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2017年5月の記事 5件

Vol.270 結城浩/数式混じりのメモ/「具合が悪い」ときのチェックリスト/執筆中の忘却/

Vol.270 結城浩/数式混じりのメモ/「具合が悪い」ときのチェックリスト/執筆中の忘却/ 結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年5月30日 Vol.270 はじめに おはようございます。結城浩です。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 ここ数日、気持ちのいい天気が続いています。 やや暑いけれど、風が気持ちよく、空も青く澄み、 何だか遠くまで飛んでいきたくなるような、 そんな天気です。 あなたはいかがお過ごしでしょうか。  * * * 新刊の話。 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の初校読み合わせが済みました。 初校読み合わせが終わると、 私の手元からゲラが編集部に渡ります(そのゲラには、 私がたっぷり朱入れをしているわけです)。 編集部はそれを使って組版を修正します。 再校が出てくるのはおよそ一週間後。 今週末にはおそらく再校ゲラが結城の手元にやってきます。 ではそれまで結城は暇になるかというと、 そんなことはありません。 今回の本の宣伝展開のためのメッセージカード作りや、 初校で積み残しになっていた修正点& 懸念事項を練る作業が必要になるからです。 現在のペースで行きますと、 新刊が書店に並ぶのは六月末くらいになるでしょうか。 それまでにはサイン本を作る作業も待っています。 いよいよ『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 作成も終盤戦です。がんばりましょう!  ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://bit.ly/girlnote09  * * * 陳腐化させない話。 Zack Kanter氏による以下の文章を読みました。  ◆Amazonが「世界を食い尽くしている」理由を考える | TechCrunch Japan  http://jp.techcrunch.com/2017/05/16/20170514why-amazon-is-eating-the-world/ この記事は、Amazonのビジネスのある側面について語っています。 要約することは難しいですが、結城はこんなふうに捉えました。 Amazonは、 自社が使っているサービスをAWSによってプラットホーム化している。  ◆AWS(Amazon Web Services)  https://aws.amazon.com/ それによってAmazonは利益を得ると同時に、サービスを進化させていける。 つまりAmazonは、自社が使っているサービスをプラットホーム化することで、 世界の水準にキープし続けることができている。そこに他社は追随できない。 要するに「究極のドッグフーディング」を行なっていることになる。 なるほど、と思いました。 この記事を読みながら結城は「陳腐化」について考えていました。 会社であれ、個人であれ、 誰しも仕事でライバルに遅れを取りたくはないでしょう。 そのため多くの人が考えるのは、 自分が持っているノウハウや技術を外から「隠す」ことです。 隠せばライバルに盗まれる心配はなくなりますから、 優位性が保たれる……といえそうです。 確かにそれはそうでしょうけれど「隠す」ことには危険性もあります。 それは隠すことによって陳腐化に気づかなくなる危険性です。 「ガラパゴス化する」や「レガシー化する」ともいえるでしょうか。 技術を「隠す」ということは、 自社の持っている技術の利用者を、自社に限定するということです。 自分が作って自分が使うのですから、注意しなければ整備が遅れます。 まがりなりにも使えているので、無駄をそぎ落とす努力が後回しになり、 文書化が遅れ、情報共有が先細りする恐れがあります。 「この技術については、社内のあの人に聞けばいいよ」 という状況は危険です。 知る人ぞ知る「秘伝のタレ」状態が生まれるということですね。 自社が使っているサービスを他社に使わせるというのは、 一見、秘密を外に漏らしているように見えます。 でも実は、厳しい目を持つコンサルタントを雇っているようなものです (しかもコンサルしている側がお金を払っている!)。 先ほどの記事を読みながら「なるほど」と感じたのは、 陳腐化を防ぐための工夫がそこにあると思ったからです。 何をオープンにし、何をオープンにしないか。 その判断は自身の陳腐化を防ぐために重要です。 そしてその判断を行うためには、 自分が生み出している価値が、 いったいどこから来ているのかを見抜く力が要りそうですね。 自分が持つ「秘伝のタレ」は価値を生み出しているのか。 「隠す」ことで自分をガラパゴス化させているのではないか。 そんなことを思いました。  * * * 探す/作るのバランスの話。 結城はプログラムが好きです。 プログラムの魅力の一つは、基本的な部品の使い方を理解したら、 それを組み合わせることでより複雑なものを作れる点にあります。 