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  • Vol.365 結城浩/プレゼンの原則/ダラダラする性格を直したい/noteのファイルアップロード機能/「何か」を成し遂げるために/ポイントバックキャンペーン/

    2019-03-26 07:00  
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    Vol.365 結城浩/プレゼンの原則/ダラダラする性格を直したい/noteのファイルアップロード機能/「何か」を成し遂げるために/ポイントバックキャンペーン/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年3月26日 Vol.365
    目次
    人前でプレゼンするときに気を付けていること
    受験後ダラダラするような性格を何とかしたい
    noteのファイルアップロード機能 - 文章を書く心がけ
    ポイントバックキャンペーンで気付くこと - 仕事の心がけ
    どうしたら「何か」を成し遂げられるのですか - 本を書く心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    今回で「結城メルマガ」がVol.365になりました!
    もしも「結城メルマガ」のバックナンバーを1日1個ずつ読んでいったとしても、すべて読むまでに一年かかる計算です。これはなかなか分量を実感できるサイズですね。
    ちなみに「閏年だとしたら1日分足りないよね」と思ったあなた。ご心配なく。結城メルマガはサンプル号としてVol.000から始まっていますので、全部で366号あるのです(にこにこ)。
    日付をチェックしてみますと、Vol.000は「2012年3月23日」でした。ちょうど7年になるなんて、すごい偶然です!
    ……と思ったのですが、よく考えてみますと「1週間は7日」なので365倍したら「365週間は7年」になるのは当然でした(てへ)。
    冗談はさておき、数の積み重ねを思うとき、結城はいつも「継続は力なり」という言葉が心に浮かびます。結城メルマガでも何回もこの言葉を繰り返して書いていますね。
    「継続は力なり」というのは私の亡き父がよく口にしていた言葉でした。父は、コツコツ続けることと継続することの大切さを折あるごとに語っていましたね。「継続は力なり」と合わせてよく口にしていたのは「努力は天才を作る」という言葉でした。表現は違いますが、主旨はおおむね同じです。
    来週から四月。新しい活動がスタートする季節でもあります。何かをスタートするときに最初から「継続」のことを意識する人は少ないかもしれません。でも実は春こそ、何かをスタートする季節こそ「継続」を意識する必要があるのかも。
    桜の便りを耳にしながら、そんなことを思いました。

    * * *

    数学的なマインドセットの話。
    スタンフォード大学のJo Boaler教授(@joboaler)のツイートで「数学的なマインドセットを教えるためのガイド」というWebページを知りました。
    ◆Mathematical Mindset Teaching Guide, Teaching Video and Additional Resourceshttps://www.youcubed.org/mathematical-mindset-teaching-guide-teaching-video-and-additional-resources/
    ここに書かれている一つ一つの項目はなんとも盛りだくさんで、読んでいて飽きません。
    たとえばMistakes(誤り)という項目にはこんな三段階が書かれています。
     (1)完璧さや正しさが強調される。間違ってはいけない。   ↓  (2)誤りは受け入れられる。しかし、さらなる探求には至らない。   ↓  (3)誤りにも価値があると認められる。たとえ確信が持てなくても生徒たちは安心して共有する。
    上で紹介したリンク先には三段階のうち(3)に相当する状況が動画で公開されています。具体的には12×15の計算をまちがった少女が「結局まちがいだからいいの」と引き下がろうとしたところで、教師が「何をやろうとしたか教えて」と話を引き出す場面ですね。ささやかなやりとりなんですが、静かな感動があります。ぜひご覧下さい。
    結城はもちろん「数学ガール」に描かれている世界を念頭に置きながら、これらのマインドセットを読んでいきました。そして、多くの共通点があることを確かめて「ふむふむ」と満足した次第です。

