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記事 4件
  • Vol.352 結城浩/カスタムキャストで遊びたい/計画/表現するときの恐怖心/問題を解くときの詰めの甘さ/

    2018-12-25 07:00  
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    Vol.352 結城浩/カスタムキャストで遊びたい/計画/表現するときの恐怖心/問題を解くときの詰めの甘さ/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年12月25日 Vol.352
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    一年は早いもので、もうクリスマスですね……あなたはどんなクリスマスを過ごしておられるでしょうか。
    今回が2018年最後の「結城メルマガ」配信となります。
    今年もたいへんお世話になりました。
    新年もよろしくお願いいたします(ぺこり)。

    * * *

    場所と記憶の話。
    結城はあちこちのカフェを移動しながら仕事をしています。
    ある日、何気なく、いつもと違うカフェに行きました。ところが、そこに足を踏み入れたとたん、ぱああっと記憶がよみがえりました。あっ、ここは『数学ガール/ポアンカレ予想』がなかなか進まないときに来てたカフェだ! 書いては消し、書いては消し、もがいていたあのカフェだ……
    「数学ガール」シリーズの第6巻目『数学ガール/ポアンカレ予想』を刊行したのは今年2018年の春。苦労していたころのことはすっかり忘れていました。でも、そのカフェという場所がまるで私の代わりに記憶してくれていたかのように、一気に記憶がよみがえったのです。大変だったときの記憶が。
    過去を振り返り過ぎるのは良くありませんが、自分の過去はすべて順調だったと自己の歴史を改竄するのも良くありません。一つの仕事が完成するまでには、紆余曲折があったこと。どうしても進まない時期があったこと。けれどもめげることなく(何度めげても)続けたこと。そういう記憶は大事です。
    そういう記憶は「現在と未来の自分」を支えてくれるからです。
    私は「どうも最近うまく行かないなあ、これまではいつもうまく行ったのに」という錯覚に陥ることがよくあります。でも、実は、昔だってそれほど順調じゃなかったのです。つまずいたり、ころんだりした。思うように進まないこともあった。進んだと思ったけど、また振り出しに戻ることもあった。でも、ジグザグながらも進んできた。単に自分が忘れてるだけで、実際はそうだった。
    だから、たとえ、最近うまく行かなくても、順調でなくても、つまずいても、ころんでも、思うように進まなくても、振り出しに戻っても、またきっとジグザグながらも進める。過去の、大変だったときの記憶が、現在と自分の未来を支えてくれる。
    その日。久しぶりに『数学ガール/ポアンカレ予想』執筆当時によく使っていたカフェに行ったとき。私はそんなふうに考えていました。大変だったときの記憶をきちんと味わいながら。ほんとに、今年刊行できてよかった……
    ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』http://www.hyuki.com/girl/poincare.html

    * * *

    テキスト+静止画像→動画の話。
    以前から「簡単に動画を作ることはできないかな」と思っています。YouTuberの話題を読んでいると動画の編集はたいへん時間を食いそうで二の足を踏んでいます。
    次善の策として「テキストを自動読み上げした音声と静止画像を組み合わせた動画」はどうだろうと思うことがあります。以前Vol.338の結城メルマガで紹介したAmazon Pollyという自動読み上げサービスはとても手軽で便利です。
    Amazon Pollyでmp3ファイルを作り、静止画像のjpgファイルを用意し、ffmpegというプログラムを動かすと、Twitterに直接投稿できるmp4ファイルが作れます。簡単な手順を以下にまとめました。
    ◆画像ファイル(jpg)と音声ファイル(mp3)から動画ファイル(mp4)を作成する(ffmpegを使う)https://snap.textfile.org/20181129204816/
    ◆テキストから音声を合成し、Twitterで公開できる動画に変換する手順(Amazon Pollyとaudio2videoを使う)https://snap.textfile.org/20180902204857/
    たとえばWeb連載「数学ガールの秘密ノート」の宣伝動画(動いてないけど)は次のようにツイートできます。
    ◆宣伝動画ツイートhttps://twitter.com/hyuki/status/1068114990643593218
    ◆宣伝動画ツイート(スクリーンショット)
    自動読み上げのためにAmazon Pollyに与えたテキストは、静止画像に貼られているものと(改行を除いて)同じです。画像一枚とテキストから自動生成した音声をもとにツイートができるのはなかなか手軽でいいと思っています。
    ◆Amazon Pollyを使って簡単音声合成(結城メルマガVol.338)https://bit.ly/hyuki-mm338
    後ほど、VTuberの話題も少し書こうと思います。

    * * *

    行列の話。
    黒狐さん(@inaba_darkfox)が、『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』に出てくる「行列による線形変換」をヴィジュアル的に表現するWebアプリを作って下さいました。ありがとうございます!
    2×2行列の四つの成分を入力すると、座標平面上に描いたたくさんの点を動かして表示してくれます。
    ◆黒狐さんのツイートhttps://twitter.com/inaba_darkfox/status/1069333381844938752
    ◆線型変換ビジュアライザー(ver3.1)https://inaridarkfox4231.github.io/LT/
    ◆線型変換ビジュアライザーIIhttps://inaridarkfox4231.github.io/LT_2/
    ◆スクリーンショット(2,2,3,1を入力した例)
    このような変換は『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の中でコンピュータ少女のリサちゃんがやってみせたものでした。黒狐さんはそれを実際のWebアプリにしてくださったのですね。感謝です!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://note10.hyuki.net/

