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記事 4件
  • Vol.339 結城浩/現役で大学に行く意味/自分本位な恋愛ばかり/プログラムの読解/執筆と校正/心が落ち込むときの対処法/

    2018-09-25 07:00  
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    Vol.339 結城浩/現役で大学に行く意味/自分本位な恋愛ばかり/プログラムの読解/執筆と校正/心が落ち込むときの対処法/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年9月25日 Vol.339
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    先週『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の再校読み合わせが無事に終わりました。これで原稿は私の手からほとんど離れたことになります。あとは10月の刊行を待つのみです。
    この本は『プログラマの数学 第2版』と『数学ガール/ポアンカレ予想』に引き続き、今年三冊目の本となります。私の作業ログで調べてみますと、連載の原稿から本に直す作業を始めたのは昨年2017年の七夕でした。途中他の本の作業をしていたとはいえ、一年以上時間が掛かっていることになりますね。
    さらにさかのぼりますと、今回の「行列が描くもの」シーズンをWebで連載していたのはなんと2015年の春です。三年以上も前のことなのですね。昔まいておいた種がようやく花を咲かせて実を結びつつあるような、そんな気持ちになりました。実りの秋です!
    もちろん、このように長期的な活動をすることができているのは、応援してくださるあなたがいらっしゃるおかげですね。いつもありがとうございます!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://bit.ly/hyuki-matrix
    では、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    大学に現役で入ることに意味はあるか
    カフェで仕事をする理由 - 仕事の心がけ
    自分本位な恋愛ばかりしてしまう
    プログラミングにおける「読解」とは何か
    執筆と校正でどちらが難しいか - 文章を書く心がけ
    「本を読んで勉強する」とはどういうことかわからない - 学ぶときの心がけ
    三十代なかば、専門とは無縁の社会人をしているが、趣味を越えて理系的なことがらに関わりたい
    心が落ち込むときの対処方法 - 仕事の心がけ
    大学に現役で入ることに意味はあるか
    質問
    大学に現役で入ることに、どのような意味があるんでしょうか。
    現在わたしは受験生です。現役でとりあえず大学に行くのか、それか一年間ほど図書館でたくさん本を読んだり、アルバイトやボランティアのような活動をしてみたりと、大学に行く前にクッションを置くのもありかなと思っています。
    ただ、これは大きな決断だと思うので、どうしようかと迷っています。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    大原則としていいたいのは「大学に行くのは義務でもなんでもない」ということです。ですから、あなたの好きに考えて好きに行動してかまいません。ただし、あなたの生活費を出しているスポンサー(多くの場合は親)との相談を忘れないようにしましょう。
    でも、あわてて言い添えておきますが、もしも私がそのような相談を子供から受けたら「あなたはちゃんと考えているのか」とうるさいくらい聞くでしょうね。
    「受験は自分に何の意味があるのか。大学に行くことの意味とは何か。実は大学など行かずに○○した方が いいのではないか」というのは受験生がほぼ確実に考えることの一つです。ありふれた問いといってもいいです。
    もちろんそのような問いはとても大切なことです。しかしながら、受験勉強をするのが単に嫌だからそういってるだけなのか、自分の人生についてちゃんと考えようとしているかの判別は非常に難しいです。
    ちなみに結城も受験生時代に同じようなことを考えましたが、いま振り返ってみると、単に受験勉強が嫌になったときにそう考えただけでした。その証拠に、具体的な計画とその妥当性についてはまったく考えたり、調べたりせずに「受験に意味なんてあるのかなあ」とぼんやり考えていただけでしたから。
    あなたは「大学に行く前にクッションを置くのもありかな」と軽く書いていますが、受験勉強には「勢い」も必要です。一年間「クッション」を置いて自由に過ごしたとして、あなたはいつから受験勉強を再開するのでしょうか。一年間過ごした後、準備ゼロで受かる大学を目指すのでしょうか。一年間過ごした後、一年間受験勉強をするなら、あなたが大学に行くのは二年後ということになりますね。
    何の制約もなく、自由に過ごした後、受験勉強を始めるというのはよっぽど意志が強い人でないと難しいと思います。夏休みの途中で宿題をすべて終えるような意志が必要じゃないでしょうか。あなたは自己分析してみていかがですか。
    自由に過ごすときこそ、よく練った計画が必要です。
    カフェで仕事をする理由 - 仕事の心がけ
    質問
    結城さんはいつもカフェでお仕事なさっているようです。どうしてコワーキングスペースではなくカフェを使っているのでしょうか。コワーキングスペースの方がWiFi環境もよく、静かで、コストもあまり変わらないように思うのですが。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    なぜだろう、と考えてみました。すぐに思ったのは……
    コワーキングスペースだと、まわりがみんな仕事していて、会社に行ってるみたいなんだもん!
    ……という理由でした。仕事をしてもいいし、しなくてもいいけれど、そのような環境の中であえて仕事している自分はなんてえらいんだろうと錯覚したいのかもしれません。
    まあ、そこまでいわなくても、コワーキングスペースのような「仕事せざるを得ない環境で仕事をする」というのは逃げ場がなくてちょっとつらいです。
    結城は、カフェなどで提供されているWiFiは使わず、必ず自分が用意したモバイルルータのようなネット環境をつかっています。ですから、WiFiが充実しているかどうかは無関係です。
    また仕事中はまわりがどんなにうるさくても影響することはほとんどありません(実はこの原稿もカフェで書いているのですが、すぐそばで赤ちゃんが大泣きしています)。
    カフェはあちこちにあるので飽きたら移動して気分を変えることができるというのもメリットですね。また「この仕事をするときにはこのカフェ」のように仕事ごとにカフェを決めていたこともあります。
    ちなみに結城のカフェ代の一部は、pixivFANBOX経由で支援者の方からサポートいただいており、大変助かっています。感謝!
    ◆「結城浩のカフェ代支援」プラン - pixivFANBOXhttps://www.pixiv.net/fanbox/creator/24344450/post/11147
     