アイディア次第、というわけですね。 自分が「こういうものがほしいなあ」と思うものがあったときには、  「あっちとこっちを組み合わせれば、実現できるな!」  「ここの値を変えちゃえばできるじゃん!」 のように考えるのが大好きです。 ところで、結城が思うような工夫は、 すでに誰かによって考えられてることも多いものです。 つまり、結城が欲しいものを手に入れるとき、 プログラムを「作る」よりも「探す」方が楽なことが多いのです。 たとえば以前、バージョン管理ツールのgitを使っていて、 「このファイルをいったん脇に置いておきたいな」 と思ったことがあります。そのためのツールを自作しかけたのですが、 実は「ファイルを脇に置いておく」機能はすでにgitにあるのです (git stash)。 また、BootstrapでWebサイトを作っているとき、 「もっとページ全体を大きく使いたいな」 と思ったことがあります。widthを調整して……と思いかけたのですが、 実はcontainer-fluidというCSSのクラスが最初からありました。 あるいはまたMathJaxで数式表示するサイトを作るとき、 「数式表示がちらつかないようにしたいな」 と思ったことがあります。ダブルバッファリングを行い、 レンダリングが終わったところでvisibilityを切り換えれば…… と思ってコードを書きかけました。 でも、MathJaxの公式リポジトリには、まさにそのための例が、 test/examplesというディレクトリの下にたくさんあったのです。 つまり、こういうことです。 ある技術を使って活動をしているとき、 「こういうことをしたいな」 と思ったらまずは公式ドキュメントを読むべき。 自分が考える「改良」や「応用」というのは、 すでに誰かが考えていて、適切な対応方法が確立されていることが多い、 ということ。 安易に「作る」前に「探す」ことも大事。 だからといって、 自分が作ろうとする気持ちが無駄なわけではありません。 「こういうことをしたいな」と感じて、 「こうすれば作れる!」と気がつくということは、 その技術をよく理解している証拠といえるからです。 「作る」と「探す」の話は、また後でも出てきます。  * * * 流動床の話。 砂をたっぷり入れた容器を用意し、そこに空気を吹き込みます。 そうすると、砂がまるで水のような状態になるのだそうです。 「流動床」(りゅうどうしょう)が以下の記事で紹介されていました。 砂の上にカヌーを置いてスイッチを入れると、 いきなりカヌーがゆらゆらと揺れ出すのです。 まるで水の上に浮かんでいるかのように! 冒頭に動画へのリンクがありますのでご覧ください。  ◆砂を液状に…カヌーもこげちゃう? 流動床、応用に期待  http://www.asahi.com/articles/ASK554TWKK55UTNB003.html この動画を見ると、なぜかウキウキしてきますね。 砂場遊びと水遊びが一体化した感じがするからでしょうか。 もう一つ、空気を入れたり止めたりすることで、 固い床と柔らかい床を自在に行き来することができる点も魅力です。 つまりそれは、コンピュータを使って床の固さを 制御できることを意味するからです。 ふだんは固い床だけど、いざというときには水のような表面になる、 防犯用の「落とし穴」も作れそうです。  * * * アイコンの話。 きっかけはもう忘れてしまいましたが、 最近、メールの設定を変更して「メール一覧でアイコンを表示する」 ようにしています。 あたりまえのことですが、単なる文字の羅列よりも、 アイコンを表示した方が視認性がよくなります。 メールの差出人は詐称しやすいのでアイコンだけで「本人である」 と判断するのは危険ですが、 少なくとも「いつもと違う人」からのメールの識別が簡単になりました。  ◆メール一覧にアイコンを使う様子(スクリーンショット) Macのメール.appでの設定は「メール>環境設定>表示」にあります。  ◆メール一覧にアイコンを使う設定(スクリーンショット) さて、この「改善」はあたりまえのことですが、 結城にはちょっと思うことがありました。 それは「小さな改善の積み重ね」についてです。 上で示したスクリーンショットには、  ・Unsplash  ・Instagram  ・Evernote  ・SparkPost  ・bitly からのメールが来ています。これからもわかるように、 これは、サービス利用専用のメールアドレスなのです。 数ヶ月前、結城は自分のメールアドレスを整理しました。 目的ごとにメールアドレスを分けて、使いやすくしました。 あのとき「メールアドレスを分ける」という改善をしていたから、 今回の「アイコンを表示する」という改善が生きたことになります。 なにしろメールアドレスを整理する前は、 spamがいっぱいでほぼすべてが知らないユーザからのメールでしたから。 ひとつひとつはちょっとした改善、あたりまえのことですが、 少しずつそれが積み重なっていくのだな、と感じた次第です。  * * * それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。 どうぞ、ごゆっくりお読みください! 目次 はじめに 数式混じりのメモを書く環境について - 文章を書く心がけ 何となく「具合が悪い」ときのチェックリスト - 仕事の心がけ 執筆中の忘却について - Q&A おわりに  