    * * *

    教えるときの話。
    「人に教えるときには、何を意識すれば上手に教えられるでしょうか」という質問をいただきました。
    結城が思うに、人に教えるときには「上手に教えること」ではなく「相手がわかること」を目指すのが大事です。
    これは言葉のあやではありません。「上手に教える」というときには意識が「自分」に向かっています。意識を「自分」に向けるのではなく「相手」に向けることはとても大切。教えるという活動では「相手がわかること」がゴールの一つですから。
    極論をいうならば、どんなに下手くそな教え方でも、相手の思考パターンにぴったりと合って「なるほど!」という状態になるならば、それはいいことです。《相手のことを考える》のが大原則といえます。
    「相手がわかること」を考えるなんて、当たり前のように思えますよね。実際、当たり前のことです。でも教える人の多くがこれを忘れています。また、覚えていても実践するのはとても難しいもの。相手のことではなくて、教える側である自分のことだけを考えがちだからです。
    「相手がわかること」を考えるなんて抽象的な話ではなくて、もっと具体的なコツはないのかね……と尋ねたくなるかもしれません。でも、具体的なコツは《相手のことを考える》という原則を真剣に考えると無数に見つかるものです。そして《相手のことを考える》ということが腹に落ちていないと、具体的なコツを知っても効果は激減するでしょう。
    以下のWebページには、結城が考える「教えるときの心がけ」の要点がまとめてあります。
    ◆教えるときの心がけhttp://www.hyuki.com/writing/teach.html
    もちろん、noteにもたくさん書いています(多くは「結城メルマガ」からのピックアップです)。
    ◆教えるときの心がけ - マガジンhttps://mm.hyuki.net/m/md7abcdf8eaf5
    《相手のことを考える》というのは、単純だけど、とても奥が深いスローガンだと思います。

    * * *

    長文をまとめる話。
    Ryoto_Sawadaさん(@Qhapaq_49)が、長文をまとめるサービスIMAKITAを公開していました。
    ◆長文を3行ぐらいで纏めてくれるエンジン IMAKITAを作ってみましたhttp://qhapaq.hatenablog.com/entry/2018/12/09/234447
    さっそく試してみました。結城が書いた文章をIMAKITAで要約させてみます。
    ◆文章を書く心がけ(原文)http://www.hyuki.com/writing/writing.html
    上の「文章を書く心がけ」は約1万2千文字ありますが、5行で要約する(!)と以下のようになります。なかなかいいですよね。
     (「文章を書く心がけ」を5行にしたもの)  したがって、読者のことを考えるのは当然のことと言える。  読者は何を知っているかを考えよう 。  読者は何を知っているだろう。  あなたの文章を「そこまで読んできた」読者は何を知っているだろう。  読者にまずうなずかせよう。
    次に「教えるときの心がけ」(約1万文字)を5行で要約してみましょう。これもいいですね。
    ◆教えるときの心がけ(原文)http://www.hyuki.com/writing/teach.html
     (「教えるときの心がけ」を5行にしたもの)  生徒に安心して質問させるように心がけよう。  生徒はびくびくしている。  生徒はこんなことを考えながら質問しようか迷っている。  生徒に安心して質問させよう。  生徒をおどかしてはいけません 。
    小説のようなものは難しいですが、記事や説明文ならばかなりいい感じに要約されると思います。ぜひあなたも試してみてください。
    ◆IMAKITA Document Squeezerhttps://www.qhapaq.org/imakita/

    * * *

    Skebの話。
    先日Skeb(スケブ)というサービスを知りました。同人作家さんなど、個人として活動しているクリエイタにお仕事を発注できるサービスです。
    ◆Skebhttps://skeb.jp
    ◆同人作家にイラスト発注できる「Skeb」公開 海外からの依頼も自動翻訳、未払い回避もhttp://www.itmedia.co.jp/news/articles/1811/30/news137.html
    このサービスの大きな特徴は、クライアント(発注する側)よりもクリエイタ(作成する側)に大きなメリットがあるように設計してある点ですね。
    短文+自動翻訳による発注(依頼内容の確認などのコミュニケーション負担がない、海外からの依頼も受けやすい)
    リテイクなし(描き直しが発生しない)
    報酬の未払回避(報酬はクライアント先払いで、納品するとクリエイタに支払い)
    権利はクリエイタ側に(クライアントが使えるのは限られた用途のみ)
    もしもこれがうまく回るならばクリエイタ側にとてもいいシステムになりそうです。
    「クライアントは鑑賞目的の他、SNSアイコンなど一部の用途に限り二次利用可能」という制約があるので、大きなイラスト仕事発注用というわけではありません。サービス名の「スケブ」が方向性を明示していますね。同人作家さんなどにスケッチブックを渡してそこに描いてもらうことをスケブ依頼といいますが、Skebはそれのオンライン版なのです。
    Skebのクライアントガイドラインによると「リクエストは140文字以内で入力してください。URLなど外部への誘導は禁止されています。金額は3,000円以上300,000円未満で設定できます」とのこと。140文字でリクエストを出すというのは「ツイートで発注する」感覚といえるでしょう。
    ◆クライアントガイドラインhttps://skeb.jp/client
    Skebのクリエイターガイドラインも大変興味深い。「クライアントは作品の原寸ファイルをダウンロードすることができます。クライアント以外には横幅最大800pxの縮小画像が表示されます」「作品の権利はクリエイターに帰属しますが、作品の販売に関する一切の責任もまたクリエイターが負います」なるほど。
    リクエストに対して「再アップロード不可」だから本当に一発勝負。リテイクは不可能になっています。このサービスは、割り切りが明確なところがポイントなのでしょう。利用規約に併記して「重要なポイント」を併記してあるのはわかりやすいし、好印象です。
    ◆クリエイターガイドラインhttps://skeb.jp/creator
    たとえば、このSkebのサービスを経由して、電子書籍の表紙を描いてもらうのはなかなかいいアイディアかもしれません。「個人利用の範疇を超える二次利用を行いたい場合には、別途クリエイターの許可を取るか、リクエストに記入してください」とクライアントガイドラインにあるので「電子書籍の表紙」はたぶんセーフでしょう。むしろクリエイターさんの方でもそのポイントでアピールチャンスかも。
    結城はKDPの表紙を自分で作っていましたが、こういうところに発注するというのも世界が広がって楽しいかもしれませんね。
    ◆結城浩の個人出版(KDP)http://www.hyuki.com/pub/kdp.html
    このSkebというサービスのポイントに「コミュニケーションをこれ以上削れないくらい減らしている点」があると思います。クライアント、クリエイターどちらにとっても大きな負担になりうる「やりとり」の部分をルールによって回避しています。
    Skebのようなサービスが増えてくるのは、個人クリエイタがマネタイズする選択肢が増えるのでとてもいいことだと思います。それは個人が自分の力を発揮する場面が増えるということであり、また個人のニーズに合わせた多様な働き方を支えてくれることだからです。

