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記事 5件
  • Vol.244 結城浩/優しく、美しく、気高い数学書 - 結城浩ミニ文庫/会計作業から執筆方針を考える/『数学ガール6』進捗報告/

    2016-11-29 07:00  
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    Vol.244 結城浩/優しく、美しく、気高い数学書 - 結城浩ミニ文庫/会計作業から執筆方針を考える/『数学ガール6』進捗報告/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年11月29日 Vol.244
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    サイン本の話。
    結城浩の《サイン本》無料プレゼント企画を行っています。 今回は、結城の本のうち海外向けに翻訳されたものをプレゼントいたします。 具体的には以下の通りです。
     ・中文簡体字版『数学ガール/フェルマーの最終定理』(3冊)  ・中文繁体字版『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』(3冊)  ・中文繁体字版『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』(3冊)  ・中文簡体字版『第3版 暗号技術入門』(4冊)  ・ハングル版『暗号技術入門(第2版)』(6冊)  ・ハングル版『数学文章作法 基礎編・推敲編(合本)』(3冊)
    応募〆切は2016年12月6日(火)です。 ずっと先……ではなく、来週の火曜日ですね (来週はもう12月ですと!)
    詳しい応募方法については、 以下のブログ記事をごらんください。
     ◆中文版『数学ガール/フェルマーの最終定理』他多数!   《結城浩のサイン本無料プレゼント》  https://snap.textfile.org/20161123170454/
     * * *
    新刊の話。
    先月末に刊行した『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』Kindle版が、 数学の新着ランキングで第一位になっていました。感謝です!
    いくつか読者さんのカスタマーレビューもつき始めました。 うれしいですね。応援ありがとうございます!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』Kindle版  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01MSJMKMW/hyam-22/
     * * *
    「かける数」と「かけられる数」の話。
    Twitterでときどき「掛け算順序」の話題を見かけます。 検索すれば見つかるので、ここでは詳しく説明しません。
    以下は、結城の個人的な体験の話。
    学校で「かける数」と「かけられる数」という用語を習った記憶があります。 習った記憶はあるのですが、2×3のうちどっちが「かける数」であるか、 どっちが「かけられる数」であるかを覚えるのはあきらめました。 単純に覚えられなかったからです。 「覚えなくてもいいか」と子供ながらにスルーしたのは覚えています。
    ところで、そのころの記憶をたどってみると、
     「『かけられる数』という用語は美しくないな」
    と感じたのを覚えています。 「美しくない」と感じた子供のころの気持ちを、 大人になったいま正確に思い出すことはできません。 でも何とか再現してみると、2×3という式の場合、
     「2に3を右からかけている」
    ともいえるし、逆に、
     「3に2を左からかけている」
    ともいえるなあと感じたからかもしれません。 つまり「かける数」と「かけられる数」という用語は、 そのままでは左右の区別がつきません。 そこに違和感を覚えたのです。
    大人になってから、何かの代数の本で「右単位元」や「左逆元」 のような用語を見たとき「おお!」と感動したのを思い出します。 つまり明示的に「右」「左」を書く方法があると知ったからです。
    プログラミング言語で「右結合」や「左結合」という演算子の約束も、 なるほどなあと思いました。まあ、明示的に書いたとしても、 どっちがどっちか、私はよく覚えられないのですけれど。
    プログラミング言語での「右結合」の例はたとえば代入演算子(=)で、 「x=y=z」という式を「x=(y=z)」と解釈するもの。 「左結合」の例はたとえば加算演算子(+)で「1+2+3」を「(1+2)+3」 と解釈するものののことです。
    以上、結城の個人的な体験の話でした。
    掛け算順序問題は簡単にここで論じるわけにはいきませんが、 もし、へんな教え方があったとしても、 子供たちは何とかうまくスルーしてほしいと思います。
    つまらないことで、 算数や数学を嫌いになってほしくないのです。
     * * *
    数学の話。
    「数学ガール」や「数学ガールの秘密ノート」シリーズを書いている関係で、 結城のところには、老若男女さまざまな読者さんからメールがやってきます。 小学生から80歳を越える方まで。 いずれも、算数・数学の問題や理系の話題が大好きな方々です。 そういった方々からのメールを読んだり、 Twitterなどでやりとりしていると、人生がほんとうに楽しいですね。
    改めて考えてみますと、 結城の数学能力は理系の高校生+αくらいなのですが、 それでも数学には楽しめる話題があふれています。 結城はそういう話題をピックアップして物語にしていることになります。
    高校までで学ぶ基本的な数式を読めるだけでも、世界は広がるものです。 本を読んでいて数式が出てきても「こわがらない」のは大事なこと。 「数式は言葉」で、数式をこわがるのは、漢字をこわがるようなもの。 もったいないことです。
    ファンレターの中にはよく『数学ガール6』はまだですか? という質問が書かれています。現在がんばって書いてます! 『数学ガール6』の話題は後ほどもう少し詳しくお話ししますね。
     * * *
    会計の話。
    先日、月次の会計作業を行いました。 もう11月なので2016年全体の数字も眺めていました。
    書籍ごとに、ここ10年の状況などを表にまとめる作業も行っています。 この表は毎年アップデートしています。 毎月の細かな収入と支出だけではなく、 年単位での推移を見るのも大事ですね。数字はいろんなことを語ります。
    「紙の本に対する印税」だけではなく、 結城メルマガや、Web連載や、note(ノート)や、 翻訳書や、電子書籍というように、収入が多様化しているのを感じます。
    ただし、収入が多様化しているといっても、 収入のパス(やって来る道筋)が多様化しているだけで、 読者さんが結城を支えてくださっていることには変わりありません。 深く感謝です!
    会計の数字から考えたことを、 自分の執筆作業にどのように生かすかという話題は、 後ほどもう少し詳しくお話しします。
     * * *
    数学書の話。
    今回の結城メルマガでは「結城浩ミニ文庫」のコーナーで、
     「優しく、美しく、気高い数学書」
    と題して「結城が読みたいと思っている数学書」のお話をお送りします。
    これは、数学書房『この数学書がおもしろい(増補新版)』 に収録されている結城のコラムを再掲したものです。 現在刊行中であるにも関わらず、 再掲を快諾してくださった編集部に感謝します。
    なお、『この数学書がおもしろい(増補新版)』は、 数学者、物理学者、工学者、経済学者など計51名が、 おもしろい本、お薦めの書、思い出の一冊を紹介するという興味深い本です。
     ◆数学書房『この数学書がおもしろい(増補新版)』目次
     ◆数学書房『この数学書がおもしろい(増補新版)』  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903342646/hyam-22/
     * * *
    と、いうことで、そろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    数学の問題を出す楽しみ(問題編)
    優しく、美しく、気高い数学書 - 結城浩ミニ文庫
    会計作業から執筆方針を考える - 仕事の心がけ
    『数学ガール6』進捗報告 - 本を書く心がけ
    数学の問題を出す楽しみ(解答編)
    おわりに
     
  • Vol.243 結城浩/『和算書「算法少女」を読む』を読む - 結城浩ミニ文庫/

    2016-11-22 07:00  
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    Vol.243 結城浩/『和算書「算法少女」を読む』を読む - 結城浩ミニ文庫/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年11月22日 Vol.243
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    先月末に刊行した『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』は、 ありがたいことに売れ行きが好調のようです。
    書泉グランデさんでは、2016年10月16日〜11月15日までの月刊ランキングで、 『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』が数学・物理で第1位でした! みなさん、ありがとうございます!
     ◆書泉グランデMATHさんのツイート  https://twitter.com/rikoushonotana/status/800157996387069952
    また、有隣堂藤沢店さんでは、理工学書の週間ランキングで、 『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』が第3位とのこと。 感謝です!
