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Vol.283 結城浩/note(ノート)からの配信/クリエイタと独自ドメイン/中学生からのインタビュー/
2017-08-29 07:00220ptVol.283 結城浩/note(ノート)からの配信/クリエイタと独自ドメイン/中学生からのインタビュー/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年8月29日 Vol.283
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
note(ノート)の話。
現在この「結城メルマガ」は、 「まぐまぐ!」と「ブロマガ(ニコニコチャンネル)」 という二つの配信プラットホームから配信しています。 内容と購読料金はどちらも同じです。
2017年の9月から新たに、 「note(ノート)の継続課金マガジン」 という形式でも配信を開始することにしました。 こちらも、内容・購読料金ともに同じです。
「まぐまぐ!」と「ブロマガ」での配信は、 これまでとまったく同じように継続されますので、 「結城メルマガ」をすでに講読してくださっている人には、 何の影響もありませんし、手続きも必要ありません。
新たに「note(ノート)の継続課金マガジン」 での配信も行おうと思った理由の一つは、 購読者さんの「選択肢」を増やそうと思ったからです。
(1)「まぐまぐ!」で講読する場合、 テキストメールと、epub(結城が作ったもの) で読むことができます。
(2)「ブロマガ」で講読する場合、 整形したテキストメールと、Webと、 epub(プラットホームが用意したもの) で読むことができます。
(3)「note(ノート)の継続課金マガジン」で講読する場合、 HTMLメールと、Webと、 epub(結城が作ったもの)で読むことができます。
同じ文章を読む場合でも形式が違えば雰囲気も違います。 多様な形式を用意しておけば、 購読者さんの読みやすい形式を選ぶことができます。 それが「選択肢」を増やすということの意味です。
また、note(ノート)で講読する選択肢を用意することで、 これまであまりリーチできていなかった方にも 「結城メルマガ」をアピールしたいという思いもあります。
試し読みのサービスとして、 「まぐまぐ!」では初月無料、 「ブロマガ」ではひと月分の料金で二ヶ月講読可能、 を提供しています。「note(ノート)」では、 「まぐまぐ!」と同様に初月無料という形式にします。 これは発行者(結城)の設定で決められます。
「note(ノート)」を初月無料にしましたので、 すでに「まぐまぐ!」や「ブロマガ」で結城メルマガを講読している方でも、
《note(ノート)でも、試しにひと月読んでみるか》
という選択が可能になります。 すでに購読者になっている方でも、ご興味がありましたら、 検討してみてください。
「結城メルマガ」が「note(ノート)の継続課金マガジン」 でも講読可能になるのは、2017年9月1日からです。 講読可能になったら、あらためて告知いたします。 現在は【プレ告知】として情報を公開しています。
◆【プレ告知】結城メルマガをnote(ノート)の 継続課金マガジンからも配信予定(2017年9月から) https://note.mu/hyuki/n/n0ae97288d626
なお、今回の継続課金マガジン対応と合わせて、 note(ノート)の「独自ドメイン対応」も行う予定です。 創作活動と関連させて、どんなことを考えているかは、 後ほどお話しいたします。
* * *
しゃれた言い回しの話。
数学者を機械にたとえた、
「数学者はコーヒーを定理に変える機械」
という言い回しがあります。
「数学者はコーヒーを定理に変える機械」 というのはしばしば数学者エルデシュの発言と思われていますが、 実際にはアルフレッド・レニイのものだそうです。 上原隆平先生にご指摘いただきました。
ともあれ「数学者はコーヒーを定理に変える機械」は、 数学者の仕事である「定理を証明する」という仕事をうまく表した言い回しだな、 と思います。
生物学的には「ブドウ糖を定理に変える機械」とも言えるかな、 と思いました。実際に頭を動かしているのはブドウ糖ですし……。 でも、「ブドウ糖」では表現としておしゃれじゃないですね。
そんなことをつぶやいていたら、戀塚昭彦さん(@koizuka)から、
「(A)は(B)を(C)に変える機械」みたいに色々適用できるなw (A,B,C) = (ハッカー, レッドブル, コード) みたいな
と一般化したリプライをいただきました。
なるほど!
