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記事 5件
  • Vol.031 結城浩/書籍の改訂/ドットインストール/情報ガール/

    2012-10-30 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年10月30日 Vol.031
    結城クイズ
    「 」の部分を漢字で書けますか。
     1. そのシステムには「ぜいじゃくせい」があります。  2. コンサートが終わって「はくしゅかっさい」した。  3. こんなところで会うとは「きぐう」ですね。
    何のひねりもトリックもありません。 よく見かけるし読めるけれど、書けないような単語を集めました!
    はじめに - 書籍の改訂
    おはようございます! (^^)
    いつも結城メルマガをご愛読くださり、ありがとうございます! この「はじめに」を書くのは、 あなたあてのお手紙を書いている気分で、毎回たのしみなんです。
    本が出ます!
    最近の結城の重要なトピックは、Java言語の入門書、 『Java言語プログラミングレッスン』の「第3版」の刊行です。 もう印刷所に回っており、2012年11月には書店に出ることになっています。
     ◆『Java言語プログラミングレッスン第3版』  http://www.hyuki.com/jb/
    この本は、1999年に刊行してから、2003年に「改訂版」、 2005年に「改訂第2版」が刊行され、今回2012年に「第3版」となりました。 当たり前のことですが「改訂を繰り返す」というのは、 読者さんに根強い人気があるということになります。 継続的に応援してくださる読者さんにはとても感謝しています。
    結城は、自分の本はベストセラーよりは ロングセラーになってほしいとよく思います。 長いあいだ継続して読者さんのお役に立つような本になってほしい、 そんなふうに考えているのです。
    特に、日進月歩で変化も激しいIT業界の中で、 こんなに長い期間生き残っているということの意味は大きいと思っています。 みなさん、いつも応援ありがとうございます。
    改訂について
    技術書の改訂をするときにとても難しいのは、 何を入れて、何を削るかです。 最新の情報を入れて更新すればいいってわけじゃありません。
    情報を入れればそれだけ本は厚くなります。 厚くなれば高くなり、読者の負担も大きくなります。 ですから、
     「あえて、この情報は書かない」
    という判断が必要になります。 それは、著者にとって恐いことです。なぜなら、
     「この情報が書いてない、あの情報が書いてない」
    と批判されるかもしれないからです。 もちろん、入っているべき情報が入っていないのは問題ですが、 すべてを入れればいいというわけでもない。そこが難しい。
    「情報が足りない」という批判を避けようとして、
     「厚くなってもいいから、すべてを入れてしまえ」
    という判断もありえます。それも立派な判断です。しかし今度は、
     「分厚くなって読みにくくなったね」
    と批判されるかもしれません。 本を書くのはいつもトレードオフです。とても難しい。
    結城は著者として何らかの判断をするわけですが、いつも、
     「読者のことを考える」
    を中心にしたいと思っています。つまり、
    この本の読者さんに必要なことは入れる。
    この本の読者さんに(少なくともいまは)必要じゃないことは、 熟考した上で省く。
    つまり「こういう批判を受けるかも」という不安は脇に置き、 この本を手に取る読者のことを想像して書く。 基本はそこにあると思っています。
    もちろん、そのような取捨選択がいつもうまくいくとは 限りませんが、自分の「姿勢」としてはそうありたいということです。
    すべての読者を満足させる完全な本はありえない。 だから著者としては、
     「私はこの本を通して読者にこれを伝えたい」
    という判断をするともいえるでしょう。 それが著者の仕事です。
    結城はいつも「自分の本がたくさん売れますように」という願いではなく、
     この本を必要としている読者さんのもとに、  無事に届けられますように。
    という願いを持っています。 もちろんたくさん売れるのは生活の上でも助かりますが、^^; ほんとうに大切なのは、 「たった一人の、あなた」に届くかどうかではないだろうか。
    そんなふうに思っているのです。
     『Java言語プログラミングレッスン第3版』も、  この本を必要としている読者さんのもとに、  無事に届けられますように……
    それでは、今回のメルマガを始めましょう!