    * * *

    それでは今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    人前でプレゼンするときに気を付けていること
    質問
    人前で話すときに気をつけていることはありますか。
    今度プレゼンをするのですが、スライドを作る際に気をつけていることも教えていただきたいです。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    人前で話をする、プレゼンテーションをするというのは、慣れないと難しいものですね。緊張もします。
    結城は文章を書く原則として《読者のことを考える》とよくいいます。『数学文章作法』でも繰り返しお話ししています。それと同じ原則が人前で話すときにも当てはまるでしょう。
    つまり《聴衆のことを考える》という原則です。
    プレゼンをするとなると、多くの人はプレゼンの内容の方を意識します。それは当たり前のことですし、必要なことです。でもその前に必ず《聴衆のことを考える》のを意識する必要があります。
    《聴衆のことを考える》というのは、言い換えると「自分は誰に向けて話をするのだろうか」と自問する行為です。自分が話す相手はどういう人で、何人いて、どういうことに関心があって、そもそも何のために話を聞くのか。そういうことを自問するのです。
    《聴衆のことを考える》ことをせずにプレゼンの内容を準備することは不可能です。なぜなら、聴衆が誰であるかによって内容がまったく変わることになるからです。どんな項目を、どんな順序で、どんな言葉遣いで話すか。それは聴衆に依存することです。
    自分はどんな聴衆に向けて話すのかという理解が十分進んだとしましょう。次に「自分の言いたいことは何か」ではなく「相手に伝えたいことは何か」を考えるようにしましょう。この二つは違いますよね。
    相手にプレゼンテーションをするのですが、それは相手に対してプレゼントを用意するようなものです。プレゼントは相手が喜ぶものを渡したいですよね。それと同じです。自分が言いたいことから発想するのではなく、相手に伝えたいことから発想する必要があるのです。
    もしもあなたがプレゼンの経験が少ないなら、スライドを早く作りましょう。そして誰かに見てもらい、コメントをもらいましょう。できれば、あなたの聴衆に近い人がいいですね。コメントを聞くときも、あなたが意識することはいつも《聴衆のことを考える》という原則です。
    強くお勧めするのは、練習です。プレゼンであなたが話すのと同じような状況を使って、できれば機材も同じものを使って、時間を計って練習をします。その様子を録音・録画して自分でチェックするのです。早口になっていないかな、これで聴衆に伝わるかなと意識しながら。
    プレゼンのスライドの作り方に一般的な注意はたくさんあります。たとえば、一枚のスライドにはたくさん盛り込みすぎない。文字の大きさは小さくし過ぎない。聴衆が話を見失わないようにまず全体像を説明するといったことです。でも、そういった基本的な注意は《聴衆のことを考える》原則に当てはめるだけで、かなりの部分がカバーできます。
    ぜひ《聴衆のことを考える》という原則に従って準備してみてください。
    ご質問ありがとうございました。
    ◆『数学文章作法』https://www.hyuki.com/mw/
     
  • Vol.364 結城浩/理解できないときがチャンス/結果を出せない自分がだめに思える/反対されると怒り出す人/時間を区切る/

    2019-03-19 07:00  
    220pt
    Vol.364 結城浩/理解できないときがチャンス/結果を出せない自分がだめに思える/反対されると怒り出す人/時間を区切る/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年3月19日 Vol.364
    目次
    反対されると怒る人にどう対処するか - 仕事の心がけ
    「時間を区切る」作戦 - 仕事の心がけ
    結果を出した人がそばにいると、自分がだめなやつに思えてくる
    理解できないことに出会ったときがチャンス - 学ぶときの心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    * * *

