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記事 84件
  • Vol.383 結城浩/能力の低さにイライラ/ストーリーが思いつかない/学ぶことのモチベーション/動機付けの多様性/心の機微を理解/

    2019-07-30 07:00  
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    Vol.383 結城浩/能力の低さにイライラ/ストーリーが思いつかない/学ぶことのモチベーション/動機付けの多様性/心の機微を理解/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年7月30日 Vol.383
    目次
    能力の低さにイライラしてしまう - 仕事の心がけ
    小説執筆に憧れているがストーリーが思いつかない - 文章を書く心がけ
    学ぶことのモチベーション - 学ぶときの心がけ
    動機付けの多様性 - 教えるときの心がけ
    心の機微を理解したい - コミュニケーションの心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつもご愛読ありがとうございます。
    * * *
    映画『天気の子』の話(ネタバレなし)。
    先日、彼女(妻)と二人で映画『天気の子』を観てきました。
    三年前『君の名は。』も彼女と二人で観ましたので、あれから三年も経ったんだなあとしみじみ感じながら、新海誠監督の美しい画面と、RADWIMPSの音楽を堪能してきましたよ。
    私たちが観たのはシネコンの中でも小さなスクリーンでしたが、スクリーンの大きさはまったく気にならず楽しめましたね。
    ◆映画『天気の子』公式サイトhttps://tenkinoko.com/
    映画公開に合わせてだと思いますが、アマゾンのプライムビデオでも新海誠監督作品が無料で視聴できるようになっていますね。結城は連作『秒速5センチメートル』の二つ目「コスモナウト」が大好きです。
    ◆『秒速5センチメートル』(アマゾンプライムビデオ)https://amzn.to/312pVew
    また「靴を作る」というメタファーが切なくも美しい『言の葉の庭』もいいですね。
    ◆『言の葉の庭』(アマゾンプライムビデオ)https://amzn.to/32WvkFD
    * * *
    仕事の種まきの話。
    「仕事の種まきをする」という表現があります。
    すぐに収入にはならないし仕事にも結びつかないけれど、将来になって芽が出て花が咲き実がなることを期待する活動のことです。
    ところで、いったん種が育って実を取り入れるころになると、自分が種まきしたときのことを忘れていることが多いもの。何だか昔から育っていた気分になるのです。あるいは、自分が最初から実がなることと確信して活動していたような錯覚に陥ることもあります。
    昔から大きい実がなっていて、最初からすべてがうまくいって、紆余曲折がなくスッと成功した……そんな気になってしまうのです。
    それって、きっとまちがった認識ですよね。
    いまは実を取り入れているけれど、昔はただの種だったことを思い出しましょう。育った種もあれば、そうでない種もあります。最初から大きな実がなる種だけをまいていたのではないことを忘れないようにしましょう。
    しっかり、思いだす。
    しっかり、覚えておく。
    さもないと、次の種まきに失敗するからです。
    * * *
    タバコの話。
    先日、公園でCMみたいな一場面に出くわしました。
    小さな孫娘に久しぶりに会ったらしいおじいちゃん。抱っこしたとたん「おじいちゃんタバコくさい!」と孫娘に嫌われていました。
    おじいさん、しょぼん……
    でも実際、タバコを吸っている人は吸っていないときも「タバコのにおい」がしていることがあります。
    電車で隣に座った人からタバコのにおいがしてびっくりしたけれど吸っているわけではない、ということが何回かありました。
    煙だけじゃないんですよね。
    * * *
    ちゃんと読めばわかるのかしら、という話。
    「数式まじりの文章はなかなか読めない」という状態を画像で表現してみました。
    ◆Statements.
    数式まじりの文章がこんなふうに「わけがわからないもの」に見えている人も多いだろうな、と想像します。こんなふうに見えている人に対して、やみくもに「ちゃんと読みなさい!」と言ったり、「しっかり読めばわかるでしょ!」と言ったりしてもしょうがありませんね。
    少しずつ解きほぐしたり、恐怖感をやわらげたり、読める部分を探したり……そんな工夫なしに「ちゃんと読みなさい!」と言われても、どうしようもありません。
    学ぶ人の状態を知らないことには、的確な指導はできないでしょうねえ。学校の先生の努力には頭が下がります。
    * * *
    人間関係を壊さないための投資の話。
    ずいぶん昔の話です。
    出かけていた彼女と駅で夕方待ち合わせて買い物して帰るという場面がありました。
    その日の私はたまたまコーヒーを飲み過ぎていて気分がやや悪く、しかも夕方で疲れていました。しかもノートパソコンの電池が少ない中で編集部と細かいやりとりをしていたところに、彼女から帰宅時間の通知が来たのです。
    カフェイン摂取多め。血糖値低め。バッテリー少なめ。仕事多め。その状態で、疲れた私が疲れた彼女を迎える……
    (ここで思案)
    私は、彼女と会う前にコンビニで小さなスイーツを買ってモグモグ。
    ふう、と一息つく。血糖値アップ。
    疲れた彼女をにこやかに迎え、買い物を二人でなごやかにすませて帰宅することができました。
    帰宅するまでのあいだには、駐車券の紛失や、待ち合わせ場所の誤認や、重い荷物の倍増や、サービスカウンターの大混雑……といった障害があったにも関わらず、私は彼女の疲れを増す失言をしないで済みました。疲れながらも二人でねぎらいつつ帰宅できたのです。
    私の人徳ではありません。
    あのときの「小さなスイーツを買ってモグモグ」が大正解でした。
    人間関係を壊さないための投資、129円(税込)。
    * * *
    では、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
     
  • Vol.371 結城浩/創造性はみんなにあるか/何をやってもうまくいかない/高校時代の勉強/目標の公言/登場人物と仲良くなりたい/パラレリズム/

    2019-05-07 07:00  
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    Vol.371 結城浩/創造性はみんなにあるか/何をやってもうまくいかない/高校時代の勉強/目標の公言/登場人物と仲良くなりたい/パラレリズム/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年5月7日 Vol.371
    目次
    パラレリズムで生じる「飽き」の解消 - 文章を書く心がけ
    創造性はすべての人にあるのか
    目標を公言するのがこわい - 仕事の心がけ
    何をやってもうまくいかない状態を抜け出すには
    高校時代にどのくらい専門的な勉強をしていたか - 学ぶときの心がけ
    ルート2は存在するのか
    自分の書く物語の登場人物と仲良くなりたい - 文章を書く心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    ようやく『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』の第5章までレビューアさんに送りました!
    あとはエピローグなど。がんばろう、がんばろう!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』https://bit.ly/hyuki-note11
    今回の結城メルマガ、どうぞごゆっくりお読みください。
     
  • Vol.362 結城浩/やりたいことがあるけれど時間が足りない/数学の点数が取れない/再発見の発想法/対話形式の困難/言葉の行き先/

    2019-03-05 07:00  
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    Vol.362 結城浩/やりたいことがあるけれど時間が足りない/数学の点数が取れない/再発見の発想法/対話形式の困難/言葉の行き先/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年3月5日 Vol.362
    目次
    アルバイトについて
    数学トークと《対話》について - 文章を書く心がけ
    やりたいことがあるけれど時間が足りない
    評価関数 - 再発見の発想法
    数学の点数が取れないので得意と言いにくい - 学ぶときの心がけ
    言葉の行き先と着地させない問いかけと - 文章を書く心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    この冬は寒くありませんねえと思っていたら、三月になって急に寒くなりました。寒い寒い。
    三月はいろんな人にとって変化のときですね。新しい何かが始まる。新しい何かに切り替わる。そんなときを迎えている人が多いと思います。
    あなたはいかがですか。

    * * *

    マグカップの話。
    「結城浩のマグカップ」を作りましたというお話は、先週の結城メルマガにも書きました。
    ◆結城浩のマグカップ
    ありがたいことに、さっそくたくさんの方からご購入いただいています。ありがとうございます。
    ところで、Twitterで宣伝するときに、文章をこんなふうに書きました。
    >>>
    おしゃれでかわいい結城浩のマグカップです。私も自宅で使っています。左手で持つと数式は相手に向かい、右手で持つと数式は自分に向かうようにデザインしました(はーと)
    ◆ツイートのスクリーンショット(一部)
    <<<
    この文章、まちがったことは書いていないのですが、大事なことを書いていません。書いていないのは、
     このマグカップは一般の方が購入できるものです。  リンク先で売っていますので買って下さいね!
    というメッセージです。「買えます。買ってください!」と書いていないのです。実際、複数の方から「このマグカップは購入できるんですか」というご確認や質問をいただいてしまいました。わかりにくくてごめんなさい!
    購入してくださると、その一部は結城の収入になりますので、ぜひ買ってください!(明示的に書いていくスタイル)
    ◆結城浩のハートとシグマ マグカップ - SUZURI(スズリ)https://suzuri.jp/hyuki0000/1613145/mug/m/white