    目次
    結城クイズ
    はじめに - 書籍の改訂
    結城浩セミナー/プレビュー版(6)
    教えるときの心がけ - ドットインストール
    結城クイズの答え
    次回予告 - 手書きノートのスナップショット(7)
     
  • Vol.030 結城浩/Web連載『数学ガールの秘密ノート』/数学文章作法「目次と索引」/

    2012-10-23 07:00  
    216pt
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年10月23日 Vol.030
    結城クイズ
    漢字クイズです。 縦横十文字に並んだ漢字で四つの熟語ができるように「☆」に あてはまる漢字を答えてください。
    例題:「明☆」「早☆」「☆食」「☆日」
    明  早☆食 日
    「明☆」「早☆」「☆食」「☆日」なので… 「☆」にあてはまるのは「朝」です。 「明朝」「早朝」「朝食」「朝日」ですからね。 よろしいですか。それでは問題です。
    問題1(易):「万☆」「同☆」「☆生」「☆見」
    万  同☆生 見
    問題2(普通):「初☆」「☆画」「出☆」「☆力」
    初  出☆画 力
    問題3(難):「人☆」「☆食」「手☆」「☆重」
    人  手☆食 重
    はじめに - Web連載『数学ガールの秘密ノート』について
    いつもメルマガご愛読ありがとうございます。 なぜか最近「はじめに」がだんだん長くなってきました。 個々のコーナーもさることながら、臨時のトピックが多いからかもしれません。
    今日の「はじめに」は、いま計画中の Web連載『数学ガールの秘密ノート』について書こうと思います。
     ◆Web連載『数学ガールの秘密ノート』  http://www.hyuki.com/girl/note.html
    『数学ガールの秘密ノート』について
    Web連載『数学ガールの秘密ノート』は、 結城の書籍「数学ガール」シリーズのキャラクタたちが 数学用語を対話形式で解説する楽しい読み物です。
    「僕」やミルカさんやテトラちゃんが対話しながら、 数学用語を説明していくことになるのですが、 「数学ガール」シリーズの内容よりはずっと難易度を下げて、 易しい雰囲気になったらいいなと考えています。
    書籍の「数学ガール」シリーズは比較的「がっつり」数学を やっている部分がありまして、それはそれで良いのですが、 もう少し広い読者さんにも数学を楽しんでいただけるようなものになったら、 と思うわけです。
    Web連載について
    Web連載というのは、定期的にWebで読めるようにするということなのですが、 現在結城は、cakes(ケイクス)というWeb上の読み物を公開する プラットホーム向けに準備を進めています。
     ◆cakes - クリエイターと読者をつなぐサイト[ケイクス]  https://cakes.mu/
    cakes(ケイクス)は、 週150円でcakes上のすべての読み物が読めるという方式のWebサイトです。 感覚としては雑誌に近いと思います。 雑誌には多様な人の記事が集まっていて、 ぱらぱらめくっていくと、自分の知らなかった書き手の読み物に出会えます。 cakesはそれに近いのかな、と思っています。
    いろんな媒体で書く理由
    結城は、本を書いたり、メルマガを書いたり、 Web連載をしたりといろんな媒体で書こうとしています。 その理由は何かというと、
     「いろんなことを試してみたい」
    という気持ちが大きいですね。 以前もメルマガを始めるときに書いたかもしれませんが、 新しい媒体に向かうときに、違う自分、 違うトーンの手応えを感じるように思うんです。
    このメルマガは2012年の4月に始めましたので、ちょうど半年たったわけですね。 私なりにメルマガの感覚(文章や企画を用意して、メルマガという媒体に乗せる感覚) がわかってきたので、もう少し別の展開をさせてみたいなと思っていたのでした。
    cakesの加藤さんと話して
    「Webで記事を書く」ということを考えていて、ふと、
     「そういえば、最近cakesという名前をよく聞くなあ」
    と思いつきました。 そこで、cakesの代表である加藤貞顕さん(@sadaaki)にコンタクトを取り、 東京の渋谷にあるcakesのオフィスに出かけていきました。
    そこで加藤さんからcakesというプラットホームのお話を詳しく聞き、 結城の連載についての相談をしてきたのです。 それがちょうど一ヶ月くらい前(2012年9月末)くらいのことですね。 とても楽しいひとときでした。