  • Vol.338 結城浩/模試の問題が解けない/簡単音声合成/数学科に進むか迷う/ひとりSlack/再発見の発想法/

    2018-09-18 07:00  
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    Vol.338 結城浩/模試の問題が解けない/簡単音声合成/数学科に進むか迷う/ひとりSlack/再発見の発想法/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年9月18日 Vol.338
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    10月刊行になる『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の表紙がやって来ました!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』表紙
    もちろん今回もイラストはたなか鮎子さん、装丁は米谷テツヤさんです。
    いつもの「秘密ノート」ではミルカさんとテトラちゃんとユーリの三名が表紙になりますが、今回は「四名」の数学ガールがいますね!
    さて、今回も恒例の《サイン本無料プレゼント》の企画を行っています。以下のページをごらんの上、ぜひご応募ください。
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』《サイン本無料プレゼント》https://snap.textfile.org/20180916170229/
    先週は、やってきた再校ゲラを読んでいました。今週末には再校ゲラ読み合わせがあります。現在は最終チェック中。さすがに再校ともなると大きな修正はなくなり、とても細かい部分の手直しが多くなりますね。完成は間近です!
    ぜひ、応援してくださいね!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://bit.ly/hyuki-matrix

    * * *

    では、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    例題は解けるのに、模試の問題が解けない - 学ぶときの心がけ
    Amazon Pollyを使って簡単音声合成
    大学一年生、数学科に進むか迷う - 学ぶときの心がけ
    「ひとりSlack」で知的生活のパワーアップ(3) - 仕事の心がけ
    オーバーエンジニアリング - 再発見の発想法
    例題は解けるのに、模試の問題が解けない - 学ぶときの心がけ
    質問
    数学を勉強しています。でも、なかなか問題を解けるようになりません。
    教科書の例題などは解けます。でも、模試や問題集の問題は解けません。
    自分の勉強のやり方が悪いのでしょうか。
    オススメの勉強法などありましたら教えてください。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    教科書の例題は解けるとのことですね。あなたは教科書の例題を解いたとき、自分として「理解したぞ」と感じていますか。それとも「理解していないし、何が何だかわからないけど、教科書に書かれている通り手順を進めたら解けた」と感じていますか。
    どんな勉強法をしようとも「理解したぞ」といえるかどうかが重要です。どんな勉強のやり方をとろうとも「自分は理解しているだろうか」と振り返ることがなかったらその勉強のやり方は効果激減です。あなたは、そう考えて勉強していますか。《自分の理解に関心を持つ》という原則を適用しましょう。
    数学の教科書の例題というのは、数学的な概念をあなたに伝えたり、数学的なものの考え方を伝えるためにあるものです。その例題を通じて、教科書は「何か」をあなたに伝えようとしています。あなたはその「何か」を捕まえているでしょうか。
    「何か」というのは、たとえば「二次関数」や「因数定理」や「三角関数の加法定理」といったもののことです。教科書には単元があり、さらにひとつひとつの概念を細分化して詳しく説明していますよね。その一つ一つのことです。表面的な数式の操作や、教科書に書かれている字面を丸暗記することが「捕まえる」ことではありません。そうではなくて、自分が「なるほど、これはこういうことなんだ」と納得することです。
    教科書の例題が伝えている「それ」を、自分のものとして理解し、自分でその概念をいじって遊びましょう。その概念を十分にあなたが理解したかどうかが重要です。問題集や模試で出てくる問題は、要するにあなたの理解を確かめようとしているのですから。
    模試になると、複数の概念を組み合わせて問うてきます。概念の合わせ技がやってくるのです。ということは、例題を通して一つ一つの概念を自分のものにした上で、組み合わせる方法も練習する必要がありますね。さらにはスピードも要求されるかもしれません。
    模試の問題を解いたあと、解説を読みます(読んでいますよね?)。書かれている解説は理解できますか。解説の文章を読んで「なるほどね」と思えますか。そして、自分の理解のどこが足りなかったかをていねいに確認していますか。
    初めて出会う問題が解けるか解けないかというのは大したことではありません。それよりも問題を解く体験を通して自分の理解の間違いや不足を修正することが大事なのです。ですから、問題の解きっぱなしは意味がありません。自分の理解を検証するというところに模試の「命」があります。
    どんな勉強法をあなたが選ぼうとも、学ぶときの基本姿勢は《自分の理解に関心を持つ》ことです。解けたかどうかだけではなく、自分の理解が正しいかどうかにいつも関心を持ちましょう。
    自分の理解を検証するためには、数学的な概念ひとつひとつに対して「自分の理解はこうである」と言えることが大事になります。その意味では、先生に質問しに行くのはとてもいい経験になります。模試の解説を読んでわからないとき、あなたは先生に質問しに行ったことはありますか。そこで先生に「自分はこう思うのですが、解説にはこう書いてあります。ここがわからないです」と説明するのは非常にいい勉強法です。
    先生にいちいち聞くのはちょっと……とためらう場合には、自分自身に説明するのでもいいですよ。頭の中で「理解した」と思うだけではなく、何をどのように理解したかを自分に向けて言葉で説明してみるのです。あなたを慕っている後輩に説明するという仮想的なシチュエーションを想像してもいいでしょう。あなたがきちんと説明できれば、その概念を理解できているといえます。でもどこかで説明がしどろもどろになるようなら、その部分は理解できていないといえるでしょう。誰かに説明しようと試みるのはたいへん効果的な勉強法です。
    数学で学ぶ内容はたくさんあるんだから、そんなふうに丹念に学んだら膨大な時間が掛かってしまう!……と躊躇する人は多いのですが、実はそうではありません。というのは学習は加速するからです。特に数学は、基本的な重要概念を深く理解すると、無数の問題に対処できるようになる性質があります。逆に、深く理解しないと多数のことを丸暗記しなければならなくなり、たいへん苦痛です。
    《自分の理解に関心を持つ》という原則を心にとめてがんばってみてください。そしてこの原則は、数学に限らず他の科目の学習にも効くのです。ぜひ、試してみてください。
    関連した内容はVol.331にも書きました。
    ◆Vol.331 高校二年生、簡単な問題以外がさっぱり解けない - 学ぶときの心がけhttps://bit.ly/hyuki-mm331http://ch.nicovideo.jp/hyuki/blomaga/ar1638417
     