あなたは、自分のことを、
「何を何に変える機械」
とたとえるでしょうか。
* * *
フィードバックの話。
最近できた新しいカフェに妻と二人でランチに行きました。
いつもいく店Aが近くにあるけれど、 せっかくなので新しい店Bに行こうと思ったのです。
ところが失敗。
美味しくなくて、しかも値段が高かったのです。 いつもの店Aの方が安くて美味しいので、 もうこの店Bには来ないよねえ…と二人で話しました。 残念。
そこで思ったのです。
おそらく私たち夫婦は、あの店Bには行かないでしょう。 でも、私たちは、
店Bにどうして行かなくなったかを、 わざわざ店主に伝えたりはしません。
「この店は新しくできたので期待したけれど、 美味しくないし、コスパ悪いのでもう来ないです」 そんなことをわざわざ伝えたりはしません。
多くの人がそうだと思います。 ある店が不味いからといって、わざわざ伝えたりしない。 ただ、その店に行かなくなるだけです。
味は人の好みがあるし、値段との兼ね合いも人によるでしょう。 私がイマイチと思っても、そうでない人がいるかもしれません。 でも、もしも、多くの人が「ここにはもう来ない」と判断したら、 早晩経営は苦しくなるでしょう。 そしてその来なくなった人のほとんどが、 「なぜ来なくなったか」という理由を店に伝えません。
経営者にとって、 フィードバックをもらうことは大事です。
フィードバックがなかったら、 お客さんが来ない理由を必死で想像するしかないからです。
サービスを提供する側にしてみれば、 「ほめてくれるお客さんの声」はありがたいものです。 ほんとうに励みになります。 でも、それにも勝るとも劣らない価値があるのが、 「不満を感じたお客さんの声」です。 「ここがよくない」や「ここが変わればいいのに」や 「こうしてほしかった」という不満の声は千金に値します。
必ずしもその声に反応する必要はありません。 またその声をうのみにする必要もありません。 しかし、そういう声があることを知るのは、 サービスを提供し続けていく上でとても大切なこと。 それは「顧客を知る」ことに直結しているからです。
結城は本を書いており、いわば読者に対するサービス提供者です。 ですから、毎日のようにTwitterでの反応を読んだり、 メールで送られてくる感想文を読んだりするのは当然の活動です。 応援メッセージはほんとうにうれしいものですが、 そうではない意見や感想や不満もていねいに読んでいます。 そこで提示された情報のすべてに従う必要はないと思っていますが、 その情報を知ること自体はとても大切だと思っています。 それは「読者を知る」ことに直結しているからです。
結城は本を書く上で、 《読者のことを考える》という原則を守ろうと思っています。 そして、そのためには「読者を知る」ことが必須なのです。
* * *
ドラマのようなシーンの話。
ある夜のこと。場所は駅のホーム。
背広男性と女性のカップルが、 いかにも別れがたい様子でシリアスにハグしている。
まるで恋愛ドラマの一シーンのようなので、 つい見とれてしまう。
ところが、あまりにも深く抱き合っていたため、 いざ離れようとしたら二人の傘とバッグとカバンが絡み合って、 ハチャメチャになってしまった。
ほぐそうとする二人は、 途中からゲラゲラ笑い出してコメディの一シーンへと場面転換。
何だか楽しい一幕でした。
* * *
それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
はじめに
クリエイタが独自ドメインを持つ意味 - 仕事の心がけ
『数学ガール』執筆に関する中学生からの質問 - Q&A
おわりに
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Vol.282 結城浩/ネガティブなセルフブランディング/夫婦の対話/紙か電子か/
2017-08-22 07:00220ptVol.282 結城浩/ネガティブなセルフブランディング/夫婦の対話/紙か電子か/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年8月22日 Vol.282
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
先週は変な天気の一週間でした。 暑いわけではないけれど、曇天や土砂降りが多く、 どよんとした気分になることが多かったですね。 気持ちがどうも上向きにならず、たいへん困りました。 暑いのも困るけれど、曇りも困りものです。
今週はどんな一週間になるでしょうか。
* * *
まずは訂正とお詫びから。
先週の結城メルマガVol.281で大きな間違いがありました。 ネギを切るときの手間の話で、O(n)とO(log n)の定義を間違っていました。 ざっくりいえば、不等号の向きを逆に説明していたことになります。
O(n)の説明の部分:
正:たかだかnの定数倍の手間 誤:nの定数倍以上の手間
O(log n)の説明の部分:
正:たかだかlog nの定数倍の手間 誤:log nの定数倍以上の手間
以上、お詫びして訂正いたします。
* * *
「夢空間への招待状」の話。
「夢空間への招待状」というのは、 結城が「Oh!PC」というコンピュータ月刊誌に連載していた読み物です。 いまからもう20年以上も前のことです(!)。
ずいぶん以前からWebで公開していたのですが、 今回、スマートフォンでも読みやすいように、 レスポンシブデザインに直しました。
フロッピーディスクが登場するくらい古く、 クラウドなんて影も形もない時代の読み物です。
今回レスポンシブデザインに直すために読み返しました。 結城が結婚した前日に書いていた文章(初めての経験) も入っていて、とても懐かしいですね。
◆初めての経験 http://www.hyuki.com/dream/notebook.html
現在の私にとって興味深い文章もいくつかありました。
◆若くなければプログラムは書けないか http://www.hyuki.com/dream/strategy.html
力が入りまくった「若い文体」があちこちにあり、 恥ずかしいのも事実です。
◆不安を感じるプログラマの君へ http://www.hyuki.com/dream/letter.html
お時間がありましたらご笑覧ください。 連載記事のうち40本ほどを無料公開しています。
◆夢空間への招待状 http://www.hyuki.com/dream/
* * *
ボットか人間かの話。