    興味を持ったのは、 どうしてcakesが「定額料金読み放題」というモデルを取ったかでした。 加藤さんによれば、Webでは細かい記事を読むたびに購読手続きを取ると、 細かい決裁が発生して読者が煩雑であると。まあそれはそうですね。 だから、定額料金読み放題というモデルになったということらしいです。 それは「読者視点」の発想でした。
    著者・読者・出版社のこれから
    話は少しそれますが、 結城はよく「著者」と「読者」の関係について考えます。
     著者は文章を書く。  読者は文章を読む。
    これはシンプルですよね。
    そして、その文章そのもの、もしくは文章を読む体験に それなりの価値があれば、読者さんの支払いによって 著者は継続的に文章を書くことができる。 読者は継続的にその著者の文章を読むことができる。
     著者はうれしい。  読者もうれしい。
    これもシンプル。
    それでは出版社はどんな役割を果たしているだろうか。 ここですべてを論じることはできませんし、 現在数多くの人が書いていますので、 出版社に期待される機能だけを出すと、
    企画(魅力的な企画を作る)
    編集(文章の品質を向上)
    印刷(文章を紙の形にする)
    営業・宣伝・広報・販売(文章を読者に知らせ、届ける)
    といったものがありますよね。 そのほかにトラブルが発生したときに 著者を法的に守るという機能もあるかもしれません。
    いずれも現在の書籍を支えている大事な機能であることは まちがいないと思います。
    しかし、電子書籍を巡る世の中の動きや、経済環境の変化などにより、 これから近い将来に、出版社のこのような機能が次第に 「出版社という一つの会社」というくくりから飛び出して、 細かく分散する可能性が考えられます。
    企画を立てる人、編集をする人、営業・宣伝・広報する人、 印刷する人…それらが一つの会社というくくりにいる必然性は 実はあまりない(のかもしれない)ということです。
    すでにいくつかの機能は分散しています。 たとえば、結城は自分のWebサイトやTwitterで読者さんに 自著の告知を行ったり、読者さんと対話したりします。 著者と読者が直接対話していることになります。 出版社が持っている「宣伝・広報」の一部を著者が担っているといえます。 さらに、読者さんは、
     「こんどこんな本を書いてね!」
    とツイートやメールで結城に教えてくださることがよくあります。 結城はこういうツイートやメールが大好きなんですが、 これは「企画」の一部を読者さんと著者が担っているともいえます。
    このような動きは一昔前なら考えられなかったことですよね。
    もしかすると今後、これまで「出版社」が担っていた仕事の 多くが分散していく動きは加速するかもしれません。 (しないかもしれません) 未来のことですから、確実なことは誰にもいえませんが、 大きな変化が起こるような予感は多くの人が持っているはずです。
    cakesのようなモデルは、出版社と敵対するわけではなく、 著者と読者をつなぐ新たな試みの一つだと思っていますが、 これがうまくいくかどうかも、よくわかりません。 うまくいくんだろうか。 端で見ていてはよくわからないので、 結城はcakesで実際にWeb連載をしてみて、
     「実際のところはどうなんだろう」
    という感触をつかんでみたいなと思っています。 新しいプラットホーム上で何かを作り、何が起こるのかを 感じてみたいなと思っているのです。
    もちろん、プラットホームはプラットホームに過ぎなくて、 大事なのは常に「読者のことを考える」という点にあります。 結城は書く人であり、読者に向けて良い読み物を提供したい。 それはどんなに時代が変わっても変化しません。 そこを崩すことなく、新しい試みには積極的に取り組みたいと思っています。
    Web連載と書籍について
    Web連載『数学ガールの秘密ノート』に話を戻します。 この連載は数学用語を対話形式で解説する読み物になりますが、 これも、うまくまとまれば将来書籍にしようと考えています。 「Webで書く感覚」と「書籍にする感覚」はおそらく違うと思うのですが、 その違いを楽しみつつ、がんばりたいと思っています。
    結城が「おもしろい」と思うものを何とか数学ガールたちに表現してもらい、 それをWebという形態を通して読者さんに読んでもらう。 そしてまたそれを再編集して、書籍という形で読者さんに読んでもらう。 どんな工夫をどう盛り込むか…考えれば考えるほどわくわくしてきます。
    少し長くなってしまいましたが、 Web連載『数学ガールの秘密ノート』に関連したトピックをいくつか お届けいたしました。
    新しい試みなので、きっと失敗したりすることも多いと思いますが、 ぜひ応援いただければと思います。よろしくお願いいたします。
    それでは、「はじめに」がまた長くなりましたが、 今回のメルマガをお送りいたします!
