減るとしたならば、 なおさら、タイトルにPR表記した方がいいと思います。 なぜなら、PR表記するとPVが大きく減るとしたならば、 PR表記は読者にとって、 「見るか否かを定める有効な判断材料になっている」 わけですから。
    「記事の先頭でPR表記されていれば、 広告記事を見ない人はすぐ戻るからいいのでは」 という意見も考えられます。もちろん、 記事の先頭でPR表記するのは大事だと思いますが、 でも、なんだか「PVを詐称したい」 といってるみたいに聞こえてしまいます。
    もっとも、 最近の広告記事にはコンテンツとして楽しいものもあります。 最後まで楽しんでから「これ、広告記事だったのか! でも楽しかったなあ、なかなかうまい!」 という場合もたまにありますね。 そのようなコンテンツをねらった広告記事の場合、 タイトルにPR表記するのは「ネタバレ」になりそうなので、 なかなか一概にはいえないのかもしれません。
    とはいえ、 ふつうの記事だと思って最後まで読んできたけれど、 最後で広告記事だとわかった場合「がっかり」 することの方が多いと結城は感じます。 「がっかり」といいますか、 「誤認させられた」感といいますか。 いかにもネタやジョークっぽい記事ならばまだしも、 情報提供の形をした記事の場合には不快感は増します。 「だまされた」というと言い過ぎかもしれませんが。
    そして、読者に不快感を与えるとしたら、 広告としては失敗ではないのでしょうか。
    結城はそんなふうに思っています。
     * * *
    学習効果と「対話」の話。
    「自己学習の効果をより高める4つのポイント」 というWeb記事をぱらぱらと読んでいました。
     ◆自己学習の効果をより高める4つのポイント  http://www.dhbr.net/articles/-/4863
    原文の題名は、 "Talking to Yourself (Out Loud) Can Help You Learn" 「(声を出して)自分と話すのは学ぶ助けとなる」 ですね。
    この記事には、 以下のような4つのポイントが書かれていました。
     ・ひとりごとを言う  ・なぜかと尋ねる  ・要約する  ・関連づける
    これを読みながら、結城はこれらのポイントが、 「数学ガール」シリーズに登場する「テトラちゃん」 にぴったり当てはまる!と思っていました。
    テトラちゃんはいつも元気で熱心で、 好奇心が旺盛です。でもそれだけではなく、 学び方がとてもうまいのです。
    そして、上に挙げた4つのポイントのほとんどを、 テトラちゃんは日々の学習で実践していますね。 彼女の学び方は読者さんにもよく注目されています。
    結城は「対話」というのが学びにおいて重要だと思っています。 古くはソクラテスやプラトンの時代から、 対話は重要な役目を担っています。特にその中でも、 《問いかけ》は重要です。 『いかにして問題をとくか』に出てくる《問いかけ》 も有名ですね。
    自分で「ひとりごと」をいうのは、 自分自身を相手に対話を行っていることになります。 問いを自分に投げかけることによって、 人はそれに答えようと試みます。 そこが「学び」にとって重要なのでしょう。
    プログラマの中にも、 「ひとりごと」をいう人が多いと思います。 プログラムを書きながら、
     「どうしてそうなるんだ?」  「xが0のときでもうまくいくか?」  「この条件のとき、ここに来るかなあ?」
    そんなことを誰にともなく言うプログラマは、 決してめずらしくありません。
    あなたは考えるとき、自分自身と「対話」しますか?