Twitterには、 主としてプログラムがツイートを行っているいわゆる「ボット」がたくさんいます。 たとえば、結城自身もボットのアカウントを持っています。 ふだん自分がツイートしているのは @hyuki ですが、 毎日一回ツイートしている @hyukibot というアカウントはボットです。
◆結城浩(自動投稿)ボット https://twitter.com/hyukibot
Twitterのアカウント名を与えると 「ボットか人間か」を識別するWebサービスはあるかな? という疑問を以前抱いたとき、 ある方から、以下のBotometerというサービスを教えていただきました。
◆Botometer - ボットかどうかを判定するサービス https://botometer.iuni.iu.edu/#!/
このBotometerにアカウント名を入れると、 「ボットといえそうな割合」をパーセンテージで教えてくれます。
たとえば、結城のアカウント(@hyuki)と、 結城のボットアカウント(@hyukibot)と、 それからサンプルとしてマザーテレサのボットアカウント(@MotherTeresaBot) を比較してみました。
◆Botometerの実行例
これによると、
マザーテレサのボットアカウント(@MotherTeresaBot)…… 77% 結城のアカウント(@hyuki)…… 17% 結城のボットアカウント(@hyukibot) …… 40%
となりました。 うん、何となくそれっぽい動きはしているようですね。
ところでどうして「ボットか人間か」が気になったかというと、 結城のアカウントをフォローしている人のうち、 何割がボットなんだろうと考えたからです。
原理的には、 結城のフォロワー一人一人をBotometerに掛ければ、 全体の何割がボットなのかは調べられそうですが……
* * *
「○○ガール」の話。
あるとき、@tricken 氏の以下のツイートを読みました。
(引用開始)
https://twitter.com/tricken/status/893656712976023552
ところで単一キャラとしての「〇〇ガール」でなく、 対話篇としての「〇〇ガール」を考えた時にいつも断念するのは、 社会学寄りの何かの対話篇を普通にやると しばしば「驕った」キャラクターを要請することになり、 フィクションとしてダサくなるのがつらいなと思っていた。
「数学ガール」や「子ども科学電話相談」のような、 学術蓄積を媒介して、 それ以外の政治言説に巻き込まれない知的領域で対話篇を続けることの佳さ、 を対話篇でつくる、何かよい方法はないのかなあ、 と思っていた。
村上春樹『海辺のカフカ』で 主要人物のセクシュアリティの問題に触れることになった時、 どうしてもモブのおばさまがたが愚かに描かれたことを、 痛ましく思ってたんだよね。 モブを愚かに描かずになお対話篇において社会を知的に語ることが もう少し容易であればいいのに、と思っていた。
(引用終了)
これを読みながら、結城は以下のように考えました。
「数学ガール」での数学トークの心地よさには大きな理由が二つあって、 一つは対話している彼女たちが互いに信頼と敬意を保っている点。 もう一つは数学というものを楽しんで味わっている点。
この二つは関連しています。数学を楽しむのにあたって、 相手の考えの誤りを正すことはあっても、 相手を人格的におとしめる必要はない。 そのように思っています。
言い換えるなら、数学に限らず、
「相手の誤りを指摘すること」 「相手に敬意を払うこと」
この二つが独立である分野なら、 同様に心地よく意味のある対話篇が作れそうです。
でも、注意すべき点はそれだけではないかもしれません。 『海辺のカフカ』の例で考えてみると、 指摘を受けた女性が、すぐに考えを変えてしまったら、 物語としては嘘っぽくなりそうですから。 誤りを指摘したとき、相手が「確かにそれは誤りですね」 とすぐに認めても、不自然じゃないようにしなければいけません。
といっても、 社会問題のように視点や主張が複数(排他的に)存在する場合、 正解を一つに収斂させ過ぎると、 プロパガンダ作品になる危険性もありそうです。 かといって収斂させないと、 問題提起だけで終わってしまう危険性もあって、 作品にしたてあげるのは確かにつらそう……
tricken氏のいう、「学術蓄積を媒介して、 それ以外の政治言説に巻き込まれない知的領域で対話篇を続ける」 のは本当に難しい話なのかもしれません。
結城自身は社会学的な方面の知識も理解もないので、 以上のように想像するばかりなのですが、 詳しい方はどんなふうに思うのかしら。
『数学ガール』はしばしば(光栄なことに) 『ソフィーの世界』と並べて語られることがあります。 『ソフィーの世界』では、 哲学の歴史をたどりながら対話が行われていますね。
対話篇が作りやすい分野、作りにくい分野について、 あなたはどう思いますか。
* * *
それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
はじめに
サイトの引っ越しについて検討中
ネガティブなセルフブランディングの危険性 - 仕事の心がけ
会計のことを妻と話しながら思ったこと
「やる」「やらない」の判断 - 仕事の心がけ
紙か電子か - 本を書く心がけ
おわりに
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Vol.281 結城浩/おっくうな作業/結婚と子育てと - Q&A/
2017-08-15 07:00220ptVol.281 結城浩/おっくうな作業/結婚と子育てと - Q&A/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年8月15日 Vol.281
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
Kindleセールの話。
先週の火曜日まで実施されていた、 「SBクリエイティブ50%ポイント還元セール」 は無事に終了いたしました。
今回の50%ポイント還元はたいへん大規模なものでしたし、 多くの注目を集めたようです。 アクセス解析をしていたのですが、 ふだんの数十倍から百倍のオーダーのアクセスがありました。
アクセスが特に多かったのはセールの初日とセールの最終日。 グラフの両端が大きな山になるほどでした。興味深いですね。
結城の書籍もたくさんお買い上げいただき、 また応援もいただきました。Kindle数学書ランキングで、 1位から14位までを占めるほどの人気でした。感謝です!