    * * *

    確率の話。
    先週からWeb連載「数学ガールの秘密ノート」で新しいシーズンが始まりました。今回は「確率の冒険」と題して《確率》がテーマになります。
    ◆「確率の冒険」シーズンのイメージカット(トランプのクイーン)
    数学で多くの方が苦手と感じる分野はありますが、《確率》はまちがいなくその一つに入るでしょう。その理由の半分は《場合の数》に関係しているからで、もう半分は「何かが起きるか起きないかという不確かなもの」を確かさの権化のような数学で扱う意味の難しさがあるのだと思います。
    実際、確率の計算はできるけれど、そこにどんな意味があるのかがわからないと感じる人もたくさんいらっしゃるでしょう。
    「確率の冒険」シーズンでは、いつものように本当に基本的なところから素朴な疑問を通して《確率》に迫ってみたいなと思っています。もちろん、迫っていくのは数学ガールの登場人物たち。結城は彼女たちの思考や発想をていねいに追いかけていくのです!
    第1回目は「二回に一回起きるとは」(前編)です。「コインを投げたときに表が出る確率が1/2である」とはどういう意味かを考えていきましょう。
    ◆確率の冒険:二回に一回起きるとは(前編)https://bit.ly/girlnote251
    「数学ガールの秘密ノート」はひとつのシーズンが十週間に渡ります。ぜひ応援よろしくお願いいたします。毎週最新回は一週間無料で読めますので、リンクを宣伝していただければうれしいです。もちろん、cakesの有料会員になって結城のページを読んでいただくことも直接的な助けになります(明示的に書いていくスタイル)。
    ◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」https://bit.ly/girlnote

    * * *

    レビューア募集の話。
    結城は現在「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第11冊目、
     『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』
    という本を執筆中です。数学とプログラムの話題が入り交じった対話形式の物語になります。本書の執筆にあたり、この原稿を読んでレビューしてくださる方を募集しています。
    以下のリンク先に書かれていることをよくお読みの上、もしもやってみたいというお気持ちがあるならば、ぜひご応募ください。
    ◆レビューア募集『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』https://math.hyuki.net/20190301120025/
    募集開始は3月1日でした。3月4日現在十数名の応募があるという状況です。先着順や抽選ではありませんが、ご参考まで。
    〆切は2019年3月15日(数学の日の次の日)になります。

    * * *

    空腹感の話。
    つらいとき、ストレスかかったとき、どうしても食べ過ぎちゃう人は多いと思います。
    食事のときにお腹に手を当てて「自分、お腹空いてるかな?」と問うと、自分にストレスがかかっているのかどうかわかるかもしれません。
    「胃袋を埋めるため」ではなく、「心を埋めるため」に食べようとしているかどうか。
    「空腹感をなくすため」ではなく、「空虚感をなくすため」に食べようとしているかどうか。

    * * *

    古今和歌集の話。
    結城はnoteで「古今和歌集を読む」というマガジンを不定期連載しています。
    ◆古今和歌集を読む - notehttps://mm.hyuki.net/m/mfa4fe40c022b
    古今和歌集からおもしろそうな歌を見つけては現代語訳をつけて文法事項を簡単に解説する短い読み物集です。
    先日から、noteに掲載したものを、少しずつScrapboxに転載しています。といってもnoteを削除しているわけではありません。Scrapboxに記事を載せてリンクをつけていくと、さくさくとネットワークが作られていくのが楽しいのです。
    また、文法事項をリンクすると、あちこちの歌に出てくる同じ項目がまとまりを見せてくれるのもうれしいですね。まだほんの少しですけれど、長い目で見ていただければと思います。
    ◆古今和歌集を読む - Scrapboxhttps://scrapbox.io/kokin/
    ◆「推量の助動詞」という項目を介して「なむ」と「らむ」が自然に結びついたようす(スクリーンショット)

    * * *

    インタビュー記事の話。
    結城がインタビューされている記事が、技術評論社刊行『WEB+DB PRESS Vol.109』(2019年2月23日発売)“at the front”のコーナーに掲載されています。
    インタビューアはフリーランスの竹馬光太郎さん(@mizchi)で、以下のような話題を話しています。
    執筆一本で食べていけるのか?
    「無駄」な作業が良い本を生む
    技術書典は書き手と読み手をつなぐ
    「読者」というテキスト処理系
    良い文章を書く原則はたった一つ
    ぜひ、お読みください(以下のリンクはアマゾンの電子版です)。
    ◆『WEB+DB PRESS Vol.109』https://www.amazon.co.jp/dp/B07NW8637Q/?tag=hyuki-22

    * * *

    それでは今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    アルバイトについて
    質問
    結城先生は、学生時代にアルバイトをやっていましたか。
    もしもやっていたら、どんなバイトだったか教えて欲しいです。あと「こういうバイトやっとくといいかも」みたいなのがありましたら教えてください。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    学生時代にやったアルバイトは、家庭教師とちょっとした原稿書きくらいですね。それほどたくさんバイトはしませんでした。
    「やった方がいいバイト」は具体的には思いつきません。強いて言うなら、自分が特に「どうしてもこれはやってみたいと思うバイト」や、「自分が学んでいることに関連性のあるバイト」は悪くないと思います。
    「やらない方がいいバイト」は思いつきます。できるならば「自分の時間を売るだけのバイト」は避けた方がいいと思います。
    それから、バイト先の場所柄や、バイト先の雰囲気には十分に注意しましょう。直観的に、あなたが「雰囲気が良くないぞ」と感じたり、「何だかギスギスと荒れた感じだな」と感じるところは注意深く避けた方がいいと思います。
    若い時代というのは感受性が豊かなものです。その分、誘惑も大きく、経験が浅いのでうまくかわせない可能性もあります。その結果、たとえばバイト先に集まった人から良くない影響を受けてしまう可能性が高いと思います。
    それから、「親や友人に言えない類のバイト」は避けましょう。
    学生にとってバイトは貴重な収入源ですが、できれば長期的な視野に立って選んでほしいと思います。投資と同じです。自分が何と引き換えにそのお金を手に入れているか。自分を損なうことがないか。老婆心ながら気になります。
    以上、参考になれば。
     
  • Vol.359 結城浩/職場を選ぶとき/気になる異性/共同執筆を支える技術/教える側が最初に伝えるべきこと/専門書の読み方/

    2019-02-12 07:00  
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    Vol.359 結城浩/職場を選ぶとき/気になる異性/共同執筆を支える技術/教える側が最初に伝えるべきこと/専門書の読み方/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年2月12日 Vol.359
    目次
    共同執筆を支える技術 - 文章を書く心がけ
    気になる異性の注目を集めたい
    教える側が最初に伝えるべきこと - 教えるときの心がけ
    専門書の読み方 - 学ぶときの心がけ
    職場を選ぶとき、就職や転職を決断するときには何が重要か - 仕事の心がけ
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    寒いです。
    このあいだまで「確かに暖冬だなあ」や「あまり冬という感じがしない」と思っていたのがウソのようです。
    寒いです。
    気温の変化、気候の変化、気圧の変化は、心と身体に負担になるので注意しつつ進みたい今日このごろです。
    あなたも、どうぞお身体を大事にしてくださいね。