    * * *

    そんなところで、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    カスタムキャストで遊んでみました
    計画はどのように立てていますか - 仕事の心がけ
    表現するときの恐怖心に対処する - 本を書く心がけ
    問題を解くときの詰めの甘さを解消する - 学ぶときの心がけ
    カスタムキャストで遊んでみました
    「カスタムキャスト」というのは、3Dのキャラクタを簡単に作り、VTuberのモデルを作ったり、ネット配信を行ったりできるスマートフォン向けのアプリです。
    ◆カスタムキャストhttps://customcast.jp
    結城はいまのところVTuberになる予定はないのですが、こういうおもしろそうなものは一度触れてみたくなります。スクリーンショットを撮るだけで「数学を学んでいる女性のイラスト」を以下のように簡単に作ることができます。ちなみに、この方は数学ガールに出てくるミルカさんではありません(タイプとしては近いですが)。
    ◆Studying epic morphism
    この画像を作るには以下のような手順を踏みました。
    まず、カスタムキャストのアプリで体型、洋服、髪形、表情、眼鏡などを設定し、ポーズを選びます。
    ◆カスタマイズのようす(洋服を選んでいる画面)
    好みの場面が作れたら画像ファイルに落とし、レタッチソフトのPixelmatorで背景を透明にし、以前結城が作った板書の画像と合成します。
    それだけだと、ジャギーがやや目立つ画像になるので、DistressedFXとPixlrという二つのアプリを使ってイフェクトを掛け、雰囲気を出しました。
    先ほどの画像(Studying epic morphism)の製作に掛かった所要時間は合計で30分ほどです。作成に使った道具はiPhoneのみ。 はっきり言って、とても手軽。しかも楽しい!
    結城はいまのところVTuberになる予定はないのですが、本当にないのですが、試しに女性に動きをつけて、Amazon Pollyの音声と合わせた動画を作ってみました。
    ◆最近、結城さんは圏論を勉強しているようですね - YouTubehttps://youtu.be/fJAb7oEZ_Qg
    この女性の口の動きは、Amazon Pollyの音声とはあまり同期していませんが、結城の口の動きと同期しています(リップシンク)。カスタムキャストの機能で、カメラで発話者の口や顔の動きに合わせてキャラクタの動きも同期するのです。上の動画では、Amazon Pollyで合成した音声を結城が耳で聞きながら発声し、リップシンクでキャラクタの口を動かすという迂遠な方法を取っているのであまりうまく行ってないのですね。
    それはそれとして、自分の動きに合わせてキャラクタが動くというのは非常に強い魅力があります。VTuberの動きを見るのと、自分のキャラクタの動きを見るのとでは感覚がずいぶん違います。
    しかも、カスタムキャストで「外カメラAR」にするとリアルな世界を背景にしてキャラクタを表示することもできます。自分の生活空間に、アニメのキャラクタが登場するというのはかなりの衝撃です。リアルな世界の黒板をARの背景にしてキャラクタがしゃべるというのもすぐにできちゃいますね。
    バーチャルな美少女になることを「バ美肉(バーチャル美少女受肉)」と呼ぶそうです。バ美肉して、やさしい数学トークをする……なんて、楽しそうです!
    残る問題は、声です。自分の声で動画配信はあまりやりたくないので、男声女声のリアルタイム変換ができればなあ……実際「バ美肉」を検索すると「ボイチェン(ボイスチェンジャ)」が検索候補に出るので、みんな同じこと考えているのでしょうね。
    結城はいまのところVTuberになる予定はないのですが、もうちょっとで始めたくなるかも……と思う最近の技術進歩です。

    * * *

    すでに、学問的なことを解説するVTuberの活動はさかんに行われています。たとえば以下の「VRアカデミア」ではVTuberのみなさんが、バーチャル講師としてバーチャル空間で講義を行っています。
    ◆VRアカデミアhttps://sites.google.com/view/vr-academia
    講義情報などは、Scrapboxにある以下の「VRアカデミア公式Wiki」を参照してください。
    ◆VRアカデミア公式Wikihttps://scrapbox.io/vr-academia-wiki/
     
  • Vol.351 結城浩/自分の言葉で説明する/数学史/人前で話すために原稿を準備する/再発見の発想法/

    2018-12-18 07:00  
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    Vol.351 結城浩/自分の言葉で説明する/数学史/人前で話すために原稿を準備する/再発見の発想法/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年12月18日 Vol.351
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    * * *

    正十二面体の話。
    正多面体の中では、正十二面体(各面が正五角形のもの)が好きです。
    先日「Dodecahedral Family.」というタイトルで画像を作りました。
    ◆Dodecahedral Family.
    Dodecahedral Familyというのは「正十二面体家族」という意味で付けたタイトルです。この画像を作るときに「カルガモの親子」のようなものをイメージしていました。大きな正十二面体の後を、正十二面体の雛がちょこちょこついてくるようすですね。
    この画像は、QEPrize 3D, Brushstroke, Pixlr という三つのiPhoneアプリを使って作りました。
    ◆QE Prize 3Dhttp://qeprize.org/createthetrophyapp/
    ◆Brushstrokehttp://www.codeorgana.com/brushstroke.html
    ◆Pixlrhttps://pixlr.com/mobile