    出版社の営業さんから、 あちこちの書店さんでの展開の写真が送られてきました。
     ◆埼京線の北与野、ブックデポ書楽さん(@BD_syoraku)
     ◆大阪難波のジュンク堂書店さん
     ◆浦和駅近く、須原屋コルソ店さん(@SuhaCorso)
     ◆有隣堂藤沢店さん
    へんな話ですが、このようにあちこちの書店さんの写真を見ると、 「ああ、ほんとうに書店さんで売られているんだなあ〜」 と実感しますね。いつもありがとうございます!
     * * *
    LINEブログの話。
    LINEブログが一般ユーザでも開設できるようになっていました。 さっそく、結城も開設。
     ◆結城浩のLINEブログ  http://lineblog.me/hyuki/
     ◆スクリーンキャプチャ(MacBook)
    おもしろいと思ったのは、 書き込みはスマートフォンからしかできない点。 PCからは書き込みができないのです(閲覧はできます)。
    え、不便じゃないの? と思ったのは一瞬でした。 考えてみると、文章を書くのでも写真を貼り付けるのでも、 スマートフォンから作業してもそれほど不便じゃありません。
    もちろん長い文章を書くならばPCの方がずっといいのですが、 ちょっとした気持ちを書くだけなら、スマートフォンで十分。 むしろ、いちいちコンピュータを起動しなくていいので、 自分の気持ちをさっと書ける時代なのですね。
    まだ数個しか記事しか書いていないのですが、 感覚的には「ツイートよりも少し長いくらいの文章」 を書くのにいいみたいです。
    よろしければフォローしてみてください。
     ◆結城浩のLINEブログ  http://lineblog.me/hyuki/
     * * *
    正論と悪態の話。
    私は、たとえ「みんなに拡散したい正論」であっても、 「他人への悪態」が混じっているツイートを拡散するのはためらいます。 たとえば、こういうの(あくまで、たとえば)。
     --------  電車で老人に席をゆずるのは当然のことですよ。  そんなこともできないなんて、  あなた、××××じゃないの?  --------
    上記の××××には聞くに堪えない悪態が書かれていると思ってください。 悪いことをした相手を非難したり、 品質が悪いものに対して低い評価を下すことは悪ではありません。 でも「低い評価を下す」のと「悪態をつく」のは異なります。
    正論に悪態が混じるツイートをする人は、 よっぽど腹に据えかねる気持ちがあるのかもしれませんし、 あるいは単に悪態をつきたいだけかもしれません。
    と、ここまでイイコチャンで書いてきましたが、自分自身を振り返ります。 結城はTwitterで悪態をつくことは多くはないと認識していますが、 絶対につかないかと言われると、あまり自信はありません。
    「腹に据えかねている」ことがあって正論を振りかざす場合はありそうですし、 あるいはまた「悪態をついている自分に酔っている」場合もあるでしょうね。 どちらの場合でも、 ツイートを読んでいる人の存在を忘れかけている可能性は高いと思います。 自分のツイートを読んでいる人のことを考えると、 悪態を読ませたいとは思わないので、自制が働きそう……かな?
    別の点から話を続けます。 こんなツイートをしたらあの人からはこう思われるだろうな、 と考えることは悪くありません。 でも、あの人やこの人やその人……と考えすぎて配慮しすぎると、 なにも言えなくなってしまいます。 結局のところ、なにをどこまで考えて、 なにを言うか、いつ言うか、どういう言葉を使うかは、 話者の個性や性格になってくるのだと思います。
    結城は頻繁に《読者のことを考える》という話をしますが、 単純に読者のことを考えるだけではなく、 自分と読者の「境目」に注意を払うのもいい方法です。 「境目」といってもいいですし「境界線」といってもいいです。
    このツイートをしたという行為は自分の話。 このツイートでどう感じるかは相手の話。 ここに「境界線」があるのはわかりますか。 《自分の行為》と《相手の感じ方》はイコールではなく、 あいだに境界線があるのです。
    自分は相手ではないのだから、 相手がどう感じるかをコントロールするわけにはいきません。 相手が不愉快に感じないように配慮することと、 絶対に不愉快に感じないようにすることとは違います。 相手はロボットではないのですから、 フルコントロールすることはできないのです。
    読んでいる人のことを想像して、 ことさらに不愉快に受け取られる言い方をしないというのは良いことです。 でもあくまでそれは話者の側の考えに過ぎません。 相手がどう思うか、それは相手の自由です。
    人と人とのコミュニケーションは、そこが面白く、 また恐ろしく難しいのでしょう。 つながっているようで、つながっていない。 境界線がある。 相手のことを考えるのは意味があるけれど、 相手のことを考えるのは意味がない。
    その面白さと難しさが、 コミュニケーションの魅力ではないかと思っています。
     * * *
    時計を巻き戻す話。
    先日我が家で「もう一度、十代に戻りたいか」という話題になりました。 結城は即座に「もうあんなめんどくさい時代を繰り返したくない」 と思いました。十代ってややこしいパズルのような、 暴風雨のような時代だと思いませんか。
    人生をだいぶ過ぎると、 自分は若いときにこういうことをやればよかったんだな、 ということがちょっぴりわかってきます。 なので、つい自分の子供にも「こういうことをやればいいぞ」 と言いたくなります。 でもそれがどれだけ正しいかは判断が難しいところです。
    自分の経験を子供に適用できるかというと、 自分と子供は別の人間だから興味も適性も違う。 社会も大きく変化しているから、うまくいくとは限りません。
    そもそも自分を振り返って、 「ああ、自分はこういうことやればよかった」 という判断もどれだけ信用できるかわかりませんしね。
    自分の成功体験をもとにして子供に何かを伝えたくなりますが、 そこには危険性があります。子供に自慢げに言いたいために、 自分の過去の成功体験を武勇伝にしがちだからです。 自己の記憶は容易に改竄されます。 改竄しているのは自分自身。
    子供に何をどう伝えるかは、難しいです。 せいぜい、お父さんはこういうふうに考えて生きてきたけれど、 あなたはあなたでがんばりなさい。 くらいになってしまうんでしょうか。
    時計を巻き戻す話は、後ほどまた出てきます。
     * * *
    文章のライブ感の話。
    私にとって「おもしろい文章」というのは「何らかの発見がある文章」です。 ですから「文章の題材を見つけること」は「発見する題材を見つけること」 に似ています。
    けれど、何を発見するかは、発見するまでわからないものですね。 何が見つかるかはわからないけれど、 きっと何かは見つかるはずと思って進む。 文章が生み出すライブ感はそこにあるのではないでしょうか。
     * * *
    機械に負けないようにする話。
    以下のオピニオンペーパーをざっと読みました。
     ◆AI時代の人間の強み・経営のあり方  http://nira.or.jp/president/opinion/entry/n161102_831.html
    興味深かったのは、PDFの中ほどに書かれていた
     「(日本企業は)AIではなく外国企業に負ける」
    という観点です。以下引用。
     --------  特に日本のホワイトカラーの職務は、全般的に、  入出力が明確ではなく、成果の評価軸も必ずしも明確ではない。  そのため、上記の定義に従えば、ホワイトカラーの職務は、  AI で代替されにくいようにみえる。しかし、これは正しくない。  非効率的な形で明確化がされていないために、  AIを使わず人を活用している場合、当然のことながら、  より効率的にAIを活用して、  より低コストで生産やサービス提供を行う外国企業等に競争で負けてしまう。   その意味では、日本では AI に直接仕事を奪われるというよりは、  AIを活用する外国企業や新規参入企業に負けるという形で、  間接的にAIに仕事を奪われる局面のほうが多いのかもしれない。  --------
    なるほど、と言わざるをえません。AIと人間が直接勝負するのではなく、 AIを活用できている企業と活用できていない企業が勝負するのだと。