    * * *

    ファンタジーの効用の話。
    先日私は、とあるお店で「○○味噌」を探していました。愛用している特定の銘柄のお味噌です。いつもはこのお店にあるのですが、今日は見つかりません。
    そこで店長さんに尋ねました。以下、私と店長さんとの会話。
     私「〇〇味噌が棚にないんですが、在庫もないんですか」  店長「ないですねえ」  私「いつ入荷しますか」  店長「すみません」  私「いつ入荷しますか」  店長「今週は入りませんねえ」  私「来週は入りますか」  店長「ご迷惑おかけします」  私「来週は入りますか」  店長「売り切れておりますので…」
    私は○○味噌の入荷時期を知りたかったのですが、店長さんはかたくなに入荷時期を言いません。もしも来週に入荷するなら待つけれど、入荷しないなら別の味噌を購入したい。ところが、入荷時期がわからなければ判断できません。
    どうしてこの店長さんは入荷時期を言わないのだろう!と解せない気持ちになりました。
    それと同時に、こんなふうに思いました。
    もしかしたら、この店長さんは幼少期に「お味噌の入荷時期を言ってはいけない魔法」を悪い魔女からかけられてしまったのかもしれない! だとしたら、入荷時期を言わないのも納得だなあ……
    「お味噌の入荷時期を言ってはいけない魔法」というのは、グリム童話の「いばら姫」(眠れる森の美女)の物語に似ていますね。お城の地下室にはお味噌が醸してある。そこに入った幼少期の店長はついうっかり蓋を開けてしまう……などと空想が広がりました。悪い魔女の造形は実写版のディズニー映画『マレフィセント』で行きましょう。
    そのようにファンタジー風味で考えると、コミュニケーションのイライラが緩和されるのでお勧めです。
    不思議なことに、この店長さんとの会話を続けているうちに、店長さんの様子から「入荷時期は来週になることがほぼ確実だけど、もしかしたら再来週になってしまう可能性もある。どちらになるか確実なことはいえない」という気配を感じ取ることができました。人間のテレパシー能力ってすごいです。
    ところで内緒の話ですが、私も編集者さんからの問いに対して、この店長さんと同じような返答をする場合があることに気付きました。
     編集者「いつ脱稿になりますか」  私「だいぶコアになる部分はつかめてきました」  編集者「いつ脱稿になりますか」  私「あとはこの章を突破すれば」  編集者「いつ脱稿になりますか」  私「えーと……」
    私は幼少期に「脱稿時期を言ってはいけない魔法」を悪い魔女から(以下略)。
    真面目な話をすると、入荷時期を聞かれた店長さんと、脱稿時期を聞かれた私とは同じ誤りに陥っています。それは自分を守る方に意識が向かい、質問者のことを考えられなくなっているという誤りです。質問者は状況を知りたいと思っている。もちろん早いに越したことはないけれど、状況がわからないことには判断を下すことができない。でも回答者は質問者の意図にまで気を回すことができず、口ごもってしまう。そういう誤りですね。
    結論? ○○味噌は、次の週に無事入荷しましたよ!
    めでたし、めでたし。

    * * *

    では、今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞごゆっくりお読みください。
    共同執筆を支える技術 - 文章を書く心がけ
    ブログ記事の紹介です。
    『ゼロからわかるRuby超入門』(五十嵐邦明+松岡浩平)という書籍の著者の一人、松岡さんが、Qiitaで「執筆活動を支える技術」という記事を公開しています。
    ◆執筆活動を支える技術https://qiita.com/machu/items/4a133e83f58f82459e56
    ◆『ゼロからわかるRuby超入門』https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07KQXFF6D/hyuki-22/
    この記事では「複数人が共同して作業をするためにどのような技術を使ったか」が以下の四ステップに分けられて具体的に書かれています。
    原稿を書く (Asciidoc, Atom, Visual Studio Code)
    共有する (GitHub, Slack)
    HTML/PDF形式に変換する (Rakefile, CircleCI)
    限定公開する (docker, nginx)
    この記事は、書籍執筆者、編集者、技術文書の関係者は必見でしょう。簡潔ではありますが、どんな道具をなぜ使ったかという知見が書かれています。たとえここに書かれていることが自分の環境では実現できなくても、その精神や考え方を自分の執筆・編集作業に取り入れることは有益でしょう。
    この記事を見ていると、技術の力は個人のパワーを増幅させて、さらに技術を使える人が複数人集まるとそのパワーがさらに何倍にもなるということがよくわかります。
    この記事を読みながら、大事なのは「Slackを使ったからうまくいく」や「GitHubを使ったからうまくいく」という話ではないのだろうと思いました。「執筆者たちが自分たちのワークフローを考え、適切なツールを選んだからうまくいく」ということではないでしょうか。
    この記事のあちこちに「この技術を選んだ」や「こういうやり方もできるが、それは選ばなかった」ということが書かれています。そのような選択ができること自体が技術力の一つでもあるなと思いました。技術力があるというのは、自分たちには何が適切なツールなのかを判断できるということでもあるのです。
    また、執筆者たち・イラストレータ・編集者との間に信頼関係があるから、この記事に書かれているようなコミュニケーションがうまくいくのだろうとも思いました。それは、記事中に示されたやり取りの例を読みながら感じたことです。ある程度以上の信頼関係がなければ、いくらツールを揃えてもこうはいかないでしょう。
    そもそも「今回私たちはこういうやり方で執筆を進めました」という記事を書けること自体がすごいことです。なぜなら、執筆の内容を意識するだけではなく、執筆の進め方も意識している証拠ですから。プログラミングが得意な人は、そのようなメタな発想が得意な人が多いと私は感じています。
    ◆執筆活動を支える技術https://qiita.com/machu/items/4a133e83f58f82459e56
    なお、以下はイラスト担当のべこさん(@becolomochi)視点からの別記事です。
    ◆Ruby超入門のかわいいキャラクターたちが生まれるまでhttps://note.mu/becolomochi/n/nbfac9ad3a8d0
     
  • Vol.339 結城浩/現役で大学に行く意味/自分本位な恋愛ばかり/プログラムの読解/執筆と校正/心が落ち込むときの対処法/

    2018-09-25 07:00  
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    Vol.339 結城浩/現役で大学に行く意味/自分本位な恋愛ばかり/プログラムの読解/執筆と校正/心が落ち込むときの対処法/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年9月25日 Vol.339
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    先週『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の再校読み合わせが無事に終わりました。これで原稿は私の手からほとんど離れたことになります。あとは10月の刊行を待つのみです。
    この本は『プログラマの数学 第2版』と『数学ガール/ポアンカレ予想』に引き続き、今年三冊目の本となります。私の作業ログで調べてみますと、連載の原稿から本に直す作業を始めたのは昨年2017年の七夕でした。途中他の本の作業をしていたとはいえ、一年以上時間が掛かっていることになりますね。
    さらにさかのぼりますと、今回の「行列が描くもの」シーズンをWebで連載していたのはなんと2015年の春です。三年以上も前のことなのですね。昔まいておいた種がようやく花を咲かせて実を結びつつあるような、そんな気持ちになりました。実りの秋です!
    もちろん、このように長期的な活動をすることができているのは、応援してくださるあなたがいらっしゃるおかげですね。いつもありがとうございます!
    ◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』https://bit.ly/hyuki-matrix
    では、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
    目次
    大学に現役で入ることに意味はあるか
    カフェで仕事をする理由 - 仕事の心がけ
    自分本位な恋愛ばかりしてしまう
    プログラミングにおける「読解」とは何か
    執筆と校正でどちらが難しいか - 文章を書く心がけ
    「本を読んで勉強する」とはどういうことかわからない - 学ぶときの心がけ
    三十代なかば、専門とは無縁の社会人をしているが、趣味を越えて理系的なことがらに関わりたい
    心が落ち込むときの対処方法 - 仕事の心がけ
    大学に現役で入ることに意味はあるか
    質問
    大学に現役で入ることに、どのような意味があるんでしょうか。
    現在わたしは受験生です。現役でとりあえず大学に行くのか、それか一年間ほど図書館でたくさん本を読んだり、アルバイトやボランティアのような活動をしてみたりと、大学に行く前にクッションを置くのもありかなと思っています。
    ただ、これは大きな決断だと思うので、どうしようかと迷っています。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    大原則としていいたいのは「大学に行くのは義務でもなんでもない」ということです。ですから、あなたの好きに考えて好きに行動してかまいません。ただし、あなたの生活費を出しているスポンサー(多くの場合は親)との相談を忘れないようにしましょう。
    でも、あわてて言い添えておきますが、もしも私がそのような相談を子供から受けたら「あなたはちゃんと考えているのか」とうるさいくらい聞くでしょうね。
    「受験は自分に何の意味があるのか。大学に行くことの意味とは何か。実は大学など行かずに○○した方が いいのではないか」というのは受験生がほぼ確実に考えることの一つです。ありふれた問いといってもいいです。
    もちろんそのような問いはとても大切なことです。しかしながら、受験勉強をするのが単に嫌だからそういってるだけなのか、自分の人生についてちゃんと考えようとしているかの判別は非常に難しいです。
    ちなみに結城も受験生時代に同じようなことを考えましたが、いま振り返ってみると、単に受験勉強が嫌になったときにそう考えただけでした。その証拠に、具体的な計画とその妥当性についてはまったく考えたり、調べたりせずに「受験に意味なんてあるのかなあ」とぼんやり考えていただけでしたから。
    あなたは「大学に行く前にクッションを置くのもありかな」と軽く書いていますが、受験勉強には「勢い」も必要です。一年間「クッション」を置いて自由に過ごしたとして、あなたはいつから受験勉強を再開するのでしょうか。一年間過ごした後、準備ゼロで受かる大学を目指すのでしょうか。一年間過ごした後、一年間受験勉強をするなら、あなたが大学に行くのは二年後ということになりますね。
    何の制約もなく、自由に過ごした後、受験勉強を始めるというのはよっぽど意志が強い人でないと難しいと思います。夏休みの途中で宿題をすべて終えるような意志が必要じゃないでしょうか。あなたは自己分析してみていかがですか。
    自由に過ごすときこそ、よく練った計画が必要です。
    カフェで仕事をする理由 - 仕事の心がけ
    質問
    結城さんはいつもカフェでお仕事なさっているようです。どうしてコワーキングスペースではなくカフェを使っているのでしょうか。コワーキングスペースの方がWiFi環境もよく、静かで、コストもあまり変わらないように思うのですが。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    なぜだろう、と考えてみました。すぐに思ったのは……
    コワーキングスペースだと、まわりがみんな仕事していて、会社に行ってるみたいなんだもん!
    ……という理由でした。仕事をしてもいいし、しなくてもいいけれど、そのような環境の中であえて仕事している自分はなんてえらいんだろうと錯覚したいのかもしれません。
    まあ、そこまでいわなくても、コワーキングスペースのような「仕事せざるを得ない環境で仕事をする」というのは逃げ場がなくてちょっとつらいです。
    結城は、カフェなどで提供されているWiFiは使わず、必ず自分が用意したモバイルルータのようなネット環境をつかっています。ですから、WiFiが充実しているかどうかは無関係です。
    また仕事中はまわりがどんなにうるさくても影響することはほとんどありません(実はこの原稿もカフェで書いているのですが、すぐそばで赤ちゃんが大泣きしています)。
    カフェはあちこちにあるので飽きたら移動して気分を変えることができるというのもメリットですね。また「この仕事をするときにはこのカフェ」のように仕事ごとにカフェを決めていたこともあります。
    ちなみに結城のカフェ代の一部は、pixivFANBOX経由で支援者の方からサポートいただいており、大変助かっています。感謝!
    ◆「結城浩のカフェ代支援」プラン - pixivFANBOXhttps://www.pixiv.net/fanbox/creator/24344450/post/11147
     