    * * *

    Web連載で新キャラ登場の話。
    ちょうどひと月前のこと。子供に「今回のWeb連載には『ノナちゃん』という新キャラが出たんだよ」という話をしていました。ついでにWeb連載の解説をして「今回は第241回で、第250回までの10週で1シーズンになっているんだよ」と言ったところ、子供が何か考え始めました。
    「第241回なんて、たくさん書いたんだね。お父さんすごい!」
    ……という反応が来るかと思ってひそかにわくわくしていたところ、子供の反応はこうでした。
     「241は素数だね」

    * * *

    iPhoneで文章を書く話。
    よく感じることなんですが、ソファでくつろぎながら文章を考えているときには、パソコンよりもスマートフォンやタブレットの方がずっと「しっくり」きます。
    一つの理由は、画面と目との距離にあります。iPhoneで書くと、目のすぐそばに画面があるために、物理的に言葉に近づいて書いているような気持ちになるのです(もちろん、視力の問題もありますけれど)。
    もう一つの理由は、両手を使うか片手を使うかの違い。パソコンでキーボード入力するときには両手を上げることになるので「お仕事として書いている感覚」が強くなります。でもiPhoneでフリック入力しているときには片手。それだと「気軽に書いている感覚」に近いですね。
    フリック入力しているときの感覚をもう少し掘り下げると、鉛筆やボールペンを持って「手書きで書いている感覚」にも近いように感じます。これはスピードの問題。
    キーボードでタッチタイピングしていると、とにかく速いんですよ。そうすると手書き感は薄れていき、極端なことを言えば脳から直接言葉を出力しているみたいに感じます。文章が頭に思いついたとたん画面に現れている感覚です。
    それに対して、フリック入力だといったん手を介して書く感覚です。一つ一つの言葉を積み上げていく感じ。タイピングでは文章を出力しているけれど、フリック入力では一文字一文字、せいぜい一単語一単語を重ねていく。
    フリック入力では、心の中に一文が組み上がった後にそれが書き出されていきます。その結果、一文を心の中にキープしている時間が長くなります。タイピングでは、思ったとたんに出力されているから、心の中にキープしている時間が短いのです。フリック入力では心の中で文章を温めている時間が長い……とまで言うと言いすぎですけれどね。
    フリック入力は「手書きで書いている感覚」に近いけれど、でもほんとの手書きだと時間がかかりすぎますし、漢字を思い出すのに時間が掛かるので、いまさら手書きはしたくありません。ということで、ソファでリラックスしながら書いていくのに、フリック入力はよくフィットしていると思います。

    * * *

    新しい本を準備する話。
    先日から「こんな本を書きたいなあ」と考えていた材料がだいぶ貯まってきました。そこで、少しずつ形を作っていこうと思います。特に〆切はないので、長期的に考えたい本のプロジェクトを起ち上げようというのです。
    「こんな本」といっても、まだタイトルも決まっていません。タイトルがなければそのプロジェクトを呼ぶことができません。そこでコードネームをつけることにします。ほら、プロジェクトに「ひみつのコードネーム」があると何だかカッコいいでしょ?
    先日の『C言語プログラミングレッスン入門編 第3版』執筆のときには「ライラック」というコードネームを付けていました。今度の本は「メトロ」にしようと思います。コードネームですから、特に意味はありません。「都市」の本を書くわけでもないし、「東京メトロ」の本を書くのでもありません。単なる名前。
    真面目な話、結城が「執筆する本のプロジェクト」をセットアップするときには、コードネームを決めることが多いです。コードネームを軸にして自分のワークフローを組み立てるのです。たとえば、コードネーム由来の「メトロ(metro)」というコマンドを端末から打ち込むと、執筆作業を行っているディレクトリに移動するようにしておきます。「メトロの仕事をしよう」と思ったらすぐに作業できるようにしたいからです。いわば、プロジェクトの開始呪文です。それを唱えると、ファイル一式が置いてある仕事部屋にテレポートするようなものですね。
    プロジェクトには名前が不可欠です。開始呪文だけではなく、
    作業するフォルダ名
    Scrapboxのプロジェクト名
    Slackのチャンネル名
    Evernoteのノートブック名
    Dynalistのドキュメント名
    gitのリポジトリ名
    生成するPDFのファイル名
    といったたくさんの名前をシステマティックに付けることで「これはこのプロジェクトのためのものである」という意識が明確になるからです。コードネームは、そのようなシステマティックなネーミングの基盤になってくれます。
    最近の結城は、複数のツールを意識して渡り歩いています。そのためにもプロジェクトの名前が決まっていることは大事になります。もちろん現実的にはURLを使って機械的にジャンプすることが多いのですが、名前によって「いま自分は何のプロジェクトをやっているのか」を意識することは大事です。それは仕事に集中する役目も果たすからです。
    さて、そのメトロ本に関する素材を、まずはScrapboxにどんどこ突っ込みました。この本に関してはまだ自分でもよくわかっていません。そういうときにはScrapboxは便利ですね。自分の手元にある情報をとりあえず入れて、ぐるぐるかき混ぜていく感覚があります。あちこち眺めてリンク付けをしているうちに、情報が自然に化学反応を起こしてくれるみたい。そんなこんなで200ページほどになりました。しばらく熟成させてから、また眺めることにしましょう。
    メトロ本、どんなふうに成長していくかなあ。楽しみ、楽しみ!