    作業のどの部分が機械化できて、 どの部分が機械化できないかをよく考えて、 的確に機械化を進めていかないと競争力は落ちてしまうでしょう。 それは企業でも個人でも変わりはありません。
    企業と同じように個々人も、 AIに仕事を奪われないように頭を使う必要があるでしょう。 いったいどのような仕事が将来もAIで代替できないのかを考える。 そのためにはAIでできることとできないことを弁別する必要があります。
    自分が機械に置き換えられないようにと考えて、 自分の作業を機械化しにくくしようと考えるのはたぶんまちがい。
    そうじゃなくて、自分の作業のうち「機械にできること」を真剣に探し、 それをどんどん機械化していく。 そして残った部分に自分の時間を注ぎ品質を上げる。 それが正しい対策だと思います。
    要するに自分の作業を積極的に機械化していく人ほど、 機械に負けないのではないでしょうか。 とても逆説的ですけれど。
    そういえば、Google翻訳の精度が上がったという話題がありました。 もちろんそれだけで翻訳者が仕事を失うわけではありません。 でも「自分の作業のどこかにGoogle翻訳を活用できないだろうか」 と考える翻訳者がいてもおかしくはありませんね。
     * * *
    人工知能関係でもう一つ、読む力の話。
    「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトの関連記事で、 湯浅誠さんによる以下のものは短くてわかりやすいものでした。
     ◆AI研究者が問う   ロボットは文章を読めない   では子どもたちは「読めて」いるのか?  http://bylines.news.yahoo.co.jp/yuasamakoto/20161114-00064079/
    ここで紹介されている新井紀子さんの話は、 十分考える必要があると感じます。
     --------  「文章の意味を理解できない東ロボよりも、   得点の低い高校生がいるのは、   どういうことだ?」  「この高校生たちは、   文章の意味を理解できているのだろうか?」  「義務教育で、   教科書の文章を読める力は本当についているのだろうか?」  --------
    このような「着目する問題の切り換え」は、 非常に重要な意味を持つと思います。 コンピュータが人間にいつ追いつけるかどころか、 コンピュータほども文章を読めていない子供たちがいるのではないか、と。 その後で、リーディングスキルテストの予備調査の話が出てきます。
     --------  本調査の結果が出ないかぎり、確定的なことは言えないが、  これまでのところ、テストを受験した公立中学校生340人のうち、  約5割が、教科書の内容を読み取れておらず、  約2割は、基礎的な読解もできていない  ことが明らかになってしまった。  --------
    これは確かにショッキングな内容でしょう。
     --------  国民の少なからぬ人たちが、  矛盾していたり、  センセーショナルなだけで中身のない発言の意味を吟味し、  その矛盾を見抜いたり、  実現可能性や妥当性を評価できる読解力を身につけていなかったら、  世の中は大変なことになってしまうのではないか、と。  --------
    若い人たちが、コンピュータほどの読解力もないとしたら、 学ぶことができず、話が通じず、科学的な知見が生かせず、 理屈も通らない社会が誕生するでしょう。 社会が成り立たなくなりますね。
    ところで、自分はどうだろう。 キーワードのパターンマッチング以上のことを、 しっかり考えているだろうか。
     * * *
    と、いうことで、そろそろ、 今週の結城メルマガを始めましょう。
    今回は久しぶりに「結城浩ミニ文庫」をお送りします。
     『和算書「算法少女」を読む』(小寺裕)
    という数学書の書評記事です。それから、 いささかセンチメンタルな読み物をいくつか。
    どうぞ、ごゆっくりお読みくださいね!
    目次
    はじめに
    『和算書「算法少女」を読む』を読む - 結城浩ミニ文庫
    恋について、愛について
    帰省の話、母の話
    精細な解説図つき、すごい問題解決手法
    おわりに
     
  • Vol.242 結城浩/再発見の発想法/情報の賞味期限/質問に答える技法/

    2016-11-15 07:00  
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    Vol.242 結城浩/再発見の発想法/情報の賞味期限/質問に答える技法/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年11月15日 Vol.242
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    結城の新刊『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』は、 たくさんの方に応援していただいています。 先日、編集部から増刷の連絡がありました。 刊行後二週間足らずでの《重版出来》です!
    また、Kindle版を初めとする電子書籍版も無事配信開始しました。 ありがたいことにKindleの数学有料本で、 数日間ランキング一位が続いていました! 感謝!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』(Kindle)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01MSJMKMW/hyam-22/
    『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』のKindle版は、 これまでの秘密ノートシリーズ同様に「固定レイアウト」での配信です。 必ず購入前に「無料サンプル版」で、 画面の大きさや使い勝手などを確認してくださいね。
    無料サンプル版には、第一章をまるごと掲載していますので、 ぜひ試し読みも兼ねてダウンロードしてみてください!
    なお、固定レイアウト型のKindle本は、 Amazon Cloud Readerを使うとPCやMacでも読むことができます。 Macで無料サンプル版を読むと、以下のような感じになります。
     ◆Amazon Cloud Reader(スクリーンショット)
    Amazon Cloud Readerについてはこちらから。
     ◆Amazon Cloud Reader  https://read.amazon.co.jp
    『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』 を引き続き応援してくださいね!
     * * *
    書評の話。
    日本数学会の会員誌『数学通信』21巻(2016年度)に、 結城の『数学文章作法 推敲編』に対する書評が掲載されていました。 評者は近畿大学理工学部の松井優さんという方です。 以下のページからだれでもPDFで読むことができます。
     ◆日本数学会「数学通信」書評  http://mathsoc.jp/publication/tushin/bookreview.html
    この書評、たいへんていねいに結城の本を解説してくださっているのですが、 私は書評の最後「結びにかえて」を読んで驚きました。
    そこには「この書評の第一稿はとても見せられたものではありませんでしたが, 本書を実践して書き直し,勇気づけられました」 と書かれていたのです。
    つまり、この松井さんは、 この書評そのものを推敲した実例としてここに提示しており、 しかもそのことを書評に明記しているのです。 この謙虚さと誠実さに私は深く感動し、 襟を正す思いになりました。 書評を読んでこんな気持ちになったのは、 初めてのことかもしれません。
    お時間がありましたら、あなたもぜひお読みください。
     ◆日本数学会「数学通信」書評  http://mathsoc.jp/publication/tushin/bookreview.html
     * * *
    iOSアプリの話。
    ニコニコチャンネルのiOSアプリ(niconico ch)ができました(無料)。 結城メルマガを「ブロマガ」で購読している方はアプリでも読めます。
    niconico chアプリをインストールしてログイン後「結城浩」 を検索すれば「結城浩のコミュニケーションの心がけ」はすぐ見つかります。 よろしければどうぞ!