    セールです!
    結城浩が書いたSBクリエイティブ刊行の《すべての電子書籍》が、アマゾンで50%ポイント還元セールです。
    「数学ガール」や「数学ガールの秘密ノート」という両シリーズだけが対象ではありません。
    今年の1月に刊行されたばかりの『C言語プログラミングレッスン入門編 第3版』や、昨年刊行の『プログラマの数学 第2版』も対象になっています。
    もちろん『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』や『Java言語で学ぶデザインパターン入門』なども対象です。
    対象書籍はぜんぶで26冊。以下にリンクをまとめてありますので、ぜひこの機会をご利用下さい。
    ◆結城浩が書いたSBクリエイティブ刊行の《すべてのKindle本》が、50%ポイント還元セール!https://mm.hyuki.net/n/n0fdc8bb318b7
    今回のセールはSBクリエイティブの本が対象になっていますので、筑摩書房の『数学文章作法』は対象外です。
    Kindleのハードウェアを持たなくても、PC、スマートフォン、タブレットにKindleアプリをインストールすれば読むことができます。
    なお、あわてて購入せず、無料サンプル版で使い勝手を確かめてからご購入することを強くお勧めします。
    今回のセールは2019年3月21日(木)まで。

    * * *

    レビューア募集の話。
    結城は現在「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第11冊目、
     『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』
    という本を執筆中です。先週はレビューアさん募集の〆切と選考がありました。
    ◆(応募終了)レビューア募集『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』https://math.hyuki.net/20190301120025/
    前回2018年にも同様の募集を行ったのですが、そのときには、
     応募総数43名(そのうち4名に依頼)
    という状況でした。今回2019年では最終的に、
     応募総数42名(そのうち4名に依頼)
    という結果となりました。不思議なくらいぴったり数が揃っていますね!
    ところで、結城は毎回レビューアさんに原稿を送って見てもらうという「オンラインレビュー」を行っています。最初に行ったのは1998年のことですから、もう20年以上前になりますね(ここで遠い目をする)。
    それほど昔からオンラインレビューを行っているのですが、毎回ある種の「緊張感」があります。それはオンラインレビューをするとアナウンスすることで「自分一人のことではない」という感覚があるからだと思います。
    本を書くというのは基本的には一人の作業です。言葉を並べている途中は自分一人で作業を進めています。もちろん《読者のことを考える》という原則を守りつつ進むように心がけています。しかし、オンラインレビューをしますよとアナウンスし、メールでレビュー依頼を出し始めると「自分一人のことではない」という実感が湧くのです。リアルな読者を意識するとでもいうのでしょうか。
    読者さんがいるのだから、恥ずかしい原稿は書けない。読者さんがいるのだから、しっかり作ろう。読者さんがいるのだから……そのように読者を意識することがよい緊張感を生むのです。
    そしてそれはもちろん、執筆活動にはかりしれないほどいい影響を与えます。
    言い換えるならば、レビューアさんというリアルな読者さんの存在は、レビューが始まる前から結城の執筆にとっていい影響を与えていることになりますね!
    オンラインレビューについては『数学文章作法 推敲編』で詳しく書きました。
    ◆数学文章作法https://www.hyuki.com/mw/
    また、以下のページでも情報を公開しています。もし未読なら、ぜひごらんください。
    ◆書籍執筆とオンラインレビューhttp://www.hyuki.com/writing/writing4.html