Twitterでの反応も多かったですね。 「ふだんから数学ガールが気になっていたけれど、 買うほどではなかった。 でも今回のセールをきっかけに購入してみようと思った」 という方がけっこうな人数いたと感じています。 つまり、セールが購入の「後押し」になったということでしょう。
そう考えますと、 普段からの宣伝や書籍紹介がとても大事だということがわかりますね。 たとえ宣伝した直後に売れなくても、 セールなどのきっかけによって購入に結びつくからです。
ともあれ、応援ありがとうございます!
* * *
Web連載の話。
cakes(ケイクス)でのWeb連載「数学ガールの秘密ノート」は、 新シーズン「関数を手がかりに」が始まっています。
◆第202回 最初に最後を考えて(後編) https://bit.ly/girlnote202
第202回(第1章後編)は関数の定義が題材です。
結城が高校生のとき、数学の先生から、 関数の定義を暗記させられたのをいまでも覚えています。 上の記事に書いたものとほぼ同じで、 「二つの集合があって……」から始まる定義です。
何でこんなものを暗記するんだろう、 と当時は思いましたが、 いまにして思えばありがたい教え方だったと思っています。
といっても、 機械的に暗記させられたのが嬉しかったわけではありません。 そうではなくて、
暗記するに値するほど、 《関数の定義》は大事なんだな
と学べたことがありがたいのです。
ここにはやや微妙な問題が絡んできます。 数学と暗記の関係です。
何かを丸暗記するのはいいけれど、 その意味内容をまったく考えないとしたら、 その暗記は意味がありません(数学の場合)。
でも丸暗記を忌避するあまり、 すべてを考えようとするのもいささか的を外しています。
むしろ、いったん暗記してしまうことで、 いちいち本を見なくてもその数学的概念について考えることができる、 その点に目を向けたほうがいいように思います。
もちろん、意識的に「暗記しよう」なんて思うのではなく、 その数学的概念について考えているうちに自然と覚えてしまうのが、 理想といえば理想なのかもしれませんけれどね。
結城が思うのは「暗記だから悪」や、 逆に「考えるのは時間の無駄だから暗記せよ」 のような極論に走るのはよくないなあ、ということです。 極論や、前提条件をすっとばした断言は危険です。
断言した方が教えやすいという一面はあります。 でも、まあ、それは教師の側の都合ですね。 生徒の側としては、教師のいうことを素直に聞きつつも、 「それは違うのでは」 という点はスルーするくらいがちょうどいいのかもしれません。 こういう日和見的な考え方は人気がないのですけれど。
学習と暗記の関係はそれほど単純ではありません。
* * *
自分の態度が自分の環境を決める話。
「人の良いところを見つけ出してほめる人」 のまわりには、 そういうことが好きな人が集まる。
「人の悪いところを見つけ出してけなす人」 のまわりには、 そういうことが好きな人が集まる。
自分のまわりを見渡して、 自分の環境がどうなっているかをチェックするのは大事かもしれません。 それはふだんの自分の態度をチェックすることにつながるからです。
世の中は○○だ!と呪詛する気持ちもわかるけれど、 もしもそれが自分のまわりだけだとしたら、 ちょっと恐い話です……
* * *
過度の一般化の話。
数学では「すべて」と「存在する」の区別が大切な場面がよく出てきます。
実は、人を評価するときでも、 その区別は大切かもしれません。 つまりそれは、
「あの人はいつも〇〇だ」と、 「あの人は〇〇なときがある」
とを区別するという意味です。
人というものはパターンを見つける能力が高く、 自分が体験したことを重要視してしまい、 しかも記憶を持っています。ですから、
「あの人が〇〇した」
という場面を《数回》見ただけで、
「あの人はいつも〇〇する」
と考えてしまうことが多そうです。 《数回》が《いつも》に変化しちゃうのですね。
でも、その推論は本当に正しいのでしょうか。 もしかしたら、誤った一般化ではないでしょうか。
逆も考えられます。 自分がうっかり〇〇したとき、 他人から「この人はいつも〇〇だ」と思われてしまわないだろうか。 そのような心配をすることもあるでしょう。 人の目を気にして自分の身を正す、 というくらいならば結構ですけれど、 人の目を気にし過ぎて活動が萎縮することはないでしょうか。
社会のあり方や組織論のような大きな話ではありません。 自分個人のこととして考えるのは意味があります。 誰かに対して評価を下すとき、
「自分は何を根拠にその評価をしたんだろうか」
と改めて考えるのは大切です。
「判断の根拠となった事象のサンプル数は何個か」
と問うのもいいですね。
そういえば友人の一人に、 この問いが大好きな人がいたのを思い出しました。 「△△な人は○○なんだぜ」という話を耳にするたびに、
「その話、サンプル数いくつ?」
と問い返すのです。いまにしてみると、 あの問いは大事だったんだな、と思い返します。
サンプル数が少ないのがすべて悪というわけではありません。 個人的な体験は多くの場合、サンプル数は《1》ですし。 でもサンプル数を確かめないのは賢明ではないですね。
* * *
ネギとオーダーの話。
先日、台所で細いネギを刻んでいました。 包丁を使って、ネギの端からトントントン……と。 わかりますよね。