    目次
    結城クイズ
    はじめに - Web連載『数学ガールの秘密ノート』について
    数学文章作法 - 第6章「目次と索引」
    Q&A - 練習問題に解答は必要ですか
    結城クイズの答え
    次回予告 - 結城浩セミナー/プレビュー版(6)
     
  • Vol.029 結城浩/数学文章作法「問いと答え」/林晋先生/テディベア/

    2012-10-16 07:00  
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    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年10月16日 Vol.029
    結城クイズ
    以下の3つの共通点は何か。
     1. やは肌のあつき血汐に觸れも見でさびしからずや道を説く君  2. テディベア  3. ダイナマイト
    はじめに - 京都大学の林晋先生にお会いして
    結城浩です。みなさんいかがお過ごしですか。
    先日、京都大学の林晋先生ご夫妻とお会いする機会がありました。 結城のWeb日記でも簡単に書きましたが、もう少し詳しくお話しします。
     ◆結城浩の日記 - 京都大学の林晋先生にお会いしました!  http://www.hyuki.com/d/201210.html#i20121009080000
    上の日記にも書いたとおり、京都大学の林晋先生は八杉先生との共訳(翻訳・解説)で 岩波文庫から『不完全性定理』を出版なさっています。
     ◆『ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)』ゲーデル著、林晋+八杉満利子(解説・翻訳)  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003394410/hyuki-22/
    『不完全性定理』ではゲーデルの論文がまるまる翻訳してありますので、 結城が『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』を書いているとき、 参考にさせていただきました。
    (書名が長いので、 以下では『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』を「ゲーデル巻」と 呼びますね)
    ゲーデル巻の第10章は、ゲーデルの論文をなぞるように進んでいきます。 そんな第10章を「ややこしい!」とおっしゃる読者さんは多いのですが (実際、そのお気持ちはよくわかります)、 ゲーデルの論文のほうがずっとずっと「ややこしい!」のです。 というのは、ゲーデルの論文では数式の表記方法が特殊で、 しかも略語のもとが英語ではないからです。 数学ガールでは英語をベースにしてプログラム的な表記をしていますので、 ずっと読みやすいんですよ。 まあ、それはともかくとして、 林先生の全訳が岩波文庫で出版されたのはたいへん助かりました。
    茉崎ミユキさん作画のコミック版ゲーデル巻を出版後、 林先生とメールのやりとりをするようになりました。 先生は結城あてのメールで、何回も、 「京都に来る機会があったら必ず連絡してくださいね。食事しましょう!」 とあたたかく誘ってくださっていました。
    先日、たまたま関西方面に行く機会があったので、 思い切って林先生と連絡をとってみたところ、 すぐに話がまとまって今回の会食につながったというわけです。 思い切って連絡とってよかったなあ。ようやく、 「ゲーデル巻が書けたのは、林先生の『不完全性定理』のおかげです」 と、直接お礼をいうことができました。
    林先生は、結城のゲーデル巻をお読みになり、 確かに『不完全性定理』を参照したということを見抜いておられました。 『不完全性定理』はゲーデル論文の翻訳なのですが、 それよりもずっと多いページを、 数学基礎論の歴史とヒルベルトについて割いています。 そこに書かれているヒルベルト論がゲーデル巻に 活かされていると先生は喜んでくださいました。 「結城さんに読んでもらえてよかった」と先生に言われ、 結城はたいへん幸せになりました。
    「ここは違っているぞ、けしからん」と怒られたらどうしよう…などと 密かに思っておりましたが、林先生は終始にこやかに微笑んで、 結城の活動を励ましてくださったのです。よかった…。
    聞き上手の先生との会食で、 結城はたくさん自分の話をしました。
    結城は自分のことを、インタプリタであり、 仲介者であり、注解者であると思っています。 「読む価値があるけれど難しいもの」があちらにあり、 「それを読みたくてたまらないけれど読めない人」がこちらにあるとする。 その途中をつなぐ役目です。
    結城自身は特に何かを生み出すわけではない。 でも、がんばって難しいものに挑戦して、 それをかみ砕いてわかりやすく読者に提示する。 そのような役割を自分は担っている。そのように思っている。
    …という話を林先生にしました。 先生はそのような活動の重要性をたくさん語り、 結城の活動を大いに励ましてくださいました。 たいへんありがたく、うれしいことです。
    林先生は現在「思想史」をテーマとしてご研究をなさっているということで、 その詳細は結城の素養が足りないためまとめることはできませんが、 刺激的な話をたくさんうかがうことができました。
    結城はその場で、 普段から気になっている「素朴な疑問」を林先生におたずねしました。 不正確になるといけないので先生のお答えはここには書きませんが、 結城が先生に尋ねた質問をいくつか列挙しておきます。
     「哲学って何ですか」  「哲学の研究は何を目指しているのですか」  「哲学の研究の善し悪しを定める評価基準は何ですか」
    上のように問うた背後には、 有名な「ソーカル事件」のことがありました。
     ◆ソーカル事件  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%AB%E4%BA%8B%E4%BB%B6
    たとえば、数学の場合。
    結城は「数学の論文」がどのような成り立ちになっているかはわかります。 その論文を自分が読めなくても、 「この論文の中では定理が証明されているのだろう」 とわかりますし、 「理解できる数学者が論理的に追えば、論文の正しさを判定できるだろう」 ということもわかります。 たくさんの論文が組み合わされて、 大きな数学的体系を作り出している様子も想像できます。
    でも、哲学の場合は?