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    結城タスクと進捗コマンド - 仕事の心がけ
    仮想通貨「モナコイン」とネットでの「投げ銭」
    おわりに
     
  • Vol.272 結城浩/再発見の発想法/教えるときの心がけ/著者と出版社の販促活動/

    2017-06-13 07:00  
    220pt
    Vol.272 結城浩/再発見の発想法/教えるときの心がけ/著者と出版社の販促活動/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年6月13日 Vol.272
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    まずはご連絡から。
    『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 《サイン本無料プレゼント》実施中です!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』《サイン本無料プレゼント》  https://snap.textfile.org/20170612150529/
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』カバーイラスト
     * * *
    新刊の話。
    2017年6月末に刊行される予定の新刊 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の、 再校読み合わせが終わりました。
    編集長との読み合わせのとき、 結城は出版社まで出向くのが普通です。 でも今回は直前に体調を崩してしまい、 近所のカフェまで編集長の方に出向いてもらいました。 何とか読み合わせをこなすことができましたけれど、 体調管理の点で猛省が必要ですね。
    ともあれ、再校読み合わせが終わりました。 この本の内容に関して結城ができることは、 ほぼすべて終わったことになります。 あとは印刷して本ができるのを待つばかりという状態。
    今回の本の執筆は、個人的にたいへんな時期と重なり、 難産だったイメージがあります。しかしながら、 長い時間が掛かった分、多様な視点での読み返しができたため、 いつもより品質が上がった可能性もありますね。 感謝なことです。
    微分に関してはすでに、 『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』 という本が出ていますので、今回の積分と合わせて
     《微分積分セット》
    ができたことになりますね。
    今回の新刊も、 この本を必要としている読者さんに無事届きますように!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』  https://note5.hyuki.net/
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://bit.ly/girlnote09
    後ほどQ&Aのコーナーでは、 本を書いているというメルマガ購読者さんからの、 「販促活動」に関する質問にお答えします。
     * * *
    執筆のようすをアニメーションGIFにして公開する話。
    結城はMacBookを使っています。 Macでは、QuickTime Playerを使うと、 コンピュータ上での操作のようすを動画として記録できます。 いわば「録画」ですね。QuickTime Playerのメニュー項目名は、 「新規画面収録」です。
     ◆QuickTime Playerで「新規画面収録」
    保存した結果はmovファイルになりますので、 それをYouTubeにアップロードすれば公開できます。 でも、ffmpegというツールでmovファイルをアニメーションGIFに変換すれば、 もっと手軽に公開することができます。
    しかし、結城はffmpegというツールのオプションが複雑で覚えられません。 変換するたびに使い方を検索することになります(悲しい)。 そこで、mov-to-gifというスクリプトを作りました。 一度学んだ結果をスクリプトに覚えさせておけばいいのです! スクリプトは以下で公開しています。
     ◆mov-to-gif  https://gist.github.com/hyuki0000/66990a8152e78eb48c38d31991383114
    たとえば、結城が作ったWebサイトDraftで数式入力しているようすを、 QuickTime Playerで「録画」して、mov-to-gifでアニメーションGIFに変換してみました。 タイプしているようすをリアルタイムで見るのはたいくつなので、 タイプしたときの三倍速で再生するようにしています。
     ◆Draft  https://draft.hyuki.net/
     ◆数式入力しているようす(アニメーションGIFへのリンク)
    なお「動画をアニメGIFにしては?」という示唆は、 以下のツイートで @nnabeyang さんからいただきました。
     https://twitter.com/nnabeyang/status/868800719062614016
    結城が以下の動画をYouTubeにアップロードしたときに、 リプライで教えてもらったものです。
     ◆Draft - Distraction Free Editor with Math  https://youtu.be/ADZj4pAD52c
    ちょっとした動画なら、 YouTubeにアップロードするよりも、 アニメーションGIFにしてツイートする方が確かに手軽ですね。
     * * *
    スタティック・テトリスの話。
    スタティック・テトリス(static tetris)というゲームの原案を思いつきました。
    普通のテトリスはリアルタイムゲームですよね。 プレイヤーがじっとしていても、ピースはどんどん降ってきます。
    でも、テトリスのおもしろさの一つは、 やってくるピースをどのような向きで、 どのように積むかというところにあります。
    そこで、テトリスからリアルタイム性を除いたパズルゲームにするのです。 プレイヤーはじっくり考えて一手を進める。 一手というのは、左右に動かしたり、回転したりというアクションです。 プレイヤーが一手を進めたら、ピースが少し下に落ちる。