家内はそんな私の包丁の使い方を見るに見かねて 「こうするのよ」と教えてくれました。
ネギを中央で半分に切り、 二つになった束を重ねる。 さらに中央で半分に切り、 二つになった束を重ねる。 それを繰り返していく。
あっという間に切り終わったのを見た結城は、 O(n)とO(log n)の違いに思いを馳せていました。
大ざっぱにいえば、 O(n)というのはデータサイズをnとしたとき、 十分大きなnに対して、たかだかnの定数倍以下の手間になるという意味です。 「端から順番にやっていく」という方針だとO(n)になることが多いですね。
それに対してO(log n)というのは、 たかだかlog nの定数倍以下の手間になるという意味です。 「二分割を繰り返していく」という方針だとO(log n)になることが多いでしょう。
結城の方法ですと、 ネギを端から1024個に等分割するためには、 1023回包丁を使う必要があります。 それに対して家内の方法では、 なんと、たった10回で1024個に等分割できるのです(!)
1→2→4→8→16→32→64→128→256→512→1024
このような「手間を見積もる」アイディアが、 アルゴリズム解析の根底にあります。 詳しくは以下の本をどうぞ!
◆『数学ガール/乱択アルゴリズム』 http://www.hyuki.com/girl/random.html
* * *
それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
はじめに
再発見の発想法 - Checksum(チェックサム)
おっくうな作業に着手したときに要注意 - 仕事の心がけ
限界はどこにあるのか - 本を書く心がけ
結婚と子育てと - Q&A
おわりに
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Vol.280 結城浩/調べるべきか、聞くべきか/作品を作り上げる気持ち/
2017-08-08 07:00220ptVol.280 結城浩/調べるべきか、聞くべきか/作品を作り上げる気持ち/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年8月8日 Vol.280
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
毎日、とても暑いですね。
クーラーの効いている場所に来るとつい、 「はあ……クーラーよ……文明の利器よ!」 と口に出して感動してしまいます。
ところで、 電車でクーラーが効いているのはありがたいのですけれど、 身体に風が当たるのをつらく感じることがしばしばあります。 特に、首まわりの肌に風が直接当たってくると、 どうも落ち着かないのですが、 あなたはそんな経験はありませんか。
そんな暑い毎日。カレンダーを見て驚きました。 それは、2017年8月7日(月)が「立秋」であること。 もうこれからは「暑中見舞い」ではなく「残暑見舞い」になるのですね。
残暑お見舞い申し上げます。
* * *
セールの話。
2017年8月10日(木)まで、 SBクリエイティブがキャンペーンを行っています。 アマゾンのKindle本が「50%ポイント還元」とのこと。
◆【50%ポイント還元】SBクリエイティブキャンペーン http://amzn.to/2wycuU6
結城の本の大半はSBクリエイティブから刊行されており、 今回のキャンペーン対象に入っています。
「数学ガール」と「数学ガールの秘密ノート」シリーズ、 『暗号技術入門』、『プログラマの数学』、 『Java言語で学ぶデザインパターン入門』などのKindle本が、 すべて50%ポイント還元になっています。
電子書籍でのご購入を予定している方は、 ぜひこの機会をご利用ください。
『数学文章作法』は筑摩書房からの刊行ですので、 キャンペーン対象ではありません。
◆「数学ガール」シリーズ全巻を含む、 結城浩のKindle本が50%ポイント還元セールになっています。 https://note.mu/hyuki/n/n7528d0436f8a
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アマゾンの「おすすめ商品」の話。
さて、 アマゾンのキャンペーンがあると、 いろんな商品をつい見ちゃいますね。 いつもは買わないものまでも買ってしまったり。 そうすると、アマゾンが勧めてくる「おすすめ商品」 がそれほど興味のないジャンルの商品に偏ってしまうことも。
そんなときには、 以下のリンクから「おすすめ商品を正確にする」へ進み、 いつもと違う商品を見つけて「おすすめ商品に使わない」 で調整することができて便利ですよ。
◆おすすめ商品を正確にする(アマゾン) http://bit.ly/editrec
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Web連載の話。
結城は毎週金曜日にcakes(ケイクス)で、 「数学ガールの秘密ノート」をWeb連載しています。
「整数に誘われて」シーズンが終了してから、 7月いっぱいはお休みをいただいていましたが、 先週から新シーズンが始まりました。
今回は、
「関数を手がかりに」
シーズンです。「関数」という切り口で、 いろんな種類の楽しい数学トークをお届けする予定です。 どうぞご期待ください!