     ◆niconico ch  https://itunes.apple.com/jp/app/niconico-ch/id1148502570
     * * *
    誤りの話。
    設計ミスや施工ミスで建物が壊れたとします。 そうするとミスをした人の責任が問われることになります。 そして次の一歩として「再発防止」を考えることになりますね。
    再発防止を考えるときに、
     ・(A) ミスをしないように人間が注意しよう  ・(B) ミスを検出できる仕組みを作ろう
    という二つの考え方があると思います。 この二つの考え方は排他的なものではありません (つまり、どちらか片方のみにしなければならないわけではありません)。 両方が大切になるでしょう。
    設計や施工に関わる人がミスをしないように注意することはいいことですし、 ミスを検出できる仕組みを作ることも大事です。
    しかしながら、(B)の考えを進めるためには、 「人間はミスをすることがありうる」 ということを前提としなければなりません。 だって、人間がミスを絶対しないなら、 ミスを検出する仕組みなんて不要ですから。
    逆に(A)の考えを進めるためには、 安全装置としての(B)は存在するとした上で、 それでも人間は注意しなくてはいけないと考える必要があるでしょう。 安全装置があるから手抜きしてもいいや、では困りますから。
    複数の安全装置がもっともよく機能するためには、 それぞれが適切に独立であるべきなのでしょう。
    人間が注意してもしなくてもミスがあったら検出する仕組みを用意する。 ミスを検出する仕組みがあろうとなかろうと人間は注意する。 そうすれば、(A)と(B)の複数が存在する意味があることになりますね。
    ただし、今度はそこにコストという要因が加わって話をややこしくします。 人間と仕組みの両方を多重に掛けるために、 コストが大きくかさむ危険性が出てくるからです。
    あたりまえのことですけれど、すべては《程度問題》になります。 現実社会において、何かがゼロパーセントである場合や、 百パーセントであることはほとんどありません。 すべては《程度問題》になります。
    現実社会において、 ゼロパーセントや百パーセントを要求する人がいたならば、 その要求は現実的ではないといえそうです。
    「重大な問題であるからこそゼロパーセントを要求する」 と考える人もいますが、それは、 「重大な問題であるから、現実的な答えは求めない」 というナンセンスな主張になりかねません。
     * * *
    変化の話。
    先日、カルロス・ゴーン氏の短いインタビュー記事を読みました。
     ◆「私は変化が嫌いだ」 再建王ゴーン氏の本音  http://style.nikkei.com/article/DGXMZO0910378002112016000000
    結城はふだん、こういう記事はあまり読まないのですが、 この記事を読んだ理由はもちろんこの見出し「私は変化が嫌いだ」です。 「え?」と思って読んでしまいました。
     --------  驚かれるかもしれませんが、私は変化が嫌いなのです。  変えなければならないことは、最小限に抑えたいのです。  よくなると期待するから変えるのであって、  変えることが目的になってはいけません。  (記事より)  --------
    「変えることが目的になってはいけません」とは、 あたりまえのことですけれど、ゴーン氏がいうと重みがありますね。 技術の世界でよく言われる警句に「壊れてないなら直すなよ」 というものがありますが、それにも通じます。
    わが身を振り返ってみると、こういう誤りをしてしまいそう…… と思いました。変えることが目的になってしまったり、 そもそもよく考えずに何となく変えてしまったり。
    もちろん、どう進んでいいかわからずに変えてみることはあるでしょうし、 いわゆるイノベーションのジレンマを防ぐために、 うまくいっていてもあえて変えることもあるでしょう。 大事なのは、だから「見極め」であり「判断」になりますね。
    変化を起こすときに、変化を起こす前に、
     「いま起こそうとしている変化に、私は何を期待しているんだろうか」
    ということを見極める。判断する。 それが大切なのでしょう。
    変化したからうまくいくわけではなく、 変化しないからうまくいくわけでもないのですからね。
    そして変化の良し悪しを見極めるためには、 そもそも現状をよく観察しておく必要があるのでしょう。
     * * *
    アクセス解析の話。
    書籍のランディングページを結城はたくさん管理しています。
    ランディングページで集客するぞ! のように意気込んでいるわけではなくて、 ネットで自分の本を紹介するときの場所は、 きちんとしておく必要があるだろうというほどの気持ちです。
    あるときふと、 「ざっくり言って毎日どのくらいのアクセスがあるんだろう」 と思いました。ずっと放置していてアクセスは見ていなかったからです。
    サーバは粛々とアクセスログを保存していますので、 それを手軽に解析するツールがほしいなと思いました。 検索してみると request-log-analyzer というものが私の用途に合いそう。 サーバのアクセスログファイルを access_log としたとき、 以下の二行を実行するだけで、時間ごとのアクセス、 メソッドごとの分布、アクセスURL, リファラなどがグラフ表示されました。
     ◆request-log-analyzerのスクリーンキャプチャ
    実行時に --output html というオプションを付けると、 HTML形式で出力してくれるのでとても見やすくなります。
     ◆HTML形式での出力(1)
     ◆HTML形式での出力(2)
    見てみると結城が作ったランディングページへのアクセスは、 一日に数百くらいのオーダーですね(そのうちbotが数割)。 結城のツイートからたどるアクセスが多いのかなと思っていましたが、 結城のトップページからのアクセスが多いのが意外でした。
    アクセスログのざっくりした解析にはrequest-log-analyzer便利ですね。
     ◆request-log-analyzer  http://request-log-analyzer.com
     * * *
    二つの話。
    他人がまちがっているのを見て「やっぱり自分は正しかったのだ」と考える人と、 「自分もまちがっているかもしれない」と考える人がいます。
    他人が成功しているのを見て「自分はやっぱりだめだ」と思う人と、 「自分にも道がありそうだ」と思う人がいます。
    「●●である人と、■■である人がします」と言われると、 「どちらか一方だけが正しくて、他方は誤りである」と考える人と、 そのようには考えない人がいます。
    二つの話が与えられると、 二つの選択肢しかないと思ってしまいがち。
     * * *
    新聞紙の話。
    先日ふと、
     「新聞ってもう購読しなくていいんじゃないか」
    と気付き、購読を停止しました。
    妻は半分賛成しつつも、 「新聞紙がないと生ゴミを包んで捨てるときに困るのでは」 という意見を出してきました。
    結城は「ゴミを捨てるための紙として新聞紙を購入するのは高すぎ」と、 反対意見を提示しました。 「必要ならアマゾンで古新聞紙は買えるはず」 と思って。実際、古新聞誌は買えます。
    しかも、チラシなどが入ってないものもあり、 生ゴミを捨てるには都合がいいのです(チラシは水を吸わないので、 生ゴミ処理には不適切)。
    紙の新聞は、ほとんど家族の誰も読んでいませんでした。 何となく継続して購読していただけ。 毎月のことですから、よく考えると高い買い物をしていたことになりますね。
     * * *
    分割統治の話。
    「複雑なものは分けて考える」というのはエンジニアリングの基本です。
    大きな問題を場合分けによって解決したり、 要因を分析して、それぞれに対策を立てたりします。 そもそも工業製品やプログラムがたくさんの「部品」に分かれているのは、 まさに「複雑なものは分けて考える」という《分割統治》に根ざしています。
    プログラムではグローバル変数は嫌われます。 たくさんのモジュールからいつアクセスされるかわからない変数は、 管理がしにくくてしかたがありません。 だから、影響範囲をできるだけ少なくするような工夫が考案されています。 グローバルなスコープを持つ変数を少なくし、 ローカルなスコープを持つ変数でできるだけ解決しようとします。
    世界における「グローバル化」の難しさは、 グローバル変数の扱いにくさと似ているのかもしれない、 とふと思いました。
    安易な類比は避けなくてはいけませんが、 社会という極めて複雑な問題に適切な解を与えるために、 エンジニアリング的な発想は必要だと思います。
    問題は分割して統治するのが基本です。 問題を分割しただけではだめで、 個々に対して適切な対策を打たなければなりません。
    しかしこまったことに、 問題を特定するために「分割」することそのものが、 新たな問題を引き起こすことも多いでしょう。 性別しかり、国籍しかり、収入しかり、居住地しかり……
    難しいものです。
     * * *
    書籍検索の話。
    結城は「でんでんランディングページ」 を使って自著のランディングページを作っています。 そこには購入のためのリンクを貼ることができるセクションがあります(当然)。 でも、ネットショップはとてもたくさんあるので、 一つ一つURLを確認するのが大変です。
    そんなことをツイートしていたら、鷹野さん(@ryou_takano) から「書籍横断検索システム」というサイトを教えてもらいました。 ここでは書籍を検索するといろんなショップをまとめて表示してくれるのです。 これは助かります!