    * * *

    算数の問題と文章の話。
    たとえば、こんな算数の問題があったとします。
     色紙を30枚持っていました。  友達に9枚あげました。  あとで妹から4枚もらいました。  色紙はいま何枚ありますか。
    30枚から9枚あげて、4枚もらったんだから、30-9+4で答えは25枚。とそれでまったくおかしくはありません。でも、自分の頭を「推敲モード」に切り換えると、気になることはたくさんあります。
    「色紙を30枚持っていました」って、誰が持ってたの? 主語がないよ?
    「友達に9枚あげました」って、色紙をあげたんだよね? 30枚の中からあげたんだよね?
    「あとで妹から4枚もらいました」って、誰がもらったの? 最初に30枚持っていた人がもらったの? それとも友達がもらったの?
    「色紙はいま何枚ありますか」って、誰のところに? 最初の人? 友達? 妹?
    つまり、やや無理矢理ではありますが、問題中のすべての文に疑問符を付けることができます。そしてその疑問符はすべて「問題文で暗黙のうちに伝えられている情報」に対して付けられていることがわかります。
    生徒は、色紙をやりとりするという経験を持っている。そして、情景を想像することで、問題文中の暗黙情報が補完できる。そういう前提がこの問題にはあるように感じました。でもそれは、算数の能力を見てるのでしょうか。
    文章に、言葉を補ってみましょう。
     太郎くんは、色紙を30枚持っていました。  太郎くんは、その30枚の色紙のうち9枚を友達にあげました。  太郎くんは、あとで妹から色紙を4枚もらいました。  いま、太郎くんのところに色紙は何枚ありますか。
    この文章はずいぶん冗長で、通常はここまで情報を補った書き方はしません。でも、読み手が補完すべき情報はずいぶん減ったように思います。
    算数の問題をこんなふうに冗長に書け、という主張ではありません。シンプルに書かれた算数の問題を読むには、常識や補完能力も必要になるんだなあというお話です。

    * * *

    では、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    自分の言葉で説明するとは - 学ぶときの心がけ
    数学史はお好きですか
    人前で話すために原稿を準備する - 文章を書く心がけ
    アダプター - 再発見の発想法
    自分の言葉で説明するとは - 学ぶときの心がけ
    質問
    プレゼンのような場で、先生に何かを説明するとします。
    そのときに先生が「教科書の言葉を借りてくるのではなく、自分の言葉で説明してください」と言います。ここでいう「自分の言葉」というのは、何を指すと思いますか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    「自分の言葉で説明する」を言い換えるなら、
     教科書には説明の文章が載っています。  でも、それを言葉として丸暗記して答えるのではありません。  内容をよく理解し、あなたが理解したことを、  意味を考えつつ自分の力で言葉に変換して答える
    のようになると思います。
    「自分の言葉で説明する」というのは指導する立場の人がふつうに使う表現です。そのときの先生の意図としてはあなたに「理解すること」と「その理解を言葉にすること」をちゃんとしてほしいということになります。理解が追いついていないのに、言葉だけを暗記して「立て板に水」のようなプレゼンをしても意味はないからです。
    「自分の言葉で説明する」ことができる人の特徴をいくつか書きましょう。
    説明する内容を変えずに、言い回しを変えることができる。
    説明するときに、長いバージョンと短いバージョンが作れる。言い換えると「もう少し詳しく」と言われても対応できるし、「要するにどういうことか」と言われても対応できる。
    説明した内容に関して「どうしてそうなの」や「それはどういう意味」と聞かれても答えられる。
    いま列挙したようなことができるのはひとえに「内容を理解している」からですね。
    「自分の言葉で説明する」というのは「その内容を自分がどのように理解しているか、それを言葉を使って明確に示す」のとほぼ同じ意味でしょう。
    以上で、あなたの質問への回答になります。
    ところで、あなたに関してやや心配なことがあります。先生の「教科書の言葉を借りてくるのではなく、自分の言葉で説明してください」という指示はそれほど難しいものではありません。でも、あなたはこの指示の意味がわからなかったのでしょうか。この指示の意味がわからないとすると、私の回答もあなたに伝わってない可能性が高そうです。
    それとも、先生の指示の意味がまったくわからないのではなく「『自分の言葉で説明する』というのは、たぶんこういうことだろうな」という見当は付いているのでしょうか。見当は付いているけれど、念のために質問したというなら、安心です。
    あなたの質問の文章を読む限りは、あなたの疑問、あなたが質問してきた最重要ポイントがわかりませんでした。非難するわけではありませんが、最重要ポイントがわからなかったのは、自分の理解の度合いを書いて下さらなかったからだと感じました。
    「自分としては○○のような意味なのかなと思いましたが、それでいいのでしょうか」のような形だったら、もう少しフォーカスを絞ったお返事ができたかもしれません。
    その内容を自分がどのように理解しているか、それを言葉を使って明確に示す。
    「そういうところ」が、まさに、先生が気になさっているポイントなのだと思いますよ。
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.350 結城浩/数学ガールに数学苦手なキャラクタが登場するという新しいチャレンジ/

    2018-12-11 07:00  
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    Vol.350 結城浩/数学ガールに数学苦手なキャラクタが登場するという新しいチャレンジ/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年12月11日 Vol.350
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    Web連載「数学ガールの秘密ノート」で、数学が苦手な新しいキャラクタ「ノナちゃん」が登場しました。
    結城にとって、新キャラ登場というのは大きなチャレンジです。毎週の作品を書くときに、いろんなことを考えます。
    考えた結果は作品として結実させるわけですが、今回の「結城メルマガ」では、そのプロセスにフォーカスをあて、掘り下げて考えてみました。
    文章を書く人、物語を書く人、そして学んだり教えたりする人にヒントになるものが含まれていると感じます。
    今回の「新しいチャレンジ - 本を書く心がけ」を、ぜひお読みください。