◆第201回 最初に最後を考えて(前編) https://bit.ly/girlnote201
なお、結城のcakes(ケイクス)でのWeb連載は、
・最新回は一週間無料で読める ・すべてのバックナンバーは前半は無料で読める
という設定にしています。
cakes(ケイクス)の有料会員になると、 一週間150円でcakes(ケイクス)の全記事が読み放題になります (もちろん、結城のWeb連載のバックナンバーもすべて読み放題)。
有料会員さんが結城のページをたくさん見ていただけると、 Web連載に対する結城への支払いがアップする仕組みになっていますので、 有料会員さんは、バックナンバーをぜひたくさん読んでくださいね! よろしくお願いいたします。
* * *
Unsplash.comの話。
結城はcakes(ケイクス)の連載記事を書くとき、 シーズン(10回)ごとに新しい「アイキャッチ画像」を用意します。
以下のページを見ていただくと、 過去のアイキャッチ画像がわかると思います。
◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」 https://bit.ly/girlnote
今回は「関数を手がかりに」シーズンですので、
f(x)
という式をモチーフにしたいと思いました。 自分で試行錯誤して描いてみたのですが、 いまひとつかっこよくできません。 そこで、弦楽器の「f字孔」を使おうと思いました。 バイオリンやチェロに開いている「f」の形の孔ですね。
Unsplash.comで検索して見つかった写真を元に、 以下のようなアイキャッチ画像を用意しました。
◆「関数を手がかりに」シーズンのアイキャッチ画像
今回の画像はUnsplash.comのJohanna Vogtさんの写真をもとにしています。
◆Johanna Vogt (@johanna_vogt) on Unsplash https://unsplash.com/@johanna_vogt
Unsplash.comというのは、 高解像度の美しい写真をフリーで提供しているサイトです。 ライセンスはひとことでいうと「do whatever you want」 で「何をしてもいい」というライセンスです(下記参照)。
◆Unsplash.com の License https://unsplash.com/license
Unsplash.comで公開されている写真は、 クレジットを明記することも必須ではないのですが、 前述のアイキャッチ画像では、 クレジットを画像に埋め込んでいます。
Unsplash.comの画像は、 高解像度で美しいものが多いため、 いろんな場面で利用させてもらっています。
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インタビューの話。
先日も紹介しましたが、 結城の「図書館体験」にまつわるインタビューが掲載されている本のご紹介です。
◆『トップランナーの図書館活用術 才能を引き出した情報空間』(岡部晋典) https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/458520055X/hyuki-22/
アマゾンには書影が出ていませんが、 編者の岡部先生から書影画像をいただいたのであらためて。
◆表紙書影
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西尾維新インタビューの話。
インタビューといえば、 先日、作家の西尾維新氏のロングインタビューが公開されていました。
◆作家・西尾維新が大切にする 独自の「執筆の矜持」と「読書ルール」とはーー? 大ヒット作の創作現場に迫る独占ロングインタビュー完全版!! - otoCoto https://otocoto.jp/interview/nishioishin-2/
このインタビューは、 文章を書く身としてたいへん興味深く読みました。
まず驚くのは「1日3万字書く」という筆の速さです。 このスピードで書けるというのもすごいですし、 実際書き続けているのがすごいですね……絶句してしまいます。
各シリーズをどのように構成するか。 そしてそのシリーズでのねらいは何か。 それらをとても意識して書いているという姿勢は、 たいへん勉強になります。
映画『劇場版 傷物語』での役者さんの演技について、 目標設定を高く持っているという点について、 西尾氏は以下のように語っています。
(引用開始)
100点を狙うのではなく、200点を狙うから、 結果的に常に100点以上の仕上がりになるのだなと。 それは、自分に置き換えてみると“3万字書こうと思ったら、2万字は絶対に書ける” ということに繋がっている気がしました。
https://otocoto.jp/interview/nishioishin-2/3/
(引用終了)
さらに、「1日3万字書こう」というのは、 「本を年間150冊読む」ためだとも語っています。
圧倒されますね!