    リアルタイム性がない分だけやさしくなっちゃいますから、 普通のテトリスよりも難しくしたほうがいいですね。 たとえば、同時に複数個のピースが落ちてくるとか。
    結城はリアルタイムなゲームがあまり好きじゃないけど、 パズルゲームは好きなので、 どなたかおもしろいゲームとして実現してくれないでしょうかね。 名前に「テトリス」は使えないかもしれませんけれど。
     * * *
    比喩と説明の話。
    プログラミング言語で「変数」のことを説明するときに、 「変数は箱のようなものです」ということがあります。 「変数に値を代入することは箱にものを入れるのに似ている」 のように使うことになります。
    これは「変数」という抽象的なものを相手に教えるために、 「箱」という具体的なものの性質を借りていることになりますね。 つまり《比喩を使った説明》ともいえるでしょう。
    比喩を使った説明は、うまくいけばとても強力です。 抽象的な概念はなかなか相手に伝えることが難しいものです。 具体的な事物を使って「完全にこれと同じというわけではないけれど、 これと似た性質を持っているんだよ」と説明すれば、 まずは理解のとっかかりとして有効です。
    ただし、比喩を使った説明を行うときには、 教える側にも学ぶ側にも注意が必要です。 比喩はあくまで比喩であって、 概念すべてを説明するわけではありません。 つまり、比喩には自ずから適用できる限界があるのです。
    たとえば「変数は箱のようなものである」といった場合、 「変数に値を代入すること」を「箱にものを入れること」 にたとえるのは、まあいいでしょう。 でも「変数の値を他の変数に代入すること」を、 「箱からものを取り出して他の箱に入れること」 と見なすのは正しくありません。 つまり「変数は箱」の比喩は、 その適用限界にすぐ至ってしまいます。
    教える側も学ぶ側も、 比喩を使った説明でさっとイメージをつかんだ後は、 いさぎよくそれを捨てて、もっと正確な説明 (あるいはより正確な比喩)へと移るのがいいでしょう。
    結局捨てることになるなら、 最初から「変数は箱」などといわない方がいいのでしょうか。 それは説明する内容と読者によります。
    比喩を捨てるときも、相手に概念を伝えるいいチャンスになります。 つまり、こうです。
     「変数は箱のようなものだから○○できるといったよね。  でも、変数は箱とは違って△△はできないんだ。  そこは箱とは違う点だから注意して」
    このような説明を行えば、 「変数」という未知で抽象的なものが持つ性質を、 「箱」という既知で具体的なものが持つ性質を使って 理解を深めることができるのです。
     ・変数は○○できる。その点は箱に似ている  ・変数は△△できない。その点は箱に似ていない
    このように「できる」「できない」を知ることで、 学ぶ側は概念の姿をくっきりと理解できるようになるでしょう。
    概念を的確に表す比喩を求めるのはいいことですが、 最適な比喩を求めすぎるのはよくありません。 概念との一致を求めすぎると、 わかりにくくてアクロバティックな比喩が生まれがちだからです。 大きな特徴がさっとわかるシンプルな比喩がいいですね。
    比喩は道具の一つに過ぎません。 使いどころを間違えなければ、強力な道具となるでしょう。
     * * *
    gitとグラフ表示の話。
    バージョン管理システムgitをコマンドラインで使っていると、
     これからマージするんだけど、  コマンドラインだと不安なので、  ブランチの様子やリモートリポジトリの様子を  グラフィカルに見ておきたい
    という場面がよくあります。そんなときには、
     open -a SourceTree .
    を実行すると、カレントディレクトリで SourceTree(GUIアプリ)が開かれるので便利です。
     ◆SourceTreeでcommit historyを見ている様子
    Macのopenコマンドはとても便利で、-a オプションで、 アプリを指定して起動することができるのです。
    さて、こんな話をツイートしながら、 (ふふん、私ってgitやMacを使いこなしてるなあ) と心ひそかに思っていました。でもあるとき、 gitにはそもそもグラフ表示機能が付いていることを知り、 ショックを受けました。具体的には、
     git log --oneline --graph
    を実行するだけで、以下のような表示になるのです。 左側にテキストを使ってグラフっぽい形が描かれていますね。
     ◆gitでcommit historyを見ている様子
    結城は、結城メルマガVol.270でこんなことを書きました。
     ある技術を使って活動をしているとき、  「こういうことをしたいな」  と思ったらまずは公式ドキュメントを読むべき。  自分が考える「改良」や「応用」というのは、  すでに誰かが考えていて、  適切な対応方法が確立されていることが多い、  ということ。
    今回の--graphオプションは、 まさにこれにぴったりあてはまる事例ですね。
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    再発見の発想法 - DRY
    還元論と全体論 - 教えるときの心がけ
    著者と出版社の販促活動について - Q&A
    おわりに
     
  • Vol.271 結城浩/数式混じりの文章/増刷のタイミングが教えてくれること/愛の原則/

    2017-06-06 07:00  
    220pt
    Vol.271 結城浩/数式混じりの文章/増刷のタイミングが教えてくれること/愛の原則/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年6月6日 Vol.271
    はじめに
    おはようございます。結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    このさわやかな天気がずっと続けばいいのになあ…… と思っていましたが、もう六月。 そろそろ梅雨が近づいています。 フラワーショップのレパートリーにも紫陽花が登場しています (向日葵も)。
    気がつけば、 もう今年2017年も半年が過ぎようとしているんですね。 毎回書いているようですが、時間が過ぎるのって、 どうしてこんなに速いんでしょうか!