    * * *

    英文和訳の話。
    ある日の夜中02:45にふと目が覚めてTwitterをながめていたら、ファインマン先生のbotによるツイートが目に留まりました。こんな内容です。
     –
    Question authority. No idea is true just because someone says so. Test ideas by the evidence gained from observation and experiment. If a favorite idea fails a well-designed test, it’s wrong!
    https://twitter.com/ProfFeynman/status/1062763528401141760
     –
    「そうだ、英文和訳してみよう」と思い、1時間ほど掛けて和訳してツイートしました。あなただったら、どんなふうに訳しますか。ちょっと考えてみてください。結城の訳文はのちほどお見せします。

    * * *

    論文の話。
    情報処理学会誌「情報処理」で、ミルカさんのセリフが引用されていました。学生会員の質問に答えるコーナーで、論文の新規性や有用性に関する質問の答えの一部です。感謝しつつご紹介します。
    ◆「先生,質問です!」Vol.59 No.12(2018年12月号)https://www.ipsj.or.jp/magazine/sensei-q/5912.html

    * * *

    「機械学習チートシート」の話。
    萩原正人さん(@mhagiwara_ja)が紹介していた「機械学習チートシート」は非常に興味深いです。機械学習に興味がある方はぜひごらんください。
     –
    スタンフォード大学の機械学習コースの要点をまとめた「機械学習チートシート」の出来が素晴らしい https://stanford.edu/~shervine/teaching/cs-229.html 教師あり学習・教師なし学習・深層学習・確率統計・微分積分線形代数などの要点が分かりやすくコンパクトにまとまっているカンペ集。
    https://twitter.com/mhagiwara_ja/status/1062815947252211723
     –
    ◆CS 229 ― Machine Learninghttps://stanford.edu/~shervine/teaching/cs-229.html
    要点をまとめている点と、随所に内容をイメージできるイラストがある点がすごいですね。

    * * *

    「色のシミュレータ」の話。
    浅田一憲氏による「色のシミュレータ」というアプリがあります。ひとことでいえば「自分と異なる色覚特性を持つ人にどんなふうに見えているか」を擬似的に体験できるアプリです。
    資料やパンフレットを作ったとき、自分としては「色をたくさん使って見やすくした」つもりなのに、実は自分と異なる色覚特性を持つ人(つまり色の見え方が異なる人)にとっては「かえって見にくいものになっていた」という可能性があります。
    この「色のシミュレータ」を通すだけで、作った資料やパンフレットが他の人にどのように見えているかを知ることができます。特に「色分けしてわかりやすくしたつもりになっているけど、ほんとにわかりやすくなっているか」を確かめるときに非常に便利です。
    たとえば、結城が書いたWeb連載でx軸とy軸を色分けした画像を以下に示します。x軸は赤色で、y軸は青色にしていますが、色覚によっては赤がはっきり区別できないように見えます。結城は意識して太さも変えて、色覚以外でもできるだけ区別しやすくなるようにしています。
    ◆色のシミュレータの出力画面例(スクリーンショット)
    ◆色のシミュレータhttps://itunes.apple.com/jp/app/id389310222
    ◆浅田氏による他のアプリケーションhttps://itunes.apple.com/jp/developer/kazunori-asada/id388924061
    ◆浅田一憲氏https://asada.website

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    ではそんなところで、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    あっと、その前にさっきのファインマン先生のツイート翻訳を。
     –
    Question authority. No idea is true just because someone says so. Test ideas by the evidence gained from observation and experiment. If a favorite idea fails a well-designed test, it’s wrong!
    https://twitter.com/ProfFeynman/status/1062763528401141760
    権威を疑え。どんなアイディアも、誰かがそう言ったというだけでは真にならない。アイディアは、観察と実験から得られる証拠によってテストせよ。お気に入りのアイディアであっても、正しく設計されたテストにパスしないなら、それは誤りなんだ!
    https://twitter.com/hyuki/status/1062778007453032448
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    最初の「Question」は動詞(「疑え」という命令形)です。その他 idea, true, test, wrong といった簡単な単語でも翻訳するのは難しいと感じます。またそれと同時に、簡単な単語でも深い内容を表せるのだとも思います。勉強になりました。
    目次
    義務教育で数学を学ぶのはなぜか
    新しいチャレンジ - 本を書く心がけ
     *これまでの配信  *読者さんの反応  *どこまで考えて書いているのか  *登場人物の声に耳をすます  *新キャラ登場で作者として考えていること  *どうやってチャレンジに応えるのか  *どのように文章に落とし込んでいくか(木曜日まで)  *どのように文章に落とし込んでいくか(木曜日当日)
    義務教育で数学を学ぶのはなぜか
    質問
    なぜ義務教育で数学を学ぶ必要があるのですか。
    回答
    たくさん理由はあると思いますが、私の思う理由を二つ書きます。
    一つの理由は、数学は、この社会のすみずみまで使われていて、人により深さの差はあるものの、何らかの理解をしておく必要があるからです。利便性や必要性。
    現在の人類が持っている最も大きくて確かな知識の一つといえば「科学」ですが、数学はその科学の土台になっています。数学は、科学の知識を表現するための言葉であるともいえます。
    もう一つの理由は、数学を理解することでもたらされる喜びは、人により差はあるものの、人生を豊かなものにしてくれるからです。審美的、情操的な理由。
    どちらの理由も、日本語や英語を義務教育で学ぶ理由と近いものがありますね。
    以上は数学を学ぶ必要性全般についての回答ですが、特に「なぜ義務教育で」という部分についても回答します。それは、若い時代に基本的なことを学んでおくことで、将来の学びの幅が大きく変わるからだと思っています。
    簡単ですが、以上です。ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.349 結城浩/スマートフォンで絵を/「良問」とは何か/読み飛ばしても大丈夫という自信/「壁」を越えて作品を作り続けよう/