ともかく、 たいへん刺激を受けたいいインタビューでした。
* * *
それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
はじめに
調べるべきか、聞くべきか - 教えるときの心がけ
作品を作り上げる気持ち - 本を書く心がけ
絵本の読み聞かせと、即興で作る物語
おわりに
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Vol.279 結城浩/読書感想文のテンプレート/「頭がいい人」について/これだけは負けないと思うこと/
2017-08-01 07:00220ptVol.279 結城浩/読書感想文のテンプレート/「頭がいい人」について/これだけは負けないと思うこと/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年8月1日 Vol.279
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
もう八月ですね……「夏本番」といえる暑さがやってきました。
暑い日でも、できるだけ外を歩く時間を作るようにしています。 一つは健康のためで、もう一つは仕事のためです。
「身体を動かすことは文章を書くのに役立つ」 ということは経験上わかっています。 単に血行がよくなって、 頭に酸素がたくさんまわるからかもしれませんけれど、 理由はまあなんでもいいでしょう。
自分の身体に刺激を与えることで、 自分の仕事(特に文章)にも刺激が加わるのを感じます。
ということで、暑い中、汗を流しながら、 せっせと歩くように心がけているのです。
* * *
「ロバ耳」の話。
結城は「ロバ耳」というWebサイトを20年間運営してきました。
◆Webサイト「ロバ耳」 http://www.hyuki.com/roba/
◆Webサイト「ロバ耳」(スクリーンショット)
どうも調子が悪いというとき、 友達としゃべったり、メールを書いたり、 あるいはSNSに書き込んだりすると、 ちょっと気分がよくなることがあります。
誰かにメールを書いて送信した時点で (つまり、相手からのアドバイスや共感をもらう前に)、 気分がよくなっているという現象もよくあります。
だとしたら、もしかして
きちんと読まれることは保証されるが、 返事は絶対にこない
という形式のメールにも意味があるんじゃないだろうか。 そんなことを、結城はずっと昔から考えていました。
20年前のWeb日記で、 こういう企画には何という名前がいいだろうか、 という質問を提示したところ、複数人から、
「ロバの耳」
という名前がいいという案をもらいました。 そのような経緯を経て、 この「王様の耳はロバの耳」(ロバ耳)が誕生したというわけです。
「ロバ耳」で結城が定めたルールは以下の4個です。
ルール0.誰でも、何でも自由にお話しください ルール1.あなたが話すことを結城はていねいに聞きます ルール2.結城は返事をしません ルール3.あなたが話すことは公開されません
実際には「話す」というのは、 結城が用意したWebフォームに書き込むという意味で、 「聞く」というのは、 結城に送られてきたその書き込みを読むという意味です。
送られてきた書き込みを結城は読むだけです。 その内容は誰にも言わないし、 書き込んだ人にも返信したりしません。
ただ、それだけのサイトなのですが、 「ロバ耳」が誕生した1997年7月31日以来、 結城の想像を越えた多くの方から利用いただくこととなりました。
今回「ロバ耳」を終了するのは、 一つは結城自身のキャパをオーバーしているためで、 もう一つは20年目という機会を節目としたいためです。
正直、20年も続くことになるとは思っていませんでした……
流れとしてはここで「ロバ耳」の思い出話を書くところですが、 このWebサイトの性質上、それは不可能です。
ということで、ご利用くださったみなさん、 ありがとうございました。
* * *
留年と進捗遅れの話。
京都大学のカウンセリングルームのWebサイトに「留年について」 という文章があります。 以前も見たことがあるのですが、先日再読してとてもよかったのでご紹介。
特に「学生さんが一度留年して、それがさらなる留年を生むという悪循環」 について書かれた部分は、学生さん以外でも参考になると思います。
◆留年について-カウンセリングルーム(京都大学) https://www.gssc.kyoto-u.ac.jp/counsel/ryunen.html
項目だけ抜粋しましょう。 以下が「悪循環に陥るパターン」だそうです。
(1)留年を家族や友人に隠そうとする (2)一挙に挽回しようとする (3)日々の楽しみを自分に与えない (4)卒業しなければ生きていけないと考える (5)時期尚早に「来年からがんばろう」と考える (6)自分は他の学生より明確に劣っていると考える
先ほどのWebページには、 各項目について丁寧な解説が書かれています。
ところで、この「悪循環に陥るパターン」というのは、 進捗が進まないクリエイタが陥る危険性にも当てはまりそうです。 たとえば、以下のように読み替えてみましょう。
(1)遅れを編集者に隠そうとする (2)一挙に挽回しようとする (3)日々の楽しみを自分に与えない (4)〆切にまにあわなければ生きていけないと考える (5)時期尚早に「次の作品からがんばろう」と考える (6)自分は他のクリエイタより明確に劣っていると考える
そういえば、結城も最初の本を書いているとき、 これと似たような心境に陥りました。危険です。 とっても危険です。 そのときは担当編集者からのアドバイスに従うことによって、 危険を脱することができました。
クリエイタ系の人の中には、 繊細な心を持ち、潔癖な性格の方もいらっしゃいます。 その心とその性格のゆえに生まれる作品というものもありますが、 進捗遅れの「悪循環に陥るパターン」にはまる危険性も高いです。 ぜひ、ご注意していただきたいと思います。
* * *
高校生の活躍の話。
国際化学オリンピック、国際数学オリンピック、国際物理オリンピックで、 日本の高校生が活躍しているようすが記事になっていました。 以下、高校生新聞onlineの記事をご紹介。
◆国際化学オリンピック 日本代表全員がメダル 坂部圭哉君が2年連続「金」、3人が「銀」 http://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/2028
◆国際数学オリンピック 髙谷悠太君(開成高)が世界1位 日本代表全員がメダル http://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/2229
◆国際物理オリンピック 渡邉明大君が世界1位、3年連続金メダル 日本代表は金2銀3 http://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/2230
* * *
表記法の話。
先日「サイゼリヤ」がネットで話題になったとき、 以前から気になっていたことを思い出しました。
気になっていたことというのは、 店名が「サイゼリ《ア》」ではなく「サイゼリ《ヤ》」になっていること。
日本には「そっちが正式名称なんだ!」と驚く名前がいくつかあります。
結城が気づいていたのは、
サイゼリヤ(サイゼリアじゃない) キヤノン(キャノンじゃない) 日経ソフトウエア(日経ソフトウェアじゃない)
くらいでしたが、 いろんな方から意外な表記をたくさん教えていただきました。 以下、その一部です。
オンキヨー(オンキョーじゃない) キユーピー(キューピーじゃないんだ!) シヤチハタ(シャチハタじゃないの?) 富士フイルム(富士フィルムだと思ってた…) 文化シヤッター(文化シャッターでもないし、文化シヤツターでもない!)