Vol.270 結城浩/数式混じりのメモ/「具合が悪い」ときのチェックリスト/執筆中の忘却/

Vol.269 結城浩/どこに朱を入れますか?/状況説明は難しい/ジェスチャと心の切り替えと/

Vol.269 結城浩/どこに朱を入れますか?/状況説明は難しい/ジェスチャと心の切り替えと/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年5月23日 Vol.269 はじめに おはようございます。結城浩です。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 ここ数日急激に暑くなりました。 つい先日まで「桜が……」や「さわやかな天気が……」 と言ってたのに、もう「暑いですね」が挨拶になりましたね。  * * * 新刊の話。 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の初校ゲラが届きました。 ゲラというのは簡単にいえば、 見開きの形で印刷された紙の束です。 でも、ただの紙の束ではありません。 ノンブル(ページ番号)も振られて図版も入り、 書籍がどんな形になるかがはっきりわかる紙の束です。 結城はもう何冊も本を書いていますが、 毎回この「初校ゲラ」や「再校ゲラ」が届くのが楽しみです。 ドサッと届いた紙の束を見ると、  「ああ、これが本になるんだなあ」 というイメージが湧くからですね。 すでに初校ゲラのイメージPDFは届いていますけど、 紙という実際の「もの」を見るのはまた違うんですよね。 現在結城は、その初校ゲラを読みながら、 せっせと朱入れをしています。 赤のボールペンを手にして、 まちがいを直したり表現を少し変えたりするのです。 編集部に戻すまでに約一週間〜十日の時間がありますので、 がんばって修正をします。 特に、版面が変わるような大きな変更は、 できるだけ早めに出すようにしています。 今年の初めからいろいろとたいへんな時期を過ごしましたので、 今回の本にはいつもよりも長い時間が掛かってしまいました。 しかしながらおもしろいもので、初校ゲラを読んでみると、 いつもの初校ゲラよりも品質が高いように感じます。 時間(期間)が長かった分、 多くの角度から推敲ができたからかもしれません。 人生、何がどう働くかわからないものですねえ。 そんなことを家内に話したら、 「何というポジティブシンキング!」 と言われました。まったくですね。 ということで、 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 をがんばって進めていきましょう!  ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://bit.ly/girlnote09 後ほど、今回の初校ゲラへの「朱入れ」を題材にして、 クイズと読み物をお届けしますね。 修正そのものはちょっとしたことですけれど、 「何を考えてその修正を行ったか」を解説します。  * * * ゲームの話。 結城はiPhoneでよくゲームを楽しみます。 リアルなゲームよりは抽象的なパズルゲームが好みです。 最近は、Noodlecake Studios Incの、  Invert - Tile Flipping Puzzles というゲームを楽しんでいます。 表と裏の二色があるピースが並んでいて、 特定の形に並んだピース群を反転させていき、 最終的に表か裏かの一色にまとめるというもの。 「ライツアウト」という有名なゲームと似たタイプのゲームです。  ◆Invert  https://bit.ly/InvertGame  ◆Invert(スクリーンショット)  ◆Invert(開発者による紹介サイト、動画もあります)  http://www.noodlecake.com/games/invert/ 結城はこういうゲームが好きです。 長時間やりこむという楽しみ方ではなく、 原稿を読むのに疲れたとき、ほんの数分ほど遊ぶのです。 ちょうど、頭をニュートラルな状態に戻す感じになりますね。 ところで、ふと気づいたんですが、 このInvertを作ったNoodlecake Studios Incという会社はカナダにあります。 海外の会社が作ったゲームを当たり前のように購入して、 すぐに遊んでいるわけですよね。いまさらながら、 すごい時代になったものだと思います。  * * * MathJaxの話。 Webページをいい感じにデザインできるBootstrapで遊んでいます。 先日は「タブ」機能で遊んでいました。 もちろん、そのページは先週も紹介した「倉庫」に置いています。  ◆倉庫  https://depot.hyuki.net/ ところでふと、BootstapとMathJaxを合わせて使うと、 ボタンのキャプションにも数式が使えることに気づきました。 あたりまえなのですが、おもしろいですねえ。 何か楽しいもの、作れないかな?  ◆ボタンのキャプションにも数式が使える(スクリーンショット)  ◆タブ機能で遊んでみよう  https://depot.hyuki.net/tabs/ Webサイトで簡単に美しい数式が表示できるMathJaxはこちら。  ◆MathJax  https://www.mathjax.org MathJaxのような道具を作り、世界に向けて公開するというのは、 人類に対する大きな貢献だと思います。  * * * セキュリティの話。 先週はランサムウェアのWannaCryの話題でもちきりでした。 コンピュータ上のファイルが暗号化されてしまい、 「もとに戻してほしくばお金を払え」というタイプのマルウェアです。  ◆ランサムウエア "WannaCrypt" に関する注意喚起  https://www.jpcert.or.jp/at/2017/at170020.html ファイルを「人質」にとって身代金を要求している状態なので、 ランサム(身代金)ウェアと呼ばれているようです。 一般のユーザとしてはこのような脅威に備えるためには、 いつも言われることですが、  ・不審なメールの添付ファイルを開かない  ・OSを最新版にアップデートしておく  ・ウイルス対策ソフトウェアを最新の状態に保つ といったことが必要になるでしょう。 脅威といえば、先日こんな経験をしました。 何気なくWebサーバのerror_logを見ていたところ、 ときどき、wp-login.php にアクセスを試みるクライアントがありました。 この wp-login.php というのは、 有名なブログツールWordPressのログインのときに使われるものです。 でも、結城のWebサーバにはWordPressは設置していません (だからこそ error_log にNot Foundのエラーがでていたわけです)。 つまり、この「アクセスを試みるクライアント」というのは恐らく、  ・このWebサーバにはWordPressは設置されていないかな?  ・そしてあわよくば簡単にログインできるようになっていないかな?  ・あるいは脆弱性を持っている古いWordPressになってないかな? ということを調べている存在なのです。 比喩的にいえば、ドアノブをがちゃっと試しに回してみて、 鍵の閉め忘れがあったらそのまま入っちゃおうとしている存在です。 wp-login.php へのアクセスに限りません。 多くのマルウェアは、感染を広げるため、 インターネットを通じて「開いているドア」がないかどうか、 他のサイトにアクセスにいきます。 リアルな世界ならば、 ドアをがちゃがちゃ回していたら不審者だとわかるでしょう。 でも、インターネット上での動きはそのままでは目に見えません。 エラーログのような「目」を通して見なければわからないのです。 見えないものを見る力、見えないものを見る道具が、 セキュリティ対策には必要ですね。 あ、そうだ。 WordPressを設置したまま放置している方はいませんか。 「自分でブログを作ろう!」としてWordPressを設置するのはいいですが、 バージョンアップせずに放置しているのはよくありません。  ◆「WordPress」に脆弱性、150万超のサイトが改ざん被害に - さくらのナレッジ  http://knowledge.sakura.ad.jp/knowledge/7854/ 自分のところに大した情報がないから放置してもいいや、 というのはまずい考え方です。被害者にならなくても、 悪意のある人の踏み台となり、加害者の側になってしまうかもしれないからです (たとえば、スパムメールの送信元として利用される事例があります)。 以前WordPressを設置して放置している方は、どうぞご注意ください。  * * * 毎日やっていることは、 特別な日にもできる。 毎日やっていないことは、 特別な日にできるとは限らない。 試験の日、試合の日に力を出すためには、 普段の日から力を出していなければならない。 特別な日に本気を出すためには、 普段の日から本気を出していなければならない。 練習は、そのためにある。 そんなことをよく考える。  * * * それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。 どうぞ、ごゆっくりお読みください! 目次 はじめに どこに朱を入れますか? - 本を書く心がけ 状況説明は難しい - 教えるときの心がけ ジェスチャと心の切り替えと - 仕事の心がけ おわりに  