  • Vol.321 結城浩/チームで仕事/大学院へ進む/いい編集者とは/わかりやすく教える/愛し合うために/

    2018-05-22 07:00  
    216pt
    Vol.321 結城浩/チームで仕事/大学院へ進む/いい編集者とは/わかりやすく教える/愛し合うために/
    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年5月22日 Vol.321
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    先日、こんなツイートを見かけました。
    ◆龍谷ミュージアム前館長のつぶやきhttps://twitter.com/tirisawa/status/995199021412057088

    学生諸君には「学問を愛する人」になってもらいたいと思っています。社会人になっても「学問のアマチュア」でい続けてほしいのです。「アマチュア」の語源はラテン語のアマートル。「愛する者」という意味です。学問は人生に豊さをもたらし、謙虚さを身につけさせます。彩りある人生を

    結城は「アマチュア」が「愛するもの」という意味だというのは知らなかったので、ネットにあるオックスフォードの辞書で「amateur」という単語の語源(Origin)を調べてみました。
    ◆amateur - English Oxford Living Dictionarieshttps://en.oxforddictionaries.com/definition/amateur

    Origin


    Late 18th century: from French, from Italian amatore, from Latin amator ‘lover’, from amare ‘to love’.

    ほんとうでした。「アマチュア」という言葉の語源は「愛する者(lover)」なんですね。
    「愛する者」に関連して、結城は「哲学」のことを思い出しました。「哲学」は英語でフィロソフィー(philosophy)といいますが、これは確か「知恵を愛すること」だったはずです。先ほどと同様にオックスフォードの辞書で語源を調べてみます。
    ◆philosophyhttps://en.oxforddictionaries.com/definition/philosophy

    Origin


    Middle English: from Old French philosophie, via Latin from Greek philosophia ‘love of wisdom’.

    確かに「知恵を愛すること(love of wistom)」でした。
    ちなみに、フィラデルフィア(Philadelphia)は「兄弟愛(brotherly love)」で、フィルハーモニック(philharmonic)は「ハーモニーを愛すること(loving harmony)」ですね!
    あなたは「何を愛する人」ですか。
    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    目次
    はじめに
    目次
    チームで仕事をする上で大切なこと - 仕事の心がけ
    障害者に配慮した環境の過ごしやすさ
    「好き」だけを理由に院進していいか - 学ぶときの心がけ
    いい編集者とは - 本を書く心がけ
    どうしても院試準備以外の数学に耽溺してしまう - 学ぶときの心がけ
    わからない子にわかりやすく教える方法 - 教えるときの心がけ
    自分の文章を読んで嫌悪感を抱いてしまう - 文章を書く心がけ
    互いに愛し合うために - コミュニケーションの心がけ
    おわりに
    チームで仕事をする上で大切なこと - 仕事の心がけ
    質問
    チームで一緒に仕事をする上で「大切なこと」は何でしょうか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    チームで一緒に仕事をする上で大切なことは大きく二点あります。
    (1)チームのゴールを理解すること。
    (2)チームメンバーの役割と多様性を理解すること。
    この二点です。
    「チームのゴールを理解すること」というのは、言い換えるなら「チームが存在する意味を考えること」ともいえるでしょう。
    チームとして仕事をするということは、そのチームが持っているゴール(目的、目標、存在意義、役割、達成すべきこと……)が必ずあります。それを理解しなかったら、チームで仕事をするのは困難です。
    「チームメンバーの役割と多様性を理解すること」というのは、言い換えるなら「チームメンバーが存在する意味を考えること」ともいえるでしょう。
    チームメンバーが協力して仕事をするためには、チームメンバーが互いに互いの役割を理解している必要があります。それが必要であることは、サッカーをやっているときのことを想像すればわかりますね。誰がフォワードで、誰がゴールキーパーであるかわかっていないサッカーチームが勝てるはずがありません。役割を理解するというのは多様性を理解することにも通じます。いくら「チーム一丸となってがんばる」といっても、チーム全員がボールを追いかけていてはだめです。
    「チームのゴールを理解すること」と「チームメンバーの役割と多様性を理解すること」という二点を挙げました。この二点は「チーム」というものが何であるかをよく表していると思います。
    (1)は、チームが一つの存在であることを表現しています。
    (2)は、チームが一人で成り立っている存在ではないことを表現しています。
    一人で成り立っているのではない存在なのに、あたかも一つの存在であるかのように仕事をする。それがチームということですね。
    (1)と(2)の両方を満たすとき、チームは初めて個人を超えるのだと思います。
    あなたのチームはいかがでしょうか。
    ご質問ありがとうございました。
    障害者に配慮した環境の過ごしやすさ
    障害を持っている人やお年寄りに配慮している環境は、それ以外の人にも過ごしやすくなることが多いと感じます。
    以前、私が関わっていたとある会社で、聴覚がとても弱い人が入社してきたことがあります。その方は補聴器を付けてはいるのですが、それでもリアルタイムでの聞き取りは難しかったようです。
    会社の中で報告会を行うとき、口頭だけの報告では、聴覚が弱いその人に情報が伝わりにくいので、スライドや配布資料を充実させることになりました。聴覚情報だけではなく視覚情報を提示してわかりやすくしたのです。また、口頭での説明も要点を整理して、一つ一つの言葉を明確に発音し、あまり早口の発表にならないように心がけることとなりました。
    その結果、聴覚が弱いその人だけではなく、関係者全員の理解度が増したのです。障害を持っている人に適切な配慮をすることで、それ以外の人にメリットがあったという一例ですね。
    新幹線に「多目的室」という部屋があるのを知っていますか。「多目的室」というのは身体が不自由な方が予約して利用できる個室です。昨年、車いすの義母が移動する際にもこの多目的室を利用してたいへん助かりました。ところでこの多目的室は、身体が不自由な方でなくても、車掌さんにいえば気分が悪いときに横になったり、授乳のために利用したりできるのです。
    私は特に障害を負っているわけではありませんが、障害者に配慮した環境によって助けられたことをいくつか思い出します。たとえば、仕事の帰りに身も世もなく疲れていて、電車の中でもう立っていられないときに空いている「シルバーシート」で一休みできたことがあります。また、両手に荷物がいっぱいになって歩きにくいときに「自動ドア」や「段差が少ないバス(ノンステップバス)」をたいへんありがたいと思います。
    疲れているときや両手に荷物がいっぱいのときというのは、いわば一時的に身体が不自由な状態になっているわけですね。健康な人であれ誰であれ、そのような不自由な状態になることはあるはずです。
    障害を持っている人に配慮した環境は、結果的に社会全体を過ごしやすくするのではないかと思っています。
    「好き」だけを理由に院進していいか - 学ぶときの心がけ
    質問
    物理を勉強している学部生です。
    私は特別優秀でもなく、物理を仕事にする道は険しいと思うのですが、単純に物理が好きという理由から大学院にも進みたいと考えています。
    私のような人間が就職せずに勉強を続ける意義をどうお考えでしょうか。
    親が納得してくれるよう、「好きだから」以外に院進の理由を探していますがあまり思いつきません。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    私は「学べるチャンスがあるなら、そのチャンスを生かして学ぶのがいい」と基本的に思います。「好きだから」というのは学ぶ理由として悪いとはまったく思いません。本来、好きだから学ぶものです。
    ただし、その「学べるチャンス」の中には経済的な要因も多く含まれています。学んでいるあいだの経済はどうするのか、またそのあとの身の振り方をどうするのか、そのような心配は尽きません。
    あなたとあなたの親の関係について私にはわかりませんので、外した答えかもしれませんが、「親の納得」というのは大学院への進学そのものというよりも、そこから先も含めたあなたの人生についての心配に関係していると想像します。
    「院進の理由」を見つけて親を納得させることも大事ですが、「自分は今後どのように生きていきたいか」について考え、それを親に伝えることが大事ではないでしょうか。「物理が好きだから大学院で学びたい」まではいいのですが「そこから先はまったく考えていない」となると、親としては「それでいいのか? 大丈夫なのか?」と言いたくなると思います。
    たとえ、そこから先はわからないし決められないとしても「どのようなパターンが可能性としてありうるか」くらいは考えたり調べたりしてはどうでしょう。精密な答えは提示できないとしても、数年後に結果としてウソになったとしてもいいのです。自分の将来について、第0近似も第1次近似も考えてないのはいかがなものでしょうか。
    不正確な未来像を提示するのは抵抗があるかもしれませんが、自分の今後について「ノープランではない」ことを示すのは、親との関係で無用なトラブルを減らすと思います。
    自分の「好きだから」を現実にするために、知恵をしぼりましょう。
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.320 結城浩/数学の素養/文章をまとめるコツ/恋し続ければ/本を書くテンション/再発見の発想法/高校生が数学力をつける/