おもしろかったのは、
函館どつく
です。函館を「どつく」わけではなく函館ドックのようです(造船メーカー)。
* * *
そのアカウントはどんな人?の話。
Twitterを眺めていると、ときどき 「思わずリツイート(RT)したくなるようなおもしろツイート」 が流れてきます。でも、RTした後で、
「結城さん、さっきのは《パクツイBOT》による 《パクリツイート》でしたよ」
と教えていただくことがあります。
つまり、こういうことです。
(1)誰か(A)が非常におもしろいツイートをする。
(2)パクツイBOTなどと呼ばれるアカウント(B)が、 そのツイートの内容をパクって、 あたかも自分のものであるかのようにツイートする(パクリツイート)。
(3)パクリツイートを見た人が「これおもしろいな!」といって、 パクリツイートとは知らずにRTして拡散する。
(4)オリジナルのツイートをしたAではなく、 パクリツイートをしたBがフォロワーを増やす。
パクリツイートを拡散するのは好ましくありませんけれど、 自分が見ているツイートがオリジナルのツイートなのか、 それともパクリツイートなのかを見極めるのは難しいものです。
ツイート単体での見極めは難しいですが、 パクリツイートをしているアカウントを見分けることは、 それほど難しくないかもしれません。 少なくとも確信犯的にパクツイBOTを続けているアカウントはわかりそうです。 というのは、
そのアカウントが、 他の人からどんな「リスト」に入れられているか
を調べることができるからです。 多数の人から「パクツイBOT」や「パクリ」 などという名前のリストに入れられていたら、 パクツイBOTである可能性が高いでしょう。
確認方法はアプリで異なりますが、 iPhoneのTwitterクライアントの場合、 そのアカウントのプロフィールページから歯車をタップして、 →「リストを表示」→「追加されている」タブで調べます。
アプリでのUIの違いはありますが、 要するに「@ユーザ名」がどんなリストに追加されているかは、
https://twitter.com/ユーザ名/memberships
というURLにアクセスすればわかります。 たとえば、結城浩(@hyuki)の場合には
https://twitter.com/hyuki/memberships
というURLを表示すればいいですね。
ちょっと時間があったので、 そのアカウントのプロフィールページやツイートを表示した状態から、 「そのアカウントはどんなリストに追加されているか」 を調べるブックマークレットFameList.jsを作りました。
◆TwitterでパクツイBOTか否かを調べる方法 (FameList.jsで「そのユーザが登録されているリストページ」を確かめる) https://snap.textfile.org/20170725150257/
厳密には「パクツイBOTか否か」を調べているわけではないのですが、 当該アカウントが「他人からどんなリストに入れられているか」 は有益な情報になるでしょう。
ちなみに、 結城のアカウントが入っているリストを名前が多い順に並べてみました。 こんな感じです。
43 math 37 IT 34 science 30 tech 29 数学 27 famous 25 My 23 engineer 20 it 17 twizard-magic-list 17 programmer 17 dev 15 book 14 writer 13 programming 12 developer 12 celebrity 11 author 10 list 10 geek 10 fav (以下略)
https://gist.github.com/hyuki0000/43c35992a0b43761336f9542926bc1a8
なるほど。
* * *
親子の話。
よく晴れたある日のこと。
結城が駅に向かって歩いていると、 リュックを背負った親子(父と娘)らしい二人が前を歩いています。 これからきっと「プチお出かけ」なのでしょう。
はっきりとはわかりませんが、背丈から想像して、 娘さんは小学五年生くらいに見えます。
何ということもなしに二人が歩くのを後ろから見ていると、 お父さんの方の手が少しずつ娘さんの手に近づいていきます。 どうも、お父さんは娘さんと手をつないで歩きたい様子。
デートで手をつなごうとしている男女を見てるみたいに、 私のほうがどきどきしてきました。
娘と二人、手をつないで歩く休日へ……
お父さんが手を伸ばして、ようやく手が触れようとした瞬間。 娘さんに(うざいな)という感じに振りほどかれていました。 お父さんは再挑戦せず。
あのくらいのお年頃になると、 親と手をつないで歩くというのは難しいのかもしれませんね。
お父さんの失意の胸の内を想像して、
(お父さん、ガンバ…!)
とエールを送ってしまいました。
* * *
それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
はじめに
読書感想文のテンプレート - 文章を書く心がけ
「頭がいい人」について
これだけは負けないと思うこと - Q&A
おわりに
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