    2018-12-04 07:00  
    220pt
    Vol.349 結城浩/スマートフォンで絵を/「良問」とは何か/読み飛ばしても大丈夫という自信/「壁」を越えて作品を作り続けよう/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年12月4日 Vol.349
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    * * *

    スマートフォンで絵を描く話。
    最近「3Dモデルを作成してそれを絵画風にする」という活動がお気に入りです。といってもイメージが湧かないと思うので例を挙げますね。
    ◆追憶。
    ◆追憶。- Instagramhttps://www.instagram.com/p/BpwWDQ7AwnC/
    この壺は水彩画っぽいですけれど、紙やリアルの筆記具はいっさい使っていません。iPhoneとアプリだけで作ったものです。結城は絵心があまりないのですが、それにも関わらずこんな画像が作れるなんて感動です。
    この絵を作るのに使ったのは、Potteryという「ろくろを回して陶芸作品を作るアプリ」と、Waterlogueという「画像を水彩画風にするアプリ」と、Pixlrという「写真加工するアプリ」の三つです。いずれもiOSで動作するもので、製作時間はわずか20分たらず。しかもごろんと寝転んだままで作ったものです。率直に言いましょう。手軽で楽しい!
    ◆Pottery(陶芸作品を作るアプリ)https://www.idreams.pl/ja/our-products/show/product/21-Lets-Create-Pottery
    ◆Waterlogue(水彩画風の画像処理をするアプリ)http://www.tinrocket.com/apps/waterlogue/
    ◆Pixlr mobile(レタッチ&画像加工アプリ)https://pixlr.com/mobile
    Potteryを使うと以下のような画像を数分で作ることができます。もちろん形や大きさは自分のイメージ通りに指先だけで作れます。リアルに見える壺ですね。
    ◆「追憶。」を作るもとにした3DイメージをPotteryで作る。
    この画像をいったん保存しておき、それをWaterlogueに掛けると水彩画風になります。Pixlrでそれを正方形に切り取って自分のサインを入れると一枚の作品ができあがり!
    20分足らずという短い時間で、陶芸と水彩画を楽しめるなんてすごい時代ですね。
    結城浩のインスタグラムには他にもいろんな「作品」があるので、ぜひご覧下さい。
    ◆結城浩のインスタグラムhttps://www.instagram.com/hyuki0000/

    * * *

    Dynalistの話。
    結城は、アウトライナーとして無料のDynalistを愛用しています。以前はWorkFlowyを使っていたのですが、無料で作れる上限に達してしまったのでDynalistに移行してしまいました。
    ◆Dynalisthttps://dynalist.io
    ずっとWeb版を使っていたのですが、あるときふと「Dynalistにアプリケーション版はあるのかな」と思いつきました。結城は「ふと」思いつくことがしばしばあります。
    MacのApp Storeでちょっと探して見つからなかったので、TwitterでDynalist公式アカウントにダウンロード場所を教えてもらっちゃいました。考えてみれば公式Webサイトに行けばよかったんですね。
    ◆公式アカウントに聞いちゃうの図
    ◆Get Dynalist for macOShttps://dynalist.io/download
    Dynalistのように「さっと使い始めたいツール」はアプリになっていると便利です。というのは、HotKeyのようなショートカット設定ツールを使って、キーボードワンタッチで起動することができるからです。Web版でもURLをもとにしてキーボードワンタッチで起動させることはできますが、タブが開いて二重起動になってしまうことが多いんですよね。
    Dynalistで何をやっているかというと「いろんなこと」です。本の章立てに使うこともあれば、思いついたアイディアメモに使うこともあれば、Web連載の下書きをすることもあります。
    いま現在のDynalistのスクリーンショットを以下に示します。非公開部分はモザイクが掛かっていますが、雰囲気はわかると思います。
    ◆Web連載準備中(Dynalistのスクリーンショット)
    画面の左側にあるのは現在のドキュメント一覧です。Web連載の下書きが何点かと、書籍の章立てが何点か、あとは企画趣旨書や打ち合わせ準備資料などが並んでいます。
    画面の右側は現在選択されている「第243回のWeb連載」のアウトラインが書かれています。最初からアウトラインになっているわけではなく、数学ガールの登場人物の対話を箇条書きにしていきながら、少しずつ舞台のようすが結城自身に見えてくるので、そのつど加筆していくのです。
    企画趣旨書や打ち合わせ資料のような文書の場合には、Dynalistのアウトラインをそのままエクスポートして使います。たとえば編集者にメールで送ったり、プリントアウトして打ち合わせで使ったりするのです。
    でも、Web連載の執筆の場合には、Dynalistのアウトラインをごっそりとエクスポートしてテキストを作るわけではありません。何回か試したのですが、あまりそういう「機械的」な作り方はなじまないようです。 Dynalistで作ったアウトラインをちらちらと眺めながら別途新規にVimでLaTeXファイルを編集していくことが多いですね。
    思うに、結城にとってテキストをキーボードでタイプするというのは「声に出して話す」ことにかなり近いようです。ですから、対話形式の文章であるWeb連載の場合、タイプするという行為を通して話が進んでいくのでしょう。どこかに作ったテキストをポンとコピーしてしまうと、そこから話を続けるのが難しい。いったんタイプし直すとスムーズに話が流れる。なかなかめんどうな話です。
    ツールにエクスポートの機能があるからといって無理に使う必要はありません。あくまで自分がやりたいことをやりたいように進めるための補助をしてくれるのがツールなのですから。
    以上、Dynalistについてのお話でした。
    ◆Dynalisthttps://dynalist.io