    結城は「哲学の論文」がどのような成り立ちになっているか、さっぱりわかりません。 (まあ、きちんと読んだこともないのですが…) 数学の定理のように証明が書いてあるわけではないだろう。 でも、きっと、何らかの意味での論証は含まれているだろう。 書いた本人以外が哲学の論文を読んで「これは正しい」や「間違っている」と 言えるものなんだろうか。 いやいや、そもそも「正しい」という評価基準は適切なんだろうか。 哲学の論文が複数あったとして、それらは組み合わされて何かを作るのだろうか。 …そんなことを、結城はもやもやっと考えていたのです。
    林先生に上のような素朴な質問をしたところ、 先生はていねいに説明してくださいました。 先生のお答えを聞いて、自分なりには少し理解が進んだように思います。 残念ながら、ここにまとめて書けるほどは理解できていませんが。
    しかし、 数学や自然科学とは異なる種類の「知」は確かに存在するのだ、 ということは理解できました。
    もっとしっかり理解するためには、 自分で本を書いてみないとわからないかも…
    はっ。
    『哲学ガール』を書けばいいのか!
    まあ、それは冗談として、そろそろメルマガを始めましょう。 今回のメインコンテンツは「数学文章作法」です!
    目次
    結城クイズ
    はじめに - 京都大学の林晋先生にお会いして
    数学文章作法 - 第5章「問いと答え」
    結城クイズの答え
    次回予告 - 数学文章作法「目次と索引」
     
  • Vol.028 結城浩/帰省して/結城浩セミナー(5)/読み合わせ/

    2012-10-09 07:00  
    216pt
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年10月9日 Vol.028
    結城クイズ
    「木」が二つだと「林」で、「木」が三つだと「森」です。 それでは「木」が五つだと何になりますか。ジャングルじゃないです。
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城のメルマガをご愛読いただき、ありがとうございます。
    先日、実家に里帰りをして、しばらくぶりに母に会ってきました。 母はけっこうなお年になるわけですが、まだまだ元気でうれしい限りです。 好奇心旺盛で、トライしてみたいものはiPhoneとTwitterだとか。
    結城がiPhoneでTwitterを実演して見せると、母は興味深く眺めていました。 そして(おそらく自分の中に心的モデルを構築するために) TwitterのTL(タイムライン)の成り立ちについてあれこれ質問してきました。 なかなか熱心。ほんとうに好奇心旺盛です。
    そんな母に、結城がやっているメルマガ(あなたが読んでるこれです)の話をして、 結城が以前メルマガ(Vol.021)に書いた「父のこと」の文章を見せました。 中学校の教師であった父がどんなふうに教え、どんなふうに生活していたか。
    母は、私が書いた父の思い出(母にとっては夫の思い出)を懐かしそうに読み、 とても喜んでいました。
     「そうだったね。書いてくれてありがとう」
    と母に感謝されて、私もうれしくなりました。 あの文章を書いて(そして読んでもらって)よかった。 そんなふうにじんわり思いました。
    結城が食卓でノートパソコンを開き、 仕事の文章を書いたり、メールのやりとりをしているのを見て、 母は、
     「どこにいても仕事ってできるものなんだね」
    と感心していました。確かにそうですね。
    結城のような「文章を書くこと」が仕事で、 しかも、特定の場所に行かなくてもいいし、 人と会わなくてもいいということになると、 ほんとうに、時間や場所の制約は受けません。