  • Vol.337 結城浩/思考力を鍛える/数学的帰納法/大学一年、教科書を読んでもまったくわからない/高校二年、計算ミスへの対策/上位互換キャラ/

    2018-09-11 07:00  
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    Vol.337 結城浩/思考力を鍛える/数学的帰納法/大学一年、教科書を読んでもまったくわからない/高校二年、計算ミスへの対策/上位互換キャラ/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年9月11日 Vol.337
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    台風21号に引き続き、このたびの北海道地震で被害にあった方々にお見舞い申し上げます。
    北海道にはさくらインターネット石狩DCがあり、その被害状況がTwitterやWebで流れていました。そのときに思ったのは「ネットやクラウドといっても、この地球上にあるもので、誰かがしっかりメンテナンスしているから存在できるのだ」ということでした。
    もちろん、ネットに限った話ではありません。水道・電気・ガス・交通などのインフラもそうですし、警察や消防に携わる方々についてもそうです。Twitterでもインフラを守る人とその家族にまつわるツイートが流れていました。本人が被災しているにも関わらず、懸命にサービスを守り、継続している方々には深く感謝し敬意を抱くとともに、心から安全を祈ります。

    * * *

    先週は、『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の初校読み合わせがありました。たくさんの図版を手直しし、加筆修正したゲラ原稿を編集部に出してきました。少しずつ、少しずつ完成に近づいています。
    「数学ガールの秘密ノート」シリーズは今回でなんと10作目。結城がこれまでに書いたシリーズもので最長です。しかもこれからもまだまだ続けていく予定。一冊一冊をていねいに仕上げていきますので、ぜひ応援よろしくお願いいたします。
    『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』は2018年10月刊行の予定です!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://bit.ly/hyuki-matrix