     ◆書籍横断検索システム  http://book.tsuhankensaku.com/hon/isbn/9784797387124/
     ◆スクリーンショット
    それにしても現代は「こういうサービスがほしいな」と思ったら、 たいてい誰かが作っていますよね。便利な時代です。
     * * *
    さてそれでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    再発見の発想法 - 状態
    publish or perish
    情報の賞味期限 - 本を書く心がけ
    質問に答える技法
    おわりに
     
  • Vol.241 結城浩/ロゴマーク/メタサイト/冷凍保存された言葉/テキストを介した信頼/自分をきちんと甘やかす/

    2016-11-08 07:00  
    216pt
    Vol.241 結城浩/ロゴマーク/メタサイト/冷凍保存された言葉/テキストを介した信頼/自分をきちんと甘やかす/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年11月8日 Vol.241
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
     * * *
    新刊の話。
    ありがたいことに、結城の新刊『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』 は多くの読者さんに喜ばれているようです。感謝です。
    ある方からは本のレベル設定がちょうどいいというご意見をいただきました。 また何名かの大学の先生が、学生さんに推薦してくださっていました。 私はたいへんうれしいです!
    世の中にはすでに無数の統計本が出版されています。 そこに新たな一冊を投入するのはたいへん恐いものです。 読者さんのコメントや書評を見ていると、 何かしらの価値を提供できるようなので、 私としてはたいへん心強いですね。 幸いにもまだアマゾンの数学ランキングで第1位をキープしているようです (11月7日9:00現在)。
    先日、本書のレビューアもしてくださった西原史暁さんが、 たいへん詳細な書評を書いてくださいました。 おそらく現時点では最も内容に踏み込んだ記事になっています。
     ◆数学好きから統計好きに――『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』  http://id.fnshr.info/2016/11/05/secret-notebook-statistics/
    この記事の中でおもしろいと思ったのは、数式の扱いについてです。 以下、引用。
     --------  ありふれた統計の入門書では、  世の中に数学が苦手な人が多いことを踏まえて、  数式のことをあまり扱わないようにしていることも少なくない。  こうした配慮は、数学が苦手である人にとっては有効なのかもしれないが、  数学が好きな人にとっては逆に興味を失うことにつながるかもしれない。  数学の言葉に親しみを覚えている人ならば、  数式で書いてくれた方が分かりやすいのだ。  http://id.fnshr.info/2016/11/05/secret-notebook-statistics/  --------
    これは、結城自身はそれほど意識していませんでした。 でも、言われてみればなるほどその通りになっています。 それほど難しい数式は出て来ないのですが、 明確な説明のために数式を使っていることが功を奏しているのでしょう。
    編集部からの情報によれば、 今週の後半頃から本書の電子書籍も配信が開始されます。 Kindle版が最速で、楽天KOBOやGooglePlayなどからも続いて配信になります。 これからも『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』の応援を、 どうぞよろしくお願いいたします。
     ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』  https://note8.hyuki.net/
     * * *
    グラフの話。
    あるとき、
     「結城メルマガってだいたい何文字くらいあるんだろう」
    という疑問が浮かびました。毎回の執筆ではだいたい25キロバイト (約1万2千文字)を目安にしているのですが、 毎回きっかりそのサイズではありません。長い回もありますし、 短い回もあります。
     「まあ、平均したらおそらく1万2千文字だろうけれど……」
    まで考えたところで、
     「平均だけじゃなくて標準偏差も考えよう」
    と思い返しました。 新刊『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』の中でも登場人物達が 平均だけを考えてよしとしない態度について語っていましたし。
    平均や標準偏差に留まりません。結城の手元には過去記事のすべてがあるので、 文字数の《分布》を考えることもできます。ということで、 Pythonでプログラムを書き、 文字数の分布をヒストグラムにしてみました。 こんな感じになりました。
     ◆結城メルマガ文字数分布(Vol.000〜Vol.240)
     count 241.000000  mean 11203.381743(平均)  std 3089.392742(標準偏差)  min 1490.000000(最小値)  25% 8839.000000(第1四分位数)  50% 11216.000000(中央値)  75% 13565.000000(第3四分位数)  max 18827.000000(最大値)
    これはメール本文の文字数だけなので、 別ファイルとしてPDFが付く場合でもその文字数は含まれていません。 一万文字よりも小さいところに山があるのは、 きっとPDFが付いた回のものではないかと思います (PDFが付いた回の文字数は少なくなる傾向があるため)。
    また極端に文字数が少ないのは、 結城が体調を崩してしまったときの《ごめんなさい回》ですね。
    この分布を描いたときに使ったPythonのプログラムは約10行。
     ◆PythonでCSVファイルをもとにヒストグラムを描くプログラム(画像)
    コンマで区切られたデータファイル(CSVファイル) を読み込んでヒストグラムを表示させています。 ヒストグラムを描くプログラムとデータは以下のブログで公開。
     ◆PythonでCSVファイルをもとにヒストグラムを描く例  https://snap.textfile.org/20161101230500/
    Pythonを使わなくても、 Excelなどを使えば、分布を表すヒストグラムは簡単に描けるでしょう。
    この結城メルマガの文字数データは《自分のデータ》なので、 その分布を見ると心動かされるものがあります。 先ほどちらっと書いた「小さいところの山は何だろうか」とか、 「極端に文字数が少ない回は何か」とか。 分布から観察できる特徴が何を表しているかを考えたくなるのです。
    参考書やどこかの誰かのデータじゃなくて、 《自分のデータ》なのがポイントですね。 ここから何かおもしろいことがわからないだろうか? という気持ちになりますから。
    この分布を見ているうちに、時間的な推移も見たくなりました。 それで、同じデータを使って折れ線グラフも描いてみましょう。 こんな感じになりました。
     ◆結城メルマガ文字数の変化(Vol.000〜Vol.240)
    この折れ線グラフを見ると、 極端に文字数が少ない回は最近ないことがわかりますね。 また何となくではありますが、 最近の回は文字数の散らばりが小さく、 また少しずつですが文字数が上昇トレンドにあるようにも思います。 だから何だというわけではありませんが、 自分に関係したデータを見るのは楽しいことですね。
    折れ線を描くプログラムとデータは以下のブログで公開。
     ◆PythonでCSVファイルをもとに折れ線グラフを描く例  https://snap.textfile.org/20161101235123/
     ◆PythonでCSVファイルをもとに折れ線グラフを描くプログラム(画像)
    こういうちょっとしたプログラムは公開しておくと便利です。 何ヶ月か何年かたった後で、「ヒストグラム描きたいな」とか 「折れ線グラフ描きたいな」と思ったときのベースとして使えるからです。
     * * *
    言葉では説明しにくい動き。
    以下の@johnbrown1325さんのツイートは、 円からつながっている線分の先が回転運動っぽい動きをしていて、 その結果なぜか回転する正方形が浮かび上がるアニメーションです。
     ◆不思議な正方形のアニメーション(ツイート)  https://twitter.com/johnbrown1325/status/791226007080542208
     ◆スクリーンショット(1)
     ◆スクリーンショット(2)
    なぜ内側に正方形が現れるかは、 数学的にちゃんと証明できそうですね!