    * * *

    現代の必読書『ファクトフルネス』の話。
    『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』という本があります。この本はとてもいいです。読みやすく、わかりやすく、驚きに満ちていて、しかも役に立ちます。ニュースの見方や、世界の見方ががらりと変わります。ぜひお読みください。
    ◆『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07LG7TG5N/hyuki-22/
    この本には人間の「10の思い込み」が「本能」として挙げられています。以下、その10個を列挙します(表現は『ファクトフルネス』の目次から)。
    分断本能:「世界は分断されている」という思い込み
    ネガティブ本能:「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
    直線本能:「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
    恐怖本能:危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
    過大視本能:「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
    パターン化本能:「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
    宿命本能:「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
    単純化本能:「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
    犯人捜し本能:「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
    焦り本能:「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
    この10個を眺めているだけでおもしろそうだと思いませんか。ところがこの本、この10個から想像できる内容よりもずっとおもしろいのです!
    おもしろいのは、ここに挙げた思い込みは相互に関連していること。たとえば「ネガティブ本能」や「恐怖本能」を読みながら「そういえば、ネガティブなことばかりいうマスコミはこういうところを煽ってるよなあ。マスコミは悪い」と私は思います。でも読み進めて「犯人捜し本能」まで来てハッと気がつきます。
    「マスコミが悪い」と思うのは、まさにこの「犯人捜し本能」じゃないか! 「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み。まさに自分はそれにはまっているではありませんか。
    各章を読みながら、私は自分用にメモを取っていきました。自分がはまりやすいパターンがありそうだからです(表現は一部『ファクトフルネス』の本文から)。
    分断本能に対して。「分断」を見かけたら「分布」を調べよう。二項対立を見かけたら「世界にはその二つしかないのかな」と調べる。
    ネガティブ本能に対して。「ネガティブなニュース」を見かけたら「悪いニュースの方が広まりやすい」ことを思い出そう。悪いニュースが増えても、悪い出来事が増えたとは限らないから。
    直線本能に対して。「なんでもかんでも、直線のグラフをあてはめないように」。この「直線本能」はまた「分断本能」や「ネガティブ本能」とも密接に絡んでいますね。
    恐怖本能に対して。恐ろしいものには自然と目がいくが、恐怖と危険とは違うことを自覚しよう。
    パターン化本能に対して。数字がたったひとつ出てきたときには警戒。別の数字と比べたり、割合を求めたりすること。また、ひとつの例で全体が説明されていたら警戒。他の例はないかを探そう。間違ったパターン化をしていないか気をつけよう。
    宿命本能に対して。「〇〇は昔からこうだったし、これからもずっとこうだ」という主張を見たら警戒しよう。もしかしたら、小さな進歩や変化に気づいていないだけではないのか。賞味期限が切れたデータに基づいている主張ではないのか。
    単純化本能に対して。一つの視点だけで世界のすべてを説明していたら警戒しよう。もしかしたら、何でもトンカチで叩こうとしているだけかもしれない。
    犯人捜し本能に対して。「あいつのせいだ」と言いたくなったときには注意。世界はもっと複雑だ。犯人探しよりも原因探しをしよう。
    焦り本能に対して。「いますぐ決めなくてはいけない!この問題は緊急を要するんだから!」というのを見たら、まず深呼吸しよう。焦り本能が顔を出すと、大事な問題なのに冷静な分析ができなくなる。第10章冒頭の道路封鎖の話は心打たれた。「緊急を要するのだから早く対処しなければ」という焦り本能が、人の命を奪うことだってあるという実話である。
    ここに書いたメモではとうてい語れないおもしろさがいっぱいの本ですので、ぜひ読みましょう。
    ◆『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07LG7TG5N/hyuki-22/