     * * *
    新刊の話。
    『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の再校ゲラが届きました。
    再校ゲラの段階になると、 もう極端に大きな変更はできません(いや、できないことはないのですが、 危険をともなうのでできるだけ避けます)。
    さすがにそろそろ文章としてはスムーズに読めるようになっていますし、 単純な誤植もほとんどなくなります。 レビューアさんから指摘された事項の大半も(取捨選択ののちに)、 反映された状態になっています。 ゲラを読んでいても気持ちいいことが多いですね。
    この段階になると、ゲラを読んで修正しかかるけれど、 やっぱり修正は止めるということがとても多くなります。 『数学文章作法 推敲編』にも書きましたが、 ある意味で「最適」な状態に近くなっているため、 文章を少し動かすと、かえって悪くなってしまうことが多いからです。 「山の頂上にいるなら、どちらの方向に動いても下がることになる」 というのと似ている現象ですね。
    「最適」とはいえ「局所最適」ですから、 構成を大きく変更してよりよい状態に向かうことは不可能ではありません。 山の比喩でいうなら、いったん下がったとしても、 となりの山脈まで行けばもっと高くなれるということです。 しかしながら、再校ゲラの段階ではそんなに大きな変更はできません。 たとえば、この段階から章全体を書き換えたり、 章の順番を入れ換えるというのはかなり困難です。 「この本はここまで」という見切りをしなくてはいけません。 理想と現実との折り合いを付ける必要があるのです。
    それに実際のところ「大きな変更をすればもっとよくなりそう」 と思ったとしても、本当にもっとよくなるのかどうかは不確定です。 大改造や大手術をしたけれど、結局は大して変わらなかった。 単に時間だけ使う結果になるのもよくある話です。
    無理をしても直す価値があるのか、 それともこれで実際上は最適だと見切るのか。 それは本を書く上で難しい問題です。
    実は本に限らない話かもしれませんね。 ある程度以上の複雑さを持ち、 作成するのに時間が掛かる構造物を完成まで持っていくときには、 どんな人でも同じような判断が必要になるでしょう。
    いま欠点のように見えているところがある。 これは無理をしても直す価値があるのか、 それともこれで実際上は最適だと見切るのか。
    なかなか言語化しにくい判断かもしれませんね。
    そんなこんなで終盤戦を迎えている新刊です。 先日は、販売の際に一部のチェーン店さんが同梱してくださる 《メッセージカード》を描いていました。 いろんな書店さんが応援してくださるのは、 ほんとうにありがたいですね。
    この新刊が書店に並ぶのは六月末になる予定です。 がんばります!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://bit.ly/girlnote09
    後ほど「本を書く心がけ」のコーナーでは、 「増刷のタイミングが教えてくれること」 というお話をします。
     * * *
    執筆環境の話。
    少し前までは、レビューアさんからの指摘事項を ファイルに反映する作業をしていました。
    レビューアさんからの指摘はメールでやってきます。
     「ここに計算ミスがあります」  「このテトラちゃんのセリフは意味が取りにくいです」  「h > 0という条件が必要だと思いますが」
    のような指摘が結城あてにたくさん届くことになります。 結城はMacBook Air 13インチで作業をしており、 だいたい四個か五個のアプリを起動し、 それらを行き来して作業が進みます。
     ◆作業しているときの画面の様子
    開いているアプリは以下のようなもの。
     ・ターミナル(iTerm2):コマンド入力やVimでの編集のため  ・メール:レビューアさんの指摘を読むため  ・プレビュー:原稿PDFを見るため  ・ブラウザ(Safari):Draftを使ってメモするため  ・Evernote:参考資料や過去のメモを見るため
    ウインドウはすべてフルスクリーンにして、 四本指スワイプでシャッシャッと切り換えたり、 Command+Tabで切り換えたりします。
    机の上に必要なものを広げて、 あちこち参照しながら作業を進める感覚です。 現実の机よりも手の移動距離が短くて済むので楽ですね。 また、すべての情報は画面に表示されていますから、 「いま見ているコレを後で検討しよう」と思ったら、 すぐに画面をEvernoteにクリップできるのもいいですね。 現実の机だと「いま見ているコレ」をクリップするのがやや大変です。