    * * *

    数学を学ぶ話。
    結城のところにはよく「大学数学をどのように学んだらいいですか」という質問が来ます。もちろん結城は自分に理解できる限りのお答えをしますが、数学科出身でもないし、数学者でもないので自ずから限界もあります。
    そんな中、可換環論botさん( @CommAlg_Bot )が「大学数学に憧憬を抱いている高校生」の質問に答えているツイートを見かけました。この答えの冒頭に書かれていた「数学はお好きですか?」と「数学を学びたいですか?」という二つの質問に心動かされたのでリンクにてご紹介します。
    ◆可換環論botさんのツイートhttps://twitter.com/i/web/status/1061264209722261504
    質問者は大学数学の習得方法を尋ねているのですが、回答者は習得方法に答える前に「数学はお好きですか?」と「数学を学びたいですか?」という逆質問をしています。結城はこの点はとても大切だなと強く共感しました。
    「この2つがともにイエスなら、学びようはあるものです」と続く回答は、一見精神論のようにも見えますが、実際にはたいへんプラクティカルな答えだなとも思いました。
    「大学数学を学ぶこと」についての回答全体については、上記のリンクからたどってください。

    * * *

    note(ノート)の話。
    結城のnote(ノート)のフォロワーさんが二万二千人を越えていました。ここしばらくフォロワー数をチェックしていなかったので、そんなに増えていたなんてびっくりです! フォローしてくださる方々に感謝です。
    ◆結城浩のnote(ノート)https://mm.hyuki.net
    Twitterでのフォロワーさんが47000人であることを考えると、noteでのフォロワーさんが22000人という凄みがよくわかると思います。
    少し調べてみたところ4年前は約2000人でした。それを考えると22000人というのはすごい増加ですね。きっとこの背後にはnote自体のユーザ数が大きく増えているという要因もあるのでしょう。
    ユーザの伸びを考えると「結城メルマガ」をnoteでもホスティングするようにしたのは、なかなか良いチョイスだったとわれながら思います。読者さんにとっては選択肢を増やすという意味で、私にとっては購読者さんを増やすという意味で良いチョイスでした。
    結城浩のnote(ノート)は、当初はnote.muドメインでやっていましたが、いまは結城が持っているmm.hyuki.netドメインで運営しています。mm.hyuki.netをnoteにホスティングしてもらっている形ですね。これはnoteの販売機能を自分のドメイン下で運営しておくと何かと便利かもしれないなと思ったからです。
    でも、まあ、現在のところ販売機能として使っているのは「結城メルマガ」と「結城浩ミニ文庫」くらいですけれど。
    ◆結城浩ミニ文庫http://www.hyuki.com/mini/
    将来的にnote(ノート)がSuzuriやBOOTHのような物販を扱わないかなあと期待しています。

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    アフリカのことわざの話。
    あるときこんなツイートを見かけました。
    「アフリカのことわざ」さん(@africakotowaza)のツイートです。
    ◆「月の動きはゆっくりだけど、かならず町をよこぎります」 ガーナ(アシャンティ人)https://twitter.com/africakotowaza/status/1060088973261860864
    「月の動きはゆっくりだけど、かならず町をよこぎります」 というのは短い一文ですが「はっ」とさせられました。納得感とその情景とが相まって、なんともいえない味わいがあります。こういうの、いいですね。
    『アフリカのことわざ』は本になっているようですよ。
    ◆『アフリカのことわざ』https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4809415937/hyuki-22/

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    ではそんなところで、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    「良問」とは何か - 学ぶときの心がけ
    読み飛ばしても大丈夫という自信を身につけたい - 学ぶときの心がけ
    「壁」を越えて作品を作り続けよう - 本を書く心がけ
    「良問」とは何か - 学ぶときの心がけ
    質問
    現在、高校生で受験勉強中です。予備校や参考書(問題集)で「良問」と書いてることがありますが「良問」とはどのような問題のことをいうのでしょうか。
    そんなこと気にしている場合じゃないのはわかっていますが、どうしても気になってしまい、誰に聞けばいいのかわからなくて……
    回答
    「良問」とは「この一問から大切なことが学べるので、しっかりと時間を掛けて取り組む価値がある問題」というものではないでしょうか。
    問題に取り組むのは時間が掛かります。せっかく時間を掛けるのだから、得るものが多かったり、よいものを得られる問題にチャレンジしたいですよね。「良問」という名称は「取り組む価値がある問題」に付けられるものだと思いますよ。
    逆に「良問じゃない問題」を想像してみます。計算がややこしいだけの問題や、思いつきで作られたような問題や、特殊すぎて応用が利かない問題などは「良問」とはいわれないでしょうね。
    言い換えるなら「良問」と言われる問題からは得るものがあるので、解いたあとの振り返りが大事でしょう。問題を解いて、解答を確かめておしまい!じゃなくて「この問題から結局わたしは何を得たのかな」と考えるということです。
    基本問題や例題からは得られない応用例となっているのか、公式の意外な使い方を示しているのか、より難しい問題に向かうための技法を解説しているのか……具体的にはわかりませんが「何か」大事なものが語られているはずです。
    別の方から「結城先生がこれまで出会った中での最良の問題はなんですか」という質問もいただきましたので、それにも回答しておきます。
    受験勉強とは直接関係がないのですが、結城が出会った最高の「良問」というと、中学校に入学して算数が数学になった最初の授業で出会った問題ですね。それは、最初の授業のしょっぱなに先生が発した「1とは何ですか」という問いです。
    いま気付いたことがあります。先日刊行した『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の冒頭でユーリが「ねー、お兄ちゃん。ゼロって何?」と尋ねます。もしかしたらこの背後には、いまお話しした「1とは何ですか」という問いの存在があったのかもしれません!
    受験勉強お疲れさまです。風邪など引かないようにがんばってくださいね。