     * * *
    AMP対応の話。
    以前からWebサイトをAMP(Accelerated Mobile Pages) 対応したいと思っています。 AMPとはGoogleやTwitterが推進しているプロジェクトで、 スマートフォンなどのモバイル端末でWebページを高速表示するための技術です。 公式ページは以下。
     ◆Accelerated Mobile Pages  https://www.ampproject.org
    スマートフォンやタブレットを使ってGoogle検索すると、 AMP対応しているページが特別扱いで表示されます。
     ◆Google検索で表示されるAMP対応ページの例
    要するに、AMPの仕様に従ったWebページを作っておくと、 Googleが高速に表示してくれるよというお話です。
    WordPressなどのブログプラットホームではAMP用のプラグインもありますが、 結城のWebサイトは自力で作っているので、 AMP対応するためには自分で何か仕組みを作る必要があります。
    とりあえずはAMPを検索して技術的な概要をつかみ、 試しに『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』 のランディングページをAMP対応してみることにしました。
    上の公式ページにHTMLのサンプルがありますので、 それを見ながら作っていきます。 できたなら、正しく作られたかどうかをAMP Validatorでチェックします。
     ◆AMP Validator.  https://validator.ampproject.org
     ◆AMP Validatorでチェックしているようす(PASS)
    AMP対応したページはモバイル端末で見ることを想定しているので、 Google Search Console AMPテストのプレビューで、 どんなふうに見えるかを確認します。
     ◆Google Search Console AMPテスト  https://search.google.com/search-console/amp
     ◆Google Search Console AMPテストの実行(テスト)
     ◆Google Search Console AMPテストの実行(プレビュー)
    さらに付加的情報をテストするため、 Google 構造化テストツールも使ってテストします。
     ◆Google 構造化テストツール  https://search.google.com/structured-data/testing-tool/u/0/
    これで『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』 のAMP対応ページが一応作成できました。 ロゴ画像の調整やCSSの対応などをやっていない状態です。
    できたことはできたのですが、 ちゃんとした知識はまだありません。 でも、まあ、第一歩としてはこんなものでしょう。
    今回は手動でAMP対応を行いましたが、 将来はランディングページから自動的にAMP対応ページを作れるように、 変換ツールを整備したいと思っています。 少しずつ、楽しみながらね。
     * * *
    子育てと可処分時間の話。
    てぃーびーさん(@tbpgr)のすてきな子育て話。
    てぃーびーさんが「今日あったこと報告ノート」 という話をブログに書いていました。 パパと娘二人との交換日記的なシステムとのこと。
     ◆子どもたちとの間で「今日あったこと報告ノート」を導入した話   Tbpgr Blog  http://tbpgr.hatenablog.com/entry/2016/11/04/001050
    このブログによると、
     ・たのしかったことを一つ以上書く  ・おぼえたこと(できるようになったこと)を一つ以上書く  ・ききたいことがあれば書く  ・困ったこと、相談したいことがあれば書く
    という報告ノートのようです。
    娘さんにこんなこと書いてもらうっていいですねえ。 こういうことを思いつくのもすごいですし、 実行に移せるのもいいですね。
    この記事を読んでいて、最後に書かれていた一言に特に注目しました。
     --------  こういったやりとりができるのも  今の仕事が定時勤務で残業がないからこそ、  という思いがあります。  ありがたや。  http://tbpgr.hatenablog.com/entry/2016/11/04/001050  --------
    確かにそうだと思います。 時間的な余裕がなければなかなかこういう取り組みに気付かないし、 気付いても実行できないし、実行しても続かないものでしょう。
    可処分時間とでもいうのでしょうか。 自分の裁量で新しい取り組みができる時間の余地は、 子育てに限らず、いろんなところで効いてきそうだと思いました。
    あなたの可処分時間はいかがでしょう。
     * * *
    確率の話。
    先日「成功する確率が小さくてもあきらめない」という文脈で、 「成功する確率が1%でも100回トライすれば100%になる」 なんて表現を見かけました(正確な引用ではありません)。
    「成功する確率が小さくてもあきらめない」という主張の是非はさておき、 「成功する確率が1%でも100回トライすれば100%になる」という表現は、 確率的にはまったくおかしいです。 「サイコロを6回振ったら1の目が出せる」というくらいおかしいです。 この場合の確率は単純な足し算で求めるものではないからです。 もっとも、こういうのにツッコミを入れるのは野暮といえば野暮でけれどね。
    少し考えればわかる通り、成功する確率が1%の試行を たとえ100回トライしても100%成功するわけではありません。 細かい前提を省略していうなら、 失敗する確率99%を100回トライして《すべて失敗》する確率は、 「99%の100乗」で「約36.6%」になります。 ですから、100回トライして《1回以上成功》する確率は「約63.4%」ですね。
    「成功の確率がたった1%でも100回トライすれば、 約63.4%は成功するんだよ」というのは、 確率的にもそれほど嘘じゃないし、 人を鼓舞する話としてもなかなかいいんじゃないでしょうか。
    ちなみに、確率を期待値に変えると正しい表現に近くなります。 「1回の試行での期待値が1の場合、100回の試行での期待値は100だ」 というのはおかしな主張ではありませんし、 期待値の線型性の表明とみなすこともできます。
     * * *
    「自明」の話。
    こんな主張を考えてみましょう。便宜上「主張A」と呼びます。
     主張A  「〇〇であるかもしれないが、〇〇ではないかもしれない」
    どんなものごとも「○○かもしれないし、○○じゃないかもしれない」 んだから、上の主張Aはあたりまえのように聞こえます。
    自明に真である主張Aは、 何も意味のあることを言ってない無駄な言葉のように感じます。 しかしながら、世の中にいる「必ず○○であるに違いない」 と強く主張する人に対して主張Aを伝える場合はありえますね。 そしてまた、主張Aを伝えることが無駄とは限りません。
    「○○かもしれない」といって、相手の主張を一部受け止めつつ、 「○○ではないかもしれない」という可能性を示唆していることになります。
    ……なんて、えらそうに書いていますが、 こんなこと考えてそもそも何か意味があるのかしらん。 とはいえ、結城はこういうことをあれこれ考えるのが とても好きなんですけれど。
     * * *
    リアルな対話について。
    先日、編集者と会って長期的な企画に関するブレーンストーミングをしました。 そのときにふと思うことがあって「録音」をしてみました (もちろん許可を取って)。 二人でのブレーンストーミングなので記録する人もいないから、 録音しておいた方がいいかなと思ったのです。
    いい感じで打ち合わせが終わり、次の日になって録音を聞き返します。 二時間近くの対話を飛ばし飛ばし聞いてみて「これはいい!」と思いました。
    録音も記録もせずにおしゃべりして、 後から思い返すと細かい情報は抜け落ちてしまいます。 議事メモにも書かれないようなちょっとした脇道の話や、 そこから引きずられて出てくる「思い出したこと」の話。 それがちゃんと録音には残っています。これはいい。
    また、議事メモを文字として読み返すのと、 現場の音を聞き返すのもまた違う効果があります。 結城は「時間を掛けて音を聞き返すよりも、 要領良くまとめた文章を読んだ方が早くて効率的」と思っていたのですが、 多少認識が変わりました。
    「人と話す」というプリミティブな形式での情報交換は、 「文字の読み書き」とは別の刺激となるのですね。 特に、新しい発想やアイディアを出そうとするときにはその 「別の刺激」がいい効果をもたらすように思います。 アイディア出しでは効率はあまり意味を持たないのです。
    結城は『数学ガールの秘密ノート』などで、 対話に絡んだ文章をよく書きます。 でもそれは本当の意味の対話ではありません。 彼女たちの対話を生のまま書いているわけではなく、 読者に伝わりやすいように調整しているからです。
    それに対して録音された音声という実際の対話は、 文章よりもはるかに断片的で「間」も大きいものです。 記憶に頼ってしゃべっているので書名や数字などもかなりいいかげん。 情報としてはまちがいだらけの情報を交換しています。 しかしながら、近似的な情報を交換するなかで「何か」が前に進みます。 よくわからないけれど「ものごと」や「考え」が、 どんどん前に進んでいく感じがするのです。
    むりやりにたとえるなら、山にトンネルを掘ってるみたいです。 どんどん掘り進んで、とにかく向こう側まで出ようとしている感じ。 しゃべっているうちに、向こう側にぼこん!と出られた! トンネルは整備されていないし、通り道も岩肌がむきだし。 でも、とにかく入口と出口はつながった! そんな感覚があります。
    録音した対話を聞き返しながら、 そんなことを考えていました。
    この対話はいつの日か、何かの本に結実するのかな。
    するといいな。
     * * *
    さてそれでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    ロゴマークのデザイン - 仕事の心がけ
    メタサイトについて考える
    冷凍保存された言葉
    テキストを介した信頼 - 本を書く心がけ
    自分をきちんと甘やかす
    おわりに
     
  • Vol.240 結城浩/『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』刊行!/井庭研での二つの質問/長期執筆作戦会議/

    2016-11-01 07:00  
    216pt
    Vol.240 結城浩/『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』刊行!/井庭研での二つの質問/長期執筆作戦会議/結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年11月1日 Vol.240
    はじめに
    おはようございます。
    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
    気がつくと11月。2016年もあと二カ月。
    時の経つのは早いですね……と毎月言ってるような。
     * * *
    新刊の話。
    新刊『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』刊行です!