    コンピュータ上でできるだけ作業を進めるようにしているので、 コンピュータの執筆環境を整えると、作業効率がアップします。 つまり、自分のプログラミングによって、 作業効率を上げることが可能になります。 これはすごくうれしいこと。
    後ほど「仕事の心がけ」のコーナーでは、 「Draftで数式混じりの文章を書く」 というお話をします。
     * * *
    DIST.16 「esa meetup in Tokyo〜情報共有Night」の話。
    2017年6月23日(金)に、 ドキュメント共有サービスesaのmeetupが開催されるようです。
    結城は参加しませんし、 このイベントに関わっているわけではありませんが、 応援ということでご紹介。
    対象:
     ・Web制作における情報共有に興味のある方  ・他者(社)がesa.ioをどのように使いこなしているか知りたい方  ・学生でWeb制作業界に興味を持っている方
     ◆DIST.16 「esa meetup in Tokyo〜情報共有Night」  https://dist.connpass.com/event/58048/
     * * *
    グラフのトリックの話。
    結城は『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』の第1章で、 「グラフのトリック」について書きました。 いろんなグラフを使って印象操作が可能であることや、 それを回避するために自分でグラフを読んだり、 描き直したりするという話題です。
    先日、@ShiMa1296 さんのおもしろいツイートを見かけました。 これもグラフのトリックの一種ですね。
     --------  データそのものを弄らずとも印象操作はできる  https://twitter.com/ShiMa1296/status/867288004850614273  --------
    ここに描かれているのは「レーダーチャート」と呼ばれるグラフです。 複数の項目に対して何段階かの評価があったとき、 その評価を「レーダー」や「蜘蛛の巣」のような形に描くことで、 特に良い項目や悪い項目を見つけ出すというものです。
    このツイートに書かれていたのは、 「項目が同じ」で、しかも「各項目の評価が同じ」だとしても、 並べ方を変えるだけで印象操作ができるという話題です。
    人間にはグラフの面積(広がり)がパッと目に入るので、 評価の高い項目が上下に、低い項目が左右に配置されると、 面積が大きく変化するのですね。
    本来はバランスを見るはずのレーダーチャートですが、 面積が小さいと「全体的に悪い」という印象を与えてしまいます。 なるほど、と思いました。
     * * *
    正確で読みやすい文章の話。
    正確で読みやすい文章を書くのはとても難しい、 といつも思います。 そもそも、内容が正確な文章を書くのは難しいですし、 読みやすい文章を書くのも難しいです。 でもその両方を備えた文章というのは本当に難しくなります。
    どんな主張にも、必ず「例外」や「前提条件」があります。 ということは正確に主張するためには、 それらをどう扱うかの判断が必要になりますよね。
    「AはBである。ただし例外として、CとDとEがある。 まれにはFという例外もある。過去にはGという例外もあり、 海外にはHという例外もある。太陽系から離れたところでは、 Iという例外もあり……」などと続けていったら、 「例外はもういいから話を先に進めてくれないかな」 と感じますよね。
    「AはBである。これが成り立つためにはCという前提条件が必要だ。 また環境によってはDという前提条件が必要になる場合もある。 まれにはEという前提条件を考えなくてはいけないし……」 と書かれていたら、 「前提条件の話はいいから話を先に進めてよ」 と言いたくなります。
    上に述べたのはわざとらしい例ですが、 文章を書くときの現場では同様のことが起きます。 正確さをアップしようとすると読みやすさがダウンし、 読みやすさをアップしようとすると正確さがダウンするのが普通です。 ひとことでいえば「トレードオフ」ということですね。
    「この文章は不正確だ」や「この文章は読みにくい」 と読者が主張するのは100パーセント正当です。 しかし、著者がそれを解決するのは容易なことではありません (まあ、だから、正確で読みやすい本に商品価値が生まれるわけですけれど)。
    正確で読みやすい文章を書くために必要なことはたくさんあります。 その一つは「存在だけではなく、重みも理解していること」でしょう。 先ほどの「例外」や「前提条件」の場合でも、 どんな例外や前提条件が「存在」するかを理解していることは必要です。 でもそれだけではだめで、 その「重み」まで理解していなくてはいけません。