    とはいうものの、 「仕事がしやすい場所」あるいは「仕事がしにくい場所」 というものはやっぱりあります。先週も書きましたが、 いつもと同じ時間、いつもと同じ場所で仕事をした方が スッと仕事に入り込めるように思います(結城の場合には)。
    そういう意味で、 定時に、会社や学校という決まった場所に出かけていって 仕事や勉強をするのは、とても理にかなっていると思います。
    実家に帰ってお茶を飲んでいると、母はよく、
     「何だかずっと一緒にいたみたいだねえ」
    と、しみじみ言います。
    何ヶ月かぶりに帰省して、一泊して帰京するスケジュール。
    あわただしい時間といえばそうなんですけれど、 一緒にお茶を飲んで雑談をしているだけで、 「ずっと一緒にいたみたい」という気分になる。 親子ってそんなものなのかな。
    思い返してみると、母は私が実家に帰るたびにそういいます。
     「何だかずっと一緒にいたみたいだねえ」
    そして私も「そうだねえ」と答えるのです。 いつも、同じ繰り返し。
    そうそう、繰り返しといえば、実家に帰ると、 「自分が高校時代に使っていた本棚」をいつも眺めます。
    その本棚はまるでタイムマシンのようです。 古いブルーバックス、文庫本、受験参考書、 PC-9801のコンピュータの本などが並んでいて、 私自身を過去に引き戻します。
    本棚に並んでいた難しい数学の本をぱらぱらめくっては、
     「こんな本、高校時代には絶対理解してなかったぞ」
    と苦笑することもよくあります。
    役に立つのかどうか、理解できるかどうかなんてそっちのけ。 純粋に好奇心で買った本がたくさん残っているんです。
    以前帰省したとき、 『数III方式ガロアの理論』という本を自分の本棚で見つけました。 ちょうど『数学ガール/ガロア理論』を書いていたころのことです。
     ◆『数III方式ガロアの理論 ― アイデアの変遷を追って』(矢ケ部 巌)  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/476870011X/hyuki-mm-22/
    確かに高校時代にこの本を買ったのは覚えています。 「数III方式」というので、自分にも読めそうかなと思ったんですね。 実際には高校時代の自分には歯が立たず (がんばればわかりそうだったんですが、式変形が多くて根気が続かず) 挫折したのを思い出しました。
    実はこの「数III方式」の本は『数学ガール/ガロア理論』を書くときに あちこち参考になったので、参考文献にも含めました。 高校時代に自分が買った本を、30年後にもなって、 自分が書く本の参考文献に使うとは思いもよらないことでした。
    でも、長い時間を飛び越えてつながったようで、 ちょっぴり愉快です。
    私の本棚の中には、ロシア語やラテン語の教科書もありました。 自分の雑多な興味にあきれてしまいます。 もちろん内容はさっぱり覚えていません。 単に買っただけでおしまい。
    とはいえ、そういう挑戦――というか好奇心は必要なものなのかもしれません。 大人になってしまうと「仕事に役立つ」や「生活に便利」ということの 最適化がかなり効くようになってしまい、
     「役に立ちそうもないけれど、おもしろそう」
    にどっぷり浸かれなくなるみたい。
    ちょうどいま、来年にかけての仕事を考えているところなので、 そのような好奇心をもっと盛り上げて、 なんというか、自分をうまくゆさぶっていきたいと考えています。
    はっ!
    好奇心旺盛な母!
    母ゆずりの好奇心、私も持っているのかな。そうだといいな。 おもしろいことにもっと挑戦していかなくちゃ!