Vol.269 結城浩/どこに朱を入れますか?/状況説明は難しい/ジェスチャと心の切り替えと/

Vol.268 結城浩/再発見の発想法/ロマンティック数学ナイト/老いに備える知的生活/

Vol.268 結城浩/再発見の発想法/ロマンティック数学ナイト/老いに備える知的生活/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年5月16日 Vol.268 はじめに おはようございます。結城浩です。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。  * * * 新刊の話。 先週は『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 のカバーイラスト打ち合わせがありました。 結城とデザイナーさんと編集長さんとで話し合って、 カバーのイラストをどんなイメージにするか、 色合いをどうするかという意識合わせと方針決めをする場です。 いっぽう原稿は出版社で組版を行っており、 今週中には編集部から初校ゲラが届く予定。 初校ゲラを繰り返し読み、 みっちり校正をしていくプロセスに入ります。 ここまで来れば本が出版されることはほぼ確実ですが、 あとは品質をどこまで上げられるかですね。 時間も能力も限られているわけですので、 配分を考えつつしっかりいきたいと思います。 そういえば打ち合わせの中でデザイナーさんから、 「数学ガールは大河小説になりつつありますね」 とコメントをいただきました。 形式上、大河小説といえるかは不明ですが、 それなりの冊数も集まりいろんな題材を扱っていますから、 ボリュームがあるシリーズになっているのは確かです。 各巻を読んでくださる読者さんだけではなく、 全体を「シリーズ」として応援してくださる読者さんもたくさんいます。 だからこそ、一冊一冊を大切に作り上げていかなくてはね。 がんばろう!  ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://bit.ly/girlnote09 この結城メルマガ執筆中に、 上記のアマゾンリンクをチェックしたところ、 なんと微積分・解析カテゴリで第一位になっていました。 応援ありがとうございます!  * * * Gitを通した学びの話。 ここしばらく結城はマストドンのインスタンスをいじって楽しんでいます。 マストドンはオープンソースなので誰でも(それなりの経験と技術があれば)、 自分でインスタンスを立ち上げることができます。 マストドンは他の多くのオープンソースのプログラムと同じように、 バージョンに追従したりするときにはGitの知識が不可欠です。 結城は執筆作業やプログラミングにGitをずっと使っていますが、 ふだんは一人で作業をしているので、ブランチ機能はそれほど使いません。 本家のソフトウェアに追従するというのもあまりやったことがありませんでした。 しかし、ここしばらくマストドンをいじっている関係上、 ブランチの理解が急激に深まり、 コマンドも直観的に使えるようにスキルアップしました。 ネットで公開されているPro Gitの本をあらためて読んでみました。 ブランチ機能の部分もさくさく読めます。 きっと頭の中に(手の中に?)自分が体験した例がたくさんできたからですね。  ◆Pro Git 第2版(日本語)  https://git-scm.com/book/ja/v2  ◆Pro Git - Chapter 3 Git のブランチ機能  http://bit.ly/git-doc-branch 以下の記事は、本家のリポジトリに追従したり、 新規機能を追加したりするためのGitコマンド列を書いたものです。  ◆gitコマンドのメモ(本家リポジトリに追従・新規機能の追加)  https://snap.textfile.org/20170509104726/ また、以下の記事は、 本家のマストドンをforkして自分のリポジトリを作る話です。 ここまで書いて私はようやく「理解した」と実感できました。  ◆本家のマストドンをforkして自分のリポジトリを作る話  https://snap.textfile.org/20170509111842/  ◆Forking Mastodon (図版) ちなみにこの図版はMacのOmniGraffleで作りました。 描くのに掛かった時間はたぶん一時間くらいだと思います。 図を描いた後は、そこに描かれている要素をひとつひとつ指さして、 それが何であるかの説明を試み、 その説明をブログ記事の文章にします。 それは自分に対する「理解度テスト」です。 ふだん私たちは「きちんと学ぶと実践できる」と考えがちですが、 実はそんなに単純な話ではないのかもしれません。 見よう見まねで体験を重ねてから本を読んだり、 本を読んでる途中でも自分でやってみたり、 インプットとともにアウトプットもしたり…… そんなふうに「並行して学びが進む」側面もあるんじゃないんでしょうかね。  * * * わかばちゃんの話。 Gitといえば、湊川さんの 『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門』が、 アマゾンの開発技法カテゴリでずっと一位を続けているようです。  ◆『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門〈GitHub、Bitbucket、SourceTree〉』  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4863542178/hyuki-22/ 結城もKindle版を買い、ぱらぱらと読ませていただきました。 やさしい内容ですが、図解が多いのと後半部分に出てくる事例や、 追跡ブランチの話などは自分の理解の確認になりました。 