    * * *

    それでは今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    反対されると怒る人にどう対処するか - 仕事の心がけ
    質問
    私は立場上、誰かと議論することが多いです。
    議論相手の中に「反対意見を言われると怒る人」がいます。反対意見の内容が気に入らないというよりも、批判・指摘されること自体が気に入らないようです。
    私はこういう人と、組織の利益を考えて議論する方法がわかりません。その人は「組織をより良くすること」よりも「自分の主張を通すこと」を大切にしているからです。
    結城さんから何かアドバイスをいただけませんでしょうか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    「反対意見を言われると怒る人」というのはどのような組織にもいると思います。あなたの質問を読んだ人は「いるいる、そういう人」と頷くんじゃないでしょうか。
    建設的な議論というのは、双方が参加しないと成り立ちません。そして「怒り出す」というのは論理的な議論に参加することを放棄しています。ですから「反対意見を言われると怒る人」が変わらない限り、建設的な議論は無理です。
    以上です。
    ……で、終わってもしょうがないのでもう少し書きます。
    一つ考えられる道があります。それは、怒る人とあなたの一対一の問題にするのではなく、組織の問題にするという道です。組織の利益をアップし、組織をよくしようというのは、怒る人やあなたの個人的な問題ではなく、組織の問題ですよね。
    具体的には(それがあなたの状況で実現可能かどうかはわかりませんが)、組織の利益を考えて議論する「場」を、他の人たちの前や、組織の長のような人がいる所に設けることです。そうすれば、あなたの方に理があり、怒り出す方に理がないというメッセージを組織全体に伝えることはできそうです。
    「反対意見を言われると怒る人」の態度を、あなたの行動で変えようとしても基本的には無理です。怒り出すか否かというのは、その人が内面に抱えている問題であって、あなたの問題ではないからです。
    「反対意見を言われると怒る人」と議論することの問題点は、その人をなだめるため(怒り出さないようにするため)に議論の方向が曲がったり、肝心の内容以外のところにエネルギーが使われる点にあります。
    たとえていうならば、スーパーで買い物をしているときに「お菓子を買ってくれなきゃ、ここを動かない!」という駄々っ子と同じです。困らせることで自分の意見を通そうとしている駄々っ子です。怒り出す人は「自分の考えを守るために怒る」という振る舞いをしている「駄々っ子」だと思って対処するしかありません。
    ただし、怒り出す人の主張の正しさと、怒り出すという態度とは無関係であることは忘れないようにしなければいけません。怒り出す人の意見がすべて間違っているとは限りません。主張の内容的な正しさと、怒り出すこととは独立した概念です。
    もっとも、その場合にこそ、怒り出す態度は問題なのですけれどね。組織の利益をアップさせる良い意見を持っていたとしても、怒り出すという態度によって正しさが伝わりにくくなってしまうからです。
    ここまで「反対意見に怒り出す人はどうしようもない」というトーンで回答してきました。ただ、少し気になるところがあります。その怒る人は、反対意見を言われると「相手が誰であっても」怒り出すのでしょうか。それとも「相手があなたのときだけ」でしょうか。ちょっとそれは気に留めておいてください。
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.363 結城浩/環境が変わる不安に対処する/質問が不明瞭に/偏差値と自分の将来/インクリメンタルな環境改善(5)/

    2019-03-12 07:00  
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    Vol.363 結城浩/環境が変わる不安に対処する/質問が不明瞭に/偏差値と自分の将来/インクリメンタルな環境改善(5)/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年3月12日 Vol.363
    目次
    何を質問したいのか不明瞭になっていくとき
    環境が変わる不安にどう対処するか - 仕事の心がけ
    偏差値は自分の将来にどれほど影響するのか - 学ぶときの心がけ
    インクリメンタルな環境改善(5) - 仕事の心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    * * *

    レビューア募集の話。
    結城は現在「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第11冊目、
     『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』
    という本を執筆中です。数学とプログラムの話題が入り交じった対話形式の物語になります。本書の執筆にあたり、この原稿を読んでレビューしてくださる方を募集しています。
    以下のリンク先に書かれていることをよくお読みの上、もしもやってみたいというお気持ちがあるならば、ぜひご応募ください。
    ◆レビューア募集『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』https://math.hyuki.net/20190301120025/
    現在二十数名の応募があるという状況です。先着順や抽選ではありませんが、ご参考まで。
    〆切は2019年3月15日(金曜日)になります。