    先週の水曜日、結城は編集部で新刊にサインをしました。 毎回恒例になりましたが、 このサイン本は一部の書店さんで先行販売されるものです。
    サインするタイミングは、 結城が初めて「本」という形になった新刊に出会うとき。 何度経験しても、深く感動するイベントです。
     ◆サインを待つたくさんの新刊(編集部にて撮影)
    ありがたいことに、 結城のサイン本は全国書店さんから強く求められています。 細かいやりとりまではわかりませんが、 書店さんと出版社の営業さんとのあいだでの交渉で配本冊数が決まるようです。
    その交渉には結城は関わっていないのですが、 結城からの要望として、 「できるだけ広い範囲の書店さんに配本されるように」 と営業さんに伝えています。 単純に販売冊数だけを考えると、 どうしても都会が中心になってしまいがちです。でも、 応援してくださる読者さんは全国にいらっしゃる。 そのことを忘れないようにしたいと思うからです。
    「できるだけ広い範囲で」と営業さんに伝えると、 営業さんからは「それではサイン本の冊数を増やして」 という要望が返ってきます。ごもっとも。 今回はいつもよりもサイン本を多くしました。 今回は北海道(紀伊國屋書店札幌本店)から、 沖縄(ジュンク堂書店那覇店)までサイン本が届きます。
    結城がサインするそばから、 出版社の方々が台車をごろごろ転がして移動し、 宅配業者に託したり、直接書店に持参したり。 ほんとにありがたいお話です。
    《サイン本》は結城が一冊一冊書きますので、 物理的な制約がどうしても掛かります。 でも、以前から始めた《メッセージカード同梱本》では、 結城の手描きをベースにしたメッセージカードを同梱しますので、 サイン本よりもずっと多くの方に届きます。 《サイン本》や《メッセージカード同梱本》で、 少しでも多くの方に新刊の刊行を喜んでいただければ、 と願っています。
    さて、そういった販促活動はさておき、 今回の『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』は、 いままでとは異なる読者さんにも喜んでいただけるものになっています!
    実際「秘密ノートシリーズはやさしすぎるから読まなくていいよ」 と思っていた読者さんの中には、 今回の「やさしい統計」を読んで気に入り、 他の巻も読んでみようと感じた方がいらっしゃいます。
    ご自身では読まないけれど「子供に読ませたい」や、 「生徒に勧めたい」という方もいらっしゃるようですね。
    先週の土日ではアマゾンでも販売開始されました。 ありがたいことに「数学」分野の売れ筋ランキングで、 第1位になりました。感激です!
    新しい分野に歩を進めたことで、 より広い読者さんに読んでいただけるきっかけになるなら、 著者として、とてもうれしく思います。
    どうぞ、応援よろしくお願いいたします!
     ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』  https://note8.hyuki.net/
    そうだ。Kindle本の話。
    たくさんの方から「統計本のKindle版は?」 とお問い合わせをいただいていますが、 公式スケジュールとしてはまだ未定ですので、 現時点でアナウンスできる情報はありません。 ごめんなさい。 でも、Kindle本をはじめとした電子書籍は必ず出ます (なお、非公式情報としては、遅くても11月中には出るはず……です)。
     * * *
    今度は『数学ガール6』の話。
    今年力を入れてがんばろうとしてきた『数学ガール6』ですが、 現在は途中を飛ばして第10章を書いています。 分量的には予定の数倍書いているのですけれど、 まだ芯がぶれているようで困っています。
    プリントアウトして第10章全体を読み返し、 気付いたところに赤を入れ、 それをファイルに反映……という作業を何度も繰り返しています。
    ここしばらくは、第10章の骨組みを確認するため、 Evernoteのアウトライナーで頭を整理していました。 アウトライナーで項目を書き上げてみると、 第10章の全体像がよくわかります。
    もっとも、アウトライナーできれいにまとまっても、 実際に文章を書くとつながりがおかしかったり、 読んでいて意味がわからなかったりすることもあるので、 なかなか文章は難しいです。
    アウトライナーで書いているとき、 著者は全体を俯瞰して見ているわけです。 実際に文章を読んでいる読者はあまりそういう見方はしておらず、 文章の流れに乗って読んでいることの方が多いでしょう。 その結果、 著者にはわかっている大きな流れが読者に伝わらないまま、 話だけが何となく進んでいく現象が起きてしまいます。
    なので、アウトライナーで全体像を確認したとしても、 その全体像に文章を押し込めるのはまちがっている可能性があります (正しい可能性もあります)。 結局は、アウトライナーとエディタを「行き来」して、 確かめる必要があるのでしょう。
    まあ、時間を掛けてじわじわ進むしかないですね。 『数学ガール6』、先はまだまだ長そうです。
     * * *
    確率の話。
    やさしい確率の基本的な問題です。
    表に「1」と書いてあり、裏に「2」と書いてあるコインが一枚ある。 コインには偏りがないとする。 このコインを二回投げて、出た数二つを合計する。 さて合計は「偶数」になるだろうか。 それとも「奇数」になるだろうか。 あなたは、偶数・奇数どちらに掛けますか。
    たかしくんはこう考えました……
    コインを一回投げて出るのは偶数か奇数の二通りがある。 二回投げたときには以下の三通りがある。
     (1)「二回とも偶数」、  (2)「二回とも奇数」、  (3)「偶数と奇数が一回ずつ」。
    (1)〜(3)の三通りのうち合計が奇数になるのは (3)の一通りしかない。 だから、合計が「偶数」に掛けたほうが当たる。
    ……と、いうことですが、このたかしくんの考えは誤りです。
    途中までは正しいのですが、最後の「だから、」以降が誤り。 たしかに(1)〜(3)の三通りなのですが、 (3)は(1)と(2)を合わせたのと同じ確率で起きるので、 結局「偶数」に掛けるのと、「奇数」に掛けるのとでは、 どちらも同じになるのです。
    以下のように整理するとわかりやすいですね。
     (1)は「偶数→偶数」(合計は偶数)、  (2)は「奇数→奇数」(合計は偶数)、  (3)は「偶数→奇数」と「奇数→偶数」(合計は奇数)
    (3)は二つ分を合わせて考えていたわけです。
    高校時代、結城は「確率」が苦手でした。 問題文の内容を捕まえようとすると、 どんどん逃げていくみたいな感じがしたからです。 「場合の数」が持っているややこしさと似ていますね。
    自己弁護するわけじゃないですけれど、 大人になり、プログラミングの本、暗号の本、 数学読み物を書いてきて、 「そもそも、確率って人間には難しいのでは?」 と感じるようになりました。
    確率を含めて、
     ・動的なもの  ・ランダムなもの  ・確率に関わるもの
    は、人間が苦手とする概念じゃないでしょうか。
    「動的なもの」というのは簡単にいえば、 「時間にともなって変化するもの」です。 対義語は「静的なもの」すなわち 「最初決めたならば未来永劫変わらないもの」ですね。 静的なものに比べ、動的なもののほうが人間は苦手です。 ですから、動的なものをいかにして静的なものに落とし込むかは、 プログラミングの技法のひとつになります。