この「わかばちゃん」の本がこれだけ人気になったのは、 プログラマ向けのツール(と考えられがちな)Gitを、 Webデザイナーさんなどの新しい層に紹介したという面も大きそうです。 ファイルの修正を任意の時点まで戻したり、 他の人の修正と混ぜ合わせたり、 どこを修正したのか調べたりするのは、 プログラマに限った作業ではありません。 バージョン管理ツールが広く浸透し、作業をしている人たちが、 無駄な時間を使わなくなるようになればいいですね!  * * * 新たなマストドンアカウントの話。 結城は、いわゆる「おひとりさまマストドンインスタンス」を動かしています。 以下のURLでアクセスできます。  ◆social.hyuki.net  https://social.hyuki.net そこに hyuki というアカウントを作って投稿しているのですが、 実験的に別のアカウントも作ってみました (何しろ自分のサーバなので好きなidが作り放題なのです)。 新しく作ったのは、 結城がはてなブックマークでブックマークしたURLを投稿するbotです。  ◆結城浩のブックマーク  https://social.hyuki.net/@bookmark  ◆結城浩のブックマーク(スクリーンショット) 自分がブックマークしたページを投稿するだけなので、 特に新しい情報が増えたわけではありません。 でも、自分でこういうbotを作ってみると 「なるほど」と感じ入るものがあります。 自分が「こういうものを作れるんじゃないかな?」と思い、 実際にそれを作ってみて動かす。ちゃんと動いたならば、 自分は理解している。ちゃんと動かなかったら、理解していない。 まさに《例示は理解の試金石》です。 ブックマークを投稿するアカウントを作るというのは、 それほど難しい話ではありません。でも「自分の手でやってみる」 というところに私は意味を感じています。 自分でやった経験があると、世の中のbotを見たときに、 「おそらく背後ではこんな感じの仕組みが動いているんだろうな」 と想像することが容易になるからです。 そしてまた、具体的に何かを作ると「次のステップ」も見えてきます。 今回は「結城浩のブックマーク」を投稿するアカウントを作りましたが、 何か定期的に情報を流すようなアカウントを作ることもできそうですよね。 メルマガとも違う、ニュースレターとも違う、ブログとも違う、何かです。 プログラムの助けを借りると、ネット上ではいろんな活動ができますね!  * * * いろんな活動。  ◆いろんな結城浩(イメージ図)  * * * 雨の音。 ここ数日、結城は「雨の音」を聞きながら仕事をしています。 iPhoneで以下のSimplyRainというアプリを使っているのです。  ◆SimplyRain  https://rain.simplynoise.com SimplyRainとSimplyNoiseという二種類のアプリがあり、 SimplyRainでは雨の音、SimplyNoiseではホワイトノイズが聞けます。 雨の音や波の音など、自然界の音を聞いてリラックスするというのは、 それほどめずらしくはありません。 結城も以前、眠るときに波の音を聞いていたことがありました。 SimplyRainはシンプルなデザインで、 選択肢があまりないにも関わらず、 しっくりとくる音になっています。  ◆SimplyRain(スクリーンショット) SimplyRainは仕事中に聞くようにしています。 ほら、雨の日って妙に落ち着いて、 しっとりした気分になりますよね。 じっくりと腰を落ち着けて考えごとをする。 その環境を音を使って作っているわけです。 雨の音と、ときおり遠くで聞こえる雷の音。 いまこの文章もSimplyRainを聞きながら書いています。 結城は執筆時にバッハを聞くのが好きですが、 雨の音もなかなかいいものです。 終わりが来ず無限に聞いてられるのもいいですね。  ◆SimplyRain  https://rain.simplynoise.com  * * * 比較の話。 結城は、こんなふうに思っています。  勝ち負けを気にしたり、  他と比べたりすると、  かぐわしさは失われる。 誰でも、どんな分野においても当てはまることですが、 「自分より優れている人」より自分は劣っています。 「自分より劣っている人」より自分は優れているでしょう。 だとすると、基準を他者との比較に置くのはむなしいことです。 もっとも、他者とつい比べて一喜一憂するのが人間の姿でもありますけれど。 ところで、 結城はよく「アマゾンランキング」について言及します。 あれは比較じゃないんでしょうか(と自問)。 確かにランキングは他者との比較にほかなりませんが、 結城は「○○という本よりも自分の本がランキング上位だからすごい」 というふうに考えることは少ないみたいです。 結城の関心は、他の本よりも読者さんにあります。 ランキング上位になるくらい、 たくさんの読者さんが私の本を応援してくださっている! そのポイントに喜びと感謝を感じるのです。 人は多様なものです。画一的に扱うことはできません。 人が読む本も多様なものです。同じ題材を扱っていても、 ある人にとってはAという本が役に立つし、 別の人にとってはBという本が役に立つというのはよくあることでしょう。 せっかくの自分の活動を「他者との比較」で台無しにしたくありません。 多くの人の応援を「他者との比較」でむげにするのはよくありません。  勝ち負けを気にしたり、  他と比べたりすると、  かぐわしさは失われる。 結城は、そんなふうに思っています。  * * * それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。 どうぞ、ごゆっくりお読みください! 目次 はじめに 再発見の発想法 - Branch(ブランチ) 倉庫ができれば中身もできる 忘却と戦う代わりにスクリプトを書く - 老いに備える知的生活 ロマンティック数学ナイトへの出題、結城浩の《挑戦状》 おわりに  