    * * *

    本を読む話。
    「今年は意識的に本を読もう」という運動を勝手にやっています。先日は『授業作り上達法』という本を眺めていました。
    ◆『授業つくり上達法 だれも語らなかった基礎技術』(大西忠治)https://www.amazon.co.jp/dp/4838302215/?tag=hyuki-22
    この本の中に、シャープペンの話題が出て来ました。生徒がシャープペンを使うのがいいかわるいかという話題。大人の感覚だと、シャープペン使ってもいいじゃないかと思うのですけれど、この本を読んでいて「そうでもないかも」と思えました。
    この本の中では「授業中にシャープペンを使うのはいいけれど、授業中にシャープペンの芯の入れ換えをするのは禁止している」という話題が出て来ました。最初は意味がわからなかったのですが、授業のようすを想像してみると「なるほど」と思えます。
    どんなに魅力的な授業をしても、シャープペンの芯の入れ換えをしているときの子供の耳には届かないのだそうです。シャープペンの芯を、本体の細いところにスウーッと入れる。注意深くやらないとうまくいかない。その間は確かに先生の声は耳に入らなさそうです。
    この本には、授業中の教師は板書のときであっても、黒板に向くのは四割、生徒の方を向くのが六割という「四分六の構え」という話も出てきました。完全に黒板の方を向いてしまうと、生徒の興味がふっと途切れてしまうからでしょう。完全に黒板に向かなくてはいけないときには、生徒に言葉で問いかけをしながら板書するのだとか。いろんな工夫があるものですね。
    今回この本を読んだのはたまたまです。以前お話したように、手元のPDFを眺める「シェルフ(本棚)」という仕組みを作ったので、それを使っているときに偶然見つかった本を開いたのです。
    「偶然見つかった本」ではあるのですが、そもそもこの本を購入したのは自分なので、まったく興味関心がない本というわけではありません。
    本を書くというのは広い意味での教育と言えなくはないので、学校の先生の指導書のような本でも、参考になることが多々あるのですね。

    * * *

    それでは今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    何を質問したいのか不明瞭になっていくとき
    質問
    結城先生に質問してみようと思うことがいくつかあります。
    でも、自分の質問を文章にして推敲しているうちに、質問の意図が不明瞭になってくることがあります。
    結城先生もそのようなことはありますか。
    そういう場合は、どのように対処しますか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    そうですね。質問の意図が不明瞭になっていくという経験は、なくはないですが、それほど多くはありません。質問しようと思っているときは不明瞭でも、文章化していくうちに明瞭になっていくことが多いと思います。文章化する、言語化するというのは、まさにものごとを明瞭にする効果があるからです。
    あっと、もちろん、なかなか文章化できないことはあります。それはたいてい、
     「たくさんのことをいっぺんに考えようとしているとき」
    になります。自分は「ひとつのこと」を考えていたつもりなのですが、実は「たくさんのこと」を考えていたのですね。たくさんのことをいっぺんに考えたり、いっぺんに扱おうとすると混乱したり途方にくれたりします。
    そういうときはどう対処するか。もちろん分解して整理することになるのですが、質問するための文章を例にとるなら、
    とりあえず知りたいこと
    最も聞きたいこと
    に絞るという方法は簡単でしょう。要するに「たくさんのこと」はあきらめて「ひとつのこと」に絞るのです。
    それから、これはあなたの状況とは違うかもしれませんが、人になかなか質問できない人の中には、
     「自分の側で回答が用意できないと質問できない」
    という人がいます。回答が用意できないと質問できないというのは変な話に聞こえますね。どういうことかというと、自分がよくわかっていない状態なのに、
    自分で原因を特定し、
    自分で解決方法を決定し、
    自分で回答を用意する。
    そうしてからでないと気が済まない人がいるのです。答えを用意してから質問しにいくということです。
    答えを自分で考えるのは悪いことではありませんが、時間が掛かりすぎて質問できなくなるのは困りますね。質問がうまい人は、自分の状況を相手に詳しく伝えて、そもそもの原因特定のところから相手と協力して進めようとするものです。
    あなたの状況とは違うかもしれませんが、うまい質問の仕方についてはこちらもご覧ください。
    ◆技術系メーリングリストで質問するときのパターン・ランゲージhttp://www.hyuki.com/writing/techask.html
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.362 結城浩/やりたいことがあるけれど時間が足りない/数学の点数が取れない/再発見の発想法/対話形式の困難/言葉の行き先/