    * * *

    では、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    少子化対策について思うこと
    思考力をとにかく鍛えるにはどうするか - 学ぶときの心がけ
    数学的帰納法による証明
    大学一年、教科書を読んでもまったくわからない - 学ぶときの心がけ
    高校二年、計算ミスへの対策 - 学ぶときの心がけ
    上位互換キャラが出てくると逃げてしまう
    少子化対策について思うこと
    結城はあまり政治的なことや社会的なことはこの「結城メルマガ」では書きません。もともと興味が薄いからでもありますし、具体的な知識に欠けているため見当はずれなことを書いてしまいそうだからです。
    でも、「少子化対策」についてふと思うことがあったので、簡単に書きたいと思います。誰かを批判しているわけではありませんし、何かを強く主張しようというのでもありません。
    「少子化対策」というのは「子供を産ませる方策」だと考えるのはあまり適切ではないように思います。「少子化対策」は「子育てしながらも、各個人が望む多様な社会活動を安心してできるようにするための方策」であるべきなのではないかなと思います。そう考えると、誰がどこでどんな活動をしていようとも、自分が関わる活動を「子育てしながらでも参加できるように改善する」ことは、大切な「少子化対策」ではないでしょうか。そしてそれは、私たちみんなが活動しやすい社会にすることにつながると思うのです。
    そのことを感じたのは、会社勤めしていたときのことを思い出したからです。会社に「耳がよく聞こえない人」が入社してきました。いままでは会議で口頭で行っていた伝達事項も、文書とスライドを多く使うようになりました。もちろん入社してきた「耳がよく聞こえない人」のためです。その結果、会議の時間は短くなり、伝達事項は明確になり、記録もきちんと残るようになりました。そのことを印象深く覚えています。
    「子育てしている人」も「何かが不自由な人」も、社会の足かせではありません。逆に、その人の視点に立って体制を整えるなら、他の人の活動もずっとスムーズにできるようになり、社会がよくなるのではないでしょうか。適切な休暇を取れるようになること、ノンステップバスの登場で楽にバスに乗れること、バリアフリー住宅、などなど「社会の改善指針を与えてくれる人」は社会にとって大事な存在といえないでしょうか。
    念のために補足しておきますが「社会にとって大事な存在」や「少子化対策」という表現は、やや微妙な問題を含んでいます。というのは国や社会や集団の利益を先行させた表現ともいえるからです。私が言いたいのは、子育て世代や、身体に不自由な部分を持っている人へのサポートは、決してその人たちだけのためのものではないということです。
    私たちは、どこでどんな活動をしていようとも、それぞれの立場から、自分たちが生きている環境をよりよくすることができます。もちろん、その「よりよくする」分量や規模は人によって違います。社会全体を変える意気込みの人もいるかもしれませんが、ほんのちょっとしたことから始まるものもあります。それこそ「電車で席を譲る」や「育休を取ろうとしている同僚を応援する」のような、そんなちょっとしたことから。
    当然に認められた権利に対しても、もしかしたら「苦言」を呈したり「文句」を言う人がいるかもしれません。そんな人に対して、勇気を奮って「お言葉ですが」と一言クギを刺し、同僚を守ること。その一言が、社内の空気を変え、より住みやすく働きやすい場を作るかもしれません。
    「少子化対策」について、ふと、そんなことを思いました。
    思考力をとにかく鍛えるにはどうするか - 学ぶときの心がけ
    質問