    2018-05-15 07:00  
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    Vol.320 結城浩/数学の素養/文章をまとめるコツ/恋し続ければ/本を書くテンション/再発見の発想法/高校生が数学力をつける/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年5月15日 Vol.320
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    ここ数日の温度変化がとても大きいです。コートがいるかもという日の次が半袖という気温。身体への負担も少なくありません。とはいうものの、いまの季節は寒いよりは温かい方がいいですけれど。
    もうちょっとすると雨の季節になるのでしょうか。春の気候ももうすぐ終わりです。
    最近「結城浩の数学ノート」というWebサイトを作り始めました。この「結城メルマガ」でも何度か書いていますが、結城は「シンプルで小さなWebサイト」を作るのが大好きで、定期的にのめりこむようにしてWebサイトを作っています。
    「結城浩の数学ノート」というWebサイトは、ちょっとした数学の話題を紹介するものです。まだページは少ないですけれど、少しずつ継続して書き溜めていきたいと思います。ぜひちらっとのぞいてみてください。
    ◆結城浩の数学ノートhttps://math.hyuki.net
    こういうWebサイトを作るときには、何をどんなふうに考えているかについてもまたいつか文章にしてみたいと思います。
    それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
    目次
    はじめに
    目次
    数学の素養の有無とプログラマ
    思い浮かぶことを一つの文章にまとめるのが苦手です - 文章を書く心がけ
    恋し続けたならば必ず逢える - 古今和歌集を読む
    本を書くテンションを保つ工夫 - 本を書く心がけ
    ブートストラップ - 再発見の発想法
    高校生が数学力をつけるには「復習あるのみ!」ですか? - 学ぶときの心がけ
    おわりに
    数学の素養の有無とプログラマ
    質問
    「数学の素養があるプログラマ」と「数学の素養がないプログラマ」の大きな違いは何だと思いますか。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    なかなか難しいので、ものすごくざっくり答えますね。
    数式に関して
    「数学の素養」と呼べるかどうかわかりませんが、たとえばそれは技術文書や仕様書に「数式」が出てきたときに「数式を読もうとするか否か」という態度に現れるのではないでしょうか。くだけた表現を許していただけるなら「数式にビビるかどうか」ともいえます。
    プログラミングが扱う問題は多岐に渡りますので、数学のことをあまり知らなくても問題なくプログラミングできる場合はたくさんあります。その一方で、機械学習や3Dグラフィクスの問題などで、数学の深い理解が必要になる場合もありますね。
    「数学の素養」といっても「ある・なし」の二段階ではありません。でも、どんなものであれ「数式」が出てきたとたん思考をストップさせてしまうようでは困ると思います。
    「数式」が出てきたときに「ビビる」ことなく、
    まずは読んでみようとする
    自分が理解できるかどうか判断できる
    すぐに理解できない場合でも、調べれば理解できそうか判断できる
    などの点が重要になるのではないでしょうか。
    定義に関して
    「数学の素養」に入れるかどうかはわかりませんが「概念を定義して適切に名前を付ける」というのは、プログラミングにおいて重要な活動であると思います。「定義」が重要であることは数学ではもちろんのこと、プログラミングにも当てはまります。
    そしてしばしば、プログラマはとても抽象的な概念をきちんと「定義」することを要求されます。一見ばらばらに見える概念の共通点を見つけ出してそれを定義し、名前を付け、それを利用してプログラミングを行うというのは珍しいことではありません。抽象クラスやインタフェースなどはそのようにして作られています。
    もちろん、プログラミングで適切な「定義」を行うためには数学を学ぶ必要があるといいたいわけではありません。ただ「数学の素養」がある人は、プログラミングで抽象的な概念が登場したときも理解が早かったり、その概念の良し悪しを判断する力がある可能性は高そうです。
    論理に関して
    数学で論理が重要なのはいうまでもありませんが、プログラミングでも論理は必要です。プログラムを書く上で重要なだけではなく、デバッグをしてプログラム中の誤りを見つける作業においても論理は重要です。
    これは「数学の素養」というよりも「科学者の素養」かもしれませんね。「プログラムを動かしたら、このような現象が起きた。ということは、あのライブラリが悪いのではないか」のように考えるのは科学者が行う「自然現象の観察」に似ています。また「あのライブラリが悪いということは、こういう入力を与えたなら、こういう出力が出るのではないか」と考えることは、科学者が行っている「仮説の検証」に似ています。
    他にもありそうですが、私は以上のように考えました。
    ご質問ありがとうございました。
    思い浮かぶことを一つの文章にまとめるのが苦手です - 文章を書く心がけ
    質問
    はじめまして。
    恥ずかしながら、私は文章を書くということがまったくできません。
    いくつか思い浮かぶことがあっても、それらの関係性を考え、論理的なひとつの文章にまとめることがどうにも苦手です。完成まで何とか持っていけたとしても、そのためには途方もなく時間がかかります。
    このような状況を克服するために有用な練習方法をおうかがいしたいです。
    現在は、人の文章から構成を読み取ってそれを参考にするといったことをしています。
    回答
    ご質問ありがとうございます。
    三点お話ししましょう。
    まず第一点目。あなたは、頭の中だけで最終的な文章を考えていませんか。
    「いくつか思い浮かぶこと」をあなたは紙やコンピュータに書いていますか。自分の頭の中から思い浮かぶことを取り出すことはとても大切です。思い浮かんだことを頭の中に保持し、関係性を考え、文章にまとめるなんていうのは大変な作業です。思い浮かんだことをまず書くのは基本。たくさんの短文として頭から取り出します。そして、コンピュータの上で並べ替えたり、関係を考える方がずっと楽です。
    コンピュータの操作に慣れている人やタイピングが速い人は、ツールを使ってコンピュータ上で考えるのもいいですが、そうでない場合はいったん紙にプリントアウトして、順番を考えたり、関係を考えたりする作業をします。そしてもう一度コンピュータ上で短文の入れ換え作業を行うということを繰り返します。
    いずれにせよ、「頭の中」で作業をするのではなく、いわば「頭の外」で作業をするのが大事です。
    第二点目。あなたは、言いたいことをずばりと言い切ることを恐れていませんか。
    先ほど書いた「思い浮かんだことを短文として取り出す」ときでもそうですが、自分の考えをずばりと言い切ることは重要です。「ずばりと言い切る」というのは、「AはBである」や「CとDは違う」や「EとFは合わせるとGになる」のように書くという意味です。
    「AはBだけれど、Bとはいいがたい場合もあるし、Xという条件があると、Bには絶対ならないし……」のように、ふわふわっと話を展開するのはやめます。
    そうではなくて、ずばりと言い切った短文として、頭の中から取り出すのです。

    「AはBである」 「AはBにならないこともある」 「Xという条件では、絶対にBにならない」

    というように。そして頭の中から取り出したこれらの短文を眺めて、気付いたことを書いていきます。

    「AはBである」(いつも?) 「AはBにならないこともある」(どんなとき?) 「Xという条件では、絶対にBにならない」(X以外の条件では?)