    2019-03-05 07:00  
    220pt
    Vol.362 結城浩/やりたいことがあるけれど時間が足りない/数学の点数が取れない/再発見の発想法/対話形式の困難/言葉の行き先/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年3月5日 Vol.362
    目次
    アルバイトについて
    数学トークと《対話》について - 文章を書く心がけ
    やりたいことがあるけれど時間が足りない
    評価関数 - 再発見の発想法
    数学の点数が取れないので得意と言いにくい - 学ぶときの心がけ
    言葉の行き先と着地させない問いかけと - 文章を書く心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    この冬は寒くありませんねえと思っていたら、三月になって急に寒くなりました。寒い寒い。
    三月はいろんな人にとって変化のときですね。新しい何かが始まる。新しい何かに切り替わる。そんなときを迎えている人が多いと思います。
    あなたはいかがですか。

    * * *

    マグカップの話。
    「結城浩のマグカップ」を作りましたというお話は、先週の結城メルマガにも書きました。
    ◆結城浩のマグカップ
    ありがたいことに、さっそくたくさんの方からご購入いただいています。ありがとうございます。
    ところで、Twitterで宣伝するときに、文章をこんなふうに書きました。
    >>>
    おしゃれでかわいい結城浩のマグカップです。私も自宅で使っています。左手で持つと数式は相手に向かい、右手で持つと数式は自分に向かうようにデザインしました(はーと)
    ◆ツイートのスクリーンショット(一部)
    <<<
    この文章、まちがったことは書いていないのですが、大事なことを書いていません。書いていないのは、
     このマグカップは一般の方が購入できるものです。  リンク先で売っていますので買って下さいね!
    というメッセージです。「買えます。買ってください!」と書いていないのです。実際、複数の方から「このマグカップは購入できるんですか」というご確認や質問をいただいてしまいました。わかりにくくてごめんなさい!
    購入してくださると、その一部は結城の収入になりますので、ぜひ買ってください!(明示的に書いていくスタイル)
    ◆結城浩のハートとシグマ マグカップ - SUZURI(スズリ)https://suzuri.jp/hyuki0000/1613145/mug/m/white

    * * *

    確率の話。
    先週からWeb連載「数学ガールの秘密ノート」で新しいシーズンが始まりました。今回は「確率の冒険」と題して《確率》がテーマになります。
    ◆「確率の冒険」シーズンのイメージカット(トランプのクイーン)
    数学で多くの方が苦手と感じる分野はありますが、《確率》はまちがいなくその一つに入るでしょう。その理由の半分は《場合の数》に関係しているからで、もう半分は「何かが起きるか起きないかという不確かなもの」を確かさの権化のような数学で扱う意味の難しさがあるのだと思います。
    実際、確率の計算はできるけれど、そこにどんな意味があるのかがわからないと感じる人もたくさんいらっしゃるでしょう。
    「確率の冒険」シーズンでは、いつものように本当に基本的なところから素朴な疑問を通して《確率》に迫ってみたいなと思っています。もちろん、迫っていくのは数学ガールの登場人物たち。結城は彼女たちの思考や発想をていねいに追いかけていくのです!
    第1回目は「二回に一回起きるとは」(前編)です。「コインを投げたときに表が出る確率が1/2である」とはどういう意味かを考えていきましょう。
    ◆確率の冒険:二回に一回起きるとは(前編)https://bit.ly/girlnote251
    「数学ガールの秘密ノート」はひとつのシーズンが十週間に渡ります。ぜひ応援よろしくお願いいたします。毎週最新回は一週間無料で読めますので、リンクを宣伝していただければうれしいです。もちろん、cakesの有料会員になって結城のページを読んでいただくことも直接的な助けになります(明示的に書いていくスタイル)。
    ◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」https://bit.ly/girlnote

    * * *

    レビューア募集の話。
    結城は現在「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第11冊目、
     『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』
    という本を執筆中です。数学とプログラムの話題が入り交じった対話形式の物語になります。本書の執筆にあたり、この原稿を読んでレビューしてくださる方を募集しています。
    以下のリンク先に書かれていることをよくお読みの上、もしもやってみたいというお気持ちがあるならば、ぜひご応募ください。
    ◆レビューア募集『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』https://math.hyuki.net/20190301120025/
    募集開始は3月1日でした。3月4日現在十数名の応募があるという状況です。先着順や抽選ではありませんが、ご参考まで。
    〆切は2019年3月15日(数学の日の次の日)になります。