    「ランダムなもの」も人間は苦手です。 人間はもともとパターンを見つけてしまう能力を持っていますから、 それが邪魔をしてしまうのだろうなと思います。 単にランダムな現象が起きているのに、そこにパターンを見つけ、 意味を見出してしまうのは人間の弱点ともいえるでしょう。
    そして「確率に関わるもの」も人間は苦手です。 その苦手な部分につけ込むと高い保険金を払わせられたり、 不安を煽る詐欺に引っかかったりします。宝くじはどうでしょうね。
    「動的なもの」「ランダムなもの」「確率に関わるもの」 という人間の弱さを、コンピュータは助けてくれるでしょうか。
    あなたはどう思いますか。
     * * *
    重版の話。
    先日、みすず書房さんから連絡がありました。
    結城が解説を書かせていただいたメダワーの 『新版 若き科学者へ』が重版になるとのことです。 編集さんによりますと「特に新聞書評などがあったわけではないけれど、 刊行以来ずっと堅調に売れ続けて重版まで漕ぎ着けた」とのこと。
    重版になっても結城に印税が入るわけではないのですが、 「重版出来!」のニュースはいつもうれしいものです。
    特に『新版 若き科学者へ』は、 結城自身が大学一年生の頃に愛読していた本でもあり、 重版するほど多くの方に届いたのはうれしいですね。
     ◆メダワー『新版 若き科学者へ』(みすず書房)  https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622085305/hyam-22/
     * * *
    インタビューサイトの話。
    結城は ask.fm というインタビューサイトで、 いろんな方から「質問」を受け取っています。 現在1200人ほどの方がフォローしてくださっています。
     ◆ask.fm - 結城浩  http://ask.fm/hyuki0000
    それはそれでいいのですが、 最近、スマートフォンで ask.fm にアクセスすると、 無関係なアプリのダウンロードページに飛ばされる現象が起きています。 たいへん困ります。
    考えてみますと、 結城は ask.fm で他の人に質問することはほとんどなく、 単に結城あての質問に答えるサイトとして使っていますね。
    ピカリーン!(頭の上で電球が光る様子)
    だったら、別に ask.fm を使わなくても、 「自分専用のインタビューサイト」を作ってもいいんじゃないでしょうか。
    こんなことを、ある夜に考え始めました。 うん、「シンプルなWebサイト」として、 自分専用の ask.fm を作ったら楽しいかも!
    またです。 結城は、仕事が忙しくなると「シンプルなWebサイト」 を作りたくなる衝動にかられます。 またそれが始まったのです!
    では、ユーザインタフェースを考えてみましょう。
    そのサイトで必要なページはどんなものがあるでしょうか。
     1. これまでの「質問と回答」の一覧が表示されているページ  2. 個々の「質問と回答」が表示されているページ  3. 「質問」を投稿するためのページ
    一般ユーザ(結城以外)に見えるのは上の三ページのみでいいでしょう。 一覧と、個々の質問と回答とを見ることができ、投稿もできると。
    では、管理者兼解答者としての結城に見えるのはどんなページが必要? 投稿された質問はすぐに表示されるわけじゃなくて、 結城が回答して初めて表示されるようにしたいから……
     4. 「未回答の質問」の一覧が表示されているページ(結城専用)  5. 「回答」を投稿するためのページ(結城専用)
    以上のページがあればいいでしょうかね。 その他に、RSSリーダで読む人のために、
     6. 更新通知用のRSSのインタフェース
    も用意しておきましょう。
    ドメインはどうする? いつものように hyuki.net のサブドメイン上に作ることにします。 たとえば、 ask.hyuki.net みたいな感じにします。
    サイトの名前はどうしようか? たとえば「結城浩に聞いてみる」とか「結城浩にインタビュー」とか。 軽い「質問」と「回答」を楽しむ感じにするなら、 「インタビュー」は大げさかな。
    質問者のユーザ管理は? ユーザ管理はたとえばTwitterで認証するタイプにしてもいいけれど、 匿名の扱いなどがめんどうになるので、全員匿名にしちゃいましょう。
    ここまで頭で考えてきたので、 そろそろ画面遷移図を描きたくなりました。
    ノートを取り出して、いそいそと描きます。 こんな感じになりました。
     ◆結城浩専用の質問サイト画面遷移図
    続いて、もしも実際に作るとしたら、 作成手順はどうなるかな、と考えます。
     ◆結城浩専用の質問サイト作成手順
    ここまで考えてくると「できた気分」になり、 だいぶ満足。
    夜も遅くなったので、「エア開発」は終了です。
    いつか、忙しくてつらいときに 「開発」することにしましょうね……。
     * * *
    少しずつ進める話。
    先日、ある打ち合わせに向かうため、地下鉄に乗りました。 都内の地下鉄は複雑に絡み合っていて、 乗り換えもややこしい場合があります。
    結城は方向音痴でよく迷子になるので、 自分で方向を判断せず、駅構内の表示に素直に従うことにしています。 多少遠回りになっても、迷うよりはましですからね。
    その日、地下鉄の乗り換え用として矢印と共に、
     「〇〇線まで700m」
    という表示があるのに気付きました。 なるほど距離も示されていればわかりやすいですね。 ……と思いつつ、よく考えてみると「700m歩く」って、 けっこうな距離じゃないでしょうか。
    電車に乗って外出すると、 電車に乗っているにもかかわらず足が疲れていることがあります。 その原因は、駅構内を意外に長い距離歩いているせいかもしれませんね。
    それにしても、それだけ長い距離を歩いてしまうのは、 なかなか興味深い現象です。長い距離を歩けてしまうのは、 「まっすぐでのっぺりした何もない通路が700mあるわけじゃない」 のがポイントなのかな、と想像しています。
    「○○線まで700m」と書かれていても、 途中には階段があったり、キオスクがあったりしますので、 自然と「自分は目的地に向かって進んでいる感」があります。 さらには、
     「○○線まで520m」  「○○線まで340m」  「○○線まで112m」
    のように、目的地までのカウントダウン表示もあります。 ですから気がつかないうちに歩けてしまうのかも。
    そこで、気付きました。
    この現象は「長い文章を人に読んでもらうコツ」に変換できそうです!
    長い文章を人に読んでもらうためには、 「まっすぐでのっぺりした何もない文章」 を提示するのは好ましくありません。 読者が途中で飽きてしまうからです。
    階段や、キオスクや、「目的地まであと何メートル」 のような表示を文章中に設置するなら、 読者はそれらを手がかりに読み進められるでしょう。 飽きずに読み進むための手がかりや、 カウントダウンに相当するものを文中に設置するのです。
    「読者が目的地に向かって進んでいる感」を作り出すのは大事です。 章に分け見出しを工夫し、 扱う題材を整理し、順序よく読者に提示することは有効でしょう。
    駅構内を歩きながら、結城はそんなことを考えていました。
    いろんなところに、よい文章を書くためのヒントは転がっています。
     * * *
    さてそれでは、今週の結城メルマガを始めましょう。
    どうぞ、ごゆっくりお読みください!
    目次
    はじめに
    井庭研での二つの質問 - 仕事の心がけ
    長期執筆作戦会議 - 仕事の心がけ
    おわりに