    そうして、それらの気付いたことをさらに膨らませていくことになります。
    第三点目。あなたは、いっぺんに全体を完成させようとしていませんか。
    頭の中からまず考えていることを取り出すのもそうですし、ずばりと言い切る短文を操作するのもそうですが、いっぺんに全体を完成させるのではなく、ステップ・バイ・ステップで、ちょっとずつ整えていくのが大事です。
    人間は全体をまとめるのが苦手です。それに対して、細かい部分に注目してちょっと付け加えたり、ちょっと順番を正したり、他のケースをちょっと考えたりするのは難しくありません。
    時間は掛かります。それはしょうがありません。何度も読んで、少しずつ「前よりはちょっぴり整った状態にしていく」というのは、文章を書く上でめずらしいことではありません。
    あなたが書いていた「人の文章から構成を読み取ってそれを参考にする」というのも決して悪いことではありません。それは自分が「整えていく先」の例を見つけていることになりますね。
    まとめます。
    「頭の外」で作業しよう
    ずばりと言い切る短文を集めよう
    ステップ・バイ・ステップで整えていこう
    参考にしていただければうれしいです。
    ご質問ありがとうございました。
     
  • Vol.308 結城浩/やりたいことを見つける/問題解決と他者との関わり - 仕事の心がけ/いまの自分にしか書けない文章/

    2018-02-20 07:00  
    216pt
    Vol.308 結城浩/やりたいことを見つける/問題解決と他者との関わり - 仕事の心がけ/いまの自分にしか書けない文章/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年2月20日 Vol.308
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    『数学ガール/ポアンカレ予想』の話。
    『数学ガール/ポアンカレ予想』がアマゾンで予約開始になりました!
    ありがたいことにアナウンスして一日後、 数学一般書籍でランキング第1位となりました。 みなさんの応援に感謝です!
    書籍全体では、 最大瞬間風速で第181位まで上がっていたようです。
    またTwitterなどでもたくさんの方が言及してくださり、 結城のアナウンスツイートは、 あっというまにたくさんRTしていただきました。 感謝です!
     ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』(アマゾン)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797384786/hyuki-22/
    先週はイラストとカバーの打ち合わせがありました。 「数学ガール」と「数学ガールの秘密ノート」シリーズを、 ずっといっしょに手がけてきたチームで、 久しぶりの本編新刊を喜びました。 何しろ6年振りですからね……
    今週末には初校ゲラ(書籍と同じように版組をした紙) がどさっと届く予定。 来月の初めには初校読み合わせになります。
    気になっていた大きめの修正は、 先週ほとんど片付いたので、 ここからは細かい部分に注目していきます。
    応援よろしくお願いいたします!
     ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』  http://www.hyuki.com/girl/poincare.html
     * * *
    本で学んだことをブログに書くときの注意点の話。
    質問
    本から学んだことをブログで発信したいと思っています。
    でも著作権のことがよくわかりません。
    どのようなことに気を付ければいいでしょうか。
    回答
    すべてをここに書くことはできないので、 基本的なことだけ書きます。
    著作権は「アイディア」ではなく「表現」を守るものです。
    著作権は「アイディア」を守るものではないので、 本に書かれている「アイディア」を理解し、 自分の言葉でブログに書き表すのは問題ありません。 ただし、あたりまえですが、 他人のアイディアを自分のものにするわけにはいきません。
    著作権は「表現」を守るものですから、 本に書かれた文章をそのままブログに書くことは、 著作権の侵害になります。 ですから、あなたがブログに書くときには、 自分の言葉、自分の表現で書く必要があります。
    本の内容をまるまる一冊要約し、 本を読まなくてもすむような記事を書くのは、 翻案と見なされる場合があります。 これは著作権侵害となります。 詳しくは文化庁の以下のページをごらんください。
     ◆最新のベストセラー小説のあらすじを書いて、ホームページに掲載することは、著作権者に断りなく行えますか。  http://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000338
    本で学んだことをブログに書く場合、 本に書かれた文章そのものを書きたくなる場合があるでしょう。 その場合には適切な形で「引用」する必要があります。 引用する場合、 今度は勝手に自分の言葉にしてはいけません。
    引用の際には、 以下の注意が必要になります(これだけではありません)。
     ・引用元を明確にする。   (書籍名や著者名など、どこから引用したのかわかるように)  ・引用範囲を明確にする。   (カギカッコや引用のマークアップで、どこが引用部分かわかるように)  ・引用したものが主従関係の「従」になるようにする。   (文章の大半が引用で、最後に一言感想というのはだめ)
    こうすれば大丈夫という保証はできませんが、 以上の点は最低限でも理解しておかなければなりません。
     ◆文化庁「著作権なるほど質問箱」  http://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/index.asp
     * * *
    人生における選択の話。
    質問
    私は目標があり、そこに向かおうと、 険しいとわかっている道を一年前に選択しました。
    しかし、一年が過ぎると「苦しいことばかりで逃げたい」 と思うことが多くなってしまいました。
    ただの努力不足かもしれませんが、 この状況をどのように乗り越えればいいのでしょうか。
    アドバイスがあれば教えてください。
    回答
    あなたは険しい道とわかってながら、 一年前に大事な選択をしました。
    そして一年が過ぎ、 その選択を見直そうとしています。
    どちらもすごいことです。 なかなかできることではありません。 私は、えらいと思います。
    もちろん私は内容を知りませんので、 「がんばろう」とも、 「逃げた方がいい」ともいえません。 それはあなたが再び選択するしかありません。
    考えよう。悩もう。 続けるもよし。 思い切って道を変えるのもよし。 どちらであっても、あなたの貴重な選択です。
    選択の結果、 より大変な状況になるかもしれないし、 思いがけず新たな道が見つかるかもしれません。 未来を見通せない人間の身には、 何が起こるかはわかりません。
    考えよう。悩もう。 ときには知り合いに相談しよう。 ときには一人でじっくり考えよう。
    人生に失敗はありません。無駄もありません。
    あなたの選択は、 まちがいなくあなたの人生を切り拓いていくことになるでしょう。
    応援しています。
     * * *
    悩んだときには視点を変えるという話。
    私たちはいろんなことに悩みます。 同じことをずっと悩み、考えます。 それでも糸口が見つからないこともよくありますね。
    同じことを同じ視点から見ていると、 同じ思考をたどって同じ結論に達するものです。 ですから「視点を変える」のが重要になります。
    たとえば、 何かを作成することで悩んだとしましょう。 文章でも、絵でも、あるいはプログラムでもいいです。
    典型的な「視点を変える」方法は、 たとえば次のようなことです。
     作成の過程(プロセス)で悩んでいるならば、  作成した物(プロダクト)に注目する。
     作成した物(プロダクト)で悩んでいるならば、  作成の過程(プロセス)に注目する。
    噛み砕いていうならば、 次のようになるでしょう。
     「どう作ればいいのかなあ」と思うなら、  「そもそも何が完成すればいいのか/よかったのか」を考える。
     「完成したものの出来が良くない」と思うなら、  「どんなふうに作るか/作ってきたか」を考える。
    「視点を変える」というのはいわば比喩ですが、 おもしろいもので、 その比喩と同じように行動するとうまくいくことがあります。 どういうことかというと、
     ・いつも考えている部屋や場所を変える  ・家の中にいたら家の外に出る  ・机の前に置いてある本やものを入れ換えてみる
    こんなふうに、自分が「リアルな目で見ているもの」 を実際に変えてしまうのです。そうすると、 悩みごとについての視点も変わってくることが多いです。
    ぜひ、お試し下さい。
     * * *
    難しい文章を読む話。
    質問
    難しい文章や長い文章を読んでいると、 頭がパンクするような気持ちになり、 どうしても途中で挫折してしまいます。
    自分の能力で理解できないような難しい文章や、 長い文章に挑むにはどうしたらいいのでしょうか。
    回答
    その文章をどうしても読まなければならないなら、 「分割統治」するしかありません。
    長い文章を短く区切ります。 自分が理解できるほど小さな部分に分け、 少しずつ攻略していくことになります。
    もしも、小さな部分に分けても攻略できないなら、 大きな全体を攻略するのは無理ですから。
    小さな部分に分けても攻略できないなら、 もっと小さな部分に分けます。 もしかしたら、 最後は「単語一つ」になってしまうかもしれませんが、 とにかく小さな部分に分けることを意識します。
    各部分の攻略ができたなら、 今度はその理解を組み上げていきます。 各部分の理解を組み上げていき、全体を理解していきます。
    そのような読書と理解のプロセスは、 当然ながら一筋縄ではいかないでしょうし、 時間が掛かるはずです。 すらすら読めないような難しくて長い文章に挑戦しているのですから、 あたりまえのことですね。
    分割統治をうまく進めるためには「読む」だけではなく、 「書く」ことも必要になるでしょう。 目の前の文字をじっと見つめるだけではなく、 自分の理解を書き留めたり、図にして考えたりするということです。
    理解していない状態で書くわけですから、 最初から完成品を書こうと思わない方がいいです。 完成品を書こうとすると書く手が止まりがちですから。
    そうではなく、 自分の理解を補助するために書くことを意識しましょう。 「こういうことかな? あ、違うな」 という繰り返しを恐れないということです。
    難しくて長い文章を読んで理解するというのは、 森を通ったり、迷路を抜けたりするようなものです。 自分がたどった道を記録しておき、 まちがった方向にいったら後戻りするのは当然です。
    がんばってください!
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    やりたいことのある人がうらやましい - Q&A
    問題解決と他者との関わり - 仕事の心がけ
    いまの自分にしか書けない文章を、書こう! - 文章を書く心がけ
    おわりに
     