    「重み」がわかっているからこそ、どれを詳細に書き、 どれを省略するのかの判断が可能になるのです。
    正確で読みやすい文章を書くのは難しいものです。 でもその執筆プロセスの中で、 ものごとを少し深く理解できるのは楽しいことでもありますね。
     * * *
    未来大の話。
    公立はこだて未来大学の高村先生の記事が出ていましたのでご紹介。 主に高校生向けの記事のようです。数学とはどんなものか、 数学の学び方についてなどのお話です。
     ◆未来大と数学  https://www.fun.ac.jp/funbox201705/
     * * *
    Qiitadonの話。
    プログラミングに関する情報共有サイトqiita.comが、 マストドンインスタンスの運営を試験的に始めたようです。 「きーたどん」と読むのでしょうか。
     ◆Qiita ユーザー向けの Mastodon インスタンス Qiitadon を試験的に公開しました - Qiita Blog  http://blog.qiita.com/post/161193715974/qiitadon
    Qiitaのアカウント連携なので、 プログラミングに関する話題がローカルタイムラインに流れるのでしょう。
     * * *
    「ほうれんそう」の話。
    あるとき、こんなわかりにくいジョークを考えました。
     「ほうれん草、入荷しました!」  「ほうれん草、安くなっています」  「ほうれん草、買ったほうがいいですか?」
    要するにビジネスシーンでよく使われる「ほうれんそう」 (報告・連絡・相談)を「ほうれん草」に適用したという話。 これはこれだけのことで(大して面白くもない)ジョークです。
    ところでこれに関して「ほうれんそう」を検索していて、 おもしろいことを知りました。
    「ほうれんそう」はしばしば、
     社員は、上司や同僚にきちんと情報伝達することが大事
    という意味だと考えられています。 社員のビジネスマナーとして捉えられているわけですね。
    でも、「ほうれんそう」を名付けた山崎富治氏の著書によると、 もともとは、そうではないらしいです。
     社員が『ほうれんそう』をしやすいような、  風通しのよい職場環境を作ることが大事
    というのがポイントのようです。 つまり、部下よりは上司が注意する必要があるわけですね。
    (結城は著書に直接あたったわけではなく、以下の記事の孫引きです)
     ◆あなたの「ほうれんそう」は間違っている  http://ascii.jp/elem/000/000/887/887822/
     * * *
    文章を書くテンプレ(定型)の話。
    文章を書くとき、こんなテンプレがあります。
     「でも、たった一つ言えることがあります。それは〇〇ということ」
    このテンプレは便利ですし、 ここぞというときに使えば文章がピリッと引き締まります。 読者の意識を「○○」に集中させる効果もありますね。
    でも、たった一つ言えることがあります。 それは使いすぎるなということ。
    ……というメタな文章を書いて楽しんでいます。
     * * *
    ファンレターの話。
    先日、韓国の高校生さんからファンレター(メール)をいただきました。 許可を得て、以下で公開しています。
     ◆結城浩の日記  http://bit.ly/2qRjey4
    ご感想をいただくのはとてもうれしいのですが、 興味深いのは、この韓国の高校生さんが持たれた感想が、 日本の高校生さんが持つ感想と変わらないという点です。 『数学ガール』では、
     「数学は、時を越える」
    というキャッチフレーズを使っていますが、 結城はこのメールを読んで、
     「数学は、国境を越える」
    ということも言えるんだなあとつくづく思います。
    題材をうまく料理して提示すれば、 国境を越えて「数学のおもしろさ」が伝わるのですね。 住んでいる国が違っていても、使っている母国語が違っていても、 数学のおもしろさ、楽しさ、喜びというのは共通なのだな……と感じ入りました。
    学ぶことの楽しみもまた、 時や国境を越えていくに違いありません。
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    複数の項目を提示するには「糸」が必要 - 文章を書く心がけ
    Draftで数式混じりの文章を書く - 仕事の心がけ
    増刷のタイミングが教えてくれること - 本を書く心がけ
    愛の原則
    おわりに