    思考力をとにかく鍛えるにはどうしたらいいでしょうか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    思考力を鍛えるのに大事なことはたくさんありますが、一つだけ挙げるなら「自分に問いかけること」です。「自分に問いかけること」をまったく行わないで思考力を鍛えることは不可能でしょう。
    手始めに、自分への問いかけとして「思考力とは何だろうか」と問うてみてください。思考力とは何だろうか。他の人はさておき、私は思考力を何だと思っているか。私は思考力を必要としているだろうか。私が考える思考力とはそもそも鍛えられるものだろうか。
    そのように、関心のあることに対して素朴な問いを自分に投げかけ、それに答えようとしてみるのです。答えるためには考えなくてはいけません。それが「自分に問いかけること」の意味です。
    ここであなたの質問を振り返ってみましょう。あなたの質問にある「思考力をとにかく鍛えるにはどうしたらいいでしょうか」というのは、思考力を鍛えることから遠ざかる態度だと私は思います。「とにかく」という言葉からは「つべこべ言わずに」「めんどくさい話はいいから」「てっとり早く」「ポンと答えを」「これさえあればいいというものを」というニュアンスを感じるからです。
    誰かが提示したものを鵜呑みにするのは楽です。簡単です。「はい、これが答えです」といわれてそれをゴクンと飲み込めばいいだけですから。でも、そこには思考はありません。
    「はい、これが答えです」と言われたときに「ほんとうにそれが答えなんだろうか」「なぜ、それが答えといえるのか」「他に答えはないのか」「この答えはいつまで正しいのか」のように自分に問いかけて、確かめること。これは思考の大切なあり方です。
    その意味では、思考するというのは「めんどくさい」ものです。日常生活で何かをするたびに考え込む人がいたら「めんどくさい人」扱いされるかもしれませんね。まあ日常生活では適当に進むとしても、自分の頭の中では「でも、本当のところは何が答えなんだろう」と問いかける。その態度は思考力を鍛えると思います。
    ただし、思考するのは「めんどくさい」ことですが、めんどくさいことが思考の本質ではありません。何かをよくすること、よりめんどくさいことを考えずに済むこと、楽をすること、が思考の目的のことも多いものです。
    ということで、あなたへの回答は「自分に問いかけましょう」となります。この回答を鵜呑みにするかどうかは、あなたの自由です。さあ、自分への《問いかけ》を通じて、考えることを始めましょう!
     
  • Vol.336 結城浩/パクツイ/四年学んだけれど/生徒が数学を楽しめる授業/仕事のオファー/シリーズものを書く/

    2018-09-04 07:00  
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    Vol.336 結城浩/パクツイ/四年学んだけれど/生徒が数学を楽しめる授業/仕事のオファー/シリーズものを書く/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年9月4日 Vol.336
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    もう九月ですね!
    今年は特に夏休みらしい夏休みは取らなかったのですが、七月に夫婦二人で二泊の避暑に出かけました。
    今回のテーマは「滞在中、お互いに好きなことをする」というもの。私は避暑地で『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の原稿を書き、彼女は近くの庭園めぐりをしていました。
    朝早く起きて、宿泊地のまわりを二人で一緒に散歩し、温泉に入ってから朝食をゆっくり食べ、それぞれのアクティビティに分かれる。夕方になったら合流して食事しながら互いの活動を報告し合うという二日間。短いけれど、とても充実した休日でしたね。
    あなたの夏はいかがでしたか。