  • Vol.307 結城浩/再発見の発想法 - ロールオーバー/人を惹きつける文章を書く/効果的な勉強法/

    2018-02-13 07:00  
    216pt
    Vol.307 結城浩/再発見の発想法 - ロールオーバー/人を惹きつける文章を書く/効果的な勉強法/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年2月13日 Vol.307
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    『数学ガール/ポアンカレ予想』の話。
    先日『数学ガール/ポアンカレ予想』の本文のみ脱稿していましたが、 先週になって残っていた原稿(エピローグ、 参考文献と読書案内、あとがき)を脱稿しました。 これでようやく一段落です。
    といっても気を緩めるわけにはいかなくて、 2018年春の刊行を目指して時間との闘いになります。 今週はイラストとカバーの打ち合わせがあり、 来週には初校が到着。 来月上旬には初校の読み合わせと作業が盛りだくさん。
    大きめの修正はとにかく今月中に片づけなくては。
    6年振りの「数学ガール」新作、 応援よろしくお願いいたします!
     ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』  http://www.hyuki.com/girl/poincare.html
     * * *
    『プログラマの数学 第2版』の話。
    2018年1月に刊行した『プログラマの数学 第2版』ですが、 ようやく電子書籍が出始めました! 編集部からはデータ送信は済んでいますが、 電子書籍の書店ごとに販売開始時期は異なるようです。
    以下のリンクはアマゾンへのリンクですが、 不思議なことにまだ「単行本(紙版)」と「Kindle版」 とのあいだにリンクが張られていません。 つまり、単行本のページをウオッチしていても、 Kindle版の存在がわからないことになりますね。 担当氏によりますと数日でリンクは張られるらしいですが、 ご注意ください。
     ◆『プログラマの数学 第2版』Kindle版  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B079JLW5YN/hyuki-22/
     ◆『プログラマの数学 第2版』単行本(紙版)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797395451/hyuki-22/
    楽天Koboでも配信が始まったようです。
     ◆『プログラマの数学 第2版』楽天Kobo電子書籍版  https://books.rakuten.co.jp/rk/d6ccb0078e42388984820728554ee6ef/
    また、Webですぐに読める「Web立ち読み版」も公開されています。 目次から第1章の終わりまで読めます。登録不要、もちろん無料です。
     ◆『プログラマの数学 第2版』Web立ち読み版  http://ul.sbcr.jp/MATH-yCEtr
     ◆『プログラマの数学 第2版』  http://www.hyuki.com/math/
    応援よろしくお願いいたします。
     * * *
    書店に自著が並ぶ話。
    最近、新刊の話題をよく書くためか、 「書店に自分の書いた本が並ぶというのはどんな気分ですか?」 というご質問をいただきました。
    控えめに言っても、最高にうれしいですね。
    単純な「うれしさ」とも違い、 「うれしさ」と「誇らしさ」と「気恥ずかしさ」と 「感謝」と「わずかの不安」が入り交じったような、 そんなドキドキ感があります。
    これまで結城は何十回も自著が書店に並んでくるのを見てきましたが、 毎回このドキドキを味わいます。
    もちろん、書店に並んでいる自分の本を手にとって、 ページをぱらぱらとめくることもあります。 そこに書かれている文章は校正のあいだに何度も何度も読んだものですが、 書店でぱらぱら読むとまた違う印象を受けるものです。
    そしてその感覚をしっかりとらえることは大事だと思います。 なぜなら、その書店で私の本を手に取る読者は、 まさにその場所でいま自分がやっているようにぱらぱら読むからです。
    まわりにどんな本が置かれているか、 重さはどうか。立って読むときのページのめくりやすさはどうか。 店頭で本を手にするときには、 文章を校正しているときとはまったく違う要素があることがわかります。
    これまで、 書店で自著が購入される瞬間を見たことが数回あります。 非常に重要な体験でした。その購入者は本を手に取り、 はじめの部分をじっくり読み、途中をぱらぱらと眺め、 本の最後にある値段を確認し、また途中を眺め、 そしてレジへ持っていきました。
    そのあいだ、少し離れたところで私はその様子を 不審に思われないよう注意しつつ、じっと眺めていました。
    そのとき結城が感じたのは、 読者さんはひとりひとりこんなふうにして、 結城の本を購入くださっているのだなあ、 という深い感謝の思いです。
    結城は、書店で自著が並んだ棚にいくと、 本を手に取る人の気持ちを想像し、 「どうか、この本を必要とする方に届きますように」 と祈るようにしています。
     * * *
    インタビューの話。
    以前受けたインタビューが、
     『数理的発想法』
    という書籍になりました。 結城浩を含む12人のインタビューが掲載されています。
    インタビューイー12名は以下の通りです。
     第1章 書く、描く、物語る   高野文子/藤井太洋/結城浩  第2章 技術をデザインする   江渡浩一郎/増井俊之/渡邊秀徳  第3章 本と、デジタル   高野明彦/河村奨/地藏真作  第4章 科学者たち   岡田美智男/吉村仁/本間稀樹
    ぜひお読みください!
     ◆仲俣暁生『数理的発想法 “リケイ"の仕事人12人に訊いた世界のとらえかた、かかわりかた』  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798154342/hyuki-22/
     * * *
    学部生にとっての研究の話。
    質問
    たとえば学部生が機械学習を学び、 それを応用しておもしろいことを考えようとしても、 たいていのことはすでに研究されています。
    ということは、 すでに研究を進めている研究者よりも「良い研究」 をするのは難しいですよね。
    トップ研究者ではない学部生にとって、 意味のある研究、意味のある応用というのは、 どういう方向にあると思いますか。
    回答
    具体的に「こういう方向」と示すことは、 私にはできません。
    あなたが考えている内容というのは、 あなたの教官に尋ね、 議論すべきことではないかと想像します。
    なぜなら、 どの方向の研究をどの程度進めるのかというのは、 学部生に対して指導すべき内容の一つだと思うからです。 分野ごとの機微はあるでしょうし、時代による違いや、 学生の能力による調整も必要なはずです。
    教官と議論しましょう。まさにそのために、 大学に学費を払っているのです。
    また、あなたの大学では 「トップ研究者ではない学部生」 も過去に研究を進め、論文を書いているはずですね。 過去の論文を探して読んでみましょう。 そうすれば、 「少なくともその時代には論文になった題材」 がわかるはずです。
    なお、Natsu(hiko) MIZUTANIさん(@natsu_water)から、 関連する文章として以下のWeb記事を教えていただきました。 とても短く、しかも図入りでわかりやすい記事ですので、 ぜひこちらもお読みください。 Matt Might教授による"The illustrated guide to a Ph.D."という文章です。
     ◆博士号を取るとはどういうことか  http://hamukazu.com/2013/11/14/illustrated-guide-to-phd/
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    「問いと答えの呼応」の話。
    Webページで、
     タイトルは「問い」の形なのに、  文中でその「答え」が書かれていない
    という記事を見かけるときがよくあります。 結城はそれがとても気になります。
    タイトルが「問い」の形で、 文中に「答え」が明示的に書かれていないと読者は混乱します。
    たとえば、次のような記事です。
     ----
     タイトル  XXXXはAだろうか?
     本文  XXXXはBの場合や、Cの場合もあります。  ホニャララ大学ではXXXXがDと見なされたことがありますが、  世界的にはDとは見なされていません。  XXXXがEやFと考えられていた時代もありますが、  現在ではその可能性は否定されています。
     ----
    この記事を読んだ読者はいらいらします(ですよね?)。
    なぜならタイトルで「XXXXはAだろうか?」と問うていながら、 本文ではその問いに直接答えを与えていないからです。
    読者はこの記事を読み終えたときに、 「結局、XXXXはAなの?」 という疑問を抱いたままになるでしょう。
    あるいはまた、本文から推測して、 「XXXXはAだということなのかなあ……」 とぼんやりと考えるでしょう。
    いずれにせよ、 記事の情報伝達は失敗しています。
    Webサイトにはしばしば「よくある質問とその答え(FAQ)」 というコーナーが用意されます。 それは読者にとって非常に有効なコーナーのはずですが、 上で述べたように「問い」と「答え」が噛み合っていないことがよくあります。
    もしもあなたが自分の管理しているWebサイトを持っているなら、 ぜひ、問いと答えの呼応をチェックしてみてください。
    『数学文章作法 基礎編』第6章「問いと答え」では、 「問いと答えは呼応させること」を強調して説明しています。
     ◆『数学文章作法 基礎編』  https://mw1.hyuki.net
     * * *
    右手左手の話。
    人が文字を書いている様子を見たとき、 左手を使って書いていると、 結城は「あ、左手で書いている」と気がつきます。 そして直後に「どうしてそれにすぐ気付いたのだろう」 と自分で不思議に感じます。
    まわりの人に尋ねてみると、 「私もすぐに気付きます」という人と「あまり気付かない」 という人がだいたい半々くらい。
    文字を書いているときに限りません。 指さしたり、何かを片手で掲げたりしているときも、 「あ、左手だ」と気付きます。
    たとえば、コインを持ってるこの画像を見ると、 すぐに「左手で持ってる」と気付きます。
     ◆コインを持っている画像
    念のために書いておきますが、 もちろん左手を使っていることを批判しているわけではありません。 自分が、使用している手の左右の認知に敏感なことに興味がある、 という話です。
    右足左足の違いには気付きません。 右手左手の違いには気付きます。
    結城が右利きだから左利きに気付くというのはありそうです。 ただ、それだけではなくて「相手の姿に自分の姿を重ねる」 という癖があるのかなと想像しています。
    たとえば以下のツイートには、 数学の板書をしているサーバルちゃんのイラストがあります。
     ◆数学の板書をしているサーバルちゃん  https://twitter.com/omnisucker/status/939309838877671424
    何気なくこのイラストを見た瞬間、 私はサーバルちゃんになって板書している自分を想像する。 だから左手で書いてることに気付くのかもしれません。
    私はリコーダー吹きですが、 たまにリコーダーを吹いているイラストで右手が上になっているものがあります。 リコーダーは左手が上になるのであれ?と気付きます。 でも、自分が使わない楽器だと気づかないかもしれませんね。
    あなたは右手左手に気付く方でしょうか。
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    再発見の発想法 - ロールオーバー
    人を惹きつける文章を書く - 文章を書く心がけ
    役に立つ効果的な勉強法を考える
    おわりに
     