Vol.268 結城浩/再発見の発想法/ロマンティック数学ナイト/老いに備える知的生活/

Vol.267 結城浩/マストドンとアイデンティティ(4)/若いときを振り返り、大切なものは何かを考える/

Vol.267 結城浩/マストドンとアイデンティティ(4)/若いときを振り返り、大切なものは何かを考える/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年5月9日 Vol.267 はじめに おはようございます。結城浩です。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 ゴールデンウィークも終わりましたが、 いかがお過ごしでしょうか。 ……と書いてみたものの、 結城自身は特に休みもなく、 普通にお仕事を続けておりました。  * * * 新刊の話。 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』の脱稿が済み、 先週はようやくちょっと一息ついた感じでした。 今回の本もいつもと同様に、 何人かのレビューアさんに読んでいただいております。 書籍が出版される前に、複数人に読んでもらい、 まちがいや、読みにくいところや、 おもしろいところを指摘してもらうのはとても参考になります。 結城はレビューアさんに無償でレビューをお願いしています。 金銭でのお礼はしていませんが、謝辞という形で感謝の意を表すことと、 編集部経由で献本させていただいています。 先日はその献本と謝辞に関する連絡メールを送りました。 毎回思うことですが、他の人に目を通してもらうのは大事です。 結城は執筆するとき、自分なりに必死で考えるわけなので、 たいていの「指摘」は想定内に収まります。 しかしながら「なるほど!」と膝を叩くような指摘も、 毎回必ずいただきますね。 とはいうものの、 レビューアさんからの指摘に優劣を付けるつもりはまったくありません。 「この部分に《の》が抜けていませんか?」という指摘も、 数式が右側にはみ出ていますという指摘も、 「この解答は数学的に誤りです」という指摘も重要なのです。 指摘だけではありません。 「ここでクスッと笑いました」や「ここ、いいなあ」という感想も貴重です。 著者である私には複数人のレビューアさんからの指摘が届きますから、 複数の感想を全体として受け止めることができます。 それを通して結城は、  「今回の本はどんなトーンで読者に見えるのか」 という予想を立てることができます。 それが自分のねらい通りになっているかどうかを考えて、 必要ならば調整をします。 レビューアさんからの指摘は、 細かいポイントで参考になるだけではなく、 そのような広い視野においても参考になるのです。 まったく感謝なことですね。 結城がインターネットを使った「オンラインレビュー」を始めたのは、 1998年の『Perlで作るCGI入門』応用編のプログラムレビューからでした (ず、ずいぶんむかしの話だ……)。  ◆書籍執筆とオンラインレビュー  http://www.hyuki.com/writing/writing4.html 「自分の原稿を編集者以外の他人に見せる」なんて、 最初はとてもドキドキしたものでした。 でも現在は、他人に見せることの重要性をよく理解しているので、 このプロセスなしの執筆は考えられません。 今週は、 新刊『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』 のカバーデザイン打ち合わせがあります。 予定よりずいぶん遅れてしまったので、関係者にごめんなさいしなくては……  * * * Web連載の話。 Web連載「数学ガールの秘密ノート」の方も新シーズンが始まっています。 現在は「整数に誘われて」シーズン第2章で、 最小公倍数と最大公約数のお話。 小学生のお子さんを持つ親御さんにぜひ読んでもらいたい! と思う内容になっています。 もちろん、小学生本人に読んでもらっても問題はないのですけれど。  ◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」  https://cakes.mu/series/339  ◆「整数に誘われて」シーズンのアイキャッチ画像 倍数・約数・公倍数・公約数・最小公倍数・最大公約数……って、 小学校時代悩みませんでしたか。結城はとても悩みました。 倍数はまだいいけれど、約数はよく意味がわからなかったですね。 しかし、その「わからなかった」経験が現在の執筆に生きるのです。 人生に無駄なし! ところで、第193回「レンガを重ねて」(前編)には、こんな図版が登場します。  ◆最小公倍数と最大公約数の関係図 結城の文章と図版をベースに、 kamimuraさん(@mkamimura)がこんなプログラムを作ってくださいました。 二つの数を入れると、その最小公倍数と最大公約数とを図示するプログラムです。  ◆数学 - JavaScript - いろんな場合の数での最小公倍数と最大公約数の長方形と正方形  http://sitekamimura.blogspot.jp/2017/05/javascript-hyuki.html 結城が書いた記事に、こんなふうに反応してくださるのはとてもうれしいですね! 特にWebを介したやりとりというのがいいです。 記事を書いた本人・プログラムを書いた本人だけではなく、 それを見ている多くの人が楽しむことができるからです。 