    * * *

    空腹感の話。
    つらいとき、ストレスかかったとき、どうしても食べ過ぎちゃう人は多いと思います。
    食事のときにお腹に手を当てて「自分、お腹空いてるかな?」と問うと、自分にストレスがかかっているのかどうかわかるかもしれません。
    「胃袋を埋めるため」ではなく、「心を埋めるため」に食べようとしているかどうか。
    「空腹感をなくすため」ではなく、「空虚感をなくすため」に食べようとしているかどうか。

    * * *

    古今和歌集の話。
    結城はnoteで「古今和歌集を読む」というマガジンを不定期連載しています。
    ◆古今和歌集を読む - notehttps://mm.hyuki.net/m/mfa4fe40c022b
    古今和歌集からおもしろそうな歌を見つけては現代語訳をつけて文法事項を簡単に解説する短い読み物集です。
    先日から、noteに掲載したものを、少しずつScrapboxに転載しています。といってもnoteを削除しているわけではありません。Scrapboxに記事を載せてリンクをつけていくと、さくさくとネットワークが作られていくのが楽しいのです。
    また、文法事項をリンクすると、あちこちの歌に出てくる同じ項目がまとまりを見せてくれるのもうれしいですね。まだほんの少しですけれど、長い目で見ていただければと思います。
    ◆古今和歌集を読む - Scrapboxhttps://scrapbox.io/kokin/
    ◆「推量の助動詞」という項目を介して「なむ」と「らむ」が自然に結びついたようす(スクリーンショット)

    * * *

    インタビュー記事の話。
    結城がインタビューされている記事が、技術評論社刊行『WEB+DB PRESS Vol.109』(2019年2月23日発売)“at the front”のコーナーに掲載されています。
    インタビューアはフリーランスの竹馬光太郎さん(@mizchi)で、以下のような話題を話しています。
    執筆一本で食べていけるのか?
    「無駄」な作業が良い本を生む
    技術書典は書き手と読み手をつなぐ
    「読者」というテキスト処理系
    良い文章を書く原則はたった一つ
    ぜひ、お読みください(以下のリンクはアマゾンの電子版です)。
    ◆『WEB+DB PRESS Vol.109』https://www.amazon.co.jp/dp/B07NW8637Q/?tag=hyuki-22

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    それでは今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    アルバイトについて
    質問
    結城先生は、学生時代にアルバイトをやっていましたか。
    もしもやっていたら、どんなバイトだったか教えて欲しいです。あと「こういうバイトやっとくといいかも」みたいなのがありましたら教えてください。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    学生時代にやったアルバイトは、家庭教師とちょっとした原稿書きくらいですね。それほどたくさんバイトはしませんでした。
    「やった方がいいバイト」は具体的には思いつきません。強いて言うなら、自分が特に「どうしてもこれはやってみたいと思うバイト」や、「自分が学んでいることに関連性のあるバイト」は悪くないと思います。
    「やらない方がいいバイト」は思いつきます。できるならば「自分の時間を売るだけのバイト」は避けた方がいいと思います。
    それから、バイト先の場所柄や、バイト先の雰囲気には十分に注意しましょう。直観的に、あなたが「雰囲気が良くないぞ」と感じたり、「何だかギスギスと荒れた感じだな」と感じるところは注意深く避けた方がいいと思います。
    若い時代というのは感受性が豊かなものです。その分、誘惑も大きく、経験が浅いのでうまくかわせない可能性もあります。その結果、たとえばバイト先に集まった人から良くない影響を受けてしまう可能性が高いと思います。
    それから、「親や友人に言えない類のバイト」は避けましょう。
    学生にとってバイトは貴重な収入源ですが、できれば長期的な視野に立って選んでほしいと思います。投資と同じです。自分が何と引き換えにそのお金を手に入れているか。自分を損なうことがないか。老婆心ながら気になります。
    以上、参考になれば。