  • Vol.306 結城浩/チャンスをつかむ心がけ/「何がうれしいのか」という問い/心を動かす文章をめぐって/

    2018-02-06 07:00  
    216pt
    Vol.306 結城浩/チャンスをつかむ心がけ/「何がうれしいのか」という問い/心を動かす文章をめぐって/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年2月6日 Vol.306
    はじめに
    結城浩です。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    『数学ガール/ポアンカレ予想』の話!
    先週『数学ガール6』の本文を脱稿しました(ようやく)。 そしてTwitterやWeb日記で今回のテーマをアナウンス。 今回の数学ガールは、
     『数学ガール/ポアンカレ予想』
    という本になります。
    ポアンカレ予想というのは、トポロジー(位相幾何学)の問題です。
    数学者アンリ・ポアンカレが《問いかけ》の形で論文の最後に書いた問題、 それが《ポアンカレ予想》です。 この問題が提示されたのは20世紀初めのこと。
    そこから多数の数学者が挑戦し、 なんと百年という時間が過ぎました。
    そして、21世紀の初め、 グリーシャ・ペレルマンがこの《ポアンカレ予想》 の証明を完成させたのです。
    「数学ガール」シリーズ第6弾は、 この《ポアンカレ予想》に挑戦します!
    刊行は2018年の春を予定しています。
    今回のテーマを発表してから、 とても多くの読者さんからはげましのメッセージをいただいています。
    本文は脱稿したのですが、 まだまだ校正作業は続きます。
    ぜひ、応援よろしくお願いいたします!
     ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』  http://www.hyuki.com/girl/poincare.html
     ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』宣伝画像
     * * *
    『プログラマの数学 第2版』の話。
    2018年1月に刊行した『プログラマの数学 第2版』は、 引き続き多くの方に読まれているようです。
    プログラマに限らず一般の方も 「クイズ仕立ての楽しい数学の本」 としてお読みになっている方もいらっしゃるみたいです。
    2018年1月28日〜2月3日の 書泉ブックタワーコンピュータ書ベストで、 『プログラマの数学 第2版』は第3位となりました。
     https://twitter.com/shosen_bt_pc/status/960004452445900801
    編集部によりますと、2018年2月上旬には 『プログラマの数学 第2版』の電子書籍も配信開始とのこと。
    こちらも引き続き応援よろしくお願いいたします!
     ◆『プログラマの数学 第2版』  http://www.hyuki.com/math/
     * * *
    批評の分析の話。
    『ライアーゲーム』で有名な漫画家の甲斐谷忍さんが、 以下のような興味深いツイートをしていました。
     ----
     「編集者に漫画を見てもらって、批評をもらったのですが、  何が問題なのかいまいちわからない」  という意見を多く聞いたので、ざっくりと表にしてみました。  ちなみに 「話」「構成」「演出」ともに10点満点です。
     https://twitter.com/mangakap/status/958553459170590720
     ----
    詳細はリンク先に画像があるので、 そちらを見ていただきたいのですが…… 要するに、編集者から批評してもらったときに、 編集者の言葉をどのように分析し、 理解するかという話題です。
    まず、甲斐谷さんは漫画に対する評価を、
     ・話  ・構成  ・演出
    の三つの軸に分解してそれぞれ10点満点とします。 座標値が0から10までを取る三次元空間の一点ともいえますね。
    甲斐谷さんは、それに続けて「編集者の批評の言葉」ごとに、 この三つの軸がそれぞれ何点であるか(バランスがどうであるか) を示しているのです。
    たとえば、
     「読みにくい。何を言いたいかよくわからなかった」
    という批評は、
     ・話が5点  ・構成が1点  ・演出が2点
    とされています。つまり、話はまあできてるけれど、 構成や演出はよくないということになります。
    あるいは、
     「まとまってはいる。小さくまとまっている。すんなり読めた」
    という批評は、
     ・話が4点  ・構成が6点  ・演出が4点
    とされています。構成はよいけれど、 話と演出は構成ほどはよくないということでしょうか。
    甲斐谷さんは上のツイートで、 8個の批評の言葉をこの方法でざっくり分析しています。
    結城はこのツイートを見たとき、 「うまい!」と思いました。
    批評の言葉というのは、感覚的であり、 何となくはわかるけれど、じゃあどうすればいいの? という疑問が出てきそうです。
    でも、このように批評の言葉を分解・分析するならば、 漫画家は自分の作品の「弱点」と「強み」が明確になるでしょう。 そうすれば、自分の作品をよりよくする手掛かりが得られます。
    この分析の内容が的確かどうかは私にはわかりませんが、 このように分析するという発想がすばらしいと思いました。 定性的な評価を定量的な評価に変えようとする試みといえます。
    さすが、大金が掛かったゲームで相手をいかに欺くかというコミック 『ライアーゲーム』の作者さんですね。頭いい……
     ◆甲斐谷忍『LIAR GAME 1』  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009GZIU4S/hyuki-22/
     * * *
    それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    「何がうれしいのか」という問いは何がうれしいのか - 教えるときの心がけ
    チャンスをつかむ心がけ - 仕事の心がけ
    心を動かす文章をめぐって - 文章を書く心がけ
    おわりに