    * * *

    炭水化物と心の安定の話。
    「炭水化物を控え目にする」というのは体重増加を抑えるのに確かに効果があるようです(個人の感想です)。でも、炭水化物を控え過ぎると、物事を否定的にとらえたり、状況を悪い方に考えやすくなる効果も高いようです(これも、個人の感想です)。
    ありていに言うと、一日のあいだ、ごはんをまったく食べないとやや危険な感じになります。ほんのちょっとでもいいからごはんやパンを食べるとぜんぜん気持ちが違いますね。

    * * *

    そんなところで、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    いわゆる「パクツイ」の話
    情報工学を四年学んだけれど、何も残せていない
    生徒が数学を楽しめる授業とは - 教えるときの心がけ
    どんな仕事を受け、どんな仕事を断るか - 仕事の心がけ
    「シリーズもの」を書く難しさ - 本を書く心がけ
    いわゆる「パクツイ」の話
    「パクツイ」というのは「人のツイートをパクって(盗んで)自分のものとして行ったツイート」のことです。
    「これはおもしろい!」という内容のおもしろツイートを見かけたときには、自分でリツイートする前に「パクツイ」の可能性を疑うのはネットリテラシーの観点から大事なことです。自分でリツイートしてしまうと「パクツイ」が広まることに加担してしまうことになるからです。
    「しょせんTwitterなのだから、パクツイだろうが何だろうが、楽しければいいではないか」という考えの人もいますし、それは個人の自由です。結城が「パクツイ」のリツイートを避けたいと思う理由の一つは「自分のネットリテラシーの低さ」を宣伝してしまうことになるからです。「ニュースソースを確認せずにリツイートする人なのね」と思われたくないということです。
    結城も、Twitterを楽しんでいて「パクツイ」をうっかりリツイートすることがあります。そんなとき、親切なフォロワーさんから「結城さん、さっきのはパクツイですよ」と教えていただくことがあります。これはほんとにありがたいですね。
    おもしろツイートをリツイートする前には、そのツイートに「パクツイを指摘するリプライ」が付いていないかどうかを確認します。また、そのおもしろツイートを投稿しているアカウントが他のユーザからどんな「リスト」に入れられているかも確認します。有名なパクツイアカウントは、多くの人から「パクツイ」という意味のリストに入れられているからです。
    Twitterで、そのアカウントがどんなリストに入れられているかの確認は簡単です。iPhoneの場合で図解します。
     (1)あやしいアカウントの「歯車」をタップ。  (2)「リストを表示」をタップ。  (3)「追加されている」をタップすると、他のユーザからこの人がどう見られているかを調べる。  (4)「パクツイ」とか「SPAM」とか思われていることがわかる。
    ◆アカウントがどんなリストに入っているかを確かめる(スクリーンショット)
    ちょっとしたことですけれど、こんど「おもしろツイート」を見かけたら試してみてください。
    さて、ここまではTwitterを使うときの「ちょっとしたこと」なのですが、結城はもう少し気になることがあります。それは「パクツイ」へのリプライのこと。
    先ほども書いたように「パクツイ」には「このツイートはパクツイだよ」という主旨のリプライが付くことがよくあり、それは情報としてはありがたいです。
    しかし、リプライには「どこかのコミックから抜き出してきたような一コマ」が付けられていることがあります。そしてその一コマでは、みんなが知っているコミックの登場人物が「パクツイ」を非難している。リプライ主はコミックの画像をどこかから持ってきて貼り付けてパクツイ非難のツイートをしたのです。
    ここで私はあれ?と思います。パクツイは誰かのツイートを勝手に使っているから非難される。でも、パクツイを非難するリプライでは有名なコミックの一コマを勝手に使っている。パクツイと似たことを非難リプライはやってしまっているのです。
    誰かが作ったものを使ってしまう。それは無自覚にやってしまう危険があるのかもしれません。自分も(難しいですけれど)注意したいところです。