文章を書く。プログラムを書く。 そしてそれらをWebで公開し、互いに楽しむ。 そのようなコミュニケーションは、 とても現代的で知的な喜びにつながっていると思います。  * * * 数式の話。 先日、@kyama0321 さんのツイートが話題になっていました。 PowerPointの数式挿入モードを使わずに数式を「構築」したという話です。  --------  パワポの数式挿入モードを知らないで数式を記述した後輩すごい(承諾済み)  https://twitter.com/kyama0321/status/856356103201759232  -------- これを見てつい「数式を書くならLaTeXがいいですよ」と言いたくなりました。 LaTeXならば、ちょっと書くだけで、きれいな数式ができるからです。  ◆こんなふうに書けば……(スクリーンキャプチャ)  ◆こんなふうに出力されます(スクリーンキャプチャ) これはMathJaxを使ってWeb上でLaTeXを数式にしています。 何回か紹介したことがありますが、以下のサイトで試すことができます。  ◆Draft/Math - ちょっとした数式をメモする  https://draft.textfile.org/math/ Draft/Mathはちょっとした数式を画像化するのに便利です。 もう少しまとまったスライドを作るときには、 PowerPointを使わず、ぜんぶLaTeXで書いてPDFにしています。 ひながたはこんな感じで書きます。  ◆LaTeXで作るスライドの例  https://gist.github.com/hyuki0000/1affe61c02a3163a1d06f980be926cbe  ◆LaTeXで作るスライドの例(スクリーンショット)  * * * Prepackの話。 PrepackというJavaScriptのツールが話題になっていました。 JavaScriptで書いた複雑なプログラムを一気に単純化するツールです。 たとえば、 1から10までの和を計算して出力するプログラムをJavaScriptで書き、 Prepackで変換するといきなり55を出力するプログラムに変わります。 11行あるプログラムが1行になってしまいました。 以下にスクリーンショットを示します。  ◆1から10までの和を計算するプログラムを書いたら……(スクリーンショット)  ◆Try it out! - Webですぐにprepackを試す  https://prepack.io/repl.html @ryo511 さんがFizzBuzzを試していました。  --------  FizzBuzzをPrepackしてみたら、なるほどって感じの結果になった  https://twitter.com/ryo511/status/860113035154804736  --------  ◆FizzBuzzを試した例(スクリーンショット) 以下のPrepackのページにはいくつかのサンプルがあります。  ◆Prepack  https://prepack.io これはおもしろいですね!  * * * 自動判定の話。 先日、Cookie26さんがこんな記事をQiitaに投稿なさっていました。  ◆LSTMでどのキャラクターのセリフか判別する  http://qiita.com/Cookie26/items/6823346661f600b246eb 『数学ガール/フェルマーの最終定理』を使って、 セリフから誰の発言かを判別する仕組みのようです。 上の記事にも書いてありますが、興味深いのは、 「僕」がユーリに向かって言った発言を誤判定した部分。 ユーリは「僕」のことを「お兄ちゃん」と呼ぶのですが、 「僕」も「僕」自身のことをときどき(ユーリに対する一人称として) 「お兄ちゃん」と呼ぶことがあります。 それは、ちょうど父親が子供に対して自分のことを「お父さんはね……」 と呼ぶのに似ています。 このような一人称を正しく判定するのは難しそうですね。 そういえば、 「相手」のことを「自分」と呼ぶ場合もありますよね。 ダウンタウンの浜ちゃんがときどき使っています。 「あなたはどう思う?」という意味で「自分、どう思う?」というのです。 こういうのも自動判定は難しそうです。  * * * 今日は何の日?の話。 結城は「今日は……?」というサイトを運営しています。 運営というのは大げさですが、要するに、  「今日が一年の何パーセントにあたる日か」 を表示するサイトです。 ずいぶん以前にBootstrapとJavaScriptの練習がてら作ったものですね。  ◆今日は……?  http://week.textfile.org  ◆スクリーンショット例(これは2017年5月8日の画面です) 作りっぱなしで放置していたのですが、 アクセス履歴を見てみると意外にたくさんの方が毎日のように見ているようですね (見ているのが人間かbotかはわかりませんが)。 それにしても今年がすでに約34.9%も過ぎたなんて驚きです。 自分がばたばたしていても時間は容赦なく過ぎていきますね。 毎日をていねいに過ごしましょう!  * * * それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。 どうぞ、ごゆっくりお読みください! 目次 はじめに マストドンとアイデンティティ(4)人が集まるコミュニティ 自分との平和を保つ 若いときを振り返り、大切なものは何かを考える おわりに  