    と、いうところで今日のメルマガを始めましょう。
    目次
    結城クイズ
    特別企画 - 結城浩セミナー/プレビュー版(5)
    本を書く心がけ - 読み合わせ
    結城クイズの答え
    次回予告 - 数学文章作法「問題と解答」
     
  • Vol.027 結城浩/手書きノートのスナップショット(6)/blazing, ice-cold/

    2012-10-02 07:00  
    216pt
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年10月2日 Vol.027
    結城クイズ
    1から4は次の通り。
     1 blazing  2 ice-cold  3 sniff  4 hopping on one foot
    それでは、5 は以下の(a)〜(d)のうちどれでしょう。
     (a)gradually  (b)guys  (c)yelp  (d)chaos
    はじめに
    おはようございます。 いつも結城浩のメルマガをご愛読ありがとうございます。
    最近とくに思うのですが、メルマガを書いているときって、 親しい友人とおしゃべりをしているような気持ちになります。 あるいは気心の知れた人に手紙を書いているような気持ちでもいいです。 何だかとってもリラックスして、
     「最近、こんなこと考えてるんですよね」
    とか、
     「こないだ、こういうことがあって」
    なんて言っているみたい。だからメルマガを書くのはとても楽しいんです。
    結城は基本的に毎日執筆をしています。 日曜日だけは教会に行きますが、あとは基本的に毎日文章を書いています。 もちろんときどきお出かけしたり、用事が入ったりすることもありますけれど。 それから祝日は子供の学校が休みになるので、仕事の時間を多少調整することも。 まあ、でも、基本的に毎日執筆。
    結城は規則正しい生活というのが好きで、 ほぼ毎朝同じ時刻に起きて、ほぼ同じことをやりますね。 聖書を読んで、ささっと家の中を片付けて、 家内の朝食の支度の前準備をして、 ひげをそりながら本を読んで、曜日によってはゴミ集めをして、 決まった時刻に家を出て、森の中の仕事場(ファミレス)で執筆をします。
    同じペースを守って動くのが好きなんです。 家内は毎日同じことをするのが嫌いで、 新しいことを始めたり、やり方を工夫してドラスティックに変える。 でも結城は毎日同じことを同じように進めるのが好きです。
    同じことを同じように進めると飽きてこないの、 と家内はいいますが、飽きませんね。 できるだけ同じことを同じように続けようと試みると……
     かえって、微妙な違いに気づく
    という経験をします。たとえば、自分が執筆をしていて、 「どうも今日は気持ちがのらないなあ」というときがありますが、 そのときに原因を見つけやすい。毎日ほとんど同じことをしているので、 昨日や今朝に起きた「特別なこと」を見つけやすいのです。
     「そういえば、昨晩あまり眠れなかったっけ」
    そんなことに気づきやすくなるんですね。 毎日が対照実験のようです。
    毎日ドラスティックに異なることをやっていると、 いったい何が原因で何が結果なのかさっぱりわからなくなります。 でも、毎日同じようなことをやっていると、 微妙な結果を生み出している微妙な原因を見つけることができるようです。
    雪国で暮らすある民族は「雪」を表す言葉をたくさん持っているという 話を聞いたことがあります。同じような雪でも、 毎日ずっと見て毎日そこで暮らしていると、微妙な違いを表す言葉が 必要になるのかもしれません。 それと少し似ているような。
    本を執筆しているとき、毎日ほとんど同じテキストに向かいます。 たとえば今日、第三章を書いているとしたら、 きっと昨日も第三章を書いていて、明日も第三章を書いているでしょう。 同じ時間に同じテキストに向かって書く。 そうしていると、文章のトーンの微妙な違いに気づきやすくなるのかも。 これは、もっともらしい後付けの理屈ですけれど、真実も一部含まれていそうです。
    そこで難しいのは「書き手の視点」と「読み手の視点」の切り替えです。 「書き手」としては、いま書いている本に最大の関心がある。 毎日同じ気持ちでテキストに向かおうとする。 だからこそ、微妙な違いに気づき、トーンを整えることができる。 と、そこまではいいのです。
    でも「読み手」はどうでしょうか。 読み手は書き手ほどその本に関心はありません。 普通の気持ちで本に向かい、普通の気持ちで読み進めたりやめたりする。 熱心に読みたくなるときもあれば、 眠かったり疲れたりして、すぐにやめたくなるときもある。
    熱心な書き手であればあるほど、 そういう「普通の読み手」の気持ちを忘れそうになります。
    本を書く心がけでも、文章を書く心がけでも、 「読者のことを考える」が中心にあります。 自分が仕事に向かう熱心さのゆえに、 読者のことを置いてけぼりにする可能性があるというのは、 なかなか難しいものですね。
    って、私は「はじめに」の文章を書きながら、 いつのまにか「文章を書く心がけ」のような内容を書いてました!
    で、ではそろそろ、 今回のメルマガを始めましょう!
    目次
    結城クイズ
    本を書く心がけ - 手書きノートのスナップショット(6)
    結城クイズの答え
    次回予告 - 結城浩セミナー/プレビュー版(5)