    情報工学を四年学んだけれど、何も残せていない
    質問
    僕は情報工学を四年間学んできました。
    でも、他の人のようにアプリを作ったわけでもないし、ものすごく成績がいいわけでもありません。いろんな本を買ったりして学ぼうとしましたが、何も成果物を残せません。とてもコンプレックスが強く落ち込んでしまいます。
    今後どのように頑張っていけばよいのかわからなくなってきました。
    回答
    なかなか難しい話題です。私も、あなたがどのように頑張ればいいかという答えを持っているわけではありませんが、あなたの文章を読んで思ったところを書きますね。
    あなたは情報工学を四年間学んできて「これはおもしろい」「これは驚いた」「なるほど」「こういうものを作ってみたい。作れたらいいな」「これについてもっと深く学びたい」という経験は何かありましたか。他の人の活動や、他の人の成果物はいったんわきに置いてゆっくりと考えてみてください。
    記憶だけではなく、ノートや日記などを振り返って、どんな小さなことでもいいので「心に響く何か」があったか探してみましょう。
    あなたが四年間の勉強を特別にサボりまくったわけではないと仮定します。四年間学んだ中で「心に響く何か」はあったのではないでしょうか。それが何かはわかりませんが、そこにヒントがあると私は思います。
    アプリを作ったり、ずば抜けていい成績をとったり、誰にでもわかる成果物を残したり、というのはいわば「外向きの成果」です。その「外向きの成果」に対して不満があり、芳しくないと感じるなら「内向きの成果」はどうだろうかというのが私の問いです。他の人と比較せずに、「心に響く何か」がもしもあったとしたら、それをテコにして世界が広がる可能性があります。
    学んでいるとどうしても自分の「能力」に目がいってしまいます。特に自分の身の振り方がまだ定まっていない学生時代は自分の「能力」に不安を感じます。でも「能力」に目を向けるだけではなく、自分の「関心」や自分の「性向」を発見することも大事です。それは今後あなたが活動を進めていく際の手がかりになるからです。
    自分が学んできて「心に響く何か」が見つかったなら、それがどんなに小さなものであっても構いません。それをテコにして学びを進めたり、進路を考えたり、自分の幸福についての一歩を進めたりできると私は思います。
    「心に響く何か」というと大げさな印象を持つかもしれませんが「自分が一生を賭ける道」みたいなものを見つけろといってるのではありません。そうではなくて、ほんのちょっとしたことでいいのです。
    たとえば結城の場合には、大学時代に「自分はプログラミングが好きだなあ」と感じたり「文章を書くのは好きかも」と感じることがよくありました。それを仕事にするという意識はまだはっきりしていませんでしたが、自分の「心に響く何か」は少し感じ取っていたようです。
    大学の中での「他の人との比較」というのは、大学内の成績には影響するかもしれませんが、人生を踏まえた長期的なものにはあまり影響はありません。そもそも自分が直接比較できる相手というのは極めて限定的だからです。
    「他の人との比較」をした上で、落ち着いて自分の行動を分析するのは問題ありません。でもそれで落ち込んだり、やる気をなくしたりするのはもったいないことです。まあ、比較してしまうのが人情なのですけれどね。
    私たちは誰しも「自分という存在」と生まれてからずっと一緒にいます。ですから、つい、自分のことを「わかっている」と思いがちです。でも、それは錯覚です。さまざまな経験をして、それに対する自分の反応を見て、初めて「自分という存在」を知っていくのです。
    ですから、「自分は何かができる」ことと「自分は何かができない」ということは、どちらも自分を知ることに資するといえます。またどんなに小さなことであっても「自分の心に響く何か」を見つけることができれば、それは自分を知る大きな手がかりとなります。
    目立った成果物がなかったり、特に成績がよいわけではないと、つい「自分は何をしてきたのだろうか」と考えてしまいがちです。でも、すべてはこれからです。
    「あなたがどのように頑張ればいいか」への答えではありませんが、あなたの文章を読んで私が思ったことは以上です。
    短絡的に考えず「自分という存在」を知る長い道のりを歩いているのだと考えましょう!