Vol.267 結城浩/マストドンとアイデンティティ(4)/若いときを振り返り、大切なものは何かを考える/

Vol.266 結城浩/マストドンとアイデンティティ(3)/「ちょっと作ったもの」はどこに置く?/

Vol.266 結城浩/マストドンとアイデンティティ(3)/「ちょっと作ったもの」はどこに置く?/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年5月2日 Vol.266 はじめに おはようございます。結城浩です。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 もう五月ですね!  * * * 新刊の話。 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』脱稿しました! レビューアさんからの指摘を反映したり、 全体的な校正や見直しも必要になりますが、 まずは一段落。正直、ほっとしました! 今年になってからプライベートでいろいろあったので、 ずいぶん遅れてしまいましたが、何とかここまでやってきました。 応援ありがとうございます!  ◆『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』  https://bit.ly/girlnote09  * * * 翻訳の話。 「数学ガール」シリーズや「数学ガールの秘密ノート」シリーズ を翻訳しているBento BooksのTony Gonzalez氏が、 こんなツイートをしていました。  --------  Happy to be starting translation of  “Math Girls 4: Randomized Algorithms”  this week! Get ready to meet a new Math Girl! =)  https://twitter.com/tonygonz/status/857404907044851712  -------- そうです。シリーズ第4巻『数学ガール/乱択アルゴリズム』 の英語版がいよいよ翻訳開始なのです!  ◆『数学ガール/乱択アルゴリズム』  http://www.hyuki.com/girl/random.html 応援よろしくお願いいたします。  * * * インタビューの話。 CodeIQ MAGAZINEに、結城のインタビュー記事が掲載されました。 マンガです!  ◆数学ガールの結城浩先生に会ってきたよ!   ──わかばちゃんが行くオフィス訪問マンガ  https://codeiq.jp/magazine/2017/04/51074/  ◆結城浩先生にインタビューしてきたよ! 湊川あい(@llminatoll)さんが連載している「オフィス訪問マンガ」 への登場です。「オフィス訪問」ですが、 結城には「オフィス」がないので、 カフェにてインタビューしていただきました。 分野を超えて考えること、人に教えるときの心がけ、 それに肯定的にとらえる話など。 ぜひお読みください! なお、湊川さんが最近出版なさった、 『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門』は、 アマゾンの開発技法カテゴリで第1位を続けているとのことです。  ◆『わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門』(湊川 あい著+DQNEO監修)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4863542178/hyuki-22/ ちなみに、湊川さんとのやりとりではesa.ioを使いました。 esa.ioでは、文章はもちろんのこと、画像もさくさく文書に挿入できるので、 マンガのラフ、下書き、清書に関して、 たいへん軽やかにやりとりを進めることができました。 Markdownで文章を書き、クリップした画像を挿入し、 それを湊川さんとシェアしました。なかなかいいですね。  ◆esa.ioで情報共有している様子(1)  ◆esa.ioで情報共有している様子(2)  ◆esa.io  https://esa.io esa.ioは「情報を育てる」という視点で作られた、 自律的なチームのためのドキュメント共有サービスです。  * * * 英語の話。 先日、こんな記事を見かけました。  ◆正直、英語が一定レベルを越えたら”他に何ができるか”の方が大事  http://arairio.com/abroad/other-than-english 新井リオさん(@_arairio)のブログです。 「カナダ在住、グラフィックデザイナーでバンドマン」 と自己紹介にありました。 この記事の中では、 海外生活をするときのスキルとして「英語」だけを考えがちだけれど、 実は「デザイナーでバンドマンであること」が他者から評価されている…… という話が書かれていました。 英語圏に行くと、自分の英語力の低さに落ち込むけれど、 「自分の英語力ではない部分が海外でもちゃんと評価される」 と知ってはじめて、  「英語だけじゃないんだ、自分はここで生きていてもいいんだ」 と思えたとのこと。 なるほど、ですね。 先週の結城メルマガに書いた「コアコンピタンス」にも通じるかもしれません。 自分はいったい何で評価されているのか、何で評価されたいのか、 そこをつかんでおくことは大事なことでしょう。  * * * マストドンの話。 今回の結城メルマガでは、 最近話題のSNSであるマストドンの話を書きます。 今回はシリーズ三回目。 (1)では「マストドンというもの」を紹介し、 (2)では「マストドンのインスタンスを立てる」話をしました。 (3)では「マストドンを活用する」話をしましょう。 先日結城はsocial.hyuki.netに、 「おひとりさまインスタンス」を実験的に立てました。  ◆結城浩のマストドン(social.hyuki.net)実験中  https://social.hyuki.net/@hyuki  ◆結城浩のマストドン(social.hyuki.net)イメージ図 現在のところは mstdn.jp の @hyuki0000 をメインで使っています。  ◆結城浩のマストドン(hyuki0000)  https://mstdn.jp/@hyuki0000 最近は、数式が書ける mathtod.online もお気に入りです。  ◆結城浩のマストドン(mathtod.online)  https://mathtod.online/@hyuki  ◆結城浩のマストドン(mathtod.online)イメージ図 先日は、日本での流行を受けて「マストドン会議」 というものも開かれていたようですね。  ◆【定員拡大&会場変更しました】マストドン (Mastodon) が   ネットを変える可能性を、いま語らずしていつ語らう!  http://ascii.jp/elem/000/001/470/1470487/  ◆【マストドン会議】時代の節目を何度も体験すると、   匂いだけでなにが起きるか想像できる【回顧録】  http://ch.nicovideo.jp/akiba-cyberspacecowboys/blomaga/ar1253674  ◆わずか10日で緊急設営 超会議の「マストドン」ブースに行ってみた  http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1704/29/news048.html 先日(2017年4月22日)にとったアンケートでは、 マストドンの知名度はざっくりこんな感じでした(結城のフォロワーが主な対象)。 連休明けたときにはどんな感じになっているでしょう。  ◆マストドンアンケート マストドンといえば、 早くも書籍が登場するようです。  ◆『これがマストドンだ! 使い方からインスタンスの作り方まで』  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844397729/hyuki-22/ Kindleではすでにマストドンの本が出ていますね。  ◆Mastodonとは: 脅威の分散型SNS  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B071RBSLH6/hyuki-22/ 結城は、自分でインスタンスを立ててから、 マストドンについてあれこれ考えています。 次に求められる本として、  『はじめてのマストドン管理者/   維持費用、運用体制、バージョンアップ、コミュニティ維持』 なんて企画はどうでしょうね。 一ヶ月以内に出て、まだマストドンが流行っていたならば、 それなりに需要がありそうです。 結城は書かない(書けない)ので、どなたか…… この本は、どこかのクラウド業者とタイアップして書くという案もありそうです。 業者を決めると話を具体的にできるし、 技術的なミスも防げるので読者も安心です。 本買った人にクラウド割引する手も。 クラウド業者は新規顧客を見込めるので本の価格も抑えられるかも。 アップデートやトラブルシュートについて手厚めに書くのがいいはずです。 こまごま書かなくてもいいですが、 いかにも起きそうな大きなトラブルは具体的な解決法まで書くのです。 読者の不安に応えるなら、いい本になりそうです。 「やめかた」も書くのがいいと思います。 技術的な側面と業者との契約解除の話とネットコミュニティ的な側面とで、 「やめかた」についても書く内容はありそうです。 「この本を買えば、始まりから終わりまで一通り網羅しているな」 と思ってもらえるのが大切ですね。 ……などと、 自分が書かない本について考えるのは楽しいな…… マストドンについては、後ほどまた。 今回は「マストドンの活用」について。  * * * 統計の可視化サイトの話。 Seeing Theoryというサイトを見かけました。 このサイトでは、 確率や統計のいろんな題材を見て、触って、体験できます。 美しくて、しかも楽しいサイトですね。  ◆Seeing Theory  http://students.brown.edu/seeing-theory/  ◆Seeing Theory(トップページスクリーンショット)  ◆中心極限定理(スクリーンショット)  * * * それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。 どうぞ、ごゆっくりお読みください! 目次 はじめに マストドンとアイデンティティ(3)マストドンを活用する 「ちょっと作ったもの」はどこに置く? おわりに  

Vol.266 結城浩/マストドンとアイデンティティ(3)/「ちょっと作ったもの」はどこに置く?/
結城浩の「コミュニケーションの心がけ」

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」は、読みやすくわかりやすい書籍を20年以上書き続けてきた結城浩が「わかりやすい文章を書く心がけ」や「人に教えるときの心がけ」を読者のみなさんと分かち合う有料メールマガジンです。

著者イメージ

結城浩

数学青春物語『数学ガール』シリーズ著者。20年以上にわたり、Java, Perl, Cなどのプログラミング言語入門書、デザインパターンなどの技術書、数学入門書など多数執筆。 Twitter: @hyuki

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